JP5643988B2 - 階段構造、及び階段用床材の施工方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、階段用床材と踏み面との重なり部分が接着剤によって接着され、階段用床材とコーナー部との重なり部分がシーリング剤によって接着され、階段用床材と蹴上げとの重なり部分が粘着剤によって接着された階段構造が開示されている。
しかしながら、この階段構造にあっては、1つの階段用床材を施工するために、接着剤、シーリング剤及び粘着剤の3種類を使い分けなければならず、施工が非常に煩雑である。
本発明の第2の目的は、階段用床材を階段に良好に密着させることができ、施工容易な階段用床材の施工方法を提供することである。
ただし、TI値=η1/η2で求められ、前記η1は、BH型粘度計及びローターNo.7を用い且つ23℃、回転数2rpmの条件下で測定される粘度で、前記η2は、同回転数20rpmで測定される粘度である。
本発明の他の好ましい階段構造は、前記両面粘着テープの下端から上端までの長さが20mm〜35mmである。
この階段用床材の施工方法は、階段の踏み面に敷設される踏み面敷設部と階段の蹴上げ面の少なくとも上方部に敷設される蹴上げ面敷設部とが屈曲部を介して略L字状に連設された階段用床材を、階段に施工するに際して、前記階段用床材の蹴上げ面敷設部の一部を、前記蹴上げ面敷設部の下端から両面粘着テープの上端までの長さXが蹴上げ面敷設部の下端から踏み面敷設部の裏面までの長さYの1/2倍〜4/5倍となる両面粘着テープを介して階段に接着し、前記両面粘着テープによって接着された部分以外の階段用床材の部分を、BH型粘度計及びローターNo.7を用い且つ23℃、10rpmの条件下で測定した値が100,000mPa・sを超える粘度を有する、TI値が1.5〜8.0の接着剤を用いて階段に接着する。
また、本発明の階段用床材の施工方法は、階段用床材と階段下地とが良好に密着し、階段用床材と階段下地の間に実質的に空洞を有しない階段構造を、容易な作業で得ることができる。
なお、本明細書において、便宜上、方向を示す用語として、「上」は、階段を登っていく側を、「下」は、これと反対に階段を降りていく側を、「前」は、蹴上げ面から離れる側を、「後」は、これと反対に蹴上げ面に近づく側を、「幅方向」は、上下方向と前後方向の双方に直交する方向を、それぞれ意味する。
本明細書において、「P〜Q」という記載は、P以上Q以下を意味する。
図1において、11は、本発明の階段構造を示す。
階段構造11は、踏み面12と蹴上げ面13とが段鼻部14において略直交状に構築された階段と、前記階段の踏み面12に敷設される踏み面敷設部2と前記階段の蹴上げ面13の少なくとも上方部に敷設される蹴上げ面敷設部3とが屈曲部4を介して略L字状に連設された階段用床材1と、を有する。
前記両面粘着テープ7の上端から蹴上げ面敷設部3の下端までの長さXは、踏み面敷設部2の裏面から蹴上げ面敷設部3の下端までの長さYの1/2倍を超え4/5倍以下が好ましく、2/3倍〜4/5倍がより好ましい。
なお、図1中、91は、蹴上げ面敷設部3の下端と下段の踏み面敷設部2の表面の間に生じる段差を埋めるコーキングシール部を示す。
この階段用床材1は、マンション、商業施設、教育施設、医療福祉施設、オフィスビル、一般住宅などの各種構造物の階段に敷設される。
施工対象である階段は、マンション、商業施設、教育施設、医療福祉施設、オフィスビル、一般住宅などの各種構造物に構築されている周知構造の階段である。階段は、段鼻部14において、踏み面12と蹴上げ面13が略直交状に構築され、この踏み面12と蹴上げ面13が多段状に上下に連続した構造を有する。段鼻部14は、踏み面12の前端と蹴上げ面13の上端の接続部分である。本明細書において、階段の蹴上げ面13、段鼻部14及び踏み面12を総称して、階段下地という場合がある。
また、階段の踏み面12は、勾配がついていてもよい。この踏み面12の勾配は、踏み面12が段鼻部14に近づくにつれて徐々に低くなることをいう。勾配の角度は、通常、1度〜5度程度である。なお、前記勾配の角度は、踏み面12と水平面の成す角をいう。
図1〜図4において、階段用床材1は、上記階段の踏み面12に対して敷設される踏み面敷設部2と、上記階段の蹴上げ面13に対して敷設される蹴上げ面敷設部3と、上記階段の段鼻部14に対して敷設される屈曲部4と、を有する。
