JP5649358B2 - 血管内皮細胞の管腔形成抑制剤 - Google Patents

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本発明は、デオキシ糖誘導体、または糖アルコール誘導体を有効成分とする、血管内皮細胞の管腔形成抑制剤に関する。更に詳しくは、デオキシ糖誘導体、または糖アルコール誘導体を有効成分として、血管内皮細胞の増殖を実質的に阻害しないことを特徴とする管腔形成抑制剤に関する。
血管新生は、新しい血管が形成される現象である。血管形成において血管を構築する血管内皮細胞の増殖と、遊走と、血管内皮細胞による管腔の形成が主要な役割を果たしている。そのため、血管新生阻害剤の評価は、血管内皮細胞の増殖と遊走と管腔形成に対する阻害剤の作用を観察することで行われている。血管新生は組織の発達や創傷治癒過程などの正常な生命活動の他に、関節リウマチ、糖尿病網膜症、癌の増殖や転移の際などにおいても活発化し、疾患の進行に深くかかわっている。したがって、このような病的な血管新生を阻害することが、前述の疾患の治療につながることから、血管新生に関連した治療薬の研究開発が多くの企業等で行われてきた。(非特許文献1参照)
血管新生を阻害する物質としては、アバスチン、インターフェロンα、マリマスタット、ネオバスタット、サリドマイド、TNP−470など多くの化合物が報告されている(非特許文献1、2参照)。しかし、副作用の問題や、病的な血管新生だけを選択的に阻害することが難しいなどの問題があり、新たな血管新生阻害剤候補の開発が強く求められている。
血管新生阻害剤候補の開発において、単糖やデオキシ糖による血管新生に対する効果が検討された。単糖やデオキシ糖などの糖質は生体内に広く存在し様々な生命現象に関与していることから、血管新生に対して何らかの作用を及ぼすものと期待された。
まず、2−デオキシ−D−リボースは、チミジンホスホリラーゼ(TP)による血管新生の活性を有するが、その立体異性体である2−デオキシ−L−リボース、2−デオキシ−L−リボースのヒドロキシル基のメチル化および/またはアシル化誘導体、並びに2−デオキシ−D−リボースのヒドロキシル基のメチル化および/またはアシル化誘導体が、血管内皮細胞の遊走実験と、マウスでの血管新生阻害実験により血管新生阻害剤であることが開示された(特許文献1参照)。
一方、多数の希少糖、単糖について血管内皮細胞の増殖や管腔形成に及ぼす効果を検討した結果、D−アロース、D−マンノース、2−デオキシ−D−グルコース、3−デオキシ−D−グルコース、L−ソルボース、2−デオキシ−D−リボースと2−デオキシ−L−リボースに血管内皮細胞の増殖抑制が見られた。管腔形成の抑制は、D−アロース、D−アルトロース、D−グロース、D−タロース、L−アロース、2−デオキシ−D−グルコース、3−デオキシ−D−グルコース、D−リボース、L−リボース、2−デオキシ−D−リボースと2−デオキシ−L−リボースに認められた。(2−デオキシ−D−リボースの効果が前記の特許文献1と一致しないが理由は不明である。)D−アロース、2−デオキシ−D−グルコース、3−デオキシ−D−グルコース、2−デオキシ−D−リボースと2−デオキシ−L−リボースは、増殖と管腔形成の両方の阻害作用を有していた。これらの結果から血管新生阻害作用という生理活性発現の原因は、D−グルコースの2位や3位の水酸基の不在にあると考えられた。(特許文献2、非特許文献3参照)
国際公開WO02/051423号パンフレット 国際公開WO2005/115408号パンフレット
R.K.ジェイン、P.F.カルメリ「血管新生の科学」、別冊日経サイエンス139(ポストゲノム時代の医療革新)、p100−107(2002年) 荒井雅吉、小林資正「血管新生を標的とする新しい抗がん剤」、化学63(10)、72−73(2008) 塚本郁子「希少糖の話」、薬剤学67(5)、314−322(2007)
本発明の課題は、デオキシ糖誘導体、または糖アルコール誘導体を有効成分として、血管内皮細胞の増殖を実質的に阻害しないことを特徴とする管腔形成抑制剤を提供することである。
