JP5635726B2 - 癌の診断方法及び治療方法 - Google Patents

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Description

本発明は一般的にMUC1レセプター(MUC1 receptor)の存在を特徴とする癌の診断、治療のための方法と合成物とに関し、特にMUC1レセプターの異常発現を特徴とする癌の診断、治療のための方法と合成物とに関する。本発明は更に、MUC1陽性癌の治療に対する患者の応答を診断し追跡するための方法に関する。
関連出願の記述
本願は、2001年11月27日出願米国特許出願第09/996,069号の一部継続出願であって、2000年11月27日出願米国仮特許出願第60/253,361号、2000年12月15日出願米国仮特許出願第60/256,027号、2000年12月22日出願米国仮特許出願第60/258,157号、2001年1月3日出願米国仮特許出願第60/259,615号、2001年1月5日出願米国仮特許出願第60/260,186号、2001年2月2日出願米国仮特許出願第60/266,169号、2001年5月7日出願米国仮特許出願第60/289,444号、2001年2月6日出願米国仮特許出願第60/266,929号、2001年3月23日出願米国仮特許出願第60/278,093号、2001年5月31日出願米国仮特許出願第60/294,887号、2001年6月14日出願米国仮特許出願第60/298,272号の優先権の利益を主張する。更に本願は、2002年9月5日出願米国特許出願第10/237,150号の一部継続出願であって、2001年9月5日出願米国仮特許出願第60/317,302号、2002年5月1日出願米国仮特許出願第60/376,732号の優先権の利益を主張する。更に本願は、2002年9月5日出願米国特許出願第10/236,863号の一部継続出願であって、2001年9月5日出願米国仮特許出願第60/317,302号の優先権の利益を主張する。更に本願は、2004年8月26日出願PCT/US2004/027954号の一部継続出願であって、2003年8月2日出願米国仮特許出願第60/498,260号の優先権の利益を主張する。更に本願は、2004年9月14日出願米国仮特許出願第60/610,038号の優先権の利益を主張する。
癌の知識が向上するにつれて、癌は単一の疾病ではなく、むしろ複数の共通の特性を共有する疾病の集合であることがますます明らかになってきた。事実、病原体が分子レベルで識別され癌の特殊型の分子「サイン」が発見されるにつれて、癌の治療と特徴付けとは共に急速に変化している。乳癌の治療は、かかる特定の癌においてその特定の患者において存在する特定の分子サインを標的とするよう設計されるようになってきている。摘出胸部腫瘍については、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、又は最近ではHer2/neuレセプター(Her2/neu receptor)のレベルの上昇を示すかどうかを決定するための検査がよく行われる。分子レベルにおける腫瘍の特徴付けによって、医師は特定の患者にとって可能な治療を選択することができる。特定の患者に分子的に適合する治療は、癌の再発と生存率に対して重要な影響を及ぼす。例えば、エストロゲンレセプター陽性(ER+)及び/又はプロゲステロンレセプター陽性(PR+)癌を有する患者には、通常、最大5年間タモキシフェン(Tamoxifen)が投与される。エストロゲンの誘導体であるタモキシフェンは、エストロゲンレセプターの天然エストロゲンのドッキング部位に結合してブロックすることによって作用する。癌の再発率は複数の要素に依存するが、一般に、ER+かつPR+である癌を有する患者の治療経過(有効性最大70%)は、ER+又はPR+のいずれかである癌を有する患者の治療経過(有効性最大30%)又はER-かつPR-である癌を有する患者の治療経過(有効性最大10%)より良好である。ハーセプチン(Herceptin)は、Her2/neuレセプターに結合しブロックする抗体ベース治療剤であって、このレセプターを過剰発現させる腫瘍に対して有効であることが分っている。グリべック(Gleevec(R))は、慢性骨髄性白血病(CML)の治療薬である。この薬剤は、この種の癌細胞に構造的に活性であり細胞増殖シグナルを開始するチロシンキナーゼBCR-ABLを抑制する。BCR-ABLをブロックして細胞増殖シグナルを妨害することによって、細胞増殖を停止させる。細胞増殖の停止により、アポトーシスと呼ばれるプログラム細胞死が誘発される。この薬剤は癌細胞において異常である標的分子に作用するので、非常に治癒率が高く、副作用があったとしても非常に小さい。残念ながら、CMLにおいて画期的効果を示すこのメカニズムも、ヒトの癌のうちほんの一握りの癌であるCMLに有効であるだけである。
ただし、これらの結果は、癌の進行に関係する特定の分子を標的とした治療が、単に広域細胞成長を抑制する従来の治療よりも有効であることを実証している。ハーセプチン、グリべック、及びその他開発中の薬剤等の新世代制癌剤は、「スマート」ドラッグと呼ばれている。これは、これらの薬剤が癌又はより多くの場合には特定の種類の癌に関係する特定の分子を標的にして機能無効にするからである。したがって、どの治療が特定の患者にとって最良であるかを有効に決定するために、患者の癌を分子レベルで特徴付け、その特徴付けによって決定された特定の異常分子に作用する治療を行うことができる。治療前の分子サインによる癌の特徴付けを誤ると、患者にとって有益よりも有害になり得る。例えば、一部の癌の場合、異常な特定分子を標的とする薬剤で患者を治療することが有用であっても、癌の種類によっては、かかる治療によってかえってその患者にとって適切な治療から遠ざけることにつながる。
MUC1レセプターは、多くの種類の癌において異常発現する。MUC1は、上皮細胞の表面に見られる膜貫通型糖蛋白である。ヒトの固形腫瘍全体のうち推定75%がMUC1レセプターを異常発現すると報告されている。このうち、乳癌の90%以上、前立腺癌の約50%にMUC1レセプターが異常発現するとされている。MUC1レセプターが異常発現するこの他の癌の例としては、卵巣癌、結腸直腸癌、膵臓癌、一部の肺癌等が含まれる。近年、MUC1レセプターは健康な細胞においては細胞先端縁にクラスタリングしているが、一方、癌細胞においては細胞表面全体に渡って均一に発現するようにみられることが分っている。かかる非クラスタリング状態は、癌の攻撃性や患者の予後の程度と相関関係を有する。また、MUC1レセプターは細胞表面から切断され分離し得ることも知られている。分離レセプターは、乳癌患者だけでなく健康な患者の血液内でも検出することができる。妊娠中の女性又は授乳中の女性は、血清中における分離MUC1レベルが高い。一方、過去の妊娠歴に関わらず妊娠中でない女性は、血清中に分離MUC1がみられるがそのレベルは非常に低い。MUC1レベルの上昇は、ごく一部の限局性疾病を有する患者(ステージI)のみにみられる。原則として、MUC1の分離は、癌のステージが進んで転移性になった際によく起きる。最初にステージII又はステージIIIの乳癌と診断された患者における乳癌再発を検出する目的のために、分離MUC1の血中濃度を評価分析する検査がFDAから認可されている。これらの検査は、MUC1レセプターの末端繰返し単位を認識する抗体を使用する。MUC1レセプターのタンデムリピートの数は、ヒトによって多様であり、癌との相関関係はない。ただし、診断学的検査又は診断学的追跡においては分離MUC1レベルの上昇を検出する必要があるが、抗体のエピトープが多様であることから、かかる分離MUC1レベルの上昇と、抗体結合の増大とを区別することができない。ヒトのMUC1は多数のタンデムリピート単位を含むからである。このようにヒトによってタンデムリピート数にばらつきがあることは、検査のばらつきにつながり、ひいては治療に対する患者の反応を追跡する有用性を制限し、その診断としての有用性を妨げる。したがって、次のいずれかが必要である。1つは、MUC1レセプターの各分離部分に1回発現するエピトープを認識する抗体である。もう1つは、MUC1が正常状態で分離しているときではなく、癌が存在するときにおける分離MUC1に存在するエピトープを認識する抗体である。
プロテアーゼには、製薬会社が治療標的として研究している蛋白質の別のカテゴリーのものが含まれる。例えば、プロテアーゼ抑制剤は、HIVの治療に有効である。メタロプロテアーゼは、癌を含むが癌に限定されない多様な状態に対する治療標的として提案されている。メトジンシン(metzincin)は、金属蛋白質のスーパーファミリーに属するが、このファミリーにはメタロプロテアーゼの3つのファミリー、すなわちMMP、ADAM、及びADAMTS(1つ以上のトロンボスポンジン(thrombospondin(TS)領域を含むADAMS)が含まれる。これらの切断酵素は、チモーゲン(zymogen)として生成されているので、プロペプチド又はプロドメインが表面から切断又は分離されて初めてそれの蛋白質分解活性を示す。この最終プロセシング段階は通常、細胞表面で起きる。ただし、メトジンシンの部分集合は、フューリン(furin)又はフューリン様酵素によってゴルジ体において切断され活性酵素を生成する。TIMP(メタロプロティナーゼ(metalloproteinases)の組織抑制剤)は小さな蛋白質であるが、一部のメタロプロテアーゼに結合してそれらの蛋白質分解活性を抑制する。
MMP(マトリックスメタロプロティナーゼ(matrix metalloproteinases))は、亜鉛依存性エンドプロテアーゼ(endoprotease)のクラスに属し、その活性のためには金属が必要である。MTMMPsと呼ばれる6つの膜型MMPs、すなわち、MT1-MMP、MT2-MMP、MT3-MMP、MT4-MMP、MT5-MMP、及びMT6-MMPが同定されている。すべてのMT- MMPsは、フューリンによって処理されると蛋白質分解活性の形態になる。MMPsの名称は、当初細胞外マトリックスの成分を分解する能力に由来するものであった。しかし現在では、MMPsはその他のメタロプロティナーゼと同様に、炎症性疾患と癌の治療のための治療標的のクラスとして扱われている。ADAM-17は、可溶性TNFαの生成のために必要とされるので、リウマチ様関節炎の治療用の医薬品として現在関心が寄せられている。
米国特許出願第09/996,069号 米国特許出願第10/237,150号 米国特許出願第10/236,863号 PCT/US2004/027954号 米国仮特許出願第60/610,038号 米国特許出願公開第2003/0036199A1号 米国特許出願公開第2003/00302993A1号 WO 01/78709 WO 00/43791 WO 00/34783 WO 02/056022 Andrew Spicer et al., J. Biol. Chem Vol 266 No. 23, 1991 pgs. 15099-15109
したがって、癌の新しいより正確な分子サインを明らかにし、これらのサインに基づく癌の特徴付けの診断方法を作り出し、癌の種類に特異的な分子に作用する新しい治療剤を開発することが必要である。
本発明の一部の実施形態は、MUC1が関連する増殖性疾病、特に癌を抑制可能な合成物であって、成長因子レセプターとして機能するMUC1の該当部分の抑制、全長レセプターの腫瘍形成形態への切断の抑制、又はリガンドとのMUC1レセプターの相互作用の抑制に関与する合成物、およびMUC1関連癌の症状を示す又はその疑いのある患者を治療するためにMUC1の直接相互作用を抑制するか又はその発現を抑制するかの方法に関する。一部の場合において、本願の主題事項には、相互に関連する生成物、特定の問題に対する代替的解決法、及び/又は単一のシステム又は生産物に関する複数の様々な用途が含まれる。
本明細書においては、特定の状態の予防又は治療のための合成物を対象に投与する複数の方法が開示されている。本発明の各態様において、本発明には、特定の状態の治療又は予防において使用するための合成物、並びにかかる特定の状態の治療又は予防のための薬剤を製造するための合成物の使用が特別に含まれる。本発明の一部の態様において、本発明には、医薬的に受容可能な担体も含まれる。
本発明は、選択された患者群の治療方法を含む。本明細書に記載されたすべての合成物は、記載の各方法に対し有用又は潜在的に有用である。
本発明の一部の実施形態には、コンビナトリアルな研究方法が含まれており、すなわち、様々な疾病のステージの治療に有効な特徴であると同定された合成物の構造特性に基づいて、多様な構造同族体、類似体、誘導体、光学異性体、又は機能的に等価な合成物をコンビナトリアルに合成してMUC1関連癌の治療に有用な多様な合成物を同定する。したがって、一実施形態において、本発明には、提供された合成物No. 1〜No. 188の任意の1つ以上を基にコンビナトリアルな合成を行い複数の合成物を取得することが含まれる。ここで、該複数の合成物に関して評価分析を行えば、癌治療において、特に例えば本明細書に記載の癌の治療においてそれらが有効であるか否かを決定することができる。医化学技法を用いれば合成物No. 1〜No. 188も変更を加えることが可能である。
本発明の他の態様には、一部の実施形態において、合成物No. 1〜No. 188のいずれかを含む組成物と医薬的に活性な担体、例えば炭水化物、レクチン及び/又はレクチンレセプターとを含む医薬品が提供される。一実施形態において、組成物には、合成物No. 1〜No. 188の構造同族体、類似体、誘導体、光学異性体、又は機能的に等価な合成物が含まれ得る。本明細書に記載のすべての構造において、標記のない原子の位置には、適切に水素を持った炭素が存在する。一部の実施形態において、MUC1関連癌の予防又は治療を促進するために、本発明の合成物、及び/又はその同族体、類似体、誘導体、光学異性体又は機能的に等価な合成物のうちのいずれか1つ以上を投与することを含む方法が本発明により提供される。
本発明の他の態様において、本発明の合成物、及び/又はその同族体、類似体、誘導体、光学異性体、又は機能的に等価な合成物のうちのいずれか1つ以上と、MUC1の異常発現を特徴とする癌の治療にこれら合成物を使用する指示書とが含まれるキットが本発明により提供される。
一態様において、本発明は少なくともその一部は、方法によって特定される。本発明の一部の実施形態において、その方法では、MUC1の異常発現を特徴とする癌の疑いがある又はその癌の症状を示すヒト患者を治療するために、本明細書に記載の合成物のいずれかを使用することが含まれる。ある実施形態では、患者はMUC1の異常発現を特徴とする癌の疑いがありながら、かかる癌の症状を示さない。しかし他の実施形態では、その患者がMUC1の異常発現を特徴とする癌の症状を示すことになる。本発明方法の実施形態では、患者はヘッジホッグ蛋白質の異常発現を特徴とする癌の治療を指示されることはない。
他の一態様において、本発明は、本明細書に記載の実施形態のいずれかを製造する方法に関する。更に他の態様において、本発明は、本明細書に記載の実施形態のいずれかを使用する方法に関する。
一実施形態において、本発明は、対象の癌を治療する又は予防する方法であって、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、又はXIIに属する化合物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、又はXIIは、本明細書において説明されている。更に、本発明は、表2〜5に記載の化合物No. 1〜No. 188の開示に関する。特に、本発明は、化合物No. 1〜No. 5、No. 7、No. 11、No. 13〜No. 15、No. 17〜No. 24、No. 26、No. 28〜No. 31、No. 42〜No. 48、No. 51、No. 55〜No. 106、No. 173、No. 174〜No. 179、No. 184、No. 185、又はNo. 186を含み、それらに限定されない式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIIIに属する化合物に関する。特に、化合物No. 28、No. 173、No. 184、No. 185が好ましい。
本発明は、化合物No. 33、No. 50、No. 166〜No. 172、No. 180〜No. 183、又はNo. 188等の式IXに属する化合物に関する。特に、化合物No. 182又はNo. 188が好ましい。
本発明は、化合物No. 8、No. 25、No. 115、No. 118、No. 120、No. 122〜No. 128、No. 130〜No. 132、又はNo. 134等の式Xに属する化合物にもに関する。特に、化合物No. 118又はNo. 125が好ましい。
本発明は、化合物No. 35、No. 107〜No. 113、又はNo. 114等の式XIに属する化合物にもに関する。特に、化合物No. 107又はNo. 109が好ましい。
本発明は、化合物No. 6、No. 9、No. 10、No. 12、No. 16、No. 27、No. 32、No. 34、No. 36〜No. 41、No. 49、No. 52〜No. 54、No. 116、No. 117、No. 119、No. 121、No. 129、No. 133、No. 135〜No. 165、又はNo. 187等の式XIIに属する化合物にもに関する。
本発明は、(i)MUC1の異常発現について対象の身体のサンプルを試験すること、および(ii)該化合物を必要とする対象を該化合物で治療すること、を更に含む上記の癌を治療又は予防する方法に関する。該化合物は式I、II、III、IV、V、VI、VII、又はVIIIに属することが好ましい。或いは、該化合物は式IX、X、XI、又はXIIに属する。
MUC1の異常発現は、細胞表面上においてMUC1のクラスタリングパターンが消失すること、又は抗nat-PSMGFR又は抗var-PSMGFRペプチドに接触すると膜染色が細胞全体を均一に覆うことによって観察され得る。
他の態様において、本発明は2つの部分構造、すなわちMGFR結合性部分構造と金属キレート化部分構造とを有する化合物の使用に関する。これに関し、本発明は、MUC1陽性癌を治療する又は予防する方法であって、
(i)MUC1の異常発現について身体のサンプルを試験すること、および
(ii)MGFR結合領域および金属とのキレート団(chelator group)を含む化合物で患者を治療すること、
ただし金属が亜鉛、マグネシウム、又はニッケルであること、
を含む方法に関する。
化合物は金属依存性蛋白質抑制剤であってもよく、その金属依存性蛋白質はキネシンファミリーのメンバー、キネシンスピンドル蛋白質、又はCostal2、又はMUC1を切断する酵素、例えばマトリックスメタロプロテアーゼ、特にMT1-MMP、MMP-14、フューリン、ADAM-17-TASEであってよい。抑制剤は、TIMP、TIMP2、又はTIMP3であってよい。
正常細胞と癌細胞とにおいてMUC1の状態は生化学的に異なるとの理解を利用して、MUC1のMGFR部へのリガンドの結合を分析しMUC1が細胞表面上にどのように分布しているかを決定すれば癌細胞を検出することが可能である。均一な分布であれば、癌性細胞が示される。したがって、一態様において本発明は、癌細胞を診断する方法であって、
(i)シグナル生成標識を結合せしめたMGFR特異的リガンドに細胞群を接触させること、および
(ii)細胞表面のMGFRへのリガンドの結合を評価分析し、リガンドに接触時に細胞表面全体にシグナルが均一に分布していれば細胞は癌性であると標示されること、
を含む方法に関する。
本発明の上記及び他の目的は、本発明の下記の説明、添付の参照図面、及び添付の特許請求の範囲からより十分に理解される。
本発明は、以下に記載の詳細な説明と添付の図面から更に十分理解される。ただしこれらの提示は単なる例示目的であり、本発明を限定するものではない。
定義
用語「MUC1成長因子レセプター(MUC1 Growth Factor Receptor)」(MGFR)は機能的な定義であり、これはMUC1レセプターの部分であって、活性化リガンド、例えば成長因子あるいは修飾酵素、例えば切断酵素と相互作用して細胞増殖を促進する部分を意味する。MUC1のMGFR領域は、細胞表面に最も接近した細胞外部分であって、後に定義するようにPSMGFRの大部分又はすべてを含む。このMGFRには、非修飾ペプチドと、例えばリン酸化、グリコシル化等の酵素修飾を受けたペプチドとの両方を含む。本発明の結果は、レセプターの切断又は分離後に細胞表面に付着したレセプター部分としてMGFRが残留し、その結果活性化リガンドはMUC1切断時にMGFRにいっそうアクセス可能になるメカニズムと一致している。
用語「鎖間結合領域(IBR)」は機能的定義であり、これはMUC1レセプターの部分であって、他のMUC1分子の同一領域に強く結合する部分を意味する。MUC1が他のMUC1レセプターと凝集(すなわち、自己凝集)する能力は各レセプターのこのIBRを介して与えられる。健常な細胞では、この自己凝集の結果MUC1レセプターがクラスタリングしているのが観察される。
好ましい実施形態において、IBRは、507〜549のアミノ酸、特に好ましくは525〜540及び525〜549のアミノ酸からなるMUC1レセプターの細胞外配列を含むと定義される全長ヒトMUC1レセプター(SEQ ID NO: 10)の領域内で少なくとも12〜18のアミノ酸配列がストレッチしたもの(数については、Andrew Spicer et al., J. Biol. Chem Vol 266 No. 23, 1991 pgs. 15099-15109を参照のこと。これらのアミノ酸番号は、Genbankアクセッション番号P15941の1067、1109、1085、1100、1085、1109に相当する;; PID G547937, SEQ ID NO: 10)、或いはそれのフラグメント、機能変異形、又は同類置換体であると定義することができ、これらは後ほど詳述する。
用語「切断IBR」は、レセプター分子セグメントから分離したIBR(又はその一部分)であって、細胞表面に付着残留しているものを意味する。この分離は、酵素によるものでも、IBRの他の切断によるものでもよい。本明細書で使用されるように、IBRが「細胞の表面にある」場合には、IBRは、分離や切断がなされていない細胞表面レセプターの部分に付着していることを意味する。
用語「定常領域(CR)」は、MUC1の任意の非繰返し配列であって、IBRとは1:1の比率で存在し、MUC1の一部を形成して健常な細胞及び腫瘍形成細胞での切断時に分離する。
用語「繰返し」は、本技術分野における通常の意味を有する。
用語「MUC1成長因子レセプターの一次配列(Primary Sequence of the MUC1 Growth Factor Receptor)」(PSMGFR)」は、場合によってはMGFRの大部分又はすべてを特定するペプチド配列、および下記に定義するように、該ペプチド配列の機能変異形及びフラグメントである。このPSMGFRは、下記の表1に挙げたSEQ ID NO: 13として特定されるが、これの機能変異形とフラグメントはすべて、20まで(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20)のアミノ酸置換の整数値及び/又はN-ターミナスにおける27までのアミノ酸追加又は9までのアミノ酸削除の整数値を有する。上記の「機能変異形又はフラグメント」とは、SEQ ID NO: 13のペプチドに特異的に結合する又は特異的に相互作用するリガンドに特異的に結合する又は特異的に相互作用することが可能な変異形又はフラグメントを意味する。ただしこれらの分子は、自分と同一の他のペプチド分子の同一領域への結合は強くないので、他の同一ペプチド分子と凝集(すなわち、自己凝集)する能力はある。PSMGFRの一例として、SEQ ID NO: 13のPSMGFRペプチドの機能変異形(「天然形」はnat-PSMGFRと呼称する)をSEQ NO:7に挙げる(var-PSMGFRと呼称。これは天然−SRY-の代わりに−SPY-配列を含むので、nat-PSMGFRとは異なる(配列リストの太字部分を参照))。天然形と比較すると、var-PSMGFRは構造的な安定性が強化されており、このことは、特定の適用、例えば抗体産生にとって重要である。PSMGFRには、非修飾ペプチドと、酵素修飾、例えばリン酸化反応、グリコシル化を受けたペプチドとの両方が含まれている。ヒスチジンタグPSMGFR(表1のSEQ ID NO: 2を参照)は、本明細書ではHis-PSMGFRと略記する。
用語「MUC1成長因子レセプターの拡張配列(Extended Sequence of the MUC1 Growth Factor Receptor)」(ESMGFR)」は、下記に定義(表1のSEQ ID NO: 3を参照)のペプチド配列であって、His-var-PSMGFRの全部にPSIBRの近接末端の9つのアミノ酸をプラスしたものを特定するとともに、MUC1の切断生成物の1つであって腫瘍細胞の細胞表面に付着したままの状態で見られるものを特定しており、PSMGFRと同様に活性化リガンドと相互作用することができる。
用語「MUC1成長因子レセプターの腫瘍特異的拡張配列(Tumor-Specific Extended Sequence of the MUC1 Growth Factor Receptor)」(TSESMGFR)」は、MUC1の切断生成物であって腫瘍細胞の細胞表面に付着したままの状態で見られる生成物を特定するペプチド配列(一例として表1のSEQ ID NO: 28を参照)であり、PSMGFRと同様に活性化リガンドと相互作用することができる。
PSIBRは、下記に定義するペプチド配列(表1のSEQ ID NO: 8を参照)であって、IBRの大部分又はすべてを特定する。
「切断鎖間結合領域(Truncated Interchain Binding Region)」(TPSIBR)は、下記に定義するペプチド配列(表1のSEQ ID NO: 27を参照)であり、これは、一部の腫瘍細胞ではレセプター切断後に細胞表面から分離したIBRの小部分を特定する。
PSMGFRTCは切断MUC1レセプターの同種体であって、PSMGFRとそのN末端の約30まで(すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30)個のアミノ酸を含むとともに、全長MUC1レセプターの膜貫通部分と細胞質部分の配列を含む。
本明細書で用いられているように、大きな分子、例えばポリペプチドやレセプターの中の特定配列の位置を示す「N-末端の」という文言は、その分子のN-末端アミノ酸から30個未満のアミノ酸の配列を言う。例えば、PSMGFRTCには、後述するこの他の切断MUC1レセプター同種体同様に、一般に長さ20〜30個のアミノ酸のMUC1 N-末端シグナル配列(表1のSEQ ID NO: 19、20、21)、またはその機能フラグメント又は変異形が含まれる。かかる配列は通常、切断MUC1レセプター同種体をエンコードする核酸構造によってコード化され翻訳されるが、通常細胞膜にレセプターが挿入される前または挿入時に切断する。かかるPSMGFRTC、すなわちオプションとしてシグナル配列を含むPSMGFRTCは、やはり上記の定義による「N-末端に」「PSMGFR配列を有する」ペプチド又は蛋白質である。一例はnat- PSMGFRTC(SEQ ID NO: 14、このN-最末端にSEQ ID NO: 19、20、又は21のシグナルペプチドがあってもなくても)であって、これはそのN-末端(すなわちそのN-最末端又はその30アミノ酸以内)にnat-PSMGFR(SEQ NO:3613)を有している。
用語「分離」とは、細胞からの物理的分離を意味する。すなわち、ある細胞に固定化されていたMUC1のある部分がその後その細胞にもはや固定化されていない状態をいう。例えば、MUC1のある部分が切断された場合、その切断部分が細胞から自由に移動できその後体液内で検出され、あるいは切断された細胞から遠く離れた位置、例えば他の細胞やリンパ節に固定化されたならば、その部分は「分離」されたことになる。
用語「結合」とは、対応する一対の分子間の相互作用を言い、これによって相互親和性又は結合能力、一般的には特異的または非特異的な結合または相互作用、例えば生化学的、生理学的、及び/又は薬学的な相互作用が示される。生物学的結合は、蛋白質、核酸、糖蛋白質、炭水化物、ホルモン等を含む一対の分子間において起きる相互作用の形式を定義する。特定の例としては、抗体/抗原、抗体/ハプテン(hapten)、酵素/基質、酵素/抑制剤、酵素/補助因子、結合蛋白質/基質、キャリヤー蛋白質/基質、レクチン(lectin)/炭水化物、レセプター/ホルモン、レセプター/エフェクター、核酸の相補鎖、蛋白質/核酸レセプター/インデューサ、リガンド/細胞表面レセプター、ウイルス/リガンド等の結合が含まれる。
用語「結合相手」とは、特定の分子と結合可能な分子を意味する。例えば生物学的結合相手が挙げられる。例えば、蛋白質Aは生物学的分子IgGの結合相手であり、逆もまた同様である。
用語「凝集体(aggregate)」とは、ホストシステムに対する中間的補助の有無に関わらず、互いに固定化している複数の細胞表面レセプター又はそのフラグメントを意味する(例えばMUC1)。これには、細胞表面における健常なレセプターの自己凝集、互いに結合する切断レセプター又はフラグメントの自己凝集体、細胞表面に付着するレセプター又はフラグメントに結合する切断レセプター又はフラグメント、細胞に付着しているにせよ切断されているにせよ、ホストに対する中間的補助を介して互いに固定化しているレセプター又はフラグメントが含まれる。「ホストシステムに対する中間的補助」には、ポリマー、デンドリマーなどの合成種や、IgM抗体などの天然発生種が含まれる。これはホストシステムに単に天然に存在するというのではなく、ホストシステムの外部を源としてホストシステムに追加されるものである。これには、ホストシステム内に天然に存在する中間物、例えば疾病に関連する凝集を引き起こしうる成長因子の結果としての凝集(「誘発多量化」)は含まれない。「凝集する(aggregate)」又は「凝集(aggregation)」は、凝集体(aggregate)を形成するプロセスを意味する。
「誘発多量化」とは、形成された凝集体が細胞に成長又は増殖するよう誘発可能な凝集を意味する。誘発多量化は通常、例えば成長因子又はその他の活性化リガンドによる細胞表面レセプターの二量化又は四量化を通常含むが、より高次の多量化も含むことが可能である。ただし、その場合の条件として多量化の程度はあまり大きくなく、したがって特定の細胞においてレセプターのクラスタリングが天然に模造され、その結果レセプターは細胞に成長又は増殖シグナルを送ることを防止される。
「防止性クラスタリング」とは、レセプターが多量化して十分な数のレセプターを含む凝集体が形成されて特定の細胞におけるレセプターのクラスタリングが天然に模造され、その結果レセプターは細胞に成長又は増殖の信号を送ることを防止されることを言い、これは例えば、ホストシステムの中間的補助と共に行われる。
細胞表面レセプターへの「リガンド」とは、レセプターと相互作用可能な任意の物質であって、相互作用の結果レセプターの構造及び/又は機能が暫定的又は恒久的に変更する物質を言う。例としては、レセプターの結合相手(例えば抗体又はその抗原結合フラグメント)、レセプターの化学構造を変更可能な作用物質(例えば修飾酵素)等が含まれるが、これらの限りではない。
「活性化リガンド」とは、レセプターと相互作用して細胞へのシグナルを誘発することができるリガンドを言う。活性化リガンドは、例えば細胞表面レセプターの誘発多量化を招来する種、例えばレセプターに結合可能な1以上の活性部位を有する単一分子種、二量体、四量体、高次多量体、二価抗体、又はその二価抗原結合フラグメント、又は複数の分子種を含む複合体であるが、これらに限定されない。活性化リガンドには更に、レセプターを修飾してレセプターにシグナルを送らせる種を含まれる。酵素も活性化リガンドとなることができ、その場合には酵素によりレセプターは修飾され他の活性化リガンドの新しい認識部位が作られる。例えば、グリコシラーゼ(glycosylase)が活性化リガンドとなる場合には、炭水化物の添加によりリガンドのレセプターに対する親和性は増大する。切断酵素が活性化リガンドとなる場合には、リガンドの認識部位が更にアクセス可能になるので、切断生成物がレセプターのより活性の高い形態となる。MUC1腫瘍細胞においては、MUC1を切断させてレセプターを化学的に修飾する種、或いはMUC1腫瘍細胞の表面でMGFRと相互作用して増殖を促すシグナルを細胞に送る種、例えば、誘発多量化を招来する種は活性化リガンドであり得る。
「成長因子」とは、上記に定義した成長因子の種類に入る種にも入らない種にも言うが、それらが活性化リガンドとして作用する限り作用的には成長因子である。
「MUC1発現細胞」とは、表面にMUC1及び/又はMGFRを発現する非癌性細胞と癌性細胞との両方を意味する。「MUC1腫瘍細胞」又は「MUC1癌細胞」又は「癌性MUC1細胞」又はMUC1陽性癌とは、表面にMUC1及び/又はMGFRを異常に発現する癌性細胞を意味する。
本明細書で用いられる「コロイド」とは、ナノ微粒子を意味する。すなわち、例えば無機物、有機物、高分子、セラミクス、半導体、金属(金等)、非金属、結晶質、アモルファス、又はこれらの組合せといった材料で構成される物質を含む、非常に小さな自己浮遊性又は液体浮遊性の微粒子を意味する。通常本発明で使用されるコロイド微粒子は、断面寸法が250nm未満、より具体的には断面寸法が100nm未満、多くの場合に断面寸法が約2〜30nmである。本発明での使用に適したコロイドの一例としては、断面寸法10〜30nm、及び断面寸法約2〜10nmである。本明細書で用いられるとおり、この用語は生化学分野で一般的に使用される定義を含む。
本明細書で用いられるとおり、ある成分(第一)が別の成分(第二)に比して「固定化」されるためには、この第一成分はその他の成分に固着するか、又は、例えばその他の成分が固着されている第三の成分に固着されることによって間接的にその他の成分に固着するか、さもなければ暫定的にその他の成分に会合することになる。例えば、シグナリングエンティティ(signaling entity)がある結合種に固定されるのは、そのシグナリングエンティティがその結合種に固着する場合、またはその結合種が固着されているコロイド微粒子に固着する場合、またはその結合種が固着されているデンドリマーやポリマーに固着する場合等である。あるコロイド粒子が別のコロイド粒子に比して固定化されるのは、第一のコロイド微粒子の表面に固着した結合種がある物質体に付着し、かつ、第二のコロイド微粒子の表面の種が同一の物質体に付着する場合である。この場合にこの物質体は単一体であっても、複数種の複合体であっても、細胞であっても、その他の微粒子であってもよい。
「シグナリングエンティティ(signaling entity)」とは、特定のサンプル内又は特定の位置において自分の存在を示し得る物質体である。本発明のシグナリングエンティティは、人の肉眼で識別可能な物質であってもよいし、単独では不可視であるが十分量(例えばコロイド微粒子)であれば人の肉眼で検出可能な物質であってもよいし、(肉眼又は電子顕微鏡等の顕微鏡で)可視的に又は分光学的に検出できるような波長域内の電磁放射線を吸収又は放射する物質体でもよいし、適切な活性化エネルギーに暴露された際に特性的な酸化還元パターンを示す酸化還元活性分子等のように電子的又は電子化学的に検出可能な物質体(「電子シグナリングエンティティ」)でもよい。例としては、染料、顔料、酸化還元分子等の電子活性分子、蛍光体(その名のとおり燐光性体を含む)、調整燐光体、化学発光体、電子化学発光体、又はホースラディッシュペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)やアルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatase)を含む酵素連結シグナリングエンティティ等が含まれる。「シグナリングエンティティの前駆体」は、それ自体はシグナル伝達能力を有さないものの、他の種と化学的、電子化学的、電気的、磁気的、又は物理的に相互作用した際に、シグナリングエンティティになる。例としては、他の分子と化学相互作用したときのみに特定の検出可能な波長内で放射線を放射することが可能な発色団が含まれる。シグナリングエンティティの前駆体は区別可能な形態ではあるが、本明細書で用いられる「シグナリングエンティティ」の定義の範疇には含まれる。
本明細書で用いられるとおり、ある種が別の種又は物質表面に比して「固着している又は固着に適している」とは、その種が共有付着、特定の生物学的結合(例えばビオチン(biotin)/ストレプトアビジン(streptavidin))、キレート/金属結合等の配位結合等を介して化学的又は生化学的に連結していることを意味する。例えば、この場合における「固定している」には、多数の化学結合、多数の化学/生物学的結合等が含まれる。これには、ポリスチレンビーズ上で合成されたペプチド等の結合種、ビーズに付着する蛋白質A等の蛋白質に結合する抗体に生物学特異的に結合する結合種、表面に共有固定している結合相手に特に生物学的に結合するGSTやファージ等の分子の一部を形成する(遺伝子工学による)結合種(例えばGSTの場合におけるグルタチオン(glutathione))等が含まれるがこれらに限定されない。この他の例として、チオール(thiol)に共有結合する物質体は金の表面への固定に適している。これは、チオールが金と共有結合するからである。同様に、金属結合タグを有する種は、表面に共有付着した分子を有する表面への固定に適している(例えばチオール/金の結合)。この分子は金属配位キレートも示す。表面が特定のヌクレオチド配列を有する場合、並びに種が相補的ヌクレオチド配列を含む場合にも、かかる種は表面への固定に適している。
「共有固着している」とは、1つ以上の共有結合のみを介して固着していることを意味する。例えば、ある種がカルボキシレート提示アルキルチオール(carboxylate-presenting alkyl thiol)にEDC/NHSの化学反応を介して共有結合し、次にこのチオールが金表面に固定されている場合には、その種は金表面に共有固着していることになる。
「特異的に固着している」又は「特異的に固着するのに適している」とは、種が他の試料に、又は「固着している又は固着に適している」の定義で上記した表面に化学的又は生物学的に結合していることを意味する。これにはすべての非特異的結合は含まれない。
本発明の一部の実施形態では、コロイド微粒子の表面等の表面上の自己組織化単層膜(SAM)、並びにSAMで覆われた表面を有するコロイド粒子などの物質を使用する。一部の実施形態において、合成分子で完全に形成されたSAMは、表面又は表面領域を覆う。例えばコロイド微粒子の表面を完全に覆う。この場合の「合成分子」とは、天然発生的な分子を意味するのではなく、ヒトの指示、又はヒトによる創出、又はヒトの指示管理のもとに合成された分子を意味する。この場合「完全に覆う」とは、SAMによる完全直接被覆を妨げる蛋白質、抗体、又はその他の種に直接接触する表面部分又は領域がないことを意味する。すなわち、一部の実施形態において、表面又は領域は、その物質全体において、非天然発生的分子(すなわち合成分子)のみからになるSAMを含む。SAMは、表面における密集SAMを形成するSAM形成種、電子ワイヤ又はSAMを介した電子のやりとりを促進することが可能な他の種(SAMに加わり得る欠損促進種を含む)と組み合わさった上記種、又はSAMに加わり得る他の種、及びこれらの任意の組合せからその全体が構成され得る。SAMに加わるすべての種は、表面に結合するか又は共有結合する機能を含むことが好ましい。例としては、金の表面に共有結合するチオールが挙げられる。本発明の一部の実施形態によれば、表面自己組織化単層膜は、任意の化学的又は生物学的機能を基本的に示す(表す)ことが可能な種の混合物(例えば金が表面である場合のチオール種)から構成され得る。例えば、非特異的吸収を阻害するトリエチレングリコール終端種(tri-ethylene glycol-terminated species)(例えばトリエチレングリコール終端チオール(tri-ethylene glycol-terminated thiols))や、アフィニティタグの結合相手において終端を有する他の種(チオール等)が挙げられる。後者は例えば、ニトリロトリアセチック酸(nitrilotriacetic acid)等の金属を配位可能なキレートに終端を有する。これは、ニッケル原子との複合体である場合、ヒスチジンタグ結合種等の金属結合タグ種を捕捉する。また、コロイド表面やその他の表面に存在する化学的又は生物学的種の濃度を基本的に厳密に制御する方法も開示される。各コロイド微粒子上のペプチド密度をこのように厳密に制御しないと、共固定化ペプチドは相互に集合してサンプル内に存在する集合体形成種が存在しない場合にコロイド−コロイド間集合を触媒するマイクロ疎水性領域を形成する。かかる方法は、既存のコロイド集合の評価分析全体に渡って、本発明の一部の実施形態の利点である。本発明の多くの実施形態において、自己組織化単層膜は金コロイド微粒子上に形成される。
本明細書に記載のキットは、1つ以上の容器を含む。これらの容器は、上記の種、シグナリングエンティティ、生体分子、及び/又は微粒子等の化合物を含み得る。キットは更に、化合物を混合し、希釈し、及び/又は投与するための使用上の指示書を含んでもよい。キットは更に、1つ以上の溶媒、界面活性剤、防腐剤、及び/又は希釈剤(例えば生理食塩水(0.9%NaCl又は5%デキストロース(dextrose))を入れた他の容器を含んでもよく、またサンプルやかかる治療を必要とする患者に対して成分を混合し、希釈し、投与するための容器を含んでもよい。
キット内の化合物は、溶液又は乾燥粉末として提供され得る。提供化合物が乾燥粉末である場合、粉末は、共に提供可能な適切な溶液を加えることによって液体状に戻すことができる。この化合物の液体は濃縮することもすぐに使用するようにしておくこともできる。溶剤は、化合物、使用形態、又は投与形態に依存する。適切な溶剤は、薬剤化合物として既知であり、文献から得ることができる。
本明細書で使用される用語「癌」は、以下を含み得るがこれらに限定されない。すなわち、胆道癌、膀胱癌、グリア芽腫と髄芽細胞腫とを含む脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、じゅう毛癌、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、急性白血病や骨髄性白血病を含む血液癌、多発性骨髄腫、AIDS関連白血病と成人T細胞リンパ腫、ボーウェン病やパジェット病を含む上皮内癌、肝臓癌、肺癌、ホジキン病やリンパ球性リンパ腫を含むリンパ腫、神経芽細胞腫、扁平上皮癌を含む口腔癌、上皮細胞、間質性細胞、胚細胞、間葉細胞から発生する癌を含む卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、繊維肉腫、骨肉腫を含む肉腫、黒色腫、カポジ肉腫、好塩基性細胞癌、扁平上皮癌を含む皮膚癌、セミノーマ、非セミノーマ(奇形腫、じゅう毛癌)、間質性腫瘍、胚細胞腫瘍等の胚腫瘍を含む睾丸癌、甲状腺癌、髄質腫瘍を含む甲状腺癌、腺癌、ウィルムス腫瘍を含む腎臓癌が含まれる。特に、乳癌、前立腺癌、肺癌、卵巣癌、結腸直腸癌、脳腫瘍に好適である。良性又は悪性の新生物も、癌性状態の範囲内にあるとみなされる。
本明細書に記載の用語「癌の治療」とは、以下を含むがこれらに限定されない。すなわち、化学療法、放射線治療、アジュバント療法、又は上記方法の組合せである。バリエーションが可能な治療の態様は以下を含むがこれらに限定されない。すなわち、投与量、投与のタイミング、投与期間、又は治療法である。これらは他の治療と組み合わせても組み合わせなくてもよく、それらの場合にも投与量、投与のタイミング、又は投与期間は多様であり得る。癌の他の治療法は外科的治療がある。これは単独で用いても、或いは上記の治療方法のいずれかと組み合わせて用いてもよい。医療における一般的技術の1つによって適切な治療が定まる。
「癌又は腫瘍形成を予防する作用物質」とは、本明細書に記載の癌又は腫瘍形成に関わるプロセスを妨げる任意の作用物質を意味する。例えば、MGFRと相互作用して(例えば結合して)、MGFRとの相互作用により腫瘍形成を促進する作用物質がMGFRと相互作用することを減少させる又は妨げることができるものである。
本明細書で使用される「細胞表面のレセプター鎖間結合領域の切断を減少させる作用物質」とは、かかる作用物質が存在しなければ発生すると思われるMGFRとIBRのN−末端との間のMUC1レセプターの切断を防ぐ又は減少させる任意の化合物を意味する。MGFRとIBRのN−末端との間のレセプターの切断は、膜性又は可溶性の酵素(例えばマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP及びMT-MMP))の活動によって発生し得る。これらの酵素の一部は、切断の直接的な原因である。他の酵素も、切断に関わる認識エピトープをマスクする糖類やリン酸塩でMUC1を修飾することによって、切断に影響を及ぼし得る(例えば特定の位置において切断を妨げる)。他の酵素は、特定の位置において切断の認識モチーフを生成する糖類やリン酸塩でMUC1を修飾することによって、その特定の位置における切断を促進し得る。他の酵素は、他の切断酵素を活性化させることによってレセプターの切断を促進し得る。細胞表面レセプターIBRの切断を減少させる作用物質の選択方法の一つは、上記のように切断に影響を及ぼす酵素をまず特定し、これらの酵素の活動を変更する能力があるかどうかについて作用物質とその誘導体をスクリーニングする方法である。別の方法としては、MUC1の切断の位置を変更する能力があるかについて、同様の酵素(例えば同じファミリー由来)の活動に影響を及ぼすと知られている作用物質を試験し、かかる作用物質の誘導体を同様に試験する方法がある。この他の方法においては、作用物質を、酵素とMUC1レセプターとを含む無細胞分析においてスクリーニングし、切断率とその位置を、抗体検査であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等によって測定する。この他の方法においては、最初にMUC1に影響を及ぼす酵素を識別せずに、作用物質がMUC1の切断位置又は切断率を変更する能力があるかについて、MUC1を示す細胞に対して作用物質をスクリーニングする。例えば、作用物質を、MUC1を示す細胞全体を含む評価分析においてスクリーニングし、上澄細胞の集合潜在能力を測定することができる。これは、MUC1の切断部分に付着したままのIBRの量すなわちMGFRとIBRとの間の切断程度の指標とすることができる。この他の技法においては、作用物質をMUC1を示す細胞全体を含む評価分析においてスクリーニングして上澄細胞を除去し、例えばMGFRの標識抗体を使用して、MGFR部分のアクセス性について残余細胞を調べる。作用物質は分子ライブラリ等の市販源から識別してもよいし、同じ機能能力を有する既知の作用物質に基づき合理的に設計し、スクリーニング評価分析を用いてその活性について試験してもよい。
