JP5653210B2 - 酸化鉄のコロイドの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、酸化鉄のコロイドの製造方法に関する。この方法は、コロイドに優れた特性を提供するモノカルボン酸とポリカルボン酸の混合物による分散媒内の所望の酸化鉄粒子の分散を含む。この方法はまた、酸化鉄粒子の物理的形態の保持という利点を有し、酸化鉄コアの任意の所望の特性(コアのサイズおよび/もしくは形状、単分散性、結晶形態または磁性等)をコロイド内で維持させる。
本発明の方法により作製されるコロイドは、燃料バーナーまたは内燃機関の燃焼室に鉄(酸化鉄の形態)を供給して、燃焼改善を達成し、および/またはそこから排気流へ通過してその他の有益な効果をもたらし得る、液体燃料への添加剤として特に有用である。
後者の点では、コロイドは、トラップ再生の促進に好適な形態で、燃料を介してディーゼルエンジン排ガスの粒子トラップに鉄を供給する方法において、ディーゼル燃料の添加剤として特に有用である。特に、この方法は、本発明の方法により作製された酸化鉄のコロイドの、燃料への添加を含む。このコロイドの燃焼は、鉄含有化合物、特に酸化鉄を生成し、これは粒子トラップ内の炭素質粒子状物質と作用してそれを収集する。これらの鉄化合物は、周期的または連続的にこの炭素質材料の燃焼を促進し、いずれの場合もトラップ内に保持される粒子の量の低減へとつながり、長期間にわたりトラップの機能性を維持する。
従来技術の材料と比較して、本発明のコロイドは、特に、燃料噴射器上への関連した堆積物の形成が従来技術の鉄添加剤よりも低いレベルである。したがって、この方法は、特に噴射器汚損問題を倍化させると思われる金属塩が燃料内に存在する場合に、燃料噴射器堆積物の影響を益々受けやすくなっている現代のエンジンに特に好適である。コロイドはまた、特にディーゼルエンジンに搭載された注入デバイスにおいて、燃料への添加剤としての使用に優れた適合性を提供する特性のバランスを示す。特に、コロイドは、燃料における所望のレオロジーと安定性の良好なバランスを示す。
本発明の方法により作製されるコロイドは、同様に、流動触媒としての用途の鉄(酸化鉄の形態)の使用が必要とされる化学プロセスにおいて有用である。
さらに、本発明の方法は、磁性流体(「フェロ流体」と呼ばれる場合もある)または特定の結晶性形態を有する酸化鉄分散液を必要とする用途のためのコロイドの調製に有用である。酸化鉄は、様々な結晶性または非晶性形態で存在し、異なる構造は異なる特性を与える。本発明の方法は、出発材料中の酸化鉄形態を保持しながら、分散手段として、モノカルボン酸とポリカルボン酸の混合物(および好ましくはモノカルボン酸とジカルボン酸の混合物)をその中に組み込むことにより、改善された安定性を有するコロイド(すなわち、より長期間安定性を維持するコロイド分散液)の製造を可能とする。したがって、コロイドに求める所望の最終特性の点から酸化鉄の所望の形態を最初に選択することができ、本発明の方法による分散手段の組込みにより、その後分散性を改善することができる。
EP−A−1512736は、粒子トラップ再生に使用することができる、コロイド分散または可溶化された金属触媒化合物を含有するディーゼル燃料を記載している。実施例9は、「再配列」コロイドの形成を実証しており、従来技術のコロイドEolys(登録商標)176(セリウムおよび酸化鉄の混合コロイド分散液)の濃度は、それに安定剤A(ポリイソブチレンコハク酸)を添加することにより安定化されている。この文献は、本方法の反応条件については教示しておらず、分散媒中にモノカルボン酸により安定化された酸化鉄粒子からなる第1のコロイドの反応について具体的に開示しておらず、本発明ではジカルボン酸が必要である。
a)分散媒中に分散した酸化鉄粒子からなる第1のコロイドを調製する、またはその他の手法で得るステップであって、第1のコロイド内の分散手段は、1種または複数種のモノカルボン酸であるステップと、
b)第1のコロイドを、1種または複数種のポリカルボン酸化合物(またはその前駆体)およびさらに任意選択で1種または複数種のモノカルボン酸化合物からなる、1種または複数種の追加のカルボン酸と反応させ、追加のカルボン酸が分散手段として組み込まれている酸化鉄の所望のコロイドを形成するステップと
を含む、モノカルボン酸とポリカルボン酸の混合物を用いて分散媒中に分散した酸化鉄粒子からなるコロイドの製造方法であって、段階b)における反応は、第1のコロイドと追加のカルボン酸の混合、続く100℃から180℃の温度までの、1時間から10時間の撹拌下での加熱により達成され、反応は溶媒としての分散媒中で行われ、任意のポリカルボン酸前駆体が使用される場合は、該任意のポリカルボン酸前駆体のin situ加水分解を達成するために水が追加的に存在する、コロイドの製造方法。
本発明の第2の態様は、第1の態様の方法により得られるコロイドに関する。
本発明の特徴を、以下により詳細に説明する。
本発明の第1の態様の方法
本発明の方法は、2つの段階を含む。方法の段階a)は、1種または複数種のモノカルボン酸を用いて分散媒中に分散した酸化鉄粒子のコロイドの形成を含む。段階b)は、1種または複数種のポリカルボン酸化合物、さらに任意選択の追加のモノカルボン酸化合物のコロイド中への組込みによる分散手段の改善を含む。好ましくは、段階b)は、1種または複数種のジカルボン酸化合物、さらに任意選択の1種または複数種の追加のモノカルボン酸化合物のコロイド中への組込みによる分散手段の改善を含む。便宜上、ポリカルボン酸(複数可)は、その前駆体(複数可)の形態、特に無水物形態で添加され、無水物環の加水分解によりin situで酸基が生成されてもよい。
方法の段階a)において生成された第1のコロイドは、以降「分散原液」と呼ぶ。
段階a)において、コロイドコアに望ましい酸化鉄(複数可)の粒子は、例えば粉砕またはボールミルプロセスで、分散媒中で適切な形態の微粉化酸化鉄(複数可)を分散手段と混合することにより、適したモノカルボン酸分散手段中に直接分散されてもよい。
代替として、本質的に酸化鉄のマグネタイト結晶性形態からなる好ましい分散原液のために、マグネタイトをまず鉄(II)塩および鉄(III)塩の1:2の比率の混合物の水溶液から化学的に調製し、これに水酸化アンモニウムを添加して無機重縮合反応においてマグネタイトの裸のナノ粒子を形成させることができる。次いで、モノカルボン酸、例えばオレイン酸をこのナノ粒子分散液に撹拌および加熱しながら添加して、粒子を被覆させる(該粒子はフラスコ底部に沈降する)。これらのオレイン酸塩粒子は、有機溶媒中に溶解または分散させることができる。水層の上澄みを取り除き、生成物中に残留した水を、例えば共沸蒸留により除去することができる。
