図面を参照しながら、本発明の建物構造、建物及び免震建物を説明する。
なお、本実施形態では、トラス架構を用いた建物に本発明を適用した例を示すが、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、CFT造(Concrete-Filled Steel Tube:充填形鋼管コンクリート構造)、それらの混合構造など、さまざまな構造や規模の建物に対して適用することができる。
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1の立面図に示すように、第1の実施形態の免震建物10では、地盤12の上に構築された基礎14の上に建物16が建てられている。基礎14の上には、水平免震装置としての高減衰積層ゴム支承18が設置され、高減衰積層ゴム支承18の上に建物16が載置されている。すなわち、建物16は、基礎14の上に水平免震支持されている。
建物16は、データセンターである。データセンターは、膨大な情報を安全かつ高速に処理できるように多数のコンピューターサーバーと回線を備え、これらのコンピューターサーバーの保守・運用を行う施設である。
建物16の四隅には、躯体柱20が立設されており、隣り合った躯体柱20の間に梁としてのトラス梁22が架設されている。トラス梁22は上下方向に複数設けられており、これによって、建物16に複数の階層が形成されている。
トラス梁22は、トラス材としてのH形鋼24をトラス状に複数組んだトラス構造部26と、トラス構造部26の上端部に固定された上弦材としてのH形鋼28と、トラス構造部22の下端部に固定された下弦材としてのH形鋼30とによって構成されている。
図2の側面図に示すように、建物構造32は、鉄筋コンクリート製の床スラブ34と、床スラブ34に支持された床部36とを有している。床部36は、平面状に配置された複数の床パネルによって構成されている。床パネルはコンクリートによって形成され、床部36の厚さは3cmとなっている。
H形鋼30のフランジ上面には、床スラブ34の端部が載置されている。すなわち、トラス梁22の下部に床スラブ34が設けられている。また、図2のA−A断面図である図3に示すように、床スラブ34は、H形鋼30に端部で支持されると共に、H形鋼30に端部が固定された小梁としてのH形鋼38に支持されている。
図2に示すように、床スラブ34の上には、円筒状に形成された鋼製の支持台40が2つ設置され、支持台40の上端部には、上下免震装置としての空気バネ42が設けられている。空気バネ42は、根太44を介して床部36を支持する床梁46を支持している。根太44は、木製の角材であり、6cmの高さを有している。
また、隣り合った床梁46同士は、木製の連結部材48によって連結されている。そして、このような構成によって、トラス梁22のH形鋼28の上端面よりも床部36の上面を上方に位置させている。
すなわち、床スラブ34と床部36との間に形成された床下空間50に空気バネ42が配置され、この空気バネ42によって、床スラブ34に床部36が支持されている。なお、第1の実施形態では、床スラブ34の上面から根太44の下面までの空間を床下空間50とする。
支持台40の上端部と床梁46の下面との間には、支持台40の上端部にロッドの端部が回転可能に固定され、床梁46の下部にシリンダーの端部が回転可能に固定された減衰装置としてのオイルダンパー52が備えられている。
床部36の上には、コンピューターサーバーが収納されたラック54が載置されている。すなわち、床部36の上の建物空間(以下、「床上建物空間56」とする)に、コンピューターサーバーが配置されている。
床下空間50には、床上建物空間56や床下空間50に備えられた設備のために、電力ケーブル、ネットワークケーブル、信号ケーブル等のケーブル(以下、「設備用ケーブル」とする)や、分電盤、制御盤等の機器(以下、「設備用機器」とする)などが敷設されている(不図示)。床上建物空間56や床下空間50に備えられた設備としては、床上建物空間56に配置されたコンピューターサーバーや、床下空間50に配置された空気バネ42、オイルダンパー52の他に、空調設備、照明設備等が挙げられる。
床下空間50の高さ(床スラブ34の上面から根太44の下面までの高さ)は、床下空間50への人の立ち入りが可能な高さとなっている。ここで、「床下空間50への人の立ち入りが可能な高さ」とは、人が腹ばいにならないと居られないような空間の高さ以下の高さではなく、床下空間50に敷設されている設備用ケーブルや設備用機器等のメンテナンス作業(以下、「設備メンテナンス作業」とする)を、人が立ち入って行うことが可能な床下空間50の高さを意味する。
