JP5643790B2 - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF: radio frequency)信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する核磁気共鳴(NMR:nuclear magnetic resonance)信号から画像を再構成する磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置に係り、特に、造影剤を用いることなく、より短時間で血流像の撮影を実施することが可能な磁気共鳴イメージング装置に関する。
磁気共鳴イメージングは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数のRF信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR信号から画像を再構成する撮像法である。
この磁気共鳴イメージングの分野において、血流像を得る手法としてMRA (Magnetic Resonance Angiography)が知られている。MRAのうち、造影剤を使用しないものは非造影MRAと呼ばれる。非造影MRAでは、ECG(electro cardiogram)同期を行って心臓から拍出された速い流速の血流を捕捉することにより良好に血管を描出するFBI(Fresh Blood Imaging)法が考案されている(例えば特許文献1参照)。
このFBI法による非造影MRAでは、ECG同期の遅延時間を変えて撮像した画像データ間で差分を取ることにより動静脈を分離したMRA像が得られる。さらにFBI法においてspoilerパルスを印加することにより、収縮期における動脈信号を抑制するFlow-Spoiled FBI法も考案されている。Flow-Spoiled FBI法では、心筋の拡張期と収縮期における動脈信号の差が画像化される。また、ECG同期の最適な遅延時間を決定するためのECG-prepスキャンも考案されている。
さらに、FBI法において、低流速の血流を描出するために、読出し(RO:readout)方向にグラジエントパルス(Gspoil)を、傾斜磁場パルスにディフェーズパルスまたはリフェーズパルスを印加するFlow-dephasing法が考案されている(例えば特許文献2、特許文献3および特許文献4参照)。このFlow-dephasing法によれば、ディフェーズパルスまたはリフェーズパルスの作用により、流速の速い血流からの信号値と低流速の血流からの信号値との相対的な信号差を増大させることができる。そして、この相対的な信号差から動静脈を明瞭に分離することが可能となる。
すなわち、動静脈を明瞭に分離するためには、拡張期と収縮期とで信号差を大きくすることが重要となる。拡張期と収縮期とで信号差を大きくするためには、収縮期において速い流速の血流からの信号強度を小さくする必要がある。そこで、RO方向への適切な強度のグラジエントパルスが設定され、設定されたグラジエントパルスにより、収縮期における動脈からの血流信号が抑制される。この状態で、拡張期における血流信号が収集される。そして、拡張期において収集された血流信号には、差分処理や最大値投影(MIP:Maximum Intensity Projection)処理が施され、動脈のみが描出される。
また、Flow-dephasing法におけるRO方向のディフェーズパルスの強度等のパラメータを変えながら準備スキャンを実行するFlow-prep. Scanが考案されている(例えば特許文献5参照)。このFlow-prep. Scanでは、準備スキャンによりパラメータを可変しながら撮像された画像を参照することにより、最適なパラメータを求めることができる。そして、RO方向のディフェーズパルスの強度についての研究報告がなされている(例えば非特許文献1参照)。
さらに、短いスキャン時間で血流像を得るために、ハーフフーリエ法の利用を伴うエコーシェアー(Echoshare)技術が考案されている(例えば特許文献6参照)。この技術では、拡張期および収縮期におけるスキャンによってそれぞれデータが収集されるが、収縮期におけるスキャンでは、コントラスト向上に重要な低周波領域のエコーデータのみが短いデータ収集時間で収集される。そして、収縮期において収集されなかった高周波領域のデータとして拡張期におけるスキャンによって収集された高周波領域のデータのコピーが用いられる。さらに、収縮期用および拡張期用のそれぞれのk空間データからハーフフーリエ法によって、拡張期におけるデータのコピーを用いてもなお不足する領域のデータの演算が行われて画像再構成用に用いられる。
また、ECG-prepスキャンによる心電同期タイミングの測定を行わずに簡易に非造影で血流の動態情報を得る技術が考案されている(例えば特許文献7参照)。この技術は、ECG-prepスキャンをイメージングスキャンとして利用するものである。すなわち、ECG-prepスキャンと同様にECG信号のR波からの遅延時間を徐々に変化させたイメージングスキャンによって複数回に亘って収集された2次元のデータを差分処理することによって血流の動態情報が求められる。
図18は、従来のECG-prepスキャンを利用したイメージングスキャンを示す図である。
図18において横軸は時間を示す。図18に示すように始めにECG信号のR波から遅延時間d1だけ経過したタイミングとなるようにトリガ信号が設定される。そしてトリガ信号に同期してデータ収集用のスキャンが開始される。次に、データ収集用のスキャンの終了後におけるECG信号のR波から遅延時間d2だけ経過したタイミングとなるようにトリガ信号が設定される。そしてトリガ信号に同期してデータ収集用のスキャンが開始される。さらに、同様にECG信号のR波からの遅延時間d3, d4, …だけそれぞれ経過したタイミングとなるようにトリガ信号が設定され、各トリガ信号に同期して異なるタイミングでデータ収集用のスキャンが開始される。このとき遅延時間d1, d2, …は、血流の流速変化が大きい心筋の収縮期に徐々に変わるように設定される。
データ収集用のスキャンには、2次元のパーシャル・フロー・スポイリング・パルス(Partial FS pulse: Partial flow spoiling pulse)や2次元のパーシャル・フロー・コンペンセーション・パルス(Partial FC pulse: Partial flow compensation pulse)で構成されるパルスシーケンスが用いられる。
そして、図18に示すようなイメージングスキャンによりECG信号のR波からの遅延時間が異なる複数の画像データを再構成することができる。
図19は、図18に示すイメージングスキャンによって収集された各画像データの収集タイミングのECG信号のR波からの遅延時間を示す図である。
図19において横軸は時間を示し、矢印はECG信号のR波のタイミングを示す。図19に示すように、ECG信号のR波からの遅延時間が異なる複数の画像データがイメージングスキャンによって生成される。つまり、心時相の異なる複数の画像データが生成される。このように生成された画像データの差分処理を行って差分画像を得ると、差分画像は、血流の動態を示す血流像となる。この血流像は、時間分解された血流の差分画像であることからTime-resolved MRDSA(magnetic resonance digital subtraction angiography)画像と称される。
また、高速撮像法の1つであるパラレルイメージング(PI: parallel imaging)によって、上述した血流の動態情報を求める技術も考案されている。PIは、複数の表面コイルを備えたフェーズドアレイコイル(PAC: phased array coil)をデータ受信用のRFコイルとして用いる技術である(例えば特許文献8参照)。このPIを血流動態情報の取得用に用いることによってスキャン時間を低減することができる。
特開2000−5144号公報 特開2002−200054号公報 特開2003−135430号公報 米国特許第6801800号明細書 特開2003−70766号公報 特開2001−149341号公報 特開2004−329614号公報 特開2004−329613号公報
Miyazaki M, et al., Radiology 227:890-896, 2003.
