JP5637823B2 - 位相差フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、位相差フィルムの製造方法に関する。より具体的に、本発明は、厚さ方向の位相差が負である位相差フィルム(負の位相差フィルム)の製造方法に関する。
樹脂フィルムを一軸延伸または二軸延伸して得た延伸フィルムが、画像表示分野において幅広く使用されている。その一種に、延伸による高分子鎖の配向に基づく複屈折を利用した位相差フィルムがある。位相差フィルムは、例えば、液晶表示装置(LCD)における色調補償、視野角補償に広く使用される。従来、複屈折により生じた位相差(光路長差:レターデーション)が波長の1/4であるλ/4板が、LCDに用いる位相差フィルムとして代表的である。
近年、光学的な設計技術の進歩により、また、消費者へのLCDの訴求力向上のために、様々な光学設計に対応可能な位相差フィルムが求められている。例えば、液晶表示モードの一種にインプレーンスイッチング(IPS)モードがある。IPSモードは、位相差フィルムを用いることなく広い視野角を実現できることが特長である。しかし、液晶セルの光学的な特性上、斜め方向から画面をみたときに光漏れが発生し、いわゆる「黒浮き」による表示画像のコントラストの低下が生じる。一方、IPSモードと競合する液晶表示モードに垂直配向(VA)モードがある。VAモードでは、IPSモードのような広い視野角は得られないものの、光漏れの少ない、高コントラストの画像表示が実現する。現在、VAモードにおける視野角拡大の技術が急速に進歩しており、これに対抗するために、位相差フィルムの配置によるIPSモードでの光漏れの抑制が求められている。
IPSモードの液晶セルにおける厚さ方向の屈折率は、面内方向の屈折率よりも小さい。このため、光漏れの抑制には、厚さ方向の位相差Rthが負である位相差フィルム(負の位相差フィルム)が必要となる。厚さ方向の位相差Rthは、フィルムの面内方向における主屈折率をnx、主屈折率を示す方向に直交する面内方向の屈折率をny、フィルムの厚さ方向の屈折率をnz、フィルムの厚さをdとしたときに、式Rth={(nx+ny)/2−nz}×dにより表わされる。
負の位相差フィルムを、ポリカーボネート(PC)フィルム、シクロオレフィン(COP)フィルムのような正の固有複屈折を有する樹脂フィルムから得るには、当該フィルムをその厚さ方向に延伸(Z軸延伸)しなければならない。しかし、Z軸延伸は、位相差フィルムの生産性ならびに得られた位相差フィルムにおける位相差の均一性の観点から、フィルムの面内方向の延伸に比べて未だ課題が多い。一方、負の固有複屈折を有する樹脂フィルムからは、当該フィルムをその面内方向に延伸することによって負の位相差フィルムが得られる。
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)フィルムおよびポリスチレンフィルムは、負の固有複屈折を有する。特許文献1には、これらのフィルムを面内方向に一軸延伸して得た負の位相差フィルムが開示されている。しかし、PMMAまたはポリスチレンから構成される位相差フィルムのガラス転移温度(Tg)は100℃程度であり、より高いTgが求められる用途、換言すれば、より高い耐熱性が求められる用途への使用が困難である。高い耐熱性が求められる用途として、電源、光源および回路基板のような発熱体が限られたスペースに多数集積された構造を持つ画像表示装置への使用がある。
耐熱性を向上させた位相差フィルムに、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体を含む樹脂から構成される位相差フィルムがある。当該(メタ)アクリル重合体は、例えば、分子鎖中に水酸基およびエステル基を有する重合体をラクトン環化縮合させて得た、主鎖にラクトン環構造を有する重合体(特許文献2,3参照)である。また例えば、主鎖にグルタルイミド構造を有する重合体(特許文献4参照)、主鎖に無水グルタル酸構造を有する重合体(特許文献5)である。このような(メタ)アクリル重合体を含む樹脂は、アクリル樹脂本来の優れた光学特性、例えば、高い光線透過率および低い波長依存性を保ちながら、重合体主鎖の環構造によるTg上昇により高い耐熱性を示す。しかし、上述した環構造を主鎖に有する(メタ)アクリル重合体は、主鎖に位置したときに正の固有複屈折を重合体に与えるという各環構造の作用のため、通常、正の固有複屈折を有する。したがって、耐熱性に関する問題は解決できるものの、フィルムの面内方向の延伸により、これらの(メタ)アクリル重合体をそのまま負の位相差フィルムとすることはできない。
特開平5-66400号公報 特開2006-96960号公報 特開2008-9378号公報 国際公開第2005/54311号 特開2006-241197号公報
主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体を用いることで位相差フィルムとしての耐熱性を向上させながら、樹脂フィルムの面内方向の延伸により負の位相差フィルムを得るには、当該樹脂フィルムを構成する樹脂の固有複屈折を負とすればよい。これには、負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位を上記(メタ)アクリル重合体へ導入して、当該重合体の固有複屈折を負とする方法、あるいは樹脂フィルムを構成する樹脂に、負の固有複屈折を有する重合体をさらに加えて、当該樹脂の固有複屈折を負とする方法が考えられる。一例として、特許文献4には、負の固有複屈折を与える作用を有するスチレン系単量体をさらに共重合させることによって、主鎖にグルタルイミド構造を有しながらも固有複屈折が負である(メタ)アクリル重合体を用いた、負の位相差フィルムが開示されている。
しかし、これらの方法をとった場合、上記(メタ)アクリル重合体に由来するTgの高さも相まって、得られた位相差フィルムが硬くなる傾向があり、位相差フィルムの折り曲げ耐性の低下、当該耐性の低下が原因である取り扱い時の破断などが生じやすい。この傾向は、一軸延伸により位相差フィルムを得た場合に特に顕著である。二軸延伸により位相差フィルムを得ることで、この「硬さ」は緩和される。しかし、単なる二軸延伸では、面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthともに、光学補償用の位相差フィルムとして使用するには不十分な位相差しか得られない。
本発明は、負の位相差フィルムの製造方法であって、当該フィルムを構成する樹脂のTgの高さに基づく高い耐熱性を示しながらも、折り曲げ耐性に優れ、面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthともに十分な位相差を有する位相差フィルムを、樹脂フィルムの面内方向の延伸によって製造する方法を提供することを目的とする。
本発明の位相差フィルムの製造方法は、帯状の樹脂フィルムを当該樹脂フィルムの面内方向に多段延伸して位相差フィルムを形成する方法であって、前記樹脂フィルムが、110℃以上のガラス転移温度Tgおよび負の固有複屈折を有する樹脂から構成され、前記樹脂が、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体を含み、前記多段延伸が、前記帯状の樹脂フィルムの流れ方向の延伸である縦延伸と、前記帯状の樹脂フィルムの幅方向の延伸である横延伸と、を含み、前記多段延伸を、以下の(1)または(2)のように行い、波長589nmの光に対する面内位相差Reが50nm以上300nm以下、当該光に対する厚さ方向の位相差Rthが−300nm以上−30nm以下の位相差フィルムを形成する、方法である。(1)延伸温度(Tg+20)℃以上で縦延伸した後に、延伸温度(Tg+20)℃未満で横延伸する。(2)延伸温度(Tg+15)℃以上で縦延伸した後に、(Tg+20)℃以上で熱処理し、さらに延伸温度(Tg+20)℃未満で横延伸する。
本発明によれば、厚さ方向の位相差Rthが負の位相差フィルム、すなわち、負の位相差フィルムであって、当該フィルムを構成する樹脂のTgの高さに基づく高い耐熱性を示しながらも、折り曲げ耐性に優れ、面内位相差Reが50nm以上300nm以下、厚さ方向の位相差Rthが−300nm以上−30nm以下であるReおよびRthともに十分な位相差を有する位相差フィルムを、原反となる帯状の樹脂フィルムの面内方向の延伸によって、製造できる。
本明細書における「樹脂」は「重合体」よりも広い概念である。樹脂は、例えば1種または2種以上の重合体から構成されてもよいし、必要に応じて、重合体以外の材料、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、フィラーなどの添加剤、相溶化剤、安定化剤などを含んでいてもよい。ただし、樹脂が2種以上の重合体から構成される場合、位相差フィルムとしての使用のために、重合体同士は互いに相溶する必要がある。
[位相差フィルムの製造方法]
本発明の製造方法では、帯状の樹脂フィルム(原反)を、その面内方向に多段延伸して位相差フィルムを形成する。原反は、110℃以上のガラス転移温度(Tg)および負の固有複屈折を有する樹脂から構成される。当該樹脂の特性を反映して、原反のTgは樹脂のTgに等しく、原反の固有複屈折は負である。
重合体の固有複屈折の正負は、当該重合体の分子鎖が一軸配向した層(例えば、当該重合体から構成される一軸延伸フィルム)において、当該層の主面に垂直に入射した光のうち、当該層における分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な振動成分に対する「層の屈折率n1」から、配向軸に垂直な振動成分に対する「層の屈折率n2」を引いた値「n1−n2」に基づいて判断できる。固有複屈折の値は、各々の重合体に対して、その分子構造に基づく計算を行うことにより求めることができる。樹脂の固有複屈折の正負は、当該樹脂に含まれる各重合体により生じる複屈折の兼ね合いにより決定される。一の重合体からなる樹脂の固有複屈折の正負は、当該重合体の固有複屈折の正負と同一である。
