例えば、DOHCエンジンにおいては、クランク軸の回転を吸気カム軸及び排気カム軸に伝達して吸気弁及び排気弁を駆動する。このため、図6に模式的に示すように、クランク軸1に固定されたクランクスプロケット2、吸気カム軸3に固定された吸気カムスプロケット4、排気カム軸5に固定された排気カムスプロケット6の各スプロケット間にタイミングチェーン100が巻き掛けられている。即ち、クランク軸1が回転することにより、タイミングチェーン100が駆動側のクランクスプロケット2から従動側の吸気カムスプロケット4、排気カムスプロケット6を順に走行して再びクランクスプロケット2に戻るように循環走行して吸気カム軸3及び排気カム軸5を回転駆動する。
タイミングチェーン100は、ローラ型であって、図7に一部を示すように、複数のインナリンクプレート101を対向させて環状に2列並べ、各列のインナリンクプレート101の外側に隣接する2つのインナリンクプレート101に重ねるようにしてアウタリンクプレート102を配置し、それぞれの対向するインナリンクプレート101相互の長手方向両端にピン103を貫通させ、このピン103の両突出端部を各アウタリンクプレート102に固定し、更に、各ピン103における各インナリンクプレート101の対向間の領域にローラ104を回動自在に外嵌して構成される。そして、各スプロケット2、4、6に対して巻き掛けられた状態では、各スプロケット2、4、6の各歯の間に存在するU字形状の歯底部にローラ104が係合され、各スプロケット2、4、6の歯がインナリンクプレート101とローラ104とによって囲まれる歯係合枠部105に係合する。
このような機構では、循環走行中のタイミングチェーン100の振れを抑制すると共に、走行経路の安定化を図るべく張力を付与するチェーンガイドが設けられる。かかるチェーンガイドは、タイミングチェーン100の走行経路の一定区間に設けられるもので、タイミングチェーン100の引っ張り側となるクランクスプロケット2と排気カムスプロケット6との間においてタイミングチェーン100に圧接してタイミンチェーン100の振れを抑制するタイミングチェーンガイド110や、タイミングチェーン100の緩み側となるクランクスプロケット2と吸気カムスプロケット4との間に配置されてタイミングチェーン100に圧接してタイミングチェーン100に張力を付与すると共に振れを抑制するタイミングチェーンレバー120がチェーンガイドを構成する。
ここで、タイミングチェーンガイド110及びタイミングチェーンレバー120は、具体的形状が異なるが、基本的機能は相互に同等であり、以下チェーンガイドとしてタイミングチェーンガイド110について説明する。
タイミングチェーンガイド110は、図8に図6のA−A線断面図を示すように、図示しないエンジン本体に取り付けられてタイミングチェーン100の走行方向に沿って延在するガイド本体111と、ガイド本体111に貼着されるシュー112を備える。シュー112は、タイミングチェーン100の延在方向に沿って延在してタイミングチェーン100のインナリンクプレート101及びアウタリンクプレート102に滑走可能に圧接して支持する摺動面113及び摺動面113の両側に沿って延在するフランジ114を備える。
このように構成されたタイミングチェーンガイド110は、その摺動面113を走行するタイミングチェーン100のインナリンクプレート101及びアウタリンクプレート102の外周縁101a、102aに滑動可能に圧接してタイミングチェーン100の振れを抑制すると共にタイミングチェーン100の走行経路の安定化を図る。
なお、同様にタイミングチェーンのインナリンクプレート及びアウタリンクプレートを摺動可能に圧接支持する弾性部材を備えたチェーンテンショナ装置が特許文献1に開示されている。
また、タイミングチェーンのローラに圧接してタイミングチェーンの振れを抑制すると共にタイミングチェーンの走行経路の安定化を図るタイミングチェーンガイドがある。この種のタイミングチェーンガイドの一例を図9に基づいて説明する。
このタイミングチェーンガイド115は、図9に断面図を示すように、タイミングチェーン100の走行方向に沿って延在するガイド本体116とガイド本体116に貼着されるシュー117を備える。シュー117は本体部118及び本体部118に一体形成されたタイミングチェーン100のローラ104よりも幅狭でタイミングチェーン100の走行方向に延在する凸部119を備える。
