JP5634013B2 - 燃料電池用触媒層の製造方法、触媒層転写シート及び触媒層−電解質膜積層体 - Google Patents

燃料電池用触媒層の製造方法、触媒層転写シート及び触媒層−電解質膜積層体 Download PDF

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Description

本発明は、燃料電池用触媒層の新規な製造方法、触媒層転写シート及び触媒層−電解質膜積層体に関する。
燃料電池は、電解質膜の両面に触媒層を配置し、水素と酸素との電気化学反応により発電する発電するシステムであり、発電時に発生するのは水のみである。従来の内燃機関と異なり、二酸化炭素等の環境負荷ガスを発生しない為、次世代のクリーンエネルギーシステムとして注目されている。
固体高分子形燃料電池は、電解質膜として水素イオン伝導性高分子電解質膜を用いて、その両面に触媒層及び電極基材を順次積層し、さらにセパレータで挟まれた構造をしている。
このうち特に触媒層は電池反応の中心的役割を果たすものであるため、高性能化が盛んに進められている。この触媒層は通常、触媒粒子、水素イオン伝導性高分子電解質及び溶剤を含むペースト組成物を基材等に塗布及び乾燥することにより製造される。
しかしながら、この製造工程において、乾燥した場合に乾燥後の触媒層にクラック(ひび割れ)が生じる問題がある。触媒層のクラックは、電池性能の低下を招くため、クラックの発生を極力回避する必要がある。
クラックの発生を回避する方法としては、例えば、触媒インク面と基材シート面とを異なる湿度雰囲気に曝し双方の収束速度をほぼ一致させた状態で乾燥させる方法(特許文献1)、触媒層形成用ペースト組成物を電極基板上に塗布した後、複数の燃料電池セルの電極基板をほぼ同一の水分量に保持した後、真空下で乾燥して水分を除去する方法(特許文献2)等が提案されている。
しかしながら、特許文献1の方法では、触媒インク面と基材シート面とを異なる湿度雰囲気に曝すため、特殊且つ複雑な乾燥装置が必要となる。また、当該方法は、収束速度をほぼ一致させた状態の判断が難しく、再現性に問題があり、所望の触媒層を工業的に製造できない。
一方、特許文献2の方法では、高温多湿条件下におくことにより水分量を調整し、その後水蒸気の供給を止めた後0.1〜0.5kPaで急激に真空乾燥を行う必要がある。従って、急激な真空乾燥により触媒層構造中の微細な空隙(細孔径10nm〜200nmの空隙)が閉塞されてしまい(例えば、当該空隙の空隙率は5%程度であり)、却って電池性能が低下した触媒層が製造される問題を有している。
特開2004−259509号公報 特開2005−302538号公報
従って、クラックの発生が抑制され、かつ良好な電池性能を発揮できる触媒層の簡便な製造方法の開発が要望されている。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、触媒層形成用ペースト組成物から触媒層を製造するに当たり、特定の条件下で乾燥を行うことにより、クラックが少ない触媒層を製造することを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は下記項1〜項6に示す触媒層の製造方法、転写シート及び触媒層−電解質膜積層体を提供する。
項1.触媒粒子、イオン伝導性高分子電解質及び溶剤を含む触媒層形成用ペースト組成物を用いて燃料電池用触媒層を製造するに当たり、
前記溶剤に含まれる主溶剤と同一成分の気体を含む雰囲気下であって20〜50hPaの圧力下で、且つ、主溶剤の飽和蒸気圧付近で前記触媒層形成用ペースト組成物の乾燥を行う工程、
を備えた触媒層の製造方法。
項2.20〜100℃で乾燥を行う、項1に記載の製造方法。
項3.前記溶剤が炭素数1〜4のアルコールである、項1又は2に記載の製造方法。
項4.前記主溶剤が1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール又はt−ブタノールである、項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
項5.項1〜4のいずれかの製造方法で得られた触媒層転写基材上に形成することを特徴とする、触媒層転写シートの製造方法
項6.項5に記載の触媒層転写シートの製造方法により得られた触媒層転写シートを電解質膜に転写することを特徴とする、触媒層−電解質膜積層体の製造方法