すなわち、床下空間50の高さは、図4(a)に示すように、人58が床スラブ34の上にしゃがんだ姿勢で居られる高さ(1m程度)以上であればよい。設備メンテナンス作業とは、床下空間50に敷設されている設備用ケーブルや設備用機器等の点検、修理、交換、配置換え作業、又は床下空間50への設備用ケーブルや設備用機器等の新規敷設などの作業を含んだメンテナンス作業を意味する。
また、床下空間50の高さは、人58がそれほど無理をせずに床下空間50内を移動できる高さであることが好ましく、例えば、図4(b)に示すように、人58が屈んだ姿勢で床下空間50内を移動できる高さ以上であることが好ましい。
また、図4(c)に示すように、十分な高さがある空間で行うのと同様の姿勢で人58が床下空間50において設備メンテナンス作業を行うことができたり、人58が直立した姿勢で床下空間50内を移動できたりする高さ(2m程度)以上であれば、より楽な姿勢でメンテナンス作業ができるのでより好ましい。
また、一般的な建物の階高は5.5m程度に設計されることが多いので、床下空間50の高さを2.5m以下にすれば、床上建物空間56の高さを、一般的に有効とされている床上建物空間の高さである3m(=5.5m−2.5m)以上に概ねすることができる。
なお、床下空間50に配置された免震装置(図2の例では、空気バネ42)のメンテナンス作業(以下、「免震装置メンテナンス作業」とする)を行うことが可能な床下空間50の高さは、先に説明した、設備メンテナンス作業を行うことが可能な床下空間50の高さと変わらない。免震装置メンテナンス作業とは、床下空間50に配置されている免震装置の点検、修理、交換、配置換え作業、又は床下空間50への免震装置の新規敷設などの作業を含んだメンテナンス作業を意味する。
床下空間50の高さは、人が腹ばいにならないと居られないような空間の高さ以下の高さではなく、人が立ち入って免震装置メンテナンス作業を行うことが可能な床下空間50の高さであればよい。すなわち、床下空間50の高さは、図4(a)に示すように、人58がしゃがんだ姿勢で居られる高さ(1m程度)以上であればよい。
また、床下空間50の高さは、免震装置メンテナンス作業をする人58がそれほど無理をせずに床下空間50内を移動できる高さであることが好ましく、例えば、図4(b)に示すように、人58が屈んだ姿勢で床下空間50内を移動できる高さ以上であることが好ましい。
また、図4(c)に示すように、十分な高さがある空間で行うのと同様の姿勢で人58が床下空間50に立ち入って免震装置メンテナンス作業を行うことができたり、人58が直立した姿勢で床下空間50内を移動できたりする高さ(2m程度)以上であれば、より楽な姿勢でメンテナンス作業ができるのでより好ましい。
また、床梁46の端部付近を描いた図5(a)の拡大図に示すように、空気バネ42によって床スラブ34の上に上下免震支持された床部36が、トラス梁22のH形鋼28に対して上下方向(免震方向)へ移動したときに、H形鋼28に他の部材(床部36、根太44、連結部材48、及び床梁46)が接触しない構造になっている。
図5(a)では、H形鋼28に対して床部36が上下方向に移動し、この床部36と連動して床梁46及び連結部材48が上下方向に移動したときに、H形鋼28に床梁46及び連結部材48が接触しないように、H形鋼28に対して床部36が上下方向に移動していない図5(a)の状態で、床梁46の左側端面60及び連結部材48の内壁側面62は、H形鋼28のフランジ右側端面64、66から距離d1だけ離れた位置に配置されている。また、連結部材48の天井面68は、H形鋼28のフランジ上端面70から距離d2だけ離れた位置に配置されている。
距離d1は、床梁46及び連結部材48が多少左側にずれて上下方向に移動した場合においても、H形鋼28に床梁46及び連結部材48が接触しない値とする。また、距離d2は、H形鋼28に対する床部36の下方向への許容最大移動量よりも大きな値とする。
次に、本発明の第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
図2に示すように、第1の実施形態の建物構造32では、設備メンテナンス作業を人が床下空間50に立ち入って行うことができる。
床下空間に敷設された設備用ケーブルや設備用機器などのメンテナンス作業を、従来は、二重床の床面を形成する複数の床パネルのいくつかを撤去して開口部をつくり、床パネルの上に居る人がその開口部から手や頭を入れて無理な姿勢で行っていたが、困難なメンテナンス作業となる。また、開口部をつくったり、床部の上に配置されている物を開口部をつくるために移動させたりする準備作業に手間と時間が掛かってしまう。
これに対して、第1の実施形態の建物構造32では、人が床下空間50に立ち入って設備メンテナンス作業ができるので、設備メンテナンス作業のために床部36に開口部をつくる必要はない。
