JP5649620B2 - 変速機ケースにおける潤滑油排出構造 - Google Patents
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Description
図7は、図6の(a)におけるA−A断面図であって、(a)は、ファイナルギヤFの回転数が最大回転数に達する前の段階での変速機ケース100の厚み方向における潤滑油の高さ分布を説明する図であり、(b)は、ファイナルギヤFの回転数が最大回転数に達した時点での変速機ケース100の厚み方向における潤滑油の高さ分布を説明する図である。
プーリ室101は、軸方向から見て環状の周壁部104の内側に形成されており、この周壁部104の内側では、プライマリプーリの収容部(プライマリプーリ収容部102)と、セカンダリプーリの収容部(セカンダリプーリ収容部103)とが、変速機ケース100の幅方向で並んで設けられている。
バルブ収容部106は、プライマリプーリ収容部102と収容部108との仕切壁部108aよりも、図6の(b)における紙面奥側に膨出して形成されており、図7の(a)に示すように、この膨出した部分の上側に、前記したプライマリプーリ収容部102が位置している。
変速機ケース100においてデフ収容部110は、軸線X3の軸方向で、セカンダリプーリ収容部103(プーリ室101)から離れる方向にオフセットした位置に設けられており、このデフ収容部110では、図中仮想線で示すファイナルギヤFが軸線X3周りに回転可能に設けられている。
そのため、プーリ室101内の潤滑油を、バルブ収容部106側に速やかに排出できるようにすることが種々検討されている(例えば、特許文献1)。
具体的には、変速機ケース100内では、図6の(b)に示す仮想線Im1の高さまで潤滑油が満たされており、この仮想線Im1が、ファイナルギヤFが回転していないときの潤滑油の高さ分布を示している。
そして、この状態から、ファイナルギヤFが図中時計回り方向に回転すると、デフ収容部110内の潤滑油が、ファイナルギヤFにより掻き上げられて、掻き上げられた潤滑油が、変速機ケース100の幅方向(軸線X3の径方向)でデフ収容部110に隣接するバルブ収容部106および収容部108側や、変速機ケース100の厚み方向(軸線X3の軸方向)でデフ収容部110から離れた位置にあるプーリ室101(図7の場合にはプライマリプーリ収容部102)側に流入することを見出した。
よって、停止していたファイナルギヤFの回転数が最大回転数まで変化すると、変速機ケース100の幅方向における潤滑油の高さ分布は、仮想線Im1で示すような高さ分布から、仮想線Im2で示すような高さ分布を経たのち、最終的に仮想線Im3で示すような高さ分布になる。
よって、停止していたファイナルギヤFの回転数が最大回転数まで変化すると、ファイナルギヤFの回転軸(軸線X3)の鉛直方向における潤滑油の高さは、初期位置P1から、途中位置P2を経て、最低位置P3まで低下することになる。
そうすると、変速機ケース100の厚み方向における潤滑油の高さ分布は、仮想線Im1で示す高さ分布から、仮想線Im4で示す高さ分布を経たのち、最終的に仮想線Im5で示すような高さ分布になる(図7参照)。
そのため、掻き上げられた潤滑油により油面の高さ分布が変化すると、排出孔102a、102bが油面よりも下側に位置することがあり、かかる場合、プーリ室101からバルブ収容部106側への潤滑油の排出が阻害されてしまう。
ルブボディを収容するバルブ収容部が設けられていると共に、
前記変速機構収容部の前記バルブ収容部との境界壁に、前記変速機構部を潤滑した潤滑
油の排出孔が、前記バルブ収容部に連通して設けられており、
前記変速機構部の出力回転が入力されるファイナルギヤを収容するギヤ収容部が、前記
ファイナルギヤの回転軸方向で、前記変速機構収容部からオフセットした位置に設けられ
た変速機ケースにおいて、
前記境界壁では、前記回転軸方向における前記ギヤ収容部寄りの位置に、前記排出孔が
設けられており、
前記回転軸方向における前記排出孔の位置は、
