JP5639972B2 - 重合性組成物、それを用いた平版印刷版原版、防汚性部材、及び、防曇性部材 - Google Patents
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Description
例えば、これら重合性組成物を、水溶液などによる現像処理が必要な用途、あるいは硬化膜における親水性が機能する用途に用いる場合には、親水性成分を重合性組成物中に導入する必要があるが、水中での耐久性、あるいは、非膨潤性などの要求を満たすためには、重合硬化膜が高い架橋密度を有することが必要となる。
平版印刷版原版は、親水性の支持体上に親油性の画像記録層を設けてなり、レーザーによる画像露光を行った後、アルカリ性現像液などによる現像処理を行い、画像部に対応する画像記録層を残存させ、非画像部に対応する不要な画像記録層を溶解除去して、平版印刷版を得るのに用いられる。
これら簡易処理型の平版印刷版原版においては、pHが中性に近い現像液や印刷機上の湿し水による現像を可能にするため、親水性の高い画像記録層を用いており、その結果、印刷中の湿し水により画像部の強度が弱くなり、十分な耐刷が得られない欠点があった。
<1> (A)(a1)下記一般式(A1)で表される繰り返し単位及び下記一般式(A2)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物、及び(B)重合開始剤を含有することを特徴とする重合性組成物。
一般式(A1)中、R 101 〜R 103 はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。Tは下記一般式(a1−1)で表される構造を表す。
一般式(a1−1)中、R 11 、R 12 は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基又はカルバモイル基を表す。R 13 、R 14 、R 15 は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。L 1 は、二価の連結基を表す。Y 1 は単結合、又は、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。
一般式(A2)中、R 201 〜R 203 はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。Gは下記一般式(a2−1)又は(a2−2)で表される双性イオン構造を表す。
一般式(a2−1)中、R 21 及びR 22 は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、R 21 とR 22 は互いに連結し、環構造を形成してもよく、L 21 は、二価の連結基を表す。A − は、アニオンを有する構造を表す。Y 2 は、単結合、又は、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。
一般式(a2−2)中、L 22 は二価の連結基を表し、E + は、カチオンを有する構造を表す。Y 2 は、単結合、又は、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。
<2> 前記一般式(A1)で表される繰り返し単位の含有量が、前記高分子化合物を構成する全繰り返し単位の1〜50モル%の範囲であり、前記一般式(A2)で表される繰り返し単位の含有量が、前記高分子化合物を構成する全繰り返し単位の5〜95モル%の範囲であることを特徴とする<1>に記載の重合性組成物。
<3> 前記一般式(A2)で表される繰り返し単位におけるGが、前記一般式(a2−1)で表される構造であり、一般式(a2−1)中、A − がスルホナートであることを特徴とする<1>又は<2>に記載の重合性組成物。
<4> 支持体上に、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の重合性組成物を含有する画像記録層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
<5> 前記画像記録層が印刷インキ及び湿し水の少なくともいずれかにより除去可能であることを特徴とする<4>に記載の平版印刷版原版。
<6> <1>〜<3>のいずれか1項に記載の重合性組成物を硬化して得られることを特徴とする防汚性部材。
<7> <1>〜<3>のいずれか1項に記載の重合性組成物を硬化して得られることを特徴とする防曇性部材。
本発明は、上記<1>〜<7>に記載の重合性組成物、平版印刷版原版、防汚性部材及び防曇性部材に関するものであるが、その他の事項についても参考のために記載する。
1.(A)(a1)下記一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単
位を有する高分子化合物、及び(B)重合開始剤を含有することを特徴とする重合性組成
物。
4.支持体上に、前記1〜3のいずれか1項に記載の重合性組成物を含有する画像記録層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
5.画像記録層が印刷インキ及び湿し水の少なくともいずれかにより除去可能であることを特徴とする前記4に記載の平版印刷版原版。
6.前記2又は3に記載の重合性組成物を硬化して得られることを特徴とする防汚性部材。
7.前記2又は3に記載の重合性組成物を硬化して得られることを特徴とする防曇性部材。
一般式(a−1)で表される構造を側鎖に有する高分子化合物は、ウレア構造に由来する水素結合により、高分子化合物が有するラジカル重合性エチレン性不飽和結合同士が近くに配置され、ラジカル重合開始剤からラジカルが発生すると、高効率でラジカル重合が進行し、強固な3次元架橋膜が形成されるものと推測している。
更に、高親水性の双性イオン構造を側鎖に導入しても、強固な3次元架橋膜が形成されるため、耐刷性に優れた平版印刷版を与え、かつ、機上現像性に優れる平版印刷版原版を提供することが可能である。
また、架橋膜として、水に対して膨潤しにくく、耐摩耗性に優れた防汚性部材、防曇性部材を提供することができる。
また、基板表面の防汚性、防曇性に優れる親水性部材を提供することができる。
〔重合性組成物〕
本発明の重合性組成物は、(A)(a1)下記一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位を有する高分子化合物(以下では特定高分子化合物と称す)、及び(B)重合開始剤を含有することを特徴とする。