本発明の製造方法は、燃料電池用触媒層の製造方法であって、触媒粒子、イオン伝導性高分子電解質及び溶剤を含む触媒層形成用ペースト組成物を、前記溶剤に含まれる主溶剤の気体を含む雰囲気下であって、20〜50hPaの圧力下で乾燥する工程、を備えることを特徴とする。
触媒層形成用ペースト組成物
本発明の触媒層形成用ペースト組成物は、例えば、触媒粒子、イオン伝導性高分子電解質及び溶剤を含む。
触媒粒子は、公知又は市販のものを使用することができ、燃料電池の燃料極又は空気極における燃料電池反応を起こさせるものであれば特に限定されない。例えば白金、白金合金、白金化合物等が挙げられる。白金合金としては、例えば、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄等からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と白金との合金等が挙げられる。一般的に、カソード触媒層として用いられる場合の触媒粒子は白金、アノード触媒層として用いられる場合の触媒粒子は上述した合金である。
また、触媒粒子は、触媒粒子が炭素粒子に担持した、いわゆる触媒担持炭素粒子であってもよい。触媒担持炭素粒子の平均粒子径は、通常10〜100nm程度、好ましくは20〜80nm程度、最も好ましくは40〜50nm程度である。触媒担持炭素粒子を構成する炭素粒子は特に制限されず、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ランプブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、活性炭、カーボン繊維、カーボンナノチューブ等からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
イオン伝導性高分子電解質は、水素イオン伝導性のものであればよく、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂等が挙げられる。また、電気陰性度の高いフッ素原子を導入することにより、化学的に非常に安定し、スルホン酸基の乖離度が高く、良好な水素イオン伝導性が実現できる。このような水素イオン伝導性高分子電解質の具体例としては、例えば、デュポン社製の「Nafion」、旭硝子(株)製の「Flemion」、旭化成(株)製の「Aciplex」、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」等が挙げられる。
使用される溶剤としては公知又は市販のものを使用することができる。例えば、各種アルコール、各種エーテル、各種ジアルキルスルホキシド、水又はこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜4のアルコールが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール等が好ましい。最も好ましくは、2−プロパノールである。
本発明では、特に、溶剤の含まれる主溶剤が1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、t−ブタノール等からなる群から選択される1種であることが好ましい。より好ましくは2−プロパノールである。
本発明において、主溶剤とは、ペースト組成物に含まれる全溶剤のうち、最も多く含まれている溶剤であり、好ましくは全溶剤中において25重量%以上、より好ましくは50重量%以上含まれる溶剤をいう。
本発明の触媒層形成用ペースト組成物中に含まれる上記触媒粒子、イオン伝導性高分子電解質及び溶剤の割合は限定されるものではなく、広い範囲内で適宜選択できる。
例えば、触媒粒子1重量部(触媒担持炭素粒子の場合は、当該触媒担持炭素粒子1重量部)に対して、イオン伝導性高分子電解質が0.1〜2重量部(好ましくは0.2〜1重量部)程度、溶剤が5〜35重量部(好ましくは10〜25重量部)程度含まれていればよい。
触媒層形成用ペースト組成物は、上記触媒粒子、イオン伝導性高分子電解質及び溶剤を混合することにより、製造される。上記触媒粒子、イオン伝導性高分子電解質及び溶剤の混合順序は、特に制限されない。例えば、上記触媒粒子、イオン伝導性高分子電解質及び溶剤を順次又は同時に混合し、触媒粒子を分散させることにより、触媒層形成用ペースト組成物を調製できる。
