JP5648885B2 - マグネシウム合金板、マグネシウム合金部材、及びマグネシウム合金板の製造方法 - Google Patents

マグネシウム合金板、マグネシウム合金部材、及びマグネシウム合金板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5648885B2
JP5648885B2 JP2009161220A JP2009161220A JP5648885B2 JP 5648885 B2 JP5648885 B2 JP 5648885B2 JP 2009161220 A JP2009161220 A JP 2009161220A JP 2009161220 A JP2009161220 A JP 2009161220A JP 5648885 B2 JP5648885 B2 JP 5648885B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
magnesium alloy
plate
less
alloy plate
rolling
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2009161220A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011017041A (ja
Inventor
北村 貴彦
貴彦 北村
大石 幸広
幸広 大石
河部 望
望 河部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority to JP2009161220A priority Critical patent/JP5648885B2/ja
Application filed by Sumitomo Electric Industries Ltd filed Critical Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority to US13/382,826 priority patent/US9334554B2/en
Priority to PCT/JP2010/059711 priority patent/WO2011004672A1/ja
Priority to KR1020117029373A priority patent/KR101785121B1/ko
Priority to RU2012103992/02A priority patent/RU2012103992A/ru
Priority to EP10796983.4A priority patent/EP2453031B1/en
Priority to CN201080028070.8A priority patent/CN102471838B/zh
Priority to BRPI1012126A priority patent/BRPI1012126A2/pt
Priority to TW099120733A priority patent/TW201111522A/zh
Publication of JP2011017041A publication Critical patent/JP2011017041A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5648885B2 publication Critical patent/JP5648885B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22FCHANGING THE PHYSICAL STRUCTURE OF NON-FERROUS METALS AND NON-FERROUS ALLOYS
    • C22F1/00Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working
    • C22F1/06Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working of magnesium or alloys based thereon
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C23/00Alloys based on magnesium
    • C22C23/02Alloys based on magnesium with aluminium as the next major constituent
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22FCHANGING THE PHYSICAL STRUCTURE OF NON-FERROUS METALS AND NON-FERROUS ALLOYS
    • C22F1/00Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working