本発明者らは、単糖の六員環に結合する1つの水酸基を不在としたデオキシ糖よりも、2つの水酸基を不在とした六員環構造を有するデオキシ糖誘導体、または糖アルコール誘導体の方が更に強い血管新生阻害作用を示す可能性があると着想し、D−Glucal(下式(1))と、2,3−Dideoxy−D−erythro−hexose(DEH、下式(2))、Methyl 2,3−dideoxy−α−D−erythro−hexopyranoside(MDEH、下式(3))、および1,5−Anhydro−2−deoxy−D−arabino−hexitol(ADAH、下式(4))について、血管内皮細胞の増殖と管腔形成に及ぼす効果を調べたところ、最後のADAHは管腔形成も細胞増殖も阻害しなかったのに対して、前3者は驚くべきことに血管内皮細胞による管腔形成を阻害するが、血管内皮細胞の増殖を実質的に阻害しないことを見出して、本発明を完成するに至った。
Figure 0005649358
すなわち、本発明は、以下の通りの管腔形成抑制剤を提供するものである。
(1) デオキシ糖誘導体、または1,5−Anhydro−2−deoxy−D−arabino−hexitol(ADAH、下式(4))を除く糖アルコール誘導体を有効成分として、血管内皮細胞の増殖を実質的に阻害しないことを特徴とする管腔形成抑制剤。
(2) 糖アルコール誘導体がD−Glucal(下式(1))である、もしくはデオキシ糖誘導体が2,3−Dideoxy−D−erythro−hexose(DEH、下式(2))、またはAlkyl 2,3−dideoxy−D−erythro−hexopyranoside(ADEH、下式(5))である、(1)に記載の管腔形成抑制剤。
Figure 0005649358
(式(5)で、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
本発明の管腔形成抑制剤は、血管内皮細胞による管腔形成を阻害するが、血管内皮細胞の増殖を阻害しないことから、細胞毒性のない血管新生阻害剤として有用である可能性が期待できる。
実施例の管腔形成アッセイの結果(10日間培養後の管腔面積の相対値)を示す棒グラフ。 実施例の増殖アッセイの結果(添加48時間後の細胞数の相対値)を示す棒グラフ。
本発明の管腔形成抑制剤は、デオキシ糖誘導体、または1,5−Anhydro−2−deoxy−D−arabino−hexitol(ADAH)を除く糖アルコール誘導体を有効成分とする。好ましくは、糖アルコール誘導体としてD−Glucal、もしくはデオキシ糖誘導体として2,3−Dideoxy−D−erythro−hexose(DEH)、またはAlkyl 2,3−dideoxy−D−erythro−hexopyranoside(ADEH)を有効成分とする。ADEHのアルキル基は、炭素数1〜5が好ましく、炭素数1(メチル基)が特に好ましい。炭素数が6以上では、溶解性が悪くなり好ましくない。
D−Glucalは、試薬として市販されている(シグマ−アルドリッチ、464058)。2,3−Dideoxy−D−erythro−hexose(DEH)は、S.Y−K.Tam and B.Fraser−Reid,Carbohydrate Research,45(1),29−43(1975)に記載の方法により合成することができる。Methyl 2,3−dideoxy−α−D−erythro−hexopyranoside(MDEH)を含むAlkyl 2,3−dideoxy−D−erythro−hexopyranoside(ADEH)は、S.Konstantinovic et al.,J.Serb.Chem.Soc.,66(8),499−505(2001)に記載の方法により合成できる。また、これらは公知の合成方法を組合せた別の方法により合成することも可能である。