なお、本発明の触媒層形成用ペースト組成物には、本発明の効果を阻害しない程度であれば、その他の公知の添加剤等を含有していてもよい。
製造方法
本発明の製造方法は、上記触媒層形成用ペースト組成物を用いて燃料電池用触媒層を製造するに当たり、溶剤に含まれる主溶剤と同一成分の気体が含まれている雰囲気下であって20〜50hPaの圧力下で乾燥を行う工程を備えることを特徴とする。
この乾燥工程に際し、例えば、上記触媒層形成用ペースト組成物を、公知の転写基材等の基材に所望の層厚となるように塗布してから、乾燥すればよい。
ペースト組成物の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ナイフコーター、バーコーター、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷等の一般的な方法を適用できる。
なお、転写基材のほかに、燃料電池用の電解質膜、電極基材等の基材に直接塗布してもよい。
斯かるペースト組成物を塗布した後、本発明の乾燥工程を行うことにより、触媒層が形成される。本発明の乾燥工程は、溶剤に含まれる主溶剤と同一成分の気体を含む雰囲気下であって20〜50hPaの圧力下で行うことを必須とする。これにより、適度な乾燥速度となり、乾燥中において、触媒層が適度な空隙を構成するように触媒粒子を配列させることができる。この結果、クラックの発生及び触媒層中の空隙の閉塞が抑制された、優れた電池性能を発揮する触媒層を製造できる。また、この工程は、乾燥装置内を特定の気体で充満して特定の圧力下に調節すればよいため、特殊な装置及び複雑な工程を必要としない。
具体的には、例えば、デシケータ等の乾燥装置内に、(1)触媒層形成用ペースト組成物が塗布された基材、及び(2)当該ペースト組成物に含まれる主溶剤と同一成分の液体で満たした開口容器(例えば、シャーレ等)を静置し、次いで、当該乾燥装置内を20hPa〜50hPaの圧力となるように減圧することにより、乾燥させればよい。必要に応じて、減圧時に連続的又は断続的に装置内を脱気すればよい。
さらに必要に応じて、上記乾燥工程終了後、更に圧力を下げることにより、触媒層に残存しているごく少量の溶剤を確実に除去してもよい。
乾燥時の圧力は20〜50hPaであり、好ましくは30〜45hPaである。また、特に本発明では、主溶剤の飽和蒸気圧付近で行うのが好ましい。例えば、主要剤が2−プロパノールである場合、20℃で41hPa(±4hPa)程度の範囲にて行うことが好ましい。これによって、より一層のクラック抑制効果が得られる。
乾燥時間は乾燥時の圧力、溶剤等の種類に応じて決定されるが、通常1〜120分程度、好ましくは5分〜60分程度、より好ましくは15分〜30分程度とすればよい。
乾燥時の温度は限定的でないが、好ましくは15〜100℃程度、より好ましくは20〜80℃程度とすればよい。
本発明の製造方法によって得られる触媒層は、その細孔径10nm〜200nmの空隙における空隙率が触媒層に対して、好ましくは6〜30%であり、より好ましくは12〜30%であるか又は7.5〜20%であり、さらに好ましくは15〜20%である。細孔径5μm〜50μmの空隙における空隙率は触媒層に対して好ましくは2〜18%であり、より好ましくは2〜9%であるか又は4〜17%であり、場合に応じて4〜8.5%が最も好ましい。
なお、本発明における空隙率は水銀ポロシメーター(島津製作所社製、製品名「AUTOPORE9500」)によって測定されるものである。
触媒層の厚さは限定的でなく、例えば、通常5μm〜120μm程度、好ましくは、10μm〜50μm程度、より好ましくは15μm〜30μm程度とすればよい。
触媒層中の触媒粒子の含量(触媒担持炭素粒子の場合は、当該触媒担持炭素粒子の含量)は、触媒層全量に対して、通常10〜90重量%程度、好ましくは40〜80重量%程度である。
本発明の触媒層は、例えば固体高分子形燃料電池、直接燃料形燃料電池等に用いることができる。
本発明の触媒層転写シートは、本発明製造方法によって得られる触媒層が転写基材上に形成しているものであり、例えば、上記触媒層形成用ペースト組成物を転写基材に塗布し、次いで本発明の乾燥工程を行うことにより得られる。