よって、従来のような困難なメンテナンス作業や準備作業を行わずに、設備メンテナンス作業を効率よく行うことができる。例えば、開口部をつくるために重量物であるコンピューターサーバーを移動させる面倒な準備作業を行わなくてよい。
特に、図2に示すように、床上建物空間56にコンピューターサーバーが配置されている場合には、多くの設備用ケーブルや設備用機器を床下空間50に敷設する必要があるので、床下空間50に人が立ち入って設備メンテナンス作業を行えることは、より有効である。
また、床下空間50の高さを1m以上2.5m以下とすれば、設備メンテナンス作業を行うことが可能な床下空間50の高さ(1m以上)を確保することができる。また、床上建物空間56の高さを、一般的に有効とされている建物空間の高さである3m以上に概ねすることができる。
また、床下空間50は、人の立ち入り可能な高さであり、従来のフリーアクセスフロアの高さよりも高いので、多くの設備用ケーブルや設備用機器の敷設が可能な十分なスペースを確保することができ、設備用ケーブルや設備用機器の配置自由度を大きくすることができる。
また、梁の上部に床スラブが設けられている順梁構造においてデッドスペースとなっていた梁横のスペース(床スラブから突出した梁の横に形成されるスペース)を、建物構造32では、床下空間50として有効に利用することができる。すなわち、人の立ち入り可能な高さにすることによって床下空間50の高さを従来のフリーアクセスフロアの高さよりも高くしても、建物16の階高を低く抑えることができる。
このことを、図6(a)、(b)を用いて詳しく説明する。図6(a)には、上下に配置された梁72A、72Bの上部に床スラブ74A、74Bが設けられている順梁構造において、床スラブ74Bの上に従来のフリーアクセスフロアが構築されている建物構造76が示されている。床スラブ74Bの上面からh1の距離をおいて床スラブ74Bの上方に床部78が設けられ、床スラブ74Aの下面からbの距離をおいて床スラブ74Aの下方に天井部80が設けられている。一般に、フリーアクセスフロアでは、建物空間の天井部分(床スラブ74Aから突出した梁72Aの横に形成されるスペース)に空気溜まりができてしまうので、空調上、天井部80が設けられている。
図6(b)には、建物構造32と同じ構成の建物構造82が示されている。建物構造82では、上下に配置された梁72A、72Bの下部に床スラブ74A、74Bが設けられている逆梁構造において、床スラブ74Bの上面からh2の距離をおいて床スラブ74Bの上方に床部78が設けられている。
ここで、説明をわかり易くするために、床部78の厚さと、天井部80の厚さとを0と仮定し、建物構造76と建物構造82とで、床スラブ74A、74Bの厚さa、梁72A、72Bの梁せいa+b、床部78の上の床上建物空間84の高さcが同じであるとすると、建物構造82の床下空間86の高さh2を、建物構造76の床下空間86の高さh1より高くしても、高さh2が、建物構造76の梁72Aの梁せいa+bから床スラブ74Aの厚さaを引いた高さb(以下、「梁突出部高さb」とする)と高さh1とを合計した高さと同じであれば、建物構造76と建物構造82との階高Hは変わらない。
また、高さh2を、梁突出部高さbと高さh1とを合計した高さよりも小さくすれば、建物構造82の階高Hを建物構造76の階高Hよりも低くすることが可能となる。
また、図2に示すように、H形鋼30は、トラス梁22の下弦材としての構造上の役割りを果たせばよいので、H形鋼30の高さは、一般的な鉄骨梁の梁せいよりも小さい。よって、H形鋼30横に形成されるスペースは薄いものであり空気溜まりができにくいので、直天井とすることができる。
また、建物構造32は、床下空間50と床上建物空間56とを物理的に分離できるので、設備メンテナンス作業をする人は、コンピューターサーバーが配置されている床上建物空間56に入らずに、床下空間50でこの設備メンテナンス作業を行うことができる。
これにより、設備メンテナンス作業に関係ない人が床上建物空間56に居てもこの設備メンテナンス作業の邪魔にならず、また、床上建物空間56のコンピューターサーバーを使用している状態でこの設備メンテナンス作業を行うことができる。
この効果は、床上建物空間56を他の用途に利用する場合においても得られる。例えば、床上建物空間56をOAルームとした場合、設備メンテナンス作業をする人が床上建物空間56に入らずに床下空間50でこの設備メンテナンス作業を行うことができるので、設備メンテナンス作業に関係ない人がOAルームに居てもこの設備メンテナンス作業の邪魔にならず、また、OAルームを使用している状態でこの設備メンテナンス作業を行うことができる。