「作用物質はMUCIレセプターの切断を減少させる」とは、任意の位置においてMUCIレセプターの切断を妨げる又は減少させる化合物を意味する。かかる作用物質は、癌を有する対象又は癌成長リスクを有する対象を治療するために使用することができる。その理由は、切断を妨げれば、癌に関わる機能レセプターであるMGFRのアクセス性を減少させる又は妨げることができるからである。かかる作用物質は、細胞を候補作用物質に暴露し、上澄細胞において対照に対する切断MUC1レセプターの量を測定することによって選択することができる。
本明細書で使用される「対象」とは、哺乳類(好ましくはヒト)を意味し、好ましくは、MUC1の異常発現に関わる腫瘍形成又は癌に罹患する恐れがある哺乳類を意味する。例としては、ヒト、ヒト以外の霊長類、雌牛、馬、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコが含まれる。一般に本発明はヒトでの使用を目的とする。
本明細書で使用される「身体サンプル」とは、対象から得た任意の身体組織又は体液のサンプルを意味する。好ましくは、例えばリンパ、唾液、血液、尿、乳、胸部分泌物等の体液である。一部の実施形態においては血液が好ましい。本明細書に記載の様々な方法において使用される組織及び/又は細胞のサンプルは、以下を含めた標準的方法によって得ることができるが、これらの方法の限りではない。すなわち、パンチ生検や細胞スクレーピングを含めた組織生検、針生検、吸引やその他の方法による血液やその他の体液の採取が挙げられる。
MUC1の成長因子レセプター
一部の実施形態において、本発明は癌の治療のための合成物及び方法に関し、特にMUC1成長因子及び/又はそのリガンドに関係する相互作用を抑制することができる合成物、及びMUC1関連癌の症状を示す又はかかる癌の疑いがある患者を治療する方法に関する。本発明は更に、癌又は腫瘍形成の疑いがある又はその症状特性を示す患者の治療のためのかかる合成物の評価分析及び/又は使用に関する。癌又は腫瘍形成の治療又は予防に有用な本発明の一部の実施形態における他の合成物には、本明細書に開示される合成物の同族体、類似体、誘導体、光学異性体、又は本明細書に記載の合成物の機能的等価物が含まれる。かかる合成物を識別し、疾病プロセスの様々なステージにおいてどの合成物が有効かを識別するためにスクリーニングを行うため、本発明の一部の実施形態に従って評価分析を行うことができる。
一部の実施形態において、本発明は癌を含む増殖性疾患の治療又は予防のための合成物及び方法に関し、特に細胞表面レセプターMUC1に関係する増殖性疾患の治療又は予防のための合成物及び方法に関する。他の態様において、本発明は、MUC1関連腫瘍等の腫瘍に関連する増殖を含む細胞増殖の抑制に有用な様々な合成物(薬剤等)の発見に関する。一部の実施形態において、本発明は更に、増殖性疾病がMUC1に関係するものであるかを決定するための診断方法、並びにこれらの診断方法をMUC1に関係する状態のための有効な治療方法の決定に結びつけることに関する。本発明は更に、これらの治療に反応する患者の進歩状況を追跡するために使用可能な診断法に関する。更に他の態様において、本発明は、腫瘍に関連する増殖を含む細胞増殖の抑制に有用な様々な合成物(薬剤等)の発見に関する。かかる合成物には、金属を抽出可能な合成物、特にキネシン(kinesin)やマトリックスメタロプロテアーゼ等の蛋白質に依存する金属からMg又はZnの陽イオンを抽出可能な合成物が含まれる。本発明の合成物は、疾病治療用に合成物を使用するための使用上の注意を含むキットにて提供可能である。
MUC1は、多くの癌において異常発現する細胞表面レセプターである。このレセプターは健常な細胞においては細胞先端縁でクラスタリング化しており、癌細胞においては細胞表面全体に渡って分布していることが観察されている。MUC1レセプターは、切断可能であることが知られている。このレセプターは、一部の状況下において、細胞表面上の発現状態と内在化状態との間を往復し得ることも知られている。
一部の実施形態において、本発明は、癌を含む増殖性疾病の治療又は予防のための合成物に関係する。特に、癌細胞が細胞表面レセプターMUC1を示す場合における癌の治療のための化合物について説明を行う。これらの化合物の多くは、直接的であれ間接的であれ、MUC1レセプターを抑制し、この抑制によってMUC1陽性腫瘍細胞の成長が抑制される。これらの化合物は、MUC1陽性癌の治療又は予防のために患者に投与することができる。MUC1癌を抑制する化合物は、本明細書に記載の様々なメカニズムによって作用可能である。一部の実施形態において、化合物はレセプターのMGFR部分に結合してその成長因子活性を抑制する。本明細書に記載の他の化合物は、レセプターを切断させる酵素を抑制することによって間接的にMUC1レセプターを抑制する。一部の実施形態において、化合物はMUC1レセプターに結合しかつ金属キレート機能を有する。この金属キレート機能は、金属依存蛋白質を不活性化することによって、MUC1切断を抑制する。また、MUC1の発現を抑制する作用物質を使用することによってMUC1レセプターの癌形成活性を不能にする方法についても説明する。これは例えば、アンチセンスDNA又はRNAiと呼ばれる抑制RNAを使用することにより、MUC1の蛋白質分解を抑制し、MUC1の翻訳後修飾を抑制し、直接的又は間接的にMUC1の天然リガンドを抑制する。本明細書に記載の他の化合物は、細胞間蛋白質に作用し、細胞表面と細胞内との間を往復するようにMUC1近傍の細胞内領域に供給される。化合物は、キネシンファミリーを由来とする蛋白質を抑制することによって細胞増殖を抑制する。特に、特定の実施形態においては、これらから陽イオン金属を抽出することによってこれらの蛋白質を抑制する。陽イオン金属をキレート化し得る化合物についても説明する。かかる化合物は、当該陽イオン金属を除去又は生理的に除去することによって、酵素とレセプターの活性を抑制する。
MUC1レセプターは切断可能であって、レセプターの一部分を開放して細胞表面に付着する一部分を残す。MUC1の分離部分のレベル上昇は、ステージII、IIIの乳癌患者の血中で検出される。これらのレベルは癌の進行に伴い増大する。このことは、レセプター切断と癌の進行とが関係していることを示している。本発明の発明者は、先の出願(例えば米国特許出願公開第2003/0036199A1号、第2003/00302993A1号を参照。これらは本願に引用して援用する)において、細胞表面に付着したままの切断生成物は腫瘍細胞において優先的に生成されることを報告している。これらの低分子量種は、切断の結果生じるものであって、少なくとも2つの異なる部位で発生し、脱グリコシル化後のみかけ分子量は約20kDである。細胞表面に付着したままの部分は、基本的にPSMGFR(SEQ ID NO: 13)又はTSESMGFR(SEQ ID NO: 28)からなる。本発明の発明者は、MUC1のPSMGFR(表1、SEQ ID NO: 36)部分は、細胞成長を仲介し細胞成長及び腫瘍細胞の特徴である固定源非依存性細胞成長を可能にするレセプターの必要かつ十分な細胞外部分であることを先に開示している。したがって、PSMGFR又はESPSMGFRに結合する作用物質は、MUC1陽性癌の治療又は予防のための潜在的治療化合物になる可能性がある。MUC1切断生成物はMUC1の成長因子活性と腫瘍形成とに関わるので、より可能性の高い治療は、MUC1レセプターに結合して活性化リガンドとの相互作用をブロックし、レセプター又は近隣MUC1レセプターの切断を防ぐ機能を有する化合物である。更に、MUC1レセプターに結合して、メタロプロテアーゼによってMUC1切断を抑制する金属キレート機能を有する化合物も有効である。一部の実施形態において、キナゾリノン(quinazolinone)ファミリー由来及びベンズチオフェン(benzthiophene)等価物ファミリー由来の化合物、例えば金属キレート機能も有する化合物No. 84等が好ましい。
これまで、MUC1を切断させる酵素は知られていなかった。血中で検出された分離MUC1レセプターの量は疾病の進行につれて増加するので、また本発明の発明者は切断生成物PSMGFRが、レセプターの成長因子活性を仲介するレセプターの十分な部分であることを先に開示しているので、本発明の一部の態様において、本発明の発明者は、MUC1を切断させ得る酵素を抑制する上記作用物質は、MUC1陽性癌の治療及び予防のための治療標的であることを決定付けた。MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)の一部は癌において過剰発現すること、並びに一部のMMPの発現を誘発する特定のフォスファターゼ抑制剤は細胞増殖を増大させるとともにMUC1の分離を増大させることが報告されている。ただし、様々な基質を切断させる多数のMMPやADAMが存在し、これらは癌に関係するものもあれば関係しないものもある。したがって、治療の設計及び/又は発見において、本発明の一態様は、どのメタロプロテアーゼがどの基質を切断させるかを決定する方法、並びにそれぞれの抑制の生物学的結果を決定する方法に関係する。
MUC1切断を抑制する作用物質は、MUC1陽性癌の患者を治療するために使用することができる。本発明の発明者は、本発明の一部の態様において、フューリンを抑制する作用物質は、MUC1切断も抑制するので、MUC1陽性癌の治療又は予防に使用することができると決定した。フューリンは、他の酵素のプロドメインを切断させる酵素であって、この切断は、これらの酵素が活性状態になるにあたって必要である。フューリンは、プロ酵素の6つのMT-MMPをプロセシングして活性状態にする。TIMP(メタロプロテアーゼの組織抑制剤)は複数のMMPに結合してその切断活性を抑制する小さな蛋白質である。本発明の発明者は、本発明の一部の態様において、TIMP 2とTIMP 3はMUC1の切断を抑制することを決定した。MMP-14としても知られるMT1-MMPは、フューリンによってその活性状態へとプロセッシングされる。更に、TIMP 2とTIMP 3はMT1-MMPを抑制することが知られている。本明細書では、MT1-MMPはMUC1を切断させてPSMGFR及び/又はESPSMGFRから基本的になる成長因子レセプターとして機能する切断生成物を生成し得ることが開示される。したがって、MT1-MMPの抑制剤は、MUC1陽性癌の治療となり得る。本明細書は更に、本発明の一部の態様において、TIMP 2とTIMP 3はMUC1切断を抑制するので、MUC1陽性癌の治療となり得ることを開示する。これらの切断酵素の活性はZnの存在に依存するので、一部の実施形態においては、MUC1陽性癌を抑制する治療作用物質としてZnをキレート化する作用物質が好ましい。一部の実施形態において、MUC1癌の治療用作用物質は、MUC1レセプターのMGFR領域に結合するとともに、作用物質がZn又はMgをキレート化する金属キレート機能を有することが可能な作用物質である。
MUC1切断を抑制するMGFR結合性化合物
表4に示した化合物No. 173は、Mg、Zn、Niをキレート化することができる金属キレート体を有する。化合物No.184、No. 28も同様に金属キレート機能を有し、金属Mg、Znをキレート化することができる。したがって、これらの化合物は金属依存性蛋白質、特に金属依存性切断酵素の活性を抑制することができる。本発明の一部の実施形態において、化合物No.173、No. 184、No. 28は成長細胞上のMUC1レセプターの切断を抑制する(実施例5と図28を参照)。これらの化合物は、MUC1のMGFR部分にも結合可能なので、特に可能性の高い細胞増殖の抑制剤となり得る。これらの化合物は、MUC1の成長因子レセプター部分に結合してブロックし、金属キレート機能を金属依存プロテアーゼがMUC1を切断させる部位付近の部分に局在化させることもできるからである。化合物No.173、No. 184、No. 28は、MUC1の切断を抑制してレセプターの成長因子レセプター形態の生成を防止し、MGFRがその活性化リガンドと相互作用することをブロックすることができる二重機能化合物である。したがって、化合物No.173、No. 184、No. 28は、MUC1陽性癌とMUC1レセプターに関係するその他の細胞増殖性疾病の優れた治療となり得る。事実上、MUC1のPSMGFR領域に結合し金属キレート機能を有する本発明の合成物又は作用物質は、MUC1陽性癌の優れた治療となり得る。
当業者にとって周知のとおり、金属キレート体を有さないMUC1のPSMGFR領域に結合し得る作用物質は、任意の金属キレート体から誘導することができる。概して、化合物No.173、No. 184、No. 28は、金属依存蛋白質の抑制が有益な効果を有する状態のための治療法である。逆に、一部の適応症については、金属キレートの存在によって服用者に毒性効果をもたらす場合もある。これらの場合において、化合物No.173、No. 184、No. 28等の化合物は、金属キレート体が金属をキレート化できないように修飾することもできる。化合物No.173、No. 186の比較によって、この実施方法の一例が実証される。
化合物No.173から、金属をキレートできない新しい誘導体へと変換することは、直接的な方法で実施した。化合物No.173の第一級アミンは、医薬品化学の実践/技術において周知の方法にてメチル基で置換した。結果として得た新しい化合物は、化合物No.173による金属キレートを観察するために先に確立された状態下において、金属をキレートする傾向を示さなかった。質量スペクトルによれば、化合物No.173はMgをキレートするが、化合物No.186はMgをキレートしない(実施例7、8と図23、24、25を参照のこと)。両化合物ともに依然として、PSMGFRペプチドに結合することができ、MUC1陽性腫瘍細胞の成長を抑制する。理論から離れれば、化合物No.173、No. 184、No. 28は、類似化合物である。例えば、金属キレート機能を有する化合物であって、一部の実施形態においては金属キレート機能と標的部位において化合物の濃度を高めるモチーフとを有する化合物は、金属依存蛋白質によって媒介される状態を基本的に治療するために使用され得る。例えば、これらの種類の化合物は、ヘッジホッグ蛋白質及び特にソニックヘッジホッグ蛋白質によって媒介される癌を含む増殖性疾病の治療に使用される可能性がある。この場合、ヘッジホッグ蛋白質自体から金属を抽出するか、又は細胞内ヘッジホッグシグナル伝達経路において機能するキネシン状蛋白質であるCos 2(Costal 2)からZn金属を抽出する。化合物No.173、No. 184、No. 28、及びMgをキレート可能な同様な作用物質は、癌の治療用の作用物質となり得る。これらは、KSP(キネシンスピンドル蛋白質)からMg原子を抽出してATPのプロセッシングを抑制するからである。金属キレート機能を有する化合物は、複数回膜をスパンし金属に関係する蛋白質によって媒介される疾病の治療にも用いられる。かかる金属を除去することによって、ループが細胞に内在化されてシグナルが停止される。この種のレセプターの一例としては、ループの1つの上にZnを合成するメラトニンホルモン(melatonin hormone)レセプターが挙げられる。Zn原子の除去により、ループは内在化してシグナル調整に影響が及ぶ。
いくつかの細胞表面レセプターは、細胞表面と細胞内部との間を往復することが知られている。MUC1レセプターが細胞表面と細胞内部との間を往復することは先に報告されている。この往復プロセス中にMUC1レセプターをグリコシル化することが提案されている。一部の実施形態において、本発明は、MUC1レセプターの往復メカニズムを利用して、化合物を化合物が細胞内標的に作用する場所である細胞内部まで運ぶ方法を提供する。例えば、化合物No.173、No. 184、No. 28は、MUC1レセプターのMGFR部分に結合可能な機能と、金属をキレート化する機能とを有する。本発明の方法の一実施形態によれば、MUC1レセプターの往復メカニズムを利用して、MUC1陽性細胞内の化合物No.173、No. 184、No. 28の濃度を他の細胞の濃度よりも高くすることができる。これにより、治療を受ける部位において作用物質の濃度が高くなる。細胞内において、これらの化合物は、例えばKSPやCostal2(Cos2)等の細胞分裂に必要な蛋白質からMgやZnを抽出することができる。細胞膜を通して往復する細胞表面レセプターに結合する第一の機能と、細胞内標的に作用する第二の機能とを有する治療化合物は、基本的に有効な治療である。一部の実施形態において、好ましい化合物は、内在化可能なレセプターの部分に結合する第一の機能と、金属をキレート化する第二の機能とを有する化合物である。一部の実施形態において、好ましい化合物は、PSMGFR(SEQ ID NO: 36)及び/又はTSESMGFR(SEQ ID NO: 66)に結合する第一の機能と、Mg、Zn、及び/又はCaをキレート化する第二の機能を有する。一部の実施形態において、PSMGFR及び/又はTSESMGFRに結合する部分はキナゾリノンファミリー由来であって、金属キレート機能はマグネシウム及び/又は亜鉛をキレート化してKSP及び/又はCos2を不活性化させることができる。
癌がMUC1レセプターの異常形態を示すかどうか決定することは有益である。理由は、その異常発現は、大多数の癌において観察されるからである。本明細書では、MUC1レセプター及び/又はMUC1シグナル伝達経路に作用する抗増殖化合物について説明する。MUC1メカニズムによって作用する治療法は通常、MUC1陰性癌には有効でない。すなわち、MUC1レセプターが正常な形態で存在する細胞の特徴を有する癌には有効でない。MUC1及び/又はMUC1関連経路に作用する治療作用物質は、MUC1陽性癌に特に有効である。すなわち、MUC1レセプターを異常発現する細胞の特徴を有する癌に特に有効である。したがって、患者により有効な治療を提供するには、本発明の一部の実施形態で述べたように、癌がMUC1レセプターを異常発現するかどうか決定すべく特徴付けることが望ましい。この場合、異常発現とは、PSMGFR又はESPSMGFRから基本的になる蛋白質分解MUC1を示す細胞を意味する、及び/又はMUC1レセプターがクラスタリングせずに細胞表面に均一に分布してることを意味する、及び/又はMUC1が過剰発現していることを意味する。たとえダクトの発光表面におけるレセプターの優勢形態が基本的にPSMGFRからなる場合でも、ダクトを形成する細胞の先端部におけるMUC1のクラスタリングは、正常状態であることが分っている。本発明の一部実施形態に従って、例えば、本発明の1つ以上の合成物の投与等といった適切な治療過程を決定するために異常MUC1発現の有無を調べるべく、試料を評価分析することができる。また、本明細書に記載の合成物による治療から利益を受けると思われる患者群(例えば、MUC1の異常発現の特徴を有する癌を有する患者群)を決定すべく試料を分析することができる。
様々な標準的方法及び非標準的方法を使用して、試料がMUC1レセプター又はMUC1レセプターの異常形態を含むかどうか決定することができる。最も簡単な場合において、生検試料をVU4H5(Santa Cruz社製)、CA15.3(Roche Diagnosic社製)、又はCA 27.29(Biomira社製)等の抗体で染色する。これらは、MUC1レセプターのタンデムリピート単位を認識する。検査抗体は、光学的活性を有するか、或いは光学的活性があるか他の方法で検出可能な二次抗体に反応するかのいずれかである。したがって、染色試料の目視検査によって、腫瘍がMUC1陽性であるかMUC1陰性であるかが明らかになり、適切な治療を決定することができる。
当業者には、サンプル内のMUC1レセプターの有無を決定するために適切な複数の技法が存在することが理解されるであろう。かかる方法の1つにおいては、DNA又はRNAを含む核酸を分析して、MUC1配列が含まれているかどうか決定する。抗体やMUC1レセプターの部分を特定的に認識する他のリガンドを用いてレセプターの有無を検査する方法もある。例えば、ELISA等のサンドイッチ評価分析や、ウエスタンブロット評価分析を使用して、試料中のMUC1レセプター又はその部分の有無を決定する。更に、化学発光技術を使用して、認識作用物質がMUC1レセプターに結合しているか決定することもできる。サンプル内のMUC1レセプターの有無を検査するために使用される抗体の例としては、VU4H5とCA15.3とが挙げられる。これらの抗体その他は、細胞表面の末端にあってタンデムリピート単位を含むMUC1レセプターの部分を認識する。これらやその他の同族体は、MUC1レセプター又はその部分の有無を示す評価分析において使用可能である。
ただし、MUC1レセプターは蛋白質分解の影響を受け易いので、レセプターの特定部分を認識する診断抗体を使用することは、その他の部分を認識する抗体を使用することよりも有利である。本明細書は、蛋白質分解MUC1は腫瘍細胞において優先的に生成されること、生じる切断生成物の細胞外部分は基本的にPSMGFR及びTSESMGFRからなることを開示する。更に、本発明の発明者は、PSMGFRは、細胞成長を媒介し腫瘍細胞の特徴である固定非依存性細胞成長を可能にするMUC1レセプターの十分な部分であることを発見した。
MUC1レセプターのタンデムリピート単位に対する抗体は市販されていて、診断試薬として使用することができる。ただし、これらの抗体は、多くの理由から、細胞又は組織の試料を由来とするサンプルにおいてMUC1を検出する場合にだけ、特にサンプルが腫瘍由来である場合にだけその使用が限られている。腫瘍細胞においては、通常多くのレセプターが切断しているので、タンデムリピート単位は細胞表面に付着していない。このことは、この抗体で患者の試料を検査することによって、矛盾した結果を招くことを意味する。すべてのMUC1レセプターが成長因子レセプターとして機能するMGFR形態に切断しているという極端な場合においては、診断評価分析では、タンデムリピート単位が存在しないことを反映してMUC1陰性という結果が示されるが、これは成長因子形態が十分発現されているという事実を反映できていない。患者の試料が、終端繰返しに対する抗体に対して低い反応レベルを有する場合、これは細胞表面に発現するMUC1レベルが低いから、或いはレセプター切断のレベルが高く、ひいては腫瘍細胞増殖のレベルが高いからである。タンデムリピート単位に結合する抗体を使用する上での更なる問題は、繰返し単位数はヒトによって様々であって、この多様性は癌と関係がないことである。したがって、患者試料に対する抗体の反応性レベルが高いことは、細胞表面に発現するMUC1レセプターが大量にあることを意味する、或いは患者が各レセプターに付着する繰返し単位の平均数を上回る数でMUC1を発現していることを意味する。
本明細書では抗PSMGFR又は抗var-PSMGFRと称されるPSMGFRに反応する配列を有するペプチドに対して反応する抗体を使用して、MUC1陽性癌を診断することができることを開示する。この癌には以下が含まれるがこれらの限りではない。すなわち、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌が含まれる。抗var-PSMGFRは、乳、肺、結腸、膵臓、卵巣、前立腺由来のヒトの組織試料を調べるために使用した。細胞試料は、病理学者によって特徴付けを行った。腫瘍は、癌性状態、良性正常状態、良性非可塑性状態由来であった。乳、結腸、肺由来のMUC1陽性癌試料は、抗var-PSMGFRの程度から、厳密に癌として明確に識別可能であった。レセプターのタンデムリピート単位に対する抗体は性能が劣っていて、大部分の癌性細胞において染色がなされなかった(実施例3と図4〜10を参照)。MUC1の細胞質尾部に対する抗体は市販されている。これらの抗体は、PDS-PAGE又はウエスタンブロットを使用した分析に基づいてプロセシングされる患者試料を検査するために使用することができる。この種の評価分析を使用すると、細胞質尾部に対する抗体は、MUC1レセプターが試料に発現されているかどうか、並びに発現MUC1種の概算分子量を示すことができるが、細胞表面におけるレセプターのクラスタリング又はパターン化に関する情報は示さない。更に、これらの評価分析は時間がかかりその集中的作業を要する。
URの部分を認識する抗体は、一部の診断用には有用となり得るが、MUC1レセプターの当該部分は腫瘍細胞におけるMUC1切断後に細胞表面から通常分離しているので、URの部分を認識する抗体を診断試薬として使って組織や細胞の検査を行うには限界がある。レセプターの当該部分を認識する抗体は、切断されていないレセプターに対する切断率を測定するために有用となり得る。
一部の実施形態において、MUC1レセプターのMGFR部分に結合する抗体は、細胞や組織の試料を検査するための診断試薬として好ましい。一部の実施形態において、MUC1診断抗体は、ESPSMGFRの部分を認識する。一部の実施形態において、MUC1診断抗体は、PSMGFRの部分を認識する。本発明の発明者は、全長レセプターであれ蛋白質分解フラグメントであれ、腫瘍細胞から生成されたMUC1レセプターに特定に結合するnat-PSMGFR(図1、2を参照)に対して抗体が反応することを決定した。これは、腫瘍細胞においては、レセプターはクラスタリングしておらずPSMGFRエピトープが抗体結合に有用であるからである。
本発明の発明者は、ウエスタンブロット分析において使用される場合、この抗体は基本的にすべてのMUC1種を特定に検出することを決定した。また細胞表面上のMUC1レセプターは、溶液中に或いは組織試料中に遊離状態に見られることを決定した。更に本発明の発明者は、var-PSMGFRに対する抗体を生成した。更にこの抗体が、ウエスタンブロット、及び細胞表面に発現するすべてのMUC1を検出することを目的としたその他の分析方法において使用される細胞、組織試料の検査用に天然配列に対して反応する抗体よりもより特定性が高いことを実証した。更に、切断var-PSMGFR(SEQ ID No: 6)に対して反応する抗体は、ウエスタンブロット、及び細胞表面に発現するすべてのMUC1を検出することを目的としたその他の分析方法において使用される細胞、組織試料の検査用に有効であった。
本発明の発明者は、IBRの部分に対する抗体が、対象が癌に罹患する恐れがあること、並びに対象が急性進行癌を有することを決定するために有用であり得ることを実証した。細胞から分離したIBRの部分の存在が決定されることは、細胞表面に残ったままのMUC1レセプターの部分が成長因子レセプターとして機能すること、並びに癌の存在又は癌の傾向の指標となることを示す。対象の血液、血清、尿、乳、胸部分泌物、又はその他の体液サンプルにおける細胞表面から分離したIBR領域の存在が検出されることは、腫瘍が関わる切断生成物であるPSMGFR又はESMGFRが細胞表面に付着したまま残っていて、成長因子レセプターとして機能して腫瘍形成や癌の進行を促進することを証明する。単一又は組み合わせて使用されるPSMGFR、IBR、UR、及びタンデムリピート単位に対する抗体は、患者の癌の攻撃性について情報を与えるとともに、細胞や組織を含むサンプルだけでなく体液由来のサンプルを検査するために有用となり得る。癌の攻撃性の決定は、抗体の組合せを使用して行うことができ、これにより非切断レセプターに対する切断レセプターの比率を決定することができる。すなわち、各患者が示すMUC1レセプターの絶対レベルは、個人又は癌の程度によって異なるが、非切断レセプターに比べて切断MUC1レセプターの割合が高いほど、癌の潜在能力と腫瘍の攻撃性は高い。MUC1レセプターの様々な部分を認識する抗体の組合せを使用することによって、MUC1レセプターのどの部分がどれくらいの相対量で細胞表面又は循環系に存在するかを決定することができる。これは、転移可能性を診断、特徴付け、評価分析し、治療計画案を設計し、これらの治療に対する患者の反応の追跡を行うための方法として用いられる。
一部の実施形態において、PSMGFR又はESPSMGFRの部分に結合する例えば抗体、同族蛋白質、又は小分子等のシグナル能力を有する作用物質が、診断作用物質として有用である。かかる作用物質は、細胞、組織試料、又はその他のサンプルが細胞増殖を促進するMUC1種を示すかどうか検出する。一部の実施形態において、PSMGFRに結合しかつシグナル能力を有する抗体等の他の作用物質が診断作用物質として好ましい。かかる作用物質は、細胞、組織試料、又はその他のサンプルが細胞増殖を促進するMUC1種を示すかどうか検出する。一部の実施形態において、PSMGFR部分に結合する抗体が診断ツールとして好ましい。かかる抗体は、癌がMUC1陽性であるかMUC1陰性であるかどうか決定する。これらの抗体はMUC1が切断状態にあるか非切断状態にあるかを認識することができる。ただしこれらの抗体は、試料内の細胞がMUC1レセプターを発現するとわかっている場合であっても健康な細胞試料を染色しない。PSMGFRに対する抗体を用いた癌細胞の優先染色は、同族エピトープのアクセス性に起因し、かつ腫瘍細胞内のMUC1レセプターの過剰発現にも部分的に起因する場合がある。一部の実施形態において、UR又はタンデムリピートを認識する抗体と組み合せて使用されるIBRの部分を認識する抗体の使用は、サンプルが患者の体液由来である場合におけるMUC1陽性癌の診断をするために有用である。細胞表面から開放されたIBRのレベルが高い場合は癌を示し、特にレベルが高い場合は攻撃的な癌を示す。
一部の実施形態において、PSMGFR配列等のようにMGFRの部分に結合する例えば抗体、同族蛋白質、又は小分子等のシグナル能力を有する作用物質が、診断作用物質として有用である。かかる作用物質は、MRI走査やPET走査等全身診断用途において腫瘍又は癌を検出する。一部の実施形態において、かかる作用物質は、外科的切除の場合に目視可能な癌性細胞を示すための作用物質としても有用である。本発明の合成物は、シグナリングエンティティで修飾可能であるので、多くの望ましい用途のうちの任意の用途に有用である。
これらの用途には、小分子は特に好ましい。当業者にとっては、シグナリングエンティティで本発明の合成物を修飾する方法は周知である。これらの合成物を修飾するシグナリングエンティティは、用途に応じて多様である。例えば、MRIで検出される最も一般的な原子核は、H、F、Si、Pである。MRIにおける造影剤は通常、付着標的有機体を伴う遷移金属である(有機分子による金属のキレート化)。これらの作用物質は、当該検出原子核の緩和時間を変更するとともに、局所造影を可能にする。PET(陽電子放射断層撮影)走査は、身体に局在する有機分子への組込み後に造影剤として18Fを使用する。これら及びいくつかの他のシグナリングエンティティは、PSMGFRに結合する作用物質に付着して、MUC1の腫瘍形成形態を標的とする造影剤を形成することができる。
本発明の一部の実施形態によれば、MUC1レセプターの存在又はその癌性を決定するために分析される患者試料には、腫瘍試料、組織腫瘍、針生検材料、血液サンプルから抽出した細胞、血液サンプルや母乳を含むその他の体液におけるMUC1レセプターの分離部分、血液やその他の試料におけるリガンドや修飾リガンド等のMUC1関連因子が含まれる。
一部の実施形態において、腫瘍は患者から切除され、MUC1レセプターに対する抗体で試料を処理することによって、腫瘍が癌性かどうか決定し、かつ腫瘍がMUC1を異常発現するかどうか決定するために分析される。MUC1は通常、上皮細胞に広く発現するが、健康な細胞においては細胞先端部においてのみ通常検出される。目視検査を行って、発現MUC1がクラスタリングしているかどうか、又は細胞表面全体に発現しているかどうか決定する。これはMUC1関連癌の特性である。この種のMUC1発現は異常であり、かかる癌はMUC1陽性癌と呼ばれる。組織試料における特定の分子の発現は、当業者にとって周知の様々な方法で検出可能である。組織生検と針生検の試料中の目視可能な特定の分子を示すには通常、いくつかの免疫組織化学(IHC)技法、試薬の染色、及び検出可能な二次抗体を通常用いる。
細胞に発現するPSMGFRのレベルは、健康なMUC1陽性細胞上に通常みられる確立されたレベルと比較される。抗PSMGFRと相互作用するMUC1種のレベルが高いことは、癌が存在し、かつかかる癌が攻撃性である可能性があることを示す。一部の実施形態において、試料は抗PSMGFRと特定領域を認識する抗体とで検査し、抗固有領域の反応に対するPSMGFRの反応の比率を測定する。PSMGFRの固有領域が高率である場合、すなわち非切断MUC1よりも切断MUC1が多い場合、攻撃性癌の存在が示されているので、この測定は予測診断として使用し適切な治療設計に使用される。試料が癌性でMUC1を発現すると決定した場合、レセプターのPSMGFR部分に直接結合する化合物で治療を行う。かかる化合物の例としては、表2、3、4、5に記載の化合物が挙げられる。特に好ましいのは、化合物No. 173、No. 184、No. 28、No. 185、No. 118、No. 125、No. 182、No. 188、No. 107、No. 109である。
非癌性組織の試料を市販の抗体であるVU4H5(Santa Cruz社製)で検査した。かかる抗体は、タンデムリピート単位に結合する。このとき、正常なダクトに沿って並ぶ細胞内に細胞質染色が時々観察された。他の正常なダクトは、タンデムリピートを認識する抗体で染色陽性とならなかった。ただし、一部の癌性組織試料をタンデムリピートに対する抗体で処理した場合、ダクトに関係しない大きな癌性領域がかかる抗体で染色陽性であった。タンデムリピート単位に対する抗体による染色は、広汎性で細胞質性であった。癌の特徴付けにタンデムリピート単位に対する抗体を使用することは、以下の点で限定的である。すなわち、試料の大部分の癌性領域の一部は、これらの抗体で染色陽性とならなかった。本観察から推定すると、異常MUC1発現が作用する末期癌は、分離したレセプターの一部に対するこれらの抗体で染色陰性となる。これらの抗体は、腫瘍成長を促進する成長因子レセプターとして機能するレセプターの一部に対して反応しない。例としては、MUC1のMGFRに対する抗体では染色陽性であるが遠位のタンデムリピート単位に対する抗体では染色陰性である癌性細胞が挙げられる(実施例3と図9を参照)。
特に好ましい一実施形態において、腫瘍組織試料は、本明細書において抗PSMGFR CB(実施例3、図4〜10を参照)と称されるvar-PSMGFR(SEQ. ID No. 7)に対して反応する抗体で試料を処理することによって、MUC1陽性癌かMUC1陰性癌かについて特徴付けた。本発明の発明者は、本明細書において、癌性組織の細胞上にみられるMUC1種が基本的にPSMGFRを備えタンデムリピートを有さないことを開示する、すなわち、癌性細胞表面上の基本的にすべてのMUC1レセプターは切断・分離して、少なくともタンデムリピートを含みPSMGFRを含む細胞表面に付着するレセプターの一部を残すレセプターの部分を開放することを開示する。抗PSMGFRは試料の全ての癌性領域を激しく染色した。染色は膜性であって、細胞表面全体にレセプターの均一な分布がみられた。一部の場合において、染色は金網模様に類似していた。癌性領域におけるダクトは激しく染色され、染色は細胞先端部に限定されず、細胞表面全体に広がっていた。ダクト周辺の細胞の4〜5層は染色陽性で、均一な膜染色を示した。これは、ダクトを形成する細胞の単一層が細胞先端部のみにおいて染色陽性になる抗PSMGFRでの正常な非癌性ダクトの染色と対照的である。分析した各組織試料は、当初は健康で正常な細胞で構成されていた試料の領域を有していた。これらの健康な細胞は、抗PSMGFR抗体では染色陽性とならない。本発明の発明者は、本明細書において、ダクトの発光縁から離れた領域にある細胞の抗PSMGFR染色を単に目視観察することによって、及び/又は細胞表面全体に均一分布する抗PSMGFR染色を観察することによって、及び/又は抗PSMGFRでの組織試料の領域の染色大領域を検出することによって、癌性組織試料が非癌性試料又はMUC1陰性腫瘍試料から簡単に区別できることを開示する。
試料がMUC1陽性癌かMUC1陰性癌かどうか試料の特徴付けを行う上で、抗PSMGFRの使用は、タンデムリピートを認識する抗体の使用より優れている。腫瘍細胞上のMUC1レセプターのほとんどすべては切断してタンデムリピート領域を分離・開放しているので、染色は広汎性細胞質染色に限定される。細胞の高癌性領域において、これらの抗体を使ってMUC1染色は検出されない。更に、癌性試料の「正常な」領域において正常にみえるダクトは、タンデムリピートに対する抗体では染色陽性とならない。これらの影響により、試料を細胞表面から分離しているVU4H5等のMUC1レセプターの部分に対する抗体で検査すると、間違った陰性診断が下されてしまう。更に、癌がMUC1陰性であったとしても、MUC1陰性癌の神経部はタンデムリピートに対する抗体では染色陽性となってしまう。これによって、間違った陽性診断が下されることになる。これに対して、MUC1レセプターのPSMGFR領域は腫瘍細胞の成長を媒介する成長因子レセプターとして作用する部分なので、抗PSMGFRでの染色は、関連細胞の成長因子レセプターとして作用している試料内のMUC1の量が直接示される。染色の程度は、分析されるサンプルの腫瘍形成可能性に直接比例する。抗PSMGFR染色のレベルは、癌の診断、MUC1陽性癌の診断に使用することができるとともに、腫瘍の程度や転移可能性の指標としても使用可能である。
多くの腫瘍、特に胸部腫瘍は、良性すなわち癌性でないとして特徴付けられるが、これらは多くの非可塑性細胞を含む。多くの良性状態及び良性腫瘍については、癌に移行する見込みを予測することは今まで不可能であった。ある方法によって良性であるが非可塑性な腫瘍が癌性に移行する可能性を予測することができるなら、早期治療計画案を実施することによって、治癒率と生存率が向上し得る。本明細書において本発明の発明者は、MUC1レセプターのMGFR部分に結合する抗体が癌に移行し易い「良性」状態を識別するために使用可能であることを開示する。抗PSMGFRは、癌性試料の非可塑性細胞内の環を染色するが、この他の非癌性試料における非可塑性細胞を染色しない。この試料には、癌に移行しないが高レベルのディスプラシアを有することが知られている状態の試料が含まれる。従って、抗PSMGFRは癌性腫瘍でなく、非可塑性細胞の染色に用いて癌に移行する可能性を予測することができる。癌に移行する可能性がある場合、針生検や組織生検の非可塑性細胞や回収循環細胞内の環が染色される。
本発明は、一態様において、腫瘍形成状態又は健康なレセプタークラスタリングが崩壊している状態の症状を表す恐れがある又はかかる症状を表す患者を治療する方法にも関係する。
更に本発明は、本発明の一部の実施形態において、癌に関係しない状態を含めた、癌と異なる状態の患者の治療にも適用可能である。本発明の合成物が他の状態の治療に定評がある場合、本発明は癌治療用としてのかかる合成物の使用にも関係する。一部の実施形態において、本発明は、投与量、供給技法や媒介物、その他の医薬合成物との組合せの有無、投与頻度、投与タイミング、又はその他の要素が癌と異なる状態の治療用の合成物の使用と異なる治療も含む。
他の一部の実施形態において、本発明は本発明の特定の方法に従って、有用な薬剤を以前に受けたことがない患者群を治療することを目的としている。かかる患者には、異常細胞増殖、癌又は腫瘍、特にMUC1関連癌に罹患していない又は罹患する恐れがある患者を含む。換言すると、治療は、本発明に従って有用な薬剤による治療を必要とする症状を表していない患者群に対しても好ましく用いられる。
Bamdadらによる2001年4月12日出願PCT/US01/12484(WO 01/78709)、Bamdadらによる2000年1月25日出願PCT/US00/01997(WO 00/43791)、Bamdadらによる2000年1月21日出願PCT/US00/01504(WO 00/34783)は、本願に引用して援用する。また、Bamdadらによる2001年11月27日出願PCT/US01/44782(WO 02/056022)も本願に引用して援用する。
本発明は、一部の実施形態において、癌に関する合成物、及び鎖間結合領域の特徴を有する細胞表面レセプターの種類の異常発現の特徴を有する癌の治療の方法に関係する。かかる癌のグループは、MUC1の異常発現の特徴を有する癌のグループである。本明細書において本発明の説明の多くは、MUC1を異常に発現する細胞に関係する。これらの場合において、記載内容は例示的であって、本発明の原則は、同様のメカニズムにより機能する他の細胞表面レセプターに適用されると理解されたい。本明細書の開示内容に照らして、当業者は、本書に記載のメカニズムや同様のメカニズムによって機能する他の細胞表面レセプターを識別するとともに、これらのレセプターの異常発現の特徴を有する癌に本発明を適用することが容易にできるであろう。本発明は、本発明の発明者が示すMUC1によって例示された細胞表面レセプターの異常発現に関係する新しいメカニズムに基づく。
本発明の一態様は、MUC1の異常発現の特徴を有する癌又は腫瘍の診断を受けた又はそのリスクを有する対象を治療する方法を目的としている。本発明の治療には、本明細書に記載の合成物又は「作用物質」の使用が関係する。すなわち、本発明の一態様は、MUC1の異常発現の特徴を有する癌又は腫瘍の治療に有用な一連の合成物又は作用物質に関係する。これらの合成物は、キットに包装してもよい。キット内にはオプションとして、かかる状態を治療するための合成物の使用上の注意を含めてもよい。これら及びその他の本発明の実施形態は更に、本明細書に記載の技法、合成物、合成物の組合せのいずれかに係る癌又は腫瘍の治療の促進にも関係する。
本発明の一態様は、後に記載する合成物(No. 1〜No. 188)のいずれかを備えた合成物を備えた医薬品を提供する。オプションとして、薬学的に活性なキャリヤーを含んでもよい。
一実施形態において、合成物は、合成物No. 1〜No. 188の同族体、類似対、誘導体、光学異性体、及びそれらの合成物と機能的に等価な合成物を備える。本発明の別の態様は、上記の合成物のいずれかを癌及び特にMUC1陽性癌の治療に有用な物質として提供する。特に好ましいのは、化合物No. 173、No. 184、No. 28、No. 185、No. 118、No. 125、No. 182、No. 188、No. 107、No. 109である。
化合物の構造
本発明の一部の実施形態は、MUC1が関連する増殖性疾病、特に癌を抑制可能な合成物であって、成長因子レセプターとして機能するMUC1の該当部分の抑制、全長レセプターの腫瘍形成形態への切断の抑制、又はリガンドとのMUC1レセプターの相互作用の抑制に関与する合成物、およびMUC1関連癌の症状を示す又はその疑いのある患者を治療するためにMUC1の直接相互作用を抑制するか又はその発現を抑制するかの方法に関する。一部の場合において、本願の主題事項には、相互に関連する生成物、特定の問題に対する代替的解決法、及び/又は単一のシステム又は生産物に関する複数の様々な用途が含まれる。
本明細書においては、特定の状態の予防又は治療のための合成物を対象に投与する複数の方法が開示されている。本発明の各態様において、本発明には、特定の状態の治療又は予防において使用するための合成物、並びにかかる特定の状態の治療又は予防のための薬剤を製造するための合成物の使用が特別に含まれる。本発明の一部の態様において、本発明には、医薬的に受容可能な担体も含まれる。
本発明は、選択された患者群の治療方法を含む。本明細書に記載されたすべての合成物は、記載の各方法に対し有用又は潜在的に有用である。
本発明の一部の実施形態には、コンビナトリアルな研究方法が含まれており、すなわち、様々な疾病のステージの治療に有効な特徴であると同定された合成物の構造特性に基づいて、多様な構造同族体、類似体、誘導体、光学異性体、又は機能的に等価な合成物をコンビナトリアルに合成してMUC1関連癌の治療に有用な多様な合成物を同定する。したがって、一実施形態において、本発明には、提供された合成物No. 1〜No. 188の任意の1つ以上を基にコンビナトリアルな合成を行い複数の合成物を取得することが含まれる。ここで、該複数の合成物に関して評価分析を行えば、癌治療において、特に例えば本明細書に記載の癌の治療においてそれらが有効であるか否かを決定することができる。医化学技法を用いれば合成物No. 1〜No. 188も変更を加えることが可能である。
本発明の他の態様には、一部の実施形態において、合成物No. 1〜No. 188のいずれかを含む組成物と医薬的に活性な担体、例えば炭水化物、レクチン及び/又はレクチンレセプターとを含む医薬品が提供される。一実施形態において、組成物には、合成物No. 1〜No. 188の構造同族体、類似体、誘導体、光学異性体、又は機能的に等価な合成物が含まれ得る。本明細書に記載のすべての構造において、標記のない原子の位置には、適切に水素を持った炭素が存在する。一部の実施形態において、MUC1関連癌の予防又は治療を促進するために、本発明の合成物、及び/又はその同族体、類似体、誘導体、光学異性体又は機能的に等価な合成物のうちのいずれか1つ以上を投与することを含む方法が本発明により提供される。
本発明の他の態様において、本発明の合成物、及び/又はその同族体、類似体、誘導体、光学異性体、又は機能的に等価な合成物のうちのいずれか1つ以上と、MUC1の異常発現を特徴とする癌の治療にこれら合成物を使用する指示書とが含まれるキットが本発明により提供される。
一態様において、本発明は少なくともその一部は、方法によって特定される。本発明の一部の実施形態において、その方法では、MUC1の異常発現を特徴とする癌の疑いがある又はその癌の症状を示すヒト患者を治療するために、本明細書に記載の合成物のいずれかを使用することが含まれる。ある実施形態では、患者はMUC1の異常発現を特徴とする癌の疑いがありながら、かかる癌の症状を示さない。しかし他の実施形態では、その患者がMUC1の異常発現を特徴とする癌の症状を示すことになる。本発明方法の実施形態では、患者はヘッジホッグ蛋白質の異常発現を特徴とする癌の治療を指示されることはない。
他の一態様において、本発明は、本明細書に記載の実施形態のいずれかを製造する方法に関する。更に他の態様において、本発明は、本明細書に記載の実施形態のいずれかを使用する方法に関する。
一態様において、本発明は、一般的な構造と式を有し、十分に確立された方法によって規定どおりに調製可能な化合物を含む合成物に関係する。一部の実施形態において、かかる合成物は以下の構造を有する。
式I