従来のTime-resolved MRDSA画像を作成する技術では、Time-resolved MRDSA画像の生成に用いられるTime-Resolved MRDSAデータを収集するための1ショット当たりのデータ収集時間がR波間の時間に対して無視できない程長い。このため、繰返し時間TR(repetition time)がR波間の距離RRの3倍に当たる3RR程度に設定される。
この結果、20〜30時相分の異なるTime-resolved MRDSA画像を生成するためには、60秒から90秒程度の撮像時間が必要となる。従って、撮像時間の短縮化が望まれる。
さらに、撮影時間のみならず、スキャンによって得られたデータを診断目的に応じて簡易かつ適切に処理し、かつユーザがより容易に診断画像を参照できるようにすることで、仮に撮影時間が増加したとしてもユーザの作業時間や診断時間の低減が期待できる。
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、より短い撮像時間で非造影MRAを始めとする撮像を行うことが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、ユーザの簡易な操作で診断に適切なMRA像等の診断画像を表示させることが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、上述の目的を達成するために、心電同期下において、遅延時間を変化させながら血流データの信号値を収集する準備スキャンを行う準備スキャン手段と、前記準備スキャン手段によって収集された前記血流データの信号値から、前記遅延時間と前記信号値との関係を示すグラフを生成するグラフ生成手段と、前記生成したグラフを表示する表示手段と、前記グラフを参照して、非造影Time-resolved MRDSA(magnetic resonance digital subtraction angiography)画像用のデータを取得する本スキャンの遅延時間の範囲と時相数を決定する決定手段と、決定された前記遅延時間の範囲と前記時相数に基づいて前記本スキャンを行う本スキャン手段と、前記本スキャン手段によって収集されたデータから、血流動態を示す前記非造影Time-resolved MRDSA画像を生成する画像データ生成手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置においては、より短い撮像時間で非造影MRAを始めとする撮像を行うことができる。
また、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置においては、ユーザの簡易な操作で診断に適切なMRA像等の診断画像を表示させることができる。
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図。 図1に示すRFコイルの詳細構成の一例を示す図。 図2に示すWBコイルとフェーズドアレイコイルの配置例を示す断面模式図。 図1に示すコンピュータの機能ブロック図。 図1に示す磁気共鳴イメージング装置により被検体Pの非造影Time-resolved MRDSA画像を撮影する際の手順を示すフローチャート。 図1に示す表示装置にユーザインターフェースとして表示される設定画面の一例を示す図。 図6に示す設定画面において、エコーシェアーモードを選択した場合におけるデータ収集の遅延時間とデータ収集時間を示す図。 図7に示すデータ収集によって収集されるデータ間の関係を示す図。 図7に示すデータ収集用のシーケンスとして用いられるFASEシーケンスを示す図。 図9に示すFASEシーケンスにPartial FCパルスを付加したシーケンスを示す図。 図9に示すFASEシーケンスにPartial FSパルスを付加したシーケンスを示す図。 図10および図11に示すPartial FCパルスおよびPartial FSパルスの効果および強度の設定方法を説明する図。 図9に示すFASEシーケンスを用いてデータ収集を行う場合に得られるk空間データを示す図。 図6に示す設定画面において、エコーシェアーモードを選択し、3次元のパルスシーケンスで3次元のTime-resolved MRDSA画像を生成するためのデータ収集を行う場合における遅延時間とデータ収集時間を示す図。 図6に示す設定画面において設定されるMIP画像の表示順序を説明する図。 寝台の移動を伴って2つの部位の血流像データを撮影する場合に、時相を一致させて表示させる表示方法を説明する図。 寝台の移動を伴って2つの部位の血流像データを撮影する場合に、血流が流れる方向に応じて上流側の最後の時相の画像データを表示させた後に隣接する下流側の最初の時相の画像データを表示させる表示方法を説明する図。 従来のECG-prepスキャンを利用したイメージングスキャンを示す図。 図18に示すイメージングスキャンによって収集された各画像データの収集タイミングのECG信号のR波からの遅延時間を示す図。
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置および画像処理装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図である。
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21と、この静磁場用磁石21の内部に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイルユニット23およびRFコイル24とを図示しないガントリに内蔵した構成である。
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31およびコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35および記憶装置36が備えられる。
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
傾斜磁場コイルユニット23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内部において筒状に形成される。傾斜磁場コイルユニット23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24はガントリに内蔵されず、寝台37や被検体P近傍に設けられる場合もある。
また、傾斜磁場コイルユニット23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイルユニット23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
RFコイル24は、送信器29および受信器30と接続される。RFコイル24は、送信器29から高周波信号を受けて被検体Pに送信する機能と、被検体P内部の原子核スピンの高周波信号による励起に伴って発生したNMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
図2は図1に示すRFコイル24の詳細構成の一例を示す図であり、図3は図2に示すWBコイル24aとフェーズドアレイコイル24bの配置例を示す断面模式図である。
RFコイル24は、例えば送信用のRFコイル24と受信用のRFコイル24とから構成される。送信用のRFコイル24には、全身用(WB:whole-body)コイル24aが用いられる一方、受信用のRFコイル24には、フェーズドアレイコイル24bが用いられる。フェーズドアレイコイル24bは、複数の表面コイル24cを備え、各表面コイル24cは、それぞれ個別に受信系回路30aと接続される。
また、フェーズドアレイコイル24bの各表面コイル24cは、例えば被検体Pの特定関心部位を含む断面Lの周囲となるZ軸周りに対称に配置される。さらにフェーズドアレイコイル24bの外側には、WBコイル24aが設けられる。そして、WBコイル24aにより被検体Pに高周波信号を送信する一方、WBコイル24aまたはフェーズドアレイコイル24bの各表面コイル24cにより多チャンネルで特定関心部位を含む断面LからのNMR信号を受信して各受信器30の各受信系回路30aに与えることができるように構成される。
ただし、RFコイル24を各種用途に応じた任意のコイルで構成してもよく、また単一のコイルで構成してもよい。
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する機能と、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場Gzおよび高周波信号を発生させる機能を有する。
