JP5641975B2 - 内燃機関の冷却装置 - Google Patents
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しかし、冷却液の温度を高くすると、循環系内の冷却液に空気が混入する異常が発生し、冷却液の循環系内における圧力を高圧側に保てなくなった場合に、冷却液が沸騰し易く、オーバーヒートが発生する可能性があった。
図1は、実施形態における内燃機関の冷却装置のシステム図である。
エンジン(内燃機関)1のジリンダブロックやシリンダヘッドには、冷却水(冷却液)通路2が形成されており、この冷却水通路(ウォータジャケット)2の出口とラジエータ3の入口3aとが、冷却水配管4で接続されている。
そして、冷却水通路2を通過することでエンジン1の熱を奪い温度上昇した冷却水は、冷却水配管4を介してラジエータ(空冷式放熱器)3に送られる。
ラジエータ3の出口3bとエンジン1の冷却水通路2の入口とは、冷却水配管6で接続される。
また、エンジン1の停止中に冷却水を循環させるために、冷却水配管6の途中には、電動式ウォータポンプ8を設けてある。
図2のシステム図は、図1のシステム図に対して、機械式ウォータポンプ7を省略している点のみが異なる。
バイパス配管9は、ラジエータ3を迂回して冷却水を循環させる循環系を構成し、ラジエータ3を迂回して循環させる冷却水の流量(ラジエータ3を迂回させるか否か)は、電制サーモスタットバルブ10によって制御される。
ここで、電制サーモスタットバルブ10は、図3に示すように、通電遮断状態(オンデューティ0%)であっても冷却水温度TWが上限温度(例えば100℃)を超えると略全開状態にまで開弁して、ラジエータ3を経由して冷却水を循環させるようにし、また、最大通電状態(オンデューティ100%)であっても冷却水温度TWが下限温度(例えば80℃)を下回ると略全閉状態にまで閉弁し、ラジエータ3を迂回して冷却水を循環させるように構成されている。
電子制御ユニット11は、コンピュータを備え、予め記憶したプログラムに従って、冷却ファン5、電動式ウォータポンプ8、電制サーモスタットバルブ10などに出力する操作量を演算する。
前記各種センサとしては、バイパス配管9の分岐点よりも上流側の冷却水配管4内の冷却水温度TWを検出する水温センサ(温度検出手段)12、エンジン1を搭載した車両の走行速度(車速)VSPを検出する車速センサ13、エンジン1の負荷TPを検出する負荷センサ14、エンジン1の回転速度NEを検出する回転センサ15、外気温度TAを検出する外気温センサ16などを備えている。
そして、電子制御ユニット11は、水温センサ12の信号に基づき検出した冷却水温度TWが設定温度よりも低い冷機時には、電制サーモスタットバルブ10を制御することで、ラジエータ3を迂回して循環される冷却水の流量を増やし、冷却水の温度上昇を促進させる。
更に、機械式ウォータポンプ7と電動式ウォータポンプ8との双方を備える場合、電子制御ユニット11は、電動式ウォータポンプ8をエンジン1の停止時に起動させ、また、電動式ウォータポンプ8を少なくとも備え、電動式ウォータポンプ8で冷却水を循環させる場合には、電動式ウォータポンプ8による冷却水の吐出量を冷却水温度TWに応じて制御する。
以下では、図4のフローチャートに示した異常判定ルーチン(異常判定手段)を詳細に説明する。
前記変数DTWNとして、最近の設定時間(例えば5秒)内で水温センサ12が検出した冷却水温度TWのうちの最小値TWMINと最大値TWMAXとの偏差を演算することができる。
また、前記変数DTWNとしては、冷却水温度TWが設定温度(例えば1℃)だけ上昇するのに要した時間を計測させることができる。
また、前記変数DTWNとしては、冷却水温度TWの移動平均値と極大値との偏差を演算させたりすることができ、冷却水温度TWが急に上昇したことを判定できる変数を適宜採用できる。
前記判定値SLDTWNは、固定値であっても良い。
但し、冷却水温度TWの上昇し易さは、エンジンの発生熱量、車速VSP、冷却ファン5の動作状態、外気温度などの条件で変化し、冷却水温度TWが上昇し易い条件で判定値SLDTWNが低いと、異常でない温度上昇を、空気の混入に因るものであると誤判定してしまうことになり、逆に、冷却水温度TWが上昇し易い条件で判定値SLDTWNが高いと、空気の混入による温度の急な上昇を正常範囲の変化であると誤判定することになってしまう。
