JP5653891B2 - 可逆性感熱記録材料 - Google Patents

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Description

本発明は、感熱記録層の温度による可逆的な透明度変化を利用して、画像の記録及び消去を繰り返すことを可能にした、特に感熱記録層の耐久性を向上させて、良好な記録の書き換えを何回も継続してできる可逆性感熱記録材料に関する。
交通機関の定期券、催し会場や建物への入場許可証、各種プリペイドカード等において、種々の情報を記録して格納しておくことができる磁気カードやICカードが使用されている。しかし、これらのカードでは、格納されている記録内容を直接目視できないため、支払い金額や残高を簡単にチェックできず、使用者に対する格納された情報の内容保証を明確にするといった観点からは問題があった。このような問題に対し、従来、これらのカードを記録媒体とし、該カード類に目視可能な記録を行い、また記録を消去し、さらには格納される情報の変更に伴って当該記録を書き換えることができる方法が提案されている(特許文献1〜3)。例えば、感熱記録材料において、その感熱記録層を可逆性感熱記録塗料で構成することで、該感熱記録層を、サーマルヘッド等によって外部からの熱を加えた時に、その温度に応じて、透明な状態から白濁状態までの範囲でその光透過性を変え、一方、冷却後にはその状態を保持する性質を持つものにする方法がある。このような感熱記録層を利用すれば、文字や画像を書き込むことができるようになる。この技術は、上記したような格納される情報の内容が変更されることを前提としたカード類に、目視可能な記録を行って、その変更内容を随時表示していく際の方法として極めて有用である。
この際に使用される可逆性感熱記録材料の代表的なものとしては、基材シート上に、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のような高分子樹脂を母材とし、該母材中に高級脂肪酸のような有機低分子物質を微粒子状に分散させた樹脂組成物により形成した可逆性感熱記録層を設けた構造のもの等がある。これらの可逆性感熱記録材料では、加熱により、感熱記録層を透明化させたり、不透明化することで画像形成を行うが、例えば、サーマルヘッド等を用いて圧力を加え、同時に加熱する場合には、画像の形成・消去を繰り返すうちに、下記のような問題が生じる。すなわち、画像の形成・消去を繰り返すうちに、有機低分子物質を微粒子状に分散している可逆性感熱記録層の母材である高分子樹脂が変形し、層中に細かく分散されていた有機低分子物質粒子が次第に大きな径の粒子となり、光を散乱させる効果が少なくなることが生じる。そして、ついには、画像及びコントラストが低下してしまい、文字や画像を良好な状態に書き換えることができなくなる。このため、特に母材の耐久性を向上させる目的で、種々の高分子樹脂の使用が提案されている(例えば、特許文献4〜6参照)。
さらに最近では、環境問題の高まりから、環境対策に積極的に取り組むメーカーが多くなり、環境保全性に優れた材料を用いて製品を構成する動きがある。上記した可逆性感熱記録材料も例外ではなく、特にゴミ問題や森林破壊問題を背景に、今まで使い捨てられていた物を何度でも書き換え可能にできることから、可逆性感熱記録材料に代替することで環境問題(エコ)の解決の一助となることが注目され、盛んに検討され、一部実用化されている。しかしながら、従来の可逆性感熱記録材料は、そのほとんどが石油由来の材料からなるものであり、本来の趣旨からすると現在の地球規模での環境保全性という面ではまだ不十分である。
非特許文献1、2に見られるように、上記した点で有用な、二酸化炭素を原料とするポリヒドロキシポリウレタン樹脂については以前から知られているが、その応用展開は進んでいないのが実情である。それは、従来から知られている上記の樹脂は、従来の同種系の高分子化合物(石化プラスチック)であるポリウレタン系樹脂に比べ特性面で明らかに劣るからである(特許文献7、8)。
一方、増加の一途をたどる二酸化炭素の排出に起因すると考えられる地球の温暖化現象は、近年、世界的な問題となっており、二酸化炭素の排出量低減は、全世界的に重要な課題であり、上記したような二酸化炭素を製造原料とできる技術は待望されている。さらに、枯渇性石化資源(石油)問題の観点からも、バイオマス、メタン等の再生可能資源への転換が世界的潮流となっている。
上記のような背景下、再び、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が見直されている。すなわち、この樹脂の原料である二酸化炭素は、容易に入手可能で、かつ、持続可能な炭素資源であり、さらに、二酸化炭素を原料とするプラスチックは、温暖化、資源枯渇等の問題を解決する有効な手段であると言えるからである。
特開昭63−139784号公報 特公平01−30638号公報 特開平07−25146号公報 特開平04−189176号公報 特開平05−85047号公報 特開平07−125450号公報 米国特許第3,072,613号公報 特開2000−319504号公報
N.Kihara,T.Endo,J.Org.Chem.,1993,58,6198 N.Kihara,T.Endo,J.Polymer Sci.,PartA Polmer Chem.,1993,31(11), 2765
上記したような状況下、可逆性感熱記録材料を構成する可逆性感熱記録層の母材に使用される高分子樹脂における耐久性が向上し、サーマルヘッド等の発熱体によって熱と圧力とを加えて画像の形成・消去を何回も繰り返した場合でも、画像の透明部と不透明部とのコントラストが優れた良好な画像形成ができると共に、地球規模での環境保全性を持った環境対応製品である可逆性感熱記録材料の開発が要望されている。
したがって、本発明の目的は、可逆性感熱記録層の母材に使用される高分子樹脂の耐久性を向上させ、サーマルヘッド等の発熱体によって画像形成及び消去を繰り返した場合に生じていた透明部と不透明部とのコントラストの低下を抑制することができ、継続して良好な画像形成が可能な可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録材料を提供することにある。さらに、本発明の目的は、上記可逆性感熱記録層の母材である高分子樹脂が二酸化炭素を原料とし得る、地球環境保護の観点からも有用な環境対応製品を提供できる技術を開発することにある。