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるNMR信号の検波およびA/D変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいて高周波信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたNMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
さらに、磁気共鳴イメージング装置20には、被検体PのECG信号を取得するECGユニット38が備えられる。ECGユニット38により取得されたECG信号はシーケンスコントローラ31を介してコンピュータ32に出力されるように構成される。
また、寝台37は、寝台駆動装置39を備えている。寝台駆動装置39は、コンピュータ32と接続され、コンピュータ32からの制御によって寝台37の天板(table)を移動させてmoving table法やstepping-table法による撮像を行うことができるように構成される。moving table法は、撮影時に寝台37の天板を連続移動することによって移動方向に大きな撮影視野(FOV: field of view)を得る技術である。stepping-table法は、stationごとに寝台37の天板をステップ移動させて3D(dimensional)撮像する技術である。これらの技術は、全身撮像のように一度に撮像できないような広領域の撮像を行う場合に用いられる。寝台37を移動して収集された複数の画像は、コンピュータ32における合成処理によって互いに繋ぎ合わせることもできる。
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムによらず、特定の回路により各種機能を磁気共鳴イメージング装置20に設けてもよい。
図4は、図1に示すコンピュータ32の機能ブロック図である。
コンピュータ32は、プログラムにより感度分布データベース40、インターフェース部41、撮影条件設定部42、シーケンスコントローラ制御部43、k空間データベース44、画像再構成部45、展開処理部46、実空間データベース47、血流像作成部48、表示処理部49、寝台制御部50として機能する。
感度分布データベース40には、フェーズドアレイコイル24bに備えられる各表面コイル24cの感度分布が保存される。
インターフェース部41は、GUI (Graphical User Interface)技術により表示装置34に様々な情報の設定や入力を行うための画面を表示させる一方、入力装置33からの指示情報を受け取って対応する構成要素に与える機能を有する。設定される情報としては、撮影条件、画像処理方法、画像表示方法等の情報が挙げられる。
撮影条件として設定される非造影MRA用のシーケンスとしては、2次元または3次元のFSE (Fast spin echo)シーケンス、EPI (echo planar imaging)シーケンス、FASE (fast asymmetric spin echo) シーケンス、SSFP (steady state free precession)シーケンスが挙げられる。2次元のシーケンスを用いれば撮影時間を短縮することができる。さらに、2次元のFASEシーケンスを用いる場合には、血流の速度に応じて読み出し(RO: readout)方向の傾斜磁場パルスに磁化スピンの位相を制御するためのPartial FSパルスやPartial FCパルスを付加することができる。
血流の速度が速い血管等の部位を撮像する場合には、Partial FCパルスの印加を伴うFASEシーケンスが適しており、血流の速度が遅い部位を撮像する場合には、flow spoiling pulseの印加を伴うFASEシーケンス、EPIシーケンス、SSFPシーケンスを用いることができる。SSFPシーケンスは、エコー時間(TE: echo time)が長く、流れに対する感度が良いため、収縮期のflow-void画像や拡張期のBright Blood画像を描出することができる。
また、Time-resolved MRDSA画像を生成するための撮影条件としてECG信号のR波からの遅延時間およびデータ収集回数(ショット回数)が設定される。遅延時間は、例えば、1回目のデータ収集までの遅延時間、すなわち遅延時間の初期値と遅延時間の変化量を示すインクリメント値として設定することができる。
設定されたパルスシーケンスや遅延時間、ショット回数等の撮影条件は、インターフェース部41から撮影条件設定部42および画像再構成部45に出力される。
さらにTime-resolved MRDSA画像の生成用の撮影条件として、エコーシェアーを用いた撮像モードやPIによる撮像モードを選択することができる。エコーシェアーを用いた撮像は、収縮期におけるスキャンにおいて、コントラスト向上に重要な低周波領域のエコーデータのみを短いデータ収集時間で収集し、収縮期において収集されなかった高周波領域のデータとして拡張期におけるスキャンによって収集された高周波領域のデータのコピーを用いる撮像である。
また、PIは、複数の表面コイル24cを用いてデータを受信し、かつ位相エンコードをスキップさせることによって位相エンコード数を画像再構成に必要な位相エンコード数の表面コイル24cの数分の1に減らす撮像である。PIによる撮像モードが選択された場合には、PI特有の条件も設定される。PI特有の条件としては受信用コイルとして用いる表面コイル24cの数やPIにおいて生じる恐れのある折返しの発生を防止するために、PIによって得られた画像データに対する後処理であるアンフォールディング(unfolding)処理用のFOVを撮影プラン時に設定されたFOVよりも拡大する場合の比率が挙げられる。表面コイル24cの数は、高速化率とも呼ばれる。
エコーシェアーを用いた撮像モードが選択された場合には、インターフェース部41から撮影条件設定部42にエコーシェアーを用いた撮影条件を設定するように指示情報が与えられ、インターフェース部41から画像再構成部45に必要な撮影条件情報とともにエコーシェアーを用いた画像再構成処理を行うように指示情報が与えられる。
また、PIによる撮像モードが選択された場合には、PI用の撮影条件を設定するようにインターフェース部41から撮影条件設定部42に指示情報が与えられる。また、再構成処理の対象がPIによって得られた各表面コイル24cのk空間データである旨の通知がインターフェース部41から画像再構成部45に与えられ、PIの条件がインターフェース部41から展開処理部46に与えられ、unfolding処理に利用される。
さらに、moving table法やstepping-table法による撮像を行う場合には、撮影条件として、寝台37の位置やステップ量等の条件を設定するように指示情報がインターフェース部41から撮影条件設定部42に与えられる。
また、画像処理方法として、再構成された画像データの差分処理を自動的に行って血流像を生成するか否かの指示や、血流像が3次元の場合にMIP(Maximum Intensity Projection)処理等の投影処理を自動的に行うか否かの指示を行うことができる。自動差分処理や自動投影処理の指示情報は、インターフェース部41から血流像作成部48に与えられる。
さらに、画像表示方法として、血流像が投影処理された時系列の投影画像である場合に、投影画像の投影方向、表示順序、表示速度等の条件を指定することができる。表示順序としては、投影方向を変更(swing)しながら複数の投影画像を表示させた後に次の時相(phase)の投影画像を表示させるswing/phase表示や、逆に時相(phase)を変更しながら複数の投影画像を表示させた後に別の投影方向にswingした投影画像を表示させるphase/swing表示が挙げられる。ただし、画像表示方法を一定の投影方向に投影した投影画像をダイナミック表示させるのみとすることもできる。
swing/phase表示やphase/swing表示が入力装置33の操作によって指示された場合には、インターフェース部41から生成すべき投影画像の指示が血流像作成部48に与えられ、生成された投影画像の表示順序や表示速度が指示情報として表示処理部49に与えられる。
また、moving table法やstepping-table法による撮像を行う場合には、寝台37の位置ごとに複数の画像データが得られることとなるため、寝台37の位置ごとの画像データの表示方法を指定することができる。寝台37の位置ごとの画像データの表示方法の指示情報はインターフェース部41から表示処理部49に与えられる。