Description

本発明は、筐体や各種の部品などの材料に適したマグネシウム合金板、この合金板にプレス加工を施してなるマグネシウム合金部材、及びマグネシウム合金板の製造方法に関するものである。特に、プレス成形性に優れるマグネシウム合金板に関するものである。
マグネシウムに種々の添加元素を含有したマグネシウム合金が、携帯電話やノート型PCといった携帯電子機器類の筐体や自動車部品などの部材の材料に利用されてきている。
マグネシウム合金は、六方晶の結晶構造(hcp構造)を有するため常温での塑性加工性に乏しいことから、上記筐体などのマグネシウム合金部材は、ダイカスト法やチクソモールド法による鋳造材が主流である。最近、ASTM規格におけるAZ31合金からなる板材にプレス加工を施して、上記筐体を形成することが検討されている。特許文献1は、ASTM規格におけるAZ91合金相当の合金からなる圧延板であって、プレス加工性に優れる板材を提案している。
特開2007-098470号公報
プレス成形性を更に向上することが望まれている。
特許文献1は、プレス成形性に優れる板材を開示しているものの、具体的な組織については十分に検討されていなかった。
そこで、本発明の目的の一つは、プレス成形性に優れるマグネシウム合金板、及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記本発明マグネシウム合金板により得られるマグネシウム合金部材を提供することにある。
本発明者らは、種々の条件でマグネシウム合金板を作製し、得られた板にプレス加工を施して、プレス加工後の割れなどの状態を調べ、良好にプレス成形が行えたマグネシウム合金板の組織を調べた。その結果、プレス成形性に優れるマグネシウム合金板は、特定の組成の晶出物、及び特定の組成の析出物の双方が小さくかつ少なく、良好なプレス成形性を有するためには、晶析出物の大きさ及び存在量を特定の範囲とすることが好ましい、との知見を得た。そして、このようなマグネシウム合金板を製造するあたり、上記晶出物及び上記析出物の双方においてそれぞれの最大径及び個数を制御するには、特定の条件で連続鋳造を行い、得られた鋳造板に特定の条件で圧延を施すことが好ましい、との知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。
本発明のマグネシウム合金板は、AlとMnとを含有するマグネシウム合金からなり、上記マグネシウム合金板の厚さ方向において、当該合金板の表面から当該合金板の厚さの30%までの領域を表面領域とし、この表面領域から任意の200μm2の小領域(以下、第一小領域と呼ぶ)をとったとき、各第一小領域に対して、AlとMgとの双方を含む析出物であって最大径が0.5μm以上5μm以下の粒子が5個以下である。かつ、このマグネシウム合金板は、上記表面領域から任意の50μm2の小領域(以下、第二小領域と呼ぶ)をとったとき、各第二小領域に対して、AlとMnとの双方を含む晶出物であって最大径が0.1μm以上1μm以下の粒子が15個以下である。また、上記晶出物の粒子は、Mnに対するAlの質量比:Al/Mnが2以上5以下である。
上記特定の組織を有する本発明のマグネシウム合金板は、例えば、以下の本発明製造方法により、製造することができる。本発明のマグネシウム合金板の製造方法は、以下の鋳造工程と圧延工程とを具える。
鋳造工程:AlとMnとを含有するマグネシウム合金を板状に鋳造する工程。
圧延工程:上記鋳造工程により得られた鋳造板に圧延を施す工程。
特に、上記鋳造は、双ロール連続鋳造法により行う。また、この鋳造は、ロール温度を100℃以下とし、この鋳造により得られる鋳造板の厚さが5mm以下となるように行う。
加えて、上記圧延工程では、素材が150℃以上250℃以下の温度域に保持される総合計時間を60分間以下とする。
本発明のマグネシウム合金部材は、上記本発明マグネシウム合金板にプレス加工を施して形成されたものである。この合金部材も、上記本発明マグネシウム合金板と同様の組織、即ち、上記表面領域から任意の200μm2の小領域をとったとき、上記特定の大きさ及び組成の析出物の粒子が5個以下であり、かつ上記表面領域から任意の50μm2の小領域をとったとき、上記特定の大きさ及び組成の晶出物の粒子が15個以下である組織を有する。
急冷凝固が可能である双ロール連続鋳造法といった連続鋳造法では、酸化物や偏析などを低減できる上に、粗大な晶出物の生成を低減することができ、微細な晶出物とすることができる。特に、本発明製造方法では、ロール温度と鋳造板の厚さとを上記特定の範囲とすることで、冷却速度を十分に速められるため、晶出物自体の生成を低減することができる。従って、プレス加工を施す際に割れなどが生じ易い表面側の領域の組織を、微細な晶出物が僅かに存在する、或いは晶出物が実質的に存在しない組織とすることができる。また、晶出物が微小で少ないことから、粗大な晶出物や大量の晶出物が晶出されたことによる母相中の固溶Al量の低下が少なく、Al量低下に伴う固溶強化の低下が少ない、と考えられる。更に、急冷凝固により平均結晶粒径が小さい微細な組織を有する鋳造板が得られる。このような鋳造板は、割れや変形などの起点となる粗大な晶出物が少ない、或いは実質的に存在しないことから圧延などの塑性加工性に優れており、かつ圧延を施すことで、強度や伸びといった機械的特性を向上することができる。そして、上記鋳造板に圧延を施すに当たり、素材が特定の温度域に保持される総合計時間を従来よりも短くすることで、粗大な析出物をも低減することができる。
上記製造方法により得られた本発明合金板は、割れなどの起点となる粗大な晶析出物が少なく、かつ晶出物自体及び析出物自体の双方ともに少ない。特に、プレス加工中に割れや亀裂が生じ易い表面側の領域において粗大な晶析出物が低減され、微細な晶析出物が僅かに存在する組織、好ましくは晶析出物が実質的に存在しない組織であることで、プレス加工中に割れや亀裂などが生じ難い。また、上述のように晶析出物自体が少ないことで、固溶Al量の低下を抑制することができ、Alが十分に固溶していることで高い強度を維持することができる。従って、本発明合金板は、プレス加工時に十分に伸びることができる上に、強度が高い状態を維持することができ、割れや亀裂などが更に生じ難い。以上から、本発明合金板は、プレス成形性に優れる。また、得られた本発明合金部材が、本発明合金板と同様に、特に表面側の領域において晶析出物が小さくかつ少ない組織を有する場合、強度や伸び、耐衝撃性といった機械的特性に優れ、各種の筐体や部品として好適に利用することができる。
以下、本発明をより詳細に説明する。
《組成》
本発明マグネシウム合金板及び本発明マグネシウム合金部材を構成するマグネシウム合金は、添加元素に少なくともAlとMnとを含有する種々の組成のもの(残部:Mg及び不純物)が挙げられる。Al及びMn以外の添加元素としては、Zn,Si,Ca,Sr,Y,Cu,Ag,Ce,Zr及び希土類元素(Yを除く)から選択された1種以上の元素が挙げられる。特に、Alを5質量%以上12質量%以下、Mnを0.1質量%以上2.0質量%以下含有することが好ましい。Al及びMnを上記範囲で含有することで、強度や伸び、耐衝撃性といった機械的特性に優れる上に、耐食性にも優れる。但し、上記元素の含有量が多過ぎると、圧延やプレス加工といった塑性加工性の低下などを招く。Al,Mn以外の添加元素の含有量は、Zn:0.2〜7.0質量%、Si:0.2〜1.0質量%、Ca:0.2〜6.0質量%、Sr:0.2〜7.0質量%、Y:1.0〜6.0質量%、Cu:0.2〜3.0質量%、Ag:0.5〜3.0質量%、Ce:0.05〜1.0質量%、Zr:0.1〜1.0質量%、RE(希土類元素(Yを除く)):1.0〜3.5質量%が挙げられる。Al及びMnに加えて、これらの元素を含有することで、機械的特性を更に高められる。Al及びMnと、これらの元素の1種以上とを上記範囲で含有する合金の組成として、例えば、ASTM規格におけるAZ系合金(Mg-Al-Zn系合金、Zn:0.2〜1.5質量%)、AM系合金(Mg-Al-Mn系合金、Mn:0.15〜0.5質量%)などが挙げられる。特に、Alの含有量(以下、Al量と呼ぶ)が多いほど、機械的特性や耐食性に優れて好ましく、Al量が5.8質量%以上10質量%以下がより好ましい。Al量が5.8〜10質量%のマグネシウム合金として、例えば、Mg-Al-Zn系合金では、AZ61合金、AZ80合金、AZ81合金、AZ91合金、Mg-Al-Mn系合金では、AM60合金、AM100合金などが好適な組成である。とりわけAl量が8.3〜9.5質量%であるAZ91合金は、他のMg-Al系合金と比較して、耐食性や強度、耐塑性変形性といった機械的特性に更に優れることから、機械的特性に優れるマグネシウム合金部材とすることができる。
《マグネシウム合金板及びマグネシウム合金部材の形態》