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、基材及び該基材の少なくとも一方の面に、高分子樹脂及び該高分子樹脂中に分散された有機低分子物質を主成分として含む樹脂組成物によって形成された感熱記録層を有してなる感熱記録材料であって、該感熱記録層が、透明度が温度によって可逆的に変化し得る可逆性感熱記録層であり、該記録層を形成するための高分子樹脂が、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導された、その構造中にマスキングされたイソシアネート基を有する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂であることを特徴とする可逆性感熱記録材料を提供する。
本発明の好ましい実施形態としては、下記のものが挙げられる。
前記5員環環状カーボネート化合物が、エポキシ化合物と二酸化炭素との反応物であって、かつ、その構造中に二酸化炭素を1〜25質量%の範囲で含んでなる可逆性感熱記録材料。
前記マスキングされたイソシアネート基は、有機ポリイソシアネート基とマスキング剤との反応生成物であって、熱処理することによりマスキングされた部分が解離されてイソシアネート基を生成し、その構造中の水酸基と反応して自己架橋するものである可逆性感熱記録材料。
前記自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導されたポリヒドロキシポリウレタン樹脂を変性剤によって変性してなるものである可逆性感熱記録材料。
上記本発明によれば、可逆性感熱記録層の母材として特定の高分子樹脂を用いることで、サーマルヘッド又は熱ロール等の加熱及び圧力を繰り返し加えた場合の耐久性を向上させることができ、画像形成及び消去を何回も繰り返された場合にも、透明部と不透明部とのコントラストの低下が抑制された良好な画像形成が可能な可逆性感熱記録材料が提供される。本発明によって提供される可逆性感熱記録材料は、上記可逆性感熱記録層の母材として用いる樹脂が、二酸化炭素を原料とし、樹脂中に二酸化炭素を取り入れることができるものであるので、地球環境保全の観点からも有用な材料および該材料を用いてなる環境対応製品の提供を可能にできるという別の効果もある。
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の可逆性感熱記録材料は、基材の少なくとも一方の面に、透明度が温度によって可逆的に変化し得る感熱記録層を設けたものであるが、該感熱記録層は、高分子樹脂を母材とし、該高分子樹脂中に分散された有機低分子物質を主成分として含む樹脂組成物によって形成される。そして、本発明は、上記母材として、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導されてなる、その構造中にマスキングされたイソシアネート基を有する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を用いたことを特徴とする。以下、これらの材料について説明する。
本発明で感熱記録層の母材に用いる自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、有機ポリイソシアネート化合物とマスキング剤との反応生成物である少なくとも一個のマスキングされていない遊離イソシアネート基を有する変性剤を、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導されたポリヒドロキシポリウレタン樹脂中の水酸基と反応させることで容易に得られる。
本発明で用いる自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が有するマスキングされたイソシアネート基は、有機ポリイソシアネート化合物の有するイソシアネート基にマスキング剤が反応したものであるため、熱処理することによりマスキングされた部分が解離してイソシアネート基が生成する。そして、この生成したイソシアネート基は、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の構造中の水酸基と反応して自己架橋することとなる。このため、感熱記録層の母材として上記した樹脂を用いてなる本発明の可逆性感熱記録材料では、画像の形成及び消去のために、サーマルヘッド又は熱ロール等によって加熱及び圧力を加えた場合でも繰り返しの耐久性が向上し、可逆性感熱記録層は、耐久後にも透明部と不透明部とのコントラストの低下が抑制された良好な画像形成ができるものになる。
さらに、本発明で使用する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導された樹脂であり、該5員環環状カーボネート化合物は、エポキシ化合物と二酸化炭素を反応させて得ることができるので、環境保全性にも優れる材料となる。
[可逆性感熱記録層の母材]
本発明において、可逆性感熱記録層の母材として使用する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、上述したように、遊離のイソシアネート基とマスキングされたイソシアネート基とを有する変性剤を用い、該遊離のイソシアネート基を、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂中の水酸基と反応させることで得られる。上記で使用する変性剤としては、有機ポリイソシアネート化合物とマスキング剤との反応生成物を用いればよい。以下に、各成分について説明する。
(変性剤)
<有機ポリイソシアネート化合物>
本発明で使用する変性剤としては、有機ポリイソシアネート化合物とマスキング剤との反応生成物が用いられるが、まず、変性剤を構成する成分について説明する。本発明で使用できる有機ポリイソシアネート化合物は、脂肪族或いは芳香族化合物中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する有機化合物であって、従来から、ポリウレタン樹脂の合成原料として広く使用されているものである。本発明においては、これらの公知の有機ポリイソシアネート化合物をいずれも使用できる。特に好ましい有機ポリイソシアネート化合物を挙げれば、以下の通りである。