樹脂のガラス転移温度(Tg)はJIS K7121に準拠して求めることができる。樹脂が2種以上の重合体から構成される場合においても、当該重合体同士は互いに相溶しているため、測定されるTgは基本的に1点である。重合体に基づくTgが2点以上測定される場合には、樹脂における各重合体の含有率(重量%)を基準として各Tgの加重平均を求め、これを樹脂のTgとすればよい。添加剤等については、それが低分子である場合、樹脂のTgに影響を与えない。添加剤がポリマー成分を有する粒子、例えば、機械的特性の向上を目的として位相差フィルムに加えられるゴム質粒子である場合、当該粒子に由来するTgが測定される場合がある。しかし、この場合、これらの粒子に由来するTgと、フィルムを構成する重合体に由来するTgとは容易に区別することが可能であり、後者を樹脂のTgとすればよい。
本発明の製造方法で実施する多段延伸は、帯状の樹脂フィルムである原反の流れ方向(長手方向、延伸機への原反の搬送方向でもある)の延伸である縦延伸と、原反の幅方向の延伸である横延伸と、を含む。当該多段延伸は、以下の(1)または(2)のように行う必要がある。
(1)延伸温度(Tg+20)℃以上で縦延伸した後に、延伸温度(Tg+20)℃未満で横延伸する;
(2)延伸温度(Tg+15)℃以上で縦延伸した後に、(Tg+20)℃以上で熱処理し、さらに延伸温度(Tg+20)℃未満で横延伸する。
本発明の製造方法では、(1)または(2)が満たされるとともに、本発明の効果が得られる限り、多段延伸の前後に任意の工程を実施できる。当該工程は、延伸および熱処理を含む工程であってもよく、このさらなる延伸および熱処理は、(1)、(2)で定める延伸条件および熱処理条件に従わなくてもよい。本発明の効果をより確実に得る観点からは、位相差フィルムを形成するための最後の延伸が、(1)、(2)の横延伸であることが好ましい。なお、これ以降、「縦延伸」および「横延伸」は、それぞれ、(1)または(2)の縦延伸および横延伸を意味する。
延伸温度の基準となるTgは、原反および原反を構成する樹脂のガラス転移温度である。
熱処理では、縦延伸および横延伸とは異なり、樹脂フィルムは延伸されない。ただし、熱処理時に樹脂フィルムが弛むことがあり、その場合、弛み解消のための操作(例えば、テンター横延伸機におけるクリップの微調整)を行うことができる。
位相差フィルムが示す位相差ならびに位相差フィルムの折り曲げ耐性は、当該フィルムを構成する樹脂に含まれる重合体の配向の状態により決まる。重合体の配向の状態は、延伸時または熱処理時の温度に大きく影響を受けるが、重合体の分子鎖の挙動がTgで変化するために、特にTg近傍の温度の変化に敏感であることが知られている。本発明では、Tgよりも高温側に離れた温度である(Tg+20)℃を基準に((2)の縦延伸については(Tg+15)℃を基準に)多段延伸の条件を定め((2)については、さらに熱処理の条件を定め)、フィルムを構成する樹脂のTgの高さに基づく耐熱性を示しながらも、折り曲げ耐性に優れ、面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthともに十分な位相差を有する、負の位相差フィルムを得る。
本発明の製造方法において、横延伸の前に実施される縦延伸は、折り曲げ耐性に優れる位相差フィルムを得るために必須である。
(1)では、(Tg+20)℃以上の延伸温度で縦延伸する。これにより、後の横延伸による位相差の発現が阻害されず、十分な位相差を有する位相差フィルムとなる。(Tg+20)℃未満の延伸温度で縦延伸すると、縦延伸時に生じた位相差によって、後の横延伸時に発現する位相差が打ち消され、十分な位相差を有する位相差フィルムが得られない。縦延伸の延伸温度の上限は特に限定されないが、例えば、(Tg+60)℃である。延伸温度が(Tg+60)℃を超えると、延伸時における原反の弛みが大きくなり、延伸機内部の部材と原反とが接触したり、原反が破断したりするおそれがある。縦延伸の延伸温度は、例えば、(Tg+20)℃以上(Tg+60)℃以下であり、(Tg+30)℃以上(Tg+50)℃以下が好ましい。
(2)では、(Tg+15)℃以上の延伸温度で縦延伸する。(2)では、当該縦延伸後、(Tg+20)℃以上で熱処理するため、(1)よりもやや低い温度域での縦延伸が可能となる。当該縦延伸とすることにより、後の横延伸による位相差の発現が阻害されず、十分な位相差を有する位相差フィルムとなる。(Tg+15)℃未満の延伸温度で縦延伸すると、縦延伸時に生じた位相差によって、後の横延伸時に発現する位相差が打ち消され、十分な位相差を有する位相差フィルムが得られない。縦延伸の延伸温度の上限は特に限定されないが、(1)と同様に、例えば、(Tg+60)℃である。縦延伸の延伸温度は、例えば、(Tg+15)℃以上(Tg+60)℃以下である。
縦延伸の延伸倍率は特に限定されず、1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上5倍以下がより好ましく、1.3倍以上3倍以下がさらに好ましい。具体的な倍率は延伸温度ならびに原反を構成する樹脂の組成などによって変化するが、延伸倍率が過度に小さい場合、実質的に横延伸のみが実施されることになり、折り曲げ耐性に優れる位相差フィルムが得られないことがある。一方、延伸倍率が過度に大きい場合、原反が破断するおそれがある。
縦延伸の方法は限定されず、例えば、オーブン延伸、ロール延伸である。
オーブン延伸には、オーブン縦延伸機を使用する。オーブン縦延伸機は、例えば、オーブンと、原反の搬送ロールとから構成される。搬送ロールは、通常、オーブンの外側であって、オーブンの入口(当該オーブンへの原反の送り込み口)および出口(当該オーブンからの原反の排出口)近傍に配置される。入口側の搬送ロールと、出口側の搬送ロールとの間に周速差をつけることにより、原反はその流れ方向に延伸される。
ロール延伸には、ロール縦延伸機を使用する。ロール縦延伸機は、例えば、原反を加熱可能な多数のロールまたはニップロール(これらは予熱ロールとして機能する)と、原反を冷却可能な多数のロールまたはニップロール(これらは冷却ロールとして機能する)とから構成される。この延伸機に送られた原反は、多数の予熱ロールに次々と接触しながら延伸温度にまで予熱され、冷却ロールとの間に設けられた延伸区間においてその流れ方向に延伸された後、多数の冷却ロールに次々と接触して冷却される。
ロール縦延伸機を使用する場合、延伸区間後に配置された上記冷却ロールを、縦延伸後の原反を延伸することなく所定の温度に保持する加熱ロール(熱処理ロール)として使用することも可能である。このとき、例えば、縦延伸機における当該ロールが配置された区間を熱処理ゾーンとして、(2)の多段延伸における縦延伸後の熱処理を、当該縦延伸機により実施できる。
本発明の製造方法では、縦延伸に、公知の縦延伸機を使用できる。
本発明の製造方法において、縦延伸後に実施される横延伸は、折り曲げ耐性に優れるとともに、十分な位相差を有する位相差フィルムを得るために必須である。延伸によって、延伸した方向と直交する方向の折り曲げ耐性が向上する。すなわち、縦延伸および横延伸によって、フィルム面内の折り曲げ耐性を、縦方向および横方向ともに向上させることができる。縦延伸と横延伸とは、連続的に実施しても、個別に実施してもよい。縦延伸を経た原反を、その温度を保持したまま引き続いて横延伸しても、一度冷却した後に横延伸してもよい。縦延伸を経た原反を巻回して、一度巻物の状態とした後に横延伸を行ってもよい。
(1)、(2)ともに、横延伸は(Tg+20)℃未満で行う。これにより、折り曲げ耐性に優れるとともに、十分な位相差を有する位相差フィルムとなる。(Tg+20)℃以上の延伸温度で横延伸すると、十分な位相差を有する位相差フィルムが得られない。横延伸の延伸温度の下限は特に限定されないが、例えば、(Tg−10)℃である。延伸温度が(Tg−10)℃未満になると、原反の破断が起こりやすくなる。横延伸の延伸温度は、例えば、(Tg−10)℃以上(Tg+20)℃未満であり、(Tg−5)℃以上(Tg+15)℃以下が好ましい。
横延伸の延伸倍率は特に限定されず、1.2倍以上が好ましく、1.3倍以上5倍以下がより好ましく、1.5倍以上4倍以下がさらに好ましい。具体的な倍率は延伸温度ならびに原反を構成する樹脂の組成などによって変化するが、延伸倍率が過度に小さい場合、折り曲げ耐性に優れ、十分な位相差を有する位相差フィルムが得られないことがある。一方、延伸倍率が過度に大きい場合、原反が破断するおそれがある。
横延伸の方法は限定されない。横延伸は、テンター法により行うことが好ましい。
テンター法による延伸には、テンター延伸機を使用する。延伸機はグリップ式であってもピン式であってもよいが、延伸時における原反の引き裂けが生じにくいことから、グリップ式が好ましい。グリップ式のテンター延伸機は、例えば、オーブンと、横延伸に用いるクリップ走行装置とから構成される。クリップ走行装置は、原反の横端部を掴むクリップを備えており、当該クリップで原反の横端部を掴んだ状態で原反を搬送する。その際、クリップ走行装置のガイドレールを開いて、左右2列のクリップ間の距離を広げることにより、原反はその幅方向に延伸される。
本発明の製造方法では、横延伸に、公知の横延伸機を使用できる。
(1)の場合、縦延伸と横延伸との間で、延伸温度の温度差が5℃以上あることが好ましく、当該温度差は10℃以上60℃以下がより好ましく、20℃以上50℃以下がさらに好ましい。当該温度差が5℃未満では、十分な位相差を有する位相差フィルムを得られないことがある。一方、当該温度差が60℃を超えると、位相差フィルムの製造が難しくなり、大量生産に適した製造方法ではなくなる。
(2)の場合、縦延伸と横延伸との間に熱処理が実施されるため、縦延伸と横延伸との間の延伸温度の温度差は、(1)の場合ほど、得られる位相差フィルムの特性に影響を与えない。
(2)では、縦延伸の後、横延伸の前に、(Tg+20)℃以上での熱処理を行う。これにより、後の横延伸により位相差の発現が阻害されず、十分な位相差を有する位相差フィルムとなる。熱処理の温度の上限は特に限定されないが、例えば、(Tg+60)℃である。熱処理の温度が(Tg+60)℃を超えると、熱処理時における原反のたるみが大きくなり、熱処理機内部の部材と原反とが接触したり、原反が破断したりするおそれがある。熱処理の温度は、例えば、(Tg+20)℃以上(Tg+60)℃以下であり、(Tg+22)℃以上(Tg+50)℃以下が好ましい。