転写基材は特に限定されず、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパルバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン等の高分子フィルムを挙げることができる。また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂を用いることもできる。更に、基材は、高分子フィルム以外に、アート紙、コート紙、軽量コート紙等の塗工紙、ノート用紙、コピー用紙等の非塗工紙等の紙であってもよい。これらの中でも、安価で入手が容易な高分子フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン等がより好ましい。
転写基材の厚さは、取り扱い性及び経済性の観点から、通常6μm〜100μm程度、好ましくは10μm〜60μm程度とするのがよい。
転写基材には、必要に応じて離型層が積層されていてもよい。離型層としては、例えば、公知のワックスから構成されたもの、公知のフッ素系樹脂でコーティングされたプラスチックフィルムが挙げられる。
本発明の触媒層−電解質膜積層体は、電解質膜の一方面又は両面に本発明の製造方法によって得られた触媒層が形成されたものである。
本発明の触媒層が積層された電解質膜(触媒層−電解質膜積層体)は、例えば、本発明触媒層転写シートの触媒層面が電解質膜面に対面するように転写シートを配置し、加圧した後、当該転写シートの転写基材を剥離することにより製造される。この操作を1回又は2回繰り返すことにより、触媒層面が電解質膜の両面に積層された触媒層−電解質膜積層体が製造される。
作業性を考慮すると、触媒層面を電解質膜の両面に同時に積層するのがよい。この場合には、例えば、本発明転写シートの触媒層面が電解質膜の両面に対面するように転写シートを配置し、加圧した後、当該転写シートの転写基材を剥離すればよい。
使用する電解質膜は、公知又は市販のものを使用すればよい。電解質膜の具体例としては、デュポン社製の「Nafion」(登録商標)膜、旭硝子(株)製の「Flemion」(登録商標)膜、旭化成(株)製の「Aciplex」(登録商標)膜、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」(登録商標)膜等の水素イオン伝導性高分子電解質膜が挙げられる。電解質膜の膜厚は、通常20μm〜250μm程度、好ましくは20μm〜80μm程度とすればよい。
加圧レベルは、転写不良を避けるために、通常0.5MPa〜10MPa程度、好ましくは1MPa〜10MPa程度がよい。また、この加圧操作の際に、転写不良を避けるために、加圧面を加熱するのが好ましい。加熱温度は、電解質膜の破損、変性等を避けるために、通常80〜200℃程度、好ましくは135〜150℃程度がよい。
本発明によれば、クラックの発生が少なく、かつ適度な空隙を有する触媒層を製造できるため、本発明で得られた触媒層は良好な電池性能を発揮できる。また、本発明の製造方法は、特定の気体で充満された雰囲気下且つ特定の圧力下で乾燥を行えばよいため、特殊な装置及び複雑な工程を必要としない。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより一層詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
白金担持カーボン(Pt:40重量%、ジョンソンマッセイ(株)製、)0.8重量部及び5重量%電解質溶液(5wt%Nafion(登録商標)溶液、Aldrich社製、製品番号「274704」、溶剤「水:1−プロパノール:2−プロパノール=1:1.5:2(重量比)」)4重量部を、2−プロパノール1.5重量部に添加し、混合及び分散を行い、触媒層形成用ペースト組成物を調製した。
調製した触媒層形成用ペースト組成物を転写基材(テフロン(登録商標)シート、50μm、ニチアス社製)の一方面上にブレードコーターにて乾燥後の触媒層の厚さが100μmになるように塗布した後、2−プロパノールで満たされたシャーレとともに、デシケータ内に静置した。
次いで、減圧ポンプを用いて、5分間かけてデシケータ内を40hPaまで減圧し、40hPaの状態を30分間保持することにより、触媒層形成用ペースト組成物を乾燥させ、本発明の触媒層転写シートを作製した。なお、デシケータ内の温度は約20℃とした。
得られた触媒層転写シート上の触媒層を走査型電子顕微鏡(SEM)で500倍にて観察したところ、クラックがほとんど発生していなかった。このSEM写真を図1に示す。
また、触媒層の空隙率を水銀ポロシメーター(島津製作所製、製品名「AUTOPORE9500」)を用いて測定したところ、細孔径10nm〜200nmの空隙における空隙率が9.98%、細孔径5μm〜50μmの空隙における空隙率が7.22%であった。