例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが挙げられる。さらに、これらの有機ポリイソシアネート化合物と他の化合物との付加体、例えば、下記構造式のものも好適に使用できるが、これらに限定されない。
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<マスキング剤>
本発明で使用する変性剤は、上記したような有機ポリイソシアネート化合物とマスキング剤との反応生成物であるが、マスキング剤としては、アルコール系、フェノール系、活性メチレン系、酸アミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、ピリジン系化合物等があり、本発明では、これらを単独或いは混合して使用してもよい。本発明で使用できる具体的なマスキング剤としては下記のようなものが挙げられる。
アルコール系の変性剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、メチルセロソルブ、シクロヘキサノール等があり、フェノール系の変性剤としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ノニルフェノール等が挙げられる。活性メチレン系の変性剤としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等があり、酸アミド系の変性剤としては、アセトアニリド、酢酸アミド、カプロラクタム、γ−ブチロラクタム等があり、イミダゾール系の変性剤としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール等が挙げられる。尿素系の変性剤としては、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等があり、オキシム系の変性剤としては、ホルムアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等があり、ピリジン系の変性剤としては、2−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシキノリン等が挙げられる。
<変性剤の合成>
上記に列挙したような有機ポリイソシアネート化合物とマスキング剤とを反応させることで、本発明で用いる、少なくとも一個の遊離イソシアネート基を有し、かつ、他はマスキングされたイソシアネート基を有する変性剤を合成する。具体的な合成方法は特に限定されないが、例えば、上記の如きマスキング剤と上記有機ポリイソシアネート化合物とを、1分子中でイソシアネート基が一個以上過剰になる官能基比で、有機溶媒および触媒の存在下または不存在下で、0〜150℃、好ましくは20〜80℃の温度で30分〜3時間反応させることによって、本発明で使用する変性剤を容易に得ることができる。
(ポリヒドロキシポリウレタン樹脂)
本発明では、上記したような特定の変性剤によってポリヒドロキシポリウレタン樹脂を変性してなる自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を用いるが、その際に用いるポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、例えば、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応によって容易に得られる。以下に、この場合に用いる各成分について説明する。
<5員環環状カーボネート化合物>
本発明で使用する5員環環状カーボネート化合物は、下記[式−A]で示されるように、エポキシ化合物と二酸化炭素とを反応させて製造することができる。さらに詳しくは、エポキシ化合物を有機溶媒の存在下又は不存在下および触媒の存在下、40℃〜150℃の温度で、常圧または僅かに高められた圧力下、10〜20時間二酸化炭素と反応させることによって得ることができる。
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上記で使用するエポキシ化合物としては、例えば、下記の如き化合物が挙げられる。
Figure 0005653891
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以上列記したエポキシ化合物は、本発明において使用する好ましい化合物であって、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。従って、上述の例示の化合物のみならず、その他、現在市販されており、市場から容易に入手し得る化合物は、いずれも本発明において使用することができる。
上記したようなエポキシ化合物と二酸化炭素の反応において使用される触媒としては、塩基触媒およびルイス酸触媒が挙げられる。
塩基触媒として、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第三級アミン類、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロオクタン、ピリジン等の環状アミン類、リチウムクロライド、リチウムブロマイド、フッ化リチウム、塩化ナトリウム等のアルカリ金属塩類、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩類、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム塩類、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩類、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸銅、酢酸鉄等の金属酢酸塩類、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物、テトラブチルホスホニウムクロリド等のホスホニウム塩類が挙げられる。
ルイス酸触媒としては、テトラブチル錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫オクトエート等の錫化合物が挙げられる。