尚、判定値SLDTWNの可変設定については後で詳細に説明する。
冷却水温度TWが下限温度を下回るような低水温状態(冷機状態)では、たとえ冷却水に空気が混入していてもオーバーヒートが発生する可能性が低いため、異常判定する必要性がなく、また、温度の低い条件では冷却水異常を誤判定する可能性があるので、冷却水温度TWが下限温度以上であることを、異常判定の実施条件とする。
変数DTWNを、設定時間内での最小値TWMINと最大値TWMAXとの偏差とする場合、偏差が大きいほど急な温度上昇が発生したことを示すから、変数DTWNが判定値SLDTWNを超えている場合に、異常な温度上昇が発生したと判断する。図4のステップS104には、変数DTWNが判定値SLDTWNを超えている場合に、異常な温度上昇が発生したと判断する場合を示してある。
換言すれば、ステップS104は、正常時には発生することのない急な温度上昇が発生したか否かを判断するものであり、明らかに異常と認められる急な温度上昇が発生したか否かを、判定値SLDTWNと変数DTWNとを比較して判断する。
そして、次のステップS106では、ステップS105で増加させたカウント値COUNTが、判定値NGCNT以上であるか否かを判断する。
そして、前記判定値NGCNTは、固定値として予め記憶させておくことができる他、冷却水温度TWが高いほど、冷却水異常によってオーバーヒートし易くなるので、冷却水温度TWが高いほどカウント値COUNTがより小さい段階から冷却水異常を判定して、オーバーヒート対策を早期に実施することが好ましいので、図6に示すように、前記判定値NGCNTは、冷却水温度TWが高いほどより小さい値に設定することができる。
一方、カウント値COUNTが判定値NGCNT以上である場合は、冷却水温度TWの異常上昇が検出された頻度が、何らかの対処を必要とするほど高く、そのまま放置するとオーバーヒートに至る可能性があるものと判断し、ステップS107へ進む。
前記冷却系異常とは、例えば冷却水に空気が混入した冷却水異常であり、冷却水に空気が混入すると、冷却水の循環系内における圧力を高圧側に保てなくなって、冷却水が沸騰し、オーバーヒートが発生する可能性がある。
特に、冷却水の温度を比較的高い温度に保って、エンジン1のフリクションを低下させようとすると、冷却水に空気が混入したときに、オーバーヒートが発生し易くなるため、オーバーヒート対策を直ちに実施することが望まれる。
(1)冷却系異常の発生を運転者に警告する。
具体例:(1-1)オーバーヒートランプ17を点灯する。
(2)冷却ファン(ラジエータファン)5の動作条件を変更する。
具体例:(2-1)冷却系異常時は常時オンにする(ファンの回転速度の最小値を上げる)。
(2-2)動作条件を正常時よりも低水温側に変更する。
(3)電制サーモスタットバルブ10の動作条件を変更する。
具体例:(3-1)動作条件(開弁条件)を正常時よりも低水温側に変更する。
(3-2)異常時は最大通電に固定する。
(4)エンジンの出力(発生熱量)の制限を行う。
具体例:(4-1)最大スロットル開度を低下させる。
(4-2)異常時用の最大エンジン回転速度で燃料カットを行う。
(5)電動式ウォータポンプ8の動作条件を変更する。
具体例:(5-1)最低動作回転速度を上げる(オーバーヒート抑制)。
(5-2)最高動作回転速度を下げる(気泡混入によるポンプ破損の抑制)。
運転者への警告は、車両の運転席近傍に設けたオーバーヒートランプ17の点灯によって行える他、ブザーや文字表示などで異常の発生を警告できる。
エンジン出力の制限は、エンジン1の電子制御スロットルにおける最大開度を異常時には正常時に比べて低下させることや、正常時にはエンジン1への燃料噴射が行われる高回転域で異常には燃料カットを行うことなどで実現できる。
一方、フェイルセーフ処理(5)のうち、電動式ウォータポンプ8の最高動作回転速度を異常時には正常時よりも下げる変更は、正常時には運転が許容される高回転側でのポンプ駆動を禁止し、気泡が混入している冷却水がポンプ内に流入することで、ポンプ主軸に過大な応力が加わることや、キャビテーションによる影響を抑制するものである。