以下、特定高分子化合物、重合開始剤、その他の要素について詳細に説明する。
本発明の特定高分子化合物は、一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位を有する。
置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基及びジアリールアミノ基等が挙げられる。
上記の組み合わせからなるY1の具体例を以下に挙げる。なお、下記例において左側が主鎖に結合する。
L1:−CO−O−二価の脂肪族基−
L2:−CO−O−二価の芳香族基−
L3:−CO−NH−二価の脂肪族基−
L4:−CO−NH−二価の芳香族基−
二価の脂肪族基は、環状構造よりも鎖状構造の方が好ましく、更に分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造の方が好ましい。二価の脂肪族基の炭素数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至12であることが更に好ましく、1乃至10であることが特に好ましく、1乃至8であることが最も好ましい。
二価の芳香族基の置換基の例としては、上記二価の脂肪族基の置換基の例に加えて、アルキル基が挙げられる。
アプロティック溶媒への溶解性が低く、アルコール類、水などのプロティック溶媒の溶解性が高い高親水性の高分子化合物においても、アミン構造の反応性を利用することで、プロティック溶媒中で重合性基を導入することができる。
本発明の特定高分子化合物は、その効果を十分に発揮するためには、双性イオン構造を側鎖に有する繰り返し単位を有することが好ましい。双性イオン構造を有する側鎖は、下記一般式(a2−1)又は(a2−2)で表されることが好ましい。
R21及びR22の炭素数は、後述の有していてもよい置換基の炭素数を含めて、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数1〜15が特に好ましく、炭素数1〜8が最も好ましい。
R21及びR22で表されるアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、プレニル基(例えば、ジメチルアリル基、ゲラニル基など)、オレイル基等が挙げられる。
R21及びR22で表されるアルキニル基の例としては、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
また、R21及びR22で表されるアリール基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。更に、ヘテロ環基としては、フラニル基、チオフェニル基、ピリジニル基などが挙げられる。
L1:−CO−O−二価の脂肪族基−
L2:−CO−O−二価の芳香族基−
L3:−CO−NH−二価の脂肪族基−
L4:−CO−NH−二価の芳香族基−
L5:−CO−二価の脂肪族基−
L6:−CO−二価の芳香族基−
L7:−CO−二価の脂肪族基−CO−O−二価の脂肪族基−
L8:−CO−二価の脂肪族基−O−CO−二価の脂肪族基−
L9:−CO−二価の芳香族基−CO−O−二価の脂肪族基−
L10:−CO−二価の芳香族基−O−CO−二価の脂肪族基−
L11:−CO−二価の脂肪族基−CO−O−二価の芳香族基−
L12:−CO−二価の脂肪族基−O−CO−二価の芳香族基−
L13:−CO−二価の芳香族基−CO−O−二価の芳香族基−
L14:−CO−二価の芳香族基−O−CO−二価の芳香族基−
L15:−CO−O−二価の芳香族基−O−CO−NH−二価の脂肪族基−
L16:−CO−O−二価の脂肪族基−O−CO−NH−二価の脂肪族基−
具体的には、以下の陰イオンが挙げられる。
更にY2は前記L3であり、R21、R22がメチル基であり、L21が炭素数4の直鎖アルキレン基であり、かつA−がスルホナートの組み合わせがより好ましい。
一般式(a2−1)で表される双性イオン構造として、具体的には下記構造を挙げることができる。
Y2は、前記一般式(a2−1)のY2と同義であり、好ましい例も同じである。
E+は、カチオンを有する構造を表し、好ましくはアンモニウム、又はホスホニウムを有する構造を表す。特に好ましくはアンモニウムを有する構造である。カチオンを有する構造の例としては、トリメチルアンモニオ基、トリエチルアンモニオ基、トリブチルアンモニオ基、ベンジルジメチルアンモニオ基、ジエチルヘキシルアンモニオ基、(2−ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニオ基、ピリジニオ基、N−メチルイミダゾリオ基、N−アクリジニオ基、トリメチルホスホニオ基、トリエチルホスホニオ基、トリフェニルホスホニオ基などが挙げられる。
*は高分子化合物の主鎖と連結する部位を表す。
L22、Y2、E+の最も好ましい組み合わせは、L22が炭素数2〜4のアルキレン基であり、Y2は前記L1又はL3であり、E+はトリメチルアンモニオ基又はトリエチルアンモニオ基、である。
一般式(a2−2)で表される双性イオン構造として、具体的には、下記の構造を挙げることができる。
メタクリル酸エステル類としては、アルキルメタクリレート(該アルキル基の炭素原子は1〜20のものが好ましく、より具体的には、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロルベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートなど)、アリールメタクリレート(例えば、フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなど)が挙げられる。
スチレン類としては、スチレン、アルキルスチレン(例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオルメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレンなど)、アルコキシスチレン(例えばメトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレンなど)、ハロゲン含有スチレン(例えばクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレンなど)が挙げられる。
その他の具体例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等も挙げられる。
