JP5644439B2 - 電気装置 - Google Patents

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Description

本発明は電気装置およびその製造方法に関する。
構成要素として有機層を備える電子素子、たとえば有機EL(Electro Luminescence)素子や、有機光電変換素子、有機トランジスタなどの電子素子は、一般に大気に曝されることによって発光特性などが比較的容易に劣化する。このような素子劣化を抑制するために、有機層を備える電子素子には一般に封止が施される。
図5を参照して封止について説明する。封止はたとえば、まず支持基板51上に搭載された電子素子54を取囲むように封止部材52を配置し、つぎにこの封止部材52を介して封止基板53を支持基板51に貼合することによりおこなわれる。これによって電子素子54が、支持基板51、封止基板53および封止部材52に囲まれ、外界から遮断される。
上記封止部材にはガスバリア性の高いものが用いられる。たとえばこのような封止部材にガラスを使用したフリット封止が検討されている。
フリットは比較的低温で溶融する薄片状または粉末状のガラス(以下、たんに「フリットガラス粉末」ということがある。)からなり、フリット封止にはこのフリットガラス粉末を溶剤に分散したペースト状のフリット剤がもちいられる。フリット封止では、まず電子素子54が搭載された支持基板51に、この電子素子54を取囲むようにしてフリット剤を供給し、つぎに仮焼成をおこない、フリット剤の溶剤成分をあらかじめ除去し、そののちフリット剤を介した状態で支持基板51と封止基板53とを貼合する。そしてレーザ光をフリット剤に照射することによってフリットガラス粉末をいったん加熱溶融する。レーザ光の照射を停止すると、フリット剤の温度が下がり、フリット剤がふたたび硬化する。このようにしてガラスからなる封止部材52が形成され、支持基板51と封止基板53と封止部材52とによって囲まれる領域が気密に封止される(たとえば特許文献1参照)。
特開2003−123966号公報
上記フリット剤の加熱は、フリット剤へのレーザ光の照射を、フリット剤の配置に沿って全周にわたって走査することによりおこなわれる。この加熱のさいに、場所によってフリット剤の加熱温度にむらが生じると、フリット剤の溶融状態にむらが生じる。その結果、封止部材自体の性状や、封止基板または支持基板と、封止部材との密着性などにむらが生じ、ひいては封止の信頼性が低下する。そのためフリット封止ではフリット剤を全周にわたって均一に加熱溶融する必要がある。
しかしながらたんにレーザ光をフリット剤の全周にわたって均一に照射しただけでは、フリット剤に加熱むらが生じる。フリット剤は均一な材質から構成される下地層の上に塗布されるのではなく、つうじょうは場所によって材質の異なる下地層の上に塗布される。たとえば電気装置では、外部から電気信号を入力するための多数の電気配線55がフリット剤と交差するように設けられているため、フリット剤が塗布される下地層として、電気配線55が設けられた部位と、電気配線55が設けられていない部位とが交互に存在する。レーザ光を照射したときのフリット剤の温度上昇特性は、フリット剤が塗布される下地層の材質などによって異なる。そのため、上述の電気装置では、電気配線55上に塗布されたフリット剤と、電気配線55が設けられていない部位上に塗布されたフリット剤とで、レーザ光を照射したときのフリット剤の加熱温度が異なることになり、フリット剤の溶融状態にむらが生じるという問題がある。
したがって本発明の目的は、封止材料を均一に加熱溶融することが可能な構成の電気装置を提供することにある。
本発明は、支持基板と、
前記支持基板上に設定される封止領域内に設けられる電気回路と、
前記支持基板上において、前記封止領域内から封止領域外に延在して設けられ、外部の電気信号入出力源と前記電気回路とを電気的に接続する電気配線と、
前記封止領域を取囲んで前記支持基板上に設けられる封止部材と、
前記封止部材を介して、前記支持基板に貼合される封止基板とを有する電気装置であって、
前記電気回路は、有機層を有する電子素子を備え、
平面視において前記電気配線と前記封止部材とが交差する交差領域では、前記電気配線が透光性電気配線によって構成されている、電気装置に関する。
また本発明は、前記透光性電気配線の厚みが、50nm以上300nm未満である、電気装置に関する。