このように構成されたタイミングチェーンガイド115は、その凸部119の頂面119aを走行するタイミングチェーン100のローラ104に圧接してタイミングチェーン100の振れを抑制すると共にタイミングチェーン100の走行経路の安定化を図る。
なお、同様にタイミングチェーンの走行方向に沿って延在する凸部を備え、この凸部によってタイミングチェーンのローラを支持するタイミングチェーンガイドが特許文献2に開示されている。
上記前者、図8に示すタイミングチェーンガイド110、即ち、走行するタイミングチェーン100のインナリンクプレート101及びアウタリンクプレート102を摺動面113によって滑動可能に圧接支持してタイミングチェーン100の振れを抑制するタイミングチェーンガイド110にあっては、タイミングチェーン100の両側に配置されるインナリンクプレート101及びアウタリンクプレート102を摺動面113によって滑動可能に支持することでタイミングチェーン100の振れを抑制すると共に走行経路の安定化が得られる。
しかし、インナリンクプレート101及びアウタリンクプレート102がチェーンガイド110の摺動面113を滑動することから、特にエンジンの高回転時に潤滑不良が起きてしまった場合に、該部におけるタイミングチェーン100の摺動抵抗の増大に伴いエンジン性能への影響が懸念されると共に、タイミングチェーン100やタイミングチェーンガイド110の摩耗が促進され、タイミングチェーン100及びタイミングチェーンガイド110の耐久性が低下する。
一方、後者、図9に示す、凸部119の頂面119aをタイミングチェーン100のローラ104に圧接してタイミングチェーン100の振れを抑制するタイミングチェーンガイド115にあっては、ローラ104が転動して凸部119の頂面119aを走行することから、エンジンの高回転時においてもタイミングチェーン100の摺動抵抗の増大が抑制できエンジン性能への影響が軽減できる。しかし、凸部119の頂面119aによってタイミングチェーン100のローラ104を支持することから、ローラ104を支持する面圧が高くなりローラ104及びタイミングチェーンガイド115の負荷が増大する。このローラ104に作用する面圧は、例えば図9に仮想線100aで示すようにチェーン100が倒れるほどタイミングチェーンガイド115の頂面119aとの接触面積が小さくなり高くなる。従って、振動等の要因でチェーン100が倒れたときに焼き付きの発生がより懸念される。
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、タイミングチェーンの負荷及び倒れを抑制して安定した循環走行が得られると共にタイミングチェーンの耐久性の向上が得られるチェーンガイドを提供することにある。
上記目的を達成する請求項1に記載のチェーンガイドは、クランク軸に固定されたクランクスプロケットとカム軸に固定されたカムスプロケットとに巻き掛けられたローラ型のタイミングチェーンに当接するように設けられたチェーンガイドにおいて、前記タイミングチェーンの延在方向に沿って連続する頂面及び両側面を有する断面凸状で、該頂面によって前記タイミングチェーンのローラを支持する凸部を備えると共に、前記タイミングチェーンのリンクプレートの外周縁に隣接して対向する傾斜面を有し、該傾斜面と前記凸部の側面とによって前記凸部に沿って延在する溝状の潤滑油保持部を形成することを特徴とする。
これによると、クランクスプロケット及びカムスプロケットに巻き掛けられたタイミングチェーンは、チェーンガイドの凸部の頂面がローラに圧接して張力が付与されると共に、タイミングチェーンガイドの振れが抑制される。
また、循環走行するタイミングチェーンに付着した潤滑油がタイミングチェーンによって潤滑油保持部に供給されて潤滑油保持部内に滞留保持され、確実にタイミングチェーン及び、凸部の頂面と転動するローラとの間、傾斜面と走行するリンクプレートの外周縁との間等が潤滑される。
一方、タイミングチェーンガイドの凸部の頂面にローラが支持されて走行するタイミングチェーンに倒れが発生した際には、瞬時にリンクプレートの外周縁が傾斜面に接触してタイミングチェーンの倒れが抑制されて安定した循環走行が確保できると共に、ローラへの面圧の上昇が抑制されてローラの焼き付きが防止される。更に、潤滑油保持部の潤滑油保持によってタイミングチェーンが倒れたときに摺接するリンクプレートの外周縁と傾斜面との摩擦抵抗が低減されてリンクプレートの焼き付きが防止される。
