JP5628683B2 - 容量性素子の利得の補正方法及び該補正方法を実施する装置 - Google Patents

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Description

本発明は、容量性素子の利得の補正方法及びこの補正方法を実施する装置に関する。
相互に相対移動可能な、装置の2つの部分の間の距離を検出する又は制御するために容量性素子を含む、多くの装置が知られている。具体的には、振動ジャイロ、特に軸対称振動ジャイロ内の機械共振器の変形を検出及び制御するために容量性素子が使用されることが知られている。このような装置がフリージャイロの状態で使用される場合に、これらの装置は非常に安定したスケールファクター(ブライアンのファクター(Bryan's factor))を持つという利点を有する。
フリージャイロの状態では振動は自由であり、その振動面は、ジャイロを運ぶ運搬物の動きに応じて共振器の軸の周りを回転する。フリージャイロの状態における利益の恩恵を受けるには、振動の動きを持続させる制御信号を印加するために、装置の筐体に対する振動の位置を正確に知ることが必要である。いかなる振動の位置測定の誤差も、加えられた力の方向に誤差を生じてジャイロの寄生的なドリフトを発生させる。
加速度測定機に生じる誤差を補正する又は考慮するための多くの試みが行われている。米国公報US-A-2003/006783及びUS-A-6035694は、実質的に一定の浮遊容量により生じる測定誤差を減衰させることを試みている。米国公報US-A-6035694も同様の解決策を記載している。
検出及び制御の両方の意味において、ジャイロの動作には容量性素子の利得、すなわち、容量性素子の電極間の距離と容量性素子の端子における電気信号の大きさとの間の比が関係する。容量性素子が検出器として使用される場合における容量性素子の端子における信号の大きさも、電極が制御のために使用される場合における電極間の距離も、電極の1つに印加される直流(DC)バイアス電圧の関数となる。本発明を導く実験では、容量性素子の利得が、バイアス電圧が中断されてもなお残留する残留場(remanent field)に影響されることが判明した。この残留は、電極の主要部内及び表面上の不純物に由来し、バイアス電圧が印加されたときにバイアス電圧によって発生されるものと考えられる。公称バイアス電圧、すなわち検出段階又は制御段階の間に容量性素子に印加される電圧は、数百ボルトのオーダー(典型的には200〜400ボルトの範囲)であるとき、発生する残留は、数ボルトのバイアス電圧と等価である。この残留は、ゆっくりと変化する利得誤差を発生させうる。
本発明は、残留の影響を除去しうる方法及び装置を提案することを目的とする。
この目的を達成するため、本発明は、相互に相対移動可能な複数の電極を備えており前記電極間に残留が存在する容量性素子の利得の補正方法を提供する。本方法は、測定可能な残留を発生させる閾値より小さい値を持つ低減された直流バイアス電圧を複数の電極の一方に印加するステップと、容量性素子からの出力信号を測定するステップと、測定された出力信号に応じて容量性素子の利得を補正するステップと、を含む。
容量性素子からの出力信号は、現存する残留に等価なバイアス電圧から生じる第1成分と、低減されたバイアス電圧から直接生じる第2成分とを加えた二つの成分を持つ。低減されたバイアス電圧から直接生じる出力信号の成分は、このバイアス電圧と、補正前の容量性素子の利得から計算することができる。したがって、残留から生じる出力信号成分は、出力信号から抽出することができる。この成分は、容量性素子に関連した装置の動作のために容量性素子が使用されている間に残留により生じる利得誤差を計算することを可能する。
本発明の有利な変形において、低減されたバイアス電圧は、残留に等価なバイアス電圧として見積もられた推定バイアス電圧よりも大きい。したがって、容量性素子からの出力信号は、残留の方向に関わらず一定の符号を持ち、したがって出力信号の絶対値は、低減されたバイアス電圧の大きさよりもこの絶対値が大きいか又は小さいかに応じて、残留の方向を判断することを可能にする。
好適には、方法は、2つの連続する測定において符号の異なる同じ値の低減されたバイアス電圧のそれぞれについて出力信号を測定するステップと、その結果得られた出力信号の平均値を取得するステップを含む。これは、低減されたバイアス電圧から生じる成分を出力信号から除去し、低減されたバイアス信号の大きさを考慮する必要なく、容量性素子からの出力信号の平均値をゲインの補正に使用することを可能にする。
本発明の方法の好適な実施例において、方法は、事前に公称バイアス電圧を容量性素子へ短期間印加するステップを含む。これは、容量性素子に関連する装置が動作しているときの残留の値と、利得の補正方法を実行している間に測定される残留の値とを等しくする。
本発明の他の特徴及び利点は、以下に続く、非限定的な本発明の特定の実施例の説明を読み、これに添付される図面を参照することにより明らかになるであろう。
半球ベル状振動センサを示す図2のI−I軸上断面図である。 図1のII−II断面図である。 初期化段階における本発明の方法の実施例を説明するフローチャートである。 容量性素子に関する装置の動作段階における本発明の第1実施例を説明するフローチャートである。 残留と等価なバイアス電圧、低減されたバイアス電圧、及び同じ値で符号が反対の2つの低減されたバイアス電圧について得られる合計等価電圧の大きさを示す図である。 容量性素子に関する装置の動作段階における本発明の第2実施例を説明するフローチャートである。
