JP5645131B2 - 複層塗膜の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複層塗膜の形成方法に関し、特に3コート1ベーク法を用いて自動車車体に水性中塗り塗膜及び上塗り塗膜を形成する方法に関する。
自動車車体の塗装は、被塗物である鋼板の上に電着塗膜、中塗り塗膜、ベース塗膜とクリヤー塗膜からなる上塗り塗膜を順次形成して行われる。従来、これらの塗膜は、それぞれの塗膜を塗布した後に各塗膜毎に焼付け硬化を行い形成されてきた。複数の塗料を塗り重ねる場合、下層塗膜を完全に硬化させた後に上層塗膜を塗装しないと、隣接する塗膜層が相互に干渉し、下層の凹凸が上層に反映されて、複層塗膜の外観が悪化するためである。
しかしながら、近年、環境性能重視の指向が強まり、塗装工程にかかる省エネルギー化、地球温暖化ガス排出抑制ならびに環境汚染低減の要請に応えるべく、自動車車体の塗装方法は、焼付け硬化させない状態で複数の塗料を塗り重ね、その後、それらを同時に硬化させる複層塗膜形成方法が検討されてきた。かかる塗装方法をウェットオンウェット法と称する。自動車車体の塗装におけるウェットオンウェット法の態様は種々提案されており、例えば、電着塗膜と中塗り塗膜を同時に焼付け乾燥する、電着−中塗りウェットオンウェット法、中塗り−ベース塗膜−クリヤー塗膜の3層を同時に焼付け乾燥する、中上塗りウェットオンウェット法などが提案されている。
特許文献1には、電着塗膜を塗布した後、水性中塗り塗料を塗布し、両者を同時に焼付け乾燥する、電着−中塗りウェットオンウェット法が提案されている。しかしながら、この方法で形成された塗膜は高度な平滑性が得られず、自動車塗装において求められる塗膜外観基準を満足しない。また、特許文献2には、中塗り−ベース塗膜−クリヤー塗膜の3層を同時に焼付け乾燥する、中上塗りウェットオンウェット法が記載されている。この方法においては、中塗り、上塗りの各塗装工程において、未乾燥塗膜の塗膜不揮発分を規定の範囲に制御する方法が記載されている。しかしながら、かかる方法において使用する塗料組成物についての格別な記載は無く、その結果、自動車塗装において求められる塗膜外観基準を満足することはできない。また、特許文献3には、中上塗りのウェットオンウェット法が記載されており、中塗りおよびベース塗料の中和価を規定の範囲に制御することにより中塗り−上塗り間の混層を抑え、良好な塗膜外観が得られると述べられている。この方法によれば、電着塗装により形成された塗膜の平滑性が良好な場合、例えばカットオフ値25で測定された表面粗度Raの値が2.5未満である場合は、良好な塗膜外観が得られるものの、表面粗度Raの値が2.5以上の平滑性が劣る電着塗膜上に塗装する場合は、形成された複合塗膜の平滑性はやはり自動車塗装において求められる塗膜外観基準を満足することはできない。
特開2000−96295号公報 特開2004−267834号公報 特開平8−290102号公報
本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、中上塗りウェットオンウェット塗装法において、下層に形成された電着塗膜の平滑性が劣る場合においても、優れた平滑性を有する複層塗膜を形成する方法を提供することにある。
即ち、本発明は、以下の(1)〜()を要旨とするものである。
(1)電着塗膜が塗装され、その焼付けが完了した自動車車体上に、水性中塗り塗料を塗装(工程(i))、セッティング(工程(ii))、予備乾燥(工程(iii))を行い、引き続き水性ベース塗料を塗装し、さらにクリヤー塗料を塗装して、前記水性中塗り塗膜、前記水性ベース塗膜及び前記クリヤー塗膜を同時に加熱硬化させて、複層塗膜を形成する方法であって、前記水性中塗り塗膜の性状が、前記工程(i)の直後においては測定温度23℃、剪断速度1.0秒−1の条件下で粘度10〜200Pa.S、かつ不揮発分45〜55重量%であり、条件が5〜35℃、2〜20分である工程(ii)を実施した後でかつ前記工程(iii)の直前においては測定温度23℃、剪断速度1.0秒−1の条件下で粘度10〜1000Pa.S、不揮発分46〜60重量%であること、および前記水性中塗り塗料が、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アミノプラスト樹脂、沸点200℃以上の水溶性溶剤、および着色剤を含むことを特徴とする複層塗膜の形成方法。
)前記ポリエステル樹脂が、(A)酸価20mgKOH/g以下、ガラス転移点50〜80℃、平均粒径50〜500nmのポリエステル水性分散樹脂、および(B)酸価10〜90mgKOH/g、ガラス転移点0〜40℃、平均粒径20〜100nmのポリエステル水溶性樹脂の混合物であることを特徴とする()に記載の複層塗膜の形成方法。
)前記沸点200℃以上の水溶性溶剤が、グリコールエーテル系溶剤であることを特徴とする()または()に記載の複層塗膜の形成方法。
本発明の複層塗膜の形成方法によれば、中上塗りウェットオンウェット塗装法において、下層に形成された電着塗膜の平滑性が劣る場合においても、優れた平滑性を有する複層塗膜を形成することができる。
本発明の複層塗膜の形成方法は、電着塗膜が塗装され、その焼付けが完了した自動車車体上に、水性中塗り塗料の塗装(工程(i))、セッティング(工程(ii))、予備乾燥(工程(iii))を行い、続いて水性ベース塗料、さらにクリヤー塗料を塗装して、水性中塗り塗膜、水性ベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させて行われる。工程(i)は、電着塗膜が形成された被塗装物上に、水性中塗り塗料を塗装する工程であり、工程(ii)は、塗布された中塗り塗膜のレベリングを目的とする工程であり、工程(iii)は、塗膜に含有される過剰な揮発成分を除去する目的で、形成された未硬化の中塗り塗膜を予備乾燥する工程である。