なお、前記の特許文献2、非特許文献3に記載された希少糖、単糖のうち、増殖抑制効果を有さないが管腔形成阻害効果を有するものとして、D−アルトロース、D−グロース、D−タロース、L−アロース、D−リボース、L−リボースが記載されている。前4つはアルドヘキソースであり、後2つはアルドペントースであるから、これらはデオキシ糖でも糖アルコールでもない。従って本発明は、特許文献2、非特許文献3には開示されていないし、これらの記載から容易に発明できるものでもないと考える。
本発明において管腔形成を評価する方法に用いる血管内皮細胞としては、例えば、ヒト、ウシ、マウス、ラット由来の血管内皮細胞が挙げられる。さらに詳しくは、例えば、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞、ウシ大動脈内皮細胞、マウス脳内皮細胞、ラット肝類洞内皮細胞が挙げられる。臍帯静脈内皮細胞、及びその他の血管内皮細胞の単離および培養方法は、当業者によく知られており、いずれの方法を用いて得られたものであってもよい。また、臍帯静脈血管内皮細胞由来の培養細胞は市販されており、これを用いるのが簡便である。本発明において管腔形成アッセイには、例えば、2%のウシ胎児血清を添加した市販の内皮細胞増殖培地中で、継代培養した臍帯由来血管内皮細胞が好適に用いられ、採取した後、3〜8代の細胞が特に好適に用いられる。
本発明の管腔形成抑制剤は、血管新生を伴う疾患、例えば糖尿病性網膜症、又は加齢黄斑変性症による視力低下および失明、固形腫瘍の増殖、慢性関節リューマチの特に関節腔内におけるパンヌス形成、関節症における滑膜の増殖等の疾患、又は乾癬等病的血管新生を伴う疾患などの予防および治療において、甘味料、調味料、食品添加物、食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品・医薬部外品および飼料として利用できる可能性がある。
予防剤または治療剤は、これらのみで用いるほか、一般的賦形剤、安定剤、保存剤、結合剤、崩壊剤等の適当な添加剤を配合し、液剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、散剤、錠剤等の適宜な剤型を選んで製剤し、経口的あるいは経腸的に投与することができる。
本発明を飼料として用いる場合、家畜、家禽、その他蜜蜂、蚕、魚などの飼育動物のための飼料であって、本発明のデオキシ糖誘導体、または1,5−Anhydro−2−deoxy−D−arabino−hexitol(ADAH)を除く糖アルコール誘導体(以下、「本発明の誘導体」と略す。)を配合した組成物が本発明の誘導体として飲食品中の炭水化物量(糖質量)に対して0.1〜50重量%となるように配合されていることを特徴とする。このような飼料を家畜、家禽、その他蜜蜂、蚕、魚などの飼育動物のための飼料動物に投与した場合、肥満傾向が緩和される。したがって、本発明の飼料は、ペットの肥満防止、糖尿病防止や、脂肪付の少ない肉を持つ食用獣肉を得るために有用な飼料である。
甘味料、調味料、食品添加物、食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品・医薬部外品および飼料に、本発明の誘導体を配合した組成物の形態で含有せしめる方法は、その製品が完成するまでの工程で本発明の誘導体として0.1重量%以上、望ましくは0.5重量%以上含有せしめればよく、例えば、混和、混捏、溶解、融解、浸漬、浸透、散布、塗布、被覆、噴霧、注入、晶析、固化などの公知の方法が適宜選ばれる。
本発明の誘導体を配合した組成物において、本発明の誘導体は、組成物中に0.1〜50重量%含まれるように配合されている。好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%である。組成物中において、本発明の誘導体が0.1重量%未満だと、血糖値の急上昇の抑制作用が充分ではない。また、組成物中において、本発明の誘導体が50重量%を越えると、経済的な意味で好ましくない。
本発明のデオキシ糖誘導体、または1,5−Anhydro−2−deoxy−D−arabino−hexitol(ADAH)を除く糖アルコール誘導体、あるいはその薬理的に許容される塩、又は/及び水和物(以下、「本発明の化合物」と略す。)の製剤についてさらに詳細に説明する。