上記触媒の量は、エポキシ化合物50質量部当たり、0.1〜100質量部、好ましくは0.3〜20質量部とすればよい。上記使用量が0.1質量部未満では、触媒としての効果が小さく、100質量部を超えると最終樹脂の諸性能を低下させる場合があるので好ましくない。しかし、残留触媒が重大な性能低下を引き起こすような場合は、純水で洗浄して除去する構成としてもよい。
エポキシ化合物と二酸化炭素の反応において、使用できる有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。また、これら有機溶剤と他の貧溶剤、例えば、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン等の混合系で使用してもよい。
本発明で、用いるポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、下記[式−B]で示されるように、上記のようにして得られた5員環環状カーボネート化合物と、アミン化合物とを、有機溶媒の存在下、20℃〜150℃の温度下で反応させることで得ることができる。
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<アミン化合物>
上記反応に使用するアミン化合物としては、ジアミンが好ましく、従来ポリウレタン樹脂の製造に使用されているものがいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン;1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、1,4’−ジアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環族ジアミン;モノエタノールジアミン、エチルアミノエタノールアミン、ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン等のアルカノールジアミンが挙げられる。さらに、その他現在市販されており、市場から容易に入手し得るアミン化合物は、いずれも本発明において使用することができる。
(自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂)
<合成方法>
本発明で使用する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、それぞれ上述のような、変性剤と、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂とを反応させることによって得られる。詳しくは、上記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂中の水酸基と、該変性剤中の少なくとも一個の遊離したイソシアネート基が反応することによって得られる。
本発明で使用する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の変性剤による変性率は、2〜60%の変性率であることが好ましい。変性率が2%未満であると、十分な架橋による耐久性やコントラスト等が劣るおそれがあるので好ましくない。一方で、60%を超えると、解離したイソシアネート基が反応せずに残存する可能性が増すので、好ましくない。なお、変性率は下記のようにして算出する。
変性率(%)={1−(変性後の樹脂の水酸基÷変性前の樹脂の水酸基)}×100
変性剤とポリヒドロキシポリウレタン樹脂との反応は、有機溶媒および触媒の存在下または不存在下で、0〜150℃、好ましくは20〜80℃の温度で、30分〜3時間反応させることが好ましく、これによって本発明に好適な自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が容易に得られる。但し、反応時にはマスキング剤の解離温度より低い温度で反応させる点に注意し、合成された自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、その構造中にマスキングされたイソシアネート基を有するものとなるようにしなければならない。
<物性>
上記のようにして得ることができる本発明で使用する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、その数平均分子量(GPCで測定した標準ポリスチレン換算値)が、2,000〜100,000程度であることが好ましい。より好ましくは5,000〜70,000である。
また、本発明で使用する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の水酸基含有量は、水酸基価20〜300mgKOH/gであることが好ましい。水酸基含有量が上記範囲未満であると、二酸化炭素削減効果が不足であり、一方、上記範囲を超えると、高分子化合物としての諸物性不足となるので好ましくない。
(その他のバインダー樹脂)
また、本発明を特徴づける可逆性感熱記録層の形成に際しては、上記した自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を、その母材に用いることを要するが、形成の際に用いる樹脂組成物としては、上記に加えて、その他のバインダー樹脂を用いてもよい。すなわち、感熱記録層を形成する基材に対するコーティング適正や、成膜性の向上およびコントラストの調整等のために、感熱記録層を形成するための樹脂組成物中には、従来公知の各種バインダー樹脂を混合して使用してもよい。混合使用する他の樹脂としては、本発明で必須とする自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂中のマスキング剤が解離して生成するポリイソシアネート基と、化学的に反応し得るものであることが好ましい。しかし、これに限定されず、反応性を有していない樹脂であっても、目的に応じて適宜に、上述した自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂と併用することができる。