式中、M1、M2、M3、M4は、炭素、窒素、硫黄、酸素の残基及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択され、その結果原子価が充足されて化学的に安定な縮合二環系が達成される。M1〜M4の位置における上記原子上の置換基は、水素、又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、又は炭素結合置換基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびより高級のアルキルおよびアリール誘導体、又は窒素結合置換基、例えばアミン、メチルアミン、ジメチルアミン又はより高級の第二または第三級アルキルまたはアリールアミン、又は酸素/硫黄/セレン結合置換基、例えばヒドロキシル基、スルフヒドリル基、セレニルヒドリル基及びこれらのアルキルおよびアリールエーテル誘導体、又はケイ素/リン/ホウ素結合置換基、例えばこれら残基でのアルキル又はアリール置換基であってよく、ただしすべての場合において結合原子および結合原子の置換基は原子価が充足されて化学的に安定となるために必要な態様である。R1は、ハロゲン以外の任意の原子又は置換基であってよく、例えば水素、メチル、エチル、ベンジル、アリール、及びそれらの置換誘導体である。R2およびR3は、それぞれ独立に選択されて、水素、又は置換された酸素/炭素/窒素/硫黄結合置換基であり、その結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。R2およびR3は共有結合して一組の単環式窒素環(monocyclic aza-cycles)を形成してよい。R4およびR4'は、独立に水素、炭素/酸素/窒素/硫黄結合置換基であってよく、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、およびより高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであって、ただし全ての場合において置換基を選択した結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。R4およびR4'は共有結合して一組の環状化合物を形成してよい。
他の一部の実施形態において、かかる合成物は以下の構造を有する。
式II