コロイドの最終用途に依存して、所望の酸化鉄コアは結晶性であっても非晶性であってもよいが、本発明の方法は、酸化鉄コア内の結晶構造を保持するのに特に好適である。本明細書および特許請求の範囲において、酸化鉄コアに関連して使用される「結晶性」および「非晶性」という用語は、明確な意味を有する。コロイドのX線回折において、そのコア内における明確な結晶構造または格子の存在に帰属され得る1つまたは複数の鋭いピークが観察される場合、コアは結晶性である。そのような帰属され得るピークが観察されない場合、コアは非晶性である。
コロイドの必要なX線回折を行うための好適なプロトコルは、まず、該当する液体(コロイド)をケイ素低バックグラウンド基板上に直接滴下して試料を乾燥させることにより、走査用の試料を調製することである。試料は、粘性のある粘着性フィルムを形成し、次いでこれを検査することができる。適したX線データは、Philips PW1800自動粉末X線回折装置により、40kVおよび55mAで生成された銅Kα線を使用して、1点あたり4秒の計数時間で2〜70度の2θから収集することができる。
酸化鉄自体は、その中の鉄の酸化状態(または酸化状態の混合)および曝されている条件に依存して、様々な形態で存在し得る。本明細書および特許請求の範囲において、「酸化鉄」という用語は、真の酸化鉄と、さらに当技術分野において「酸化鉄」という用語で一般に言及される水酸化鉄および水酸化酸化鉄の双方を総称的に意味するように使用される。しかし、すべての場合において、酸化鉄内には鉄以外の金属は存在せず、したがって、コロイドコアは唯一の金属として鉄からなり、存在する酸化鉄の正確な形態(複数可)に依存して酸素および/または水素と組み合わされている。
コロイド内の酸化鉄粒子は、本質的に結晶性形態(複数可)の酸化鉄からなることが好ましい。そのような結晶性形態の酸化鉄は、具体的には、酸化物であるマグネタイト(Fe34)、ヘマタイト(α−Fe23)、およびマグヘマイト(γ−Fe23)、ならびに酸化鉄(II)「ウスタイトFeO」等のその他の酸化鉄(III)形態を含む。これらの真の酸化物のうち、マグネタイト、ヘマタイト、およびマグヘマイトが好ましく、マグネタイトが最も好ましい。特に、マグネタイトおよびヘマタイトは、原鉱の形態で大量に採鉱され得る。
水酸化鉄および水酸化酸化鉄の結晶性形態は、具体的には、ゲーサイト(α−FeOOH)およびレピドクロサイト(γ−FeOOH)、ならびにδ−FeOOH(合成)およびδ’−FeOOH(鉱物)形態、フェリハイドライトFe58・4H2O、バーナライトFe(OH)3およびFe(OH)2を含む。特にゲーサイトは熱力学的に安定な形態であり、岩石または黄土堆積物中に得ることができる。レピドクロサイトは、岩石または土壌中にあり、フェリハイドライトは自然表層環境において広範囲に及んでいる。水酸化鉄および水酸化酸化鉄のうち、ゲーサイトおよびレピドクロサイト形態が最も好ましい。
好ましくは、コロイドの結晶性酸化鉄は、本質的に結晶性形態のマグネタイトからなり、任意選択でさらにより少量のヘマタイト、マグヘマイト、ゲーサイト、レピドクロサイト形態のうちの1種または複数種を組み込んでいる。本発明における使用には、マグネタイトからなるコアが最も好ましい結晶性酸化鉄の形態であり、任意選択でゲーサイトと組み合わされ、優れた磁性を有するコロイドを生成する。
特に、本発明による結晶性コロイドが燃料添加剤として使用される場合、それらは、驚くべきことに、その他の鉄源よりも低いレベルの燃料中酸化分解に関連する。したがって、結晶性コロイドは、燃料中に鉄を供給する手段を提供し、これにより、鉄の利点は、燃料酸化安定性に対する悪影響により大きく相殺されない。この利点は、石油系燃料、および石油燃料とバイオ燃料の混合物の両方において明らかである。
第1のコロイドのための分散手段は、1種または複数種のモノカルボン酸、好ましくは、8個から20個の炭素原子を含有する1種または複数種の脂肪族モノカルボン酸からなる。好ましくは、前記1種または各モノカルボン酸は、10個から18個の炭素原子を含有する。
そのような酸は、直鎖酸であっても分岐鎖酸であってもよく、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、およびオクタデカン(ステアリン)酸、ならびにこれらの混合物等の飽和直鎖酸、ネオデカン酸およびイソステアリン酸等の飽和分岐鎖酸を含み、さらに、シス−9−ヘキサデセン(パルミトレイン)酸、シス−6−オクタデセン(ペトロセリン)酸、シス−9−オクタデセン(オレイン)酸、シス−11−オクタデセン(シス−バクセン)酸、およびシス−15−テトラデセン(ネルボン)酸等のモノ不飽和酸、ならびに9,12−オクタデカジエン(リノール)酸、6,9,12−オクタデカトリエン(γ−リノール)酸、および9,12,15−オクタデカトリエン(α−リノール)酸等のポリ不飽和脂肪酸を含む。
コロイドの分散手段として、これらの酸のうち不飽和酸が好ましく、オレイン酸自体、または本質的にオレイン酸からなる混合物が最も好ましい。
代替として、分散原液は、適した供給者から商品として入手することができる。
方法の段階b)において、酸化鉄の所望のコロイドは、分散原液に対し、追加の酸化合物をコロイドに組み込むための反応を達成することにより調製される。反応の化学量論に依存して、この組込みは、ある割合の初期の分散手段(モノカルボン酸)がコロイドから置き換えられることにつながり得る。したがって、例えば、オレイン酸により分散された分散原液を、その後、1種または複数種のアルケニルコハク酸と反応させて、アルケニルコハク酸をコロイド内に組み込むことができ、分散手段としてのオレイン酸の一部またはすべてを置換することとなり得る。
段階b)の組込み反応は、分散原液および追加のカルボン酸(複数可)を、任意の好適なサイズの反応器中に装填することにより好適に行われる。好ましくは、反応器はその後窒素ガスでパージされて大気圧下で封止されてから、所望の温度で所望の期間撹拌しながら加熱される。
段階b)における反応は、100℃から180℃の温度までの、1時間から10時間の加熱により達成される。そのような条件は、有利な収率でその有利な特性が生じるように、コロイドの構造中への追加のカルボン酸の組込みをもたらす。