自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂と併用できるその他のバインダー樹脂としては、従来から用いられている各種樹脂が使用でき、特に限定されない。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−アクリレート共重合体等の塩化ビニル系共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の塩化ビニリデン系共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリレート又はポリメタクリレート或いはアクリレート−メタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で或いは2種以上混合してもよい。
[可逆性感熱記録層の母材に分散される有機低分子物質]
本発明の可逆性感熱記録材料を特徴づける可逆性感熱記録層は、上述した自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を含む高分子樹脂を母材とし、該母材中に有機低分子物質が分散されてなる。すなわち、有機低分子物質は、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を主成分とする母材中に粒子状に分散された状態で存在するが、その粒径は、およそ0.1〜2μmの範囲に分布するものであることが好ましい。本発明で使用する有機低分子物質としては、一般的には、ワックス、或いはロウと呼ばれ、室温においては固体状であり、炭素数10〜60程度の長鎖アルキル基を含む化合物や、長鎖アルキル基からなる脂肪酸や、アルコール、エステル、アミド、ケトン、エーテル、チオエーテル或いはアミン等が好ましい。
より具体的には、ラウリン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、ヘンエイコサン酸、トリコサン酸、グリノセリン酸、ペンタコサン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ノナデカン酸、オレイン酸のような高級脂肪酸化合物;ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、C30アルコールのような高級アルコール化合物;ラウリン酸オクタデシル、パルチミン酸テトラデシル、ベヘン酸ドデシル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸テトラデシル、ステアリン酸オクタデシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ベヘニル、ベヘニン酸ベヘニル、モンタン酸ベヘニル、ステアリン酸C30アルコールエステル、ベヘニン酸C30アルコールエステルのような高級脂肪酸エステル化合物;パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルパルチミン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミドのようなアミド化合物;ジステアリルケトン、ジベヘニルケトンのようなケトン化合物が挙げられ、これらを使用することができる。
さらには、下記のような高級脂肪族エーテル、高級脂肪族チオエーテル、或いは高級脂肪族アミン等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例えば、C1633−O−C1633
1633−S−C1633、C1837−S−C1837、C1225−S−C1225、C1939−S−C1939
1225−S−S−C1225
1123−OCO−CH2CH2−O−CH2CH2−OCO−C1123
1735−OCO−CH2CH2−O−CH2CH2−OCO−C1735
1225−OCO−CH2CH2−S−CH2CH2−OCO−C1225
1837−OCO−CH2CH2−S−CH2CH2−OCO−C1837
1837−OCO−CH2CH2−NH−CH2CH2−OCO−C1837等が挙げられる。これら長鎖アルキル基含有化合物は、単独で使用してもよいが、2種以上を混合して使用することもできる。
また、上記に挙げたような有機低分子物質(以下、これを低融点有機低分子物質という場合がある)に、それよりも融点の高い有機低分子物質(以下、これを高融点有機低分子物質という場合がある)を添加することも有効である。すなわち、このようにすれば、透明化の温度幅を広げることができる。この際に使用する高融点有機低分子物質としては、融点が80℃〜180℃の物質が好ましく、特に90℃〜160℃の範囲の融点を有する飽和脂肪族ビスアミドや飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましい。具体的なものとしては、下記に挙げるようなものが使用できる。
例えば、飽和脂肪族ビスアミドとしては、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、N,N−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N−ジステアリルエイコサンジ酸アミド、N,N−ジステアリルセバシンジ酸アミド、N,N−ジラウリルドデカンジ酸アミド、N,N−ジステアリルドデカンジ酸アミド等が挙げられる。
また、飽和脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、ピロリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジ酸、ドデカンジ酸、トリデカンジ酸、テトラデカンジ酸、ペンタデカンジ酸、ヘキサデカンジ酸、ペプタデカンジ酸、オクタデカンジ酸、ノナデカンジ酸、エイコサンジ酸等が挙げられる。
しかしながら、これらに限定されるものではなく、前記以外のビスアミド、ジカルボン酸、飽和脂肪酸モノアミド、メチロール酸アミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、芳香族系ビスアミド等の高融点有機低分子物質を使用することもできる。さらに、これら高融点有機低分子物質は、1種使用してもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
有機低分子物質として、上記低融点有機低分子物質と高融点有機低分子物質とを用いる場合の配合割合は、質量比で99:1〜45:55の範囲であることが好ましい。この範囲外では透明化温度幅の拡大効果が得られないだけでなく、透明化状態と白濁化状態のコントラスト不足となる場合があるので好ましくない。