また本発明は、前記透光性電気配線の比抵抗が、300μΩcm未満である、電気装置に関する。
また本発明は、電子素子が、有機EL素子、有機光電変換素子または有機トランジスタである電気装置に関する。
また本発明は、前記電気装置の製造方法であって、
前記電気回路および前記電気配線が設けられた支持基板を用意する工程と、
前記封止領域の外縁に沿って、前記封止部材となる封止材料を供給する工程と、
前記封止部材となる封止材料を介して前記封止基板を前記支持基板に貼り合せる工程と、
前記封止部材となる封止材料に電磁ビームを照射し、前記封止材料を加熱溶融する工程と、
前記封止材料を冷却し、硬化させて前記封止部材を構成する工程とを含む、電気装置の製造方法に関する。
また本発明は、前記封止材料が配置された全領域に亘って、同じ光強度で前記電磁ビームを照射する、電気装置の製造方法に関する。
本発明によれば、設計の自由度を低下させることなく、封止材料を均一に加熱溶融することが可能な構成の電気装置を提供することができる。
表示装置11を模式的に示す平面図である。 図1の切断面線II−IIから見た表示装置11の断面図である。 平面視において封止部材16と電気配線15とが交差する領域を拡大して模式的に示す図である。 図3の切断面線IV−IVから見た表示装置の断面図である。 封止を説明するための図である。
本発明の電気装置は、支持基板と、前記支持基板上に設定される封止領域内に設けられる電気回路と、前記支持基板上において、前記封止領域内から封止領域外に延在して設けられ、外部の電気信号入出力源と前記電気回路とを電気的に接続する電気配線と、前記封止領域を取囲んで前記支持基板上に設けられる封止部材と、前記封止部材を介して、前記支持基板に貼合される封止基板とを有する電気装置であって、前記電気回路は、有機層を有する電子素子を備え、平面視において前記電気配線と前記封止部材とが交差する交差領域では、前記電気配線が透光性電気配線によって構成されている。
本発明は、有機層を有する電子素子を備える電気回路が組み込まれた電気装置であればどのような装置であっても適用することができる。有機層を有する電子素子としては、有機EL素子、有機光電変換素子および有機トランジスタなどがあげられる。たとえば本発明の電気装置は、画素の光源またはバックライトとして用いられる有機EL素子が電気回路に組み込まれた表示装置、太陽電池や光センサとして用いられる有機光電変換素子が電気回路に組み込まれた光電変換装置、並びに上記有機EL素子、有機光電変換素子、およびその他の電子素子を駆動または制御するために用いられる有機トランジスタが電気回路に組み込まれた電気装置に適用することができる。なお以下では、画素の光源として用いられる有機EL素子が電気回路に組み込まれた表示装置を例にして、本発明の電気装置について説明する。
表示装置はアクティブマトリクス駆動型の装置と、パッシブマトリクス駆動型の装置とに大別される。本発明は両方の型の表示装置に適用可能であるが、本実施形態では一例としてアクティブマトリクス駆動型の表示装置について説明する。
<表示装置の構成>
まず表示装置11の構成について説明する。図1は本実施形態の表示装置11を模式的に示す平面図である。図2は図1の切断面線II−IIから見た表示装置11の断面図である。表示装置11は支持基板12と、前記支持基板12上に設定される封止領域13内に設けられる電気回路14と、前記支持基板12上において、前記封止領域13内から封止領域13外に延在して設けられ、外部の電気信号入出力源19と前記電気回路14とを電気的に接続する電気配線15と、前記封止領域13を取囲んで前記支持基板12上に設けられる封止部材16と、前記封止部材16を介して、前記支持基板12に貼合される封止基板17とを備える。
図1において、ハッチングの施されている部分が封止部材16に相当し、この封止部材16に取囲まれた部分が封止領域13に相当する。