前記変速機ケース内における前記回転軸方向での潤滑油の傾きであって前記ファイナルギヤの最大回転時の傾きを示す直線と、前記境界壁との交点よりも、前記ギヤ収容部寄りの位置に設定されており、
前記直線は、前記ファイナルギヤの最大回転時の前記ギヤ収容部内の潤滑油の高さ位置を通る水平線と、前記ファイナルギヤの前記変速機構収容部側の面との交点を始点とした直線であって、前記ファイナルギヤから前記変速機構収容部側に離れるにつれて、前記水平線からの高さが高くなる直線である構成の変速機ケースにおける潤滑油排出構造とした。
図1は、実施の形態にかかる変速機ケース10の斜視図であって、変速機ケース10と共に、この変速機ケース10に組み付けられるファイナルギヤFと、変速機構部の主要な要素(プライマリプーリPa、セカンダリプーリPb、ベルトV)を示した図である。
図2は、変速機ケース10におけるプーリ室20を説明する図であって、(a)は、変速機ケース10のプーリ室20側の平面図であり、(b)は、プーリ室20における潤滑油の排出孔11a、11b、11cの部分を拡大して示す斜視図である。
プーリ室20は、軸方向から見て環状の周壁部11の内側に形成されており、この周壁部11の内側では、プライマリプーリPaの収容部(プライマリプーリ収容部21)と、セカンダリプーリPbの収容部(セカンダリプーリ収容部22)とが、変速機ケース10の幅方向で並んで設けられている。
なお、図3の(a)では、変速機ケース10内の潤滑油の高さ分布であって、ファイナルギヤFが回転していないときの高さ分布を仮想線Im1で、ファイナルギヤFが最大回転数で回転しているときの高さ分布を仮想線Im3で、それぞれ示している。
変速機ケース10では、プライマリプーリ収容部21の下部にバルブ収容部30の奥側が位置しており、前記したプーリ室20の周壁部11におけるバルブ収容部30との境界となる部分(境界壁部111:図5参照)に、プライマリプーリ収容部21とバルブ収容部30とを連通して排出孔11a、11b、11cが設けられている(図2、図5参照)。
そのため、変速機ケース10では、プライマリプーリPaとセカンダリプーリPbを潤滑した潤滑油が、周壁部11に沿ってプーリ室101(プライマリプーリ収容部21)の下部に設けた排出孔11a、11b、11c側に流れたのち、排出孔11a、11b、11cを通ってバルブ収容部106に排出されるようになっている。
そして、バルブ収容部106に排出された潤滑油は、バルブ収容部106の下部に取り付けられたオイルパン(図示せず)に、最終的に回収されるようになっている。
このクラッチ収容部50の紙面手前側(トルクコンバータ側)の下部には、ファイナルギヤFを収容するデフ収容部60が設けられている。デフ収容部60は、図3の(a)における紙面奥側に窪んで形成されており、周壁部12におけるデフ収容部60の外周を規定する部分121の内側に、ファイナルギヤFが収容されるようになっている。
このデフ収容部60内においてファイナルギヤFは、前記したプライマリプーリPaおよびセカンダリプーリPbの回転軸(軸線X1、X2)に対して平行な軸線X3周りに回転可能に設けられており、ファイナルギヤFは、セカンダリプーリPbの出力回転が図示しないリダクションギヤを介して入力されると、図示しないデフケースと一体に回転するようになっている。
デフ収容部60の奥側の壁部61では、バルブ収容部30寄りであって、奥側にバルブ収容部30が位置する部分に連通孔62、63が設けられており、デフ収容部60とバルブ収容部30とが、連通孔62、63を介して互いに連通している。
連通孔63は、ファイナルギヤFの回転軸(軸線X3)よりも上側に位置している。そして、この連通孔63は、ファイナルギヤFが最大回転数で回転しているときの潤滑油の高さ(図中仮想線Im3参照)よりも上側となる位置であって、バルブ収容部30とプーリ室20との境界壁部111に近接した位置に設けられている。
図4に示すように、変速機ケース10の下面には、バルブ収容部30が開口しており、バルブ収容部30を画成する周壁部13の内側には、コントロールバルブボディ(図示せず)の取付部31、32、33が、紙面手前側に突出して設けられている。