これによりクランクスプロケット及びカムスプロケット間に巻き掛けられて循環走行するタイミングチェーンの倒れが抑制されて安定したタイミングチェーンの循環走行が得られ、かつタイミングチェーンの負荷及び焼き付き等の発生が抑制されてタイミングチェーンの耐久性が向上する。
請求項2に記載の発明は、請求項1のチェーンガイドにおいて、前記傾斜面は、断面凹面状に湾曲形成されていることを特徴とする。
これによると、傾斜面を断面凹面状に湾曲形成することで、潤滑保持部の潤滑油の保持量が増大し、タイミングチェーン及び、凸部の頂面と転動するローラとの間、傾斜面と走行するリンクプレートの外周縁との間等の潤滑効果が向上する。
請求項3に記載の発明は、請求項1のチェーンガイドにおいて、前記傾斜面は、前記タイミングチェーンのリンクプレートの外周縁に隣接して対向する第1傾斜面と、該第1傾斜面とリンクプレートの外周縁との隙間より大きくリンクプレートから離間してリンクプレートの外周縁と対向する第2傾斜面とが潤滑油保持部の延在方向に交互に配置されたことを特徴とする。
これによると、循環走行するタイミングチェーンに付着した潤滑油がタイミングチェーンによって導かれて潤滑油保持部に供給され、かつ飛散する潤滑油が第2傾斜面とリンクプレートの外周縁との間隙から潤滑油保持部内に供給され、潤滑油保持部内に効率的に潤滑油が供給される。更に、潤滑油保持部内に供給された潤滑油は、タイミングチェーンに沿って流動すると共に第2傾斜面によって局部的に断面が大きくなった該部に潤滑油が効率的に滞留保持される。
一方、チェーンガイドの凸部の頂面にローラが支持されて走行するタイミングチェーンが振れて倒れが発生した際には、瞬時にリンクプレートの外周縁が第1傾斜面に接触してタイミングチェーンの倒れを抑制し、凸部の頂面によるローラへの面圧の上昇が抑制されてローラの焼き付きが防止されると共にタイミングチェーンの摺動抵抗の上昇が抑制される。更に、潤滑油保持部の潤滑油保持によってタイミングチェーンが倒れたときに摺接するリンクプレートの外周縁と第1傾斜面との摩擦抵抗が低減されてリンクプレートの焼き付きが防止される。
請求項4に記載の発明は、請求項1のチェーンガイドにおいて、前記傾斜面は、前記タイミングチェーンのリンクプレートの外周縁に隣接して対向する第1傾斜面と、前記凸部の頂面と平行でリンクプレートの外周縁と対向する底面部を有する第2傾斜面とが潤滑油保持部の延在方向に交互に配置されたことを特徴とする。
これによると、クランクスプロケット及びカムスプロケットに巻き掛けられたタイミングチェーンは、チェーンガイドの凸部の頂面がローラに圧接し、タイミングチェーンの振れが抑制される。
また、循環走行するタイミングチェーンに付着した潤滑油がタイミングチェーンによって導かれ潤滑油保持部に供給され、かつ飛散する潤滑油が第2傾斜面とリンクプレートの外周縁との間隙から潤滑油保持部内に供給され、潤滑油保持部内に効率的に潤滑油が供給される。一方、潤滑油保持部内に供給された潤滑油は、タイミングチェーンに沿って流動すると共に第2傾斜面によって局部的に断面が大きくなった該部に潤滑油が効率的に滞留保持される。これによりタイミングチェーン及び凸部の頂面と転動するローラとの間を潤滑し、かつ第1傾斜面と走行するリンクプレートの外周縁との間が潤滑される。
一方、チェーンガイドの凸部の頂面にローラが支持されて走行するタイミングチェーンが振れて倒れが発生した際には、瞬時にリンクプレートの外周縁が第1傾斜面に接触してタイミングチェーンの倒れを抑制し、凸部の頂面によるローラへの面圧の上昇が抑制されてローラの焼き付きが防止されると共にタイミングチェーンの摺動抵抗の上昇が抑制される。更に、潤滑油保持部の潤滑油保持によってタイミングチェーンが倒れたときに摺接するリンクプレートの外周縁と第1傾斜面との摩擦抵抗が低減されてリンクプレートの焼き付きが防止される。
本発明によると、クランクスプロケット及びカムスプロケットに巻き掛けられたタイミングチェーンは、チェーンガイドの凸部の頂面がローラに圧接してタイミングチェーンガイドの安定した循環走行が得られると共に、タイミングチェーンに付着した潤滑油がタイミングチェーンによってチェーンガイドの潤滑油保持部に供給されて潤滑油保持部内に滞留保持され、タイミングチェーン及び凸部の頂面と転動するローラとの間を潤滑し、かつ傾斜面と走行するリンクプレートの外周縁との間が潤滑される。