本発明における重合開始剤としてはラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。ラジカル重合開始剤としては、当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、トリハロメチル化合物、カルボニル化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素化合物、ジスルホン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、鉄アレーン錯体が挙げられる。重合性組成物の用途によって、好ましい重合開始剤が異なるが、平版印刷版原版用としては、なかでも、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、オニウム塩、トリハロメチル化合物及びメタロセン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、特にヘキサアリールビイミダゾール化合物及びオニウム塩が好ましい。着色しないことが要件となる防汚性部材用などにはカルボニル化合物が好ましい。上記のラジカル重合開始剤は、2種以上を適宜併用することもできる。
ヘキサアリールビイミダゾール系化合物は、後述する350〜450nmの波長域に極大吸収を有する増感色素と併用して用いることが特に好ましい。
本発明における重合性組成物中の重合開始剤の使用量は重合性組成物全固形分の質量に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%である。更に好ましくは1.0質量%〜10質量%である。
本発明に用いられる重合性組成物は(C)増感色素、及び(D)重合性化合物を含有することが好ましい。
本発明の重合性組成物に用いられる増感色素としては、画像露光時の光を吸収して励起状態となり、前述の重合開始剤に電子移動、エネルギー移動又は発熱などでエネルギーを供与し、重合開始機能を向上させるものであれば特に限定せず用いることができる。特に、350〜450nm又は750〜1400nmの波長域に極大吸収を有する増感色素が好ましく用いられる。
一般式(III)中、R15〜R32は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。但し、R15〜R24の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコキシ基を表す。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
本発明における重合性組成物に用いる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物などの化学的形態をもつ。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。これらは、特表2006−508380号公報、特開2002−287344号公報、特開2008−256850号公報、特開2001−342222号公報、特開平9−179296号公報、特開平9−179297号公報、特開平9−179298号公報、特開2004−294935号公報、特開2006−243493号公報、特開2002−275129号公報、特開2003−64130号公報、特開2003−280187号公報、特開平10−333321号公報、を含む参照文献に記載されている。
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (b)
(ただし、R4及びR5は、H又はCH3を示す。)
本発明の平版印刷版原版は、上記の重合性組成物を含有する画像記録層を有する平版印刷版原版である。この平版印刷版原版は、必要に応じて、支持体と画像記録層の間に下塗り層を、画像記録層の上に保護層を有することができる。
本発明における画像記録層は、上記重合性組成物を含有するが、更に必要に応じて、その他の化合物を含有することができる。以下、それらの化合物について説明する。
本発明の画像記録層には、画像記録膜強度を向上させるため、ポリマーバインダーを用いることができる。本発明に用いることができるポリマーバインダーは、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有するポリマーが好ましい。なかでも、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
これらのポリマーは例えば、国際公開第2003/087939号パンフレットに記載されているような微粒子であってもよく、平均粒径は30nm〜1000nmが好ましく、より好ましくは60nm〜300nmである。
本発明では、機上現像性を向上させるため、疎水化前駆体を用いることができる。本発明における疎水化前駆体とは、熱が加えられたときに画像記録層を疎水性に変換できる微粒子を意味する。微粒子としては、疎水性熱可塑性ポリマー微粒子、熱反応性ポリマー微粒子、重合性基を有するポリマー微粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及びミクロゲル(架橋ポリマー微粒子)から選ばれる少なくともひとつであることが好ましい。なかでも、重合性基を有するポリマー微粒子及びミクロゲルが好ましい。
このようなポリマー微粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。
本発明における画像記録層は、耐刷性を低下させることなく機上現像性を向上させるために、低分子親水性化合物を含有してもよい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリオール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類、等が挙げられる。
これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の画像記録層には、着肉性を向上させるために、画像記録層にホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマーなどの感脂化剤を用いることができる。特に、保護層に無機質の層状化合物を含有させる場合、これらの化合物は、無機質の層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機質の層状化合物による印刷途中の着肉性低下を防止する。