本実施形態における電気回路14は、画素の光源として用いられる多数の有機EL素子と、この有機EL素子を個別に駆動する画素回路とを含んで構成される。画素回路は、支持基板12の厚み方向の一方から見て(以下、「平面視で」ということがある。)、画像情報を表示する領域(以下、画像表示領域18ということがある)に形成される。画素回路は有機トランジスタや、無機トランジスタ、キャパシタなどによって構成される。支持基板12上に形成された画素回路上には、この画素回路を覆う平坦化膜が形成される。平坦化膜はたとえば有機の絶縁膜や無機の絶縁膜によって構成される。なお絶縁膜の一部はフリット剤を加熱溶融するさいに加熱されるため、絶縁膜には耐熱性を有する膜を用いることが好ましい。そのため絶縁膜のうちで、フリット剤を加熱溶融するさいに加熱される部位に設けられる絶縁膜は、耐熱性の観点からは無機絶縁膜によって構成されることが好ましい。このような無機絶縁膜にはたとえばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、およびシリコン酸化窒化膜などの金属酸化膜を用いることができる。無機絶縁膜の厚みはつうじょう50nm〜3000nm程度である。この絶縁膜は電気回路を形成する工程中においてプラズマCVD法やスパッタ法などの既知の成膜方法で形成することができる。
多数の有機EL素子は画素回路上に設けられる。すなわち有機EL素子は、画像表示領域18において上記平坦化膜上に設けられる。有機EL素子は、たとえばマトリクス状に配置され、画像表示領域18において行方向Xおよび列方向Yにそれぞれ所定の間隔をあけて配置される。各有機EL素子と画素回路とは、平坦化膜を厚み方向に貫通する導電体によって電気的に接続される。
上述したように電気回路14は、支持基板12上に設定される封止領域13内に設けられる。換言すると封止領域13は、電気回路14が設けられる画像表示領域18を内包する領域に設定される。
電気回路14が設けられる支持基板12は、たとえばガラス板、金属板、樹脂フィルムや、これらの積層体によって構成される。支持基板12に向けて光を出射するいわゆるボトムエミッション型の有機EL素子が支持基板12に搭載される場合、支持基板12は光透過性を示す部材によって構成される。
表示装置11には、所定の電気信号を電気回路14に入力するための多数の電気配線15が設けられる。所定の電気信号とは、多数の有機EL素子をそれぞれ所定の光強度で発光させるための電気信号であり、たとえば多数の有機EL素子のうちで発光すべき素子を個別に選択するための電気信号や、各素子の発光強度を指定するための電気信号を意味する。表示装置11には多数の有機EL素子が設けられるため、電気信号を伝送するための多数の電気配線が必要となる。
上記電気信号は外部の電気信号入出力源19から入力される。表示装置11では、電気信号入出力源19はいわゆるドライバによって実現される。多数の電気配線15は、電気信号入出力源19と、電気回路とを接続するために設けられるため、支持基板12上において、前記封止領域13内から封止領域13外に延在して設けられる。なおこの多数の電気配線15上にも絶縁膜が設けられる場合もある。
多数の電気配線15は、電気回路14を中心にして、封止領域13内から封止領域13外に放射状に延在していてもよいが、本実施形態では図1に示すように、電気信号入出力源19に収束するように、封止領域13の外縁の一辺を通って、封止領域13内から封止領域13外に延在している。なお外部の電気信号入出力源19とは、封止領域13よりも外に設けられるものであり、本実施形態のように電気装置にドライバとして備えられたものであってもよく、また電気装置に備えられていなくてもよい。
封止部材16は、支持基板12上において、封止領域13の外縁に沿って封止領域13を取囲むように設けられる。換言すると封止領域13は、封止部材16に取囲まれる領域であり、その外縁が封止部材16によって規定される。上述したように多数の電気配線15は封止領域13内から封止領域13外に延在して設けられるため、封止領域の外縁に沿って延在する封止部材16は、平面視で多数の電気配線15に交差するように配置される。
図3は、平面視において封止部材16と電気配線15とが交差する領域を拡大して模式的に示す図であり、図4は図3の切断面線IV−IVから見た表示装置の断面図である。以下では、封止部材16の延在する全領域のうちで、平面視で、電気配線15と封止部材16とが交差する領域を交差領域といい、この交差領域を除く残余の領域を非交差領域ということがある。
電気配線15は、平面視において前記電気配線15と前記封止部材16とが交差する交差領域では、透光性電気配線によって構成される。電気配線15はすべてが透光性電気配線によって構成されていてもよいが、交差領域およびその近傍のみを透光性電気配線によって構成し、交差領域およびその近傍以外の部位を、透光性電気配線よりも比抵抗の小さい電気配線によって構成することが好ましい。電気配線全体の電気抵抗を低減することができるからである。なお一般に不透光性の電気配線は透光性電気配線に比べて比抵抗が小さいため、透光性電気配線よりも比抵抗の小さい電気配線として、不透光性の電気配線を用いることができる。