撮影条件設定部42は、入力装置33からインターフェース部41を通じて取得した指示情報に従ってパルスシーケンス等の撮影条件を設定する機能と、設定した撮影条件をシーケンスコントローラ制御部43に与える機能とを有する。また、moving table法やstepping-table法による撮像を行う場合には、撮影条件に応じた寝台37の制御情報が撮影条件設定部42から寝台制御部50に与えられるように構成される。
シーケンスコントローラ制御部43は、入力装置33からインターフェース部41を通じて取得したスキャン開始指示またはその他の構成要素からのスキャン開始指示に従ってシーケンスコントローラ31に撮影条件設定部42から取得したパルスシーケンス等の撮影条件を示す撮影条件情報を与えることによりシーケンスコントローラ31を駆動制御させる機能と、シーケンスコントローラ31からk空間(フーリエ空間)データである生データを受けてk空間データベース44に形成されたk空間に配置する機能とを有する。
k空間データベース44には、シーケンスコントローラ制御部43から与えられたk空間データが保存される。
画像再構成部45は、k空間データベース44からk空間データを取り込んでフーリエ変換処理等の画像再構成処理を施すことにより、k空間データから画像データを生成する機能と、生成した画像データを実空間データベース47に書き込む機能とを有する。また、画像再構成部45は、インターフェース部41から撮影条件とともにエコーシェアーを用いた画像再構成処理を行うように指示情報を受けた場合には、指示情報および撮影条件に従ってエコーシェアーを用いた画像再構成処理を行うように構成される。
さらに、画像再構成部45は、PIによる撮像によって得られた表面コイル24cごとの画像データを展開処理部46に与えるように構成されている。撮影条件がPIによる撮像であるか否かの情報は、入力装置33からインターフェース部41を通じて画像再構成部45に与えられる。
展開処理部46は、画像再構成部45から取得した各表面コイル24cごとの画像データに対して、インターフェース部41から取得したPIの条件に基づいてPIにおける後処理であるunfolding処理を行うことにより、展開された画像データを生成する機能と、生成された画像データを実空間データベース47に書き込む機能とを有する。展開処理部46は、unfolding処理の際に、感度分布データベース40に保存された各表面コイル24cの感度分布を参照できるように構成されている。
実空間データベース47には、画像再構成部45または展開処理部46において生成された画像データが保存される。
血流像作成部48は、インターフェース部41からの指示情報に従って、実空間データベース47に保存された心時相の異なる複数の画像データを取得して表示用の血流像データを作成する機能を有する。例えば、時相が近い画像データ間または基準となる画像データと各時相の画像データ間における差分処理を行うことにより2次元または3次元のTime-resolved MRDSA画像データを生成することができる。さらに、インターフェース部41からの指示情報に従って、所定方向へのMIP処理等の必要な画像処理をTime-resolved MRDSA画像データに対して施すことによって表示用の血流像データを作成することができる。ただし、画像データの差分処理を行わずに各時相の画像データを表示用の血流像データとしても良い。
最終的に表示用に生成された2次元のTime-resolved MRDSA画像データや投影画像データ等の血流像データは、血流像作成部48から表示処理部49に与えられる。
表示処理部49は、血流像作成部48から取得した血流像データをインターフェース部41から指示された表示順序および表示速度で表示装置34に出力させる機能を有する。また、表示処理部49は、moving table法やstepping-table法による撮像が行われた場合には、寝台制御部50から寝台37の位置情報を取得して、インターフェース部41から指示された表示方法に従って、寝台37の位置ごとの血流像データを表示装置34に出力させるように構成される。
寝台制御部50は、撮影条件設定部42から与えられる撮影条件に応じた寝台37の制御情報に従って寝台37が駆動するように寝台駆動装置39に寝台37の位置情報を与えて制御する機能と、寝台37の位置情報を表示処理部49に与える機能とを有する。
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作および作用について説明する。
図5は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20により被検体Pの非造影Time-resolved MRDSA画像を撮影する際の手順を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
まずステップS1において、非造影Time-resolved MRDSA画像の収集用の撮影条件として、エコーシェアーおよびPIを適用するか否かの指示が行われる。そのために、インターフェース部41から表示装置34に画面情報が与えられ、表示装置34には、撮影条件、画像処理条件、画像表示条件その他の情報を設定するための設定画面が表示される。
図6は、図1に示す表示装置34にユーザインターフェースとして表示される設定画面の一例を示す図である。
例えば図6に示すように表示装置34には、撮影条件、画像処理条件、画像表示条件を設定するための設定画面が表示される。撮影条件としては、エコーシェアーによる撮影モードおよびPIによる撮影モードを選択することが可能であり、図6は、エコーシェアーモードおよびPI撮影モードの双方が選択された例を示している。またPI撮影モードが選択されているため、表面コイル24cの数や折返し防止のためのunfolding処理用のFOVの拡大率を示すNO WRAPの値が設定されている。図6は、データ収集用に用いる表面コイル24cの数が4つで、NO WRAPの値が1.5に設定された例を示している。
また非造影MRAに用いるパルスシーケンスを予め設定された候補の中から選択することができる。図6は2次元のFASEシーケンスが選択された例を示している。さらに、非造影Time-resolved MRDSA画像のデータ収集は、ECG信号のR波からの遅延時間を徐々に長くして複数回に亘って行われるため、各遅延時間およびデータの収集回数、すなわちショット回数が設定される。図6では、1回目のデータ収集のR波からの初期遅延時間と、続いて行われるデータ収集の遅延時間の増加分に相当するインクリメント値がそれぞれ100ms、5msに設定されている。また、ショット回数が30回に設定されている。
エコーシェアーによる撮影モードを選択すると、1枚のTime-resolved MRDSA画像の再構成に必要な低周波領域から高周波領域までのk空間データが少なくとも1回収集され、他のデータ収集では少なくともコントラスト確保に必要なk空間データを含む低周波領域のk空間データのみが収集されるように撮影条件が設定される。収集すべき低周波領域のk空間データの範囲は、予め試験的に画像を撮影し、コントラストが十分に得られるか否かを判定することによって決定することができる。
このため、エコーシェアーによる撮影モードでは、低周波領域のみのk空間データを収集するためのデータ収集時間を低減することができる。そして、望ましくはECG信号の連続するR波間、すなわち1心拍において低周波領域のk空間データが収集されるように撮影条件が設定される。さらに、望ましくは、データ収集後から次のR波までの間に縦緩和(T1)回復に必要な時間が確保できるように撮影条件が設定される。
データ収集時間をより短くし、かつ高周波領域のデータをより高信号値で収集する観点から、実用的には、遅延時間が最も長い最後に行われるデータ収集において高周波領域のデータが収集される。ここでは、最後のデータ収集において1回だけ低周波領域から高周波領域におけるデータを収集する場合について説明する。
図7は、図6に示す設定画面において、エコーシェアーモードを選択した場合におけるデータ収集の遅延時間とデータ収集時間を示す図である。
図7に示すようにn番目の最後のデータ収集以外の収集では、低周波領域のみのデータが収集されるためデータ収集時間が短縮される。また、高速SE法にハーフフーリエ法を組み合わせたFASEシーケンスをデータ収集用のシーケンスとして選択すれば、データ収集時間をさらに短縮できるため低周波領域のデータを1心拍中に収集することが可能となる。
このため、ECG信号の各R波から遅延時間d1, d2, d3, …, dnだけ経過したタイミングでそれぞれトリガを設定し、連続的にデータ収集を行うことができる。
図8は、図7に示すデータ収集によって収集されるデータ間の関係を示す図である。