30質量%ポリマー溶液3.33g(固形分として1g)を、20mlのメスフラスコに秤量し、N−メチルピロリドンでメスアップする。この溶液を30℃の恒温槽で30分間静置し、ウベローデ還元比粘度管(粘度計定数=0.010cSt/s)に入れて30℃にて流れ落ちる時間を測定する。なお測定は同一サンプルで2回測定し、その平均値を算出する。同様にブランク(N−メチルピロリドンのみ)の場合も測定し、下記式から還元比粘度(ml/g)を算出した。
(1)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90 Mw4.5万)
(2)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80 Mw6.0万)
(3)2−(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70 Mw4.5万)
(4)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2−エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80 Mw6.0万)
(5)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60 Mw7.0万)
(6)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比 25/75 Mw6.5万)
(7)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80 Mw6.5万)
(8)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13−エチル−5,8,11−トリオキサ−1−ヘプタデカンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80 Mw7.5万)
(9)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート/2−ヒドロキシ−3−メタクロイルオキシプロピルメタクリレート共重合体(モル比15/80/5 Mw6.5万)
画像記録層は、更に連鎖移動剤を含有することができる。連鎖移動剤としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、若しくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。
画像記録層には、特に、チオール化合物(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類、2−メルカプトベンズチアゾール類、2−メルカプトベンズオキサゾール類、3−メルカプトトリアゾール類、5−メルカプトテトラゾール類、等)を連鎖移動剤として好ましく用いることができる。
連鎖移動剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して1〜10質量%が好ましい。
更にその他の成分として、界面活性剤、着色剤、焼き出し剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機微粒子、無機質層状化合物などを添加することができる。具体的には、特開2008−284817号公報の段落番号[0114]〜[0159]、特開2006−091479号公報の段落番号[0023]〜[0027]、米国特許公開2008/0311520号明細書[0060]に記載の化合物及び添加量が好ましい。
本発明を平版印刷版原版に適用した場合、画像記録層は、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0142]〜[0143]に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、これを支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することで形成される。塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/m2が好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
また、画像記録層は、露光後に印刷機上で印刷インキ及び湿し水の少なくとも一方が供給されることによって未露光部が除去されることが好ましく、画像記録層中の各成分の種類及び量の少なくとも一方を、適宜、調整することにより、このような画像記録層を構成することができる。
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある)を設けることが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわず現像性を向上させるのに寄与する。
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層の上に保護層(オーバーコート層)を設けることが好ましい。保護層は酸素遮断によって画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止、及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
変性ポリビニルアルコールとしては、カルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005−250216号公報、特開2006−259137号公報記載の変性ポリビニルアルコールが好適に挙げられる。
また、保護層には、可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御する無機微粒子など公知の添加物を含むことができる。また、画像記録層の説明に記載した感脂化剤を保護層に含有させることもできる。
本発明の平版印刷版原版の支持体には、公知の支持体が用いられる。なかでも、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。