本実施形態における電気配線15は、画素部配線15aと、交差部配線15bと、端子部配線15cとから構成されている。画素部配線15aは、封止領域13内に配置される電気配線であって、電気回路14に接続されている。交差部配線15bは、交差領域およびその近傍に配置される電気配線である。端子部配線15cは、封止領域13外に配置される電気配線であって、電気信号入出力源19に接続される。交差部配線15bは、その一端が画素部配線15aの一端と物理的に接して接続されており、その他端が端子部配線15cの一端と物理的に接して接続されている。これによって画素部配線15aと、交差部配線15bと、端子部配線15cとが電気的に接続されている。なお交差部配線15bは、画素部配線15a上及び/又は端子部配線15c上を延在していてもよい。
本実施形態では交差部配線15bは透光性電気配線によって構成されており、画素部配線15aおよび端子部配線15cはそれぞれ交差部配線15bよりも比抵抗の小さい電気配線であって、不透光性の電気配線によって構成されている。
交差部配線15bの延在方向の長さL2は、電気抵抗の観点からは短い方が好ましい。ここで交差部配線15bの延在方向の長さL2とは、画素部配線15aの一端と、端子部配線15cの一端との間の交差部配線15bの長さを意味する。後述するように交差部配線15bには電磁ビームが照射されるが、交差部配線15bの延在方向の長さL2は、封止部材16に照射される電磁ビームのスポット径よりも大きい方が好ましい。電磁ビームが不透光性の電気配線に照射されることを防ぐことができるからである。
本明細書においてスポット径とは、封止部材において、光軸に垂直な平面で電磁ビームを切断したときに、光軸上の光強度に対して、光強度が「1/e」となる位置を結んでできる略円形状の閉曲線の直径を意味し、記号「e」はネイピア数を意味する。なお前記略円形状の閉曲線はかならずしも真円とはならないが、略円形状の閉曲線の直径を求める場合には略円形状の閉曲線を円に近似させてその直径を算出すればよい。交差部配線15bの延在方向の長さL2は、封止部材16の幅L1の3倍程度が好ましい。ここで封止部材16の幅L1とは、支持基板12の厚み方向および封止部材16の延在方向にそれぞれ垂直な幅方向における封止部材16の長さを意味する。
電気配線のうちで透光性電気配線は、金属薄膜や、透明導電性酸化物などの薄膜によって構成される。具体的には、Au、Ag、Al、Cu、Cr、W、Mo、Mg、Ta、Ti、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)などの薄膜またはこれらの積層膜によって構成される。なお金属薄膜は膜厚をきわめて薄くすることによって透光性電極として使用することはできるが、他方で、膜厚が薄すぎると電気抵抗が高くなるため、透光性電気配線には、ITOやIZOなどの透明導電性酸化物の薄膜を適用することが好ましい。
透光性電気配線の厚みは、50nm以上300nm未満であることが好ましい。
また透光性電気配線の比抵抗は、300μΩcm未満であることが好ましい。なお透光性電気配線の比抵抗の下限値はとくに設定されるわけではないが、つうじょう80μΩcm以上である。
透光性電気配線は、封止部材となる封止材料に照射する電磁ビームを透過すればよく、たとえば当該電磁ビームの全光線透過率が70%以上であることが好ましく、さらには80%以上であることが好ましい。また透光性電気配線は、たとえば可視光透過率が80%以上であることが好ましく、さらには90%以上であることが好ましい。
電気配線のうちで画素部配線15aや端子部配線15cなどの不透光性を示す電気配線は、たとえば金属薄膜によって構成される。具体的にはAu、Ag、Al、Cu、Cr、W、Mg、Ta、Ti、およびMoなどの薄膜またはこれらの積層膜によって構成される。不透光性を示す電気配線は、膜厚を厚くすることによって電気抵抗を下げることができるため、その膜厚は、つうじょう300Å〜10000Åであり、1000Å〜5000Åが好ましい。