本発明の化合物の剤型としては、有効成分を医学的に許容される担体、賦形剤、滑沢剤、結合剤等の添加物を含有する種々の形態、例えば水または各種の輸液用製剤に溶解させた液剤、散剤、顆粒剤、錠剤、注射剤、坐剤、又は外用製剤等が、公知の製剤技術により製造できる。本発明の化合物を人体用の医薬として使用する場合にその投与量は、一般的には、成人の経口一日量として0.1−100mg、通常0.1−10mgが適当で、漸減していくのが好ましいことがある。前記の1日量は、1日に1回、又は適当な間隔をおいて1日2もしくは3回に分けて、あるいは食前、食後あるいは食事とともに投与することが可能である。注射による投与の場合は通常経口の1/5量が適当であるが、必要に応じて漸減あるいは漸増することができる。また、病巣局所に投与する場合、例えば関節腔内、又は眼球内等に投与する場合はさらに投与量を減ずることができ、全身に対する作用を減弱させ、有効に用いることが可能である。またその投与量は、患者の症状、年齢、又は体重等により適宜増減してもよい。
本発明の化合物を注射で投与する場合、水性注射剤、水性懸濁注射剤、脂肪乳剤、又はリポソーム注射剤等が可能である。水性注射剤、又は水性懸濁注射剤においては、本発明の化合物を、精製水と混合し、必要に応じて水溶性あるいは水膨潤性高分子、pH調整剤、界面活性剤、浸透圧調整剤、防腐剤、又は保存剤などを加え、混合して、必要に応じて加熱しながら溶解乃至懸濁させ、滅菌して注射剤容器に充填密封し、水性注射剤、又は水性懸濁注射剤とする。水性注射剤は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内、又は関節腔内等に投与することができる。また、水性懸濁注射剤は皮下、筋肉内、皮内、又は関節腔内等に服用することができる。また経口でも投与することができる。
水溶性あるいは水膨潤性高分子としては、ゼラチン、セルロース誘導体、アクリル酸誘導体、ポビドン、マクロゴール、ポリアミノ酸誘導体、又は多糖体類が好ましく、ゼラチン類では精製ゼラチンが好ましく、セルロース誘導体では、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、アクリル酸誘導体として、アミノアクリルメタアクリレートコポリマー、メタアクリル酸コポリマー、ポリアミノ酸誘導体としては、ポリリジン、ポリグルタミン酸が好ましい。多糖体としては、ヒアルロン酸、デキストラン、又はデキストリンが特に好ましい。水溶性あるいは水膨潤性高分子の添加量は、エスクレチン、その誘導体、あるいはその薬理的に許容される塩の性質、量、並びに水溶性あるいは水膨潤性高分子の性質、分子量、適用部位によって異なるが概ね製剤全量に対し、0.01%乃至10%の範囲で使用可能である。
pH調整剤には、人体に無害な酸あるいはアルカリが用いられ、界面活性剤には、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が用いられる。また、浸透圧調整剤には、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が、防腐剤にはパラベン類が、保存剤にはアスコルビン酸や亜硫酸塩類が例示される。これらの使用量は、特に限定はないが、その作用がそれぞれ発揮できる範囲で用いることができる。また、必要に応じ塩酸プロカイン等の局所麻酔剤、ベンジルアルコール等の無痛化剤、キレート剤、緩衝剤、あるいは水溶性有機溶剤等を加えてもよい。
脂肪乳剤は、適当な油脂に乳化剤と本発明の化合物を配合し、精製水を加えて、必要に応じて水溶性あるいは水膨潤性高分子、pH調整剤、界面活性剤、浸透圧調整剤、防腐剤、又は保存剤などを加え、適当な乳化装置で乳化し、滅菌して注射剤容器に充填密封することによって調製される。