熱処理の方法は限定されない。熱処理には、公知の熱処理機および延伸機を使用できる。
本発明の製造方法において、(2)の熱処理は、横延伸を実施する横延伸機を用いて行うことが好ましい。その際、熱処理と横延伸とを連続的に行うことが好ましく、原反の温度を横延伸の延伸温度よりも低い温度に冷却することなく連続的に行うことがより好ましい。一方、縦延伸と熱処理とは、連続的に実施しても、個別に実施してもよい。縦延伸を経た原反を、その温度を保持したまま引き続いて熱処理しても、一度冷却した後に熱処理してもよい。縦延伸を経た原反を巻回して、一度巻物の状態とした後に熱処理を行ってもよい。
横延伸機により熱処理および横延伸を連続的に行う方法は限定されない。例えば、当該延伸機において原反が通過する一部の区間を熱処理ゾーン、他の一部の区間を横延伸ゾーンとし、各ゾーンにおける設定温度を、それぞれ熱処理温度および延伸温度とした上で、各ゾーンを原反が連続的に通過するように原反を搬送すればよい。
縦延伸および横延伸の延伸温度は、延伸機内において原反が延伸されるゾーンの雰囲気温度、典型的には、延伸機における当該ゾーンの設定温度である。熱処理の温度は、熱処理を行う装置、例えば延伸機、の内部において原反が熱処理されるゾーンの雰囲気温度、例えば、延伸機における当該ゾーンの設定温度である。
横延伸は、原反の幅方向の延伸であって、延伸温度が互いに異なる前段および後段の2つの延伸を含む工程により行うことが好ましい。延伸条件の詳細により効果の程度は異なるが、これにより、形成した位相差フィルムにおける重合体の配向が安定し、当該位相差フィルムの厚みムラ、位相差ムラが軽減する。また、形成した位相差フィルムにおける光軸ムラが軽減し、光軸精度ΔRが向上する。さらに、形成した位相差フィルムにおける位相差の長期安定性が向上する。
その一つの方法は、前段の延伸の延伸温度をT1℃としたときに、後段の延伸の延伸温度T2℃を(T1−12)℃以上(T1−2)℃以下とし;前段の延伸の延伸倍率を、横延伸全体としての延伸倍率の50%以上95%以下に設定し;後段の延伸の延伸倍率を、横延伸全体としての延伸倍率の5%以上50%以下に設定する方法である。
前段の延伸の延伸倍率は、横延伸全体としての延伸倍率の55%以上90%以下が好ましく、65%以上90%以下がより好ましい。後段の延伸の延伸倍率は、横延伸全体としての延伸倍率の10%以上45%以下が好ましく、10%以上35%以下がより好ましい。
後段の延伸の延伸倍率は、前段の延伸を行う前の原反のサイズを基準とする。前段および後段の延伸の延伸倍率の合計は、横延伸全体としての延伸倍率に等しい。以降に示す「これとは別の方法」においても同様である。
後段の延伸の延伸温度T2℃は、(T1−10)℃以上(T1−4)℃以下が好ましく、(T1−9)℃以上(T1−5)℃以下がより好ましい。
この方法は、(1)の場合に行うことが好ましい。
これとは別の方法は、前段の延伸の延伸温度をT3℃としたときに、後段の延伸の延伸温度T4℃を(T3−11)℃以上(T3−6)℃とし;前段の延伸の延伸倍率を、横延伸全体としての延伸倍率の95%以上103%以下に設定し;後段の延伸の延伸倍率を、横延伸全体としての延伸倍率の−3%以上5%以下に設定する方法である。なお、前段および後段の延伸の延伸倍率が、それぞれ、横延伸全体としての延伸倍率の100%および0%である場合、後段の延伸は、原反(帯状の樹脂フィルム)を当該フィルムの幅方向に延伸した後に、当該延伸による延伸量に相当する量を当該フィルムの幅方向に収縮させる方法により行う必要がある。換言すれば、後段の延伸では、原反を一度は実際に延伸する必要がある。
延伸倍率がマイナスの値である場合、原反をその幅方向に収縮させていることを意味するが、後段の延伸の延伸温度は前段の延伸の延伸温度よりも低く、温度の低下によって原反に収縮力が働くため、このような場合においても、延伸時と同様、原反の幅方向に張力が働く。
前段の延伸の延伸倍率は、横延伸全体としての延伸倍率の95%以上100%未満が好ましく、95%以上99%以下がより好ましい。後段の延伸の延伸倍率は、横延伸全体としての延伸倍率の0%を超え5%以下が好ましく、1%以上5%以下がより好ましい。
この方法は、(2)の場合に行うことが好ましい。
当該方法において、後段の延伸を、原反(帯状の樹脂フィルム)を当該フィルムの幅方向に延伸した後に、当該フィルムの幅方向に収縮させて行うことが好ましい。これにより、形成した位相差フィルムにおける重合体の配向がさらに安定する。そして、当該位相差フィルムの厚みムラ、位相差ムラ、光軸ムラが軽減する。特に、光軸ムラおよび位相差の長期安定性に対する効果が著しい。例えば、形成した位相差フィルムにおける光軸精度ΔRは非常に小さく、0°近傍の値となる。このような非常に小さい光軸精度ΔRを有する位相差フィルムは、LCDなどの画像表示装置、特に画像表示面積が大きい大画面の画像表示装置への使用に好適である。
より具体的には、後段の延伸の延伸倍率が、横延伸全体としての延伸倍率の0%を超える場合、後段の延伸を、原反を当該フィルムの幅方向に延伸した後に、当該延伸による延伸量の一部に相当する量をその幅方向に収縮させて行うことが好ましい。
原反をその幅方向に延伸した後に、その幅方向に収縮させるとは、より具体的には、原反を、予め定めておいた、横延伸全体の延伸倍率に対する後段の延伸倍率の割合A%を超える割合A1%(A1>A)で幅方向に延伸した後に、当該延伸後の原反を、横延伸全体の延伸倍率に対する割合にして割合A2%に相当する量だけ幅方向に収縮させ、最終的に予め定めておいた割合A%での延伸とすることをいう。AとA1、A2には、A=A1−A2の関係が成立する。例えば、後段の延伸を、横延伸全体の延伸倍率の2%の延伸倍率で行う際に、3%の延伸を加えた後に1%収縮させる延伸がこれに相当する。また、後段の延伸を、横延伸全体の延伸倍率の−2%の延伸倍率で行う場合に、1%の延伸を加えた後に3%収縮させる延伸がこれに相当する。
収縮の割合A2は、例えば7%以下であり、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。これらの場合、形成した位相差フィルムにおける重合体の配向がさらに安定する。
このような後段の延伸は、当業者であれば適宜行うことができる。例えば、テンター延伸機を用いて後段の延伸を行う場合、当該延伸機におけるクリップ走行装置のガイドレールの間隔を調整し、原反の横端部を掴む左右2列のクリップ間の距離を広げた後に狭めることで実施できる。なお、クリップ間の距離を狭めた場合においても、後段の延伸の延伸温度が前段の延伸の延伸温度よりも低く、温度の低下によって原反に収縮力が働くため、クリップ間の距離を広げる場合と同様、原反の幅方向に張力が働く。
[原反]
本発明の製造方法で使用する帯状の樹脂フィルム(原反)は、110℃以上のTgおよび負の固有複屈折を有する熱可塑性樹脂(A)から構成される。原反のTgは、通常、樹脂(A)のTgと同一である。原反の固有複屈折は負である。
形成したフィルムの耐熱性の観点からは、樹脂(A)のTgは、115℃以上が好ましく、120℃以上が好ましい。Tgの上限は限定されないが、原反の成膜性および延伸性の観点から、例えば、200℃であり、180℃以下が好ましい。過度にTgが高いと、位相差フィルムの形成が難しくなる。
原反の厚さは限定されないが、50〜500μmが好ましい。原反は、典型的には未延伸の樹脂フィルムであるが、本発明の効果が得られる限り、延伸された樹脂フィルムであってもよい。原反は、単層の樹脂フィルムであっても、2以上の層が積層された積層構造を有する樹脂フィルムであってもよい。
樹脂(A)の組成は、110℃以上のTgおよび負の固有複屈折を有する限り、限定されない。樹脂(A)は、少なくとも1種の、負の固有複屈折を有する重合体を含む。
負の固有複屈折を有する重合体は限定されないが、位相差フィルムとして要求される特性を満足するために、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体などのスチレン系重合体;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの(メタ)アクリル重合体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドンなどの複素環を有するビニル系化合物に由来する構成単位を有する重合体;フルオレン骨格を有するポリカーボネート系重合体;が好ましい。なかでも、樹脂(A)が含む他の重合体、例えば、樹脂(A)として110℃以上のTgを実現する重合体、を含む場合に、当該他の重合体との相溶性に優れることから、スチレン系重合体が好ましい。
スチレン系重合体は、スチレン系単量体の重合により形成される構成単位(スチレン単位)を有する公知のスチレン系重合体である。スチレン系単量体の具体例は、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、クロロスチレンである。スチレン系重合体におけるスチレン単位の含有量は10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
スチレン系重合体の具体例は、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−マレイミド共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体である。後述する(メタ)アクリル重合体、特に、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体、との相容性に優れることから、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体に由来する構成単位を含むスチレン系重合体が好ましい。スチレン系重合体は、アクリロニトリルに由来する構成単位を含むことがより好ましく、このような重合体は、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−マレイミド共重合体である。