踏み面敷設部2は、階段の踏み面12全体及び上段の蹴上げ面13を覆うことができる長さに形成されている。このような長さの踏み面敷設部2は、階段の入り隅部15に対応する箇所にて折り曲げられる。もっとも、踏み面敷設部2は、階段の踏み面12のみに敷設できる長さに形成されていてもよい。
蹴上げ面敷設部3は、階段の蹴上げ面13の上方部を覆うことができる長さに形成されている。例えば、蹴上げ面敷設部3の上下方向長さは、3cm〜7cmである。
踏み面敷設部2の裏面の延長線と蹴上げ面敷設部3の裏面の延長線との成す内角は、例えば、90度±10度であり、好ましくは階段の踏み面12と蹴上げ面13との成す内角と同じであり、より好ましくはその内角よりも小さく、特に好ましくはその内角よりも5度程度小さい。
具体的には、階段用床材1の層構成は、図3及び図4に示すように、階段用床材1の全体を形成する略L字状の第1形成層51と、階段用床材1の屈曲部4から踏み面敷設部2の前端部及び蹴上げ面敷設部3の上端部に対応する前記第1形成層51の表面側に設けられ且つ前記第1形成層51よりも短い略L字状の第2形成層52と、を有する。
第1形成層51は、柔軟性のある合成樹脂層514と、繊維を含む補強層と、を少なくとも有し、全体として略L字状に形成されている。前記補強層は、1層でもよいが、別個独立して2層設けられていることが好ましい。以下、2つの補強層を区別するために、第1の補強層、第2の補強層という。
表層は、従来公知の層であり、例えば、上から順に、透明な表面保護層と意匠層とを有する。ただし、表層は、図示していない。
前記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂;オレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン−メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;アミド系樹脂;エステル系樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマーなどの各種エラストマー;ゴムなどが挙げられる。
なお、合成樹脂層514には、例えば、充填剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、発泡剤などの添加剤が含まれていてもよい。
合成樹脂層514が発泡樹脂である場合、その発泡倍率は特に限定されないが、好ましくは1.5倍〜2倍である。発泡倍率が余りに低いと、実質的に階段用床材1にクッション性を付与できず、一方、発泡倍率が余りに高いと、階段用床材1の耐久性が低下し、長期間使用している間に靴底による傷付きが生じるおそれがある。
合成樹脂層514の厚みは特に限定されないが、通常、0.5mm〜5mmである。
第2の補強層512の形成材料は、繊維を含んでいれば特に限定されず、例えば、不織布(フェルトを含む)、織布、ガラスマット及び紙などが挙げられ、好ましくは第1の補強層511とは異なるものが用いられ、より好ましくはガラス織布、ガラス不織布、及びガラスマットなどのガラス繊維からなる基材である。第2の補強層512をガラス繊維から構成することにより、寸法安定性に優れた階段用床材1を構成できる。特に、ガラス織布を用いることで、残留凹み値を著しく改善することができる。
すなわち、第1の補強層511は、屈曲部4に繋がる踏み面敷設部2の一部領域及び屈曲部4に繋がる蹴上げ面敷設部3の一部領域又は全部に対応して設けられており、前記一部領域以外の踏み面敷設部2の領域には、第1の補強層511は設けられていない。
以下、第1の補強層511が設けられた踏み面敷設部2の一部領域及び屈曲部4に繋がる蹴上げ面敷設部3の一部領域又は全部を、「屈曲部周辺領域」という場合があり、第1の補強層511が設けられていない踏み面敷設部の領域を、「残部領域」という場合がある。
階段用床材1の屈曲部周辺領域は、階段の段鼻部14の周辺に敷設される。この段鼻部14の周辺は、歩行者が階段を昇降する際、最も大きな衝撃及び荷重が加わりやすいが、屈曲部周辺領域は、第1の補強層511の存在によって曲げ強度及び引張り強度に優れているので比較的高い剛性を有し、よって、長期間の使用によっても破損し難い。さらに、屈曲部周辺領域が高い剛性を有するので、蹴上げ面敷設部3を階段の蹴上げ面13に引掛けながら階段用床材1を施工するときに、屈曲部周辺領域が変形することによる階段用床材1の位置ずれが生じにくい。