また、上記アルミニウム板は必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、及び米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケートあるいは米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸などによる表面親水化処理を適宜選択して行うことができる。
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。
本発明における平版印刷版原版を画像露光して現像処理を行うことで平版印刷版を作製する。現像処理としては、(1)アルカリ現像液(pHが11より大きい)にて現像する方法、(2)pHが2〜11の現像液にて現像する方法、(3)印刷機上で、湿し水及び/又はインキを加えながら現像する方法(機上現像)が挙げられるが、本発明においては、(2)pHが2〜11の現像液にて現像する方法、(3)印刷機上で、湿し水及び/又はインキを加えながら現像する方法(機上現像)が好ましい。
機上現像は、画像露光後の平版印刷版原版を、なんらの現像処理を施すことなく、印刷機に装着したのち、油性インキと水性成分とを供給して印刷を開始することによって行う。すなわち、この印刷途上の初期段階で、油性インキ及び/又は水性成分により未露光領域の画像記録層が溶解又は分散して除去され、親水性支持体表面が露出して非画像部が形成される。一方、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する印刷インキ受容部(画像部)を形成する。その結果、湿し水は露出した親水性の表面に付着し、印刷インキは露光領域の画像記録層に着肉して通常の印刷が可能になる。
ここで、最初に版面に供給されるのは、湿し水でもよく、印刷インキでもよいが、湿し水が除去された画像記録層成分によって汚染されることを防止する点で、最初に印刷インキを供給するのが好ましい。
(1)のアルカリ現像液を用いた通常の現像工程においては、前水洗工程により保護層を除去し、次いでアルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを水洗除去し、ガム液処理を行い、乾燥工程で乾燥するが、本発明の平版印刷版原版を用いてpH2〜11の現像液で現像する場合は、保護層及び非露光部の画像記録層を一括除去した後、直ちに印刷機にセットして印刷することができる。このようなpH2〜11の現像液は、現像液中に界面活性剤及び/又は不感脂化性の水溶性ポリマーを含有することにより、現像とガム液処理を同時に行うことができ、アルカリ現像後に行われていた後水洗工程は特に必要とせず、一液で現像とガム液処理を行ったのち、乾燥工程を行うことができる。乾燥は、現像及びガム処理の後に、スクイズローラを用いて余剰の現像液を除去した後、行うことが好ましい。すなわち、一液による現像・ガム処理−乾燥という大幅に簡略された処理工程(ガム現像)が可能となる。
本発明における現像は、常法に従って、液温0〜60℃、好ましくは15〜40℃で、画像露光した平版印刷版原版を、例えば、現像液に浸漬してブラシで擦る方法、スプレーにより現像液を吹き付けてブラシで擦る方法等により行う。
上記現像液に用いられる両性イオン系界面活性剤は、特に限定されず、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタインなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系等が挙げられる。特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。これらの具体例は、特開2008−203359号の段落番号[0255]〜[0278]、特開2008−276166号の段落番号[0028]〜[0052]等に記載されている。更に好ましい具体例としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウリン酸アミドプロピルジメチルベタイン、N−ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
pH緩衝剤としては、pH2〜11に緩衝作用を発揮する緩衝剤であれば特に限定なく用いることができる。本発明においては弱アルカリ性の緩衝剤が好ましく用いられ、例えば(a)炭酸イオン及び炭酸水素イオン、(b)ホウ酸イオン、(c)水溶性のアミン化合物及びそのアミン化合物のイオン、及びそれらの併用などが挙げられる。すなわち、例えば(a)炭酸イオン−炭酸水素イオンの組み合わせ、(b)ホウ酸イオン、又は(c)水溶性のアミン化合物−そのアミン化合物のイオンの組み合わせなどが、現像液においてpH緩衝作用を発揮し、現像液を長期間使用してもpHの変動を抑制でき、pHの変動による現像性低下、現像カス発生等を抑制できる。特に好ましくは、炭酸イオン及び炭酸水素イオンの組み合わせである。
現像液に含有する有機溶剤は、2種以上を併用することもできる。
上記の現像処理に先立って、平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光される。
望ましい光源の波長は350nmから450nm又は750nmから1400nmの波長が好ましく用いられる。350nmから450nmの場合は、この領域に吸収極大を有する増感色素を画像記録層に有する平版印刷版原版が用いられ、750nmから1400nmの場合は、この領域に吸収を有する増感色素である赤外線吸収剤を含有する平版印刷版原版が用いられる。350nmから450nmの光源としては、半導体レーザーが好適である。750nmから1400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。
赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10〜300mJ/cm2であるのが好ましい。
レーザーにおいては、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。
機上現像型の平版印刷版原版の場合は、画像露光後、そのまま印刷機の版胴に装着して印刷を開始する。レーザー露光装置付きの印刷機の場合は、平版印刷版原版を印刷機の版胴に装着したのち画像露光される。
本発明における防汚性部材、防曇性部材とは、本発明の重合性組成物を重合硬化させた良好な防汚性、防曇性を有する重合硬化膜を備えた部材をいう。本発明の重合性組成物から得られる重合硬化膜は、架橋膜であり、更にウレア構造間の水素結合の形成によって高強度の硬化膜となっているため、高親水性成分を有しているにもかかわらず、水による膨潤を受けにくく、耐傷性が高い。このため、この重合硬化膜を有する部材は、防汚性部材、防曇性部材として使用することができる。その好ましい態様と使用形式を詳細に説明する。