本発明合金板は、対向する一対の一面及び他面を具え、これらの二面は、代表的には、平行関係にあり、通常、使用場面において表裏の関係にある。これら一面及び他面は、平面でも曲面でもよい。これら一面と他面との間の距離がマグネシウム合金板の厚さとなる。本発明合金板は、上述のように厚さ5mm以下の鋳造板に圧延を施して得られることから、本発明合金板の厚さは、5mm未満である。特に、本発明合金板は、プレス加工が施されて、薄く軽量な筐体や各種の部材の素材に利用されることから、当該合金板の厚さは、0.3mm〜3mm程度、特に0.5mm以上2.0mm以下が好ましく、当該範囲において厚いほど、強度に優れ、薄いほど、薄型、軽量な筐体などに適する。所望の用途に応じて鋳造条件や圧延条件を調整して、最終的に得られるマグネシウム合金板の厚さを選択するとよい。
本発明合金部材は、上記マグネシウム合金板にプレス加工といった塑性加工を施してなる種々の形状、例えば、底面部と底面部から立設される側壁部とを具える]状材や箱状材などが代表的である。プレス加工時の条件にもよるが、このようなマグネシウム合金部材においてプレス加工に伴う変形が実質的に施されていない平坦な箇所の厚さは、素材となったマグネシウム合金板とほぼ同様の厚さであり、ほぼ同様の組織を有する傾向にある。即ち、上記平坦な箇所の表面領域は、最大径:0.5〜5μmの析出物が5個以下/200μm2、かつ最大径:0.1〜1μmのAl-Mn系晶出物が15個以下/50μm2を満たす。
本発明合金板は、鋳造材を圧延した圧延板、この圧延板に熱処理を施した熱処理板、上記圧延板や熱処理板に研磨加工を施したもの、上記圧延板にロールレベラといった矯正装置により矯正処理を施した矯正板、更に矯正処理後に研磨加工を施した研磨板などが挙げられる。圧延板のまま、或いは圧延板に熱処理を施して再結晶組織を有する熱処理板でもよいが、これらの場合、部材の形状によっては、温間でのプレス加工中に当該板に歪みが蓄積したり、転位密度が増大することで当該板が加工硬化したりすることで、当該板が破断する場合がある。一方、圧延後に最終の熱処理を施さず、加熱状態で上記矯正処理を施して素材に歪みを付与し、温間でのプレス加工中に再結晶化させるようにすると、プレス加工中に大きな伸びが生じ易く、上記破断の発生を抑制することができ、プレス成形性により優れる。部材の形状に応じて、圧延工程の処理を選択することができる。本発明合金部材は、上記本発明合金板にプレス加工が施されたものの他、プレス加工後に熱処理や研磨加工が施されたものも含む。また、上記合金板や上記合金部材は、更に、防食処理層や塗装層を具えていてもよい。
《機械的特性》
本発明合金板は、プレス成形性に優れるだけでなく、常温(約20℃)下での強度や温間(約250℃)下での伸びといった機械的特性に優れる。具体的には、常温における引張試験(試験片:JIS 13B号)において、引張強さ:300MPa以上、0.2%耐力:250MPa以上を満たす。また、250℃下における切欠引張試験において伸び:20%以上を満たす。250℃下といった温間での伸びが高いことで、プレス加工を250℃程度の温間で行う場合、本発明合金板は十分に伸びることができ、プレス成形性に優れる。また、温間における切欠引張試験での伸びが高いことで、本発明合金板は、表面欠陥が存在する場合でも十分に伸びることができる。そのため、本発明合金板は、種々の形状のマグネシウム合金部材をプレス加工により製造することができる。なお、本発明合金部材においてプレス加工といった塑性加工に伴う変形(例えば、絞り加工による変形など)が実質的に施されていない平坦な箇所(素材の板とほぼ同様な組織を有する箇所)も、上記本発明合金板と同様の機械的特性を有する傾向にある。
《組織》
<析出物>
本発明合金板は、その表面側の領域から任意の小領域をとって組織観察を行った場合、粗大な析出物及び晶出物が実質的に存在せず、微細な析出物及び晶出物が僅かに存在する、好ましくは実質的に存在しない組織を有する。より具体的には、上記合金板の厚さ方向において、当該合金板の表面から当該合金板の厚さの30%までの領域を表面領域とし、この表面領域から任意に選択された200μm2の第一小領域をとり、一つの第一小領域に存在する全ての析出物の粒径を測定する。そして、各析出物の最大径を測定した場合、一つの第一小領域に対して、最大径が0.5μm以上5μm以下である微細な析出物が5個以下である。即ち、本発明合金板は、その表面領域に5μm超といった粗大な析出物が実質的に存在せず、析出物が存在したとしても、微細な析出物が僅かに存在する組織を有する。5μm超の粗大な析出物が存在すると、割れなどの起点となり、割れや亀裂が生じ易く、プレス成形性を低下させるため、最大径が5μm以下の析出物しか存在しないことがより好ましい。また、最大径が0.5〜5μmの析出物であっても、200μm2に対して5個超存在すると、割れや亀裂などの起点が多くなることで、プレス成形性を低下させる。最大径が0.5〜5μmの析出物の粒子が少ないほどプレス加工性に優れる傾向にあり、理想的には0個が望ましい。上記析出物は、MgとAlとの双方を含むもの、例えば、Mg17Al12といった金属間化合物が代表的である。なお、本発明では、割れの起因になり難いと考えられる極微細な析出物、即ち、最大径が0.5μm未満の析出物の存在を許容するが、上述のように析出物は存在しない方が好ましい。
<晶出物>
本発明合金板は、上記表面領域からから任意に選択された50μm2の第二小領域をとり、一つの第二小領域に存在する全ての晶出物の粒径を測定する。そして、各晶出物の最大径を測定した場合、一つの第二小領域に対して、最大径が0.1μm以上1μm以下である微細な晶出物が15個以下である。即ち、本発明合金板は、その表面領域に1μm超といった粗大な晶出物が実質的に存在せず、晶出物が存在したとしても、微細な晶出物が僅かに存在する組織を有する。1μm超の粗大な晶出物が存在すると、割れや亀裂が生じ易く、プレス成形性が低い。また、最大径が1μm以下の晶出物であっても、上記第二領域に対して15個超の晶出物が存在すると、割れや亀裂の起点が多くなるので、強度の低下を招き、プレス成形性を低下させる。即ち、最大径が0.1〜1μmの晶出物の粒子が少ないほどプレス成形性に優れる傾向にあり、上記第二小領域に対して10個以下がより好ましく、理想的には0個、即ち、晶出物が存在しないことが望ましい。また、晶出物が存在する場合であっても、特に、最大径が0.5μm以下の晶出物しか存在しないことがより好ましい。上記晶出物は、AlとMnの双方を含むものが挙げられる。なお、本発明では、割れの起因になり難いと考えられる極微細な晶出物、即ち、最大径が0.1μm未満の晶出物の存在を許容するが、上述のように晶出物は存在しない方が好ましい。
<平均結晶粒径>
本発明合金板として、平均結晶粒径が小さく、20μm以下といった微細組織を有するものが挙げられる。上述のように特定の条件の連続鋳造を行うことで微細組織を有する鋳造板が得られ、この鋳造板に上記特定の条件で圧延を施すことで、上記微細組織を有する圧延板とすることができる。このような微細組織を有する本発明合金板は、強度や伸びといった機械的特性やプレス成形性に優れる。一方、上記圧延板に上記矯正処理を行った矯正板では、歪み(せん断帯)が残存することで明確な結晶粒界が観察され難い組織を有するが、上述のようにプレス加工時に再結晶化することでプレス成形性に優れる。上記微細組織を有するマグネシウム合金板や、上記矯正処理を行ったマグネシウム合金板により得られた本発明合金部材も、平均結晶粒径が20μm以下の微細組織を有することができ、上述のように強度や伸びなどの機械的特性に優れる。より好ましい平均結晶粒径は、0.1μm以上10μm以下である。
[製造方法]
《鋳造》
本発明製造方法では、双ロール連続鋳造法を利用する。この鋳造において鋳型に利用するロールの温度を100℃以下、得られる鋳造板の厚さを5mm以下とする。このように鋳造板の厚さを薄く、かつロール温度を低くすることで、急冷凝固により上述のように晶出物の生成を抑制し、晶出物が小さくかつ少ない鋳造板とすることができる。ロール温度を100℃以下とするには、水冷などの強制冷却が可能なロールを利用することが挙げられる。ロール温度が低いほど、また、鋳造板の厚さが薄いほど、冷却速度を速めて晶出物の生成を抑制することができる。そのため、ロール温度は60℃以下、鋳造板の厚さは4.0mm以下がより好ましい。この鋳造工程(冷却工程も含む)は、マグネシウム合金の酸化などを防止するために、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
《溶体化》