好ましくは、段階b)における反応は、130℃から160℃の温度までの、2時間から6時間の加熱により達成される。より好ましくは、段階b)における反応は、140℃から150℃の温度までの、3時間から4時間の加熱により達成される。そのような条件は、特に良好な収率、および特に望ましいコロイド生成物をもたらす。
方法の好ましい実施形態において、段階b)における反応は、還流なしで行われる。このために、分散媒が、段階b)における反応に使用されるその温度を超える還流温度を有することがまた好ましい。還流がないことにより、加熱段階中にコロイド構造が過剰に破壊される可能性が低減される。
方法の段階b)の間、反応器内にある程度の圧力上昇が観察され得る。
所望の反応期間の後、反応混合物の温度は低下され、所望のコロイド生成物が冷却後に反応器から排出される。濃縮された安定化コロイド分散液は、所望により、追加の分散媒で所望の%Feまで希釈されてもよい。
置き換えられた分散手段は、最終用途に依存して、所望により除去しても、または最終製品内に残留させてもよい。
段階b)において、組込み反応の進行を監視することが有利である。フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)は、コロイド中のポリカルボキシレート基の出現を観察することにより反応の進行を監視する、特に便利な方法を提供する。したがって、例えば、段階b)においてアルケニルコハク酸をポリカルボン酸として使用した場合、コロイド表面に結合したアルケニルサクシネートの形成に対応する小さなピークが、1545cm-1に出現する。
代替として、反応の進行は、標準的な化学クロマトグラフィーを用いて監視することができる。例えば、新たなコロイド種の出現は、薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用して評価することができる。経時的な反応媒体中のモノカルボン酸の存在も、そのある割合が安定化リガンドにより置き換えられる場合、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して便利に監視することができる。
代替として、反応後に熱重量分析(TGA)を使用して、使用した出発材料と比較した試料中の表面結合カルボキシレート対遊離カルボキシレートの特徴的な蒸留/分解温度を決定することにより、リガンド組込みの証拠を決定することができる。
段階b)において組み込まれた追加のカルボン酸(複数可)は、好ましくは1種または複数種のジカルボン酸からなり、好ましくは酸のうちの少なくとも1種は、8個から200個の炭素原子を含有するヒドロカルビル置換ジカルボン酸である。代替として、追加のカルボン酸は、好ましくは8個から200個の炭素原子を含有するヒドロカルビル置換ジカルボン酸である少なくとも1種のジカルボン酸と組み合わせた、8個から20個の炭素原子を含有する1種または複数種の脂肪族モノカルボン酸からなる。
一般に、段階b)において使用されるポリカルボン酸(複数可)、特に段階b)において好ましく使用されるジカルボン酸(複数可)は、反応混合物中に前駆体形態で便利に添加され、その後反応器内でin situで生成されて、所望のコロイドの形成を可能とすることができる。したがって、ポリカルボン酸の好ましい特徴に関する本明細書における教示は、明示的に記述された酸形態と、さらにその前駆体、具体的にはその無水物の両方に適用されると理解されたい。必要となる加水分解は、ステップb)において反応混合物に水を同時に添加することにより容易に達成される。
第1の、より好ましい実施形態において、段階b)において使用される追加のカルボン酸(複数可)は、8個から200個の炭素原子を含有する1種または複数種のヒドロカルビル置換ジカルボン酸からなる。好ましくは、前記1種または各ヒドロカルビル置換ジカルボン酸は、ヒドロカルビル置換コハク酸、より好ましくはアルケニルまたはポリアルケニルコハク酸、好ましくはポリアルケニルコハク酸である。
本明細書および特許請求の範囲内で使用される場合、「ヒドロカルビル置換基」という用語は、炭化水素の特徴を有し、炭素および水素原子(ならびに任意選択で、酸素、窒素および硫黄等のヘテロ原子、ただしそのようなヘテロ原子の存在は、置換基の炭化水素の特徴に影響せず、またコロイドの表面上のカルボキシレート基と競合し得る追加の官能基を提供しない)からなる一価の化学置換基を意味する。ジカルボン酸の好ましい実施形態のそれぞれにおいて、ヒドロカルビル置換基は炭素および水素原子(のみ)からなり、ヒドロカルビル置換基は、好ましくは一価飽和(すなわちアルキル)置換基、またはより好ましくは、モノもしくはポリ不飽和置換基、例えばアルケニルである。分岐鎖置換基が好ましい。
そのようなヒドロカルビル置換基の好ましい最大サイズは、160個の炭素原子、好ましくは80個炭素原子である。好ましくは、置換基は、少なくとも12個の炭素原子、より好ましくは少なくとも18個の炭素原子を含有する。18個から80個の炭素原子を含有する分岐鎖置換基、特にアルケニルまたはポリアルケニル置換基が、最も好ましい。
好ましくは、ヒドロカルビル置換ジカルボン酸の混合物が使用される。より好ましくは、混合物は、ジカルボン酸の混合物であり、各酸がアルケニル−またはポリアルケニル置換コハク酸であり、混合物は、好ましくは18個から80個の炭素原子を含有する、1つのみの分岐鎖ポリアルケニル置換基を有するコハク酸から本質的になる(より好ましくは該コハク酸からなる)のが好ましい。
この後者の好ましい実施形態において、各コハク酸上の置換基は、重合オレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、または(好ましくは)、ポリイソブテン等のポリブチレンから得ることができる。好ましい置換基は、450から2250、好ましくは750から1300の範囲内の数平均分子量(ポリスチレン標準試料と比較したゲル透過クロマトグラフィー(「GPC」)により測定される)のポリイソブテンから得られる。そのようなポリイソブテンは、当技術分野において知られた従来の重合技術により作製することができ、その後周知の塩素化または熱反応経路により無水マレイン酸に結合させて好ましいポリイソブテニル−コハク酸(複数可)を生成することができる。
本発明のさらなる好ましい実施形態は、分散手段が、構造(I):
Figure 0005653210