図3に示すように平面視で封止部材16が重なる部位では電気配線15が透光性電気配線によって構成されているため、封止部材16に照射される電磁ビームは電気配線を透過する。これによって、電気配線が電磁ビームのエネルギーを吸収すること、および電磁ビームの照射による電気配線の温度上昇を避けることができ、その結果として電気配線15の存在が封止部材16の温度上昇に与える影響を小さくすることができる。そのためたとえ平面視で電気配線15上に封止部材16が設けられたとしても、交差領域における封止部材16と非交差領域における封止部材16とを同じように加熱することができ、加熱温度のばらつきを抑制することができる。
封止部材の幅および厚みは、必要とされる気密度や封止材料の特性などを考慮して設定されるが、その幅L1はつうじょう500μm〜2000μm程度であり、その厚みはつうじょう5μm〜50μm程度である。
封止基板17は、封止部材16を介して支持基板12に貼合される。封止基板17は、ガラス板、金属板、樹脂フィルム、およびこれらの積層体によって構成される。なお有機EL素子が封止基板17に向けて光を出射するいわゆるトップエミッション型の素子である場合、封止部材は光透過性を示す部材によって構成される。
<表示装置の製造方法>
つぎに表示装置の製造方法について説明する。
本発明の電気装置の製造方法は、前記電気回路および前記電気配線が設けられた支持基板を用意する工程と、前記封止領域の外縁に沿って、前記封止部材となる封止材料を供給する工程と、前記封止部材となる封止材料を介して前記封止基板を前記支持基板に貼合する工程と、前記封止部材となる封止材料に電磁ビームを照射し、前記封止材料を加熱溶融する工程と、前記封止材料を冷却し、硬化させて前記封止部材を構成する工程とを含む。
(支持基板を用意する工程)
本工程ではまず電気回路および電気配線が設けられた支持基板を用意する。本実施形態では、たとえば有機EL素子を駆動する回路および複数の有機EL素子からなる電気回路、並びに電気配線がその上に形成された支持基板を用意する。なお本工程では電気回路および電気配線があらかじめ設けられた支持基板を市場から入手してきてもよいが、有機EL素子を駆動する回路および電気配線を支持基板上に形成し、さらにこの上に複数の有機EL素子を形成することによって、電気回路および電気配線が設けられた支持基板を用意してもよい。
画素回路および電気配線は周知の半導体技術を用いて形成することができる。なお電気配線は、たとえばまず画素部配線15aおよび端子部配線15cを形成し、その後、交差部配線15bを形成するか、またはまず交差部配線15bを形成し、その後、画素部配線15aおよび端子部配線15cを形成することによって形成することができる。電気配線は、たとえば塗布法や、蒸着法、スパッタリング法などによって形成することができる。また電気配線はフォトリソグラフィ法によってパターン形成することができる。
有機EL素子は、一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを含んで構成される。なお有機EL素子には電極および発光層のほかに必要に応じて所定の層が設けられることがある。このような所定の層としてたとえば正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、電子注入層、電子輸送層および正孔ブロック層などがあげられる。有機EL素子は、これら有機EL素子を構成する複数の層を順次積層することによって画素回路上に形成することができる。有機EL素子には低分子型のものや高分子型のものがあるが、本発明はどのような有機EL素子にも適用することができる。有機EL素子の各層は蒸着法やスパッタリング法などの乾式法、またはンクジェット法やノズルプリンティング法、スピンコート法などの湿式法などの所定の方法を用いて順次積層することができる。
(封止材料を供給する工程)
本工程では封止領域の外縁に沿って、封止部材となる封止材料を供給する。封止材料は、支持基板12および封止基板17のうちの少なくともいずれか一方に供給すればよい。本実施形態では封止基板17上に封止材料を供給する。
封止材料として本実施形態ではペースト状のフリット剤を使用する。ペースト状のフリット剤は、フリットガラス粉末とビヒクルとを含んで構成される。ビヒクルは、バインダーと、このバインダーおよびフリットガラス粉末を分散する溶剤とからなる。
フリットガラス粉末には、V、VO、SnO、SnO、P、Bi、B、ZnO、およびSiOなどを含有成分とする低融点ガラス粉末を用いことができる。たとえば旭硝子株式会社社製のBAS115,BNL115BB-N,FP-74などを使用することができる。