上記鋳造板には、溶体化処理を施して、組成の均質化を図ることが好ましい。溶体化処理は、保持温度:350℃以上が好ましく、保持温度:380〜420℃、保持時間:60〜2400分がより好ましい。また、Alの含有量が高いほど、保持時間を長くすることが好ましい。特に、上記保持温度からの冷却工程において、素材が150℃以上250℃以下の温度域に保持される時間を短くすることが好ましい。例えば、上記温度域における冷却速度を0.1℃/sec以上(保持時間:約16.6分以下)、好ましくは、0.5℃/sec以上(保持時間:3.3分以下)とする。このような冷却速度は、水冷や衝風といった強制冷却などにより達成できる。上記温度域の保持時間をできるだけ短くすることで、上記析出物の析出そのものを抑制することができる上に、析出しても粗大な粒に成長することを効果的に抑制することができる。
《圧延》
上記鋳造板や上記溶体化処理が施された板に圧延を施す。この圧延は、圧延性を高めるために、素材を加熱した状態で行う。加熱温度が高いほど圧延性を高められるが、高過ぎると焼き付きが発生したり、上記析出物や結晶粒が粗大化して圧延後に得られた圧延板の機械的特性を低下させる恐れがある。そのため、素材の加熱温度は、200〜400℃が好ましく、特に、380℃以下、とりわけ230℃以上360℃以下が好ましい。素材だけでなく圧延ロールも加熱すると圧延性を更に高められる。圧延ロールの加熱温度は、150〜300℃が好ましい。また、1パスあたりの圧下率は5〜50%が好ましい。複数回(多パス)の圧延を施すことで、所望の板厚にできると共に、平均結晶粒径を小さくしたり、プレス成形性を高められる。特許文献1に開示される制御圧延などを組み合わせて利用してもよい。
上記圧延工程において、素材が150℃以上250℃以下の温度域に保持される時間の総合計が60分間以下となるようにする。例えば、圧延の各パスにおいて、素材を加熱する時間を短くしたり、圧延速度(ロール周速)を速めたり、冷却速度を速めることで、上記特定の温度域の保持時間を60分間以下とすることができる。Al量が多いほど、析出物が析出したり成長し易いため、上記保持時間の総合計は、Alの含有量に応じて調整することが好ましい。より好ましい総合計時間は、45分以下、特に30分以下である。
圧延のパス間に中間熱処理を行ってもよい。中間熱処理を行うことで、中間熱処理までの圧延などにより素材に導入された歪みや残留応力、集合組織などを除去、軽減して、その後の圧延をより円滑に行える。中間熱処理は、保持温度:230℃〜360℃が好ましい。特に、中間熱処理の保持温度からの冷却工程において、素材が上記150〜250℃の温度域に保持される時間が上記60分間に含められるように、中間熱処理を制御することが好ましい。
上記圧延後、例えば、保持温度:300℃以上の最終熱処理を行って、圧延による加工歪みを除去すると共に、完全に再結晶化させてもよい。この最終熱処理でも、保持温度からの冷却工程において、素材が上記150〜250℃の温度域に保持される時間が上記60分間に含められるように、最終熱処理を制御することが好ましい。或いは、圧延後に最終熱処理を行わず、圧延板を100〜250℃に加熱した状態でロールレベラなどによる矯正処理を行って素材に歪みを付与し、プレス加工時に再結晶化されるようにしてもよい。この矯正処理においても、素材が上記150〜250℃の温度域に保持される時間が上記60分間に含められるように、矯正処理を制御することが好ましい。即ち、圧延工程における150〜250℃の温度域の保持時間には、圧延、中間熱処理、最終熱処理、矯正処理を含むものとする。
上記圧延(上記中間熱処理、最終熱処理、矯正処理などを含む)を行うことで、鋳造の金属組織ではなく圧延組織などとすることができる。また、圧延を行うことで、平均結晶粒径が20μm以下の微細組織としたり、鋳造時の偏析や引け巣や空隙(ポア)といった内部欠陥、表面欠陥などを低減して、表面性状に優れた圧延板が得られる。上記欠陥などが少ないことからも、本発明合金板は、プレス成形性に優れる。
《プレス加工》
本発明合金部材は、上記本発明合金板(上記熱処理や矯正処理などを施したものも含む)に、所望の形状となるようにプレス加工(打ち抜きも含む)を施すことで得られる。このプレス加工は、200〜280℃の温間で行うと、上記本発明合金板が十分に伸びて割れや亀裂などが生じることなく変形することができ、所望の形状のマグネシウム合金部材が得られる。また、上記温間でプレス加工を行うことで、得られたマグネシウム合金部材を構成する組織が粗大な再結晶組織となることを低減することができる。従って、本発明合金部材は、微細な再結晶組織を有し、機械的特性や耐食性に優れる。なお、プレス加工では、素材が150〜250℃の温度域に保持される時間が非常に短いため、上述した圧延工程のように上記温度域の保持時間の制御を行わなくてもよい。上記プレス加工後に熱処理や防食処理を施したり、塗装層を形成してもよい。プレス加工後の熱処理では、150〜250℃の温度域の保持時間が長くならないようにすることが好ましい。
本発明マグネシウム合金板は、プレス成形性に優れる。本発明マグネシウム合金板の製造方法は、上記本発明マグネシウム合金板を製造することができる。上記本発明マグネシウム合金板からなる本発明マグネシウム合金部材は、機械的特性に優れる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
[試験例1]
表1に示すマグネシウム合金からなるインゴット(いずれも市販)を用いて種々の条件でマグネシウム合金板を作製し、得られたマグネシウム合金板の組織観察、引張試験(常温)、切欠引張試験(250℃)、及びプレス成形性の評価を行った。作製条件は以下の通りである。
(条件A:双ロール鋳造→圧延)
マグネシウム合金のインゴットを不活性雰囲気中で700℃に加熱して溶湯を作製し、この溶湯を用いて上記不活性雰囲気中で双ロール連続鋳造法により、厚さ4.0mm(<5mm)の鋳造板を複数作製する。この鋳造は、ロール温度が60℃(<100℃)となるようにロールを冷却しながら行う。得られた各鋳造板を素材とし、素材の加熱温度:200〜400℃、圧延ロールの加熱温度:150〜300℃、1パスあたりの圧下率:5〜50%の条件で、素材の厚さが0.6mmになるまで複数回圧延を施し、圧延板を作製する。特に、この試験では、素材が150℃以上250℃以下の温度域に保持される総合計時間が表1に示す時間となるように、圧延の各パスにおいて素材の加熱時間及び圧延速度(ロール周速)を調整する。得られた圧延板(マグネシウム合金板)を試料とする。
上記鋳造後、組成を均質化するための熱処理(溶体化処理)や時効処理などを施したり、圧延途中に中間熱処理を施したり、最終の圧延後に最終熱処理を施してもよい。また、圧延板にレベラー加工や研磨加工を施して、矯正により平坦度を向上したり、研磨により表面を平滑にしたりしてもよい。これらの点は、後述する試験例2についても同様である。
(条件B:押出→圧延)
市販の押出材を用意し、この押出材に上記条件Aと同様の条件で圧延を行い、得られた圧延板を試料とする。
(条件C:市販板)
市販のAZ31合金からなる板(厚さ:0.6mm)である。
《組織観察》
得られた各試料について、以下のようにして金属組織を観察し、析出物及び晶出物を調べた。各試料を板厚方向に切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(10000倍)で観察する。この観察撮像において、試料(板)の厚さ方向に、当該試料(板)の表面から当該試料(板)の厚さの30%(0.6mm×30%=0.18mm)までの領域を表面領域とする。この表面領域から、任意の200μm2の第一小領域を5個選択し、各第一小領域中に存在する全ての析出物の大きさを測定する。析出物の判定は、組成により行う。上記断面を鏡面研磨した後、例えば、EDXなどに代表される定性分析と半定量分析とを用いて断面に存在する粒子の組成が求められ、Al及びMgを含む粒子を析出物とする。断面における各析出物の粒子について断面に平行な直線を引き、各粒子におけるこの直線を横断する長さの最大値をその粒子の最大径とし、最大径が0.5μm以上5μm以下の大きさの析出物の数をその第一小領域の析出物の数とし、5個の第一小領域の平均をこの試料の析出物の数/200μm2とする。また、上記観察像において上記表面領域から、任意の50μm2の第二小領域を5個選択し、各第二小領域中に存在する全ての晶出物の大きさを上述した析出物の場合と同様にして測定する。晶出物の判定は、上述の析出物と同様に組成により行い、Al及びMnを含む粒子を晶出物とする。なお、Al及びMnを含む各晶出物の粒子についてAlの質量とMnの質量との比Al/Mnを測定したところ、試料No.1-1は、Al/Mn=2〜5であった。上述した析出物の最大径の場合と同様にして、上記断面における各晶出物の粒子について最大径を求め、最大径が0.1μm以上1μm以下の大きさの晶出物の数をその第二小領域の晶出物の数とし、5個の第二小領域の平均をこの試料の晶出物の数/50μm2とする。但し、上記観察撮像において最大径が5μmを超えるような粗大な晶出物が見られる場合、小領域の面積を200μm2とし、この200μm2内に存在する晶出物の最大径、及び晶出物の数/200μm2を測定する。上記各小領域は、上述の各面積を満たせば、特に形状は問わないが、矩形状(代表的には正方形)などが利用し易い。測定結果を表1に示す。