(式中、xおよびyは、その和が9から29、好ましくは11から21、より好ましくは11または13である独立した整数である)から得られる1種または複数種の脂肪族置換コハク酸からなるものである。そのような材料の混合物もまた、異なる鎖長の内部オレフィンの混合物のマレイン化から、または同じ鎖長の内部オレフィンの異性体混合物のマレイン化から得ることができる。内部オレフィンは、無水マレイン酸との反応の前に、末端オレフィンの酸性触媒異性化によりin situで生成することができる。
第2の、比較的好ましくない本発明の実施形態において、段階b)において使用される追加のカルボン酸(複数可)は、8個から20個の炭素原子を含有する1種または複数種のモノカルボン酸と組み合わせた、8個から200個の炭素原子を含有する1種または複数種のヒドロカルビル置換ジカルボン酸からなる。この実施形態において、ヒドロカルビル置換ジカルボン酸に関して前述した好ましい実施形態を、上述のモノカルボン酸のうちの1種または複数種と好適に組み合わせることができる。
したがって、8個から20個の炭素原子を含有する1種または複数種のモノカルボン酸を、8個から200個の炭素原子を含有する1種または複数種のヒドロカルビル置換ジカルボン酸と組み合わせることができ、前記1種または各ヒドロカルビル置換ジカルボン酸は、好ましくはヒドロカルビル置換コハク酸、より好ましくはアルケニルコハク酸、または最も好ましくはポリアルケニルコハク酸である。
そのような混合物において、そのようなヒドロカルビル置換基の好ましい最大サイズは、160個の炭素原子、好ましくは80個の炭素原子である。好ましくは、置換基は、少なくとも12個の炭素原子、より好ましくは少なくとも18個の炭素原子を含有する。18個から80個の炭素原子を含有する分岐鎖置換基、特にアルケニルまたはポリアルケニル置換基が、最も好ましい。
好ましくは、そのような混合物において、ヒドロカルビル置換ジカルボン酸の混合物が使用される。より好ましくは、混合物中の各酸はアルケニル−またはポリアルケニル置換コハク酸であり、混合物は、好ましくは18個から80個の炭素原子を含有する、1つのみの分岐鎖ポリアルケニル置換基をそれぞれ有するコハク酸から本質的になる(より好ましくは該コハク酸からなる)。
この後者の好ましい実施形態において、各コハク酸上の置換基は、重合オレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、または(好ましくは)、ポリイソブテン等のポリブチレンから得ることができる。好ましい置換基は、450から2250、好ましくは750から1300の範囲内の数平均分子量(ポリスチレン標準試料と比較したゲル透過クロマトグラフィー(「GPC」)により測定される)のポリイソブテンから得られる。そのようなポリイソブテンは、当技術分野において知られた従来の重合技術により作製することができ、その後周知の塩素化または熱反応経路により無水マレイン酸に結合させて好ましいポリイソブテニル−コハク酸(複数可)を生成することができる。
さらなる好ましい実施形態は、1種または複数種のカルボン酸と組み合わせて、構造(I):
Figure 0005653210
(式中、xおよびyは、その和が9から29、好ましくは11から21、より好ましくは11または13である独立した整数である)から得られる1種または複数種の脂肪族置換コハク酸を使用することにより得られるものである。そのような材料の混合物もまた、異なる鎖長の内部オレフィンの混合物のマレイン化から、または同じ鎖長の内部オレフィンの異性体混合物のマレイン化から得ることができる。内部オレフィンは、無水マレイン酸との反応の前に、末端オレフィンの酸性触媒異性化によりin situで生成することができる。
したがって、この実施形態において、段階b)において使用される追加のカルボン酸は、10個から18個の炭素原子を含有する1種または複数種の脂肪族モノカルボン酸と組み合わせた、1種または複数種のポリアルケニル置換コハク酸からなる。
好ましい実施形態において、段階b)において使用される追加のカルボン酸は、オレイン酸および1種または複数種のポリイソブテニルコハク酸からなり、そのポリイソブテニル基(複数可)が、450から2300の数平均分子量(ポリスチレン標準試料と比較したゲル透過クロマトグラフィーにより測定される)を有する。
最も好ましくは、本発明の第2の実施形態において、段階b)において使用される追加のカルボン酸は、10個から18個の炭素原子を含有する1種または複数種の脂肪族モノカルボン酸と組み合わせた、1種または複数種のポリイソブテニル置換コハク酸からなる。オレイン酸と、ポリイソブチレン置換基が700から1300の範囲、具体的には900〜1000の範囲内の数平均分子量(GPCにより測定される)を有するポリイソブチレン置換コハク酸の混合物との組合せが好ましい。
第1および第2の実施形態の両方において、上記ヒドロカルビル置換ジカルボン酸、および、さらに存在する場合には、上記モノカルボン酸は、結晶性形態(複数可)の酸化鉄から本質的になる、特にマグネタイトから本質的になる粒子の分散手段を形成する。
本発明の好ましい特徴は、最終コロイド中の総カルボン酸(複数可):鉄(酸化合物(複数可)の総重量:酸化鉄粒子内に含有される元素鉄の重量として測定される)の重量比である。コロイド中の総カルボン酸(複数可):鉄の重量比は、最終コロイドの特性の制御、ひいては特定の最終用途への適合性に関連する。
特に、酸化合物(複数可)の総重量:酸化鉄粒子内に含有される元素鉄の重量として測定される、最終コロイド中の総カルボン酸(複数可):鉄の重量比は、好ましくは6:1から1:4の範囲内である。好ましくは、この重量比は、4:1から1:2、より好ましくは2:1から1:2の範囲内である。最も好ましくは、この重量比は、1.5:1から1:2の範囲内である。
本発明の方法に関して、この重量比は、方法の2つの段階にわたり使用される鉄(酸化鉄出発材料内)およびカルボン酸の相対的割合の関数である。したがって、所望の重量比は、これらの3つの変数の適切な選択により達成することができる。
この方法において、方法の段階a)において使用されるモノカルボン酸(複数可):鉄の重量比が0.2:1から0.6:1の範囲内である場合、特に良好な結果が得られている。好ましくは、この重量比は0.4:1である。