式中、M1、M2、M3、M4は、炭素、窒素、硫黄、酸素の原子及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択され、その結果原子価が充足されて化学的に安定な縮合二環系が達成される。M1〜M4の位置における上記炭素、窒素および硫黄原子上の置換基Zによる一個または複数個の置換は、水素、又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、又は炭素結合置換基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびより高級のアルキルおよびアリール誘導体、又は窒素結合置換基、例えばアミン、メチルアミン、ジメチルアミン又はより高級の第二または第三級アルキルまたはアリールアミン、又は酸素/硫黄/セレン結合置換基、例えばヒドロキシル基、スルフヒドリル基、セレニルヒドリル基及びこれらのアルキルおよびアリールエーテル誘導体、又はケイ素/リン/ホウ素結合置換基、例えばこれら原子でのアルキル又はアリール置換基であってよい。すべての場合において結合原子および結合原子の置換基は原子価が充足されて化学的に安定となるために必要な態様である。R1は、ハロゲン以外の任意の残基、例えば水素、メチル、エチル、ベンジル、アリール、及びそれらの置換誘導体であってよい。R2およびR3は、それぞれ独立に選択されて、水素、又は置換された酸素/炭素/窒素/硫黄結合置換基であり、その結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。R2およびR3は共有結合して一組の単環式窒素環を形成してよい。R4およびR4'は、独立に水素、炭素/酸素/窒素/硫黄結合置換基、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、およびより高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであってよ。全ての場合において置換基を選択した結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。R4およびR4'は共有結合して一組の環状化合物を形成してよい。
他の一部の実施形態において、かかる合成物は以下の構造を有する。
式III