なお、2種以上の重合体間の相溶性は、各重合体を互いに混合して得た樹脂のTgを測定することによって確認できる。相溶性に優れる場合、樹脂(重合体組成物)のTgは1点のみ確認される。
アクリロニトリル−スチレン共重合体の全構成単位に占めるスチレン単位の割合は、60〜80重量%程度が好ましい。
アクリロニトリル−スチレン−マレイミド共重合体の全構成単位に占めるスチレン単位の割合は、55〜80重量%が好ましい。
スチレン系重合体は、グラフト鎖を有するゴム質重合体であって、当該グラフト鎖にスチレン単位を有する重合体であってもよい。このような重合体は、例えば、アクリルゴムあるいはブタジエンゴムの微粒子が存在する系において、スチレン系単量体を含む単量体群を重合することで製造できる。
上記ゴム質重合体におけるグラフト鎖は、スチレン単位以外に、アクリロニトリルの重合により形成された構成単位(アクリロニトリル単位)をさらに有することが好ましい。グラフト鎖がアクリロニトリル単位を有する場合、(メタ)アクリル重合体、特に、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体に対するゴム質重合体の相溶性が向上する。この相溶性の向上は、樹脂(A)中におけるゴム質重合体の均一な分散を実現し、形成された位相差フィルムの全光線透過率が向上する。
上記ゴム質重合体は、例えば、アクリルゴム、ブタジエンゴムまたはエチレン−プロピレンゴムの基体に、アクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフトさせたASA樹脂、ABS樹脂またはAES樹脂である。なかでも、スチレン系重合体に由来する負の固有複屈折の大きさを低下させないことから、ASA樹脂が好ましい。
スチレン系重合体の重量平均分子量Mwは、10,000〜500,000が好ましく、50,000〜300,000がより好ましい。
樹脂(A)は、負の固有複屈折を有する重合体以外に、(メタ)アクリル重合体を含んでいてもよい。この場合、形成された位相差フィルムが、(メタ)アクリル重合体に由来する優れた光学特性および機械的特性を有する。樹脂(A)としての固有複屈折が負である限り、当該(メタ)アクリル重合体の固有複屈折は正でも負でもよい。
(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単位を、全構成単位の10質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上有する重合体である。(メタ)アクリル酸エステル単位の誘導体である環構造をさらに含む重合体の場合、(メタ)アクリル酸エステル単位および環構造の合計が全構成単位の10質量%以上であれば、(メタ)アクリル重合体となり、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル単位は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル;(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル;(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル;(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル;の各単量体の重合により形成される構成単位である。(メタ)アクリル重合体は、これらの構成単位を2種以上有していてもよい。形成された位相差フィルムの熱安定性および光学特性の観点からは、(メタ)アクリル重合体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位、特にメタクリル酸メチル(MMA)単位を有することが好ましい。
(メタ)アクリル重合体は、上述した(メタ)アクリル酸エステル単位以外の構成単位を有していてもよい。当該単位は、例えば、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、クロロスチレン、酢酸ビニル;メタリルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシメチル−1−ブテンなどのアリルアルコール;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−ヒドロキシエチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル;2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾールの各単量体の重合により形成される構成単位である。(メタ)アクリル重合体は、これらの構成単位を2種以上有していてもよい。
(メタ)アクリル重合体は、主鎖に環構造を有していてもよい。このような重合体は、主鎖に位置する環構造によりTgが高く、例えば110℃以上、当該重合体が有する構成単位および環構造の種類ならびに当該重合体におけるこれらの含有率によっては、115℃以上、120℃以上、125℃以上、さらには130℃以上となる。このため、当該重合体を含む樹脂(A)のTgが、より確実に110℃以上となる。
環構造の種類によっては、当該環構造を主鎖に有する(メタ)アクリル重合体の固有複屈折が正となるが、樹脂(A)としての固有複屈折が負であればよい。これは、(メタ)アクリル重合体が、当該重合体に正の固有複屈折を与える構成単位を有することによって、正の固有複屈折を有する場合にも同様である。
環構造は、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、無水マレイン酸構造である。形成された位相差フィルムの耐熱性および光学特性の観点からは、ラクトン環構造またはグルタルイミド構造が好ましい。なお、これらの環構造は、(メタ)アクリル重合体に正の固有複屈折を与える作用を有し、当該重合体における環構造の含有率によっては、正の固有複屈折を有する(メタ)アクリル重合体となる。
上述したスチレン系重合体、(メタ)アクリル重合体ならびに主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体(B)は、公知の方法により形成できる。重合体(B)は、例えば、マレイミドまたは無水マレイン酸などの環構造を有する単量体と、(メタ)アクリルエステル単量体とを含む単量体群を共重合する方法、あるいは水酸基または酸基(例えば、カルボン酸基)といった反応性基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体とを含む単量体群を共重合した後、得られた共重合体に対して、上記反応性基が関与する環化反応を進行させて主鎖に環構造を導入する方法、により製造できる。共重合後の環化反応によって主鎖に環構造を導入させた重合体(B)が好ましい。環化反応によって導入できる環構造は、例えば、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造である。主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル重合体の具体的な製法は、例えば、特開2006-96960号公報、特開2006-171464号公報、特開2007-63541号公報に開示されている。主鎖に無水グルタル酸構造またはグルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル重合体の具体的な製法は、例えば、国際公開第2007/26659号、国際公開第2005/108438号に開示されている。
重合体(B)の主鎖に位置するラクトン環構造は、例えば、4〜8員環であり、環構造の安定性の観点から5〜6員環が好ましく、6員環がさらに好ましい。6員環のラクトン環構造は、例えば、特開2004-168882号公報に開示された構造である。環化反応によりラクトン環構造を導入する前の共重合体(前駆体)の重合収率が高い点、環構造の含有率が高い重合体(B)の形成が比較的容易である点、前駆体を形成する際における、MMAなどの(メタ)アクリルエステル単量体との共重合性が良好である点を考慮すると、ラクトン環構造は、以下の式(3)により示される構造が好ましい。
Figure 0005637823
式(3)において、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の範囲の有機残基である。有機残基は、酸素原子を含んでもよい。
有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数が1〜20の範囲のアルキル基;エテニル基、プロペニル基などの炭素数が1〜20の範囲の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数が1〜20の範囲の芳香族炭化水素基;上記アルキル基、上記不飽和脂肪族炭化水素基および上記芳香族炭化水素基において、水素原子の一つ以上が水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基;である。
式(3)に示すラクトン環構造は、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)とを含む単量体群を共重合した後、得られた共重合体における隣り合ったMMA単位とMHMA単位とを脱アルコール環化縮合させて形成できる。このとき、R1はH、R2およびR3はCH3である。
式(3)に示すラクトン環構造を主鎖に有する重合体(B)の製法は、上述した公報に開示されている。
重合体(B)のMwは、10,000〜300,000が好ましく、30,000〜300,000がより好ましく、50,000〜250,000がさらに好ましく、80,000〜200,000が特に好ましい。