図1及び図2を参照する。本発明は、シリカベル1と、同様にシリカで作られてシリカベル1をその上に搭載する基部2を、従来通りに備える半球ベル状振動センサ7に関連して説明される。ベル1は、センサを真空中に置くことを可能にする気密筐体3に囲まれている。
既知の方法と同様に、ベル1の内面はその底縁と同様に金属メッキされている。ベル1の底縁は、対抗する2組の制御電極4と2組の検出電極5へ延びている。対抗する各電極と金属メッキされたベル1の下端は容量性素子をそれぞれ形成する。各容量性素子は、半球ベルの軸を含み且つ基準電極5に対する相対角度θによって位置が特定される面に含まれる振動を発生させるための制御検出部6に好適に接続される。振動の位置は、制御部6が制御電極4に歳差制御を加えることによって制御される。
ベル1の金属層へDCバイアス電圧を印加することにより生じる残留は、時間及び温度の関数として変化するだけでなく、振動を含む面の方向の関数としても変化する。
各容量性素子の利得の更新された補正を実行するために、本発明の方法は、好適には、公称バイアス電圧を中断した後に残留が保持される時間の長さに応じた周期で周期的に実行される初期化段階を含む。この保持時間は数時間から数日である。補正を加える段階は、その後、容量性素子に関する装置を使用するときに実行される。
初期化段階は、補正を加える段階を実行する直前に実行されることが望ましい。例えば、振動センサが搭載された飛行機が離陸する直前である。
図3は、初期化段階の好適な実施例を示す。この好適な実施例において方法は、公称バイアス電圧(すなわちジャイロが使用されている間に印加されているバイアス電圧)を短期間印加するステップ8を含む。通常の状態では、公称バイアス電圧は200Vから400Vの間にある。方法は、初めに、基準電極に対して相対角度θ0の位置へ振動の位置を定めるステップ9を含む。この位置において、方法は、値+εを持つ低減されたDCバイアス電圧を印加するステップ10を含む。値+εは、測定可能な残留が生じるDCバイアス電圧の閾値より小さい値である。低減されたバイアス電圧の値+εは、残留と等価なバイアス電圧VEよりも大きい値である。この状況で、200〜400Vの公称バイアス電圧が、数ボルトのオーダーのバイアス電圧と等価な残留を発生させることが観察されるはずである。低減されたバイアス電圧εは、それ自体数ボルトのオーダーであるが、残留と等価な電圧よりも大きな値である。
等価バイアス電圧VEは、容量性素子の技術的データから見積もることができる。この等価バイアス電圧は、低減されたバイアス電圧を印加せずに出力信号を測定することで見積もることもできる。実際には、低減されたバイアス電圧の値は任意の10Vに設定してよい。
反対に、低減されたバイアス電圧の値は小さいので、低減されたバイアス電圧によって生じる残留の値は無視できる大きさである(等価なバイアス電圧は数百分の1ボルトのオーダーである)。従って、残留に対応する出力信号の成分は、公称バイアス電圧の最初の印加により発生する残留だけから生じる。
低減されたバイアス電圧+εが印加される間、出力信号を測定して記憶するステップ11が実行される。容量性素子からの出力信号は、図5に示すような合計バイアス電圧VTが加わった電極間のギャップによる変調の結果となる。合計バイアス電圧VTは、現存する残留に等価なバイアス電圧VEと低減されたバイアス電圧+εの代数和である、出力信号は、期間T1の間に測定される。
図3に示す好適実施例では、方法は、低減されたDCバイアス電圧−εすなわち低減されたバイアス電圧+εと同じ値で符号が反対のバイアス電圧を印加するステップ12も含む。その後、期間T1と等しい長さの期間T2の間に、対応する出力信号を測定するステップ13が実行される。
ステップ14において、期間T1+T2に亘る出力信号の平均が計算される。低減されたバイアス電圧+ε及び低減されたバイアス電圧−εに対応する出力信号成分はキャンセルされるので、平均値は残留そのままを表した値となる。このように計算された平均値は、ステップ15において利得の補正値の計算に直接使用される。このように計算された利得の補正値と関連する振動の位置は、図3のステップ16において記憶される。
図3にも示すように、これらのステップは、角度オフセットがπ/nずつ異なるn個の振動方向ごとに繰り返され、ここでnは、所望される補正の精密度に応じて決定される。
図4に示すように、ジャイロの使用段階において方法は、振動の位置を検出する第1ステップ17、それに続いて対応する利得の補正値を探すステップ18、そして利得の補正を適用するステップ19を含む。利得の補正値が記憶された2つの位置の間の中間に振動の位置があるとき、記憶された位置の中のより近い方の利得の補正値を適用してもよく、振動の位置の両側にある記憶された2つの位置に関連付けられた利得の補正値の平均を取ってもよい。