また、感熱記録層中の有機低分子物質と高分子樹脂の割合は、質量比で1:1〜1:10が好ましい。高分子樹脂の比率がこれ以下になると感熱記録層としての膜に形成することが困難となり、またこれ以上になると、有機低分子物質が少ないために、不透明時(白濁化状態)のコントラストが低下する場合があるので好ましくない。
[その他の添加物]
さらに、上記したような材料からなる可逆性感熱記録層には、必要に応じて、滑剤、帯電防止剤、可塑剤、分散剤、安定剤、界面活性剤、無機或いは有機の充填剤等を配合してもよい。
[可逆性感熱記録層の膜厚]
可逆性感熱記録層の膜厚は通常1〜40μmであり、好ましくは2〜20μmである。感熱記録層が厚すぎると層内での熱の分布が発生し好ましくない。一方、感熱記録層がこれより薄いと白濁度が低下してしまい、コントラストが低下してしまうため好ましくない。
[中間層]
また、本発明の可逆性感熱記録材料には、必要に応じて各種中間層を設けることができる。該中間層は、一層であっても多層の組み合わせからなるものであってもよく、本発明の効果の範囲内であれば、必要に応じて適宜設けることができ、例えば、意匠性を目的とした印刷層や着色層さらには耐熱保護層等の各種の機能性層を設けることができる。この場合の印刷層や着色層は従来公知の材料が使用でき、また耐熱保護層に使用する材料としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂や、UV硬化型樹脂、EB硬化型樹脂が用いられる。
[その他の層]
さらに、本発明の効果の範囲内であれば、基材と感熱記録層との間に、情報を記録する磁気記録層や、感熱記録層の透明化状態と白濁化状態とのコントラストを向上させるため、基材上に金属蒸着等の反射層を設けることもできる。さらには基材及び感熱記録層や各種中間層の接着性を高める接着層を設けることもできる。そして、最上層には、サーマルヘッドによる表面のキズ及びヘッド滓付着防止の目的で滑性保護層が設けることが好ましい。
[基材]
本発明の可逆性感熱記録材料を構成する基材としては、プラスチックフィルム、ガラス板、金属板、紙のようなものが使用でき、様々な厚さのものが可能である。また、それらの表面または裏面に着色被覆層を設けたもの、着色顔料を混練したプラスチックフィルム等が使用できる。さらに、プラスチックフィルムに金属蒸着等の反射層を設けたものも使用可能である。
本発明の可逆性感熱記録材料は、基材の少なくとも一方の面に設けた可逆的感熱記録層の母材となる高分子樹脂に、特有の自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を用いているため、その耐久性が向上し、サーマルヘッド等の発熱体によって熱を加えて画像形成及び消去を繰り返した場合に生じていた透明部と不透明部とのコントラストの低下が抑制され、継続して良好な画像形成が可能となる。また、本発明で使用する樹脂を構成する5員環環状カーボネート化合物は、二酸化炭素を製造原料とできるので、樹脂中に二酸化炭素を取り入れることができる。このため、本発明の可逆性感熱記録材料は、二酸化炭素の削減に寄与でき、地球環境保全の観点からも有用な環境対応製品の提供が可能になる。
次に、具体的な製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。又、以下の各例における「部」および「%」は特に断りのない限り質量基準である。なお、赤外吸収スペクトルは、赤外分光分析装置FT−720(堀場製作所製)によって測定した。
<製造例1>(変性剤の製造)
トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物[コロネートHL(商品名)、日本ポリウレタン社製、NCO=12.9%、固形分75%]100部、酢酸エチル24.5部を100℃でよく撹拌しながら、ε−カプロラクタム25.5部を添加し、5時間反応させた。得られた変性剤の赤外吸収スペクトルによれば、2,270cm-1に、遊離イソシアネート基に起因する吸収は残っていた。また、この遊離イソシアネート基を定量すると、固形分50%で理論値が2.1%であるのに対し、実測値は1.8%であった。
上記で合成した変性剤の主たる構造は、下記式と推定される。
Figure 0005653891
<製造例2>(変性剤の製造)
ヘキサメチレンジイソシアネートと水の付加体[ジュラネート24A−100(商品名)、旭化成社製、NCO=23.0%]100部、酢酸エチル132部を80℃でよく撹拌しながら、メチルエチルケトオキシム32部を添加し、5時間反応させた。得られた変性剤の赤外吸収スペクトルによれば、2,270cm-1に遊離イソシアネート基による吸収は残っていた。この遊離イソシアネート基を定量すると、固形分50%で理論値が2.9%であるのに対し、実測値は2.6%であった。
上記で合成した変性剤の主たる構造は、下記式と推定される。
Figure 0005653891
<製造例3>(変性剤の製造)
トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネート3量体付加物[コロネートL(商品名)、日本ポリウレタン社製、NCO=12.5%、固形分75%]100部、酢酸エチル67.3部を80℃でよく撹拌しながら、メチルエチルケトオキシム17.3部を添加し、5時間反応させた。得られた変性剤の赤外吸収スペクトルによれば、2,270cm-1に遊離イソシアネート基による吸収は残っていた。この遊離イソシアネート基を定量すると、固形分50%で理論値が2.3%であるのに対し、実測値は2.0%であった。
上記で合成した変性剤の主たる構造は下記式と推定される。
Figure 0005653891
<製造例4>(5員環環状カーボネート化合物の製造)
撹拌機、温度計、ガス導入管および還流冷却器を備えた反応容器中に、下記式Aで表される2価エポキシ化合物[エピコート828(商品名)、ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ当量187g/mol]100部、N−メチルピロリドン100部、ヨウ化ナトリウム1.5部を加えて均一に溶解させた。
Figure 0005653891
その後、炭酸ガスを0.5リッター/分の速度でバブリングしながら、80℃で30時間加熱撹拌させた。反応終了後、得られた溶液を300部のn−ヘキサン中に300rpmで高速撹拌しながら徐々に添加し、生成した粉末状生成物をフィルターでろ過、さらにメタノールで洗浄し、N−メチルピロリドン及びヨウ化ナトリウムを除去した。粉末を乾燥機中で乾燥し、白色粉末の5員環環状カーボネート化合物(1−A)118部(収率95%)を得た。