前記本発明の重合性組成物から得られる重合硬化膜は、高い親水性とその持続性を有するため、部材表面に硬化膜を形成することで、部材表面への油性汚れの付着を防止することができる。すなわち、その高い表面親水性により、油性の汚れ、例えば、人が使用することによって付着する指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れ、あるいは、工場や調理設備における油性の汚れが、その表面に付着し難くなり、あるいは、付着した場合でも、拭き取りや水洗などにより容易に除去できるようになる。
本発明の防汚性部材は、重合性組成物を、適切な基材上に塗布し、乾燥したのち、光照射によって塗膜を硬化膜にすることにより得ることができる。
本発明の防汚性部材の一般的な応用例としては、反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡レンズ、鏡等の光学部材の表面における使用が挙げられる。
例えば、特に光学部材に使用する場合には、透明な基材が好ましく、その材質はガラスや、酸化チタン、ITO(Indium Tin Oxide)等の金属酸化物;フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等の金属ハロゲン化物;などで形成した無機化合物層を備えたガラス板等の無機基材や、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、あるいは、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系樹脂などの可視光透過性のプラスチック類や、前記ガラス板に積層したのと同様の無機化合物層を有する透明プラスチック板等が好適に利用できる。
また、重合性組成物溶液を基材に塗布する前に、必要に応じて、基材表面を表面処理したり、下塗り層を設けたりすることができる。表面処理及び下塗り処理の方法としては、特開2009−256575号公報に記載の方法が挙げられる。
前記本発明の重合硬化膜を有する部材は、高い親水性とその持続性を表面に有するので、部材表面の結露による水滴の付着を効果的に防止することができ、防曇部材として有用である。すなわち、親水性膜により高い親水性を有する表面は、温度や湿度の影響で大気中の水蒸気が結露して表面に付着した場合でも、表面に水滴を形成することなく、速やかに拡散することから、表面の曇りを抑制することができる。
このため、本発明の上記部材は、反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡レンズ、鏡等の光学部材、あるいは、視認性を必要とする窓ガラスや車両ガラスなどにおいて、防曇部材として好適に使用しうる。
防曇性部材に適用可能な基材は、先に防汚性部材において挙げたものと同様であり、また、用途も同様である。防汚性部材の用途として挙げた態様において、油性汚れの付着のみならず、高い親水性による結露の防止を必要とする部材に、本発明は好適に使用することができる。
ない。なお、高分子化合物の分子量は質量平均モル質量(Mw)であり、本発明の特定高
分子化合物及び比較用高分子化合物についての繰り返し単位の比率はモル百分率、その他
の高分子化合物についての繰り返し単位の比率はモル百分率である。なお、実施例12、13は「参考例」と読み替えるものとする。
(1)N−アミノエチルメタクリルアミドの合成
エチレンジアミン24.04g(0.4mol)を、メタノール100ml及び蒸留水96gに溶解させ、氷冷しながら、5.0M塩酸104g(0.52mol)を加える。−10℃を維持しながら、メタクリル酸無水物61.65gを滴下し、滴下後、−10℃で2時間攪拌する。その後、酢酸エチル400mlを加えて抽出を行い、水層を集める。集めた水層に、水酸化ナトリウム21g(0.52mol)を加えて、析出する白色結晶をろ過で除去し、アセトニトリル400mlで、抽出処理を行う。アセトニトリル溶液を硫酸マグネシウム40gで2時間乾燥後、アセトニトリルを留去し、14.4gのN−アミノエチルメタクリルアミドを得た。(収率28%)
N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド 130g(0.764mol)、ブタンスルトン 104g、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシ 234mgを、アセトニトリル380mlに溶解させて、70℃で6時間加熱した。放冷後、アセトン 1350ml及びメタノール150mlを加えて、室温で1時間撹拌し、析出した結晶をろ過し、アセトンで結晶をよく洗浄し、4−スルホナトブチル[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]ジメチルアンモニウム 200.0gを得た。(収率:85%)
コンデンサー、攪拌器を取り付けた500mlフラスコに、蒸留水:87.4gを入れ、窒素気流下、55℃まで加熱した。上記で合成した、N−アミノエチルメタクリルアミド 2.56g、及び、4−スルホナトブチル[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]ジメチルアンモニウム24.51g、メタクリル酸メチル 10.01g(和光純薬工業(株)製)、重合開始剤VA046B(和光純薬工業(株)製):0.965g、蒸留水:87.4gからなる溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、55℃で2時間撹拌し、重合開始剤VA046B(和光純薬工業(株)製):0.965gを加え、55℃のまま2時間更に撹拌し、特定高分子化合物(33)前駆体を得た。
上記で得られた特定高分子化合物(33)前駆体に、カレンズMOI(昭和電工(株)製) 33.51gを加え、40℃のまま6時間攪拌した。その後、析出した白色結晶物をろ過で除去し、特定高分子化合物(33)を得た。得られた特定高分子化合物(33)を、ポリエチレングリコールを標準物質としたゲルバミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量(Mw)を測定した結果、100,000であった。
また、以下に比較例で用いる比較用高分子化合物(R−1)〜(R−6)の構造を示す。