図8において横軸は時間を示し、矢印はECG信号のR波のタイミングを示す。図7に示すようなデータ収集によって、図8に示すような、ECG信号のR波からの遅延時間が異なる複数のk空間データを収集することができる。また、n番目のk空間データは、低周波領域および高周波領域の双方を含むデータであるため、他の遅延時間で得られたk空間データよりもデータ量が大きい。このような、心時相の異なる複数のk空間データから画像データを生成することができるようになる。さらに、生成した画像データの差分処理を行って差分画像を得ると、血流の動態を示すTime-resolved MRDSA画像となる。
図9は、図7に示すデータ収集用のシーケンスとして用いられるFASEシーケンスを示す図である。
図9において、RFは送信されるRF信号を、Gsはスライス選択(slice selection)用の傾斜磁場を、Grはリードアウト(readout)用の傾斜磁場を、Geは位相エンコード(phase encode) 用の傾斜磁場を、ECHOは収集されるエコーデータをそれぞれ示す。
図9に示すように90°励起パルスP90に続いて180°リフォーカスパルスP180が連続してRF信号として被検体Pに印加される。また、スライス選択用、リードアウト用、位相エンコード用の傾斜磁場Gs, Gr, Geが被検体Pに印加される。そして、n番目以外のデータ収集では、低周波領域におけるエコーデータのみが収集されるようにRF信号および傾斜磁場が被検体Pに印加され、n番目のデータ収集では、低周波領域のみならず高周波領域におけるエコーデータも収集されるようにRF信号および傾斜磁場が被検体Pに印加される。また、実効エコー時間(effective echo time)TEeff経過後には、k空間中心のデータが収集される。
また、血流の流速に応じてPartial FCパルスやPartial FSパルスをリードアウト用の傾斜磁場パルスに付加して印加することができる。Partial FCパルスやPartial FSパルスは、磁化スピンの位相を制御する機能を有するため、位相挙動制御パルスと称することもできる。
図10は、図9に示すFASEシーケンスにPartial FCパルスを付加したシーケンスを示す図である。
図10において、RFは送信されるRF信号を、Gsはスライス選択用の傾斜磁場を、Grはリードアウト用の傾斜磁場を、Geは位相エンコード用の傾斜磁場を、ECHOは収集されるエコーデータをそれぞれ示す。
図10に示すように、リードアウト用の傾斜磁場パルスの前後に逆極性の方向にPartial FCパルスPfcが印加される。Partial FCパルスPfcの波形面積は、血流の流速に応じてリードアウト用の傾斜磁場パルスの波形面積の0%よりも大きく100%よりも小さく設定される。そうすると、リードアウト用の傾斜磁場パルスの前に印加されるPartial FCパルスPfcの作用によって、磁化スピンの位相分散が抑制され、信号値を確実に捕捉することが可能となる。また、リードアウト用の傾斜磁場パルスの後に印加されるPartial FCパルスPfcは、磁化スピンの位相を補償する役割を担っている。このため、血流速度が速く、信号値が低い場合に、Partial FCパルスPfcの印加を伴うFASEシーケンスを撮影に用いることが効果的である。
図11は、図9に示すFASEシーケンスにPartial FSパルスを付加したシーケンスを示す図である。
図11において、RFは送信されるRF信号を、Gsはスライス選択用の傾斜磁場を、Grはリードアウト用の傾斜磁場を、Geは位相エンコード用の傾斜磁場を、ECHOは収集されるエコーデータをそれぞれ示す。
図11に示すように、リードアウト用の傾斜磁場パルスの前後に同じ極性の方向にPartial FSパルスPfsが印加される。Partial FSパルスPfsの波形面積は、血流の流速に応じてリードアウト用の傾斜磁場パルスの波形面積の0%よりも大きく100%よりも小さく設定される。そうすると、リードアウト用の傾斜磁場パルスの前に印加されるPartial FSパルスPfsの作用によって、磁化スピンの位相分散が助長され、高い信号値を得ることが可能となる。また、リードアウト用の傾斜磁場パルスの後に印加されるPartial FSパルスPfsは、磁化スピンの位相を補償する役割を担っている。このため、血流速度が遅い場合に、Partial FCパルスPfsの印加を伴うFASEシーケンスを撮影に用いることが効果的である。
図12は、図10および図11に示すPartial FCパルスおよびPartial FSパルスの効果および強度の設定方法を説明する図である。
図12において縦軸は、血流速度および信号値の相対値を示し、横軸はECG信号のR波からの時間を示す。また図12中の一点鎖線は、血流速度の時間変化を示し、点線はFASEシーケンスによって血流から得られるデータの信号値の時間変化を示す。
図12に示すように時間t1以前の収縮期では、血流速度が相対的に速い反面、血流から得られる信号強度は相対的に小さい。一方、時間t2以降の拡張期では、血流速度が相対的に遅い反面、血流から得られる信号強度は相対的に大きい。すなわち、ECG信号のR波からの時間によって信号値が変化することが分かる。
また、Partial FCパルスやPartial FSパルスが印加されると、磁化スピンの位相分散が抑制または助長されて信号値の時間変化が変化する。例えば、実線で示す信号値の時間変化S1から点線で示す信号値の時間変化S2に変化する。つまり、Partial FCパルスやPartial FSパルスの強度を調整することによって、血流から得られる信号値を制御することができる。そこで、Partial FCパルスやPartial FSパルスの強度を血流速度または遅延時間に応じて1ショットごとに変化させつつ印加すれば、異なる心時相において同等の信号強度でデータを収集することが可能となる。
Partial FCパルスやPartial FSパルスの強度(または波形面積)は、予め試験的にデータを収集することによって撮影部位ごとに決定することができる。また一旦、デフォルトとして決定されたPartial FCパルスやPartial FSパルスの強度を表示装置34の設定画面に表示させて、入力装置33の操作によってユーザが任意に変更できるようにしてもよい。
そして、このようなパルスシーケンスによってk空間データを収集すると、低周波領域および高周波領域のデータを収集するn番目の最後のデータ収集において収集されたデータを除き、低周波領域のみのk空間データが得られる。
図13は、図9に示すFASEシーケンスを用いてデータ収集を行う場合に得られるk空間データを示す図である。
図13において横軸は、RO方向を示し、縦軸はPE方向を示す。図13に示すようなk空間データが1ショットごとに収集される。FASEシーケンスではハーフフーリエ法が用いられるため、正方向の高周波領域におけるk空間データは収集されない。そして、実効エコー時間TEeffまでのデータ収集によって正方向の低周波領域におけるk空間データが収集され、実効エコー時間TEeff以降のデータ収集によって負方向の低周波領域におけるk空間データが収集される。
また、画像再構成に必要であるものの収集されない負方向の高周波領域におけるk空間データとして、n番目のデータ収集によって収集された高周波領域のコピーが用いられる。
すなわち、コントラストの向上に重要な低周波領域のk空間データは、各心拍ごとに収集され、高周波領域のk空間データは、少なくとも1回収集されて各ショットにおいて収集されたデータ間で共有される。
前述のようにk空間データのPE方向のライン数knは、予め画像を撮影する試験によってコントラストが十分に得られる数に決定することができる。ただし、収集すべきk空間データの範囲を表示装置34の設定画面に表示させて、入力装置33の操作によってユーザが変更できるようにしてもよい。
また、ここまでは2次元のTime-resolved MRDSA画像を撮影するための撮影条件の設定例を示したが、2次元のTime-resolved MRDSA画像を撮影するための撮影条件は、ECG信号のR波からの最適な遅延時間を求めるための準備スキャンであるECG-prepスキャン用の撮影条件として用いることもできる。
ECG-prepスキャンを行うと、R波からの遅延時間ごとの血流からのデータの信号値が取得できる。そこで、遅延時間とデータの信号値との関係を示すグラフを表示し、グラフを参照しつつMRDSA画像の撮影用の遅延時間の範囲および時相(遅延時間)の数を決定することができる。遅延時間とデータの信号値との関係を示すグラフは、以下の手順(アルゴリズム)によって作成することができる。