本発明者らは、下層に形成された電着塗膜の平滑性が劣る場合においても、優れた平滑性を有する複層塗膜を形成する方法について鋭意研究した結果、未硬化の中塗り塗膜の粘度および不揮発分を以下の如く規定することにより本発明の目的を達成できることを見出した。すなわち、上記工程(i)の直後における中塗り塗膜の粘度を、測定温度23℃、剪断速度1.0秒−1の条件下で10〜200Pa.Sの範囲とし、不揮発分を45〜55重量%の範囲とし、条件が5〜35℃、2〜20分である工程(ii)を実施した後で上記工程(iii)の直前における中塗り塗膜の粘度を、測定温度23℃、剪断速度1.0秒−1の条件下で10〜1000Pa.Sの範囲とし、不揮発分を46〜60重量%の範囲とすることにより、本発明の目的を達成できることを見出した。
ここで、粘度は、市販の剪断速度可変型粘性測定装置を用いて測定することができ、例えば、「Haake RS−600型」(サーモエレクトロン社製粘弾性測定装置)を用いて測定することができる。また、不揮発分は、未硬化の塗膜の乾燥前および乾燥後の重量減少量から算出できる。粘度、不揮発分の試験に供する未硬化塗膜は、通常自動車車体外板を塗装する際に使用される塗装装置を用いて、自動車車体塗装と同一条件下で塗装された未硬化塗膜をスクレーパーの如き器具を使用して採取したものを用いる。かくして採取した未硬化塗膜の粘度と、得られる硬化塗膜の平滑性を関連づけるには、剪断速度1.0秒−1における粘度を規定することが有効であることが、本発明者らの研究により明らかである。理由は、剪断速度1.0秒−1における粘度が、塗料を塗布後、乾燥に到るまでの過程での未硬化塗膜のレベリングの度合いを示すからである。
工程(i)の直後における粘度が10Pa.Sより低い場合は下層の電着塗膜の凹凸を隠蔽することができず好ましくない。また、工程(iii)の直前における粘度が10Pa.Sより低い場合も下層の電着塗膜の凹凸を隠蔽することができず好ましくない。さらに、工程(i)の直後における粘度が200Pa.Sより高いか、工程(iii)の直前における粘度が1000Pa.Sより高い場合は共に中塗り塗膜自体の平滑性が劣るため好ましくない。塗膜の不揮発分については、工程(i)の直後において45重量%より低い場合も、工程(iii)の直前において46重量%より低い場合も共に下層の電着塗膜の凹凸を隠蔽することができず好ましくない。また、工程(i)の直後において55重量%より高いか、工程(iii)の直前において60重量%より高い場合は共に中塗り塗膜自体の平滑性が劣るため好ましくない。
水性中塗り塗膜の粘度、不揮発分を上記のように規定することにより、未硬化の中塗り塗膜が過剰にレベリングして電着塗膜の凹凸を隠蔽できなくなることを避け、かつ、中塗り塗膜自体が凹凸を発生させることも無い適正なレベリング状態を保つことにより、目標とする平滑な複合塗膜を形成することが可能となる。工程(ii)の条件は、5〜35℃、2〜20分の範囲であり、かかる条件におけるセッティングを行うことにより、前記塗膜の粘度並びに塗膜の不揮発分を得ることができる。
次に、本発明に用いられる水性中塗り塗料について説明する。
水性中塗り塗料は、電着塗装が施された下地の凹凸を隠蔽し、上塗り塗装後の表面平滑性を確保し、耐衝撃性、耐チッピング性等の塗膜物性を付与するために塗装されるものである。
本発明に用いられる水性中塗り塗料は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アミノプラスト樹脂、沸点200℃以上の水溶性溶剤、および着色剤を水に分散してなる塗料であることが好ましく、さらに必要に応じて各種添加剤、前記以外の各種溶剤などを配合することができる。
ここで用いるポリエステル樹脂は、多価アルコールと化学量論的当量より多い量の多価カルボン酸および/またはそれらの無水物との反応生成物の1種または2種以上の混合物である。水性中塗りに用いる場合は、得られた樹脂に含有されるカルボキシル基を中和剤により中和してイオン性基を生じせしめ、水に溶解ないし分散した状態を保持させる。溶解とは、樹脂が水中で完全に分子状態に解離する形態であり、分散とは、樹脂が粒子径20〜1000nm程度の粒子として水中に安定して存在する状態の系を言う。
多価アルコールの例としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、異性体ペンタンジオール類、異性体ヘキサンジオール類またはオクタンジオール類、例えば2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−、1,3−および1,4−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシメチルベンゼンなどを挙げることができる。多価カルボン酸および多価カルボン酸無水物の例としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの二価カルボン酸、トリメリット酸などの三価カルボン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸などの多価カルボン酸無水物、二量体又は三量体の脂肪酸、例えばひまし油脂肪酸の三量体を挙げることができる。ポリエステル樹脂の製造は公知の方法で実施することができ、例えば多価アルコールと多価カルボン酸または多価カルボン酸無水物を反応容器中、200〜230℃の温度で脱水縮合することにより得られる。原料の多価アルコールと多価カルボン酸の比率および脱水縮合率を制御することにより、得られるポリエステル樹脂の酸価を増減することができる。酸価の測定は、ポリエステル樹脂を水酸化カリウムにより中和滴定し、中和に要する水酸化カリウムの重量で表示する。この滴定法は公知であり、JISなどの規格を参照することができる。