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、更に60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
次に、この板に15質量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥して支持体(1)を作製した。
その後、非画像部の親水性を確保するため、支持体(1)に2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて60℃で10秒間、シリケート処理を施し、その後、水洗して支持体(2)を得た。Siの付着量は10mg/m2であった。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
次に、上記支持体(2)上に、下記下塗り層用塗布液(1)を乾燥塗布量が20mg/m2になるよう塗布して、以下の実験に用いる下塗り層を有する支持体を作製した。
・下記構造の下塗り層用化合物(1) 0.18g
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸 0.10g
・メタノール 55.24g
・水 6.15g
上記のようにして形成された下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(1)をバー塗布した後、100℃60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層を形成した。
画像記録層塗布液(1)は下記感光液(1)及びミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し攪拌することにより得た。
・特定高分子化合物又は比較用高分子化合物〔表1記載〕 0.240g
・赤外線吸収染料(1)〔下記構造〕 0.030g
・重合開始剤(1)〔下記構造〕 0.162g
・ラジカル重合性化合物
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
(NKエステルA−9300、新中村化学(株)製) 0.192g
・低分子親水性化合物
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 0.062g
・低分子親水性化合物(1)〔下記構造〕 0.050g
・感脂化剤 ホスホニウム化合物(1)〔下記構造〕 0.055g
・感脂化剤
ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF6塩 0.018g
・感脂化剤 アンモニウム基含有ポリマー
[下記構造、還元比粘度44cSt/g/ml] 0.035g
・フッ素系界面活性剤(1)〔下記構造〕 0.008g
・2−ブタノン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
・ミクロゲル(1) 2.640g
・蒸留水 2.425g
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井化学ポリウレタン(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、及びパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA−205)の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、50℃で3時間攪拌した。このようにして得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、これを前記ミクロゲル(1)とした。ミクロゲルの平均粒径を光散乱法により測定したところ、平均粒径は0.2μmであった。
上記画像記録層上に、更に下記組成の保護層用塗布液(1)をバー塗布した後、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/m2の保護層を形成して平版印刷版原版(1)〜(20)〔実施例1〜20用〕、及び平版印刷版原版(R−1)〜(R−3)〔比較例1〜3用〕を得た。
・無機質層状化合物分散液(1) 1.5g
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、スルホン酸変性、
けん化度99モル%以上、重合度300)6質量%水溶液 0.55g
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA−405、
けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液 0.03g
・日本エマルジョン(株)製界面活性剤
(エマレックス710)1質量%水溶液 0.86g
・イオン交換水 6.0g
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
得られた平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにて、外面ドラム回転数1000rpm、レーザー出力70%、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像及び20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートを含むようにした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して機上現像した後、毎時10000枚の印刷速度で、特菱アート(76.5kg)紙に印刷を行った。
画像記録層の未露光部の印刷機上での機上現像が完了し、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測した。これらの結果を表1に示す。
60℃相対湿度60%に設定した恒温恒湿室中に4日間放置した平版印刷版原版を上記方法で露光、機上現像、印刷を行い、画像記録層の未露光部の印刷機上での機上現像が完了し、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測した。これらの結果を表1に示す。