一方、タイミングチェーンガイドの凸部の頂面にローラが支持されて走行するタイミングチェーンに倒れ発生した際には、瞬時にリンクプレートの外周縁が傾斜面に接触してタイミングチェーンの倒れが抑制され、安定したタイミングチェーンの循環走行が得られ、かつタイミングチェーンの負荷及び焼き付き等の発生が抑制されてタイミングチェーンおよびタイミングチェーンガイドの耐久性が向上する。
以下、本発明に係るチェーンガイドの実施の形態を図を参照して説明する。
(第1実施の形態)
図1はDOHCエンジンにおけるクランク軸のカム軸への回転伝達機構の概略図であり、図2はタイミングチェーンガイドの説明図である。
図1に模式的に示すように、クランク軸1に固定されたクランクスプロケット2、吸気カム軸3に固定された吸気カムスプロケット4、排気カム軸5に固定された排気カムスプロケット6の各スプロケット間にタイミングチェーン100が巻き掛けられている。即ち、クランク軸1が回転することにより、タイミングチェーン100が駆動側のクランクスプロケット2から従動側の吸気カムスプロケット4、排気カムスプロケット6の各カムスプロケットを順に走行して再びクランクスプロケット2に戻るように循環走行して、吸気カム軸3及び排気カム軸5が回転駆動される。
なお、タイミングチェーン100は、ローラ型のチェーンであって、上述の図7に一部を示すタイミングチェーン100と同様の構成であり、対応する部位に同一符号を付すことで詳細な説明を省略する。
このような機構では、循環走行中のタイミングチェーン100の振れを抑制すると共に、走行経路の安定化を図るべく、チェーンガイドが設けられる。かかるチェーンガイドは、タイミングチェーン100の走行経路の一定区間に設けられるもので、タイミングチェーン100の引っ張り側となるクランクスプロケット2と排気カムスプロケット6との間においてタイミングチェーン100に圧接してタイミンチェーン100を誘導すると共に振れを抑制するタイミングチェーンガイド10や、タイミングチェーン100の緩み側となるクランクスプロケット2と吸気カムスプロケット4との間に配置されてタイミングチェーン100に圧接してタイミングチェーン100に張力を付与すると共に振れを抑制するタイミングチェーンレバー9がチェーンガイドを構成する。
ここで、タイミングチェーンレバー9及びタイミングチェーンガイド10は、具体的形状が異なるが、基本的機能は相互に同等であり、以下チェーンガイドとしてタイミングチェーンガイド10を主に図1及び図2を参照して説明する。
図2(a)はタイミングチェーンガイド10の側面を示す図1のII部拡大図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)はタイミングチェーンを省略した(a)のB矢視図である。
タイミングチェーンガイド10は、図1に示すように排気カムスプロケット6側を上側端10a、クランクスプロケット2側を下側端10bとしてタイミングチェーン100の走行方向に沿って延在するブロック状で、図2に示すようにガイド本体11及びガイド本体11に貼着されるシュー21とを備える。
ガイド本体11は、タイミングチェーン100の走行方向に沿って延在する前面12、両側面13、13及び後面14を有する矩形断面状で上側端10aから下側端10bに亘って連続するブロック状であって、図示しないエンジン本体にボルト等によって固定される。
シュー21は、ガイド本体11の前面12に後面24が貼着されてタイミングチェーン100の走行方向に沿って延在する前面22、両側面23、23を有して上側端10aから下側端10bに連続するブロック状であって、前面22の幅方向中央に上側端10aから下側端10bに亘って連続する断面凸状の凸部30が形成され、かつ凸部30の両側に沿って溝状の潤滑油保持部35が形成される。
凸部30は、平坦でタイミングチェーン100のローラ104より幅狭で転動するローラ104を支持する頂面31と、頂面31の両側縁31a、31aに折曲して連続すると共に互いに平行な両側面32、32を有する断面コ字状に形成される。
更に、凸部30の頂面31にローラ104が当接して支持されたタイミングチェーン100のインナリンクプレート101及びアウタリンクプレート102の外周縁101a、102aに隣接して対向すると共に凸部30の側面32の基端32aから幅方向外側、即ち凸部30から離反するに従ってガイド本体11から離反するように側面32と対向して傾斜する傾斜面34を有し、この傾斜面34と凸部30の側面32とによって上側端10aから下側端10bに亘って連続する断面V字溝状の潤滑油保持部35が凸部30に沿って形成される。