尚、電動式ウォータポンプ8の最高動作回転速度を異常時には正常時よりも下げる変更は、冷却水の温度上昇を抑制する作用はないので、オーバーヒートに至る可能性が低いとき、より具体的には、気泡検知時の冷却水温度が低く、オーバーヒート温度に至るまで余裕代があるときや、他のフェイルセーフ処理の実施によって冷却水温度が低下した後に実施させるようにしてもよい。
但し、冷却水温度の上昇を抑制する処理、換言すれば、循環系における冷却液の冷却能力を上昇させる処理であるフェイルセーフ処理(2),(3),(4),(5−1)のうちの少なくとも1つを実施し、冷却水の異常状態におけるオーバーヒートの発生を抑制することが好ましい。
ステップS108では、冷却水温度TWが許容最大温度(例えば98℃)未満である正常温度状態であるか否かを判断する。
冷却水温度TWが前記許容最大温度以上であるときに、オーバーヒート状態であると判断できるように、前記許容最大温度を設定してある。
即ち、ステップS109では、冷却水に対する気泡の混入量がオーバーヒートを発生させるほどに多くなく、係る状態に対応して冷却水温度TWの急な上昇変化が検出される頻度が低い状態であるか否かを判断するものである。
そして、カウント値COUNTがカウントアップされない状態が、判定時間以上継続していれば、ステップS110へ進み、冷却系(冷却水)が正常であると判断して、前記フラグfDGNWSYSをゼロにリセットし、また、ステップS107でフェイルセーフ処理を実施していれば、その処理を停止させ、正常時の状態に復帰させる。
ステップS107で冷却系の異常を判定すると、その後、オーバーヒート状態でなく、かつ、新たに冷却水温度TWの急な上昇変化が検出されない状態が判定時間だけ継続していると判断されるようになるまで、異常判定がキャンセルされずに、フェイルセーフ処理を継続させる。
前述のように、冷却水温度TWの上昇し易さは、エンジン1の発生熱量、車速VSP、冷却ファン5の動作状態、外気温度などの条件で変化するため、これらの条件に応じて判定値SLDTWNを変更することで、気泡による急な温度上昇の検出精度を高める。
エンジン1の発生熱量が大きくなるほど、冷却水温度TWの急な上昇が発生し易くなるため、係るエンジン発熱量による冷却水温度TWの上昇を超える温度上昇を判定させるべく、前記係数KENGHETは、エンジン1の発生熱量が大きくなるほど判定値SLDTWNをより大きな値に補正する。
また、スロットル開度はエンジン1の負荷を表す状態量であり、高負荷(高スロットル開度)でかつ高回転速度である領域でエンジン1の発生熱量が多くなり、低負荷(低スロットル開度)でかつ低回転速度である領域でエンジン1の発生熱量が少なくなる。
尚、テーブルやマップを用いずに、基本値BSLDTWNE#を補正するための係数(補正値)を演算式に従って算出することができる。
車速VSPが高くなると、ラジエータ3における放熱効率(放熱量)が高くなり、冷却水温度TWの急な上昇が発生し難くなるので、前記係数KVSPは、車速VSPが高くなるほど、判定値SLDTWNをより小さい値に補正する。
具体的には、図10に示すように、車速VSPに応じて係数KVSPを記憶したテーブルを予め用意し、そのときの車速VSPに対応する係数KVSPを検索する。
冷却ファン5の回転速度(駆動量)が高く、ラジエータ3への送風量が多いと、ラジエータ3における放熱効率(放熱量)が高くなり、冷却水温度TWの急な上昇が発生し難くなるので、前記係数KRDFNは、冷却ファン5の回転速度(駆動量)が高くなるほど、判定値SLDTWNをより小さい値に補正する。
具体的には、図11に示すように、冷却ファン5の回転速度(駆動量)に応じて係数KRDFNを記憶したテーブルを予め用意し、そのときの冷却ファン5の回転速度(駆動量)に対応する係数KRDFNを検索する。
外気温度TAが高いと、ラジエータ3における放熱効率(放熱量)が低くなり、冷却水温度TAの急な上昇が発生し易くなるので、前記係数KTAは、外気温度TAが高くなるほど、判定値SLDTWNをより大きな値に補正する。
具体的には、図12に示すように、外気温度TAに応じて係数KTAを記憶したテーブルを予め用意し、そのときの外気温度TAに対応する係数KTAを検索する。