上述した機上現像性の評価を行った後、更に印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像記録層が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン50%網点の網点面積率をグレタグ濃度計で計測した値が印刷100枚目の計測値よりも5%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。
本発明の重合性組成物から重合硬化膜を作製し、防汚性部材、防曇性部材としての評価を行った。
下記重合組成物溶液(1)を、支持体であるガラス板(遠藤科学製)に乾燥後の塗布量が1g/m2となるように塗布し、120℃、2分加熱乾燥させて支持体上に重合性組成物膜を形成した。上記重合性組成物膜を形成した支持体をバットに入れ、上面をフォーラップ(リケンテクノス(株)社製)で封じ、ラップ内を窒素で置換し、400w高圧水銀灯(UVL−400P,理工科学産業(株)製)を使用し、10分間照射した。得られた重合硬化膜を有する支持体をイオン交換水に浸漬、洗浄を行い、100℃、1分乾燥させ、重合硬化膜における架橋構造形成を促進させ、実施例21〜38用及び比較例4〜6用の防汚性、防曇性部材重合硬化膜を得た。
・特定高分子化合物又は比較用高分子化合物(表2記載の化合物) 4g
・エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート
(日本化薬社製 SR−9035) 2.7g
・イルガキュア2959 (チバガイギー(株)社製) 0.5g
・水 100g
(1)耐摩擦性の評価
得られた実施例21〜38及び比較例4〜6用の部材表面を、不織布(BEMCOT、旭化学繊維社製)で100回擦り、その前後の接触角(空中水滴接触角)を、協和界面科学(株)製、DropMaster500を用いて測定し、以下の基準で評価した。結果を下記表2に示す。
△:擦り前後の接触角の変化が1°より大きく2°以下
×:擦り前後の接触角の変化が2°より大きい
上記で得られたサンプル部材表面を水中で加重1kgをかけてスポンジ往復10回こすり処理を行い、その前後の質量変化から残膜率を測定。耐水性はこの残膜率で判断した。
△:残膜率が、60%以上、80%未満
×:残膜率が、60%未満
上記で得られたサンプル部材に、1分間水蒸気を当て、水蒸気から離した後、25℃、RH10%の環境下に配置し、部材表面の曇り具合及びその変化を観察し、下記基準により三段階で評価した。実験及び観察は室内の蛍光灯下で行った。結果を下記表2に示す。
△:曇っているが、10秒以内に回復し、曇りが見られなくなる
×:曇っており、曇りが10秒経過しても回復しない
上記で得られたサンプル部材表面に油性インク(三菱鉛筆(株)製、油性マーカー)で線を書き、水を掛け続け、インクが流れ落ちるかを下記基準で官能評価した。結果を下記表2に示す。
○:インクが1分以内に取れる
△:1分を経過した後インクが取れる
×:10分間にわたり実施してもインクがとれない
Claims (7)
- (A)(a1)下記一般式(A1)で表される繰り返し単位及び(a2)下記一般式(A2)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物、及び(B)重合開始剤を含有することを特徴とする重合性組成物。
一般式(A1)中、R 101 〜R 103 はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。Tは下記一般式(a1−1)で表される構造を表す。
一般式(a1−1)中、R11、R12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基又はカルバモイル基を表す。R13、R14、R15は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。L1は、二価の連結基を表す。Y1は単結合、又は、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。
一般式(A2)中、R 201 〜R 203 はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。Gは下記一般式(a2−1)又は(a2−2)で表される双性イオン構造を表す。
一般式(a2−1)中、R 21 及びR 22 は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、R 21 とR 22 は互いに連結し、環構造を形成してもよく、L 21 は、二価の連結基を表す。A − は、アニオンを有する構造を表す。Y 2 は、単結合、又は、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。
一般式(a2−2)中、L 22 は二価の連結基を表し、E + は、カチオンを有する構造を表す。Y 2 は、単結合、又は、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。 - 前記一般式(A1)で表される繰り返し単位の含有量が、前記高分子化合物を構成する全繰り返し単位の1〜50モル%の範囲であり、前記一般式(A2)で表される繰り返し単位の含有量が、前記高分子化合物を構成する全繰り返し単位の5〜95モル%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の重合性組成物。
- 前記一般式(A2)で表される繰り返し単位におけるGが、前記一般式(a2−1)で表される構造であり、一般式(a2−1)中、A−がスルホナートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の重合性組成物。
- 支持体上に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合性組成物を含有する画像記録層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
- 前記画像記録層が印刷インキ及び湿し水の少なくともいずれかにより除去可能であることを特徴とする請求項4に記載の平版印刷版原版。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合性組成物を硬化して得られることを特徴とする防汚性部材。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合性組成物を硬化して得られることを特徴とする防曇性部材。
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