プライマリプーリ収容部21において排出孔11cは、ファイナルギヤFの回転軸(軸線X3)の径方向(変速機ケース10の幅方向)および軸方向で、ファイナルギヤFからの離間距離が最も小さくなる位置に設けられている。
すなわち、ファイナルギヤFが軸線X3周りに回転した際に、プライマリプーリ収容部21における油面の高さが低くなる側の位置であって、ファイナルギヤFが最大回転数で回転した際に、プライマリプーリ収容部21側に潤滑油が偏って、ファイナルギヤFからの離間距離が大きくなるにつれて潤滑油の高さが高くなる状況が生じたとしても、潤滑油の油面の下側とならない位置に、排出孔11cが設けられている。
そのため、ファイナルギヤFの最大回転時に、プーリ室200内の潤滑油が、バルブ収容部30側に排出されなくなることが好適に防止されるようになっている。
実施の形態では、デフ収容部60とバルブ収容部30とを連通させる連通孔63が、プライマリプーリ収容部21寄りの最も上側の位置に設けられているので、図4に示すように、この連通孔63と、プライマリプーリ収容部21とバルブ収容部30とを連通させる排出孔11cとが、互いに近接して位置している(図4参照)。
そうすると、連通孔63に近接した排出孔11cの近傍にも、負圧状態が引き起こされて、プライマリプーリ収容部21室内の潤滑油が排出孔11c側に吸引されるので、プライマリプーリ収容部21室内の潤滑油の排出がより効果的に行えるようになっている。
プーリ室20のバルブ収容部30との境界壁部111に、変速機構部(プライマリプーリPaとセカンダリプーリPbなど)を潤滑した潤滑油の排出孔11a、11b、11cが、バルブ収容部30に連通して設けられており、
セカンダリプーリPbの出力回転が入力されるファイナルギヤFを収容するデフ収容部60が、ファイナルギヤFの回転軸(軸線X3)方向で、プーリ室20からオフセットした位置に設けられた変速機ケース10において、
境界壁部111では、回転軸方向におけるデフ収容部60寄りの位置であって、底壁部21aの近傍に、排出孔11cが設けられている構成の変速機ケースにおける潤滑油排出構造とした。
これにより、潤滑油がプーリ室20内に滞留して、プライマリプーリPaとセカンダリプーリPbの回転のフリクションとなることを防止できるので、潤滑油がプライマリプーリPaとセカンダリプーリPbの回転のフリクションとなった場合の問題、すなわち燃費効率が悪化するという問題の発生を好適に防止できる。
直線Im5は、ファイナルギヤFの最大回転時のデフ収容部60内の潤滑油の高さ位置Im3(軸線X3の鉛直方向における高さ位置)を通る水平線と、ファイナルギヤFのプーリ室20側の面Faとの交点P3を始点とした直線であって、ファイナルギヤFからプーリ室20側に離れるにつれて、水平線からの高さが高くなる直線である構成とした。
デフ収容部60におけるバルブ収容部30と重なる部分であって、プーリ室20とバルブ収容部30との境界壁部111寄りである上側の位置に、デフ収容部60とバルブ収容部30とを連通させる連通孔63が設けられている構成とした。
ここで、ファイナルギヤFが図中時計回り方向に回転すると、デフ収容部60における連通孔63の近傍領域の圧力が他の部分よりも低くなり、バルブ収容部30における連通孔63の近傍の気体(流体)がデフ収容部60側に引っ張られて、バルブ収容部30内における連通孔63の近傍の圧力が、他の領域に比べて低くなる。
そうすると、連通孔63に近接した排出孔11cの近傍にも、負圧状態が引き起こされて、プライマリプーリ収容部21内の潤滑油が排出孔11c側に吸引されるので、プライマリプーリ収容部21(プーリ室20)内の潤滑油の排出がより効果的に行えることになる。
上記のように構成して、潤滑油がプーリ室内に滞留しないようにすることで、このような問題の発生を好適に防止できることになる。
前記排出孔11cは、プライマリプーリ収容部21のバルブ収容部30との境界壁部111において、軸線X3の径方向の最もセカンダリプーリ収容部22寄りの位置であって、プライマリプーリ収容部21とセカンダリプーリ収容部22とを区画する側壁部221近傍の位置に設けられている構成とした。