第1の補強層511として不織布を用い、且つ第2の補強層512としてガラスマットなどのガラス繊維からなる基材を用いることにより、曲げ強度及び引張り強度を向上させることができる。
特に、第2の補強層512をガラス繊維からなる基材によって構成し、第1の補強層511をポリエステル繊維を含むスパンボンド不織布によって構成することにより、ガラス繊維基材が全体の寸法安定性に大きく寄与し、これに積層されている合成樹脂層514の反りとポリエステル繊維不織布の収縮力による反りの拮抗のバランスによって、床材1の反りを防止できる。このため、階段用床材1の屈曲部周辺領域の形状を維持することできる。
また、不織布の繊維は、短繊維又は長繊維の何れでもよいが、引張り強度の観点から、長繊維が好ましい。長繊維の長さは、例えば、100mm以上である。
第2形成層52を形成する熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂;オレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン−メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;アミド系樹脂;エステル系樹脂;ウレタン系樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマーなどの各種エラストマー;ゴムなどが挙げられる。
階段用床材1の屈曲部周辺領域の踏み面敷設部側は、歩行者の足裏が階段から滑り落ちることを防止する部分である。従って、この部分にグリップ性を付与するために、第2形成層52は発泡樹脂であることが好ましい。発泡倍率は特に限定されないが、好ましくは2倍〜3倍である。発泡倍率がこの範囲外であると、第2形成層52に十分なグリップ性を付与できないおそれがある。
さらに、第2形成層52の表面には、幅方向に所定間隔を開けて複数並設された幅広な突部61と、幅方向に所定間隔を開けて複数並設された点状の突部62と、が突設されている。また、前記幅広な突部61の後方には、幅方向に延びる低い長状突起63が突設されている。
この両面粘着テープ7は、上下方向に所定長さを有し、蹴上げ面敷設部3の幅方向全体に亘って蹴上げ面敷設部3の裏面に貼付されている。両面粘着テープ7の下端は、蹴上げ面敷設部3の下端に略一致している。両面粘着テープ7は、その上端7aから蹴上げ面敷設部3の下端までの長さをXとし、踏み面敷設部2の裏面から蹴上げ面敷設部3の下端までの長さをYとした場合、X=Y/2〜4×Y/5となるように貼付されている。
両面粘着テープ7の具体的な上下方向長さは、前記Yが40mmである場合、20mm〜32mmであり、好ましくは20mm〜25mmである。
なお、前記両面粘着テープ7の下端は、蹴上げ面敷設部3の下端よりも少し上方に位置していてもよい。上述のように、階段用床材1を階段に施工した際には、蹴上げ面敷設部3の下端にコーキングシール部91が設けられるので、両面粘着テープ7の下端と蹴上げ面敷設部3の下端の間に隙間を有していても、この隙間は前記コーキングシール部91によって充足される。
基材としては特に限定されず、発泡樹脂シート、不織布、織布、紙、合成紙、合成樹脂シートなどが挙げられる。
基材が一定以上の弾力性を有すると蹴上げ面13に馴染みやすいことから、前記基材は、発泡樹脂シート又は不織布が好ましく、発泡樹脂シートがより好ましい。
基材がポリエチレンとエチレン−酢酸ビニル共重合体の混合ポリマーを含む発泡樹脂シートである両面粘着テープ7を用いれば、蹴上げ面敷設部3を蹴上げ面13に付着させたときに、両面粘着テープ7が層間で破断しないので、蹴上げ面敷設部3を蹴上げ面13に確実に接着できる。
基材の厚みは、特に限定されないが、基材が発泡樹脂シートである場合、その厚みは1mm以上、好ましくは2mm以上である。発泡樹脂シートが薄すぎると、蹴上げ面13の凹凸を吸収できず、両面粘着テープ7の裏面と蹴上げ面13の一部分に浮きが生じるおそれがある。発泡樹脂シートの厚みは、5mm以下、好ましくは4mm以下である。発泡樹脂シートが厚すぎると、発泡樹脂シート自体が上下方向に変形し、蹴上げ面敷設部3の初期接着位置がずれるおそれがある。
塗布された粘着剤の厚みは、特に限定されないが、通常、10μm〜200μm程度である。