《引張試験(常温)》
各試料(厚さ:0.6mm)からJIS 13B号の板状試験片(JIS Z 2201(1998))を作製して、JIS Z 2241(1998)の金属材料引張試験方法に基づいて、常温(約20℃)下で引張試験を行い(標点距離GL=50mm、引張速度:5mm/min)、引張強さ(MPa)及び0.2%耐力(MPa)を測定した(評価数:いずれもn=1)。その結果を表1に示す。
《切欠引張試験(250℃)》
各試料(厚さ:0.6mm)からJIS 13B号の板状試験片(JIS Z 2201(1998))であって、45°のVノッチ(深さ:1mm)を設けたものを作製して、JIS Z 2241(1998)の金属材料引張試験方法に基づいて、250℃下で引張試験を行い(標点距離GL=50mm、引張速度:5mm/min)、引張強さ(MPa)及び伸び(%)を測定した(評価数:いずれもn=1)。その結果を表1に示す。
《プレス性の評価》
各試料の板の両面を#180の研磨布にて荒らして表面の粗い板とし、この板にプレス加工を施し、プレス後における割れの有無を目視にて確認した。その結果を表1に示す。より具体的には、上記粗い板に250℃でプレス加工を施し、ノート型PCの筐体を模した断面]状の箱部材を作製した。得られたプレス部材に割れや肌荒れがない場合、○と評価する。
Figure 0005648885
表1に示すように、表面領域から選択した任意の200μm2に対して最大径が0.5μm以上5μm以下のAl-Mg析出物が5個以下、かつ表面領域から選択した任意の50μm2に対して最大径が0.1μm以上1μm以下のAl-Mn晶出物が15個以下であるマグネシウム合金板は、プレス成形性に優れることが分かる。この理由は、特に250℃下での切欠引張試験での伸びが33%と高く、温間でのプレス加工時に割れや亀裂などが生じることなく十分に伸びることができたためであると考えられる。また、プレス成形性に優れる試料は、最大径が1μm超のAl-Mn晶出物や最大径が5μm超のAl-Mg析出物が観察されず、少なくとも表面領域には、実質的に存在していないと考えられる。更に、プレス加工性に優れる試料は、常温下での強度にも優れていることが分かる。これに対して、特定の製造条件で製造していない試料や市販品は、表面領域に粗大な晶析出物や多くの析出物が存在する組織であり、これら晶析出物の存在により、プレス加工時に割れなどが生じ易くなったと考えられる。また、これら市販品などは、試料No.1-1と比較して常温下での強度にも劣ることが分かる。
上記プレス加工性に優れる試料No.1-1にプレス加工を施して作製した箱部材、及び市販のAZ31合金板に試料No.1-1と同様のプレス加工を施し作製した箱部材について、シャルピー試験及び3点曲げ試験を行った。その結果を表2に示す。
シャルピー試験は、JIS Z 2242(2005)に基づいて行い(振り子の落下速度:1.0m/s、R.T.、n=2)、試験片を破断するのに要した吸収エネルギー(J/mm2)を測定し、n=2の平均を表2に示す。試験片は、各プレス部材の平坦な底面部から切り出して作製した(ノッチなし)。
3点曲げ試験は、JIS Z 2248(2006)に基づいて行い(スパン間(2個の支え間の距離):60mm、曲げ深さ:40mm、押し込み速度:5mm/min、n=2)、割れが生じることなく所定の曲げ深さに折り曲げられる押金具の押圧力:曲げ強さ(MPa)を測定し、n=2の平均を表2に示す。試験片(3号試験片)は、各プレス部材の平坦な底面部から切り出して作製した。また、割れの有無を目視にて確認した。
Figure 0005648885
表2に示すように、表面領域から選択した任意の200μm2に対して最大径が0.5μm以上5μm以下のAl-Mg析出物が5個以下、かつ表面領域から選択した任意の50μm2に対して最大径が0.1μm以上1μm以下のAl-Mn晶出物が15個以下であるマグネシウム合金板をプレス成形して作製したマグネシウム合金部材は、高強度であることが分かる。従って、このマグネシウム合金部材は、各種の筐体や部品に好適に利用することができると期待される。
[試験例2]
表3に示すマグネシウム合金からなるインゴット(いずれも市販)を用いて種々の条件でマグネシウム合金板を作製し、得られたマグネシウム合金板の組織観察、切欠引張試験(250℃)、及びプレス成形性の評価を行った。その結果を表3に示す。また、得られたマグネシウム合金板や用意した板に250℃でプレス加工を施し、断面]状の箱部材(マグネシウム合金部材)を作製し、得られた箱部材について、上記マグネシウム合金板と同様に組織観察を行った。その結果を表3に示す。
製造条件「鋳造→圧延」は、鋳造を双ロール連続鋳造法により行い、ロール温度及び鋳造板の厚さを表3に示す条件とする。圧延は、試験例1と同様の圧延条件で行い、素材が150℃〜250℃の温度域に保持される時間が表3に示す時間となるようにして、圧延板(マグネシウム合金板)を作製する。製造条件「ダイキャスト」は、断面が]状の市販の筐体であり、「条件B」、「条件C」は、試験例1の条件B(押出→圧延)、条件C(市販板)と同様である。
表3において形状が「板」とは、試料がマグネシウム合金板であることを示し、「筐体」とは、試料が、マグネシウム合金板に上記プレス加工を施したマグネシウム合金部材であることを示す。
各試料のうち、マグネシウム合金板の組織観察は、試験例1と同様に行った。作製したマグネシウム合金部材(筐体)や用意した筐体の組織観察は、各筐体の平坦な底面部を切断し、その断面について試験例1と同様に行った。各試料のうち、マグネシウム合金板の切欠引張試験(250℃)の伸びは、試験例1と同様に行った。作製したマグネシウム合金部材(筐体)や用意した筐体の切欠引張試験(250℃)の伸びは、各筐体の平坦な底面部を切断し、この底面部から試験片を作製して、試験例1と同様に行った。
Figure 0005648885
表3に示すように、双ロール連続鋳造法においてロール温度を100℃以下、かつ鋳造板の厚さを5mm以下として鋳造した鋳造板に、150℃〜250℃の温度域の保持時間が60分間以下となるように圧延を行うことで、表面領域の組織が、最大径が0.5μm以上5μm以下のAl-Mg析出物が5個以下/200μm2、かつ最大径が0.1μm以上1μm以下のAl-Mn晶出物が15個以下/50μm2であるマグネシウム合金板が得られることが分かる。ロール温度が100℃超であったり、鋳造板の厚さが5mm超であったり、圧延において150℃〜250℃の温度域の保持時間が60分間超であったりすると、上記のような晶析出物が小さく、かつ少ないマグネシウム合金板が得られないことが分かる。
また、最大径が0.5〜5μmのAl-Mg析出物:5個以下/200μm2、かつ最大径が0.1〜1μmのAl-Mn晶出物:15個以下/50μm2であるマグネシウム合金板は、250℃下での切欠引張試験での伸びが20%以上と高く、プレス成形性に優れることが分かる。このようなプレス成形性に優れるマグネシウム合金板から形成されたマグネシウム合金部材も、その表面領域の組織が上記マグネシウム合金板と同様の組織、即ち、晶析出物が小さく、かつ少ない組織を有することが分かる。なお、試料No.2-1〜2-10について各晶出物の粒子のAl/Mnを測定したところ、いずれの試料もAl/Mn=2〜5であった。
一方、1μm超の晶出物や5μm超の析出物といった粗大な晶析出物が存在したり、最大径が0.1〜1μmの晶出物が15個超/50μm2、最大径が0.5〜5μmの析出物が5個超/200μm2といった晶析出物が多く存在するマグネシウム合金板は、伸びが15%以下と小さく、プレス加工後にも割れや肌荒れが生じ、プレス成形性に劣ることが分かる。
なお、上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、マグネシウム合金の組成、鋳造後及び圧延後の板厚、鋳造時のロール温度、圧延時の150℃〜250℃の温度域の保持時間などを適宜変更してもよい。また、得られた圧延板やプレス加工を施した部材に防食処理を施したり、塗装層を設けてもよい。
本発明マグネシウム合金板は、プレス成形性に優れることから、プレス部材の素材に好適に利用することができる。本発明マグネシウム合金部材は、各種の筐体や部品に好適に利用することができる。本発明マグネシウム合金板の製造方法は、本発明マグネシウム合金板の製造に好適に利用することができる。