まず、ECG-prepスキャンによって遅延時間が異なる複数のECG-prep画像が生成される。複数のECG-prep画像のいずれかを基準画像とし、各ECG-prep画像と基準画像との差分をとる。或いは、複数のECG-prep画像のうち2つのECG-prep画像の差分を全ての組み合わせに対してとる。これにより複数の差分画像が生成される。次に複数の差分画像に対してMIP処理が施されることによって、MIP画像が生成される。次に、MIP画像を二値化してマスク画像を作成し、作成したマスク画像を複数のECG-prep画像それぞれに掛け合わせる。これにより各遅延時間(時相)の特徴量が計算される。そして、このように計算された各遅延時間と特徴量との関係を示すグラフを生成することができる。
遅延時間とデータの信号値の関係を示すグラフを撮影条件や表示条件の設定用に表示させる場合には、インターフェース部41が実空間データベース47等の他の構成要素から必要なデータを取得し、遅延時間と信号値のグラフを表すグラフ情報を作成して表示装置34に表示させるように構成すればよい。そして、入力装置33の操作によってグラフの範囲を指定し、指定されたグラフの範囲に基づいて撮影範囲や表示範囲の指示情報をインターフェース部41が撮影条件設定部42や表示処理部49に与えるようにすれば良い。
そして、グラフを参照することによって、MRDSA画像の撮影用の遅延時間の範囲を指定することができる。例えば、心臓の収縮期から拡張期の信号変化がある時相内に撮影範囲を設定することができる。具体例としては、ECG信号のR波からの遅延時間が200msから350msの範囲を撮像範囲とすることができる。
さらに、撮影範囲に加え、前述したように遅延時間の変更幅やデータ収集の繰り返し回数も設定対象となる。図6には、遅延時間の初期値、変更幅およびデータ収集回数を入力装置33の操作によって指定する設定画面の例が示されているが、遅延時間の変更幅やデータ収集の繰り返し回数は、コンピュータ32側において条件に応じて自動的に計算されるようにすることもできる。例えば、撮影の用の遅延時間の範囲が定まっている場合には、基準となる遅延時間(例えば遅延時間の初期値)Delayおよび遅延時間の変更幅Incrementを入力装置33の操作によって指定すると、データ収集の繰り返し回数および撮像時間を自動的にコンピュータ32が計算することができる。別の例としては、入力装置33の操作によって撮像時間を指定すると、指定された撮像時間内に指定された撮影範囲におけるデータ収集が完了するように、基準となる遅延時間Delayおよび遅延時間の変更幅Incrementを自動的にコンピュータ32が計算することができる。これら計算によって得られた、または指定されたデータ収集の繰り返し回数、撮像時間、基準となる遅延時間Delayおよび遅延時間の変更幅Incrementは参照用に表示装置34に表示させることができる。
尚、ECG-prepスキャンは、適切な遅延時間を決定するために実施される準備スキャンであるため、通常ECG-prepスキャンによって得られる各画像データ間における遅延時間の変更幅よりもMRDSA画像における遅延時間の変更幅の方が短く設定される。
また、MRDSA画像に関する遅延時間とデータの信号値との関係を示すグラフを表示させれば、血流像として表示させる遅延時間の範囲および時相(遅延時間)の数を決定することもできる。
一方、3次元のTime-resolved MRDSA画像を撮影するためのエコーシェアーを伴う撮影条件を設定することもできる。
図14は、図6に示す設定画面において、エコーシェアーモードを選択し、3次元のパルスシーケンスで3次元のTime-resolved MRDSA画像を生成するためのデータ収集を行う場合における遅延時間とデータ収集時間を示す図である。
図14に示すように、あるスライスS1におけるデータ収集を図7に示す2次元のデータ収集と同様に行うことができる。すなわち、スライスS1におけるn番目の最後のデータ収集では高周波領域および低周波領域のデータを収集し、他のデータ収集では、低周波領域のみのデータを収集する。そして、同様にエコーシェアーを伴う2次元的なデータ収集をスライスごとに繰返し行うことによって3次元のデータを収集することができる。すなわち、スライスS2、S3、…、Snにおけるデータ収集もスライスS1におけるデータ収集と同様に行う。これにより、短時間で3次元のエコーデータを収集し、3次元のTime-resolved MRDSA画像を生成することが可能となる。
そして、上述したようなエコーシェアーモードを撮影条件の設定画面において選択することによって、撮影時間を低減することができる。
さらに、撮影条件の設定画面においてPIによる撮像モードが選択されると、より一層撮影時間を短縮することができる。PIは、前述のように、複数の表面コイル24cで位相エンコードをスキップさせてデータを収集する技術である。このため、位相エンコード数を画像再構成に必要な位相エンコード数の表面コイル24cの数分の1に減らすことができる。そして、各表面コイル24cで同時に受信されたエコーデータから表面コイル24cごとに画像データが再構成される。
しかし、PIによって再構成された表面コイル24cごとの画像データには、それぞれ折返しが生じる。そこで、表面コイル24cの感度分布を利用して各画像データに折返しを除去するためのunfolding処理が施される。そして、unfolding処理後における表面コイル24cごとの画像データを合成することによって、最終的な表示用の画像データが生成される。
また、moving table法やstepping-table法による撮像を行う場合には、寝台37の位置情報やステップ量等の条件が撮影条件として入力装置33からインターフェース部41に与えられる。
そして、以上のような撮影条件の指示が表示装置34に表示された設定画面を介して入力装置33からインターフェース部41に与えられると、対応する情報がインターフェース部41から各構成要素に与えられる。例えば、エコーシェアーモードの適用情報、PIの適用情報および表面コイル24cの数、選択されたパルスシーケンス、遅延時間、ショット回数が撮影条件設定部42に与えられる。また、エコーシェアーモードの適用情報、パルスシーケンス、遅延時間、ショット回数およびPIの適用情報が画像再構成部45に、PIの適用情報および表面コイル24cの数が展開処理部46にそれぞれ与えられる。
そうすると、撮影条件設定部42では、インターフェース部41から取得した情報に従って撮影条件を設定し、シーケンスコントローラ制御部43に与える。
次にステップS2において、表示装置34に表示された画像処理条件および画像表示条件の設定画面を通じて画像処理方法および画像表示方法が設定される。図6の右上に示すように、画像処理方法として、MRDSA画像の生成のために、差分処理を自動的に行うように自動差分処理モードを選択することができる。自動差分処理モードを選択すれば、撮影開始後、別途、差分処理の指示情報をインターフェース部41に与えることなく自動的に画像データの差分処理が行われてMRDSA画像が生成される。
また、例えばデータ収集用のパルスシーケンスとして3次元のシーケンスが選択されている場合には、MIP処理を自動的に行うように自動MIP処理モードを選択することができる。自動MIP処理モードを選択すれば、撮影開始後、別途、MIP処理の指示情報をインターフェース部41に与えることなく自動的にMRDSA画像データとして生成された3次元画像データのMIP処理が行われて表示用の血流像データが生成される。
さらに、データ収集用のパルスシーケンスとして3次元のシーケンスが選択されている場合には、図6の右下に示すように表示用の血流像データとして生成された複数のMIP画像データの表示方法を設定することができる。
図15は、図6に示す設定画面において設定されるMIP画像の表示順序を説明する図である。
図15において、横軸はMIP画像の投影方向を示す表示角度を、縦軸は時相を示す。また図15に並べた画像は、3次元のスキャンによって収集された表示対象となるMIP画像である。図15において横軸方向に進むと、MIP画像の表示角度が変化し、縦軸方向に進むと、時間が経過し次第に血流が流れていくMIP画像となる。
画像表示方法としてPhase/Swingを選択すると、時相が異なるMIP画像を順次表示させた後、別の表示角度のMIP画像を時相とともに順次表示させる画像表示方法でMIP画像が表示装置34に表示されることとなる。すなわち、Ip1a1, Ip2a1, Ip3a1, …, Ip1a2, Ip2a2, Ip3a2, …, Ip1a3, Ip2a3, Ip3a3, …という順序でMIP画像が表示装置34に表示される。また、画像表示方法としてSwing/Phaseを選択すると、表示角度を徐々に変えてMIP画像を順次表示させた後、次の時相のMIP画像を表示角度を徐々に変えつつ表示させる画像表示方法でMIP画像が表示装置34に表示されることとなる。すなわち、Ip1a1, Ip1a2, Ip1a3, …, Ip2a1, Ip2a2, Ip2a3, …, Ip3a1, Ip3a2, Ip3a3, …という順序でMIP画像が表示装置34に表示される。