バインダーには、ニトロセルロース(nitro cellulose)、アクリル酸メチル(methyl acrylate)、アクリル酸エチル(ethyl acrylate)、アクリル酸ブチル(butyl acrylate)、エチルセルロース(ethyl cellulose)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose)、ブチルセルロース(butyl cellulose)などを用いることができる。
溶剤には、ブチルカルビトールアセテート(butyl carbitol acetate)、プロピレングリコールジアセテート(propylene glycol diacetate)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、エチルカルビトールアセテート(ethl carbitol acetate)、酢酸アミル(Amyl acetate)などを用いることができる。
封止材料は、たとえば所定の塗布法によって、支持基板12および封止基板17のうちの少なくともいずれか一方に供給される。たとえばスクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法およびノズルプレィンティング法などの印刷法、並びにディスペンサを用いた塗布法などによって供給される。これらの中でもクリーン印刷法が好ましい。被塗布面上における封止材料の膜厚の均一性や塗布状態の再現性などの膜厚制御性が良く、かつ短時間での塗布が可能だからである。
つぎに本実施形態では仮焼成をおこなう。仮焼成をおこなうことにより、封止材料のうちの不要な成分を除去することができる。すなわち仮焼成をおこなうことにより溶剤が気化するとともにバインダーが燃焼し、フリット剤からビヒクルが除去される。結果として封止基板17上にはフリットガラス粉末が残留する。仮焼成は、ビヒクルを除去することのできる温度でおこなわれ、たとえば300℃〜500℃でおこなわれる。なお封止材料のほかに、加熱することによって化学変化するような部材が封止基板17に設けられている場合、仮焼成では、封止材料およびその近傍のみを選択的に加熱することが好ましい。たとえば封止基板上にも電気回路の一部が構成されている場合、封止基板上に形成された電気回路が加熱されないように仮焼成をおこなうことが好ましい。また本実施形態では封止基板上に封止材料を供給するとしたが、仮に支持基板上に封止材料を供給し、さらに封止材料を仮焼成する場合には、有機EL素子および画素回路が仮焼成によって劣化することを防ぐために、封止材料およびその周辺領域のみを加熱することが好ましい。
(封止基板と支持基板とを貼合する工程)
つぎに封止基板を支持基板に貼合する。本実施形態では光硬化性樹脂を用いて仮封止をおこなう。仮封止は、たとえばまず封止材料の外側の領域において当該封止材料に沿って光硬化性樹脂を供給し、つぎに、真空中または不活性ガス雰囲気中において封止基板と支持基板とを貼合する。
封止基板と支持基板との貼合はアライメントマークを基準にしておこなうことができる。たとえば封止基板および支持基板にそれぞれアライメントマークをあらかじめ施しておき、このアライメントマークの位置を光学センサで認識し、さらに、認識した位置情報に基づいて、封止基板および支持基板の位置合わせをおこない、その後、封止基板と支持基板とを貼合すればよい。
封止基板と支持基板とを貼合した後、光硬化性樹脂に光を照射し、光硬化性樹脂を硬化する。これによって封止領域が仮封止される。光硬化性樹脂にはたとえば紫外線硬化型エポキシ樹脂や紫外線硬化型アクリル樹脂を用いることができる。図1〜図4には光硬化性樹脂が示されていないが、仮封止をおこなう場合、光硬化性樹脂が封止部材16に沿って延在するため、実際には、たとえば図1では封止部材をあらわす線と光硬化性樹脂をあらわす線の2本の線が、封止領域の外縁に沿って延在することになる。なお光硬化性樹脂と封止部材16とが近接して配置されている場合、封止材料をレーザで加熱溶融するさいに光硬化性樹脂が燃焼するおそれがあるため、光硬化性樹脂と封止部材16とはたとえば0.5mm以上離間して配置することが好ましい。
また他の実施形態として、フリット封止後に、仮封止に必要な部位ではあるが、電気装置の構成には不必要な部位を、電気装置から切り離してもよい。たとえば仮封止に使用された光硬化性樹脂と、封止部材との間で基板を分断し、光硬化性樹脂が配置された部分を不要部分として電気装置から切り離してもよい。この場合、仮封止のさいには、光硬化性樹脂は、封止部材16から所定の距離だけ離間させて、封止部材16を取囲むように配置すればよい。