これにより、循環走行するタイミングチェーン100のローラ104がタイミングチェーンガイド10の凸部30の頂面31に当接支持されて、安定した循環走行が得られる。タイミングチェーンガイド10によってタイミングチェーン100を支持した状態では、
図2(b)に断面図を示すようにタイミングチェーン100のインナリンクプレート101及びアウタリンクプレート102の外周縁101a、102aが傾斜面34に接近して対向し、かつ凸部30の側面32と傾斜面34によって形成された潤滑油保持部35がアウタリンクプレート102の外周縁102a及びインナリンクプレート101の外周縁101aによってほぼ閉蓋されて、潤滑油保持部35の底部に沿って連続する潤滑油貯留空間が連続形成される。
一方、タイミングチェーンレバー9も、タイミングチェーンガイド10と同様にガイド本体とシューを備え、シューに凸部及び潤滑油保持部が形成される。
次に、このように構成されたタイミングチェーンガイド10の作用について説明する。
クランクスプロケット2、吸気カムスプロケット4及び排気カムスプロケット6に巻き掛けられたタイミングチェーン100は、クランクスプロケット2と排気カムスプロケット4との間においてタイミングチェーンガイド10の凸部30の頂面31がローラ104に圧接し、かつクランクスプロケット2と吸気カムスプロケット4との間においてローラ104に圧接するタイミングチェーンレバー9によって常時一定の張力が付与されると共に、タイミングチェーンガイド10及びタイミングチェーンレバー9によって振れが抑制される。
また、循環走行するタイミングチェーン100に付着した潤滑油がタイミングチェーン100によってタイミングチェーンガイド10の上側端10aに導かれ、その潤滑油がタイミングチェーンガイド10の凸部30に沿って凹設された溝状の潤滑油保持部35に供給され、かつタイミングチェーン100の走行によって潤滑油保持部35内を流動すると共に潤滑油保持部35内に滞留保持される。この潤滑油保持部35内に潤滑油を流動及び滞留保持することで、常時に十分な潤滑油量が潤滑油保持部35内に確保維持されてタイミングチェーン100及び凸部30の頂面31と転動するローラ104との間を十分に潤滑し、かつ傾斜面34と走行するアウタリンクプレート102の外周縁102a及びインナリンクプレート101の外周縁101aとの間が潤滑される。
一方、タイミングチェーンガイド10の凸部30の頂面31にローラ104が支持されて走行するタイミングチェーン100が振れて倒れが発生した際には、瞬時にアウタリンクプレート102の外周縁102a、或いはインナリンクプレート101の外周縁101aが傾斜面34に接触してタイミングチェーン100の倒れを抑制し、安定したタイミングチェーン100の走行を確保する。
また、タイミングチェーン100の倒れが抑制されて凸部30の頂面31の側縁31aによるローラ104への面圧の上昇が抑制されてローラ104の焼き付きが防止されると共にタイミングチェーン100の摺動抵抗の上昇が抑制される。更に、潤滑油保持部35の潤滑油保持によってタイミングチェーン100が倒れたときに摺接するアウタリンクプレート102の外周縁102aと傾斜面34との摩擦抵抗が低減されてアウタリンクプレート102の外周縁102a等の焼き付きが防止される。
同様に、クランクスプロケット2と吸気カムスプロケット4との間におけるタイミングチェーン100の撓み側においても、タイミングチェーンレバー9によってタイミングチェーン100の振れや倒れが抑制される。
これにより、クランク軸1に固定されたクランクスプロケット2、吸気カム軸3に固定された吸気カムスプロケット4、排気カム軸5に固定された排気カムスプロケット6の各スプロケット間に巻き掛けられて循環走行するタイミングチェーン100の倒れが抑制されて安定したタイミングチェーン100の循環走行が得られる。また、タイミングチェーン100の負荷及び焼き付き等の発生が抑制されてタイミングチェーン100およびタイミングチェーンガイドの耐久性が向上する。
(第2実施の形態)