Claims (4)

  1. AlとMnとを含有するマグネシウム合金からなるマグネシウム合金板であって、
    前記マグネシウム合金は、ASTM規格のAZ91合金であり、
    前記マグネシウム合金板の厚さ方向において、当該マグネシウム合金板の表面から当該マグネシウム合金板の厚さの30%までの領域を表面領域とし、この表面領域から任意の200μmの小領域をとったとき、AlとMgとの双方を含む析出物が存在しており、前記析出物の最大径が0.5μm以上5μm以下の粒子が5個以下であり、かつ最大径が5μm超の粒子が存在せず、
    前記表面領域から任意の50μmの小領域をとったとき、AlとMnとの双方を含む晶出物が存在しており、前記晶出物の最大径が0.1μm以上1μm以下の粒子が15個以下であり、かつ最大径が1μm超の粒子が存在せず、
    前記晶出物の粒子は、Mnに対するAlの質量比:Al/Mnが2以上5以下であるマグネシウム合金板。
  2. 常温下の引張試験(試験片:JIS 13B号)において、引張強さが300MPa以上、0.2%耐力が250MPa以上であり、
    250℃下の切欠引張試験における伸びが20%以上である請求項1に記載のマグネシウム合金板。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のマグネシウム合金板にプレス加工を施してなるマグネシウム合金部材。
  4. ASTM規格のAZ91合金であるマグネシウム合金を板状に鋳造する鋳造工程と、
    前記鋳造工程により得られた鋳造板に圧延を施す圧延工程とを具え、
    前記鋳造は、双ロール連続鋳造法により行い、ロール温度を100℃以下、前記鋳造板の厚さを5mm以下として行い、
    前記圧延工程では、素材が150℃以上250℃以下の温度域に保持される総合計時間を60分間以下とするマグネシウム合金板の製造方法。
JP2009161220A 2009-07-07 2009-07-07 マグネシウム合金板、マグネシウム合金部材、及びマグネシウム合金板の製造方法 Active JP5648885B2 (ja)