得られたポリエステル樹脂のガラス転移点は、用いる多価アルコールおよび多価カルボン酸の種類により決まり、一般的には直鎖状構造、例えば長鎖アルキレン基を多く含む構造を主たる骨格として合成されたポリエステル樹脂はガラス転移点が低く、環状構造、例えば芳香族環を含むポリエステル樹脂はガラス転移点が高い。長鎖アルキレン基を含む多価アルコールの例としては、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどを挙げることができ、長鎖アルキレン基を含む多価カルボン酸の例としては、アジピン酸、セバシン酸などを挙げることができる。また、環状構造、例えば芳香族環を含む多価アルコールの例としては、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシメチルベンゼンなどを挙げることができ、環状構造、例えば芳香族環を含む多価カルボン酸またはカルボン酸無水物の例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸およびそれらの無水物などを挙げることができる。一般にガラス転移点は塗膜の熱的性質に影響を及ぼすことが知られており、塗料原料として用いる場合、焼付け前の未硬化塗膜のレベリング性にも影響することが知られている。すなわち、ポリエステル樹脂のガラス転移点が低いとレベリング性が良好であり、高い場合はレベリング性が劣る傾向を示す。なお、ガラス転移点は、例えば動的粘弾性測定または示差操作熱量計を用いて、公知の方法で測定することができるが、一般には動的粘弾性測定により得られるtanδの変曲点をガラス転移点と規定する。動的粘弾性測定装置は市販されており、例えばオリエンテック社製DDV−25FP−W型同定年弾性測定装置を用いることができる。測定条件は、一般に周波数11Hz、昇温速度3℃/minが採用される。
水性中塗りにポリエステル樹脂を用いるためには、ポリエステル樹脂を水溶化または水分散化させることが必要であり、種々の水溶化ないし水分散化の方法が提案されており、いずれの方法も適用可能である。これらの方法のうち、カルボキシル基を塩基性中和剤で中和し、イオン性官能基を生じせしめ、当該イオン性官能基によって水溶化ないし水分散化する方法が好ましい。中和剤としては、アミン化合物が用いられ、例えばメチルアミン、エチルアミン、n−プロビルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、n−アミルアミン、イソアミルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロビルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジ−n−アミルアミン、ジイソアミルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロビルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、トリ−n−アミルアミン、トリイソアミルアミン、メチルジエチルアミン、ジチメルエチルアミン、ジメチル−n−プロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−プロピルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N−イソブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジ−n−プロピルエタノールアミン、N,N−ジ−n−ブチルエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエタノールアミン、N,N−ジイソブチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−プロピルジエタノールアミン、N−イソプロピルジエタノールアミン、N−イソブチルジエタノールアミン、モルフォリン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアミン類を挙げることができる。とりわけ、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルモルフォリンなどのアミン類を使用することが好ましい。中和後のポリエステル樹脂が水溶性を示すか、水分散体となるかは、多くの場合ポリエステル樹脂の酸価により決定され、酸価10〜40mgKOH/gの範囲のポリエステル樹脂を中和することにより水分散体が得られ、酸価40〜120mgKOH/gの範囲のポリエステル樹脂を中和することにより水溶性となる。アミンによる中和率は、40〜120モル%の範囲で適宜選ぶことができる。