樹脂(A)は、110℃以上のTgおよび負の固有複屈折を有する限り、上述した重合体以外の重合体を含んでいていてもよい。当該重合体は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのポリオレフィン;ノルボルネンなどの環状ポリオレフィン;塩化ビニル、塩素化ビニルなどの含ハロゲンポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;三酢酸セルロースなどのセルロース重合体;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;スチレン構成単位をグラフト鎖に有さないゴム質重合体である。ただし、位相差フィルムを得るために、樹脂(A)が含む他の重合体との相溶性を考慮する必要がある。
樹脂(A)は、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば、酸化防止剤、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤から構成される帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー;樹脂改質剤;可塑剤;滑剤;である。添加剤は、位相差上昇剤、位相差低減剤のような光学特性の調整剤、あるいは位相差安定剤、湿度安定剤のような光学特性の安定化剤であってもよい。樹脂(A)における添加剤の含有率は、10質量%未満が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
樹脂(A)は、(メタ)アクリル重合体と、負の固有複屈折を有するスチレン系重合体とを含むことが好ましい。この場合、樹脂(A)における双方の重合体の含有率の調整により、形成した位相差フィルムが有する位相差をより広い範囲で制御できる。また、スチレン系重合体と(メタ)アクリル重合体との相溶性は一般に良好であり、透明性が高い位相差フィルムが得られる。位相差フィルムの耐熱性および光学特性の観点から、(メタ)アクリル重合体は、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体(B)が好ましい。
スチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂から構成される原反を単純に延伸して得た位相差フィルムは、一般に、折り曲げ耐性などの強度特性が低くなる。このため、本発明の製造方法は、スチレン系重合体を含む樹脂(A)から構成される原反を使用する場合に、さらに効果的である。また、Tgが高い熱可塑性樹脂から構成される原反を単純に延伸して得た位相差フィルムは、一般に、折り曲げ耐性などの強度特性が低くなる。このため、本発明の製造方法は、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体(B)を含む樹脂(A)から構成される原反を使用する場合にさらに効果的である。これら双方を考慮すると、本発明の製造方法は、スチレン系重合体および重合体(B)を含む樹脂(A)から構成される原反を使用する場合に特に効果的となる。
樹脂(A)は公知の方法により形成できる。例えば、得たい樹脂(A)の組成に対応する重合体および添加剤などを、公知の方法により混合すればよい。例えば、オムニミキサーなどの混合機により各材料をプレブレンドした後、得られた混合物を押出混練して、樹脂(A)が形成される。押出混練には、公知の混練機、例えば、単軸押出機、二軸押出機、加圧ニーダーを使用できる。樹脂(A)の形成温度は、180〜350℃が好ましく、200〜320℃がより好ましく、220〜300℃がさらに好ましく、250〜300℃が特に好ましい。
樹脂(A)から原反を形成する方法は限定されず、公知のフィルム成形方法を適用できる。樹脂(A)を含む溶液が準備できる場合、キャスト成形法が利用可能である。その他の場合、溶融押出法、プレス成形法を用いればよい。
[位相差フィルム]
本発明の製造方法では、波長589nmの光に対する面内位相差Reが50nm以上300nm以下であり、波長589nmの光に対する厚さ方向の位相差Rthが−300nm以上−30nm以下である位相差フィルムを形成する。
面内位相差Reは、位相差フィルムの面内方向における主屈折率をnx、主屈折率を示す方向に直交する面内方向の屈折率をny、フィルムの厚さをdとしたときに、式Re=(nx−ny)×dにより表される。厚さ方向の屈折率Rthは、上述したとおりである。本明細書における屈折率nx、nyおよびnzは、波長589nmの光に対する値である。
本発明の製造方法では、負の固有複屈折を有する原反を、上記(1)または(2)のように多段延伸して位相差フィルムを形成する。当該多段延伸では、主に横延伸によって位相差を発現させることから、主屈折率nxを示す方向は、通常、裁断前の帯状の位相差フィルムの状態で、その流れ方向(多段延伸において、縦延伸した方向)となる。屈折率nyを示す方向は、通常、裁断前の帯状の位相差フィルムの状態で、その幅方向(多段延伸において、横延伸した方向)である。
本発明の製造方法により得た位相差フィルムでは、屈折率nx、nyおよびnzが、nx>nz>ny(ただし、nz>(nx+ny)/2)、nz≧nx>nyまたはnz>nx≧nyの関係にあり、当該フィルムの厚さ方向の位相差Rthは負である。nx、nyおよびnzがnz=nx>nyの関係にあるとき、位相差フィルムはネガティブAプレートである。屈折率nx、nyおよびnzがnz>nx=nyの関係にあるとき、位相差フィルムはポジティブCプレートである。
本発明の製造方法により得た位相差フィルムのTgは110℃以上である。当該フィルムの組成によっては、Tgは115℃以上、さらには120℃以上となる。このような高いTgを有する位相差フィルムは耐熱性に優れ、光源、電源、電子回路などの発熱体が限られたスペースに多数集積された構造を有するLCDなどの画像表示装置への使用に好適である。
本発明の製造方法により得た位相差フィルムは、折り曲げ耐性に優れる。例えば、折り曲げ線の伸長方向が形成した位相差フィルムの流れ方向と平行になるように、JIS P8115の規定に準拠して測定した、当該位相差フィルムのMIT耐折度試験回数は3回以上である。位相差フィルムの組成ならびに多段延伸の条件によっては、当該回数は10回以上、さらには15回以上となる。なお、折り曲げ線の伸長方向を、形成した位相差フィルムの幅方向と平行になるようにした場合、当該位相差フィルムのMIT耐折度試験回数は、流れ方向と平行になるようにした場合に比べて大きくなる。
本発明の製造方法により得た位相差フィルムは、光軸ムラが小さい。例えば、形成した位相差フィルムにおける幅方向の光軸精度ΔRが3°以下である。位相差フィルムの組成ならびに多段延伸の条件によっては、光軸精度ΔRは2°以下、さらには1°以下となる。このような光軸ムラが小さい位相差フィルムは、画像表示面積が大きい大画面の画像表示装置への使用に好適である。
本発明の製造方法により得た位相差フィルムの厚さは限定されず、例えば、10〜500μmであり、20〜300μmが好ましく、30〜100μmがより好ましい。
本発明の製造方法により得た位相差フィルムの全光線透過率(JIS K7361に準拠して測定)は、例えば85%以上であり、90%以上が好ましく、91%以上がより好ましい。全光線透過率は位相差フィルムの透明性の指標であり、85%未満になると、用途によっては透明性が不足する。
本発明の製造方法により得た位相差フィルムの面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthの値ならびに屈折率nx、ny、nz間の大小関係は、目的とする光学特性に応じて適宜選択できる。
本発明の製造方法により得た位相差フィルムは、位相差および波長分散性などの光学特性の調整を目的として、他の光学部材(例えば位相差フィルム、偏光板)と組み合わせることができる。他の光学部材と組み合わせた位相差フィルムは、積層構造を有する。
本発明の製造方法により得た位相差フィルムの用途は限定されず、従来の位相差フィルムと同様の用途への使用が可能である。当該位相差フィルムは、LCDの光学補償部材として好適に用いられ、特に、OCB(optically compensated birefringence)モードLCDおよびIPSモードLCDの位相差フィルムとして好適に用いられる。例えば、IPSモードLCDへの使用により、斜めから画面を見たときの光漏れが抑制される。また、コントラストが高く、色ずれが少ない画像表示が実現する。
本発明の製造方法により得た位相差フィルムを備える画像表示装置は、斜めから画面を見たときの光漏れが少ないなど、画像表示特性に優れる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
最初に、本実施例において作製した樹脂、原反である樹脂フィルムおよび位相差フィルムの評価方法を示す。位相差フィルムを評価する際には、光軸精度ΔRの評価を除き、その幅方向の中央部から評価用サンプルを取得した。
[ガラス転移温度Tg]
樹脂およびフィルムのTgは、JIS K7121に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、DSC-8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスにはα−アルミナを用いた。
[重量平均分子量Mw]
樹脂のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の測定条件に従って、ポリスチレン換算により求めた。
測定システム:東ソー製GPCシステムHLC-8220
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
溶媒流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS−オリゴマーキット)
測定側カラム構成:分離カラム−東ソー製、TSKgel super HZM-M、2本直列接続;ガードカラム−東ソー製、TSKguardcolumn super HZ-L
リファレンス側カラム構成:リファレンスカラム−東ソー製、TSKgel SuperH-RC