Priority Applications (9)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009161220A JP5648885B2 (ja) 2009-07-07 2009-07-07 マグネシウム合金板、マグネシウム合金部材、及びマグネシウム合金板の製造方法
PCT/JP2010/059711 WO2011004672A1 (ja) 2009-07-07 2010-06-08 マグネシウム合金板
KR1020117029373A KR101785121B1 (ko) 2009-07-07 2010-06-08 마그네슘 합금판
RU2012103992/02A RU2012103992A (ru) 2009-07-07 2010-06-08 Лист из магниевого сплава
US13/382,826 US9334554B2 (en) 2009-07-07 2010-06-08 Magnesium alloy sheet
EP10796983.4A EP2453031B1 (en) 2009-07-07 2010-06-08 Magnesium alloy plate
CN201080028070.8A CN102471838B (zh) 2009-07-07 2010-06-08 镁合金片
BRPI1012126A BRPI1012126A2 (pt) 2009-07-07 2010-06-08 folha de liga de magnésio.
TW099120733A TW201111522A (en) 2009-07-07 2010-06-25 Magnesium alloy plate

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009161220A JP5648885B2 (ja) 2009-07-07 2009-07-07 マグネシウム合金板、マグネシウム合金部材、及びマグネシウム合金板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011017041A JP2011017041A (ja) 2011-01-27
JP5648885B2 true JP5648885B2 (ja) 2015-01-07

Family

ID=43429098

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009161220A Active JP5648885B2 (ja) 2009-07-07 2009-07-07 マグネシウム合金板、マグネシウム合金部材、及びマグネシウム合金板の製造方法

Country Status (9)

Country Link
US (1) US9334554B2 (ja)
EP (1) EP2453031B1 (ja)
JP (1) JP5648885B2 (ja)
KR (1) KR101785121B1 (ja)
CN (1) CN102471838B (ja)
BR (1) BRPI1012126A2 (ja)
RU (1) RU2012103992A (ja)
TW (1) TW201111522A (ja)
WO (1) WO2011004672A1 (ja)

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20110203706A1 (en) * 2008-10-22 2011-08-25 Yukihiro Oishi Formed product of magnesium alloy and magnesium alloy sheet
JP2011006754A (ja) * 2009-06-26 2011-01-13 Sumitomo Electric Ind Ltd マグネシウム合金板
EP2511391B1 (en) 2009-12-11 2018-10-03 Sumitomo Electric Industries, Ltd. Magnesium alloy member
KR101080164B1 (ko) * 2011-01-11 2011-11-07 한국기계연구원 발화저항성과 기계적 특성이 우수한 마그네슘 합금 및 그 제조방법
KR102055962B1 (ko) * 2012-06-13 2019-12-13 스미토모덴키고교가부시키가이샤 마그네슘 합금판 및 마그네슘 합금 부재
CH708753A1 (de) 2013-10-30 2015-04-30 Lekisport Ag Fingerhandschuh.
KR101585089B1 (ko) * 2014-06-17 2016-01-22 한국생산기술연구원 발화 저항성이 우수한 고강도 마그네슘 합금 및 그 제조방법
JP6465338B2 (ja) * 2014-10-15 2019-02-06 住友電気工業株式会社 マグネシウム合金、マグネシウム合金板、マグネシウム合金部材、及びマグネシウム合金の製造方法
CN109136700A (zh) * 2017-06-16 2019-01-04 比亚迪股份有限公司 高导热镁合金、逆变器壳体、逆变器及汽车
WO2021214890A1 (ja) * 2020-04-21 2021-10-28 住友電気工業株式会社 マグネシウム合金板材、プレス成形体、及びマグネシウム合金板材の製造方法