得られた生成物(1−A)の赤外吸収スペクトルは、910cm-1付近のエポキシ基由来のピークが、生成物ではほぼ消滅し、1,800cm-1付近に原料には存在しない環状カーボネート基のカルボニル基の吸収が確認された。また、生成物の数平均分子量は414(ポリスチレン換算、東ソー;GPC−8220)であった。得られた5員環環状カーボネート化合物(1−A)中には、19%の二酸化炭素が固定化されていた。
<製造例5>(5員環環状カーボネート化合物の製造)
製造例4で用いた2価エポキシ化合物Aの代わりに、下記式Bで表される2価エポキシ化合物[YDF−170(商品名)、東都化成(株)社製、エポキシ当量172g/mol]を使い製造例4と同様に反応させて、白色粉末の5員環環状カーボネート化合物(1−B)121部(収率96%)を得た。
Figure 0005653891
生成物は、製造例4と同様に、赤外吸収スペクトル、GPC、NMRで確認した。得られた5員環環状カーボネート化合物(1−B)中には、20.3%の二酸化炭素が固定化されていた。
<重合例1>(自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の製造)
撹拌機、温度計、ガス導入管および還流冷却器を備えた反応容器を窒素置換し、これに製造例4で得られた5員環環状カーボネート化合物(1−A)100部を、固形分が35%になるようにN−メチルピロリドンを加え均一に溶解した。次に、ヘキサメチレンジアミン27.1部を加え、90℃の温度で10時間撹拌し、ヘキサメチレンジアミンが確認できなくなるまで反応させた。次に、製造例1で得た変性剤20部(固形分50%)を添加し、90℃で3時間反応させた。赤外吸収スペクトルによるイソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂溶液を得た。
<重合例2〜4>(自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の製造)
以下、表1に記載の通り、5員環環状カーボネート化合物、ポリアミン化合物、変性剤を組み合わせて、重合例1と同様の方法で反応させて、重合例2〜4の自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂溶液を得た。得られた樹脂の物性を表1に示した。
Figure 0005653891
<比較樹脂例1>(ポリエステルポリウレタン樹脂の製造)
下記のようにして、比較例で用いるポリエステルポリウレタン樹脂を合成した。撹拌機、温度計、ガス導入管および還流冷却器を備えた反応容器を窒素置換し、平均分子量約2,000のポリブチレンアジペート150部と、1,4−ブタンジオール15部とを、200部のメチルエチルケトンと50部のジメチルホルムアミドからなる混合有機溶剤中に溶解した。その後、60℃でよく撹拌しながら、62部の水添加MDI(メチレンビス(1,4−シクロヘキサン)−ジイソシアネート)を、171部のジメチルホルムアミドに溶解したものを徐々に滴下し、滴下終了後80℃で6時間反応させた。この溶液は固形分35%で、3.2MPa・s(25℃)の粘度を有していた。
<比較樹脂例2>
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(日信化学製)35部を、テトラヒドロフラン65部に溶解し、固形分35%の樹脂溶液を得た。
<比較樹脂例3>
塩素化ポリオレフィン樹脂(日本製紙ケミカル製)35部を、テトラヒドロフラン70部に溶解し、固形分35%の樹脂溶液を得た。
<実施例1>
上記重合例で得た樹脂をそれぞれに用いて、下記の方法で、基材上に、感熱記録層、耐熱保護層(中間層)、滑性保護層をこの順で形成し、実施例及び比較例の可逆性感熱記録材料を作製した。なお、基材としては、188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、0.1μm厚のアルミ層を真空蒸着法により形成した金属反射基材を用いた。
[感熱記録層の形成]
母材として重合例1で得た自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を用いた下記配合の溶液を調製した。そして、調製した溶液を、上記した金属反射基材上にワイヤーバーを用いて塗布した後、140℃にて4分間加熱乾燥して、厚みが12μmの感熱記録層を形成した。該感熱記録層は、75〜108℃の温度範囲で透明となる透明度が可逆的に変化し得るものであった。
(感熱記録層塗料組成;透明化温度範囲75〜108℃)
重合例1で得た樹脂(固形分35%) 100部
ステアリン酸 10部
エイコサン2酸 4部
フタル酸ジ−2エチルヘキシル 2部
テトラヒドロフラン 170部
<実施例2>
下記配合の溶液を調製して用いた以外は実施例1と同様にして、金属反射基材上に感熱記録層を形成した。なお、感熱記録層の透明化温度範囲は実施例1と同様である。
重合例2で得た樹脂(固形分35%) 100部
ステアリン酸 10部
エイコサン2酸 4部
フタル酸ジ−2エチルヘキシル 2部
テトラヒドロフラン 170部
<実施例3>
下記配合の溶液を調製して用いた以外は実施例1と同様にして、金属反射基材上に感熱記録層を形成した。なお、感熱記録層の透明化温度範囲は実施例1と同様である。
重合例3で得た樹脂(固形分35%) 100部
ステアリン酸 10部
エイコサン2酸 4部
フタル酸ジ−2エチルヘキシル 2部
テトラヒドロフラン 170部
<実施例4>
下記配合の溶液を調製して用いた以外は実施例1と同様にして、金属反射基材上に感熱記録層を形成した。なお、感熱記録層の透明化温度範囲は実施例1と同様である。
重合例4で得た樹脂(固形分35%) 100部
ステアリン酸 10部
エイコサン2酸 4部
フタル酸ジ−2エチルヘキシル 2部
テトラヒドロフラン 170部
<比較例1>
下記配合の溶液を調製して用いた以外は実施例1と同様にして、金属反射基材上に感熱記録層を形成した。
比較樹脂例1で得た樹脂(固形分35%) 100部
ステアリン酸 10部
エイコサン2酸 4部
フタル酸ジ−2エチルヘキシル 2部