同様に、方法の段階b)において使用される追加のカルボン酸(複数可):鉄の重量比が0.5:1から3:1の範囲内である場合、特に良好な結果が得られている。好ましくは、この重量比は1:1から2:1、より好ましくは1:1である。
より好ましくは、この方法において、方法の段階a)において使用される鉄に対するモノカルボン酸(複数可)の重量比は、0.2:1から0.6:1の範囲内、特に0.4:1であり、方法の段階b)において使用される鉄に対する追加のカルボン酸(複数可)の重量比は、0.5:1から3:1、好ましくは1:1から2:1の範囲内、特に1:1である。
最終コロイド中の総カルボン酸(複数可):鉄の重量比は、いくつかの特性を左右する。特に、カルボン酸(複数可):鉄の重量比が低下すると最終コロイドの粘度が低下する。したがって、より低い比率は、より低粘度の特徴を有するコロイドを提供し、低粘度生成物を必要とする用途により好適である。逆に、より高粘度の用途では、より高い比率の生成物が好ましい。
しかし、有機媒体内のコロイドの安定性は、逆の傾向を辿る。したがって、コロイド中のカルボン酸(複数可):鉄の重量比を増加させると、その安定性が改善される。逆に、この比率を低下させると安定性に悪影響を与え、有機媒体中におけるより望ましくない物理的挙動がもたらされる。
本発明に対して定義された比率の範囲は、これらの特性の最適なバランスを提供する。6:1から1:4の広い範囲内において、当業者は、そこから所与の状況に合った最適なバランスを有する材料を選択することができる有用なコロイド組成物の大まかな範囲を得ることができる。
コロイド中、酸化鉄粒子は、添加剤としての使用に好適な濃縮形態を提供するように分散媒中に分散している。
コロイドは、最終用途に望ましい様々な濃度レベルに作製することができる。そのような濃縮物において、コロイドは、典型的には、コロイドの重量あたり、40重量%まで、好ましくは5重量%から20重量%の間、より好ましくは15重量%から25重量%の鉄を含有する濃度で存在する。
コロイドに好適な分散媒は、市販の混合芳香族溶媒SolvessoおよびShellsol等の芳香族溶媒、ならびにIsopar Lを含むイソアルカン等の脂肪族溶媒を含む。添加剤の技術分野において知られたその他の好適な溶媒、例えばNorpar(ペンタン)、Exxsol(脱芳香化炭化水素流体)、Nappar(ナフテン酸)、Varsol(非脱芳香化炭化水素流体)、キシレン、およびHAN 8080(芳香族溶媒)等が使用されてもよい。
最終コロイドが添加剤として燃料中に使用される場合、燃料中1ppmから200ppmの間、好ましくは2ppmから100ppmの間、より好ましくは3ppmから50ppmの鉄を提供するのに十分な、燃料中コロイド濃度が有用である(ここで「ppm」は、燃料の重量あたりの元素鉄の重量百万分率である)。
一般に、燃料中の鉄のレベルが高いほど触媒活性がより高くなるが、加えて鉄含有化合物(複数可)の質量がより大きくなり、これは、燃焼された場合に「灰」を生成し、排ガス規制目的で測定される全体的な粒子質量に寄与する。したがって、特定のエンジンに対する最適鉄濃度は、典型的には、必要な触媒特性が得られる最低濃度である。鉄コロイドは、燃焼改善と、燃焼デバイスに粒子トラップが装着されている場合には、トラップ内で高い触媒活性を有する鉄含有化合物の形成の両方をもたらすことが、本発明のさらなる利点である。
本出願においてコロイドで処理される燃料は、ディーゼル燃料油(船舶、列車、または自動車用途を問わない)等の燃料油であっても、灯油であってもよい。ディーゼル燃料油および灯油は、一般に、110℃から500℃、例えば150℃から400℃の範囲内で沸騰する。燃料油は、大気圧下蒸留物もしくは減圧蒸留物、分解ガスオイル、または、直留ならびに熱および/もしくは精製ストリーム、例えば接触分解および水素化分解蒸留物の任意の割合のブレンドを含み得る。
ディーゼル燃料油のその他の例は、フィッシャー−トロプシュ燃料を含む。FT燃料としても知られるフィッシャー−トロプシュ燃料は、ガス液化(GTL)燃料、バイオマス液化(BTL)燃料、および石炭転換燃料として説明されるものを含む。そのような燃料を作製するためには、まず合成ガス(CO+H2)を生成してからフィッシャー−トロプシュ法によりノルマルパラフィンに転換する。次いでノルマルパラフィンを接触分解/改質または異性化、水素化分解および水素化異性化等の方法により改質し、イソ−パラフィン、シクロ−パラフィンおよび芳香族化合物等の各種炭化水素を生成することができる。得られるFT燃料は、単独で、または他の燃料成分および燃料タイプと組み合わせて使用し、ディーゼル燃料としての使用に好適な燃料を達成することができる。
動物および/または植物の油または脂肪から得られるディーゼル燃料の好適な例は、菜種油、コリアンダー油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、ヒマシ油、オリーブ油、落花生油、トウモロコシ油、アーモンド油、パーム核油、ココナツ油、カラシ油、ヤトロファ油、牛脂および魚油から得られるものである。さらなる例としては、コーン、ジュート、ゴマ、シアナッツ、挽いたナッツ、および亜麻仁油から得られる油が含まれ、それらは当技術分野で知られた方法により得ることができる。部分的にグリセロールでエステル化された脂肪酸の混合物である菜種油は、大量に利用可能であり、圧搾による単純な方法で菜種から得ることができる。使用済キッチンオイルなどの再生油もまた好適である。
また、動物および植物の油および脂肪の脂肪酸構成物質のアルキルエステル誘導体も好適である。そのようなエステルは、従来の手段で、例えばエステル交換により、または鹸化に次ぐ再エステル化により得ることができる。市販の混合物として、例えば、50から150、特に90から125のヨウ素価を有する、12個から22個の炭素原子を有する脂肪酸、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、リシノール酸、エレオステアリン酸(elaeostearic acid)、リノール酸、リノレン酸、エイコサン酸、ガドレイン酸、ドコサン酸、またはエルカ酸等の、エチル、プロピル、ブチル、および特にメチルエステルを考慮することができる。特に有利な特性を有する混合物は、主に、すなわち少なくとも50wt%の、16個から22個の炭素原子、および1個、2個、または3個の二重結合を有する脂肪酸のメチルエステルを含有するものである。好ましい脂肪酸の低級アルキルエステルは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、およびエルカ酸のメチルエステルである。