中塗り塗料に使用するポリエステル樹脂は、酸価20mgKOH/g以下、ガラス転移点50〜80℃、平均粒径50〜500nmの範囲のポリエステル樹脂からなる水分散樹脂(水性ポリエステル樹脂A)と、酸価10〜90mgKOH/g、ガラス転移点0〜40℃、平均粒径20〜100nmの範囲のポリエステル樹脂からなる水溶性樹脂(水性ポリエステル樹脂B)の混合物であることが好ましい。水性ポリエステル樹脂Aは、酸価、ガラス転移点および平均粒径を前記範囲にすることにより、塗装され、予備乾燥が開始される直前の段階での塗膜粘度上昇を抑制させる効果を発揮する。また、水性ポリエステル樹脂Bは、酸価、ガラス転移点および平均粒径を前記範囲にすることにより、塗装後1.0分における未硬化塗膜の粘度を低く維持する効果を発揮する。これらの効果は共に、酸価、ガラス転移点および平均粒径を前記範囲に調節することにより達成されるものであり、酸価、ガラス転移点および平均粒径のいずれかが前記値の上限または下限から外れると、塗装後1.0分後または予備乾燥の直前の粘度は所望の値を得ることはできず、結果として優れた複層塗膜外観を得ることができない。
また、上記の水性ポリエステル樹脂Aと水性ポリエステル樹脂Bを共に使用することによって、前述の塗装後1.0分の時点並びに予備乾燥前直の時点での塗膜の粘度および不揮発分が規定の値を得ることができる。
水性ポリエステル樹脂Aと水性ポリエステル樹脂Bの混合比率は、特に限定されないが、好ましくは水性ポリエステル樹脂A100重量部に対して水性ポリエステル樹脂B30〜250重量部の範囲であり、より好ましくは水性ポリエステル樹脂A100重量部に対して水性ポリエステル樹脂B40〜200重量部の範囲である。
水性中塗りに用いるウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール類と、所望により多価アルコールないしその他のポリオール類に化学量論的に少ないジイソシアネートを反応させて鎖延長することにより得られるポリウレタン樹脂の1種または2種以上の混合物である。ポリエステルポリオールの例としては、例えば多価アルコールと化学量論的当量より多い量の多価カルボン酸および/またはそれらの無水物との反応生成物の1種または2種以上の混合物が挙げられる。ここで用いる多価アルコールの例としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、異性体ペンタンジオール類、異性体ヘキサンジオール類またはオクタンジオール類、例えば2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−、1,3−および1,4−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、トリメチロールプロパン、グリセリンなどを挙げることができる。前記多価カルボン酸および多価カルボン酸無水物の例としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの二価カルボン酸、トリメリット酸などの三価カルボン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸などの多価カルボン酸無水物、二量体又は三量体の脂肪酸、例えばひまし油脂肪酸の三量体を挙げることができる。
上述の所望により使用される多価アルコールの例としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、異性体ペンタンジオール類、異性体ヘキサンジオール類またはオクタンジオール類、例えば2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−、1,3−および1,4−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、トリメチロールプロパン、グリセリンなどを挙げることができる。
上述の所望により使用されるその他のポリオール類の例としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオールなどを挙げることができる。
ポリエーテルポリオールの例としては、例えばテトラヒドロフランの開環重合により得られるポリテトラメチレングリコール、多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。ここで用いる多価アルコールの例としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、異性体ペンタンジオール類、異性体ヘキサンジオール類またはオクタンジオール類、例えば2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−、1,3−および1,4−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノン、トリメチロールプロパン、グリセリンなどが挙げられ、アルキレンオキサイドの例としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、1,3−または2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリンなどが挙げられ、これらは2種以上混合して使用することも可能である。
ポリカプロラクトンポリオールの例としては、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類を、前述のエチレングリコールなど多価アルコールの存在下、開環重合して得られる化合物が挙げられる。さらに、前記ポリカーボネートポリオールの例としては、前述のエチレングリコールなど多価アルコールと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の炭酸エステル類より生成される化合物が挙げられる。