カラム温度:40℃。
[メルトフローレート(MFR)]
樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210:1999の規定に準拠して、メルトインデクサー(テクノセブン製)を用い、試験温度240℃、荷重98N(10kgf)で測定した。
[屈折率異方性]
作製した位相差フィルムの、波長589nmの光に対する面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthならびに光軸の方向(フィルムの面内方向における遅相軸の方向)は、位相差フィルム・光学材料検査装置(大塚電子製、RETS-100)を用いて測定した。測定の際に当該装置に入力する位相差フィルムの厚さdはデジマチックマイクロメーター(ミツトヨ製)により、位相差フィルムの平均屈折率はアッベ屈折率計により、それぞれ測定した。Rthの測定の際には、測定対象である位相差フィルムを傾斜させた。その傾斜軸は、当該フィルムの遅相軸および進相軸のうち、遅相軸を傾斜軸として測定したRe(S40°)と、進相軸を傾斜軸として測定したRe(F40°)とを比較して大きい値が得られる方とした。
光軸の方向は、作製した帯状の位相差フィルムにおける流れ方向に対して垂直に評価用フィルムを切り出し、切り出した評価用フィルムにおける当該垂直方向に伸びるエッジを上記装置の基準バーに合わせて基準軸がぶれないようにして、測定した。なお、光軸の方向は、基準方向となる位相差フィルムの流れ方向を0°として、当該方向からの角度をもって表現される。
光軸精度ΔRは、作製した帯状の位相差フィルムにおける幅方向の中央に位置する幅500mmの部分に対して、当該部分の幅方向の端部から50mm間隔で光軸の方向を測定し、その最大値と最小値との差とした。
[位相差長期耐久性]
作製した位相差フィルムの位相差長期耐久性は、作製直後に測定した位相差フィルムの面内位相差Re1と、当該位相差フィルムを80℃の雰囲気に1000時間静置した後に測定した面内位相差Re2とから求めた位相差変化率(=(Re1−Re2)/Re1×100(%))により評価した。判断基準は以下のとおりである。
変化率が1%以下 ・・・◎(優)
変化率が1%以上2%以下 ・・・○(良)
変化率が2%以上5%以下 ・・・△(可)
変化率が5%以上 ・・・×(不可)
[MIT耐折度試験回数(MIT回数)]
作製した位相差フィルムのMIT回数は、MIT耐折度試験機(テスター産業製、BE-201型)を用いて測定した。具体的には、作製した帯状の位相差フィルムにおける流れ方向に対して垂直な方向が長手方向となるように、当該フィルムを短冊状(15mm×90mm)に切り出し、23℃、50%RHの雰囲気に1時間以上静置した後、折り曲げ線が伸長する方向(短冊状の試験フィルムの幅方向)が上記流れ方向と平行になるようにするとともに、荷重を200gとして、JIS P8115の規定に準拠して測定した。なお、測定は、別途切り出した5枚の試験フィルムに対して実施し、その5つの測定値の平均をMIT回数とした。
(製造例1)
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応釜に、メタクリル酸メチル(MMA)40重量部、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)10重量部、重合溶媒としてトルエン50重量部ならびに酸化防止剤としてアデカスタブ2112(ADEKA製)0.025重量部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)0.05重量部を添加するとともに、t−アミルパーオキシイソノナノエート0.1重量部を3時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、リン酸2−エチルヘキシル(堺化学製、商品名:Phoslex A-8)0.05重量部を加え、約90〜105℃の還流下において2時間、環化縮合反応を進行させた。次に、得られた重合溶液を、熱交換器に通して240℃まで昇温した後、バレル温度240℃、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)、第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーを備え、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルター(濾過精度5μm)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、樹脂量換算で70重量部/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。その際、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を1.05重量部/時の投入速度で第1ベントの後ろから、イオン交換水を1.05重量部/時の投入速度で第2および第3ベントの後ろから、それぞれ投入した。酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液には、酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ製、イルガノックス1010)5重量部と、失活剤としてオクチル酸亜鉛(日本化学産業製、ニッカオクチクス亜鉛3.6%)46重量部とを、トルエン54重量部に溶解させた溶液を用いた。また、上記サイドフィーダーから、スチレン−アクリロニトリル共重合体(スチレン単位/アクリロニトリル単位の比率が73質量%/27質量%、重量平均分子量22万)のペレットを、投入速度30重量部/時で投入した。
その後、押出機内にある溶融状態の樹脂を押出機の先端から吐出し、ペレタイザーによりペレット化して、負の固有複屈折を有する樹脂(A1)のペレットを得た。樹脂(A1)のMwは146,000、Tgは122℃、MFRは13.6g/10分であった。
なお、樹脂(A1)の固有複屈折の正負は、以下のように評価した。最初に、樹脂(A1)のペレットをプレス成形して厚さ100μmの未延伸フィルムを作製した。次に、作製した未延伸フィルムを80mm×50mmのフィルム片とし、加温室を備えたオートグラフ(島津製作所製)を用いて、延伸温度125℃、延伸倍率2倍で一軸延伸し、延伸フィルムとした。なお、フィルム片における長手方向の両端部のそれぞれ20mmをチャックの取り付けしろとしたため、実質的に延伸されたフィルム片の部分は40mm×50mmであった。次に、全自動複屈折計(王子計測機器製、KOBRA−WR)を用いて当該延伸フィルムの配向角を求めた。測定された配向角は90°近傍であり、すなわち樹脂(A1)の固有複屈折は負であった。
(実施例1)
製造例1で作製した樹脂(A1)のペレットを、ポリマーフィルター(濾過精度5μm)およびTダイを先端部に備えた単軸押出機により、270℃で溶融押出して、帯状の原フィルム(厚さ202μm、幅535mm、未延伸)を作製した。作製した原フィルム(原反)のTgは122℃であった。
次に、作製した原フィルムを、オーブン延伸機を用いて、延伸温度170℃、延伸倍率1.5倍で縦延伸した。縦延伸後の原フィルム(A1−MF1)の膜厚精度は±5μm(膜厚ムラ±3%)であった。
次に、原フィルム(A1−MF1)を、テンター延伸機を用いて、以下の条件で横延伸した。横延伸の際には、原フィルムにおける幅方向の端部(横端部)から20mmの位置を2インチのクリップで掴んだ。テンター延伸機には、区画壁により区切られた、互いに独立して温度設定が可能な、熱処理ゾーン、前段延伸ゾーンおよび後段延伸ゾーンを設定した。横延伸は、原フィルムを、熱処理ゾーン、前段延伸ゾーン、後段延伸ゾーンの順に、各ゾーンを連続的に通過させることによって実施した。熱処理ゾーンは、原フィルムを予熱する予熱ゾーンとしても利用した。
横延伸全体としての延伸倍率 ・・・3.0倍
熱処理ゾーン温度 ・・・131℃
熱処理ゾーンでの延伸 ・・・なし
前段延伸ゾーン温度 ・・・131℃
前段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の88%
後段延伸ゾーン温度 ・・・124℃
後段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の12%
このようにして得た位相差フィルム(A1−BF1)の面内位相差Reは107nm、厚さ方向の位相差Rthは−94nm、光軸精度ΔRは1°、平均膜厚は47μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は12回、位相差長期耐久性は○であった。
(実施例2)
縦延伸の延伸温度を160℃とした以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。
このようにして得た位相差フィルム(A1−BF2)の面内位相差Reは109nm、厚さ方向の位相差Rthは−105nm、光軸精度ΔRは1°、平均膜厚は47μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は43回、位相差長期耐久性は○であった。
(実施例3)
横延伸における後段延伸の延伸温度を126℃とした以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。
このようにして得た位相差フィルム(A1−BF3)の面内位相差Reは94nm、厚さ方向の位相差Rthは−101nm、光軸精度ΔRは2°、平均膜厚は47μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は13回、位相差長期耐久性は○であった。
(実施例4)
横延伸における後段延伸の延伸温度を122℃とした以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。