Family Cites Families (16)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3896203A (en) * 1973-04-23 1975-07-22 Battelle Development Corp Centrifugal method of forming filaments from an unconfined source of molten material
JPH06256883A (ja) * 1993-03-04 1994-09-13 Kobe Steel Ltd 優れたクリープ強度を有するマグネシウム合金
KR101127113B1 (ko) * 2004-01-09 2012-03-26 켄지 히가시 다이캐스트용 마그네슘 합금 및 이것을 사용한 마그네슘다이캐스트 제품
JP4476787B2 (ja) * 2004-11-17 2010-06-09 三菱アルミニウム株式会社 プレス成形性に優れたマグネシウム合金板の製造方法
JP4780600B2 (ja) * 2004-11-17 2011-09-28 三菱アルミニウム株式会社 深絞り性に優れたマグネシウム合金板およびその製造方法
JP4429877B2 (ja) * 2004-11-18 2010-03-10 三菱アルミニウム株式会社 微細な結晶粒を有するマグネシウム合金薄板の製造方法
JP4780601B2 (ja) * 2004-11-18 2011-09-28 三菱アルミニウム株式会社 プレス成形性に優れたマグネシウム合金板およびその製造方法
JP4253847B2 (ja) * 2004-11-30 2009-04-15 住友電気工業株式会社 マグネシウム合金線材及びその製造方法、並びにマグネシウム合金成形体
JP4730601B2 (ja) * 2005-03-28 2011-07-20 住友電気工業株式会社 マグネシウム合金板の製造方法
JP4991281B2 (ja) * 2006-12-28 2012-08-01 三菱アルミニウム株式会社 マグネシウム合金薄板の製造方法
JP2008308703A (ja) * 2007-06-12 2008-12-25 Mitsubishi Alum Co Ltd 連続鋳造圧延用マグネシウム合金およびマグネシウム合金材料の製造方法
JP5158675B2 (ja) * 2007-06-27 2013-03-06 三菱アルミニウム株式会社 耐食性及び表面処理性に優れるマグネシウム合金板材とその製造方法
CN101688270B (zh) * 2007-06-28 2012-09-05 住友电气工业株式会社 镁合金板
JP2009120883A (ja) * 2007-11-13 2009-06-04 Mitsubishi Alum Co Ltd マグネシウム合金箔およびその製造方法
JP4613965B2 (ja) * 2008-01-24 2011-01-19 住友電気工業株式会社 マグネシウム合金板材
JP2011006754A (ja) * 2009-06-26 2011-01-13 Sumitomo Electric Ind Ltd マグネシウム合金板

Also Published As

Publication number Publication date
KR20120099332A (ko) 2012-09-10
WO2011004672A1 (ja) 2011-01-13
EP2453031A1 (en) 2012-05-16
EP2453031A4 (en) 2016-03-02
BRPI1012126A2 (pt) 2016-03-29
TW201111522A (en) 2011-04-01
RU2012103992A (ru) 2013-08-20
US20120107171A1 (en) 2012-05-03
JP2011017041A (ja) 2011-01-27
EP2453031B1 (en) 2017-09-27
US9334554B2 (en) 2016-05-10
CN102471838A (zh) 2012-05-23
CN102471838B (zh) 2016-10-12
KR101785121B1 (ko) 2017-10-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5648885B2 (ja) マグネシウム合金板、マグネシウム合金部材、及びマグネシウム合金板の製造方法
JP5880811B2 (ja) マグネシウム合金鋳造材、マグネシウム合金鋳造コイル材、マグネシウム合金展伸材、マグネシウム合金接合材、マグネシウム合金鋳造材の製造方法、マグネシウム合金展伸材の製造方法、及びマグネシウム合金部材の製造方法
JP6339616B2 (ja) 展伸用途のマグネシウム系合金
TWI385257B (zh) 鎂合金板之製造方法及鎂合金板
JP4189687B2 (ja) マグネシウム合金材
WO2010150651A1 (ja) マグネシウム合金板
JP4613965B2 (ja) マグネシウム合金板材
JP6278379B2 (ja) マグネシウム合金板材の製造方法並びにマグネシウム合金板材及びそれを用いたプレス成形体
JP6176393B2 (ja) 曲げ加工性と形状凍結性に優れた高強度アルミニウム合金板
JP2008308703A (ja) 連続鋳造圧延用マグネシウム合金およびマグネシウム合金材料の製造方法
JP2017160542A (ja) マグネシウム合金鋳造材、マグネシウム合金鋳造コイル材、マグネシウム合金展伸材、マグネシウム合金部材、マグネシウム合金接合材、及びマグネシウム合金鋳造材の製造方法
JP4332889B2 (ja) マグネシウム基合金成形体の製造方法
JP5757104B2 (ja) マグネシウム合金材及びその製造方法
JP6099257B2 (ja) マグネシウム基合金薄板及び箔材並びにそれらの製造方法
JP2009024219A (ja) 高強度で成形が可能なアルミニウム合金冷延板
JP2012077320A (ja) 曲げ加工用マグネシウム合金板材およびその製造方法ならびにマグネシウム合金パイプおよびその製造方法
JP5688674B2 (ja) マグネシウム合金コイル材、マグネシウム合金板、及びマグネシウム合金コイル材の製造方法
JP5892212B2 (ja) マグネシウム合金板、マグネシウム合金部材、及びマグネシウム合金板の製造方法
JP6294962B2 (ja) プレス成形性および形状凍結性に優れたアルミニウム合金板およびその製造方法
JP6136037B2 (ja) マグネシウム合金鋳造材、マグネシウム合金鋳造コイル材、マグネシウム合金展伸材、マグネシウム合金接合材、マグネシウム合金鋳造材の製造方法、マグネシウム合金展伸材の製造方法、及びマグネシウム合金部材の製造方法
WO2021215241A1 (ja) マグネシウム合金、マグネシウム合金板、マグネシウム合金棒およびこれらの製造方法、マグネシウム合金部材
JP5598657B2 (ja) マグネシウム合金板材、及びマグネシウム合金成形体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120224

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130724

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130920

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20140617

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140916

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20140924

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20141017

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20141030

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5648885

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250