本発明の化合物を主剤とする経口用製剤の剤型としては、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤や、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、又は油性ないし水性の懸濁液等を投与法に応じ適当な製剤を選択し、通常の賦形剤、滑沢剤、結合剤等の添加物と共に、公知の製剤技術により製造できる。
固形製剤としては活性化合物とともに製剤学上許容されている添加物を含み、例えば充填剤類や増量剤類、結合剤類、崩壊剤類、溶解促進剤類、湿潤剤類、又は潤滑剤類等を必要に応じて選択して混合し、製剤化することができる。
また外用製剤として溶液剤、懸濁液、乳濁液、軟膏、ゲル、クリーム、ローション、及びスプレー等を例示できる。
医薬品・医薬部外品や食品等の開発において最も重要で大きなハードルは、本発明の化合物の安全性の検証である。変異原性、生分解度試験および3種類の急性毒性試験(経口急性毒性試験、皮膚一次刺激試験、眼一次刺激試験)が、最も基本的な安全性試験として定められている。本発明の化合物は、安全であろうとの予想はできるものの、きちんとした検証が今後必要である。
以下に記載する実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
<D−glucalの合成>
Tri−O−acetyl−D−glucal(1.18g、4.28mmol)をメタノール(100ml)に溶解し0℃に冷却した。この溶液に28%ナトリウムメトキシド―メタノール溶液(113μl)をメタノール(20ml)に溶かした溶液を加え、室温まで温度を上げた。5時間30分撹拌したのち、陽イオン交換樹脂を用いて中和し、反応液をろ過した。ろ液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=15:1)、引き続きゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex LH−20,メタノール溶出)により精製し、式(1)で示されるD−glucal(312.4mg、50%)を得た。
1H NMR(600MHz,D2O)δ:6.25(dd,1H,J=2.1,6.2Hz),4.64(dd,1H,J=2.7,6.2Hz),4.07(td,1H,J=2.1,6.9Hz),3.67−3.77(m,3H),3.51(dd,1H,J=6.9,8.9Hz).
Figure 0005649358
<2,3−Dideoxy−D−erythro−hexose(DEH)の合成>
式(6)で示される化合物(1.4537g、5.90mmol;J.Serb.Chem.Soc.、2001年、66巻、p.499−505)を無水酢酸(100ml)に溶解し0℃に冷却した。この溶液に4%濃硫酸―無水酢酸溶液(3.5ml)を加えた。1時間撹拌したのち、反応液を酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。ろ過、溶媒を留去したのち、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、式(7)で示される化合物(631.1mg、40%)を得た。
1H NMR(600MHz,CDCl3)δ:6.12−6.17(m,1H,H−1α),5.79(dd,1H,J=2.7,8.9Hz,H−1β),4.80(dt,1H,J=4.8,11.0Hz,H−4α),4.68(dt,1H,J=4.8,9.6Hz,H−4β),4.27(dd,1H,J=4.8,12.4Hz,H−6α),4.20(dd,1H,J=5.5,12.4Hz,H−6β),4.15(dd,1H,J=4.1,12.4,H−6β),4.10(dd,1H,J=2.1,12.4Hz,H−6α),3.96−4.03(m,1H,H−5α),3.47−3.52(m,1H,H−5β),2.20−2.31(m,1H,H−3β),2.12,2.11,2.10,2.08,2.06,2.05(s×6,CH3×6),1.72−1.80(m,3H,H−2α,2β,3α),1.45−1.55(m,1H,H−3β).