このようにして得た位相差フィルム(A1−BF4)の面内位相差Reは116nm、厚さ方向の位相差Rthは−87nm、光軸精度ΔRは2°、平均膜厚は47μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は11回、位相差長期耐久性は○であった。
(実施例5)
横延伸における後段延伸の延伸温度を128℃とした以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。
このようにして得た位相差フィルム(A1−BF5)の面内位相差Reは90nm、厚さ方向の位相差Rthは−108nm、光軸精度ΔRは8°、平均膜厚は47μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は12回、位相差長期耐久性は○であった。
(実施例6)
横延伸における後段延伸の延伸温度を120℃とした以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。
このようにして得た位相差フィルム(A1−BF6)の面内位相差Reは124nm、厚さ方向の位相差Rthは−82nm、光軸精度ΔRは5°、平均膜厚は47μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は43回、位相差長期耐久性は○であった。
(実施例7)
横延伸の前段および後段の各延伸ゾーンにおける延伸倍率を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。後段延伸ゾーンでは原フィルムを一度も延伸しなかったため、横延伸を一段で行った実施例に相当する。
前段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の100%
後段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の0%(延伸なし)
このようにして得た位相差フィルム(A1−BF7)の面内位相差Reは110nm、厚さ方向の位相差Rthは−100nm、光軸精度ΔRは3°、平均膜厚は47μm、膜厚精度は±6μm(膜厚ムラ±13%)、MIT回数は14回、位相差長期耐久性は△であった。
(実施例8)
熱処理ゾーンを利用して、当該ゾーンにおいても原フィルムに対する横延伸を行うとともに、横延伸の各ゾーンにおける延伸倍率を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。
熱処理ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の20%
前段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の80%
後段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の0%(延伸なし)
このようにして得た位相差フィルム(A1−BF8)の面内位相差Reは113nm、厚さ方向の位相差Rthは−102nm、光軸精度ΔRは3°、平均膜厚は47μm、膜厚精度は±7μm(膜厚ムラ±15%)、MIT回数は13回、位相差長期耐久性は△であった。
(実施例9)
縦延伸の延伸温度を142℃とするとともに、横延伸の条件を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。
横延伸全体としての延伸倍率 ・・・2.8倍
熱処理ゾーン温度 ・・・150℃
熱処理ゾーンでの延伸 ・・・なし
前段延伸ゾーン温度 ・・・128.5℃
前段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の99%
後段延伸ゾーン温度 ・・・121℃
後段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の1%
(2%の延伸の後、1%収縮)
このようにして得た位相差フィルム(A1−BF9)の面内位相差Reは111nm、厚さ方向の位相差Rthは−114nm、光軸精度ΔRは0.5°、平均膜厚は47μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は16回、位相差長期耐久性は◎であった。
(実施例10)
縦延伸の延伸温度を142℃とするとともに、横延伸の条件を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。
横延伸全体としての延伸倍率 ・・・2.85倍
熱処理ゾーン温度 ・・・153℃
熱処理ゾーンでの延伸 ・・・なし
前段延伸ゾーン温度 ・・・128.5℃
前段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の99%
後段延伸ゾーン温度 ・・・122℃
後段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の1%
(2%の延伸の後、1%収縮)
このようにして得た位相差フィルム(A1−BF10)の面内位相差Reは105nm、厚さ方向の位相差Rthは−105nm、光軸精度ΔRは0.5°、平均膜厚は47μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は18回、位相差長期耐久性は◎であった。
(実施例11)
縦延伸の延伸温度を142℃とするとともに、横延伸の条件を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。
横延伸全体としての延伸倍率 ・・・2.85倍
熱処理ゾーン温度 ・・・155℃
熱処理ゾーンでの延伸 ・・・なし
前段延伸ゾーン温度 ・・・130℃
前段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の99%
後段延伸ゾーン温度 ・・・122℃
後段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の1%
(2%の延伸の後、1%収縮)
このようにして得た位相差フィルム(A1−BF11)の面内位相差Reは100nm、厚さ方向の位相差Rthは−100nm、光軸精度ΔRは0.5°、平均膜厚は47μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は19回、位相差長期耐久性は◎であった。
(実施例12)
縦延伸の延伸温度を137℃とするとともに、横延伸の条件を以下のように実施した以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。
横延伸全体としての延伸倍率 ・・・2.85倍
熱処理ゾーン温度 ・・・155℃
熱処理ゾーンでの延伸 ・・・なし
前段延伸ゾーン温度 ・・・130℃
前段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の99%
後段延伸ゾーン温度 ・・・122℃
後段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の1%
(2%の延伸の後、1%収縮)
このようにして得た位相差フィルム(A1−BF12)の面内位相差Reは95nm、厚さ方向の位相差Rthは−105nm、光軸精度ΔRは0.5°、平均膜厚は47μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は19回、位相差長期耐久性は◎であった。
(実施例13)
縦延伸の延伸温度を142℃とするとともに、横延伸の条件を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。後段延伸ゾーンでは原フィルムを一度も延伸しなかったため、横延伸を一段で行った実施例に相当する。
横延伸全体としての延伸倍率 ・・・2.9倍
熱処理ゾーン温度 ・・・150℃
熱処理ゾーンでの延伸 ・・・なし
前段延伸ゾーン温度 ・・・128.5℃
前段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の100%
後段延伸ゾーン温度 ・・・121℃
後段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の0%(延伸なし)
このようにして得た位相差フィルム(A1−BF13)の面内位相差Reは115nm、厚さ方向の位相差Rthは−115nm、光軸精度ΔRは0.5°、平均膜厚は47μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は17回、位相差長期耐久性は△であった。
(実施例14)
縦延伸の延伸温度を142℃とするとともに、横延伸の条件を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。後段延伸ゾーンでは原フィルムを一度も延伸しなかったため、横延伸を一段で行った実施例に相当する。
横延伸全体としての延伸倍率 ・・・2.9倍
熱処理ゾーン温度 ・・・150℃
熱処理ゾーンでの延伸 ・・・なし
前段延伸ゾーン温度 ・・・128.5℃
前段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の100%
後段延伸ゾーン温度 ・・・124℃
後段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の0%(延伸なし)
このようにして得た位相差フィルム(A1−BF14)の面内位相差Reは109nm、厚さ方向の位相差Rthは−109nm、光軸精度ΔRは2°、平均膜厚は47μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は16回、位相差長期耐久性は△であった。
(実施例15)
縦延伸の延伸温度を142℃とするとともに、横延伸の延伸条件を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。
横延伸全体としての延伸倍率 ・・・2.85倍
熱処理ゾーン温度 ・・・150℃
熱処理ゾーンでの延伸 ・・・なし
前段延伸ゾーン温度 ・・・129.5℃