また、例えば、床下空間50で行う設備メンテナンス作業と、床上建物空間56で行うコンピューターサーバーの設定・調整作業とを同時に行うことができる。また、これらの作業を行うそれぞれの業者が混在するのを防ぐことができ、コンピューターサーバーが扱うデータの漏えい等に対するセキュリティ面を強化することができる。
また、建物構造32では、トラス梁22のH形鋼28の上端面よりも床部36の上面を上方に位置させているので、トラス梁22(H形鋼28)が床部36の上に突出しない。これにより、床部36の床面(上面)をフラットにすることができる。また、床部36の上に突出するトラス梁22(H形鋼28)によって床上建物空間56が狭くなることを防ぐことができる。
また、床下空間50に上下免震装置としての空気バネ42が配置され、この空気バネ42によって床スラブ34に床部36が支持されているので、空気バネ42に備えられた空気室の収縮により上下方向に対して高い変形性能を発揮して、床部36を上下免震することができる。
また、支持台40の上端部と床梁46の下面との間に備えられたオイルダンパー52により、床部36に生じる上下振動を減衰することができる。
また、免震装置メンテナンス作業を、人が床下空間50に立ち入って行うことができる。これにより、困難なメンテナンス作業や面倒な準備作業を行わずに、免震装置メンテナンス作業を効率よく行うことができる。
また、床下空間50は、人の立ち入りが可能な高さであり、従来のフリーアクセスフロアの高さよりも高いので、床下空間50に配置できる免震装置の高さを高くすることができる。すなわち、免震装置の装置高さの制限を大きく受けることなく、必要とする免震性能を有する免震装置を床下空間50に配置することができる。
免震装置を空気バネ42とする場合、空気バネ42の固有周期は、空気バネ42(空気バネ42に備えられた空気室)の高さに比例する。床下空間50は人の立ち入り可能な高さであり、従来のフリーアクセスフロアの高さよりも高いので、図7(c)の側面図に示すように、床下空間50に配置する空気バネ42の装置高さを高くすることができる。これにより、空気バネ42の長周期化を図ることができる。
また、図7(a)〜(c)の側面図に示すように、必要とする固有周期が得られる装置高さの空気バネ42を設けたときには、この空気バネ42が床梁46を確実に支持することができる高さの支持台40を床スラブ34の上に設置すればよい。図7(a)〜(c)の支持台40の上端部と床梁46の下面との間には、オイルダンパー等の減衰装置が備えられていないが、必要に応じてそれぞれの空気バネ42の変形量に対応した減衰装置を備えてもよい。
また、建物構造32では、免震装置(空気バネ42)が配置される免震スペースと、設備用ケーブルや設備用機器が敷設される設備スペースとを共有化することにより、免震スペース(設備スペース)を床下空間50の高さとすることができる。これにより、建物構造32の免震スペース(設備スペース)の高さを、床下空間50を設備スペースと免震スペースとに上下に分けた場合の免震スペース(設備スペース)の高さよりも高くすることができる。
また、第1の実施形態では、建物構造32の床部36の上にコンピューターサーバーを配置して建物16をデータセンターとして用い、コンピューターサーバーの運用に必要な設備メンテナンス作業や免震装置メンテナンス作業を床下空間50に人が立ち入って効率よく行うことができるので、適正な設備メンテナンス作業や免震装置メンテナンス作業を確実に行うことが可能となる。これによって、データセンターの保守・運用に対する信頼性が向上する。また、効率のよいメンテナンス作業により、メンテナンス作業時間の短縮やメンテナンス作業要員の削減を図ることができれば、運用費の低減に貢献することができる。
また、建物16は、高減衰積層ゴム支承18により基礎14の上に水平免震支持されているので、床スラブ34の上に床部36を上下免震支持するだけで、基礎14に対して床部36を3次元免震化(水平方向及び上下方向に対して免震)することができる。すなわち、床部36を3次元免震化する場合に、床下空間50に配置する免震装置の構成を簡単にできる。
また、図1に示すように、梁をトラス梁22とすることによって、梁を大スパンにすることができ、柱の数を減らすことが可能になる。これにより、広い床上建物空間56を確保することができる。なお、構造上必要とされるトラス梁22の梁せいが小さい場合、このトラス梁22の高さに合わせて建物構造32を構築してしまうと(トラス梁22のH形鋼28の上面近くに床部36を配置してしまうと)、床下空間50の高さが低くなって設備メンテナンス作業や免震装置メンテナンス作業が困難になるので、このような場合には、床下空間50の高さが床下空間50への人の立ち入りが可能な高さとなるように床部36を配置する。