次に、本発明の第2実施の形態のチェーンガイドを、図3を参照して説明する。本実施の形態は、第1実施の形態とタイミングチェーンガイド及びタイミングチェーンレバーにおける潤滑油保持部の形状が異なり、他の構成は第1実施の形態と同様であり、潤滑油保持部を主に説明し、他の構成は対応する部位に同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略する。
図3は、上述の図2に対応する本実施の形態におけるタイミングチェーンガイド40の説明図であり、同図(a)はタイミングチェーンガイド40の側面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB矢視図である。
このタイミングチェーンガイド40は、第1実施の形態のタイミングチェーンガイド10と同様にガイド本体11及びガイド本体11に貼着されるシュー21を備える。
シュー21の前面22の幅方向中央に、上側端から下側端に亘って連続する断面凸状の凸部30が形成され、かつ凸部30の両側に沿って溝状の潤滑油保持部41が形成される。凸部30は、タイミングチェーン100のローラ104より幅狭でローラ104を支持する頂面31と、両側面32、32を有する断面コ字状に形成される。
更に、凸部30の頂面31にローラ104が当接して支持されたタイミングチェーン100のインナリンクプレート101及びアウタリンクプレート102の外周縁101a、102aに隣接して対向すると共に側面32の基端32aから幅方向外側、即ち凸部30から離反するに従って凹面状に湾曲する傾斜面42を有し、対向する傾斜面42と凸部30の側面32とによって凸部30に沿って連続する潤滑油保持部41が形成される。
これにより、タイミングチェーンガイド40の凸部30の頂面31にローラ104が当接してタイミングチェーン100が走行する状態では、図3(b)に示すようにタイミングチェーン100のアウタリンクプレート102の外周縁102a及びインナリンクプレート101の外周縁101aが傾斜面42に接近して対向し、かつ凸部30の側面32と傾斜面42によって形成された潤滑油保持部41がアウタリンクプレート102の外周縁102a及びインナリンクプレート101の外周縁101aによってほぼ閉蓋されて、潤滑油保持部41の底部に沿って潤滑油貯留空間が連続形成される。
このタイミングチェーンガイド40によると、潤滑油保持部41を形成する傾斜面42を凹面状に湾曲形成することで、第1実施の形態のタイミングチェーンガイド10の潤滑油保持部35に比較してより多くの潤滑油の保持が可能になり、第1実施の形態に加え、更にタイミングチェーン100及び凸部30の頂面31と転動するローラ104との間や傾斜面42と走行するアウタリンクプレート102の外周縁102a及びインナリンクプレート101の外周縁101aとの間の潤滑効果が向上できる。
(第3実施の形態)
次に、本発明の第3実施の形態のチェーンガイドを、図4を参照して説明する。本実施の形態は、第1実施の形態とタイミングチェーンガイド及びタイミングチェーンレバーにおける潤滑油保持部の形状が異なり、他の構成は第1実施の形態と同様であり、潤滑油保持部を主に説明し、他の構成は対応する部位に同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略する。
図4は、上述の図2に対応する本実施の形態におけるタイミングチェーンガイド50の説明図であり、同図(a)はタイミングチェーンガイド50の平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。矢視図である。
タイミングチェーンガイド50は、第1実施の形態のタイミングチェーンガイド10と同様にガイド本体11及びガイド本体11に貼着されるシュー21を備える。
シュー21の前面22の幅方向中央に、上側端から下側端に亘って連続する凸部30が形成され、かつ凸部30の両側に沿って溝状の潤滑油保持部51が形成される。凸部30は、平坦でローラ104より幅狭でローラ104を支持する頂面31と、両側面32、32を有する断面コ字状に形成される。
更に、潤滑油保持部51は、凸部30の側面32と、この側面32の基端から幅方向外側、即ち凸部30から離反するに従ってガイド本体11から離反するように傾斜する傾斜面52によって形成される。