前段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の99%
後段延伸ゾーン温度 ・・・115℃
後段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の1%
このようにして得た位相差フィルム(A1−BF15)の面内位相差Reは113nm、厚さ方向の位相差Rthは−112nm、光軸精度ΔRは2°、平均膜厚は47μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は15回、位相差長期耐久性は△であった。
(実施例16)
縦延伸の延伸温度を142℃とするとともに、横延伸の延伸条件を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。
横延伸全体としての延伸倍率 ・・・2.85倍
熱処理ゾーン温度 ・・・150℃
熱処理ゾーンでの延伸 ・・・なし
前段延伸ゾーン温度 ・・・128.5℃
前段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の99%
後段延伸ゾーン温度 ・・・121℃
後段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の1%
このようにして得た位相差フィルム(A1−BF16)の面内位相差Reは118nm、厚さ方向の位相差Rthは−116nm、光軸精度ΔRは2°、平均膜厚は47μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は15回、位相差長期耐久性は○であった。
(比較例1)
縦延伸の延伸温度を126℃、延伸倍率を1.8倍とするとともに、横延伸の延伸条件を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。
横延伸全体としての延伸倍率 ・・・2.5倍
熱処理ゾーン温度 ・・・129℃
熱処理ゾーンでの延伸 ・・・なし
前段延伸ゾーン温度 ・・・129℃
前段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の88%
後段延伸ゾーン温度 ・・・122℃
後段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の12%
このようにして得た位相差フィルム(A1−CF1)の面内位相差Reは34nm、厚さ方向の位相差Rthは−181nm、光軸精度ΔRは1°、平均膜厚は45μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は168回、位相差長期耐久性は○であった。
(比較例2)
縦延伸の延伸温度を160℃、延伸倍率を1.8倍とするとともに、横延伸の延伸条件を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。
横延伸全体としての延伸倍率 ・・・2.2倍
熱処理ゾーン温度 ・・・156℃
熱処理ゾーンでの延伸 ・・・なし
前段延伸ゾーン温度 ・・・156℃
前段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の88%
後段延伸ゾーン温度 ・・・149℃
後段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の12%
このようにして得た位相差フィルム(A1−CF2)の面内位相差Reは0.6nm、厚さ方向の位相差Rthは−16nm、光軸精度ΔRは1°、平均膜厚は45μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は15回、位相差長期耐久性は○であった。
(比較例3)
縦延伸を行うことなく横延伸のみを行うとともに、横延伸の延伸条件を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に位相差フィルムを作製した。
横延伸全体としての延伸倍率 ・・・2.2倍
熱処理ゾーン温度 ・・・131℃
熱処理ゾーンでの延伸 ・・・なし
前段延伸ゾーン温度 ・・・131℃
前段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の88%
後段延伸ゾーン温度 ・・・124℃
後段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の12%
このようにして得た位相差フィルム(A1−CF3)の面内位相差Reは105nm、厚さ方向の位相差Rthは−94nm、光軸精度ΔRは1°、平均膜厚は45μm、膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%)、MIT回数は1回、位相差長期耐久性は○であった。なお、横延伸の際に、原フィルムの破断が多発した。
Figure 0005637823
表1に示すように、原フィルムに対する(1)または(2)の多段延伸により形成した実施例では、原フィルムを構成する樹脂のTgが120℃以上にも拘わらず、折り曲げ耐性に優れ、面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthともに十分な位相差を有する位相差フィルムが形成された。実施例の位相差フィルムの面内位相差Reは90nm以上であり、実施例によっては、100nm以上、110nm以上、さらには120nm以上であった。実施例の位相差フィルムの厚さ方向の位相差Rthは−80nm以下であり、実施例によっては、−90nm以下、−100nm以下、−110nm以下、さらには−115nm以下であった。
一方、比較例1では縦延伸の延伸温度が低く、十分な位相差が得られなかった。比較例2では、横延伸の延伸温度が高く、十分な位相差が得られなかった。縦延伸を行わなかった比較例3では、折り曲げ耐性が低下した。
実施例のうち、横延伸を、延伸温度が互いに異なる前段および後段の2つの延伸を含む工程により行った実施例1〜6、9〜12、16では、位相差の長期耐久性がさらに向上した。実施例15では、延伸温度が互いに異なる前段および後段の2つの延伸を含む工程により横延伸を行ったにも拘わらず、位相差の長期耐久性はさほど向上しなかったが、これは、前段の延伸温度と後段の延伸温度との差が11℃を超えていたためと推定された。ただし、実施例15においても、形成された位相差フィルムの光軸精度ΔRが向上する効果が確認された。
後段の延伸を、原フィルムの延伸および収縮を組み合わせて行った実施例9〜12では、光軸精度ΔRおよび位相差の長期耐久性が著しく向上した。
本発明の製造方法により得た位相差フィルムは、従来の位相差フィルムの用途と同じ用途に幅広く使用できる。本発明の製造方法により得た位相差フィルムは、LCDなどの画像表示装置への使用に好適である。

Claims (8)

  1. 帯状の樹脂フィルムを当該樹脂フィルムの面内方向に多段延伸して位相差フィルムを形成する、位相差フィルムの製造方法であって、
    前記樹脂フィルムが、110℃以上のガラス転移温度Tgおよび負の固有複屈折を有する樹脂から構成され、
    前記樹脂が、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体を含み、
    前記多段延伸が、前記帯状の樹脂フィルムの流れ方向の延伸である縦延伸と、前記帯状の樹脂フィルムの幅方向の延伸である横延伸と、を含み、
    前記多段延伸を、以下の(1)または(2)のように行い、
    (1)延伸温度(Tg+20)℃以上で縦延伸した後に、延伸温度(Tg+20)℃
    未満で横延伸する、
    (2)延伸温度(Tg+15)℃以上で縦延伸した後に、(Tg+20)℃以上で熱処理し、さらに延伸温度(Tg+20)℃未満で横延伸する、
    波長589nmの光に対する面内位相差Reが50nm以上300nm以下、当該光に対する厚さ方向の位相差Rthが−300nm以上−30nm以下の位相差フィルムを形成する、位相差フィルムの製造方法。
  2. 前記横延伸を、前記樹脂フィルムの幅方向の延伸であって、延伸温度が互いに異なる前段および後段の2つの延伸を含む工程により行う、請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
  3. 前記前段の延伸の延伸温度をT1℃としたときに、前記後段の延伸の延伸温度は、(T1−12)℃以上(T1−2)℃以下であり、
    前記前段の延伸の延伸倍率は、前記横延伸全体としての延伸倍率の50〜95%であり、
    前記後段の延伸の延伸倍率は、前記横延伸全体としての延伸倍率の50〜5%である、請求項2に記載の位相差フィルムの製造方法。
  4. 前記前段の延伸の延伸温度をT3℃としたときに、前記後段の延伸の延伸温度は、(T3−11)℃以上(T3−6)℃以下であり、
    前記前段の延伸の延伸倍率は、前記横延伸全体としての延伸倍率の95〜103%であり、
    前記後段の延伸の延伸倍率は、前記横延伸全体としての延伸倍率の−3〜5%である、請求項2に記載の位相差フィルムの製造方法。
  5. 前記後段の延伸を、
    前記樹脂フィルムを当該フィルムの幅方向に延伸した後に、当該フィルムの幅方向に収縮させて行う、請求項4に記載の位相差フィルムの製造方法。
  6. 前記樹脂が、スチレン系重合体を含む請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
  7. 折り曲げ線の伸長方向が前記形成した位相差フィルムの流れ方向と平行になるように、JIS P8115の規定に準拠して測定した、当該位相差フィルムのMIT耐折度試験回数が3回以上である請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
  8. 前記形成した位相差フィルムにおける光軸精度ΔRが3°以下である請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
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