次に、前記ジイソシアネートの例としては、2,4−および/または2,6−ジイソシアネートトルエン、2,4−ジイソシアネート−ジシクロヘキシルメタン、4,4−ジイソシアネート−ジシクロヘキシルメタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチルシクロヘキサンなどが挙げられる。これらは1種単独で使用するか、または2種以上混合して使用することができる。
遊離イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール類と、所望により上述の多価アルコールないしポリオール類と、ジイソシアネートとを触媒の存在または非存在下、加熱混合して得ることができる。触媒の例としては、有機金属類、例えばジブチルスズジラウレートの如き有機スズ化合物、トリエチルアミンの如き3級アミン類、カルボン酸塩、例えばナフテン酸カルシウム、ナフテン酸スズの如きナフテン酸塩、オクチル酸コバルト、オクチル酸鉛の如きオクチル酸塩を挙げることができる。
ポリエステルポリオール類と、上述の所望により使用される多価アルコールないしポリオール類と、ジイソシアネートの混合比は、ポリエステルポリオール類、多価アルコールないしポリオール類が有する総水酸基価と、ジイソシアネートの有するイソシアネート価の比率が、それらのモル比で表したとき、1:0.8〜1:0.95の範囲であることが好ましい。反応工程は通常有機溶媒の如き希釈剤の存在下、60〜140℃、2時間ないし4時間で終結する。
水性中塗りにウレタン樹脂を用いる場合、ウレタン樹脂が含有するカルボキシル基を、アミンの如き中和剤で中和し、続いて水に分散することによって水性分散樹脂を得ることができる。使用できるアミンの種類、量は、前述したポリエステル樹脂の水溶液または水分散樹脂の例と同じものが適用できる。また、水分散樹脂を安定化させる目的で、乳化剤を併用しても良い。乳化剤の例としては、炭素数が6以上の炭素原子を有する炭化水素基と、カルボン酸塩、スルホン酸塩又は硫酸塩部分エステルなどの親水性部分とを同一分子中に有する化合物から選ばれるアニオン系又は非イオン系の乳化剤が挙げられる。このうちアニオン乳化剤としては、アルキルフェノール類又は高級アルコール類の硫酸半エステルのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;アルキル又はアリルスルホナートのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアリルエーテルの硫酸半エステルのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩などが挙げられる。また、非イオン系の乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアリルエーテルなどが挙げられる。また、これら一般汎用のアニオン系、ノニオン系乳化剤の他に、分子内にラジカル重合性の不飽和二重結合を有する、すなわちアクリル系、メタクリル系、プロペニル系、アリル系、アリルエーテル系、マレイン酸系などの基を有する各種アニオン系、ノニオン系反応性乳化剤なども適宜単独で又は2種以上の組み合わせで使用される。
次に、水性中塗りに用いるアミノプラスト樹脂は、メラミン、ベンゾグアナミン、シクロヘキシルグアナミン、尿素等のアミノ基含有化合物をメチロール化し、これを炭素数1〜6のアルカノールまたはシクロヘキサノールでエーテル化することにより得られる架橋性樹脂であり、1種または2種以上で用いられる。代表的なアミノプラスト樹脂としては、アルキルエーテル化メラミン樹脂があり、例えばブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルメチル混合エーテル化メラミン樹脂などが挙げられる。また、アルキルエーテル化メラミン樹脂は市販品を使用することもできる。このようなメラミン樹脂としては、メトキシ基を単独で有するものとして、サイメル325、サイメル327、サイメル370、マイコート723;メトキシ基とブトキシ基との両方を有するものとして、サイメル202、サイメル204、サイメル232、サイメル235、サイメル236、サイメル238、サイメル254、サイメル266、サイメル267(いずれも商品名、日本サイテックインダストリーズ社製);ブトキシ基を単独で有するものとして、マイコート506(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製)、ユーバン20N60、ユーバン20SE(いずれも商品名、三井化学社製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水性中塗りにおける前記ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アミノプラスト樹脂の混合比率は、特に限定されるものではないが、重量比でポリエステル樹脂:ウレタン樹脂:アミノプラスト樹脂=100:10〜50:5〜20の範囲が好ましい。
水性中塗りに用いる沸点200℃以上の水溶性溶剤は、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類の片側または両側の水酸基をアルコキシ基、シクロアルコキシ基またはアリールアルコキシ基で置換した構造を有し、水と自由な割合で混和する沸点200℃以上のグリコールエーテル系溶剤であることが好ましい。沸点が200℃未満であると、予備乾燥直前の時点での不揮発分が46〜60重量%の範囲にならないため、好ましくない。かかる溶剤の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどを挙げることができ、これらは1種または2種以上併用して用いることができる。添加量は限定されるものではないが、概ね中塗り塗料中0.5〜10.0重量%の範囲である。