潤滑油保持部51を形成する傾斜面52は、図4(b)に示すように凸部30の頂面31にローラ104が当接して支持されたタイミングチェーン100のインナリンクプレート101及びアウタリンクプレート102の外周縁101a、102aに隣接して対向すると共に側面32の基端32aから幅方向外側、即ち凸部30から離反するに従ってガイド本体11から離反するように傾斜する第1傾斜面52Aと、図4(c)に示すようにインナリンクプレート101及びアウタリンクプレート102の外周縁101a、102aと離間、より詳細には図4(b)に示すインナリンクプレート101及びアウタリンクプレート102の外周縁101a、102aと第1傾斜面52Aの隙間より大きな間隙を有して凸部30から離反するに従ってガイド本体11から離反するように傾斜する第2傾斜面52Bとが段差52aを介在して潤滑油保持部51の延在方向に沿って交互に形成される。
このように構成されたタイミングチェーンガイド50によると、クランクスプロケット2、吸気カムスプロケット4及び排気カムスプロケット6に巻き掛けられたタイミングチェーン100は、クランクスプロケット2と排気カムスプロケット4との間においてタイミングチェーンガイド10の凸部30の頂面31がローラ104に圧接し、タイミングチェーン100の振れが抑制される。
また、走行するタイミングチェーン100に付着した潤滑油がタイミングチェーン100によって導かれ、潤滑油がタイミングチェーンガイド10の凸部30に沿って溝状に形成された潤滑油保持部51に供給され、かつ飛散する潤滑油が第2傾斜面52Bとインナリンクプレート101及びアウタリンクプレート102の外周縁101a、102aとの間隙から潤滑油保持部51内に供給され、潤滑油保持部51内に効率的に潤滑油が供給される。
一方、潤滑油保持部51内に供給された潤滑油は、タイミングチェーン100に沿って流動すると共に段差52a及び第2傾斜面52Bによって局部的に断面が大きくなった膨出部53が形成され、潤滑油保持部51の膨出部53に潤滑油が効率的に滞留保持される。これにより常時にタイミングチェーン100及び凸部30の頂面31と転動するローラ104との間を潤滑し、かつ第1傾斜面52Aと走行するアウタリンクプレート102の外周縁102a及びインナリンクプレート101の外周縁101aとの間が潤滑される。
一方、タイミングチェーンガイド10の凸部30の頂面31にローラ104が支持されて循環走行するタイミングチェーン100が振れて倒れ発生した際には、瞬時にアウタリンクプレート102の外周縁102aが第1傾斜面52Aに接触してタイミングチェーン100の倒れを抑制し、第1実施の形態と同様に、凸部30の頂面31の側縁によるローラ104への面圧の上昇が抑制されてローラ104の焼き付きが防止されると共にタイミングチェーン100の摺動抵抗の上昇が抑制される。更に、潤滑油保持部51の潤滑油保持によってタイミングチェーン100が倒れたときに摺接するアウタリンクプレート102の外周縁102aと第1傾斜面52Aとの摩擦抵抗が低減されてアウタリンクプレート102の外周縁102a等の焼き付きが防止される。
従って、このタイミングチェーンガイド50によると、第1実施の形態のタイミングチェーンガイド10の潤滑保持部35に対し潤滑部保持部51により多くの潤滑油の保持が可能になり、第1実施の形態に加え、更にタイミングチェーン100及び凸部30の頂面31と転動するローラ104との間や傾斜面52と走行するアウタリンクプレート102の外周縁102a及びインナリンクプレート101の外周縁101aとの間が潤滑を向上できる。
(第4実施の形態)
次に、本発明の第4実施の形態のチェーンガイドを、図5を参照して説明する。本実施の形態は、第1実施の形態とタイミングチェーンガイド及びタイミングチェーンレバーにおける潤滑油保持部の形状が異なり、他の構成は第1実施の形態と同様であり、潤滑油保持部を主に説明し、他の構成は対応する部位に同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略する。
図5は、上述の図2に対応する本実施の形態におけるタイミングチェーンガイド60の説明図であり、同図(a)はタイミングチェーンガイド60の平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。矢視図である。
タイミングチェーンガイド60は、第1実施の形態のタイミングチェーンガイド10と同様にガイド本体11及びガイド本体11に貼着されるシュー21を備える。