具体的には、厚み2.2mmの発泡樹脂シートを基材とする、両面粘着テープを幅22mmに裁断し、この両面粘着テープの片面を下記被着面に貼り付け、10g/100mm2の荷重をかけた状態で、24時間放置した。その後、引張試験機に装着し、90度剥離、引張速度200mm/分で測定した値である。
被着面は、階段用床材(ポリ塩化ビニル製シート。東リ株式会社製、商品名「東リNSステップ800」)の蹴上げ面敷設部を切り取り、この切り取り片のうちの平滑な表面である。
階段用床材1の敷設時に使用される接着剤は、上記条件で測定した粘度が100,000mPa・sを超え、好ましくは前記粘度が110,000mPa・s以上である。もっとも、前記粘度が余りに高いと、接着剤を塗布できないおそれがあるため、使用される接着剤は、前記粘度は、好ましくは200,000mPa・s以下、より好ましくは180,000mPa・s以下である。
空気中の水分によって硬化する接着剤としては、例えば、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーと、充填剤と、有機溶剤と、を含むウレタン系接着剤が挙げられる。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、有機ポリイソシアネートと活性水素含有化合物とを活性水素に対してイソシアネート基過剰条件で反応させることにより得られる。
前記有機ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、及びこれら変性体などが挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を併用してもよい。中でも、硬化後の接着性や耐水性などが優れていることから、芳香族ジイソシアネートが好ましい。
前記活性水素含有化合物としては、高分子ポリオール、高分子ポリアミンなどが挙げられる。
硬化促進触媒は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と水分との反応を促進させるために添加される。硬化促進剤としては、テトラ−n−ブチルチタネートなどの金属のアルコキシド、オクテン酸錫などの有機酸金属塩、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)などの金属キレート化合物、N−エチルモルホリンなどの第3級アミン類などが挙げられる。硬化促進触媒は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー100質量部に対して0〜10質量部配合されることが好ましい。
接着性付与剤は、接着剤の接着性を向上させるために添加される。接着性付与剤としては、カップリング剤、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキルチタネ−ト類、有機ポリイソシアネートなどが挙げられる。
TI値は、低せん断力下における粘度と高せん断力下における粘度の比である。TI値が高ければ、高せん断力下における粘度が低くなり、接着剤の塗布性は良くなる。また、接着剤塗布後の状態においては、低せん断力下における粘度が相対的に高いため、接着剤塗布後の流動性が低く、接着剤塗布後に接着剤が垂れ難い。一方、TI値が低ければ、高せん断力下における粘度が相対的に高いため、接着剤が塗布し難くなる。また、接着剤塗布後の状態においては、低せん断力下における粘度が相対的に低いため、接着剤塗布後の流動性が高く、接着剤塗布後に接着剤が垂れやすくなる。
前記接着強度は、下記の測定方法に従って測定できる。
なお、各接着剤の組成及び物性評価は下記の通りである。
接着剤1−1〜1−6、2−4、及び2−5については、接着剤(東リ株式会社製、商品名「東リステップ用セメント」)のウレタンプレポリマー量、充填剤の種類と量、エステル系溶剤量を下記のように変更し、表1に示すような粘度に調製した。また、接着剤2−1〜2−3については、下記の市販の接着剤を用いた。
ウレタンプレポリマー100重量部、充填剤(炭酸カルシウム)130重量部、エステル系溶剤70重量部。
(接着剤1−2)
ウレタンプレポリマー100重量部、充填剤(クレー)135重量部、エステル系溶剤100重量部。
(接着剤1−3)
ウレタンプレポリマー100重量部、充填剤(炭酸カルシウム)135重量部、エステル系溶剤85重量部。
(接着剤1−4)
ウレタンプレポリマー100重量部、充填剤(クレー)180重量部、エステル系溶剤120重量部。
(接着剤1−5)