実施例2
5分間かけてデシケータ内を30hPaまで減圧し、30hPaの状態を30分間保持する以外は実施例1と同様にして、触媒層転写シートを作製した。
得られた触媒層転写シート上の触媒層を走査型電子顕微鏡(SEM)で500倍にて観察したところ、クラックがほとんど発生していなかった。このSEM写真を図2に示す。また、触媒層転写シート上の触媒層の空隙率を測定したところ、細孔径10nm〜200nmの空隙における空隙率が8.21%、細孔径5μm〜50μmの空隙における空隙率が5.26%であった。
実施例3
触媒層形成用ペースト組成物の塗布量を、乾燥前の液膜の厚さが100μmとなるようにした以外は実施例1と同様にして、触媒層転写シートを作製した。なお、乾燥後の触媒層の厚さは45μmであった。
得られた触媒層転写シート上の触媒層を走査型電子顕微鏡(SEM)で500倍にて観察したところ、クラックがほとんど発生していなかった。このSEM写真を図3に示す。また、触媒層転写シート上の触媒層の空隙率を測定したところ、細孔径10nm〜200nmの空隙における空隙率が19.96%、細孔径5μm〜50μmの空隙における空隙率が14.44%であった。
実施例4
触媒層形成用ペースト組成物の塗布量を、乾燥前の液膜の厚さが100μmとなるようにした以外は実施例2と同様にして、触媒層転写シートを作製した。なお、乾燥後の触媒層の厚さは46μmであった。
得られた触媒層転写シート上の触媒層を走査型電子顕微鏡(SEM)で500倍にて観察したところ、クラックがほとんど発生していなかった。このSEM写真を図4に示す。また、触媒層転写シート上の触媒層の空隙率を測定したところ、細孔径10nm〜200nmの空隙における空隙率が16.42%、細孔径5μm〜50μmの空隙における空隙率が10.52%であった。
実施例5
5分間かけてデシケータ内を50hPaまで減圧し、50hPaの状態を30分間保持する以外は実施例3と同様にして、触媒層転写シートを作製した。なお、乾燥後の触媒層の厚さは46μmであった。
得られた触媒層転写シート上の触媒層を走査型電子顕微鏡(SEM)で500倍にて観察したところ、クラックがほとんど発生していなかった。このSEM写真を図5に示す。また、触媒層転写シート上の触媒層の空隙率を測定したところ、細孔径10nm〜200nmの空隙における空隙率が18.30%、細孔径5μm〜50μmの空隙における空隙率が6.39%であった。
実施例6
5分間かけてデシケータ内を40hPaまで減圧し、40hPaの状態を60分間保持する以外は実施例3と同様にして、触媒層転写シートを作製した。なお、乾燥後の触媒層の厚さは50μmであった。
得られた触媒層転写シート上の触媒層を走査型電子顕微鏡(SEM)で500倍にて観察したところ、クラックがほとんど発生していなかった。このSEM写真を図6に示す。また、触媒層転写シート上の触媒層の空隙率を測定したところ、細孔径10nm〜200nmの空隙における空隙率が18.04%、細孔径5μm〜50μmの空隙における空隙率が15.50%であった。
実施例7
5分間かけてデシケータ内を50hPaまで減圧し、50hPaの状態を60分間保持する以外は実施例3と同様にして、触媒層転写シートを作製した。なお、乾燥後の触媒層の厚さは46μmであった。
得られた触媒層転写シート上の触媒層を走査型電子顕微鏡(SEM)で500倍にて観察したところ、クラックがほとんど発生していなかった。このSEM写真を図7に示す。また、触媒層転写シート上の触媒層の空隙率を測定したところ、細孔径10nm〜200nmの空隙における空隙率が16.22%、細孔径5μm〜50μmの空隙における空隙率が5.50%であった。
実施例8
5分間かけてデシケータ内を30hPaまで減圧し、30hPaの状態を60分間保持する以外は実施例3と同様にして、触媒層転写シートを作製した。なお、乾燥後の触媒層の厚さは45μmであった。
得られた触媒層転写シート上の触媒層を走査型電子顕微鏡(SEM)で500倍にて観察したところ、クラックがわずかに認識できた程度であった。このSEM写真を図8に示す。また、触媒層転写シート上の触媒層の空隙率を測定したところ、細孔径10nm〜200nmの空隙における空隙率が16.48%、細孔径5μm〜50μmの空隙における空隙率が18.80%であった。
比較例1