Figure 0005649358
Figure 0005649358
式(7)で示される化合物(670mg、2.5mmol)をメタノール(70ml)に溶解し0℃に冷却した。この溶液に28%ナトリウムメトキシド―メタノール溶液(113μl)をメタノール(20ml)に溶かした溶液を加え、室温まで温度を上げた。19時間30分撹拌したのち、陽イオン交換樹脂を用いて中和し、反応液をろ過した。ろ液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=40:1)、引き続きゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex LH−20,メタノール溶出)により精製し、式(2)で示されるDEH(209.1mg、56%)を得た。
1H NMR(600MHz,CD3OD)δ:4.90−5.22(m,1H),3.91−4.20(m,1H),3.32−3.90(m,3H),1.67−2.09(m,4H).
Figure 0005649358
<Methyl 2,3−dideoxy−α−D−erythro−hexopyranoside(MDEH)の合成>
式(3)のMDEHは、S.Konstantinovic et al.,J.Serb.Chem.Soc.,66(8),499−505(2001)に記載の方法に従って、Tri−O−acetyl−D−glucal(2.72g、9.99mmol)から926.5mg(収率31%)を合成した。
1H NMR(600MHz,CD3OD)δ:4.63−4.67(m,1H),3.79(d,1H,J=2.7,11.7Hz),3.65(d,1H,J=6.2,11.7Hz),3.39−3.50(m,2H),3.35(s,3H),1.66−1.85(m,4H).
Figure 0005649358
<1,5−Anhydro−2−deoxy−D−arabino−hexitol(ADAH)の合成>
Tri−O−acetyl−D−glucal(1.0240g、3.76mmol)のエタノール溶液(60ml)へ、10wt%パラジウム/活性炭(709.4mg)をエタノール(12ml)に懸濁させた溶液を加え、水素を充てんさせた。室温で27時間撹拌したのち、反応液をろ過した。ろ液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、式(8)で示される化合物(875.8mg、85%)を得た。
1H NMR(600MHz,CDCl3)δ:4.94−5.01(m,2H),4.24(dd,1H,J=5.5,12.4Hz),4.10(dd,1H,J=2.1,12.4Hz),4.04(ddd,1H,J=1.4,4.8,11.7Hz),4.48−4.56(m,2H),2.10(s,3H),2.07−2.14(m,1H),2.05(s,3H),2.04(s,3H),1.77−1.87(m,1H).
Figure 0005649358
式(8)で示される化合物(865.3mg、3.15mmol)をメタノール(32ml)に溶解し0℃に冷却した。この溶液に28%ナトリウムメトキシド−メタノール溶液(40μl)を加え、室温まで温度を上げた。2時間30分撹拌したのち、陽イオン交換樹脂を用いて中和し、反応液をろ過した。ろ液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1)、引き続きゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Sephadex LH−20,メタノール溶出)により精製し、式(4)で示されるADAH(1.0591g、91%)を得た。
1H NMR(600MHz,CD3OD)δ:3.91(ddd,1H,J=1.4,4.8,11.7Hz),3.83(dd,1H,J=2.1,11.7Hz),3.62(dd,1H,J=5.5,11.7Hz),3.47−3.54(m,1H),3.40−3.46(m,1H),3.27−3.33(m,1H),3.09−3.18(m,2H),1.85−1.92(m,1H),1.54−1.63(m,1H).