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン、コロネートHL) 5部
テトラヒドロフラン 180部
<比較例2>
下記配合の溶液を調製して用いた以外は実施例1と同様にして、金属反射基材上に感熱記録層を形成した。
比較樹脂例2で得た樹脂(固形分35%) 100部
ステアリン酸 10部
エイコサン2酸 4部
フタル酸ジ−2エチルヘキシル 2部
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン、コロネートHL) 5部
テトラヒドロフラン 180部
<比較例3>
下記配合の溶液を調製して用いた以外は実施例1と同様にして、金属反射基材上に感熱記録層を形成した。
比較樹脂例3で得た樹脂(固形分35%) 100部
ステアリン酸 10部
エイコサン2酸 4部
フタル酸ジ−2エチルヘキシル 2部
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン、コロネートHL) 5部
テトラヒドロフラン 180部
[耐熱保護層の形成]
次に、上記した実施例及び比較例でそれぞれ形成した感熱記録層の上に、さらに、下記のようにして中間層である耐熱保護層を形成した。具体的には、アクリル系紫外線硬化樹脂(大日精化工業製)を、乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布した後、紫外線を500mJ/cm2照射して、耐熱保護層を形成した。
[滑性保護層の形成]
さらに、上記耐熱保護層の上に、下記のようにして、最上層である滑性保護層を形成して、実施例及び比較例の各可逆性感熱記録材料とした。滑性保護層は、ポリシロキサン変性ポリウレタン樹脂(大日精化工業製)を用いて、乾燥後の厚みが1.0μmとなるよう塗布して形成した。
<評価>
以上のようにして得られた実施例1〜4及び比較例1〜3の各可逆性感熱記録材料について、ライン型サーマルヘッド(8dot/mm)を用いて画像形成を行い、熱板圧着方式(熱板温度;100〜105℃)にて初期の印字、消去特性を評価した。そして、この画像を消去する操作を100回繰り返し、耐久性を、下記の方法及び基準で評価した。
(耐久性)
コントラスト;(地肌濃度−印字濃度)が1.0以下を×とした。なお、測定は、マクベス反射濃度計(RD−914)で測定した。
(環境対応度)
実施例及び比較例の可逆性感熱記録材料の「感熱記録層」の形成材料の各樹脂中における二酸化炭素の固定化の有無で、○×判断した。
Figure 0005653891
感熱記録層の母材にポリエステルポリウレタン樹脂を用いた比較例1の材料の場合は、該樹脂が感熱記録層を構成する有機低分子物質と相溶してしまうため、透明度の温度による可逆性が発現しなかった。また、比較例2及び3の材料の場合は、表1に示したように耐久性に劣っていたが、その理由は、感熱記録層の母材に用いた樹脂は、ポリイソシアネートを添加しても、使用樹脂中に反応性基がないため架橋効果が得られず、耐久性が低下したと考えられる。これに対し、各実施例で感熱記録層の母材に用いた自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、その構造中に水酸基を有しているため、マスキング剤が解離して生じたイソシアネート基との反応による架橋構造を形成し、この結果、表2に示したように耐久性が向上したと考えられる。
以上の本発明によれば、可逆性感熱記録層の母材として特定の高分子樹脂を用いることで、サーマルヘッド等の発熱体で加熱及び圧力を繰り返し加えた場合の耐久性を向上させることができ、画像形成及び消去を何回も繰り返された場合にも、透明部と不透明部とのコントラストの低下が抑制された良好な画像形成が可能な可逆性感熱記録材料が提供される。そして、この耐久性に優れた材料を利用することで、文字や画像の書き換えを継続して良好に行うことが可能となるので、当該材料を、例えば、格納された情報が変更されるICカード類等に適用した場合、随時、内容保証のための表示を、良好な状態で継続的に行うことができるようになるため、その活用が期待される。また、本発明で可逆性感熱記録層の母材として使用する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、二酸化炭素を製造原料に利用することができるため、本発明によれば、地球温暖化ガスとされている二酸化炭素削減に寄与し得る地球環境対応製品としての可逆性感熱記録材料の提供が可能となる。

Claims (4)

  1. 基材及び該基材の少なくとも一方の面に、高分子樹脂及び該高分子樹脂中に分散された有機低分子物質を主成分として含む樹脂組成物によって形成された感熱記録層を有してなる感熱記録材料であって、
    該感熱記録層が、透明度が温度によって可逆的に変化し得る可逆性感熱記録層であり、該可逆性感熱記録層を形成するための高分子樹脂が、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導された樹脂の構造中にマスキングされたイソシアネート基を有する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂であることを特徴とする可逆性感熱記録材料。
  2. 前記5員環環状カーボネート化合物が、エポキシ化合物と二酸化炭素との反応物であって、かつ、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の構造中に二酸化炭素を1〜25質量%の範囲で含んでなる請求項1に記載の可逆性感熱記録材料。
  3. 前記マスキングされたイソシアネート基は、有機ポリイソシアネート基とマスキング剤との反応生成物であって、熱処理することによりマスキングされた部分が解離されてイソシアネート基を生成し、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の構造中の水酸基と反応して自己架橋するものである請求項1又は2に記載の可逆性感熱記録材料。
  4. 前記自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導されたポリヒドロキシポリウレタン樹脂を変性剤によって変性してなるものである請求項1乃至3に記載の可逆性感熱記録材料。
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