また、図3に示すように、小梁としてのH形鋼38に支持されることによって、床スラブ34に面外剛性が付与されるので、床スラブ34の上にコンピューターサーバー等の重量物を確実に載置することができる。
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
なお、第1の実施形態では、1つの床スラブ34の上に2つの空気バネ42を設置した例を示したが、床部36の上の全重量を、床部36、空気バネ42、床スラブ34、トラス梁22、躯体柱20の順に伝えることができれば、空気バネ42は、1つの床スラブ34にいくつ設置してもよいし、床スラブ34のどの位置に設置してもよい。例えば、図2に示す空気バネ42の位置よりも、トラス梁22側に空気バネ42を設置してもよいし、隣り合ったトラス梁22間の中央側に空気バネ42を設置してもよい。また、例えば、図8の側面図に示す建物構造160のように、トラス梁22の左右両側に配置されたスラブ34上に空気バネ42を設置し、トラス梁22を跨ぐようにしてH形鋼28の上方に配置された床梁46をこれらの空気バネ42の上に載置してもよい。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図9の側面図に示すように、第2の実施形態の建物構造88では、トラス梁22のトラス構造部26から略水平に張り出した鋼製の支持板90の上に、上下免震装置としての空気バネ42が設けられている。空気バネ42は、根太44を介して床部36を支持する床梁46を支持している。
また、支持板90の上面と床梁46の下面との間には、支持板90の上端部にロッドの端部が回転可能に固定され、床梁46の下部にシリンダーの端部が回転可能に固定された減衰装置としてのオイルダンパー52が備えられている。
そして、このような構成によって、トラス梁22のH形鋼28の上端面よりも床部36の上面を上方に位置させている。すなわち、床スラブ34と床部36との間に形成された床下空間50に空気バネ42が配置され、この空気バネ42によって、トラス梁22に床部36が支持されている。
次に、本発明の第2の実施形態の作用及び効果について説明する。
第2の実施形態では、図9に示すように、空気バネ42をトラス梁22に設置することにより、図2で示した支持台40が不要となる。また、空気バネ42がトラス梁22付近に配置されるので、大きな床下空間50を形成することができる。
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
なお、第2の実施形態では、トラス梁22のトラス構造部26に空気バネ42を設置した例を示したが、図10の側面図に示す建物構造92のように、トラス梁22のH形鋼28の上面に空気バネ42を設置してもよい。トラス梁22の梁せいが構造上小さくてよい場合には、床部36の高さを嵩上げするためのスペーサー部材の役割りを空気ばね42に兼ねさせることができるので、このような場合に建物構造92は有効である。
また、第2の実施形態では、トラス梁22に空気バネ42を設置した例を示したが、床部36の上の全重量を、床部36、空気バネ42、トラス梁22、躯体柱20の順に伝えることができれば、空気バネ42は、1つのトラス梁22にいくつ設置してもよいし、トラス梁22のどの位置に設置してもよい。
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明した。
なお、第1の実施形態では、設備メンテナンス作業及び免震装置メンテナンス作業を床下空間50で行う作業とし、建物構造32では、従来のような困難なメンテナンス作業や準備作業を行わずに、設備メンテナンス作業及び免震装置メンテナンス作業を効率よく行うことができることを説明したが、例えば、トラス梁22の点検作業、床下空間50内の清掃作業等の床下空間50で人が行うさまざまな作業を床下空間50で行う作業の対象としてもよい。
この場合においても、設備メンテナンス作業及び免震装置メンテナンス作業と同様の効果が得られ、対象とする作業を効率よく行うことができる。そして、設備メンテナンス作業及び免震装置メンテナンス作業以外の作業であっても人が行う作業であれば、作業を行うことが可能な床下空間50の高さは、設備メンテナンス作業を行うことが可能な床下空間50の高さと変わらない。
また、第1及び第2の実施形態では、平面状に複数配置されたコンクリート製の床パネルによって床部36を構成した例を示したが、床部36は二重床の床面を形成できるものであればよく、例えば、金属製の床パネルや木製のボード等を平面状に複数配置することによって床部36を構成してもよい。床部36の厚さは、どのような厚さにしてもよいが、床部36の厚さを薄くした方が床下空間50の高さを高くできるので好ましい。