上記の種類の市販の混合物は、例えば、動物および植物の脂肪および油の、低級脂肪アルコールとのエステル交換による開裂およびエステル化により得られる。脂肪酸のアルキルエステルの生成には、20%未満の低レベルの飽和酸を含有し、130未満のヨウ素価を有する脂肪および油から開始することが有利である。例えば、菜種油、ヒマワリ油、コリアンダー油、ヒマシ油、大豆油、落花生油、綿実油、牛脂等のエステルまたは油のブレンドが好適である。脂肪酸成分が、80wt%を超える濃度まで18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸から得られる、各種菜種油に基づく脂肪酸のアルキルエステルが好ましい。
上記油の多くを使用することができるが、好ましいのは植物油誘導体であり、そのうち特に好ましいバイオ燃料は、菜種油、綿実油、大豆油、ヒマワリ油、オリーブ油もしくはパーム油のアルキルエステル誘導体であり、菜種油メチルエステルが特に好ましい。
現在、動物および/または植物の油または脂肪から得られる燃料は、最も一般的には石油由来燃料と組み合わされて使用される。本発明は、そのような燃料の任意の比率での混合物に適用される。例えば、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも25重量%、例えば50重量%を超えるこれらの燃料混合物を、植物源または動物源から得ることができる。
ディーゼル燃料は、路上走行車用の燃料であってもよい。そのような燃料は、典型的には、欧州において周知の各種業界標準により分類され、燃料の重量あたり、最大でも50重量ppmの硫黄、またはさらに最大でも10重量ppmの硫黄またはそれ以下といった、低いまたは非常に低い硫黄分を含有し得る。
燃料は、船舶用ディーゼル燃料、特に以下の特徴のうちの1つまたは複数を有するものであってもよい。
(i)330℃を超える、好ましくは360℃を超える、より好ましくは400℃を超える、最も好ましくは430℃を超える95%蒸留温度(ASTM D86);
(ii)55未満、例えば53未満、好ましくは49未満、より好ましくは45未満、最も好ましくは40未満のセタン価(ASTM D613により測定);
(iii)15重量%を超える、好ましくは25重量%を超える、より好ましくは40重量%を超える芳香族含量;および
(iv)0.01質量%を超える、好ましくは0.15質量%を超える、より好ましくは0.3質量%を超える、例えば1質量%または5質量%、最も好ましくは10質量%を超えるランスボトム残留炭素(ASTM D 524による)。
そのようなディーゼル燃料(および特にそのような船舶用ディーゼル燃料)は、特に、流動式接触分解から生成されるストリーム(そのような材料は、通常、15℃において850kg/m3から970kg/m3、例えば900kg/m3から970kg/m3の密度を有し、典型的には10以下から約30から35の範囲の低いセタン価の値で特徴付けられる);熱分解法、例えばビスブレーキングおよびコーキング等から生成されるストリーム(そのようなストリームは、典型的には15℃において830kg/m3から930kg/m3の密度範囲および20から50のセタン値を有する);ならびに、過酷な条件、例えば400℃を超える温度と130バール以上の圧力の組合せを使用する水素化分解から生成されるストリーム(45から60のセタン価で特徴付けられ、15℃において800kg/m3から860kg/m3の密度範囲を有するストリームを生成)等のストリームを含有し得る。
典型的には、船舶用燃料は、標準規格ASTM D−2069に一致し、その規格内に記載されるような蒸留物または残留燃料であってよく、具体的には、特に残留燃料油の場合、0.05重量%を超える、好ましくは0.1重量%を超える、より好ましくは0.2重量%を超える、特に1重量%またはさらに2重量%を超える硫黄含量、および40℃で少なくとも1.40の動粘度(cSt)を有してもよい。
燃料はまた、他の添加剤を含有することができる。本発明の組成物の具体的な利点は、燃料組成物が潤滑添加剤を追加で含む場合、特にそのような添加剤が、ポリカルボン酸のモノ−またはビス−グリコール(またはポリグリコール)エステル(および特にジカルボン酸のもの、例えばオレイン酸等の不飽和脂肪酸のダイマー等)である場合に最終コロイドが提供する、不安定化に対する耐性である。そのような組成物は、優れた安定性を示し、燃料の使用者に、上記の方法の態様におけるより信頼性のある操作を提供する。
潤滑添加剤は、典型的には、燃料の重量あたり、25重量ppmから500重量ppm、好ましくは50重量ppmから250重量ppm、より好ましくは100重量ppmから200重量ppmの範囲内の量で存在する。
以下の実施例により、その様々な態様における本発明を以降で説明する。
調製例
P1−本発明の方法の実施例
P2−さらなる実施例および比較例の調製
実施例
W1−カルボン酸:鉄比のコロイド粘度および燃料安定性に対する効果
W2−本発明のコロイドを含有する燃料の改善された酸化安定性
実施例P1−本発明の方法の実施例
オレイン酸中の結晶性酸化鉄の第1のコロイドナノ分散液(「分散原液」)を調製した。この分散原液は、分散媒としてのIsopar−L中に分散させた、30%Fe(コロイドの重量あたりの重量%)および11重量%のオレイン酸を含んでいた。続いてこの分散原液を一連の組込み反応に使用して、続く実施例において列挙される本発明の一連のコロイドを形成した。X線回折によると、酸化鉄コアは、マグネタイトおよびより少ない割合のゲーサイトからなっていた。
分散原液内のオレイン酸:鉄の重量比は、11:30、すなわち1:2.7であった。
調製の第2段階において、上記分散原液を、さらに組込み反応において一連の選択されたカルボン酸反応物質と反応させ、本発明によるモノ−およびジカルボン酸の混合物により分散したコロイドを形成した。
反応は、以下のコロイドの実施例番号7の調製に使用した以下の手順により例証された。650.0gのオレイン酸−酸化鉄分散原液(30%w/wFe、Isopar−L溶媒中に分散)を、250.0gの「Glissopal SA」ポリイソブチレン無水コハク酸(希釈剤中に78%の有効成分を含有し、ポリイソブチレンは約1000の数平均分子量を有する)、および無水物基のジカルボン酸へのin situ加水分解を達成するための3.49gの脱イオン水とともに、2リットルのParr反応器に装填した。