真空中で仮封止をおこなう場合、その真空度は1Pa〜90kPaが好ましい。また不活性ガス雰囲気中で仮封止をおこなう場合、露点が−70℃以下の不活性ガス雰囲気中で仮封止をおこなうことが好ましい。なお不活性ガスにはアルゴンガスや窒素ガスを用いることができる。また光硬化性樹脂に照射する光には紫外線を用いることができる。このように真空中または不活性ガス雰囲気中において仮封止をおこなうことによって、封止領域中の水分濃度および酸素濃度を大気よりも低減することができる。なお仮封止では気密度がかならずしも高いわけではないが、仮封止された状態において後述のフリット封止をおこなうことにより、封止領域の気密度を高めることができ、これによって封止領域内の水分濃度および酸素濃度を大気よりも低減された状態に保つことができる。
(封止材料を加熱溶融する工程)
本実施形態では仮封止後、大気中において封止材料を加熱溶融する。封止材料の加熱溶融は、封止部材となる封止材料に電磁ビームを照射することによっておこなう。
電磁ビームの照射は、本実施形態では支持基板および封止基板のうちの封止基板側からおこなう。たとえば電磁ビームを出射するヘッド(以下、電磁ビーム照射ヘッドということがある。)を封止基板上に配置し、封止基板に向けて電磁ビームを照射する。電磁ビーム照射ヘッドから出射された電磁ビームは、封止基板を透過して、封止材料に照射される。電磁ビームには、エネルギー密度の高い光が好適に用いられ、レーザ光が好適に用いられる。また電磁ビームには、封止材料が効率的に光エネルギーを吸収する波長の光であって、かつ封止基板を高い透過率で透過する波長の光を用いることが好ましい。換言すると、封止基板には電磁ビームが透過する部材が好適に用いられ、封止材料には電磁ビームを吸収する材料が好適に用いられる。電磁ビームに使用される光のピーク波長はつうじょう190nm〜1200nmであり、300nm〜1100nmであることが好ましい。電磁ビームを放射するレーザ装置には、たとえばYAGレーザ装置、半導体レーザ装置、アルゴンイオンレーザ装置およびエキシマレーザ装置などを用いることができる。
電磁ビームの照射は、たとえば電磁ビーム照射ヘッドを3次元的に移動可能な制御装置を用いておこなうことができる。たとえば封止材料との間に所定の間隔をあけて電磁ビーム照射ヘッドを配置し、封止材料に電磁ビームを照射しつつ、封止材料に沿って電磁ビーム照射ヘッドを走査すればよい。なお電磁ビームの照射は、電磁ビームの光強度を経時的に変動させておこなってもよいが、電磁ビームの光強度を変動させることなく、封止材料が配置された全領域にわたって同じ光強度で前記電磁ビームを照射することが好ましい。装置の設定が簡便になるからである。また、光強度を変えるさいには電磁ビーム照射ヘッドの走査スピードを下げることが必要になることもあるが、光強度を一定に保ちつつ、電磁ビーム照射ヘッドを走査する場合、走査スピードを下げる必要がないため、電磁ビーム照射ヘッドを封止材料に沿って1周させるさいに要する時間を短縮することができる。なお電磁ビームの照射は、貼合された封止基板および支持基板に対して、電磁ビーム照射ヘッドを相対的に走査すればよく、電磁ビーム照射ヘッドに限らず、たとえば貼合された封止基板および支持基板を移動させることによっておこなってもよく、また貼合された封止基板および支持基板と、電磁ビーム照射ヘッドとの両方を移動させることによっておこなってもよい。貼合された封止基板および支持基板の移動は、移動機構が設けられたステージ上に、貼合された封止基板および支持基板を載置し、このステージを移動させることによっておこなうことができる。
電磁ビームはそのスポット径を調整することが好ましい。スポット径の大きさは、集光レンズなどの光学要素を用いることによって調整することができる。
(封止部材を構成する工程)
つぎに、溶融した封止材料を冷却し、硬化させて封止部材を形成する。なお溶融した封止材料は、表示装置の周囲の温度を下げることによって冷却してもよいが、自然冷却によってその温度を下げてもよい。たとえば電磁ビームの照射を止めることにより封止材料の温度は自然に低下するため、溶融した封止材料は自然に硬化する。これによって封止部材が形成され、封止領域13が気密に封止される。