式中、M1、M2、M3、M4は、炭素、窒素、硫黄、酸素の原子及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択され、その結果原子価が充足されて化学的に安定な縮合二環系が達成される。M1〜M4の位置における上記炭素、窒素および硫黄原子上の置換基Zによる一個または複数個の置換は、水素、又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、又は炭素結合置換基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびより高級のアルキルおよびアリール誘導体、又は窒素結合置換基、例えばアミン、メチルアミン、ジメチルアミン又はより高級の第二または第三級アルキルまたはアリールアミン、又は酸素/硫黄/セレン結合置換基、例えばヒドロキシル基、スルフヒドリル基、セレニルヒドリル基及びこれらのアルキルおよびアリールエーテル誘導体、又はケイ素/リン/ホウ素結合置換基、例えばこれら原子でのアルキル又はアリール置換基であってよい。すべての場合において結合原子および結合原子の置換基は原子価が充足されて化学的に安定となるために必要な態様である。M5〜M14は、炭素、窒素、酸素又は硫黄、又は水素以外の任意の残基、又はハロゲンであってよく、および一部の実施形態では部分構造であってもよく、ただしM5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14は、炭素、窒素、硫黄、酸素の原子、及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択されて、その結果原子価が充足されて化学的に安定な単環式または二環式環状系が達成される。R2およびR3は、それぞれ独立に選択されて、水素、又は置換された酸素/炭素/窒素/硫黄結合置換基であり、その結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。R2およびR3は共有結合して一組の単環式窒素環を形成してよい。R4およびR4'は、独立に水素、炭素/酸素/窒素/硫黄結合置換基、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、およびより高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであってよい。全ての場合において置換基を選択した結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。R4およびR4'は共有結合して一組の環状化合物を形成してよい。
他の一部の実施形態において、かかる合成物は以下の構造を有する。
式IV

式中、M1、M2、M3、M4は、炭素、窒素、硫黄、酸素の原子及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択され、その結果原子価が充足されて化学的に安定な縮合二環系が達成される。M1〜M4の位置における上記炭素、窒素および硫黄原子上の置換基Zによる一個または複数個の置換は、水素、又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、又は炭素結合置換基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびより高級のアルキルおよびアリール誘導体、又は窒素結合置換基、例えばアミン、メチルアミン、ジメチルアミン又はより高級の第二または第三級アルキルまたはアリールアミン、又は酸素/硫黄/セレン結合置換基、例えばヒドロキシル基、スルフヒドリル基、セレニルヒドリル基及びこれらのアルキルおよびアリールエーテル誘導体、又はケイ素/リン/ホウ素結合置換基、例えばこれら原子でのアルキル又はアリール置換基であってよい。すべての場合において結合原子および結合原子の置換基は原子価が充足されて化学的に安定となるために必要な態様である。M5〜M14は、炭素、窒素、酸素又は硫黄、又は水素以外の任意の残基、又はハロゲンであってよく、および一部の実施形態では部分構造であってもよく、ただしM5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14は、炭素、窒素、硫黄、酸素の原子及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択されて、その結果原子価が充足されて化学的に安定な単環式または二環式環状系が達成される。更に、M5〜M14の位置における上記記載の炭素、窒素、硫黄原子上の置換基Yによる一個及び複数個の置換は、水素又はハロゲン、又は置換された酸素/炭素/窒素/硫黄結合置換基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、より高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであってよく、その結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。R2およびR3は、それぞれ独立に選択されて、水素、酸素/炭素/窒素/硫黄結合置換基であってよく、例えばメチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、より高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであって、その結果原子価が充足されものである。R2およびR3は共有結合して一組の単環式窒素環を形成してよい。R4およびR4'は、独立に水素、炭素/酸素/窒素/硫黄結合置換基であってよく、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、およびより高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンである。全ての場合において置換基を選択した結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。R4およびR4'は共有結合して一組の環状化合物を形成してよい。
他の一部の実施形態において、かかる合成物は以下の構造を有する。
式V

式中、M1、M2、M3、M4は、炭素、窒素、硫黄、酸素の原子及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択され、その結果原子価が充足されて化学的に安定な縮合二環系が達成される。M1〜M4の位置における上記炭素、窒素および硫黄原子上の置換基Zによる一個または複数個の置換は、水素、又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、又は炭素結合置換基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびより高級のアルキルおよびアリール誘導体、又は窒素結合置換基、例えばアミン、メチルアミン、ジメチルアミン又はより高級の第二または第三級アルキルまたはアリールアミン、又は酸素/硫黄/セレン結合置換基、例えばヒドロキシル基、スルフヒドリル基、セレニルヒドリル基及びこれらのアルキルおよびアリールエーテル誘導体、又はケイ素/リン/ホウ素結合置換基、例えばこれら原子でのアルキル又はアリール置換基である。すべての場合において結合原子および結合原子の置換基は原子価が充足されて化学的に安定となるために必要な態様である。一部の実施形態において、-A-は、酸素や硫黄等の二価置換基の残基、又は窒素等の三価置換基の残基、又は炭素等の四価置換基の残基、又は2つ以上の安定した結合を形成可能な他の任意の残基であってよく:更にM5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14は、炭素、窒素、硫黄、酸素の原子、及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択されて、その結果原子価が充足されて化学的に安定な単環式または二環式環状系が達成される;更に、M5〜M14の位置における上記記載の炭素、窒素、硫黄原子上の置換基Yによる一個及び複数個の置換は、水素又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、又は置換された酸素/炭素/窒素/硫黄結合置換基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、より高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであってよく、その結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。R2およびR3は、それぞれ独立に選択されて、水素、酸素/炭素/窒素/硫黄結合置換基であってよく、例えばメチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、より高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであって、その結果原子価が充足されものである;R2およびR3は共有結合して一組の単環式窒素環を形成してよい。R4およびR4'は、独立に水素、炭素/酸素/窒素/硫黄結合置換基であってよく、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、およびより高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであってよい。全ての場合において置換基を選択した結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。R4およびR4'は共有結合して一組の環状化合物を形成してよい。
他の一部の実施形態において、かかる合成物は以下の構造を有する。
式VI

式中、M1、M2、M3、M4は、炭素、窒素、硫黄、酸素の原子及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択され、その結果原子価が充足されて化学的に安定な縮合二環系が達成される。M1〜M4の位置における上記炭素、窒素および硫黄原子上の置換基Zによる一個または複数個の置換は、水素、又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、又は炭素結合置換基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびより高級のアルキルおよびアリール誘導体、又は窒素結合置換基、例えばアミン、メチルアミン、ジメチルアミン又はより高級の第二または第三級アルキルまたはアリールアミン、又は酸素/硫黄/セレン結合置換基、例えばヒドロキシル基、スルフヒドリル基、セレニルヒドリル基及びこれらのアルキルおよびアリールエーテル誘導体、又はケイ素/リン/ホウ素結合置換基、例えばこれら残基でのアルキル又はアリール置換基である。すべての場合において結合原子および結合原子の置換基は原子価が充足されて化学的に安定となるために必要な態様である。一部の実施形態において、-A-は、酸素や硫黄等の二価置換基の残基、又は窒素等の三価置換基の残基、又は炭素等の四価置換基の残基、又は2つ以上の安定した結合を形成可能な他の任意の残基であってよい;更にM5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14は、炭素、窒素、硫黄、酸素の原子及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択されて、その結果原子価が充足されて化学的に安定な単環式/二環式環状系が達成される。更に、M5〜M14の位置における上記記載の炭素、窒素、硫黄原子上の置換基Yによる一個及び複数個の置換は、水素又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、又は置換された酸素/炭素/窒素/硫黄結合置換基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、より高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであってよく、その結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。R2およびR3は、それぞれ独立に選択されて、水素、酸素/炭素/窒素/硫黄結合置換基であってよく、例えばメチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、より高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであって、その結果原子価が充足されものである。R2およびR3は共有結合して一組の単環式窒素環を形成してよい。一部の実施形態において、R2は、水素以外の残基2個ないし水素以外の残基8個以下を含む部分構造であってよい。M15〜M24は、独立に炭素、窒素、酸素又は硫黄又は水素以外の任意の残基又はハロゲンであってよく、また一部の実施形態においては部分構造であってもよく、ただしM15、M16、M17、M18、M19、M20、M21、M22、M23、M24は、炭素、窒素、硫黄、酸素の残基及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択され、その結果原子価が充足されて化学的に安定な単環式/二環式環状系が達成される。R4およびR4'は、独立に水素、炭素/酸素/窒素/硫黄であってよく原子価が充足されるのに必要な置換を有する;R4およびR4'は共有結合して一組の環状化合物を形成してよい。
他の一部の実施形態において、かかる合成物は以下の構造を有する。
式VII

式中、M1、M2、M3、M4は、炭素、窒素、硫黄、酸素の原子及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択され、その結果原子価が充足されて化学的に安定な縮合二環系が達成される。M1〜M4の位置における上記炭素、窒素および硫黄原子上の置換基Zによる一個または複数個の置換は、水素、又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、又は炭素結合置換基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびより高級のアルキルおよびアリール誘導体、又は窒素結合置換基、例えばアミン、メチルアミン、ジメチルアミン又はより高級の第二または第三級アルキルまたはアリールアミン、又は酸素/硫黄/セレン結合置換基、例えばヒドロキシル基、スルフヒドリル基、セレニルヒドリル基及びこれらのアルキルおよびアリールエーテル誘導体、又はケイ素/リン/ホウ素結合置換基、例えばこれら原子でのアルキル又はアリール置換基であってよい。すべての場合において結合原子および結合原子の置換基は原子価が充足されて化学的に安定となるために必要な態様である。一部の実施形態において、-A-は、酸素や硫黄等の二価置換基の残基、又は窒素等の三価置換基の残基、又は炭素等の四価置換基の残基、又は2つ以上の安定した結合を形成可能な他の任意の残基であってよい;更にM5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14は、炭素、窒素、硫黄、酸素の残基及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択されて、その結果原子価が充足されて化学的に安定な単環式または二環式環状系が達成される。M5〜M14の位置における上記記載の炭素、窒素、硫黄の残基上の置換基Yによる一個及び複数個の置換は、水素又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、又は置換された酸素/炭素/窒素/硫黄結合置換基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、より高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであってよく、その結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。R2およびR3は、それぞれ独立に選択されて、水素、酸素/炭素/窒素/硫黄結合置換基であってよく、例えばメチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、より高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであって、その結果原子価が充足されものである。R2およびR3は共有結合して一組の単環式窒素環を形成してよい。一部の実施形態において、R2は、水素以外の残基2個ないし水素以外の残基8以下を含む部分構造である。M15〜M24は、独立に炭素、窒素、酸素又は硫黄又は水素以外の任意の残基又はハロゲンであってよく、また一部の実施形態においては部分構造であってもよく、ただしM15、M16、M17、M18、M19、M20、M21、M22、M23、M24は、炭素、窒素、硫黄、酸素の残基及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択され、その結果原子価が充足されて化学的に安定な単環式または二環式環状系が達成される。上記記載の炭素、窒素、硫黄原子上のM15〜M24の位置における置換基Xによる一個及び複数個の置換は、水素又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、又は置換された酸素/炭素/窒素/硫黄/結合置換基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、およびより高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであってよく、その結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。R2およびR3は、それぞれ独立に選択されて、水素、酸素/炭素/窒素/硫黄結合置換基、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、およびより高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであって、原子価を充足させるものである;R2およびR3は共有結合して一組の単環式窒素環を形成してよい。R4およびR4'は、独立に水素、または炭素/酸素/窒素/硫黄置換基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、およびより高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであってよい。全ての場合において、置換基が選択された結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。R4およびR4'は共有結合して一組の環状化合物を形成してよい。
他の一部の実施形態において、かかる合成物は以下の構造を有する。
式VIII

式中、M1、M2、M3、M4は、炭素、窒素、硫黄、酸素の原子及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択され、その結果原子価が充足されて化学的に安定な縮合二環系が達成される。好ましくは、M1〜M4はキナゾリン核構造を生ずる炭素残基であってよい。M1〜M4の位置における上記炭素、窒素および硫黄原子上の置換基Zによる一個または複数個の置換は、水素、又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、又は炭素結合置換基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびより高級のアルキルおよびアリール誘導体、又は窒素結合置換基、例えばアミン、メチルアミン、ジメチルアミン又はより高級の第二または第三級アルキルまたはアリールアミン、又は酸素/硫黄/セレン結合置換基、例えばヒドロキシル基、スルフヒドリル基、セレニルヒドリル基及びこれらのアルキルおよびアリールのエーテル誘導体、又はケイ素/リン/ホウ素結合置換基、例えばこれら原子でのアルキル又はアリール置換基であってよい。すべての場合において結合原子および結合原子の置換基は原子価が充足されて化学的に安定となるために必要な態様である。好ましくは、M3は塩素(Z)で置換された炭素原子である。一部の実施形態において、-A-は、酸素や硫黄等の二価置換基の残基、又は窒素等の三価置換基の残基、又は炭素等の四価置換基の残基、又は2つ以上の安定した結合を形成可能な他の任意の残基であってよい;更にM5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14は、炭素、窒素、硫黄、酸素の残基及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択されて、その結果原子価が充足されて化学的に安定な単環式または二環式環状系が達成される。M5〜M14の位置における上記記載の炭素、窒素、硫黄の原子上の置換基Yによる一個及び複数個の置換は、水素又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、又は置換された酸素/炭素/窒素/硫黄結合置換基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、より高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであってよく、その結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。好ましくは、置換基(-Y- M5-M14)はベンジル基である。R2およびR3は、それぞれ独立に選択されて、水素、酸素/炭素/窒素/硫黄結合置換基であってよく、例えばメチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、より高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであって、その結果原子価が充足されものである。R2およびR3は共有結合して一組の単環式窒素環を形成してよい。R2は、水素以外の残基2個ないし水素以外の残基8個以下を含む部分構造であってよい。好ましくは、R2はプロピルアミン(-(CH2)3-NH2)基である。一部の実施形態において、-B-は、二価置換基の残基、例えば酸素や硫黄、又は三価置換基の残基、例えば窒素、又は四価置換基の残基、例えば炭素、又は2つ以上の安定した結合を形成可能なその他の残基であってよい。リンカー-B-は、1個の原子としてではなく水素原子以外の8個の原子を一組にしたものとして選択してよく、その結果原子価が充足され化学的に安定な性質が達成される。更にM15〜M24は、独立に炭素、窒素、酸素又は硫黄又は水素以外の任意の残基又はハロゲンであってよく、また一部の実施形態においては部分構造であってもよく、ただしM15、M16、M17、M18、M19、M20、M21、M22、M23、M24は、炭素、窒素、硫黄、酸素の残基及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択され、その結果原子価が充足されて化学的に安定な単環式または二環式環状系が達成される。上記記載の炭素、窒素、硫黄原子上のM15〜M24の位置における置換基Xによる一個及び複数個の置換は、水素又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、又は置換された酸素/炭素/窒素/硫黄/結合置換基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、およびより高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンであってよく、その結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。好ましくは、(-B- M15-M24)は4-メチルベンゾエート置換基である。R4およびR4'は独立に水素、炭素/窒素/硫黄結合置換基であってよく、例えばメチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール置換基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、より高級なアルキルおよびアリール第二および第三級アミンである。全ての場合において、置換基が選択された結果原子価が充足されて化学的に安定な性質が達成される。R4およびR4'は共有結合して一組の環状化合物を形成してよい。好ましくは、R4は水素であり、他方R4'はイソプロピル基である。
本発明の一態様において、式I〜式VIIIの化合物は、表2〜5に記載の化合物No. 1〜No. 5、No. 7、No. 11、No. 13〜No. 15、No. 17〜No. 24、No. 26、No. 28〜No. 31、No. 42〜No. 48、No. 51、No. 55〜No. 106、No. 173、No. 174〜No. 179、No. 184〜No. 186として例示することができる。
他の態様において、本発明は、一般的な構造と式を有し、十分に確立された方法によって規定どおりに調製可能な化合物を含む合成物に関係する。一部の実施形態において、かかる合成物は以下の構造を有する。
式IX

式中、M25〜M28は、炭素、窒素、硫黄、酸素の残基及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択され、その結果、残基数が4個以上で7個以下の単環系であって、かつ原子価が充足され化学的に安定な性質を示す系が達成される。上記残基におけるM25〜M28の位置での置換基Wは、水素、又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、又は炭素結合置換基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール誘導体、又は窒素結合置換基、例えばアミン、メチルアミン、ジメチルアミン又はより高級な第二または第三級アルキルまたはアリールアミン、又は酸素/硫黄/セレン結合置換基、例えばヒドロキシル基、スルフヒドリル基、セレニルヒドリル基及びそのアルキルおよびアリールエーテル誘導体、又はケイ素/リン/ホウ素結合置換基、例えばこれらの残基でのアルキル又はアリール置換基であってよい。すべての場合において結合原子と結合原子の置換基は原子価を充足して化学的に安定であるために必要な態様である。R5は、任意の炭素結合部分構造であってよく、例えばメチル、エチル、ベンジル、アリール、及びそれらの置換誘導体である。R6は、独立に選択されて炭素/窒素結合置換基であり、その結果原子価が充足され化学的に安定な性質が達成される。R7は、水素又は炭素結合置換基であって、例えばメチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキル、ベンジルまたはアリール、及びそれらの置換誘導体である。
好ましい合成物はM25〜M28を全て飽和な炭素原子として含み、それらによって7員環化合物が構成され、式中でR5は4−ベンジルオキシベンジル、R6は2−クロロフェニル−1−アミノカルボニル、R7は水素である。他の好ましい合成物では、M25〜M28が7員環化合物を構成する飽和炭素原子として存在し、式中でR5は3−メトキシ−4−ベンジルオキシベンジル(3-methoxy-4-benzyloxybenzyl)、R6はベンジル、R7は水素である。
本発明の一態様において、式IXの化合物は、表2〜5に記載の化合物No. 33、No. 50、No. 166〜No. 172、No. 180〜No. 183、No. 188として例示することができる。
他の態様において、本発明は、一般的な構造と式を有し、十分に確立された方法によって規定どおりに調製可能な化合物を含む合成物に関係する。一部の実施形態において、かかる合成物は以下の構造を有する。
式X

式中、M29〜M32は、炭素、窒素、硫黄、酸素の残基及び/又は原子なしからなる群からそれぞれ独立に選択され、その結果原子価が充足され化学的に安定な性質を示す三環系が達成される。上記原子上のM29〜M32の位置での置換基Vは、水素、又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、又は炭素結合置換基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール誘導体、又は窒素結合置換基、例えばアミン、メチルアミン、ジメチルアミン又はより高級な第二または第三級アルキルまたはアリールアミン、又は酸素/硫黄/セレン結合置換基、例えばヒドロキシル基、スルフヒドリル基、セレニルヒドリル基及びそのアルキルおよびアリールエーテル誘導体、又はケイ素/リン/ホウ素結合置換基、例えばこれらの原子でのアルキル又はアリール置換基であってよい。すべての場合において結合原子と結合原子の置換基は原子価を充足して化学的に安定であるために必要な態様である。R8は、任意の炭素/窒素結合部分構造であってよく、例えばメチル、エチル、ベンジル、アリール、及びそれらの置換誘導体である。R9は、独立に選択されて、炭素結合置換基であってよく、例えばメチル、エチル、イソプロピル、より高級なアルキル、ベンジル、アリール、及びそれらの置換誘導体である。R8とR9は、共有結合して環状構造を形成してもよい。
好ましい化合物では、M29〜M32が三環式化合物を構成する炭素原子として含まれ、式中でR8はシクロペンチル(cyclopentyl)、R9は4−トリフルオロメチルベンゼン(4-trifluoromethyl benzene)である。他の好ましい合成物では、式M29〜M32は、三環式化合物を構成する炭素原子として存在し、式中でR8は4−メチルベンゼン(4-methyl benzene)、R9は4−メチルベンゼン(4-methyl benzene)である。
本発明の一態様において、式Xの化合物は、表2〜5に記載の化合物No. 8、No. 25、No. 115、No. 118、No. 120、No. 122〜No. 128、No. 130〜No. 132、No. 134として例示することができる。
他の態様において、本発明は、一般的な構造と式を有し、十分に確立された方法によって規定どおりに調製可能な化合物を含む合成物に関係する。一部の実施形態において、かかる合成物は以下の構造を有する。
式XI