SLDTWN=BSLDTWNE#+KENGHET+KVSP+KRDFN+KTA
尚、判定値SLDTWNは、エンジン1の発生熱量、車速VSP、冷却ファン5の動作状態、外気温度TAのうちの少なくとも1つに基づいて可変に設定することができ、また、これらの状態量の他、湿度、降水量、高度、冷却液の種類、日照、路面温度などに応じて判定値SLDTWNを可変に設定することができる。
そして、冷却系の異常(冷却水異常)を検出したときに、循環系における冷却水の冷却能力を上昇させるフェイルセーフ処理を実施することで、オーバーヒートの発生を未然に抑制することが可能となる。
また、冷却水温度TWの急な上昇を判定するための判定値を、エンジン1の発生熱量(エンジン負荷、エンジン回転速度)、車速VSP、冷却ファン5の動作状態、外気温度TAなどの条件に応じて変更すれば、これらの条件が変化しても、冷却水に空気が混入している冷却系の異常を安定して高い精度で判定することができる。
また、正常判定(異常判定のキャンセル)を、冷却水温度TWと、急な温度上昇を継続して検出していない時間に基づいて行うので、異常継続状態若しくはフェイルセーフ処理が効力を発揮するようになるまでの遅れ時間内で異常判定をキャンセルしてしまうことを抑制できる。
(イ)請求項1から3のいずれか1つに記載の内燃機関の冷却装置において、
前記冷却装置が、ラジエータとラジエータファンとを含み、
前記ラジエータファンの風量の増大及び/又は前記ラジエータファンの動作開始温度の低下によって循環系における冷却液の冷却能力を上昇させる、内燃機関の冷却装置。
上記発明によると、冷却液に異常が発生した場合に、ラジエータファンの風量を増大させるか、及び/又は、ラジエータファンをより低い冷却液温度から動作させることで、ラジエータにおける放熱効率(放熱量)を増やし、冷却液の温度上昇を抑制する。
前記冷却装置が、ラジエータと該ラジエータを迂回して冷却液を循環させる電制サーモスタットバルブとを含み、
前記ラジエータを迂回して冷却液を循環させる条件としての冷却液温度を低下させることによって循環系における冷却液の冷却能力を上昇させる、内燃機関の冷却装置。
上記発明によると、正常時よりもより低温からラジエータを介して冷却液を循環させることで、冷却液の温度上昇を抑制する。
前記内燃機関の最大出力をより低く制限することによって循環系における冷却液の冷却能力を上昇させる、内燃機関の冷却装置。
上記発明によると、内燃機関の発熱量が設定量を超えることになる領域での運転を禁止し、発熱量が設定量を下回る領域で内燃機関を運転させることで、冷却液に対する内燃機関からの受熱量を減らし、冷却液の温度上昇を抑制する。
前記冷却装置が、冷却液を循環させるポンプとして電動式ウォータポンプを含み、
前記電動式ウォータポンプの吐出量を増加させることによって循環系における冷却液の冷却能力を上昇させる、内燃機関の冷却装置。
上記発明によると、電動式ウォータポンプの吐出量を冷却液の正常時よりも増大させることで冷却液の循環流量(熱容量)を増やし、冷却液の温度上昇を抑制する。
前記冷却装置が、冷却液を循環させるポンプとして電動式ウォータポンプを含み、
冷却液の異常の発生を判定した場合に前記電動式ウォータポンプの最高動作回転速度を下げる、内燃機関の冷却装置。
上記発明によると、冷却液の異常の発生を判定した場合に電動式ウォータポンプの最高動作回転速度を下げることで、空気が混入している冷却液が流入する状態でポンプが高回転で駆動され、ポンプの主軸に過大な応力が加わって損傷することを抑制できる。
Claims (3)
- 冷却液を循環させて内燃機関を冷却する冷却装置であって、
前記冷却液の温度について判定値を超える急な上昇変化を検出した頻度が所定値よりも高くなったときに冷却液の冷却能力を上昇させる、内燃機関の冷却装置。 - 前記冷却液の温度が高いほど、より低い頻度から冷却液の冷却能力を上昇させる、請求項1記載の内燃機関の冷却装置。
- 前記判定値を、内燃機関の発生熱量、内燃機関を搭載した車両の走行速度、ラジエータファンの動作状態、外気温度のうちの少なくとも1つに応じて可変に設定する、請求項1又は2記載の内燃機関の冷却装置。
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