また、第1及び第2の実施形態では、鉄筋コンクリート製の床スラブ34の例を示したが、床スラブ34は十分な面外剛性を有するものであればよく、例えば、床スラブ34として、合成スラブやアンボンドスラブ等を用いてもよい。床スラブ34の厚さは、どのような厚さにしてもよいが、床スラブ34の厚さを薄くした方が床下空間50の高さを高くできるので好ましい。
また、床スラブ34の上の荷重をこの床スラブ34のみによって支持できれば、床スラブ34を支持する小梁としてのH形鋼38は設けなくてもよい。この場合、床スラブ34の下面と、トラス梁22のH形鋼30の下面とが面一となるように、トラス梁22に床スラブ34を設ければ、床上建物空間56の天井部に生じる空気溜まりを無くすことが可能となる。
また、第1及び第2の実施形態では、免震装置を上下免震装置(空気バネ42)とした例を示したが、免震装置は、水平免震装置としてもよいし、3次元免震装置としてもよい。
上下免震装置は、床部36を上下方向に免震できるものであればよく、空気バネ42の他に、例えば、コイルばね、鋼製ばね、皿ばね等が挙げられる。水平免震装置は、床部36を水平方向に免震できるものであればよく、例えば、転がり免震支承、すべり免震支承等が挙げられる。3次元免震装置は、床部36を上下方向と水平方向との両方向に免震できるものであればよく、上下免震装置と水平免震装置とを組合せて構成すればよい。
図11には、床部36が床スラブ34に水平免震支持された建物構造98の例が示されている。
床スラブ34の上に設置された左右の支持台40の上端部に、水平免震装置としての転がり免震支承94が設けられ、床スラブ34の上に設置された中央の支持台40の上端部に、減衰装置としての粘性体ダンパー96が設けられている。
転がり免震支承94は、床部36の上の全重量を支持台40に伝えると共に、床スラブ34に対する床部36の水平方向の移動を許容することによって、床部36を水平免震する。また、粘性体ダンパー96は、床スラブ34に対する床部36の水平方向の移動を減衰する。
図12には、床部36が床スラブ34に3次元免震支持された建物構造100の例が示されている。図11で示した転がり免震支承94の上に、上下免震装置としての空気バネ42が設けられ、床スラブ34の上に設置された中央の支持台40の上端部に、減衰装置としての粘性体ダンパー96が設けられている。よって、水平免震装置としての転がり免震支承94と、上下免震装置としての空気バネ42との組合せにより、床部36を3次元免震する。
また、参考図としての図13の側面図には、免震装置を床下空間50に配置しないで、床部36を固定床とした建物構造106が参考例として示されている。建物構造106では、トラス梁22のH形鋼28に支持された固定床梁102の上に、根太44を介して床部36が支持されている。
また、床スラブ34の上には円筒状に形成された鋼製の支持台104が2つ設置され、この支持台104によって、床スラブ34の上に固定床梁102が支持されている。なお、固定床梁102は、トラス梁22のH形鋼28のみに支持されるようにしてもよいし、支持台104のみに支持されるようにしてもよい。
また、第1の実施形態では、図5(a)に示すように、床梁46の左側端面60及び連結部材48の内壁側面62を、H形鋼28のフランジ右側端面64、66から距離d1だけ離れた位置に配置し、連結部材48の天井面68を、H形鋼28のフランジ上端面70から距離d2だけ離れた位置に配置した例を示したが、床部36がトラス梁22のH形鋼28に対して免震方向(上下方向・水平方向)へ移動したときに、H形鋼28に他の部材(床部36、根太44、連結部材48、及び床梁46)が接触しない構造になっていればよい。
例えば、図5(b)に示すように、H形鋼28のフランジ右側端面64、66に固定された滑り板108に対して、床梁46の左側端面60に固定された滑り材110が上下方向に摺動する構造にすれば、トラス梁22のH形鋼28に対する床部36の上下方向への移動を許容することができる。
また、例えば、図5(c)に示すように、H形鋼28のフランジ右側端面64、66に固定されたガイドレール112に対して、床梁46の左側端面60に固定されたスライド部材114が上下方向にスライドする構造にすれば、トラス梁22のH形鋼28に対する床部36の上下方向への移動を許容することができる。
また、例えば、図5(a)で示した距離d1を、H形鋼28に対する床部36の左方向への許容最大移動量よりも大きくすれば、トラス梁22のH形鋼28に対する床部36の水平方向への移動を許容することができる。