以上説明したように、平面視において前記電気配線と前記封止部材とが交差する交差領域では、電気配線が透光性電気配線によって構成されるため、封止部材16に照射される電磁ビームは電気配線を透過する。これによって、電気配線が電磁ビームのエネルギーを吸収すること、および電磁ビームの照射による電気配線の温度上昇を避けることができ、その結果として電気配線15の存在が封止部材16の温度上昇に与える影響を小さくすることができる。そのためたとえ平面視で電気配線15上に封止部材16が設けられたとしても、交差領域における封止部材16と非交差領域における封止部材16とを同じように加熱することができ、加熱温度のばらつきを抑制することができる。これによって封止材料を均一に加熱溶融することができ、結果として封止部材自体の性状や、封止基板または支持基板と、封止部材との密着性などを均一化することができ、封止の信頼性を向上することができる。
また電気配線の外形は従来の装置と同じにすることができるため、電気配線を蒸着によって形成するさいに使用するマスクの設計に、従来の技術のマスクの設計を活用することができる。
以上では電気回路が支持基板に設けられた形態の表示装置について説明したが、封止基板にも電気回路が設けられていてもよい。たとえば画素回路を支持基板に設け、有機EL素子を封止基板に設けてもよい。なお支持基板に設けられた画素回路と、封止基板に設けられた有機EL素子とは、所定の導電性部材によって電気的に接続される。
また上述の表示装置ではアクティブマトリクス駆動型の装置について説明したが、本発明はパッシブマトリクス駆動型の装置にも適用することができる。
また上述の表示装置では、有機層を有する電子素子として有機EL素子が設けられた表示装置について説明したが、画素回路の一部を構成するトランジスタに、有機層を有する電子素子として有機トランジスタを用いてもよい。
11 表示装置
12 支持基板
13 封止領域
14 電気回路
15 電気配線
16 封止部材
17 封止基板
18 画像表示領域
19 電気信号入出力源
51 支持基板
52 封止部材
53 封止基板
54 電子素子
55 電気配線

Claims (6)

  1. 支持基板と、
    前記支持基板上に設定される封止領域内に設けられる電気回路と、
    前記支持基板上において、前記封止領域内から封止領域外に延在して設けられ、外部の電気信号入出力源と前記電気回路とを電気的に接続する電気配線と、
    前記封止領域を取囲んで前記支持基板上に設けられる封止部材と、
    前記封止部材を介して、前記支持基板に貼合される、光透過性を示す封止基板とを有する電気装置であって、
    前記電気回路は、有機層を有する電子素子を備え、
    前記封止部材は、フリット剤からなり、
    平面視において前記電気配線は、
    前記電気配線と前記封止部材とが交差する交差領域に設けられる透光性電気配線と、
    前記封止領域内に設けられ、前記透光性電気配線の一端に接続され、前記透光性電気配線よりも比抵抗が小さく、不透光性の電気配線と、
    前記封止領域外に設けられ、前記透光性電気配線の他端に接続され、前記透光性電気配線よりも比抵抗が小さく、不透光性の電気配線と、によって構成されている、電気装置。
  2. 前記透光性電気配線の厚みが、50nm以上300nm未満である、請求項1記載の電気装置。
  3. 前記透光性電気配線の比抵抗が、300μΩcm未満である、請求項1または2記載の電気装置。
  4. 電子素子が、有機EL素子、有機光電変換素子または有機トランジスタである請求項1または2記載の電気装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の電気装置の製造方法であって、
    前記電気回路および前記電気配線が設けられた支持基板を用意する工程と、
    前記封止領域の外縁に沿って、前記封止部材となる封止材料を供給する工程と、
    前記封止部材となる封止材料を介して前記封止基板と前記支持基板とを貼合する工程と、
    前記封止基板側から、前記封止部材となる封止材料に電磁ビームを照射し、前記封止材料を加熱溶融する工程と、
    前記封止材料を冷却し、硬化させて前記封止部材を構成する工程とを含
    前記封止材料がフリット剤である、電気装置の製造方法。
  6. 前記封止材料が配置された全領域に亘って、同じ光強度で前記電磁ビームを照射する、請求項5記載の電気装置の製造方法。
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