図6に示す本発明の方法の第2実施例では、第1実施例と同様に、公称バイアス電圧を短期間印加する第1ステップ8と、これに続いて振動の位置を定めるステップ9と、低減されたバイアス電圧+εを印加するステップ10を備える。この実施例では、残留に等価なバイアス電圧として見積もられたバイアス電圧VEよりも、低減されたバイアス電圧は大きい。この実施例において測定された容量性素子11からの出力信号は、残留だけの方向を測定するためにステップ20において測定され、測定された方向は記憶される。残留の方向を決定するこのステップの後に、低減されたバイアス電圧を印加しないで容量性素子からの出力信号を測定するステップ21が実行される。そして、利得の補正値を計算するステップ15が実行される。ステップ15では、まず初めに補正の方向を決定するために残留の方向を使用し、次に利得の補正量を決定するために低減されたバイアス電圧を印加しないで測定された出力電圧を使用することによって利得の補正値を計算する。利得の補正値と関連する振動の位置は、上述と同様にステップ16において記憶される。
本発明の方法の第2実施例の変形例では、低減されたバイアスを保持している間の容量性素子からの出力信号を測定することによって残留の値を決定してもよい。この場合には残留を補償する補正値を得るために、測定された出力信号から、低減されたバイアス電圧から直接得られた出力信号の成分を、バイアス電圧からの前記成分と補正前の容量性素子の利得を計算することによって差し引く必要がある。にもかかわらず、低減されたバイアス電圧の生成は、残留から生じる成分を誤って判断させる誤差を生じることが観察されるであろう。したがって図6に示すように、低減されたバイアス電圧を印加することによって残留の方向を判定し、低減されたバイアス電圧を印加していないときの出力信号を測定することにより個別に残留の値を測定することが望ましい。この状況では、残留の方向を決定するステップと残留の大きさを測定するステップは、いずれを先に実行してもよいことが分かるだろう。
当然のことながら、本発明は、記載された実施例に限定されず、特許請求の範囲により定められた発明の範囲を超えることなく実施例に変形例を適用してよい。
特に、本発明は、複数の容量性素子を有する軸対称振動ジャイロを参照して説明されたが、本発明は、所望する利得の補正を行うための単一の容量性素子を有する装置にも同様に適用可能である。

Claims (10)

  1. 相互に相対移動可能な複数の電極を備えており前記電極間に残留場が存在する容量性素子の利得の補正方法であって、残留電場は、容量性素子の電極間に閾値以上の直流バイアス電圧を印加した後に発生するものであり、
    測定可能な残留場を発生させる閾値より小さい値を持つ低減された直流バイアス電圧を前記複数の電極の一つに印加するステップ(10)と、
    前記容量性素子からの出力信号を測定するステップ(11)と、
    測定された前記出力信号に応じて前記容量性素子の利得の補正値を計算するステップ(15)と、
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記低減されたバイアス電圧(10、12)は、残留場に等価なバイアス電圧として見積もられた推定バイアス電圧(VE)よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記利得の補正値を計算する前記ステップが、低減されたバイアス電圧が印加されている間における前記容量性素子(11)からの出力信号の測定に基づき前記残留場の方向を決定するステップ(20)と、低減されたバイアス電圧が印加されていない間における前記容量性素子(11)からの出力信号の測定に基づき前記残留場の値を決定するステップ(21)と、を備えることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  4. 前記利得の補正値を計算する前記ステップが、前記低減されたバイアス電圧から直接生じる成分を、前記出力信号から差し引くステップ、を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  5. 2つの連続する測定において同じ値で符号が異なる前記低減されたバイアス電圧のそれぞれについて前記出力信号を測定するステップ(11、13)と、その結果得られた出力信号の平均値を取得するステップ(14)と、を含む、請求項1に記載の方法。
  6. 事前に公称バイアス電圧を印加するステップ、を含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記利得の補正値を印加する前に、初期化及び利得の補正値を記憶する段階を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  8. 発生させる振動の位置を複数の位置に変化させることが可能な軸対称振動ジャイロに組み込まれた容量性素子において使用され、複数の振動位置において利得の補正が実行される、請求項7に記載の方法。
  9. 相互に相対的移動可能な複数の電極と、前記電極の一つにバイアス信号を印加する手段とを備える容量性素子の利得を補正する装置であって、残留電場は、容量性素子の電極間に閾値以上の直流バイアス電圧を印加した後に発生するものであり、
    測定可能な残留場を発生させる閾値より小さい値を持つ低減された直流バイアス電圧を前記複数の電極の一つに印加する手段(10)と、
    前記容量性素子からの出力信号を測定する手段と、
    測定された前記出力信号に応じて前記容量性素子の利得を補正する手段と、
    を含むことを特徴とする装置。
  10. 発生させる振動の位置を複数の位置に変化させることが可能な軸対称振動ジャイロに組み込まれ、複数の振動位置についての利得の補正値を記憶する手段を備える、請求項9に記載の装置。
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