本発明に用いる水性中塗りは、これらの樹脂および溶剤以外に着色剤を含有する。着色剤は、上塗り塗料の色調を整える他、前記中塗りの未硬化塗膜の粘度、不揮発分を規定した値に調節する補助的役割をも担うものであり、一般に着色剤を多量に配合すると、中塗り塗膜粘度は上昇する。
着色剤としては、有機もしくは無機系の塗料用着色顔料、りん片状のアルミニウム、銅、雲母、コーティングマイカ、雲母状酸化鉄などの光輝性メタリック顔料などが挙げられ、これらから選ばれた1種又は2種以上が使用できる。具体的には、二酸化チタン、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、金属錯体顔料等の有機系着色顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック等の無機着色顔料、アルミフレーク、天然または合成マイカフレーク等が挙げられる。これら顔料に、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の体質顔料を併用しても良い。着色剤の含有量は、前述の如く色調、未硬化塗膜の粘度、不揮発分に応じて調節するが、樹脂100重量部に対して1〜100重量部の範囲である。100重量部を越えて配合した場合、未硬化塗膜粘度が過度に高くなり好ましくない。
本発明に用いる水性中塗りは、これらの成分の他、所望により増粘剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、中和剤、触媒などの添加剤、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、グリコールエステル類、グリコールエーテルエステル類、ケトン類、エステル類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類およびこれら炭化水素類の混合物などの有機溶剤類、その他の成分を併用することができる。
特に、増粘剤は、前述の未硬化中塗り塗膜粘度を規定の値に調節するために用いることができる。かかる増粘剤は、特に限定されないが、例として、ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、市販されているものとしては、チローゼMH及びチローゼH(いずれもヘキスト社製、商品名)等のセルロース系のもの、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、市販されているもの(以下いずれも商品名)としては、プライマルASE−60、プライマルTT−615、プライマルRM−5(いずれもローム&ハース社製)、ユーカーポリフォーブ(ユニオンカーバイト社製)等のアルカリ増粘型のもの、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、市販されているもの(以下いずれも商品名)としては、アデカノールUH−420、アデカノールUH−462、アデカノールUH−472、UH−540、アデカノールUH−814N(旭電化工業社製)、プライマルRH−1020(ローム&ハース社製)、クラレポバール(クラレ社製)等の会合型のものを挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明に用いる水性ベース塗料は、自動車車体用水性中塗り塗料として通常使用される塗料組成物を使用することができる。例えば、水分散型樹脂、架橋性樹脂、光輝性顔料、着色顔料や体質顔料等の顔料、各種添加剤等を含む水性塗料を挙げることができる。水分散型樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、カーボネート樹脂及びエポキシ樹脂等を使用することができる。架橋性樹脂、顔料、各種添加剤も、通常用いられるものを使用することができる。
本発明に用いるクリヤー塗料は、自動車車体用クリヤー塗料として通常使用される塗料組成物を用いることができる。例えば、有機溶剤系1液または2液型クリヤー塗料、水分散型樹脂または水溶性樹脂を用いる水性クリヤー塗料、室温で固形の粉末状樹脂を微粉砕してなる粉体クリヤー塗料、粉体クリヤー塗料用樹脂を水などの媒体に分散した粉体スラリー型クリヤー塗料などを使用できる。これらのうち、1液ないし2液型有機溶剤系クリヤー塗料が最も適しており、これらのクリヤー塗料に用いる樹脂成分としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらはアミノプラスト樹脂、イソシアネート樹脂等ないし酸無水物基含有樹脂等の架橋性樹脂と組み合わせて用いられ、各種のものが実用化されている。例えば、アクリル樹脂などからなる主樹脂とアミノプラスト樹脂からなる架橋性樹脂を組み合わせてなる1液型アクリルメラミン塗料、アクリルおよび/またはポリエステル樹脂からなる主剤と、ポリイソシアネートからなる架橋性樹脂を使用前に混合して使用する2液ウレタン塗料、オキシラン基含有アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂と、酸無水物基含有樹脂との混合物からなる1液酸/エポキシ型塗料などが実用化されている。これらのうち、外観、耐酸エッチング性等の観点から、オキシラン基含有アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂と、酸無水物基含有樹脂との混合物からなる1液型クリヤーが好ましいが、これに限定されるものではない。