また、第1の実施形態では、建物16が基礎14の上に水平免震支持されているので、床部36を3次元免震化する場合に、床下空間50に配置する免震装置の構成を簡単にできることを述べたが、例えば、図5(a)において床部36を3次元免震化する場合には、距離d1を小さくすることができる。また、図5(b)、(c)において床部36を3次元免震化する場合には、滑り板108やガイドレール112を床梁46の水平移動に連動して水平移動させる複雑な構造にする必要がなくなる。
また、第1の実施形態では、設備用ケーブル、設備用機器等を床下空間50に敷設した例を示したが、設備用ケーブル、設備用機器等は床下空間50のどこに敷設してもよい。床下空間50の高さは、この床下空間50への人の立ち入りが可能な高さであり、従来のフリーアクセスフロアの高さよりも高いので、設備用ケーブル、設備用機器等を敷設するための十分なスペースを確保することができ、設備用ケーブルや設備用機器等の配置自由度を大きくすることができる。
また、第1及び第2の実施形態では、床部36を免震床にした例を示したが、建物16のフロア全てを免震床にしてもよいし、フロアの一部を免震床にしてもよい。例えば、図14(a)〜(c)に示すような構成にしてもよい。図14(a)〜(c)では、空気バネ42によって上下免震された床部36(図2を参照のこと)を免震床部36Aとし、免震されていない床部(図13を参照のこと)を固定床部36Bとして示している。
図14(a)には、中央に1つの免震床部36Aが配置されている例が示され、図14(b)には、中央に3つの免震床部36Aが並んで配置されている例が示され、図14(c)には、免震床部36Aと固定床部36Bとが交互にが並んで配置されている例が示されている。
また、第1及び第2の実施形態では、トラス梁22のH形鋼28の上端面よりも床部36の上面を上方に位置させた例を示したが、床上建物空間56の用途に応じて、トラス梁22のH形鋼28の上端面よりも床部36の上面を下方に位置させてもよいし、図15の側面図に示す建物構造180のように、床部36の一部を他の床部36よりも低くしてもよい。
また、第1及び第2の実施形態では、減衰装置としてのオイルダンパー52により、床部36に生じる上下振動を減衰する例を示したが、他の減衰装置を用いて、床部36に生じる上下振動や水平振動を減衰するようにしてもよい。例えば、減衰装置として、鋼棒ダンパー、粘弾性ダンパー、粘性体ダンパー等を用いてもよいし、減衰機能を有する空気ばねを用いてもよい。また、減衰効果を期待しない場合には、減衰装置を設けなくてもよい。
また、第1の実施形態では、水平免震装置(高減衰積層ゴム支承18)によって基礎14の上に建物16を水平免震支持した例を示したが、上下免震装置によって基礎14の上に建物16を上下免震支持してもよいし、3次元免震装置によって基礎14の上に建物16を3次元免震支持してもよい。また、基礎14の上に建物16を免震支持する必要のない場合には、建物16を支持する免震装置を設けなくてよい。
上下免震装置は、建物16を上下方向に免震できるものであればよく、例えば、油圧ダンパーと空気バネとを組み合わせた上下免震装置、油圧ダンパーとアキュムレータとを組み合わせた上下免震装置等が挙げられる。水平免震装置は、建物16を水平方向に免震できるものであればよく、高減衰積層ゴム支承18の他に、例えば、天然ゴム系積層ゴム支承、鉛プラグ入り積層ゴム支承、弾性すべり支承等が挙げられる。3次元免震装置は、建物16を上下方向と水平方向との両方向に免震できるものであればよく、上下免震装置と水平免震装置とを組合せて構成すればよい。
また、第1及び第2の実施形態では、梁をトラス梁22とした例を示したが、他の構造の梁を用いてもよい。例えば、鉄筋コンクリート梁、鉄骨鉄筋コンクリート梁、鉄骨梁等を用いてもよい。
また、第1及び第2の実施形態では、建物16をデータセンターとした例を示したが、第1及び第2の実施形態で示した建物構造32、88、92、98、100、106、160、180は、さまざまな用途の建物に適用することができる。また、第1及び第2の実施形態で示した建物構造32、88、92、98、100、106、160、180は、新築建物に適用してもよいし、改修建物に適用してもよい。
また、第1及び第2の実施形態では、床上建物空間56をサーバールームとした例を示したが、床上建物空間56は、どのような用途の部屋であってもよい。床下空間50に多くの設備用ケーブルの敷設が必要な、サーバールーム、OAルーム等や、床下空間50に免震装置の配置が必要な、サーバールーム、精密機器や製作機器が配置された部屋、薬品保管室等として床上建物空間56を用いるのが特に有効である。