5分間かけてデシケータ内を57hPaまで減圧し、57hPaの状態を30分間保持する以外は実施例1と同様にして、触媒層転写シートを作製した。
得られた触媒層転写シート上の触媒層を走査型電子顕微鏡(SEM)で500倍にて観察したところ、クラックが多量に発生していた。このSEM写真を図9に示す。また、得られた触媒層転写シート上の触媒層の空隙率を測定したところ、細孔径10nm〜200nmの空隙における空隙率が8.11%、細孔径5μm〜50μmの空隙における空隙率が10.51%であった。
比較例2
5分間かけてデシケータ内を74hPaまで減圧し、74hPaの状態を30分間保持する以外は実施例1と同様にして、触媒層転写シートを作製した。
得られた触媒層転写シート上の触媒層を走査型電子顕微鏡(SEM)で500倍にて観察したところ、クラックが多量に発生していた。このSEM写真を図10に示す。また、触媒層転写シート上の触媒層の空隙率を測定したところ、細孔径10nm〜200nmの空隙における空隙率が8.77%、細孔径5μm〜50μmの空隙における空隙率が9.25%であった。
比較例3
触媒層形成用ペースト組成物の塗布量を、乾燥前の液膜の厚さが100μmとなるようにした以外は比較例1と同様にして、触媒層転写シートを作製した。なお、乾燥後の触媒層の厚さは55μmであった。
得られた触媒層転写シート上の触媒層を走査型電子顕微鏡(SEM)で500倍にて観察したところ、クラックが多量に発生していた。このSEM写真を図11に示す。また、得られた触媒層転写シート上の触媒層の空隙率を測定したところ、細孔径10nm〜200nmの空隙における空隙率が16.22%、細孔径5μm〜50μmの空隙における空隙率が21.02%であった。
比較例4
触媒層形成用ペースト組成物の塗布量を、乾燥前の液膜の厚さが100μmとなるようにした以外は比較例2と同様にして、触媒層転写シートを作製した。なお、乾燥後の触媒層の厚さは56μmであった。
得られた触媒層転写シート上の触媒層を走査型電子顕微鏡(SEM)で500倍にて観察したところ、クラックが多量に発生していた。このSEM写真を図12に示す。また、得られた触媒層転写シート上の触媒層の空隙率を測定したところ、細孔径10nm〜200nmの空隙における空隙率が17.54%、細孔径5μm〜50μmの空隙における空隙率が18.50%であった。
図1は、実施例1の触媒層表面のSEM写真を示す。 図2は、実施例2の触媒層表面のSEM写真を示す。 図3は、実施例3の触媒層表面のSEM写真を示す。 図4は、実施例4の触媒層表面のSEM写真を示す。 図5は、実施例5の触媒層表面のSEM写真を示す。 図6は、実施例6の触媒層表面のSEM写真を示す。 図7は、実施例7の触媒層表面のSEM写真を示す。 図8は、実施例8の触媒層表面のSEM写真を示す。 図9は、比較例1の触媒層表面のSEM写真を示す。 図10は、比較例2の触媒層表面のSEM写真を示す。 図11は、比較例3の触媒層表面のSEM写真を示す。 図12は、比較例4の触媒層表面のSEM写真を示す。

Claims (6)

  1. 触媒粒子、イオン伝導性高分子電解質及び溶剤を含む触媒層形成用ペースト組成物を用いて燃料電池用触媒層を製造するに当たり、
    前記溶剤に含まれる主溶剤と同一成分の気体を含む雰囲気下であって20〜50hPaの圧力下で、且つ、主溶剤の飽和蒸気圧付近で前記触媒層形成用ペースト組成物の乾燥を行う工程、
    を備えた触媒層の製造方法。
  2. 20〜100℃で乾燥を行う、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記溶剤が炭素数1〜4のアルコールである、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記主溶剤が1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール又はt−ブタノールである、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかの製造方法で得られた触媒層転写基材上に形成することを特徴とする、触媒層転写シートの製造方法
  6. 請求項5に記載の触媒層転写シートの製造方法により得られた触媒層転写シートを電解質膜に転写することを特徴とする、触媒層−電解質膜積層体の製造方法
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