Figure 0005649358
<材料>
HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)、ヒト繊維芽細胞、FBS(ウシ胎児血清)、HuMedia EG2、HuMedia EB2、VEGF(血管内皮増殖因子−A)、血管新生キット、およびCD31用管腔染色キットは、クラボー(株)(大阪、日本)から購入した。セルカウンティングキット8は、(株)同仁化学研究所(熊本、日本)から提供された。
<管腔形成アッセイ>
血管新生キットを用いて、HUVECをヒト繊維芽細胞と24ウェルプレート中で10日間、培養培地450μLと添加物50μLでインキュベートした。培地交換は、3日毎に添加物とともに行った。10日後、HUVECを、CD31用管腔染色キットのマウス抗ヒトCD31、ヤギ抗マウスIgG AlkPコンジュゲート、塩化ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)および5−ブロモ−4−クロロ−3‘−インドリルフォスファターゼ p−トルイジン塩(BCIP)を用いて染色した。形成した管腔の面積をImageJプログラムで測定した。
添加物は、最終濃度の10倍の濃度で生理食塩水溶液とし、これを1/10容キット付属の培地に添加して管腔形成用培地を調製した。キット付属の培地のみで形成された管腔面積をコントロールに相対面積を計算し、添加物濃度0(=生理食塩水10%)の値(ほとんど「1」である)との間で有意差検定した。
図1に示すように、管腔面積はVEGFで約2倍に増加したが、ADAHではコントロールとほぼ同等であった。一方、MDEH、D−glucal、DEHでは濃度依存的に管腔面積が減少した。よって、ADAHは管腔形成を阻害しないが、MDEH、D−glucal、DEHは管腔形成の阻害作用があり、特にDEHが強く阻害することがわかった。(図1参照)
<増殖アッセイ>
HUVECは、湿潤の大気圧下、CO2(5%)、37℃で、組織培養フラスコ中で増殖した。HuMedia EG2を維持培地として使用した。アッセイにおいて、HUVECは、ゼラチンコートした96ウェルプレートに、維持培地100μL中、典型的には3000細胞/ウェルで播種した。播種の後、プレートを24時間インキュベートして細胞を付着させて、それから維持培地をアッセイ培地に交換した。アッセイ培地は、2%熱不活性化FBS添加HuMedia EB2を90μLと塩含有添加物10μLとからなる。HuMedia EB2の成分は、HuMedia EG2とほとんど同じであるが、FBS、成長因子や抗生物質を含んでいない。3〜8代の間の細胞を、アッセイに使用した。
増殖アッセイは、添加物の添加48時間後、セルカウンティングキット8を用いて行った。[2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルフォ−フェニル)−2H−テトラゾリウム、1Na塩](5 mM)、1−メトキシ−5−メチルフェナジニウム メチル硫酸(0.2mM)およびNaCl(150mM)を含む溶液10μLを各ウェルに添加して、120分後に450nmの吸光度をマイクロプレートリーダー(イムノミニNJ−2300、システムインスツルメンツ(株)、日本)で測定した。
添加物は最終濃度の10倍の濃度で生理食塩水溶液とし、これを1/10容、分析用培地に添加した。分析用培地のみで培養したウェルの吸光度をコントロールに相対値を計算した。
図2に示すように、細胞数はVEGFでコントロールよりも増加したが、ADAH、MDEH、D−glucal、DEHは濃度が高くなってもコントロールとほぼ同等であり、これらは細胞増殖をほとんど阻害しないことがわかった。t−testで、VEGFだけがp<0.01で有意差があった。(図2参照)
本発明の管腔形成抑制剤は、血管新生を伴う疾患、例えば糖尿病性網膜症、又は加齢黄斑変性症による視力低下および失明、固形腫瘍の増殖、慢性関節リューマチの特に関節腔内におけるパンヌス形成、関節症における滑膜の増殖等の疾患、又は乾癬等病的血管新生を伴う疾患などの予防および治療に用いることができる、甘味料、調味料、食品添加物、食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品・医薬部外品および飼料として利用できる可能性がある。特に、血管新生を標的とする新しい治療薬として、癌などの疾病治療や予防に有効であることが期待され、新しい医薬品として利用できる可能性がある。

Claims (1)

  1. 糖アルコール誘導体としてD−Glucal(下式(1))、もしくはデオキシ糖誘導体として2,3−Dideoxy−D−erythro−hexose(DEH、下式(2))、またはAlkyl 2,3−dideoxy−D−erythro−hexopyranoside(ADEH、下式(5))を有効成分として、血管内皮細胞の増殖を阻害しないことを特徴とする管腔形成抑制剤(ただし、DEH(下式(2))の癌治療剤の用途を除く)
    Figure 0005649358
    (式(5)で、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
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