ウレタンプレポリマー100重量部、充填剤(クレー)160重量部、エステル系溶剤140重量部。
(接着剤1−6)
ウレタンプレポリマー100重量部、充填剤(炭酸カルシウム)125重量部、エステル系溶剤80重量部。
東リ株式会社製、商品名「USセメント」。ウレタンプレポリマー100質量部、無機質充填剤100〜180質量部、エステル系溶剤55〜120質量部。
(接着剤2−2)
東リ株式会社製、商品名「US200」。ウレタンプレポリマー 20〜30質量%、無機質充填剤 130〜250重量部、エステル系溶剤80〜150重量部。
(接着剤2−3)
タキロン株式会社製、商品名「タキロン607」。
(接着剤2−4)
ウレタンプレポリマー100重量部、充填剤(炭酸カルシウム)200重量部、エステル系溶剤100重量部。
(接着剤2−5)
ウレタンプレポリマー100重量部、充填剤(クレー)225重量部、エステル系溶剤150重量部。
接着剤の粘度は、JIS K 6833に準じて測定され、BH型粘度計及びローターNo.7を用い、23℃、10rpmの条件下で測定した値である。
垂れ性の評価と施工性の評価は、次のようにして行なった。
常温にて、コンクリート製の階段に、階段用床材(東リ株式会社製、商品名「東リNSステップ800」)を、供試接着剤を用いて後述の階段用床材の施工方法に従って施工した。その施工時における接着剤の垂れ具合と施工性の感触を以下の基準で評価した。
ただし、接着剤の垂れ性は、本発明において重要な特性であり、特に、段鼻部における接着剤の垂れ性は重要なので、蹴上げ面と段鼻部のそれぞれに分けて、接着剤の垂れ性を評価した。
A1:接着剤の垂れがなく、垂直面である蹴上げ面から垂れ落ちない。
A2:接着剤を厚く塗布すると垂れが発生するが、使用上、問題がない。また、蹴上げ面の接着剤厚が僅かに不均一になるが問題ない。
A3:接着剤を通常の厚みで塗布しても垂れが発生する。蹴上げ面の接着剤厚が不均一になる。
A4:接着剤の垂れが多く、階段用床材の接着には使用できない。
B1:接着剤の垂れがなく、段鼻部に空隙がほとんど発生しない。
B2:接着剤を厚く塗布すると垂れが発生するが、使用上には問題がない。段鼻部に空隙が僅かに生じるが耐久性に問題がない。
B3:接着剤を通常の厚みで塗布しても垂れが発生する。段鼻部に大きな空洞が生じ、耐久性に問題がある。
B4:接着剤の垂れが多く、階段用床材の接着には使用できない。
C1:接着剤の塗り広げ及び蹴上げ面への塗布がともに容易にでき、極めて容易に施工可能。
C2:接着剤の塗り広げ及び蹴上げ面への塗布のいずれか一方が困難だが、施工可能。
C3:接着剤の塗り広げ及び蹴上げ面への塗布のいずれも困難なため、施工困難。
供試接着剤を介して、試験用床シート(塩化ビニル製床シート。東リ株式会社製、商品名「東リNSステップ800」)をフレキシブル板表面に貼り合わせて7日間養生した後、試験用床シートを90度方向に剥離したときの強度(N/25mm)を測定した。前記90度剥離の具体的な測定方法は、JIS A 5536(2007年)のはく離接着強さに準じて行った。
TI値はチキソ指数のことであって、2種類の異なるせん断速度(回転速度)における見掛け粘度の比である。
TI値は、JIS K5400に準拠して測定し、その値を下記式に代入し、有効数字2桁に統一した。
式:TI=η1/η2
前記η1は、JIS K 6833に準じてBH型粘度計及びローターNo.7を用いて23℃測定された、2rpmのときの粘度(mPa・s)であり、前記η2は、20rpmのときの粘度(mPa・s)である。
本発明の階段用床材の施工方法は、例えば、上記階段用床材1と接着剤を用いて階段に実施できる。
階段を清掃し、下地が乾燥していることを確認する。
最下段の蹴上げ面の幅及び高さを測定する。その寸法に合わせて、上記階段用床材1の踏み面敷設部2の後方領域を裁断する。最下段の蹴上げ面に、上記接着剤を塗布する。その後、10分〜30分程度のオープンタイムを取った後、前記裁断した踏み面敷設部2を、蹴上げ面の上端からはみ出さないようにしながら貼り付け、ハンドローラーなどを用いてその表面全体を押圧する。
このようにして最下段の蹴上げ面への施工を完了する。
上記仮置きした階段用床材1の踏み面敷設部2の両側部に沿って筆記具を走らせ、階段の踏み面及び上段の蹴上げ面に目印線を引く。なお、階段の踏み面の幅全体に亘って階段用床材1を敷設する場合には、前記目印線を引く必要はない。