式中、M33〜M36は、炭素、窒素、及び/又は原子なしからなる群から選択され、その結果原子価が充足され化学的に安定な性質を示す単環系または非環系が達成される。上記残基上のM33〜M36の位置での置換基(U)は、水素、又は炭素結合置換基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール誘導体、又は窒素結合置換基、例えばアミン、メチルアミン、ジメチルアミン又はより高級な第二または第三級アルキルまたはアリールアミン、又は酸素/硫黄/セレン結合置換基、例えばヒドロキシル基、スルフヒドリル基、セレニルヒドリル基及びそれらのアルキルおよびアリールエーテル誘導体、又はケイ素/リン/ホウ素結合置換基、例えばこれら原子でのアルキル又はアリール置換基であってよい。すべての場合において結合原子と結合原子の置換基は原子価を充足し化学的に安定となるために必要な態様である。R10は、任意の炭素/窒素結合部分構造であってよく、例えばメチル、エチル、ベンジル、アリール、及びそれらの置換誘導体である。R11は、独立に選択され、炭素結合置換基、例えばメチル、エチル、エチルアミン、イソプロピル、より高級なアルキル、ベンジル、アリール、及びそれらの置換誘導体である。
好ましい合成物では、M33〜M36が単環式化合物を構成する炭素原子として含まれ、式中でR10は2−4ジメトキシベンゾエート(2,4-dimethoxybenzoate)、R11は2−アミノ−(N-4-フルオロベンジル-N-4-フルオロベンゾイル)エチル(2-amino-(N-4-fluorobenzyl-N-4-fluorobenzoyl)ethyl)である。他の好ましい合成物では、式M33〜M36は、単環式化合物を構成する飽和炭素残基として存在し、式中でR10は2−カルボキシチオフェニル(2-carboxythiophenyl)で、R11は2−アミノ−(N-4-フルオロベンジル-N-カルボキシアミノ第三ブチル)エチル(2-amino-(N-4-fluorobenzyl-N-carboxyamino tert-butyl)ethyl)である。
本発明の一態様において、式XIの化合物は、表2〜5に記載の化合物No. 35、No. 107〜No. 114として例示することができる。
他の態様において、本発明は、一般的な構造と式を有し、十分に確立された方法によって規定どおりに調製可能な化合物を含む合成物に関係する。一部の実施形態において、かかる合成物は以下の構造を有する。
式XII