本発明の複層塗膜の形成方法では、電着塗膜が形成され、焼付け乾燥が完了した被塗物に対し塗装を行う。電着塗膜は、被塗物に対して公知のカチオン型電着塗料を塗装し、使用する電着塗料に規定された条件にて焼付け硬化して形成することができる。電着塗膜の平滑性は中塗り、上塗り完了後の塗膜外観に影響する重要な要素であるが、本発明においては特に電着塗膜の平滑性について制限を行う必要は無い。適用できる電着塗膜のRa値は、概ね0.5(カットオフ2.5にて測定の場合)以下であれば差し支え無い。
次いで、焼付け硬化が完了した電着塗膜上に水性中塗り塗料を塗布して中塗り塗膜を形成する。中塗り塗料の塗装は既知の方法で実施することができ、例えば、通称ベル静電塗装装置と言われる回転霧化式静電塗装機等を用いて塗布することができる。膜厚は特に限定されないが、10〜50μm、好ましくは15〜25μmになるように調節する。
上述の水性中塗り塗料を本発明の塗装工程に用いることにより、前述の粘度、不揮発分を得ることができる。塗装を実施するブースの温度、湿度を適宜調節することができるが、一般に、塗装ブースの温度は15〜40℃、湿度は40〜90%に保たれる。好ましくは、温度は20〜30℃、湿度は60〜70%である。塗装した中塗りは、5〜35℃の雰囲気下、2〜20分のセッティングを行い、引き続き予備乾燥を行う。セッティング条件がこれと異なる条件で実施した場合は、所望の塗膜の粘度、不揮発分が得られないので好ましくない。
予備乾燥方法は、特に限定されるものではないが、通常50〜100℃の温風を被塗物に送風して実施する。予備乾燥時間は1〜10分であるが、これに限定されるものではない。
次いで、予備乾燥完了後の中塗り塗膜上に水性ベース塗料およびクリヤー塗料をウェットオンウェットで順次塗布してベース塗膜/クリヤー塗膜の層を形成する。水性ベース塗料およびクリヤー塗料の塗装方法は、一般には通称ベル静電塗装装置と言われる回転霧化式静電塗装機等を用いて塗布することができる。水性ベース塗膜の膜厚を10〜30μm、クリヤー塗膜の膜厚を10〜50μmとなるように塗装することができる。
さらに、中塗り、ベース塗膜、クリヤー塗膜を同時に焼付け硬化させる。焼付けは、通常110〜180℃、好ましくは130〜160℃の温度に加熱して行われるが、用いるクリヤー塗膜の材質によって適切な条件を選択すればよい。
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、実施例中、「部」は特に断りのない限り、「重量部」を意味する。
(水性ポリエステル樹脂[A]の製造)
攪拌機、温度計、還流冷却器および水分離器を備えた四つ口フラスコに、イソフタル酸33.0部、アジピン酸16.7部、1,4−シクロヘキサンジメタノール16.5部、トリメチロールプロパン20.9部、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール18.4部を配合し加熱した。次に、内容物を160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、230℃で保持し、生成した縮合水を精留塔により留去させながら、酸価が3mgKOH/g以下になるまで反応させた。次に、生成物に無水トリメリット酸5.7部を付加した後、ジメチルエタノールアミンを4.4部加え中和してから、水を144.7部加え、不揮発分40重量%の水性ポリエステル樹脂[A]を得た。水性ポリエステル樹脂[A]の酸価は12.5mgKOH/g、ガラス転移点は65℃、平均粒径は100nmであった。なお、酸価は水酸化カリウム滴定法により、ガラス転移点は動的粘弾性測定法により周波数11Hzにて測定したチャートからtanδの変曲点を求めガラス転移点とした。
(水性ポリエステル樹脂[B]の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、イソフタル酸20.0部、無水トリメリット酸10.0部、アジピン酸9.3部、ヘキサデセニル無水コハク酸25.0部、1,4−ブタンジオール20.8部、トリメチロールプロパン14.9部を仕込み、220℃で2時間、次いで190℃で2時間エステル化反応を行って、酸価50、水酸基価120、数平均分子量1,600の水溶性ポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂反応物の温度を100℃まで下げ、これに無水トリメリット酸28.0部を付加した後、10重量%ジメチルアミノエタノール水9部、蒸留水31部、ブチルセロソルブ10部を加えて、不揮発分40重量%の水性ポリエステル樹脂[B]を得た。水性ポリエステル樹脂[B]の酸価は80mgKOH/g、ガラス転移点は10℃、平均粒径は70nmであった。
(水性ポリエステル樹脂[C]の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、イソフタル酸20.0部、無水トリメリット酸10.0部、アジピン酸18.0部、1,4−ブタンジオール14.0部、トリメチロールプロパン20.0部を仕込み、220℃で2時間、次いで190℃で2時間エステル化反応を行って、酸価100、水酸基価60、数平均分子量2,600の水溶性ポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂反応物の温度を100℃まで下げ、これに10重量%ジメチルアミノエタノール水9部、蒸留水31部、ブチルセロソルブ10部を加えて、不揮発分40重量%の水性ポリエステル樹脂[C]を得た。水性ポリエステル樹脂[C]の酸価は40mgKOH/g、ガラス転移点は45℃、平均粒径は100nmであった。