したがって、段階b)におけるジカルボン酸:鉄(重量:重量)の装填重量比は、効果的に1:1、すなわち195gのポリイソブチレン無水コハク酸(250gの78%):195gの鉄(650gの30%)であった。他のカルボン酸を使用してオレイン酸を置き換える場合、酸の必要量は、得られるコロイド中の総酸:鉄の所望の比率、および使用されるカルボン酸生成物の有効成分レベルに基づき、同様に計算することができる。
次いで反応器を窒素ガスでパージし、大気圧下で封止した。反応器を4000rpmで撹拌しながら140℃に加熱した。所望の温度に達したら、その温度下での撹拌をさらに3時間継続した。このプロセス中、反応器内の圧力は最大14psiに達したことが確認された。3時間後、反応混合物の温度を低下させ(冷却水コイルを使用)、それが30℃未満に冷却されたらコロイド生成物を反応器から排出した。
得られた生成物は、所望のコロイドを含有し、ポリイソブチレンコハク酸が分散手段としてコロイドに組み込まれていた。分散原液からの置き換えられたいかなるオレイン酸も生成物中に残留し、したがって生成物中の総酸:鉄の最終重量比は1.4:1であった。
上述のように調製された、濃縮された安定化コロイドは、所望により、追加の分散媒で所望の%Feレベルまで希釈されてもよい。
実施例P2−さらなる実施例および比較例の調製
上記で例示された2段階法を使用して、一連の結晶性コロイドの実施例1から8を調製した。それぞれの場合において、同じ分散原液出発材料(上記実施例P1を参照)を使用したが、追加のカルボン酸を変えた。
段階b)においてジカルボン酸反応物質を使用して一連の最終コロイドを調製したが、調製の第2段階において使用したジカルボン酸:使用した鉄の重量比は1:1であり、異なるアルケニルコハク酸の範囲を使用した。得られたコロイドは、以下の表に示される酸構成物質および鉄の含量(重量パーセント)を有していた。それぞれの調製において、無水物を二塩基酸前駆体として使用し、無水物基のin situ加水分解を促進するために反応混合物に水を添加した。
Figure 0005653210
備考:1)上記表中、「ポリイソブチレンxSA(Cy、分岐鎖)」という命名は、数平均分子量が「x」(ポリスチレン標準試料と比較したGPCにより測定される)のポリイソブチレンコハク酸を意味し、数平均分子量は、平均炭素数yに対応する。2)「比較」は、比較例を意味する。
これらの実施例において、コロイド中の分散手段は、ある割合の残留オレイン酸(出発材料からの残り)、および、調製の段階2の間に組み込まれたモノ−またはジ−カルボン酸からなっていた。したがって、生成物中のカルボン酸:鉄の全体的比率は、段階2において添加された酸の当該比率よりも約0.4の値だけ上回った。したがって、以下の実施例において、段階2で1:1の比率を使用し、各コロイド生成物中の最終的な比率を約1.4:1とした。
上記方法および実施例P1において使用したジカルボン酸を使用して、第2の一連の結晶性コロイドの実施例9から13を調製したが、調製に使用したジカルボン酸:鉄の比率を変え、この比率の効果を調査できるようにした。
Figure 0005653210
上記方法を使用して第3の一連の結晶性コロイドの実施例14から19を調製したが、調製に使用したジカルボン酸(複数可)を変え、ジカルボン酸の混合物により生成されるコロイドを例示した。
Figure 0005653210
実施例W1−カルボン酸:鉄比のコロイド粘度および燃料安定性に対する効果
上記実施例9から13のように調製され、それに存在するジカルボン酸:鉄の比率が異なる一連の結晶性コロイドを使用して、総カルボン酸:鉄重量比の変化の、関連した物理的特性に対する効果を調査した。使用した異なる比率の結果、コロイドは、鉄含量パーセンテージが異なり、すなわち、より低い比率は、より高い割合の鉄を含有した。それぞれの得られたコロイドを、その鉄含量(コロイドの重量%)について分析し、その動粘度およびディーゼル燃料中での安定性について試験し、以下の技法を使用して測定した。
動粘度−試験手順ASTM D−445(名称「Standard Test Method for Kinematic Viscosity of Transparent and Opaque Liquids(and calculation of Dynamic Viscosity)」)に従う粘度測定。要約すると、この標準的方法は、ある体積の液体が較正されたガラス毛細管粘度計を通して重力下で流動する時間を測定する。
ディーゼル燃料中での安定性−75ppm(燃料の重量あたりの重量ppm)のコロイド反応生成物を含有するクラスIディーゼル燃料の、80℃での静的保存中の目視観察。この試験において、燃料試料中の経時的なヘイズまたは沈殿物の出現は、不安定性(不具合)を示す。
粘度の結果は、酸:鉄の比率がより低いコロイドほどより低い粘度を提供することを明確に示している。特に、2.4:1および1.4:1のコロイドの実施例の間で、大きな粘度減少が見られた。
1.5:1から1:2の比率範囲内の実施例は、最も低い粘度の挙動を示すとともにさらに最も高い鉄濃度を提供し、高鉄濃度低粘度添加剤が最も有利な搭載型車両用途に特に好適なものとなった。
Figure 0005653210
これらの粘度の利点は、鉄含量が10%wtで均一化されたより希薄な一連のコロイドに置き換えても保持される。さらに、これらのコロイドは、市販の燃料添加剤「ネオデカン酸鉄」(鉄塩)の濃縮物に勝る大きな粘度の利点を示す(後者が同じ溶媒担体においてより低い鉄含量で使用された場合であっても)。したがって、本発明のコロイドを使用することにより、より低く、より有利な粘度を有する、より濃縮された燃料添加剤を調製することができる。
Figure 0005653210
以上のように、わずか6%の鉄濃縮レベルでのネオデカン酸鉄は、より高い10%の濃度の鉄を含有する本発明のコロイドのいずれかにより提供される粘度をはるかに超える粘度を生成した。本発明の最も性能の低いコロイド(単体)より優れた粘度を有する濃縮物を調製するためには、ネオデカン酸鉄を4wt%(鉄)という低いレベルまで希釈する必要があった。鉄添加剤が典型的に燃料中の目標鉄レベルで使用されると仮定すると、使用可能な鉄濃度のこの差によって、燃料鉄濃度目標値を満たすためにより少量の添加剤を使用することができるようになる。
燃料安定性結果