式中、M37は、置換炭素からなる群から選択され、M38は、炭素と硫黄とからなる群から選択され、M39は、酸素と硫黄とのいずれかから選択され、M40は、置換炭素と置換窒素とのいずれかから選択され、これらの結果として系は原子価を充足し化学的な安定性を示す。M37とM40は、共有結合して環状系を形成してよい。上記残基上のM37とM40の位置での置換は、水素、又は炭素結合置換基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、より高級なアルキルおよびアリール誘導体、又は窒素結合置換基、例えばアミン、メチルアミン、ジメチルアミン又はより高級な第二または第三級アルキルまたはアリールアミン、又は酸素/硫黄/セレン結合置換基、例えばヒドロキシル基、スルフヒドリル基、セレニルヒドリル基及びそのアルキルおよびアリールエーテル誘導体、又はケイ素/リン/ホウ素結合置換基、例えばこれら残基でのアルキル又はアリール置換基であってよい。すべての場合において結合原子と結合原子の置換基は原子価を充足し化学的に安定であるために必要な態様である。
本発明の一態様において、式XIIの化合物は、表2〜5に記載の化合物No. 6、No. 9、No. 10、No. 12、No. 16、No. 27、No. 32、No. 34、No. 36〜No. 41、No. 49、No. 52〜No. 54、No. 116、No. 117、No. 119、No. 121、No. 129、No. 133、No. 135〜No. 165、No. 187として例示することができる。
本発明の一部の実施形態において、その実施形態が合成物であれ、医薬的担体を含む合成物であれ、合成物を製造又は使用する方法であれ、その実施形態はそれぞれ本明細書に記載の任意の合成物を含む。
本発明のその他の利点、新しい特性、及び目的は、本発明の非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになる。本明細書と本明細書に引用により援用される文献との間に不一致な開示内容があった場合、本明細書が優先されるものとする。
一態様において、本発明は、少なくともその一部は、以下更に説明する特定の構造を有する合成物によって特定される。これらの構造において、用語「化学結合」とは、化学結合の任意の種類を意味する。例えば、共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、金属リガンド結合、配位結合、疎水的相互作用等が挙げられる。すべての合成物は、本明細書に記載の治療方法のいずれかに有用又は有用な可能性があると理解される。
これらの構造において、少なくとも3つの共有結合を形成可能な原子には、炭素ファミリーの原子(例えば、炭素、ケイ素、又はゲルマニウム)、窒素ファミリーの原子(例えば、窒素、リン、ヒ素)、又はホウ素ファミリーの原子(例えばホウ素、アルミニウム、又はガリウム)が含まれる。一部の実施形態において、本発明の構造内にみられる少なくとも3つの共有結合を形成可能な原子は、炭素、窒素、ケイ素、リンであり、一部の実施形態においてその原子は炭素と窒素である。
用語「ハロゲン」又は同等表現としての「ハロゲン原子」とは、化学の分野で一般に使用される意味を有する。ハロゲンには、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチン(astatine)が含まれる。本発明で使用されるハロゲン原子には、1つ以上のフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素が含まれることが好ましい。本発明の一部の実施形態において、構造内にみられるハロゲン原子はフッ素,塩素および臭素;フッ素および塩素;塩素および臭素、又はハロゲン原子の単一種類である。
本明細書で使用されるとおり、「飽和」結合とは、化学の分野で一般に使用される意味を有する。飽和部分構造は通常、その構造において二重結合、三重結合、それより高次な化学結合のいずれをも含まない。飽和部分構造は、その構造中に任意の数又は任意の種類の原子(すなわち酸素、炭素、窒素、水素、又はハロゲン原子)を含むことができる。ただし、その部分構造は原子間において一重結合のみを含む。例えば、その飽和部分構造は、脂肪族構造又は環状構造であり得る。飽和部分構造は、1以上の点において親構造に連結してよい。飽和部分構造の例には、以下が含まれる
又は
これらはそれぞれ1点において親構造に連結しており、又は
これは、1点以上において親構造に連結している(この例の場合、エーテル結合を用いる)。これらの構造において、「Ak」は、下記のようなアルキル基を意味する。一例として、これらの構造におけるアルキル基は、1、2、3又は4つの炭素原子を有してもよく、直鎖又は分鎖のいずれの状態の場合もある。ただし、このとき二重結合や三重結合は存在しない。
逆に、「不飽和」部分構造とは、その構造において少なくとも1つの高次な化学結合、すなわち、その構造において2つの原子間に少なくとも1つの二重結合又は三重結合を含む。一部の場合において、不飽和部分構造は、例えばアルカジエン(alkadiene)やアルケナイン(alkenyne)のように、その構造において1つ以上の二重結合及び/又は三重結合を含んでよい。
本明細書で使用されるとおり、「アルキル」とは、有機化学の分野で一般に使用される意味を有する。アルキル又は脂肪族基は通常、任意の数の炭素原子を含む。炭素原子の数は、例えば1〜20、1〜15、1〜10、又は1〜5である。一部の実施形態において、アルキル基は少なくとも1つの炭素原子、又は少なくとも2つの炭素原子、又は少なくとも3つの炭素原子、又は少なくとも4つの炭素原子、又は少なくとも5つの炭素原子、又は少なくとも6つの炭素原子、又は少なくとも7つの炭素原子、又は少なくとも8つの炭素原子を含む。通常、アルキル基は非環状構造である。一部の実施形態において、アルキル基はメチル基又はエチル基である。
炭素原子は、アルキル部分構造内で任意の配置、例えば、直鎖(すなわち、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル(pentyl)、へキシル(hexyl)、ヘプチル(heptyl)、オクチル(octyl)、ノニル(nonyl)、デシル(decyl)、又はアンデシル(undecyl)等のn-アルキル)や、分鎖(例えば、t-ブチル基、又はイソプロピル(isopropyl)、イソブチル(isobutyl)、イソペンタニル(isopentanyl)、イソヘキサニル(isohexanyl)等のイソアルキル基(isoalkyl group))において配列されてよい。アルキル部分構造は、例えばアルケン(alkene)、アルキン(alkyne)、アルカジエン(alkadiene)、アルカジン(alkadiyne)、アルケニン(alkenyne)のように、その構造内において二重結合又は三重結合を含まなくてもよいし、それらを任意の数だけ含んでもよい。
アルキル基は、任意の数の置換基を含んでよい。例えば、アルキル基は、ハロゲン、アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペントキシ等)、アミン(例えば、一級、二級、又は三級アミン。例えばジメチルアミンエチル基等)、又は水酸化物(hydroxide)を置換基として含んでよい。一例として、アルキル基がメチル基である場合、そのメチル基は置換されて、例えばクロロメチル、ブロモメチル、又はヨードメチル等のハロゲン化メチル基等を形成してよい。本発明の一部の実施形態においては、2以上の置換分が存在してよい。例えば、アルキル基は2つ以上のハロゲン原子(例えば、2個の塩素原子、又は塩素原子と臭素原子)、ハロゲンとアルコキシ基等を有してよい。
本発明の一部の実施形態において、アルキル基は、そのアルキル基内に置換された1つ以上のヘテロ原子、例えば窒素原子(例えば一級、二級、又は三級アミン等のアミン中の態様で)や酸素原子(エーテル部分構造中の態様で)を含んでよい。ただし、本発明の他の実施形態において、アルキル基の主鎖はヘテロ原子を含まず、炭素原子を含む。本明細書において使用されるように、用語「ヘテロ原子」は、アルキル基の結合に影響を及ぼさずにアルキル基内で炭素原子を代替することができる原子を言う。これらの典型的な例としては酸素原子、窒素原子が含まれる。ハロゲン原子と水素原子は、ヘテロ原子としてみなされない。例えば、塩素原子は、アルキル基の結合に影響を及ぼさずにアルキル基内で水素原子を代替することができる。本明細書に記載のように、「非へテロ原子アルキル基」は、炭素の位置に炭素以外の任意の原子を含まないアルキル基である。非末端へテロ原子を含まないものとして定義される構造もある。本明細書に記載のように、「非末端」原子とは、2以上の原子価を有する少なくとも2つの異なる原子に連結する構造内の原子を意味する(すなわち、この原子は2つの非水素原子及び非ハロゲン原子に結合する)。例えば、-CH2-OHにおける酸素と-CH2-NH2における窒素原子は、2以上の原子価を有する2つの異なる原子と結合していないので、非末端ヘテロ原子ではない。
同様に「環状」構造は、本明細書に記載のように、有機化学の分野における通常の定義が与えられており、すなわち、少なくとも1つの環を含む構造であって、2以上の環を含んでもよい。換言すると、環状構造は、末端を有さない原子の少なくとも1つの鎖を有する。鎖は、例えば、1つの環を形成するように配列された3、4、5、6、7、又はそれ以上の原子を有してよい。鎖内の原子は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、又は少なくとも2つの異なる原子に結合可能なその他の原子である。
本発明の一部の実施形態において、1つ以上の置換基が環状構造上に存在してよい。置換基は、アルキル部分構造において前述したように任意の置換基であってよく、例えばハロゲン、アルコキシ、アミン、水酸化物等が挙げられる。一部の実施形態において、置換基は前述したようにアルキル基であってもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
一部の実施形態において、環状構造は、1つ以上のヘテロ原子を有する場合がある。例えば、環状構造は、1つ以上のヘテロ原子を有するシクロへキサン(cyclohexane)又はシクロペンタン(cyclopentane)環を含んでよく、例えば以下である:
式中、Rは、追加の原子又は置換基の存在を示す。シクロへキサンの環において置換された原子は、少なくとも3つの共有結合を形成することができる。また、4つの共有結合を形成することができる場合、4番目の共有結合はいずれの原子に結合することも可能である。
環状構造は、飽和環状構造であってもよいし(例えばシクロへキシル(cyclohexyl)構造やシクロペンチル(cyclopentyl)構造)、非飽和環状構造であってもよい(例えばシクロへキセニル(cyclohexenyl)構造や芳香族構造)。芳香族構造の例としては例えば、フェニル(phenyl)、ナフタレニル(naphthalenyl)、アンタセニル(anthacenyl)、トリル(tolyl)、ピリジニル(pyridinyl)、フラニル(furanyl)、ピロリル(pyrrolyl)等が含まれる。「非芳香族環状構造」は、環状構造の芳香族性が存在しない構造である(例えば、飽和環状構造、シクロアルケニル部分構造等)。
一部の実施形態において、芳香族構造はベンゼン環を含む。置換基がベンゼン環に存在する場合、(前述のとおり、例えばハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基等)、これらは、ベンゼン環の結合部位に対して任意の位置に、すなわち任意のオルト、メタ、又はパラ位置に配置され得る。2以上の置換基が存在する場合、置換基はベンゼン環内の任意の可能な箇所に配置され得る。例えば、2つの置換基が存在する場合、これらはオルト位置、メタ位置(すなわち、2、3又は2、5位置)、2つのオルト位置、2つのメタ位置、又はメタ位置とパラ位置とに配置可能である。
一部の実施形態において、芳香族基は、例えばフェニル又はナフタレニル基等の非置換芳香族基である。他の一部の実施形態において、芳香族構造は、ハロフェニル(halophenyl)基又はジハロフェニル(dihalophenyl)基である。例としては、3−クロロ−4−フルオロフェニル(3-chloro-4-flurophenyl)、o-/m-/p-クロロフェニル(o-, m-, or p-chlorophenyl)、2,4-ジフルオロフェニル(2,4-difluorophenyl)又はo-/m-/p-ブロモフェニル(o-, m-, or p-bromophenyl)が挙げられる。他の一部の実施形態において、芳香族構造は、メチルフェニル又はジメチルフェニル基である。例としては、o-/m-/p-メチルフェニル、2,3-ジメチルフェニル(2,3-dimethylphenyl)、2,4-ジメチルフェニル(2,4-dimethylphenyl)、2,5-ジメチルフェニル(2,5-dimethylphenyl)が挙げられる。他の一部の実施形態において、芳香族基は、アルキルフェニル基である。例としては、o-/m-/p-メチルフェニル(o-, m-, or p-methylphenyl)、p-メチルフェニル(p-ethylphenyl)、2−フェニルエチル(2-phenlyethyl)またはベンジルが挙げられる。他の一部の実施形態において、芳香族構造は、ハロメチルフェニル基(halomethylphenyl group)である。例としては、3−クロロ−2−メチルフェニル(3-chloro-2-methylphenyl)が挙げられる。他の一部の実施形態において、芳香族構造は、アルコキシフェニル(alkoxyphenyl)又はジアルコキシフェニル基である。例としては、o-/m-/p-イソプロポキシフェニル(o-, m-, or p-isopropoxyphenyl)、o-/m-/p-メトキシフェニル(o-, m-, or p-methoxyphenyl)、o-/m-/p-エトキシフェニル(o-, m-, or p-ethoxyphenyl)、2,4-ジメトキシフェニル(2,4-dimethoxyphenyl)が挙げられる。一部の実施形態において、芳香族基は、原子の他の環と縮合している。第二の環は、芳香族であっても非芳香族であってもよい。以下に例を挙げる。
ここで、Rは、追加の原子又は置換基の存在を示す。
環状構造が2以上の原子環を有する場合、それらの環はその部分構造中でどのような様式で分布していてもよい。例えば、2つの環は1つの原子を共有しない場合もあるし、共通原子を1つだけ共有する場合もあるし(例えばスピロ構造等)、二環式構造やプロペレン構造等のように2以上の原子を共有する場合もある。2つの環が2つの原子間の少なくとも1つの共有化学結合を共有する場合、環は「縮合している」とみなすことができる。
縮合環システムの一例としての構造は以下のとおりである。
式中、二環式構造において五員環が六員環に縮合しており、Gはそれぞれ前述のとおり少なくとも3つの共有結合を有する原子である。一部の実施形態において、1つ又は両方の環は芳香族であり得る。一例として、両方の環が芳香族のとき、五員環上で単一窒素置換が行われると、以下の例のようにインドール部分構造となり得る。
更に、他の置換基又は環状環、例えばシクロへキシル部分構造が構造上に置換してもよい。
複数の環が互いに縮合結合すると、環は「多縮合」とみなすことができる。多縮合化合物の一例は、以下のアダマンタン構造である。
式中、Rは、追加の原子又は置換基の存在を示す。
本明細書に記載のとおり、2つの環状群が「分鎖配置」にある場合は、2つの環状群は共有の部分構造の異なる分鎖上にある。換言すると、2つの環状群は相互に対して直列に配列していない。すなわち、部分構造中の環状構造のいずれかを除去しても、もう一方の環状構造が部分構造の残りの部分から自動的に切断されることはない。この一例として、以下のジフェニルメチル部分構造を挙げる。
式中、Rは、追加の原子又は置換基の存在を示す。
一部の実施形態において、合成物は、置換された尿素部分構造を含む。置換尿素部分構造は、少なくとも七個の原子員を有する少なくとも1つの環状構造を含む。一部の場合において、環状構造は置換環状構造であり得る。例えば、かかる構造にはアゼパン(azepane)部分構造又はシクロへプタン(cycloheptane)構造を含み得る。或いはかかる構造はシクロアルコン(cycloalkone)部分構造、すなわち、環状環の一つの原子員に二重結合した酸素原子を含み得る。
「アミノ酸」は、生化学の分野で一般に使用される意味を有する。アミノ酸は通常以下の構造を有する。
この構造において、Rは、任意の適切な部分構造であってよい。例えば、Rは、水素原子、メチル基、イソプロピル基であってよい。本明細書で使用されるように、「天然アミノ酸」は、天然で一般にみつかる20のアミノ酸、すなわち、アラニン(alanine)、アルギニン(arginine)、アスパラギン(asparagine)、アスパラギン酸(aspartic acid)、システイン(cysteine)、グルタミン(glutamine)、グルタミン酸(glutamic acid)、グリシン(glycine)、ヒスチジン(histidine)、イソロイシン(isoleucine)、ロイシン(leucine)、リジン(lysine)、メチオニン(methionine)、フェニルアラニン(phenylalaine)、プロリン(proline)、セリン(serine)、トレオニン(threonine)、トリプトファン(tryptophan)、チロシン(tyrosine)、バリン(valine)である。同様に、非天然アミノ酸は、R基が天然アミノ酸の1つに対応しない場合のアミノ酸である。
一実施形態において、合成物には更に、例えば化合物No. 1〜No. 188のような本発明の合成物の同族体、類似体、誘導体、光学異性体、及び機能的に等価な合成物が含まれる。かかる合成物の同族体、類似体、誘導体、光学異性体、及び機能的に等価な合成物は、癌、特にMUC1関連癌を検出又は治療することが可能な本明細書に記載の評価分析及び/又は治療計画案のいずれかにおいて使用することができる。「機能的に等価な」とは、MUC1関連癌を有する患者又はMUC1関連癌の疑いがある患者を治療可能な合成物を通常意味する。合成物の同族体、類似体、誘導体、光学異性体、及び機能的に等価な合成物の調製を行う方法における状態については、当業者は容易に調整可能である。
親化合物とほぼ同等に有効な又はより有効な同族体、類似体、誘導体、光学異性体、及び機能的に等価な合成物も、本発明方法の一部の実施形態において、使用対象である。かかる合成物も、MUC1の異常発現を特徴とする癌に対して、好ましくは副作用を制限しながら、可能性および特異性が増大さているか否かにつき本明細書に記載の評価分析によってスクリーニングすることができる。かかる合成物の合成は、当該技術で通常実施されている方法等の典型的な化学修飾方法によって実施することができる。
本発明の他の態様には、本発明の合成物のいずれかを提供し、かかる合成物の組合せ合成を行って、好ましくはかかる合成物の同族体、類似体、誘導体、光学異性体、及び機能的に等価な合成物を得ることを含む方法が含まれる。かかる合成物の同族体、類似体、誘導体、光学異性体、及び機能的に等価な合成物に対して評価分析を行って、MUC1の異常発現を特徴とする癌を抑制する有効性について決定することもできる。コンビナトリアルな合成には、本明細書に記載の複数の合成物をコンビナトリアルな合成に付すことが含まれ得る。
製剤
他の態様は、本発明の合成物を対象に投与する方法を提供する。投与時、本発明の合成物は、医薬的に許容できる量で、かつ医薬的に許容できる合成物として適用される。かかる製剤は、塩、緩衝剤、保存剤、適合性担体、又はその他の治療成分を規定どおり含み得る。既知の担体の例としては、ガラス、ポリスチレン(polystyrene)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリエチレン(polyethylene)、デキシトラン(dextran)、ナイロン(nylon)、アミラーゼ(amylase)、天然セルロース(natural cellulose)、修飾セルロース(modified cellulose)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、アガロース(agarose)、マグネタイト(magnetite)が含まれる。担体の性質は、可溶性でも不溶性でもよい。当業者は、この他の適切な担体を周知し、規定の実験のみを使ってかかる担体を確認することができる。
一部の場合において、本発明は、本発明の合成物を1つ以上の付属成分を含み得る適切な担体に結合又は密着させる工程を含む。最終合成物は、適切な技法によって調製可能である。この技法においては、例えば、合成物を均一に密接に液体担体又は精密分離された固体担体又はその両方と結合させる。オプションとして、緩衝剤、乳化剤、希釈剤、賦形剤、乾燥剤、酸化防止剤、保存剤、結合剤、キレート化剤、安定剤等の1つ以上の調剤成分と結合させる。次に必要に応じて生成物を成形する。
一部の実施形態において、本発明の合成物は医薬的に許容される塩として存在し得る。用語「医薬的に許容される塩」は、合成物においてみられる特定の置換基と望ましい治療様相に応じて例えば酸や基剤と共に調製される合成物の塩を含む。医薬的に許容される塩は、リチウム塩(lithium salt)、ナトリウム塩(sodium salt)、又はカリウム塩(potassium salt)等のアルカリ金属塩、又はベリリウム塩(beryllium salt)、マグネシウム塩(magnesium salt)、カルシウム塩(calcium salt)等のアルカリ土類塩として調製可能である。塩の形成に使用可能な適切な基剤の例としては、アンモニア(ammonium)、又は水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)、水酸化リチウム(lithium hydroxide)、水酸化カリウム(potassium hydroxide)、水酸化カルシウム(calcium hydroxide)、水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)等の鉱物性基剤が挙げられる。塩の形成に使用可能な適切な酸の例としては、塩化水素酸(hydrochloric)、臭化水素酸(hydrobromic)、ヨウ化水素酸(hydroiodic)、フッ化水素酸(hydrofluoric)、硝酸(nitric)、炭酸(carbonic)、一炭酸水素酸(monohydrogencarbonic)、リン酸(phosphoric)、一リン酸水素酸(monohydrogenphosphoric)、二リン酸水素酸(dihydrogenphosphoric)、硫酸(sulfuric)、一硫酸水素酸(monohydrogensulfuric)、亜リン酸(phosphorous acids)等の無機又は鉱物性の酸が含まれる。この他の適切な酸の例としては、例えば酢酸(acetic)、プロピオン酸(propionic)、イソ酪酸(isobutyric)、マレイン酸(maleic)、マロン酸(malonic)、安息香酸(benzoic)、琥珀酸(succinic)、スベリン酸(suberic)、フマル酸(fumaric)、マンデル酸(mandelic)、フタル酸(phthalic)、ベンゼンスルホン酸(benzenesulfonic)、p-トリルスルホン酸(p-tolylsulfonic)、クエン酸(citric)、酒石酸(tartaric)、メタンスルホン酸(methanesulfonic)、グルクロン酸(glucuronic)、ガラクツロン酸(galactunoric)、サリチル酸(salicylic)、蟻酸(formic)、ナフタリン-2-スルホン酸(naphthalene-2-sulfonic)、等の有機酸が含まれる。更に他の適切な酸の例としては、アルギン酸(arginate)、アスパラギン酸(aspartate)、グルタミン酸(glutamate)等のアミノ酸が含まれる。
一般に、医薬的に許容される単体は、当業者にとって周知である。本明細書で使用されるように、「医薬的に許容される担体」とは、活性成分の生物学的活性の有効性と著しく相互作用しない非毒性材料を意味する。医薬的に許容される担体の例としては、例えば、希釈剤、乳化剤、増量剤、塩、緩衝剤、賦形剤、乾燥剤、酸化防止剤、保存剤、結合剤、充填剤、キレート化剤、安定剤、可溶化剤、その他技術的に周知の材料が含まれる。適切な調剤成分の例としては、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)、ラクトース(lactose)、カオリン(kaolin)、リン酸カルシウム(calcium phosphate)、リン酸ナトリウム(sodium phosphate)等の希釈剤、コーンスターチ、アルギン酸等の粉末化剤、スターチ、ゼラチン、アカシア等の結合剤、ステアリン酸マグネシウム(magnesium stearate)、ステアリン酸(stearic acid)、タルク(talc)等の潤滑剤、グリセロールモノステアレート(glycerol monostearate)、グリセロールジステアレート(glycerol distearate)等の時間遅延材、カルボキシルメチルセルロースナトリウム(sodium carboxymethylcellulose)、メチルセルロース(methylcellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethylcellulose)、アルギン酸ナトリウム(sodiumalginate)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolideone)等の懸濁化剤、レシチン(lecithin)、他の天然発生ホスファチド(phosphatides)等の分散湿潤剤、セチルアルコール(cetyl alcohol)、蜜蝋(beeswax)等の増粘剤が含まれる。本発明の合成物は、固体、半固体、液体、気体状の製剤に調剤することができる。例えばタブレット、カプセル、エリキシル剤、粉末、粒状、オイントメント、溶液、デポジトリー、吸入剤、又は注射等の形態が挙げられる。本発明の合成物は、任意の適切な供給方法で供給することができる。例えば、経口投与、非経口投与、又は外科的投与等が挙げられる。本発明は更に、例えばインプラント等として本発明の合成物を局在的に投与することにも適用可能である。
製剤には、無菌水溶液、無菌非水溶媒、懸濁液、乳濁液等がある。非水溶媒の例としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、オリーブオイル等の植物油、エチルオリエート(ethyloliate)等の注射可能な有機エステルが含まれる。水溶性担体の例としては、水、アルコール性/水溶液、乳濁液、懸濁液、生理食塩水、緩衝化媒介物等が含まれる。非経口媒介物の例としては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース(Ringer's dextrose)、デキストロース(dextrose)と塩化ナトリウム、乳酸化リンガー/不揮発性油等が含まれる。静脈注射用媒介物の例としては、液体栄養補給剤、電解質補給剤(例えばリンガーデキストロースに基づく)等が挙げられる。保存剤とその他の添加剤も含まれてよい。例としては、例えば、抗菌薬、酸化防止剤、キレート化剤、不活性ガス等が挙げられる。当業者は、過度な実験に頼ることなくこれらの医薬的合成物を調製するための様々なパラメータを容易に決定可能である。
本発明の合成物は、単独で投与してもよいし、本発明の合成物又はその他の合成物と組み合わせて投与してもよい。例えば、一実施形態において、本発明の合成物は例えばアルファ-V-ベータ-3(alpha-V-beta-3)細胞表面レセプター等の細胞表面レセプターをブロックする作用物質と組み合わせて投与される。
本発明の方法の一部の実施形態によれば、本発明の合成物は、経時的輸液や他の医学的に許容される様式で注入することによって投与することができる。患者に合成物を投与するにあたり、任意の医学的に許容される方法を使用可能である。選択される特定の様式は、言うまでもなく、選択された特定の薬剤、治療を受ける対象の状態の重大度、又は治療有効性に要する投与量等の要素に依存する。概して、本発明の方法は、医学的に許容される任意の投与様式を用いて実施することができる。すなわち、臨床的に許容されない副作用を引き起こさずに活性化した合成物の有効レベルを実現する任意の様式を用いて実施することができる。
投与は局所的でもよいし(すなわち、特定の領域、生理学的システム、組織、臓器、又は細胞タイプへの投与)、或いは全身性であってもよく、これは治療を受ける側の状態に依存する。例えば、合成物は、非経口的注射、インプラント、経口、経膣、経直腸、舌下、経肺、局所、経鼻、経皮、外科的投与、又は合成物が標的にアクセス可能なこの他の投与方法によって投与することができる。本発明で使用可能な非経口方法の例としては、静脈注射、皮内注射、皮下投与、腔内投与、筋肉投与、腹膜内投与、硬膜内投与、クモ膜下投与が含まれる。注入方法の例としては、任意のインプラント又は注射可能な薬剤供給システムが含まれる。一部の治療については、経口投与が好ましい。投与スケジュールだけでなく患者にとって簡便であるためである。経口投与に適した合成物は、カプセル、丸薬、カシェ剤、タブレット、菱形錠剤等の分離単位として提供することができ、これらはそれぞれ規定量の活性化合物を含む。この他の経口合成物の例としては、シロップ、エリキシル剤、乳濁液等の水溶性又は非水溶性の液体内の懸濁液が含まれる。
本発明の合成物は、可能性のある有害な副作用を避ける又は最小化することを前提としながら最大量である投与量にて通常提供される。合成物は、単独又はその他の合成物、例えば癌治療に使用可能な他の合成物との組合せによって有効量にて投与される。有効量は通常、対象におけるMUC1関連癌を抑制するために十分な量である。
当業者は、本明細書に記載の任意の評価分析を用いて合成物の能力をスクリーニングすることによって、合成物の有効量を決定することができる。言うまでもなく、有効量は、治療を受ける側の状態の重大度や、年齢、身体状態、身長、体重を含めた個々の患者のパラメータ、同時に実施している治療、治療頻度、又は投与様式に依存する。これらの要素は当業者には周知であって、規定の検査のみで対処可能である。一般に、最大使用投与量、すなわち、確かな医学的判断による最大安全投与量であることが好ましい。
投与量は、実験モデルの結果に基づいて、オプションとして本発明の評価分析の結果との組合せに基づいて概算することができる。一般に、活性合成物の毎日の経口予防薬としての投与量は、1日に0.01mg/kg〜2000mg/kgである。1日につき1回以上の投与において10〜500mg/kgの範囲の経口投与量によって、適切な結果を得ることができる。かかる投与量で特定の対象の反応が不十分である場合、より高投与量(又は他のより局在化した供給経路によってより有効な高投与量)を、患者の許容限度まで使用する。合成物の適切な全身性レベルを得るため、1日あたり複数の投与も考慮する場合がある。
本発明の合成物を対象に投与する際には、投与量、投与スケジュール、投与経路等を、これらの合成物の他の既知の活性に影響を及ぼすように選択することができる。例えば、投与量、投与スケジュール、投与経路を本明細書に記載のように選択することによって、MUC1関連癌の抑制又は治療に有効なレベルを提供しながら、他の治療の有効レベルを提供しないようにすることができる。
本発明で使用するために適切な他の供給システムの例としては、徐放性、遅放性、持続作用性、又は制放性の供給システムが挙げられる。かかるシステムによって、多くの場合に本発明の活性合成物を繰返し投与しなくてもよくなるので、対象と医師にとって簡便性が増大する。多くの種類の徐放性供給システムは、当業者が使用可能であり周知である。これらのシステムの例としては、ポリ乳酸(polylactic acid)及び/又はポリグリコール酸(polyglycolic acid)、ポリ無水物(polyanhydrides)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)等のポリマーベースシステム、コレステロール(cholesterol)、コレステロールエステル(cholesterol esters)等のステロール、モノ/ジ/トリグリセリド(mono-, di- and triglycerides)等の脂肪酸(fatty acids)又は中性脂肪(neutral fats)を含む脂質ベースのノンポリマーシステム、ヒドロゲル(hydrogel)放出システム、シラスティックシステム、ペプチドベースシステム、ワックスコーティング、従来の結着剤と賦形剤とを使用した圧縮タブレット、部分的縮合インプラント等が挙げられる。特定の例としては以下を含むがこれらの限りではない。すなわち、合成物がマトリックス内の形態に含まれている腐食システム、又は活性合成物が放出率を制御する拡散システムが含まれる。調剤は、例えば、ミクロスフェア(microspheres)、ハイドロゲル、高分子リザボア、コレステロールマトリックス、または高分子システムとして可能である。一部の実施形態において、例えば、調剤品の拡散又は腐食/劣化速度を制御することによって、上記システムによって、活性合成物が持続された又は制御された放出となる。更に、一部の実施形態において、ポンプを使用した器具による供給システムも使用可能である。
一部の場合には、長期放出インプラントを使用することが特に適切である。ここで使用される「長期放出」とは、合成物の治療レベルが少なくとも30又は45日、好ましくは少なくとも60又は90日、又は一部の場合更に長期間供給されるよう、インプラントを構成・設定することを意味する。長期放出インプラントは当業者には周知であって、上記の放出システムの一部が含まれる。
本発明は更に、オプションとして癌の治療用の合成物の使用上の注意書を含むキットに包装された、MUC1の異常発現の特徴を有する癌の治療に有用な上記合成物のいずれかを提供する。すなわち、キットは、癌又は腫瘍に関する本明細書に開示された生物学的又は化学的メカニズムに合成物を使用するための使用上の説明書を含み得る。キットは更に、癌の症状ではなく病理上におけるMUC1の異常発現の特徴を有する癌の活性に関する説明を含んでもよい。すなわち、キットは本明細書に述べた合成物の使用上の説明書を含み得る。キットは更に、本発明の2つ以上の合成物を組み合わせる場合の使用上の注意書を含み得る。使用上の注意書は、適切な方法によって薬剤を投与するために提供され得る。方法は例えば、経口、静脈注射、脊髄点滴を介した脳脊髄液への直接投与、ポンプ又はインプラント供給装置、又はその他既知の薬剤供給ルートによる。本発明の一部の実施形態は、本明細書に記載の技法、合成物、合成物の組合せのいずれかに係る、MUC1の異常発現を特徴とする癌の治療の促進にも関係する。
一部の実施形態において、本発明の合成物は、異常な細胞増殖、癌、腫瘍、特にMUC1関連癌の治療のために使用促進可能である。このとき、細胞増殖、癌、腫瘍、特に上記MUC1関連癌を治療するための使用上の注意を含む場合もある。他の態様において、本発明は、本発明の合成物の1つ、及び合成物がMUC1関連癌を治療可能である場合におけるかかる合成物の同族体、類似体、誘導体、光学異性体、及び機能的に等価な合成物のいずれか1つの投与によって、癌の予防又は治療を促進することに関する方法を提供する。本明細書で使用されるとおり「促進」には、細胞増殖、癌、又は腫瘍の治療に関する本発明の合成物に関わる教育、病院やその他の診療所における指示事項、医薬品販売を含めた製薬業界活動、書面・口頭・電子通信形態を含めた広告その他の販促活動の方法を含めたあらゆる業務実施方法も含む。「使用上の注意」は、促進対象の合成物を定義し得る。これは通常、本発明の合成物の包装上又は包装内に添付されて書面で提供される。使用上の注意は更に、任意の方法によって行われる口頭又は電子的な形態によるものも含む。「キット」は通常、本発明の合成物の1つ又は組合せと使用上の注意、又はかかる合成物の同族体、類似体、誘導体、光学異性体、及び機能的に等価な合成物を含む包装を定義する。ただし、キットは本発明の合成物と、臨床専門家が使用上の注意を特定の合成物に関わるものであると明らかに認識できる方法で合成物に関して提供される任意の形態での使用上の注意書とを含んでもよい。
本明細書に記載のキットは更に、1つ以上の容器を含んでもよい。これらの容器は、上記の種、シグナリングエンティティ、生体分子、及び/又は微粒子等の化合物を含むことができる。キットは更に、合成物の混合、希釈、及び/又は投与に関する使用上の注意書を含んでもよい。キットは更に、1つ以上の溶媒、界面活性剤、保存剤、及び/又は希釈剤(例えば生理食塩水(0.9%NaCl)又は5%デキストロース(dextrose))を入れた他の容器を含んでもよく、またサンプルやかかる治療を必要とする患者用に合成物を混合し、希釈し、投与するための容器を含んでもよい。
キットの合成物は、例えば、液体溶液や乾燥粉末等、任意の形態で提供することができる。提供合成物が乾燥粉末である場合、粉末は同時に提供され得る適切な溶媒を添加してもどすことができる。液体形態の合成物を使用する実施形態において、液体は濃縮してあっても、すぐに使用できる状態でもよい。溶媒は化合物、使用法、投与法に依存する。薬剤合成物の適切な溶媒は周知であって文献から得ることができる。溶媒は化合物、使用法、投与法に依存する。
一部の実施形態において、キットはガラス瓶、チューブ等の1つ以上の容器手段を密閉して収容するよう区分されている運搬手段を備え得る。容器手段のそれぞれは、本方法で使用される個々の要素の1つを含む。例えば、容器手段の1つは、評価分析における実薬対照薬を含んでもよい。加えて、キットは例えば評価分析に有用な緩衝剤等、その他の成分のための容器を含む場合がある。
以下の実施例は、本発明の特定の態様と実施形態を例示することを目的とするが、本発明の範囲をすべて例示するものではない。
実施例
実施例1
癌を有すると疑われる患者の腫瘍の生検を行った。組織試料が癌性であるかどうか評価分析できるよう、当業者に既知の標準的方法を用いて組織試料を評価分析した。次に、本発明の方法を用いて、組織試料がMUC1陽性癌か陰性癌かについて組織試料の特徴付けを行った。患者はMUC1陽性癌を有すると診断された。医師はMUC1を抑制する作用物質を含む治療を処方した。好ましい治療は、MUC1レセプターのMGFR部分に結合する及び/又はその切断を抑制する作用物質による治療である。特に好ましい化合物は、表2〜5に開示した化合物であり、より具体的には、化合物No. 28、No. 118、No. 107、No. 109、No. 125、No. 173、No. 182、No. 184、No. 185、No. 188である。
実施例2−抗体の作製
本実施例は、MUC1レセプターのMGFR部分に対して反応する抗体、より具体的には、癌細胞に優勢に発現するMUC1レセプターの形態に結合する抗体を実証する。本実施例において、MGFRに対して反応する本発明の抗体は、癌細胞上で発現するMUC1種に結合することが分った。ここで、タンデムリピートのほとんどすべては切断して細胞表面から分離して、MGFRが細胞表面に付着したままとなっている。抗体作製の標準的方法を使用したとき、本発明の抗体は、MUC1レセプターのPSMGFR部分に対して反応し、特に表1に示したnat-PSMGFR又はvar-PSMGFRに反応した。ラビットのポリクローナル抗体を作製し、免疫ペプチドをクロマトグラフカラムビーズに付着させたカラムクロマトグラフによって精製した。抗体である抗nat-PSMGFR及び抗var-PSMGFRは、免疫ペプチド、腫瘍細胞から抽出したMUC1(図1、2を参照)、腫瘍細胞表面上のMUC1(図3を参照)、無損傷組織試料における腫瘍細胞上にみられるMUC1(図4〜10を参照)に対して特異的かつ鋭敏に結合することが分った。
実施例3−MUC1陽性乳癌
ホルマリンで固定しパラフィンに埋設した匿名の複数の試料を、MUC1レセプター上の異なるエピトープを認識する2つの抗体に対する反応性についてそれぞれ試験した。2つの抗体とは以下のとおりである。1つはラビットのポリクローナル抗体である抗PSMGFRである。これは、レセプターの分離後細胞表面に付着したまま残るMUC1レセプターのPSMGFR部分に結合する。もう1つは、市販のマウスのモノクローナル抗体であるVU4H5(Santa Cruz社製)である。これは、レセプターのタンデムリピート部位の配列に結合する。両抗体は、1ug/mlにて用意した。対象試料の計画案及び治療は、両抗体で同一にした。ほとんど同一部分を比較できるよう、同じ組織試料ブロックを由来とする複数の近接部分をそれぞれVU4H5か抗PSMGFRのいずれかで検査した。対照として、無関係なマウスとラビットの抗体により類似試料を検査した。腫瘍の程度の評価分析を支援するため、各ブロック由来の1つの部分をヘマトキシン(hemotoxin)とエオシン(eosin)(H&E)染色した。試料は、IHC用のDakoの試薬とキットを用いて処理した。これには、TRS低pH、低(6.0)pHクエン酸(citrate)緩衝液を用いたDakoの抗原回収プロトコールが含まれる。
組織試料は、組織染色後に目視分析した。抗PSMGFRは、感受性と特異性について試料の染色試薬として優れていた。加えて、抗PSMGFRは、明確な膜染色を呈したが、一方VU4H5は大部分の癌性試料又は試料の大部分の癌性領域においてしばしば存在しない拡散細胞質染色を呈した。
実施例3.1−結果
実施例3.1.1−乳癌
正常、癌性、及び良性それぞれの胸部組織試料を分析した。抗PSMGFRは、試料の癌性領域すべてを著しく染色した。染色は、膜に特異的であって、細胞表面全体にレセプターの均一な分布を示した。染色は金網模様を形成した(図4〜5を参照)。癌性領域におけるダクトは著しく染色されており、染色は細胞先端縁に限定されず、細胞表面全体に広がっていた。ダクト周辺の4〜5層の細胞は染色陽性であり、均一な膜染色を示した。この癌性試料内の「正常な」ダクトは、抗PSMGFRでは先端縁が染色陽性であったが、VU4H5では染色陽性にならなかった。VU4H5も癌性胸部組織を染色した。ただし、染色の強度はずっと低く、この染色は広範的で細胞質的であった(図5を参照)。重要なことは、大部分が癌性であって抗PSMGFRで最も著しく染色されていた領域の一部は、VU4H5では染色陽性とならなかったことである。これは、大部分の癌性領域においてほぼすべてのレセプターが切断して基本的にPSMGFRからなる成長因子レセプター形態になるという考えと矛盾しない。2つの試料は癌性であったがMUC1陰性であった。これらのMUC1陰性試料のいずれも、抗PSMGFRでは染色陽性とならなかった。これらのMUC1陰性試料は、MUC1レセプターの存在を示したが、正常レベルで正常な切断状態であるとみられた。ただし、VU4H5染色は、壊死領域に観察された(図7を参照)。これは、VU4H5を診断試薬として使用した場合、偽陽性結果を生じることにつながり得る。
乳癌がMUC1陽性であるかMUC1陰性であるか目視決定するための適切な診断プロトコールは次のとおりである。MUC1陽性癌の場合、試料は正常で健康なダクトから離れた領域において抗PSMGFRで染色陽性となる。染色は膜に特異的であって、細胞表面全体に均一に分布する。関係領域は、金網模様を呈する。MUC1陰性癌の場合、試料はダクトから離れた領域において無染色である。抗PSMGFRでの染色は、ダクトの先端縁に集中した膜染色に限定される。
実施例3.1.2−肺癌
肺腫瘍試料を分析した。抗PSMGFR染色されたMUC1陽性癌試料は、上記の乳癌試料で観察された染色と非常に類似していた。抗PSMGFRは、著しい膜染色を示し、染色は細胞表面全体に均一に分布した。染色は、試料の癌性領域において均一であった(図4〜6を参照)。VU4H5での染色は、分析試料についてMUC1陽性癌とMUC1陰性癌とを区別するには十分であったものの、染色は広範的で細胞質的であった(図6を参照)。MUC1陰性癌試料は、癌性試料として明らかに識別可能な組織試料であるが、抗PSMGFRでもVU4H5でも染色されなかった((図6を参照)。
肺癌がMUC1陽性であるかMUC1陰性であるか目視決定するための適切な診断プロトコールは次のとおりである。MUC1陽性癌の場合、試料は隣接領域において抗PSMGFRで染色陽性となる。細胞表面全体に均一に分布する膜染色がみられる。関係領域は、金網模様を呈する。MUC1陰性癌の場合、抗PSMGFRでもVU4H5でも染色されない。
実施例3.1.3−結腸癌
結腸癌試料と正常な結腸試料とを分析した。抗PSMGFRは、試料の癌性領域を非常に著しく染色した。試料の広領域が黒く染色された(図9を参照)。細胞を識別可能な領域は、膜染色を呈し、染色は細胞表面全体に均一に分布した。VU4H5は、抗PSMGFRで染色された領域のうちの一部を染色したが、これらの癌性領域の大部分は、腫瘍細胞から通常分離している部分と結合するこの抗体では染色されなかった。正常な結腸組織のダクト、並びに癌試料内の正常なダクトは、抗PSMGFRで染色陽性となった。この染色は、ダクトの発光側に並ぶクラスタリング化したレセプター、すなわち正常な細胞先端部の染色を示す。ダクトに並ぶこれらの正常な細胞において、VU4H5染色は大部分が広範的で細胞質的であった。
結腸癌がMUC1陽性であるかMUC1陰性であるか目視決定するための適切な診断計画案は次のとおりである。MUC1陽性癌の場合、試料は、ダクト以外の領域において抗PSMGFRで染色陽性となる。染色は膜に特定的であって、細胞表面全体に均一に分布する。染色された細胞や壊死組織が広領域で観察される。MUC1陰性癌の場合、試料はダクトから離れた領域において無染色である。
実施例3.1.4−前立腺癌
前立腺癌試料と、良性前立腺過形成試料とを分析した。癌性前立腺試料は、抗PSMGFRではダクトの先端縁染色の特徴を有したが、VU4H5ではかかる特徴を有さなかった(図8を参照)。一方、正常な前立腺試料は両抗体で染色陽性となった。これらのサンプルから、どの前立腺癌がMUC1陽性であってどの前立腺癌がMUC1陰性であるかを決定する評価プロトコールには、例えばVU4H5等の腫瘍細胞から通常分離しているMUC1レセプターの部分を認識する抗体を用いた染色に対する抗PSMGFRの染色の比率が含まれることが明らかである。VU4H5に対する抗PSMGFRの比率が高いことは、MUC1陽性癌を示すことになる。
実施例4−良性胸部腫瘍が癌に移行する可能性の予測
多くの腫瘍組織試料は、「正常な」細胞、非可塑性細胞、及び癌性細胞の各領域を含む。正常細胞から非可塑性細胞へ、更には癌性細胞への空間的移行は、進行癌の経時移行と相関関係がある。MUC1陽性癌試料の非可塑性細胞は、非可塑性細胞の染色と非癌性試料又はMUC1陰性癌試料とを区別されるように、抗var-PSMGFRで染色されることが観察された。抗var-PSMGFRは、細胞内側のクリア環を染色した(図10を参照)。細胞の非可塑性が高いほど、環は大きかった。抗PSMGFR染色が無染色から細胞内環染色へ、更には均一な膜染色へと移行するのに伴い、試料において正常から非可塑性へ、更には癌性へと移行することが追跡され得る。この細胞内環染色は、本研究で試験したいずれのMUC1陽性乳癌試料においても観察された。現在、良性であるが非可塑性であると判断された腫瘍を有する女性は通常「様子を見ましょう」と進言される。本明細書に開示した結果は、抗var-PSMGFRによる細胞内環染色は、良性であるが非可塑性である腫瘍が、癌に移行することを予測している。したがって、抗var-PSMGFRでの細胞内環染色を示す、良性であるが非可塑性である腫瘍を有すると診断された患者は、抗癌剤、好ましくはMUC1を直接的又は間接的に抑制する作用物質、より好ましくはMUC1のPSMGFR領域を抑制する作用物質、更により好ましくはMUC1を抑制する本明細書の物質で治療するべきである。
実施例5
本実験の実施により、金属キレート化機能を有するとともにMUC1のMGFR領域に結合する化合物がMUC1の切断を抑制することが分った。特に、本明細書に記載の実験により、化合物No. 173、No. 28、No. 184が、生存成長細胞上のMUC1の切断を抑制することが分った。実験の設計内容は以下のとおりである。胸部腫瘍細胞T47D、ZR-75-1を通常の状態において成長させた。ただし、MUC1の切断を増大させると知られている作用物質であるPMAを細胞に添加した。更に、MUC1のPSMGFR領域に結合するとされ、かつMUC1を切断させるとされているMMPを不能にする金属キレート化機能を有する化合物を個々に添加した。試験化合物がMUC1の切断を抑制した場合、細胞全体からの調整培地は分離MUC1量が少なかった。かかる量は、ウエスタンブロットにより視認された。結果から、化合物No. 173、No. 28、No. 184がすべて、MUC1の切断を抑制することが分った。図29を参照のこと。
実施例5.1−実験プロトコール
約800,000個の細胞(T47D又はZR-75-1)を、24ウェルプレートの各ウェルに播いた。細胞は、一晩そのまま置き、次の日に培地は無血清培地に交換した。PMA(ホルボール-12-ミリスチン酸-13-アセテート(Phorbol-12-mmyristate-13- acetate)、La Jollaに在するCalbiochem社製)を加える直前に、化合物/抑制剤の有無に関わらず、培地は1ml無血清培地に再び交換した。試薬(PMA、抑制剤)を添加して、細胞を1時間試薬で培養した。顕微鏡で、細胞が生存し組織的に保存されていることが観察された。上清をガラス管に移して、キャリヤーとして50ugのBSA(St. Louis, MOに在するSigma Chemical Co社製)を添加してから、0.2%量の50%(w/v)トリクロロ酢酸(trichloroacetic acid)(Fair Lawn, NJ に在するFisher Scientific社製)を加えた。サンプルは、摂氏4度で24時間沈降させ、1.5ml遠心管に移し、3000x gにて摂氏4度で20分遠心分離器にかけた。ペレットをアセトンですすぎ、ただちに遠心分離器にかけ、上清を除去し、室温で乾かした。ペレットは、25ulのサンプル抽出緩衝液(SEB)(0.05M TrisHCl、pH 7.0、8M 尿素、1% w/v SDS、0.01% v/vベタメルカプトエタノール(beta mercaptoethanol))に再懸濁させた。上清除去後にプレートに付着した細胞は、冷リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline(PBS)で洗浄し、SEBに溶解し、蛋白質濃度を測定した。サンプルは、上清由来と付着細胞由来との両方とも、5%SDS PAGEゲルに流し込んだ。標準的手順を用いてウエスタンブロットを実施した。使用した一次抗体は、マウスモノクローナル抗ヒトMuc1抗体ab696(Cambridge, MA に在するAbCam Inc社製)であった。これは、希釈度1:4000でMUC1レセプターのタンデムリピート単位を認識する。二次抗体は、抗マウスHRP(La Jolla, CA に在する, Calbiochem社製)で1:10,000希釈し使用した。
実施例6
本実施例は、質量分析で明らかなように、化合物No. 173がMgをキレート化することを実証する。Mg(NO3)2の水溶液に化合物No. 173のエタノール溶液を添加した。金属イオンと化合物の最終濃度は20uMであった。エタノールの最終濃度は2%(v/v)であった。サンプルは、渦流にかけてから室温に置いた。サンプルは、エレクトロスプレーイオン化を使用するMicroMass LCT質量分析器(Cambridge, MAに在するHarvard University製)を用いてイオン化した。1:1錯体に対応するシグナルが観察された(m/z = 539)。ガラス器からナトリウムをサンプルに二次的に浸出させることを調べる対照実験により、マグネシウム錯体が形成されていることが確認された(図23を参照)。
実施例7
本実施例は、質量分析で明らかなように、化合物No. 173がZnをキレート化することを実証する。Zn(NO3)2の水溶液に化合物No. 173のエタノール溶液を添加した。金属イオンと化合物の最終濃度は20uMであった。エタノールの最終濃度は2%(v/v)であった。サンプルを旋回攪拌してから室温に置いた。サンプルは、エレクトロスプレーイオン化を使用するMicroMass LCT質量分析器を用いてイオン化した。サンプルからスペクトラムが得られた(m/z = 580)。このスペクトラムは、ソフトウエアパッケージMasslynx 3.2 (Harvard University製)を使用して精製した予測錯体のシミュレーヨンスペクトラムと比較した。実験で得たスペクトラムは、Znをキレート化する化合物No. 173の理論予測スペクトラムと一致した(図25を参照)。
実施例8
本実施例は、質量分析で明らかなように、金属をキレート化するよう設計されていない化合物No. 173の誘導体である化合物No. 186を実証する。Zn(NO3)2の水溶液に化合物No. 186のエタノール溶液を添加した。金属イオンと化合物の最終濃度は20uMであった。エタノールの最終濃度は2%(v/v)であった。サンプルを旋回攪拌してから室温に置いた。サンプルは、エレクトロスプレーイオン化を使用するMicroMass LCT質量分析器を用いてイオン化した。化合物No. 173と亜鉛との間の錯体を観察するために用いた状態(m/z = 580)と同一の状態下で、錯体は観察されなかった(m/z = 579)。(図24を参照)。
実施例9
本実施例は、質量分析で明らかなように、化合物No. 28がZnをキレート化することを実証する。Zn(NO3)2の水溶液に化合物No. 28のエタノール溶液を添加した。金属イオンと化合物の最終濃度は20uMであった。エタノールの最終濃度は2%(v/v)であった。サンプルを旋回攪拌してから室温に置いた。サンプルは、エレクトロスプレーイオン化を使用するMicroMass LCT質量分析器を用いてイオン化した。1:1錯体に対応するシグナルが観察された(m/z = 631)(図26を参照)。
実施例10
本実施例は、質量分析で明らかなように、化合物No. 185がZnをキレート化することを実証する。Zn(NO3)2の水溶液に化合物No. 185のエタノール溶液を添加した。金属イオンと化合物の最終濃度は20uMであった。エタノールの最終濃度は2%(v/v)であった。サンプルを旋回攪拌してから室温に置いた。サンプルは、エレクトロスプレーイオン化を使用するMicroMass LCT質量分析器を用いてイオン化した。1:1錯体に対応するシグナルが観察された(m/z = 638)(図27を参照)。
実施例11
本実施例は、質量分析で明らかなように、MUC1レセプターのPSMGFR部分に直接結合する化合物No. 173を実証する。PSMGFRペプチドのESI+ MSと化合物No. 173との錯体である。H2N-GTINV HDVET QFNQY KTEAA SRYNL TISDV SVSDV PFPFS AQSGA HHHHHH-CO2H(SEQ ID NO:29)(Hopkinton, MAに在するQuality Controlled Biochemicals社製)を含む水溶液に、水に溶解したHCl塩として化合物No. 173の等モル量を添加した。サンプルを旋回攪拌してから環境温度に置いた。分析直前に、溶液を無水リン酸アンモニウムで緩衝化した。サンプルは、反射型モードにて作動するMicroMass Q-Tof2質量分析器(Ann Arbor, MI に在するProteomics Research Services, Inc社製)を用いてイオン化した。5つの無機リン酸塩が複合した有機複合化合物を伴うペプチド1:1錯体(総電荷+9)に対応するシグナルが観察された(m/z = 748)(図12〜14を参照)。
実施例12
本実施例は、表面プラズモン共振で明らかなように、MUC1レセプターのPSMGFR部分に直接結合する化合物No. 173を実証する。トリエチレングリコール末端チオール(tri-ethylene glycol terminated thiols)の背景に硫黄末端PSMGFRペプチドを組み込んだ自己組織化単層膜を、Leica SPR器具で使用するように用意されたTi/Au塗覆ガラススライド上に形成した。表面上のPSMGFRペプチドの濃度が増大するように、複数のSAM塗覆チップを作成した。SPR器にいったん入れてから、化合物No. 173を表面に導き、洗い流した。結果から、PSMGFRペプチドの濃度がチップ表面で増大するのに伴い、結合している化合物No. 173の量も増大することが分った。対照群のペプチドは、PSMGFRペプチド表面に結合しなかった。
実施例13
本実施例では、MUC1陽性腫瘍細胞又はMUC1トランスフェクト細胞の成長を抑制する能力について化合物を試験する方法について説明する。約10,000個の細胞を100ul培地における96ウェルプレートの各ウェルに播いた。(Herndon, VAに在するMediatech, Inc.社製の4.5g/Lグルコース、L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウムを含むDMEM)。細胞は、一晩そのままに置いた(約16〜20時間)。次の日、1〜5uMの範囲の最終濃度を得るように、1ulのDMSO又は1ulのDMSO中の個々の化合物をウェルに添加した。各条件について、少なくとも3組ずつ試験した。化合物を添加する直前に、対照ウェル1組(3〜5個)に存在する細胞数を計数することによって、0時間における細胞数を計数した。計数を行うにあたり、ウェル内の培地を吸引により除去し、50ulトリプシン(Trypsin)(Herndon, VAに在するMediatech, Inc.社のTrypsin EDTA 1X)を添加した。細胞は、5分間培養した。次に、細胞は十分に再懸濁し、血球計で計数した。化合物を添加した後、細胞は48時間5%CO2で湿潤させた摂氏37度の培養器で成長させた。次に、0時間細胞計数と同一の方法で48時間後の細胞計数を行った。細胞成長百分率は、化合物濃度の関数としてプロットした。対照には、無関係な化合物を添加した偽薬剤を用いた。化合物をMUC1陽性腫瘍細胞に添加した。また対照として、化合物をMUC1陰性腫瘍及び非腫瘍細胞に添加した。
MUC1レセプターをブロックすることによって化合物No. 1〜No. 188が細胞成長を抑制することを更に実証するために、化合物をMUC1陰性細胞のパネル、HEK293(ヒトの胚腎臓)に添加した。これは、細胞表面上のMUC1発現を引き起こすDNAトランスフェクトしていた。MUC1発現は、ウエスタンブロット、蛍光顕微鏡、FAC分類によって確認された。これらのトランスフェクト細胞については、2004年8月26日出願PCT/US2004/027954に記載されている。図15は、化合物No. 173がMUC1陽性腫瘍細胞の成長を優先的に抑制することを示している。
本実験において化合物は、3つの腫瘍細胞ラインに対して試験した。すなわち、PC3 MUC1陰性前立腺腫瘍細胞ラインであるPC MUC1-、MUC1陽性前立腺腫瘍細胞ラインであるPC MUC1+, DU145、MUC1陽性胸部腫瘍細胞ラインであるBC MUC1+, T47Dである。細胞成長のプロットは、化合物No. 173がMUC1陽性細胞に対して確実な殺傷効果を有することを示している。図16は、化合物No. 173、No. 28、No. 118の効果を示している。これらの化合物はすべて、MUC1陽性胸部腫瘍細胞ラインであるZR-75-1の成長に対して同様な抑制効果を有する。図17は、化合物No. 173がMUC1陰性親細胞ライン(HEK 293)の成長を著しくは抑制しないことを示すが、MUC1レセプターをトランスフェクトした後の細胞の成長を大きく抑制する。FLR #8、 FLR#35、 Muc #1、 MUC #28はクローンであって、これらにおいて細胞はトランスフェクトされてMUC1レセプターを発現する。FLR#8と#35は、PSMGFR部分のみ発現する。ウエスタンブロット分析は、MUCクローン#1、#28がすべて基本的に切断されPSMGFR部分が生成されることを示した。図18は、化合物No. 28が、化合物No. 173と同等に、MUC1陽性トランスフェクト細胞の成長を優先的に抑制することを示している。図19は、化合物No. 118がMUC1トランスフェクション細胞の成長を抑制するものの、空ベクターでトランスフェクションされた親細胞の成長は抑制しないことを示す。図20から、化合物No. 125が、同じMUC1陽性細胞と陰性トランスフェクション細胞とに対して同様の挙動を示すことが分かる。図21は、細胞が化合物No. 188で処理された場合に同じ効果があることを示している。図22は、細胞が化合物No. 182で処理された場合に同じ効果があることを示している。
実施例14
患者はMUC1陽性癌と診断され、化合物No. 173、No. 184、No. 28、No. 185、No. 118、No. 125、No. 182、No. 188、No. 107、No. 109、又はそれらの組合せ(既知の化学療法作用物質との組合せも含む)の治療を受けた。
以上本発明の複数の実施形態を説明し例示したが、当業者は、機能を実施する及び/又は本明細書に記載の結果又は利点を得るための様々な他の手段や構造を容易に想定することができる。かかる変形例はそれぞれ、本発明の範囲内にあるとみなされる。より総体的には、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、構造が例示的であって、実際のパラメータ、寸法、材料、構造は本発明の開示内容が使用される特定の用途に依存することを容易に理解する。当業者は、通常の実験のみを使用して、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの同等形態を認識し、確認することができる。したがって、上記実施形態は、例として提示されただけであって、添付の特許請求の範囲とその同等物において、本発明が具体的に記述された方法以外の方法で実施可能であると理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載の個々の特性、システム、材料、及び/又は方法を目的とする。更に、かかる特性、システム、材料、及び/又は方法において相互矛盾がある場合、2つ以上のかかる特性、システム、材料、及び/又は方法の組合せが、本発明の範囲内に含まれる。
(上記明細書同様に)特許請求の範囲において、「含む」「例えば」「持つ」「有する」「含有する」「関係する」等のすべての移行句は、非限定的な語句として理解される。すなわち、各要素を含むが、含まれるものは各要素だけとは限らない。「〜からなる」「基本的に〜からなる」という移行句のみが、限定的又は半限定的な移行句であるものとする。これは、米国特許庁の特許審査手順マニュアルのセクション2111.03に記載のとおりである。
本発明の抗体である抗PSMGFRが、胸部腫瘍細胞ライン由来の低分子量MUC1切断生成物を特異的に認識することを示すウエスタンブロットを示している。 本発明の抗体である抗PSMGFRが、胸部腫瘍細胞に由来、ならびにPSMGFRの末端で終わるMUC1変異形をトランスフェクトした細胞に由来する低分子量MUC1切断生成物を認識することを示すウエスタンブロットを示している(MUC1*は、nat-PSMGFRをトランスフェクトしたHEK 293を意味する)。 MUC1のPSMGFR部分(A及びB)又は全MUC1レセプター(C及びD)のいずれかをトランスフェクトしたHEK 293細胞の蛍光顕微鏡検査法の写真を示している。図3Aと図3Cは、トランスフェクトプラスミド上のGFP由来の緑蛍光と、PSMGFR部分を認識する抗体由来の赤蛍光を示す。図3Bと図3Dは、PSMGFR部分を認識する抗体由来の赤蛍光のみを示す。結果から、レセプターのクラスタリングにより全長クローンでは能力は大きく減少するものの、抗体が両トランスフェクタント上のPSMGFR部位を認識することができることが分る。 抗var-PSMGFRで染色された、癌性MUC1陽性(図A及び図C)とMUC1陰性(図B及び図D)の胸部(図A及び図B)と肺(図C及び図D)組織試料の写真を示している。 抗var-PSMGFR(図A及び図B)又はMUC1タンデムリピート単位に結合するVU4H5(図C及び図D)抗体のいずれかで染色された、癌性MUC1陽性(図A及び図C)とMUC1陰性(図B及び図D)胸部組織試料の写真を示している。 抗var-PSMGFR(図A及び図B)又はMUC1タンデムリピート単位に結合するVU4H5(図C及び図D)抗体のいずれかで染色された、癌性MUC1陽性(図A及び図C)とMUC1陰性(図B及び図D)肺組織試料の写真を示している。 抗var-PSMGFR(図A)又はMUC1タンデムリピート単位に結合するVU4H5(図B)抗体のいずれかで染色された、隣接MUC1陰性癌性胸部組織試料の写真を示している。タンデムリピート抗体は、MUC1陰性試料の壊死組織を染色することを示している。 抗var-PSMGFR(図A及び図B)又はMUC1タンデムリピート単位に結合するVU4H5抗体(図C及び図D)のいずれかで染色された、前立腺癌試料(図A及び図C)と良性前立腺肥大試料(図B及び図D)の写真を示している。タンデムリピート抗体は、癌性前立腺組織試料のダクトを染色せず、いずれの抗体も良性試料を染色しないことを示している。 抗var-PSMGFR(図A及び図B)又はMUC1タンデムリピート単位に結合するVU4H5抗体(図C及び図D)のいずれかで染色された、結腸癌試料(図A及び図C)と正常結腸試料(図B及び図D)の写真を示している。タンデムリピート抗体は、試料の大部分の癌性部分を染色しないことを示している。 癌性胸部腫瘍試料の非可塑性部分がH&E(図A)、抗var-PSMGFR(図B)、又はVU4H5(図C)のいずれかで染色された組織試料の写真を示している。抗var-PSMGFR(B)での染色は、非可塑性細胞内の目視可能で区別可能な環を表すことを示している。 MUC1レセプターのPSMGFR部分の質量分析スペクトラムを示している。 リン酸アンモニウム緩衝液内の化合物No. 173−PSMGFRペプチド錯体のMALDI質量スペクトラムを示している。 塩化アンモニウム緩衝液内の化合物No. 173−PSMGFRペプチド錯体のMALDI質量スペクトラムを示している。 硝酸アンモニウム緩衝液内の化合物No. 173−PSMGFRペプチド錯体のMALDI質量スペクトラムを示している。 MUC1陽性腫瘍細胞とMUC1陰性腫瘍細胞とに対する本発明の合成物に関する成長をプロットしたグラフを示している。 化合物No. 173、No. 28、No. 118が全て同様に胸部腫瘍細胞株ZR-75-1の成長を抑制することを示している。 化合物No. 173がMUC1をトランスフェクトした細胞の成長を阻害するが親細胞は阻害しないことを示している。FLR#8、#35はPSMGFRトランスフェクタントである。Muc1#1、#28は、実際にMGFRに切断する全長トランスフェクタントである。 化合物No. 28がMUC1をトランスフェクトした細胞の成長を阻害するが親細胞は阻害しないことを示している。FLR#8、#35はPSMGFRトランスフェクタントである。Muc1#1、#28は、実際にMGFRに切断する全長トランスフェクタントである。 化合物No. 118がMUC1をトランスフェクトしたHEK 293細胞の成長を阻害するが、親細胞や空ベクターでトランスフェクションされた細胞は阻害しないことを示している。 化合物No. 125がMUC1をトランスフェクトしたHEK 293細胞の成長を阻害るが親細胞は阻害しないことを示している。 化合物No. 188がMUC1をトランスフェクトした細胞の成長を阻害するが親細胞は阻害しないことを示している。 化合物No. 182がMUC1をトランスフェクトした細胞の成長を阻害するが親細胞は阻害しないことを示している。 Mgをキレート化する化合物No. 173の質量分析を示している。 化合物No. 186が金属をキレート化しないことを示す質量分析を示している。 化合物No. 173がZnをキレート化することを示す質量分析を示している。 化合物No. 28がZnをキレート化することを示す質量分析を示している。 化合物No. 185がZnをキレート化することを示す質量分析を示している。 化合物又はDMSOのみで処理されたT47D細胞周辺の調整培地のウエスタンブロットを示している。本図から、化合物No. 173、No. 184、No. 28はZnをキレート化し、基本的にPSMGFRからなる腫瘍に特異的な形態にMUC1が切断するのを抑制することが分る。 MUC1をトランスフェクトした細胞の成長を親細胞ラインと比較してプロットしたグラフを示す。非キレート剤化合物とキレート誘導体との両方が、MUC1陽性細胞の成長を抑制することを示している。