また、画像表示方法として、MIP画像を生成する際の投影方向を設定することができる。例えば、投影方向の数を指定し、180°の角度を指定された数で均等分割して得られる投影面を投影方向とすることができる。さらに、1枚のMIP画像の表示時間を設定することができる。例えば、図6のスクロールバーをマイナス側にスクロールさせると、MIP画像の表示速度が低下してスローモーション表示となる。逆にスクロールバーをプラス側にスクロールさせると、MIP画像は早送り再生となる。
さらに、moving table法やstepping-table法による撮像を行う場合には、寝台37の位置ごとの血流像データの画像表示方法を設定することができる。この場合、画像表示方法に関連して、各寝台37の位置において撮像対象となる複数の部位間においてそれぞれ対応する複数のデータがそれぞれ同一の遅延時間で収集されるように撮影条件を設定すると、効果的に血流像データを表示させることができる。
例えば、血流像データが動画である場合には、各位置の血流像データ間における時相を一致させて表示させることができる。
図16は、寝台37の移動を伴って2つの部位の血流像データを撮影する場合に、時相を一致させて表示させる表示方法を説明する図である。
図16に示すように、2つの血流像データを繋げて時系列に表示させることができる。各血流像データI1, I2の時相d1, d2, d3, …をそれぞれ一致または近い時相に設定すると、それぞれの血流像I1d1, I1d2, I1d3, …, I2d1, I2d2, I2d3, …において血流が流れているように表示させることができる。
図17は、寝台37の移動を伴って2つの部位の血流像データを撮影する場合に、血流が流れる方向に応じて上流側の最後の時相の画像データを表示させた後に隣接する下流側の最初の時相の画像データを表示させる表示方法を説明する図である。
図17に示すように、2つの血流像データI1,I2を繋げて時系列に表示させることができる。ここで、上流側の最後の時相d3の血流像データI1d3を表示させた後に、下流側の最初の時相d1の血流像データI2d1を表示させると、血流が2つの部位間で連続して流れているように表示させることができる。
このように設定された画像処理方法および画像表示方法を示す情報は、作成すべき血流像としてインターフェース部41から血流像作成部48に与えられ、画像表示方法を示す情報は、表示処理部49に与えられる。
そして、撮影条件、画像処理方法、画像表示方法の設定が完了すると、寝台37に被検体Pがセットされる。また、予め静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。撮影条件、画像処理方法、画像表示方法の設定は、別々に行わずに一括して行ってもよい。
次に、ステップS3において、データ収集が行われる。すなわち、入力装置33からスキャン開始の指示がインターフェース部41を通じてシーケンスコントローラ制御部43に与えられる。そうすると、シーケンスコントローラ制御部43は撮影条件設定部42から取得したFASEシーケンス等のパルスシーケンスをシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、シーケンスコントローラ制御部43から受けたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域に傾斜磁場を形成させるとともに、RFコイル24から高周波信号を発生させる。
このため、被検体Pの内部における核磁気共鳴により生じたNMR信号が、RFコイル24により受信されて受信器30に与えられる。受信器30は、RFコイル24からNMR信号を受けて、所要の信号処理を実行した後、A/D変換することにより、デジタルデータのNMR信号である生データを生成する。受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、生データをシーケンスコントローラ制御部43に与え、シーケンスコントローラ制御部43はk空間データベース44に形成されたk空間に生データをk空間データとして配置する。
そして、このようなデータ収集は、ECGユニット38によって取得された被検体PのECG信号に従って心電同期下で行われる。すなわち、ECG信号のR波から遅延時間を徐々に増加させて設定されたトリガに続いて、図6に示す設定画面において指定されたショット回数だけデータ収集される。遅延時間は、図6に示す設定画面において設定された初期遅延時間からショット回数とともにインクリメント値だけ増加した遅延時間となる。
エコーシェアーモードでは、n番目のショット以外のショットでは、低周波領域のk空間データが収集されてk空間データベース44に配置され、n番目のショットでは、低周波領域および高周波領域のk空間データが収集されてk空間データベース44に配置される。このため、短時間でデータ収集を行うことが可能となり、1心拍で1ショット分のデータを収集することができる。またPIによる撮影モードが選択されている場合には、指定された数の表面コイル24cでデータを収集するとともに位相エンコード数をスキップするため、一層データ収集時間が短縮される。そして、データ収集から次のR波までの間にT1回復に十分な時間を確保することができる。
次に、ステップS4において、画像再構成部45は、k空間データベース44からk空間データを取り込んでフーリエ変換処理等の画像再構成処理を施すことにより、k空間データから画像データを生成する。ただし、n番目以外のデータ収集によって得られたk空間データのうち、k空間の負方向の高周波領域における不足するk空間データとして、n番目のデータ収集において収集された高周波領域におけるk空間データのコピーを用いる。また、ハーフフーリエ法によりk空間の正方向の高周波領域における不足するk空間データが複素共役関係により演算される。そして、データのコピーおよび複素共役演算によりk空間がデータで満たされると、画像再構成処理によって画像データが生成される。
そして、インターフェース部41からPIによる撮影モードであるとの通知がない場合には、画像再構成部45は、再構成して得られた画像データを実空間データベース47に書き込む。逆に、インターフェース部41からPIによる撮影モードであるとの通知がある場合には、画像再構成部45は、再構成して得られた表面コイル24cごとの画像データを展開処理部46に与える。
次に、展開処理部46は、画像再構成部45から取得した各表面コイル24cごとの画像データに対して、unfolding処理を行うことにより、展開された画像データを生成する。このとき、感度分布データベース40に保存された対応する各表面コイル24cの感度分布が展開処理部46によって参照され、unfolding処理に利用される。また、インターフェース部41から取得した表面コイル24cの数やNOWRAP等の条件もunfolding処理に利用される。そして、展開処理部46は、生成した画像データを実空間データベース47に書き込む。
次に、ステップS5において、血流像作成部48は、インターフェース部41からの指示情報に従って、実空間データベース47に保存された心時相の異なる複数の画像データを取得し、表示用の血流像データを生成する。例えば、血流像作成部48は、時相が近い画像データ間または基準となる画像データと各時相の画像データとの間における差分処理を行うことによりTime-resolved MRDSA画像データを生成する。
基準画像データに対して各時相の画像データの差分処理を行う場合には、ECG信号の各R波から遅延時間dnだけ経過したタイミングを拡張期に設定し、拡張期に収集された画像データを基準画像データIdnとすることができる。そして、遅延時間d1, d2, d3, …だけ経過したタイミングで収集された各時相の画像データId1, Id2, Id3, …と基準画像データIdnとの間でそれぞれ差分処理を行えば、差分処理の結果得られる差分画像データIdn-Id1, Idn-Id2, Idn-Id3, …が血流像を示すブライトなシネ画像データとなる。
この差分処理は、図6に示す設定画面において自動差分処理モードが選択されている場合には、自動的に行われる。逆に自動差分処理モードが選択されていない場合には、ユーザが入力装置33を操作することによって差分処理の指示をインターフェース部41を通じて血流像作成部48に与える。