(ウレタン水性分散樹脂[D]の製造)
攪拌機、温度計、ジムロート型還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、数平均分子量2,000のポリプロピレングリコール566部と、数平均分子量1,000のポリオキシテトラメチレングリコール283部と、ジメチロールブタン酸(DMBA)85部とを仕込み、窒素ガスを流し、30rpmで攪拌しながら90℃に昇温した。続いて、テトラメチルキシリレンジイソシアネート345部を加え、イソシアネート基の含有率(NCO%)が1.8重量%に達するまで115℃で反応させてウレタンプレポリマー1279部を得、次いでイソプロピルアルコール217部を加えて30rpmで攪拌混合した。その後、5分間攪拌した後、両末端に3級の脂肪族イソシアネート基を有する線状ウレタンプレポリマーのイソプロピルアルコール溶液を得た。次に、攪拌機、温度計、ジムロート型還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた別の四ツ口フラスコに、水842部、25重量%アンモニア水11部、アミノエチルエタノ−ルアミン9.0部を仕込み、窒素ガスを流し、25℃で撹拌した。続いて、前記線状ウレタンプレポリマーのイソプロピルアルコール溶液488部を加え、35℃で3時間撹拌しながら反応させて、不揮発分31重量%の水性ウレタン水性分散樹脂[D]を得た。
(実施例1〜9、比較例1〜11の水性中塗り塗料の調製)
上述のようにして得られた水性ポリエステル樹脂[A]、[B]、または[C]を表1,2に示す割合で混合し、合計100部の樹脂液を作成した。さらに二酸化チタン10部、蒸留水25部を混合して、白色顔料ペーストを作成した。次に上述のようにして得られたウレタン水性分散樹脂[D]、アミノプラスト樹脂(サイメル325(日本サイテックインダストリーズ社製))、および水溶性溶剤(ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルまたはジエチレングリコール)を表1に示す割合で混合し、各水性中塗り塗料を製造した。
(試験板の作成)
リン酸亜鉛処理したダル鋼板に、乾燥塗膜が20μmとなるようにカチオン電着塗装を行い、160℃で30分間の加熱硬化後冷却して、被塗物を準備した。次いで、表1,2の条件で実施例1〜9、比較例1〜11の水性中塗り塗料を塗装した後、セッティング、予備乾燥を行い、引き続き水性ベース塗料(デュポン神東オートモティブシステムズ製HW−10−199)およびクリヤー塗料(デュポン神東オートモティブシステムズ製HC−10)を塗装して、これらの塗膜を同時に140℃、20分で焼付けて複層塗膜を形成した。
各鋼板上に得られた複層塗膜の仕上がりを目視外観およびPGD値で評価した。なお、目視外観およびPGD値の評価方法の詳細は以下の通りである。
目視外観
◎:光沢、鮮映性が共に極めて良好である。
○:光沢、鮮映性が良好である。
×:光沢が低く鮮映性に著しく欠ける。
PGD値
ASTM D523−08に規定する方法に準拠して、日本色彩研究所製PGD−2型の鮮映度光沢度計を使用して測定した。
実施例1〜9、比較例1〜11の水性中塗り塗料の組成、性状、塗布条件、及び評価結果を表1,2に示す。
Figure 0005645131
Figure 0005645131
表1,2から明らかなように、実施例1〜9は目視外観、PGD値に優れていたが、比較例1〜11はこれらの評価項目がともに劣っていた。
本発明の複層塗膜の形成方法によれば、中上塗りウェットオンウェット塗装法において、下層に形成された電着塗膜の平滑性が劣る場合においても、優れた平滑性を有する複層塗膜を形成することができる。

Claims (3)

  1. 電着塗膜が塗装され、その焼付けが完了した自動車車体上に、水性中塗り塗料を塗装(工程(i))、セッティング(工程(ii))、予備乾燥(工程(iii))を行い、引き続き水性ベース塗料を塗装し、さらにクリヤー塗料を塗装して、前記水性中塗り塗膜、前記水性ベース塗膜及び前記クリヤー塗膜を同時に加熱硬化させて、複層塗膜を形成する方法であって、前記水性中塗り塗膜の性状が、前記工程(i)の直後においては測定温度23℃、剪断速度1.0秒−1の条件下で粘度10〜200Pa.S、かつ不揮発分45〜55重量%であり、条件が5〜35℃、2〜20分である工程(ii)を実施した後でかつ前記工程(iii)の直前においては測定温度23℃、剪断速度1.0秒−1の条件下で粘度10〜1000Pa.S、不揮発分46〜60重量%であること、および前記水性中塗り塗料が、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アミノプラスト樹脂、沸点200℃以上の水溶性溶剤、および着色剤を含むことを特徴とする複層塗膜の形成方法。
  2. 前記ポリエステル樹脂が、(A)酸価20mgKOH/g以下、ガラス転移点50〜80℃、平均粒径50〜500nmのポリエステル水性分散樹脂、および(B)酸価10〜90mgKOH/g、ガラス転移点0〜40℃、平均粒径20〜100nmのポリエステル水溶性樹脂の混合物であることを特徴とする請求項に記載の複層塗膜の形成方法。
  3. 前記沸点200℃以上の水溶性溶剤が、グリコールエーテル系溶剤であることを特徴とする請求項またはに記載の複層塗膜の形成方法。
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