シュー21の前面22の幅方向中央に、上側端から下側端に亘って連続する凸部30が形成され、かつ凸部30の両側に沿って溝状の潤滑油保持部51が形成される。凸部30は、平坦でローラ104より幅狭でローラ104を支持する頂面31と、両側面32、32を有する断面コ字状に形成される。
更に、潤滑油保持部61は、凸部30の側面32と、この側面32の基端から幅方向外側、即ち凸部30から離反するに従ってガイド本体11から離反する傾斜面62によって形成される。
潤滑油保持部61を形成する傾斜面62は、図5(b)に示すように凸部30の頂面31にローラ104が当接して支持されたタイミングチェーン100のインナリンクプレート101及びアウタリンクプレート102の外周縁101a、102aに隣接して対向すると共に側面32の基端32aから幅方向外側、即ち凸部30から離反するに従ってガイド本体11から離反するように傾斜する第1傾斜面62Aと、図5(c)に示すようにインナプレート101及びアウタリンクプレート102の外周縁101a、102aと離間して凸部30の基端から該凸部30の頂面31と平行でインナリンクプレート101の外周縁101a及びアウタリンクプレート102の外周縁102aと対向する底面部分62Ba及び底面部分62Baの端部から凸部30の側面32と対向する側面部分62Bbを有する断面ほぼL字状の第2傾斜面62Bとが段差62aを介在して潤滑油保持部61の延在方向に沿って交互に形成される。
このように構成されたタイミングチェーンガイド60によると、クランクスプロケット2、吸気カムスプロケット4及び排気カムスプロケット6に巻き掛けられたタイミングチェーン100は、クランクスプロケット2と排気カムスプロケット4との間においてタイミングチェーンガイド10の凸部30の頂面31がローラ104に圧接し、タイミングチェーン100の振れが抑制される。
また、走行するタイミングチェーン100に付着した潤滑油がタイミングチェーン100によって導かれ、潤滑油がタイミングチェーンガイド10の凸部30に沿って凹設された潤滑油保持部61に供給され、かつ飛散する潤滑油が第2傾斜面62Bとインナリンクプレート101及びアウタリンクプレート102の外周縁101a、102aとの間隙から潤滑油保持部61内に供給され、潤滑油保持部61内に効率的に潤滑油が供給される。
一方、潤滑油保持部61内に供給された潤滑油は、タイミングチェーン100に沿って流動すると共に段差62a及び底面部分62Baと側面部分62Bbによる第2傾斜面62Bによって局部的に断面が大きくなった膨出部63に潤滑油が効率的に滞留保持される。これにより常時にタイミングチェーン100及び凸部30の頂面31と転動するローラ104との間を潤滑し、かつ第1傾斜面62Aと走行するアウタリンクプレート102の外周縁102a及びインナリンクプレート101の外周縁101aとの間が潤滑される。
一方、タイミングチェーンガイド10の凸部30の頂面31にローラ104が支持されて循環走行するタイミングチェーン100が振れて倒れが発生した際には、瞬時にアウタリンクプレート102の外周縁102aが第1傾斜面62Aに接触してタイミングチェーン100の倒れを抑制し、第1実施の形態と同様に、凸部30の頂面31の側縁31aによるローラ104への面圧の上昇が抑制されてローラ104の焼き付きが防止されると共にタイミングチェーン100の摺動抵抗の上昇が抑制される。更に、潤滑油保持部61の膨出部63への潤滑油保持によってタイミングチェーン100が倒れたときに摺接するアウタリンクプレート102の外周縁102aと第1傾斜面62Aとの摩擦抵抗が低減されて焼き付きが防止される。
従って、このタイミングチェーンガイド60によると、第1実施の形態のタイミングチェーンガイド10の潤滑保持部35に対し潤滑部保持部61により多くの潤滑油の保持が可能になり、第1実施の形態に加え、更にタイミングチェーン100及び凸部30の頂面31と転動するローラ104との間や傾斜面62と走行するアウタリンクプレート102の外周縁102a及びインナリンクプレート101の外周縁101aとの間の潤滑を向上できる。
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記第3実施の形態における第2傾斜面による膨出部と第3実施形態による膨出部とを混在にて潤滑油保持部を形成することもできる。また、DOHCエンジンに限らず、単一のカム軸を有すOHCエンジンに適用することもできる。