上記鉄コロイドに対する燃料安定性試験は、酸:鉄の比率が2.4:1および1.4:1のコロイドが、33日間の保存後(この時点で試験を中止した)でもまだ安定であることを実証した。1.14:1の比率を有するコロイドは、19日後に不安定性の兆候を示し、1:1.6の比率を有するコロイドは、26日後に不安定性の兆候を示した。
金属添加物を不安定化させることが知られている150ppmの潤滑添加剤、つまりエトキシル化オレイン酸ダイマーの存在下で、さらなる安定性試験を行った。これらの試験において、2.4:1および1.4:1のコロイドは、追加の添加剤の添加により一部不安定化され、その不安定性は19日後に観察されたが、この程度の不安定性は、まだ全く良好な性能を示した。しかし、他のコロイドは大きく不安定化されず、より低い比率(1:1を下回る範囲)のコロイドは、そのクラスの潤滑添加剤の存在下で燃料安定性が必要とされる場合には特に有用である。
実施例W2−本発明のコロイドを含有する燃料の改善された酸化安定性
燃料中の鉄の存在は、業界標準試験条件下において、燃料の酸化安定性の劣化に関連していた。本発明のコロイドは、燃料中においてより低い程度の酸化劣化に関連するように鉄を提供する。
以下の実施例において、ASTM D 2274試験を使用して、95℃における指定された酸化条件下での中間留分石油燃料の固有安定性を測定した。この試験において、濾過後の試験燃料の試料を、95℃で16時間エージングしながら、3リットル/時間の速度で酸素を試料中にバブリングした。このエージングプロセスの後、試料を再び濾過した。試験にわたり生成された濾過された不溶物の量は、発生した酸化の程度の1つの指標として機能する。同様に、いかなる付着性の不溶物も、溶媒洗浄により反応槽から除去され、第2の指標として機能する。付着性の、および濾過された不溶物は、試験にわたり生成された「総不溶物」として記録され、試験燃料100ミリリットルあたりのミリグラム数として記録される。この数値が高いほど、より多くの酸化劣化が生じたことになる。
クラスIディーゼル燃料、ならびに追加で5重量%および10重量%のバイオ燃料(商業的には「FAME」すなわち脂肪酸メチルエステルとして知られ、菜種油等の植物油から得られる脂肪酸由来のメチルエステルの混合物である)を含有する同燃料を、本発明のコロイド、またはその他の鉄源(フェロセン、すなわちジシクロペンタジエニル鉄、および鉄とネオデカン酸の塩)と併せて試験した。すべての場合において、本発明の好ましい結晶性コロイドを含有する燃料試料の酸化劣化は、同じ元素鉄濃度(燃料の重量あたり10重量ppm鉄)で添加されたその他の形態の鉄を含有する燃料試料の酸化劣化よりも大幅に低かった。
結果を以下の表に示す。
Figure 0005653210

Claims (12)

  1. モノカルボン酸およびポリカルボン酸の混合物による、分散媒中に分散した酸化鉄粒子からなるコロイドの製造方法であって、
    a)分散媒中に分散した酸化鉄粒子からなる第1のコロイドを調製する、または得るステップであって、第1のコロイド内の分散手段は、1種または複数種のモノカルボン酸であるステップと、
    b)第1のコロイドを、1種または複数種の追加のカルボン酸と反応させて酸化鉄のコロイドを形成するステップであって、追加のカルボン酸が、分散手段として組み込まれており、かつ1種または複数種のポリカルボン酸化合物またはその前駆体を含み、およびさらに1種または複数種のモノカルボン酸化合物を含んでいてもよいステップと
    を含み、ステップb)における反応は、第1のコロイドと追加のカルボン酸の混合、続く100℃から180℃の温度までの、1時間から10時間の撹拌下での加熱により達成され、反応は溶媒としての分散媒中で行われ、ポリカルボン酸前駆体が使用される場合は、該ポリカルボン酸前駆体のin situ加水分解を達成するために水が追加的に存在する、コロイドの製造方法。
  2. 段階b)における反応が、130℃から160℃の温度までの、2時間から6時間の加熱により達成される、請求項1に記載の方法。
  3. 段階b)における反応が、140℃から150℃の温度までの、3時間から4時間の加熱により達成される、請求項1または請求項2に記載の方法。
  4. 分散媒が、段階b)における反応に使用される温度を超える還流温度を有し、段階b)における反応が、還流なしで行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. コロイド内の酸化鉄粒子が、酸化鉄の結晶形態を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 段階b)において分散手段として組み込まれる追加のカルボン酸が、8個から200個の炭素原子を含有する1種または複数種のヒドロカルビル置換ジカルボン酸、またはその無水物前駆体からなる、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記1種または各ジカルボン酸が、ヒドロカルビル置換コハク酸である、請求項6に記載の方法。
  8. 段階b)において分散手段として組み込まれる追加のカルボン酸が、8個から20個の炭素原子を含有する1種または複数種のモノカルボン酸と組み合わせた、8個から200個の炭素原子を含有する1種または複数種のヒドロカルビル置換ジカルボン酸またはその無水物前駆体からなる、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  9. 前記追加のカルボン酸が、10個から18個の炭素原子を含有する1種または複数種の脂肪族モノカルボン酸と組み合わせた、1種または複数種の脂肪族置換コハク酸からなる、請求項8に記載の方法。
  10. 前記追加のカルボン酸が、オレイン酸およびポリイソブテニルコハク酸からなり、そのポリイソブテニル基が、450から2300の数平均分子量(ポリスチレン標準試料と比較したゲル透過クロマトグラフィーにより測定される)を有する、請求項9に記載の方法。
  11. 酸化合物の総重量:酸化鉄粒子内に含有される元素鉄の重量として測定される、コロイド中のカルボン酸:鉄の重量比が、6:1から1:4の範囲内である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記比が2:1から1:2である、請求項11に記載の方法。
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