ただし、差分処理を行わずに、各時相の画像データId1, Id2, Id3, …をそのまま表示用の血流像データとすることもできる。この場合、表示用の血流像データは、ブラックのシネ画像データとなる。
また、ECG-prep用の2次元画像データの収集が目的である場合にも、時間分解されたデータの差分処理が不要であり、画像再構成部45または展開処理部46によって生成された画像データをそのまま利用することができる。
また、図6に示す設定画面において自動MIP処理モードが選択されている場合には、差分処理された3次元のTime-resolved MRDSA画像データが指定された投影面に自動的にMIP処理される。
そして、このようにして作成された2次元のTime-resolved MRDSA画像データやMIP画像データは、血流像データとして血流像作成部48から表示処理部49に与えられる。
次に、ステップS6において、表示処理部49は、インターフェース部41からの指示情報に従って、設定画面において設定された表示順序、表示時間で血流像データが表示装置34に表示されるように血流像データに対して表示処理を行って表示装置34に出力する。この結果、表示装置34には、血流像が表示される。特に3次元のTime-resolved MRDSA画像データを生成した場合には、複数のMIP画像がPhase/SwingまたはSwing/Phaseとして指示された画像表示方法で順次表示される。
また、moving table法やstepping-table法による撮像が行われた場合には、寝台37の位置ごとの血流像データが繋ぎ合わされる。各血流像データは、時相を一致して表示することもできるし、上流側の最後の時相の後が下流側の最初の時相となるように連続的に表示させることもできる。
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置20は、シングルスライスマルチフェーズの画像データを効率よく収集できるように、エコーシェアー技術やPIを用いて短時間でデータ収集できるようにしたものである。シングルスライスマルチフェーズの画像データとしては、非造影Time-Resolved MRDSA画像データやECG-prepにより収集される画像データを対象としている。
エコーシェアー技術によれば、k空間の低周波成分のみを複数回に亘ってデータ収集し、少なくとも1回だけk空間の高周波成分のデータを収集すればよいことになる。これにより1ショットあたりの撮像時間を短縮することができる。さらに、PIを併用することで一層撮影時間を短縮することができる。このため、TRを1心拍(1RR)にしてデータ収集することが可能となる。シーケンスとしては、より短時間でデータ収集可能なFASEシーケンスを用いるのが好適である。このとき、血流の流速に応じてPartial FCパルスやPartial FSパルスを印加することによって、安定した信号値でデータ収集を行うことができる。
さらに、3次元の非造影Time-Resolved MRDSAにエコーシェアー技術やPIを適用すれば、3次元の血流機能、すなわちスライス方向のDSA情報を短時間に測定できるようになる。これにより、磁気共鳴イメージング装置20によれば、機能イメージングとしての非造影Time-Resolved MRDSA画像のイメージングをより短時間に行うことができる。
加えて、再構成された画像データから自動的に差分処理やMIP処理が行われるようにインターフェースを構築することによってユーザの労力を低減することができる。また、ユーザの利便性を考慮したインターフェースを備えることによって、3次元撮影において複数の方向へのMIP画像を生成した場合に、ユーザの操作を介在することなく事前に指定した表示順序および表示速度で各時相および各投影方向のMIP画像を連続して自動表示させることもできる。このような複数の投影方向への時系列のMIP画像の自動連続表示は、非造影血流像のみならず、造影剤を用いた血流像や、血流像以外の画像に対して行うことができる。また、自動差分処理や自動投影処理は、エコーシェアー技術やPIを伴わない3次元Time-Resolved MRDSAにおいても実行できるようにインターフェースを構築することができる。
さらに、エコーシェアー技術を伴って、ある心拍において収集されたデータと他の心拍において収集されたデータとを用いて画像を生成する方法は、非造影血流像に限らず、造影剤を用いた血流像や、血流像以外の診断画像の生成に用いることも可能である。さらに、PIを併用する場合についても同様に非造影血流像、造影血流像を含む様々な診断画像の生成に適用することができる。
尚、上述した磁気共鳴イメージング装置20では、エコーシェアー技術によって高周波領域におけるk空間データのコピーを用いることによってk空間データが満たされた状態で画像データを生成し、生成された画像データの差分処理を行ったが、低周波成分のみのk空間データから一旦画像データを生成して差分処理を行い、血流像データとして得られた差分画像データを表示させる際に、高周波成分に相当する部分の差分画像データの補完処理を表示処理として行うようにしてもよい。この場合、血流像データの補完処理は、表示処理部49において行うことができる。このように差分処理後に高周波成分のコピーを補完データとして用いるようにしても、分解能の高い血流像データを得ることができる。
また、上述した磁気共鳴イメージング装置20が有する差分処理や投影処理等の画像処理機能や様々な画像データの表示機能を備えた画像処理装置を構成することもできる。画像処理装置は、例えば医用画像保管通信システム (PACS: picture archiving and communication system)に内蔵し、ネットワークを介して磁気共鳴イメージング装置20と接続することもできる。この場合、磁気共鳴イメージング装置20からは、画像処理機能や表示処理機能を一部を省略することもできる。ただし、磁気共鳴イメージング装置20および画像処理装置の双方に画像処理機能や表示処理機能を設ければ、磁気共鳴イメージング装置20および画像処理装置の双方において、血流画像を動画や静止画として様々な表示方法で表示させることができる。
20 磁気共鳴イメージング装置
21 静磁場用磁石
22 シムコイル
23 傾斜磁場コイルユニット
24 RFコイル
24a WBコイル
24b フェーズドアレイコイル
24c 表面コイル
25 制御系
26 静磁場電源
27 傾斜磁場電源
28 シムコイル電源
29 送信器
30 受信器
31 シーケンスコントローラ
32 コンピュータ
33 入力装置
34 表示装置
35 演算装置
36 記憶装置
37 寝台
38 ECGユニット
39 寝台駆動装置
40 感度分布データベース
41 インターフェース部
42 撮影条件設定部
43 シーケンスコントローラ制御部
44 k空間データベース
45 画像再構成部
46 展開処理部
47 実空間データベース
48 血流像作成部
49 表示処理部
50 寝台制御部
P 被検体

Claims (3)

  1. 心電同期下において、遅延時間を変化させながら血流データの信号値を収集する準備スキャンを行う準備スキャン手段と、
    前記準備スキャン手段によって収集された前記血流データの信号値から、前記遅延時間と前記信号値との関係を示すグラフを生成するグラフ生成手段と、
    前記生成したグラフを表示する表示手段と、
    前記グラフを参照して、非造影Time-resolved MRDSA(magnetic resonance digital subtraction angiography)画像用のデータを取得する本スキャンの遅延時間の範囲と時相数を決定する決定手段と、
    決定された前記遅延時間の範囲と前記時相数に基づいて心電同期下で前記本スキャンを行う本スキャン手段と、
    前記本スキャン手段によって収集されたデータから、血流動態を示す前記非造影Time-resolved MRDSA画像を生成する画像データ生成手段と、
    を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  2. 前記決定手段は、
    収縮期から拡張期の信号変化がある時相内に前記本スキャンの遅延時間を設定する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
  3. 前記決定手段は、
    前記準備スキャンの遅延時間の変更幅よりも、前記本スキャンの遅延時間の変更幅の方が短くなるように、前記本スキャンの遅延時間の変更幅を決定する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
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