次に、図5(b)に示すように、階段用床材1の屈曲部4の裏面側に接着剤81を塗布する。図示したように、塗布具としてコーキングガンを用いた場合には、直径約6〜7mmのビート状に接着剤81を塗布する。
なお、階段用床材1の屈曲部4に接着剤を塗布することに代えて又はこれと併用して、階段の段鼻部に接着剤を塗布してもよい。
また、踏み面敷設部2が階段の踏み面12のみに敷設できる長さに形成されている階段用床材1を使用した場合には、踏み面敷設部2を入り隅部15で折り曲げることはない。
接着剤が硬化するまで養生することにより、図1に示すように、階段に階段用床材1が両面粘着テープ7及び接着剤層8を介して敷設された階段構造11が得られる。
また、両面粘着テープ7の上端から蹴上げ面敷設部3の下端までの長さXが、踏み面敷設部2の裏面から蹴上げ面敷設部3の下端までの長さYの1/2倍を超え4/5倍以下とされているので、蹴上げ面敷設部の広い部分を両面粘着テープを介して接着できる。接着剤は、硬化後には強固な接着力を発揮するが、接着初期にはそれが十分でない。この点、上記両面粘着テープ7を介して蹴上げ面敷設部3を接着することにより、蹴上げ面敷設部3の蹴上げ面13に対する初期接着を安定化でき、その位置ずれを防止できる。さらに、前記両面粘着テープ7を用いると、階段用床材1の屈曲部4と階段の段鼻部の隙間の容積が小さくなるので、その隙間に存在する接着剤の流動を効果的に防止できる。
本発明の階段構造は、階段用床材1と階段下地の間に実質的に空洞を有しないので、長期間使用しているうちに、階段用床材の一部が浮き上がったり、或いは、歩行者の荷重によって空洞部分に対応する階段用床材の一部が破損するおそれがない。
なお、本発明の階段用床材の施工方法は、特別な道具を必要とせず、容易に階段用床材1を階段に施工できる。
Claims (4)
- 踏み面と蹴上げ面とが段鼻部において略直交状に構築された階段と、
前記階段の踏み面に敷設される踏み面敷設部と前記階段の蹴上げ面の少なくとも上方部に敷設される蹴上げ面敷設部とが屈曲部を介して略L字状に連設された階段用床材と、を有し、
前記階段用床材の蹴上げ面敷設部の一部が、両面粘着テープを介して階段に接着され、
前記両面粘着テープの上端から前記蹴上げ面敷設部の下端までの長さXが前記踏み面敷設部の裏面から前記蹴上げ面敷設部の下端までの長さYの1/2倍〜4/5倍とされており、
前記両面粘着テープによって接着された部分以外の階段用床材の部分が、接着剤層を介して階段に接着され、前記接着剤層が、BH型粘度計及びローターNo.7を用い且つ23℃、10rpmの条件下で測定した値が100,000mPa・sを超える粘度を有する、TI値が1.5〜8.0の接着剤の硬化層であることを特徴とする階段構造。
ただし、TI値=η1/η2で求められ、前記η1は、BH型粘度計及びローターNo.7を用い且つ23℃、回転数2rpmの条件下で測定される粘度で、前記η2は、同回転数20rpmで測定される粘度である。 - 前記両面粘着テープが、基材と、前記基材の両面に設けられた粘着剤と、を有し、
前記基材が、ポリエチレンとエチレン酢酸ビニルを含む発泡倍率5倍以上の発泡樹脂シートであってその厚みが1mm以上の発泡樹脂シートである請求項1に記載の階段構造。 - 前記両面粘着テープの下端から上端までの長さが20mm〜35mmである請求項1又は2に記載の階段構造。
- 階段の踏み面に敷設される踏み面敷設部と階段の蹴上げ面の少なくとも上方部に敷設される蹴上げ面敷設部とが屈曲部を介して略L字状に連設された階段用床材を、階段に施工するに際して、
前記階段用床材の蹴上げ面敷設部の一部を、前記蹴上げ面敷設部の下端から両面粘着テープの上端までの長さXが蹴上げ面敷設部の下端から踏み面敷設部の裏面までの長さYの1/2倍〜4/5倍となる両面粘着テープを介して階段に接着し、
前記両面粘着テープによって接着された部分以外の階段用床材の部分を、BH型粘度計及びローターNo.7を用い且つ23℃、10rpmの条件下で測定した値が100,000mPa・sを超える粘度を有する、TI値が1.5〜8.0の接着剤を用いて階段に接着することを特徴とする階段用床材の施工方法。
ただし、TI値=η1/η2で求められ、前記η1は、BH型粘度計及びローターNo.7を用い且つ23℃、回転数2rpmの条件下で測定される粘度で、前記η2は、同回転数20rpmで測定される粘度である。
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