よって、ファイナルギヤFの回転軸の軸方向および径方向の両方向における潤滑油の高さ分布の変化に対応できるので、潤滑油がプーリ室20内に滞留してプライマリプーリPaとセカンダリプーリPbの回転のフリクションとなることを、より確実に防止できることになる。
11 周壁部
111 境界壁部(境界壁)
11a〜11c 排出孔
12 周壁部
13 周壁部
20 プーリ室(変速機構収容部)
21 プライマリプーリ収容部
21a 底壁部
22 セカンダリプーリ収容部
22a 底壁部
221 側壁部
30 バルブ収容部
30 収容部
301 側壁部
31〜33 取付部
40 取付部
40b 挿通孔
40c 凹穴
40d、40e 保持部
50 クラッチ収容部
60 デフ収容部(ギヤ収容部)
61 壁部
61a 中央開口
62 連通孔
63 連通孔
100 変速機ケース
101 プーリ室
102 プライマリプーリ収容部
102a、102b 排出孔
103 セカンダリプーリ収容部
104 周壁部
104a 境界壁部
106 バルブ収容部
107 周壁部
108 収容部
108a 仕切壁部
109 クラッチ収容部
110 デフ収容部
F ファイナルギヤ
P1 プライマリプーリ
P2 セカンダリプーリ
V ベルト
X1 軸線
X2 軸線
X3 軸線
Claims (3)
- ベルト式無段変速機の変速機構部を収容する変速機構収容部の下部に、コントロールバルブボディを収容するバルブ収容部が設けられていると共に、
前記変速機構収容部の前記バルブ収容部との境界壁に、前記変速機構部を潤滑した潤滑油の排出孔が、前記バルブ収容部に連通して設けられており、
前記変速機構部の出力回転が入力されるファイナルギヤを収容するギヤ収容部が、前記ファイナルギヤの回転軸方向で、前記変速機構収容部からオフセットした位置に設けられた変速機ケースにおいて、
前記境界壁では、前記回転軸方向における前記ギヤ収容部寄りの位置に、前記排出孔が設けられており、
前記回転軸方向における前記排出孔の位置は、
前記変速機ケース内における前記回転軸方向での潤滑油の傾きであって前記ファイナルギヤの最大回転時の傾きを示す直線と、前記境界壁との交点よりも、前記ギヤ収容部寄りの位置に設定されており、
前記直線は、前記ファイナルギヤの最大回転時の前記ギヤ収容部内の潤滑油の高さ位置を通る水平線と、前記ファイナルギヤの前記変速機構収容部側の面との交点を始点とした直線であって、前記ファイナルギヤから前記変速機構収容部側に離れるにつれて、前記水平線からの高さが高くなる直線であることを特徴とする変速機ケースにおける潤滑油排出構造。 - 前記ギヤ収容部と前記バルブ収容部は、前記変速機ケースの幅方向で隣接して設けられていると共に、前記回転軸方向から見て、前記ギヤ収容部の前記バルブ収容部側は、前記バルブ収容部と重なるように設けられており、
前記ギヤ収容部における前記バルブ収容部と重なる部分であって、前記変速機構収容部と前記バルブ収容部との境界壁寄りの位置に、前記ギヤ収容部と前記バルブ収容部とを連通させる連通孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の変速機ケースにおける潤滑油排出構造。 - 前記変速機構収容部では、プライマリプーリの収容部とセカンダリプーリの収容部とが、前記変速機ケースの幅方向で隣接して設けられており、
前記バルブ収容部は、前記プライマリプーリの収容部側の下部に設けられていると共に、前記ファイナルギヤは、前記バルブ収容部の前記セカンダリプーリの収容部側の側方に位置しており、
前記排出孔は、前記プライマリプーリの収容部の前記バルブ収容部との境界壁において、前記回転軸の径方向の最も前記セカンダリプーリの収容部寄りの位置に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の変速機ケースにおける潤滑油排出構造。
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