Claims (8)

  1. MUC1の異常発現について、対象から採取された身体のサンプルを試験した後に、対象に投与されることを特徴とする、下記の化学式で表わされる化合物No.173ある化合物を含有する、癌の治療又予防剤。
  2. MUC1の異常発現が、細胞の先端縁においてMUC1のクラスタリングパターンが消失すること、およびMUC1が細胞表面全体に均一に分布すること及び/又は過剰発現することを特徴とする、請求項1記載の癌の治療又予防剤。
  3. MUC1の異常発現が、nat-PSMGFR(配列番号13)、var-PSMGFR(配列番号7)、又はESMGFR(配列番号3)のペプチドを認識する作用物質又は抗体に接触せしめた際に、膜染色が細胞を均一に覆うことを特徴とする、請求項1記載の癌の治療又予防剤。
  4. 前記化合物が金属依存性蛋白質を抑制することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1に記載の癌の治療又予防剤。
  5. 前記蛋白質がキネシンであることを特徴とする、請求項に記載の癌の治療又予防剤。
  6. 前記金属依存性蛋白質が、MUC1を切断させる酵素であることを特徴とする、請求項に記載の癌の治療又予防剤。
  7. 前記酵素が、マトリックスメタロプロテアーゼであることを特徴とする、請求項に記載の癌の治療又予防剤。
  8. 前記酵素が、MT1-MMP又はMMP-14であることを特徴とする、請求項に記載の癌の治療又予防剤。
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