また、第1及び第2の実施形態では、根太44を介して床梁46に床部36を支持させた例を示したが、床梁46と床部36との間に介するものは、床梁46に床部36を確実に支持できるものであればよい。例えば、根太44の他に、束等を用いてもよい。床梁46の上面から床部36の下面までの高さを低く抑えられるものが好ましい。根太44の高さは、どのような高さにしてもよいが、根太44の高さを低くした方が床下空間50の高さを高くできるので好ましい。
また、第1の実施形態では、サーバールームを有する建物構造のような、床下空間が設けられ天井裏空間が設けられていない建物構造に第1の実施形態の建物構造32を適用すれば、「床下空間の高さを従来のフリーアクセスフロアの高さよりも高くしても、建物の階高を低く抑えることができる。」といった優れた効果が得られることを説明したが(図6(b)を参照のこと)、例えば、クリーンルームを有する建物構造において、この効果を十分に発揮させることは難しい。
クリーンルームを有する一般的な建物構造では、図6(c)の建物構造116のように、床スラブ74Bの上に床下空間86が設けられ、床スラブ74Aの下に天井裏空間118が設けられている。図6(b)と比較するために、図6(c)の躯体構造を図6(b)の躯体構造と同様の逆梁構造としている。
ここで、説明をわかり易くするために、図6(b)の建物構造82と図6(c)の建物構造116とにおいて、床部78の厚さと、天井部80の厚さとを0と仮定し、床スラブ74A、74Bの厚さa、梁72A、72Bの梁せいa+b、床部78の上の床上建物空間84の高さcが同じであるとすると、建物構造116の床下空間86の高さh3は、建物構造82の床下空間86の高さh2から、建物構造116の天井裏空間118の高さh4を引いた値となり、建物構造82の床下空間86の高さh2よりも低くなってしまう。
図16に示すように、サーバールームを有する一般的な建物構造120では、下方に位置する床スラブ122の上に床下空間124が形成され、床部126の上の床上建物空間128がサーバールームになっている。また、床上建物空間128の横には、床上建物空間128及び床下空間124とつながった空調機械室130が設けられており、空調機械室130には空調機132が設置されている。
サーバールームを使用する際には、温度調節された空気が、空調機132から床下空間124を介して床上建物空間128へ流れる。そして、この空気が床上建物空間128の天井面134に沿って横移動し、空調機械室130へ流れて空調機132に取り込まれる。これにより、床上建物空間128(サーバールーム)の温度調節を行う。
このように、サーバールームを有する建物構造120は、空調機械室130、床下空間124、床上建物空間128の順に空気を循環させてサーバールームの温度調節を行うものなので、空気の供給側に床下空間124が設けられ、天井裏空間は設けられていない建物構造となっている。また、一般的なコンピューターサーバーであれば熱負荷はそれほど大きくないので、床上建物空間128へ送り込む風量の調整が空調機132によって可能であるといった機能的特徴を有している。
図17に示すように、クリーンルームを有する一般的な建物構造136では、下方に位置する床スラブ138の上に床下空間140が形成され、上方に位置する床スラブ142の下に天井裏空間144が形成され、床部146の上の床上建物空間148がクリーンルームになっている。また、床上建物空間148の横には、床下空間140及び天井裏空間144とつながった循環通路150が設けられており、天井裏空間144の最下層にはファンフィルターユニット152が複数設置されている。
クリーンルームを使用する際には、清浄及び温度調節された空気が、ファンフィルターユニット152から床上建物空間148へ流れる。そして、この空気が床下空間140及び循環通路150を介して天井裏空間144へ流れてファンフィルターユニット152に取り込まれる。これにより、床上建物空間148(クリーンルーム)の空気清浄度を確保すると共に温度調節を行う。
このように、クリーンルームを有する建物構造136は、天井裏空間144、床上建物空間148、床下空間140、循環通路150の順に空気を循環させてクリーンルームの空気清浄度を確保すると共に温度調節を行うものなので、空気の排気側に床下空間140が設けられ、空気の供給側に天井裏空間144が設けられている建物構造となっている。また、高い空気清浄度を確保するために一定の大きな風量を必要とするので、風量の調整が難しいといった機能的特徴を有している。
すなわち、サーバールームを有する建物構造120と、クリーンルームを有する建物構造136とは、全く異なった構造であり、各々の構造的特徴は各々の用途のために必要不可欠なものである。例えば、図6(c)の建物構造116の天井裏空間118を無くして図6(b)の建物構造82と同じ構成にし、「床下空間の高さを従来のフリーアクセスフロアの高さよりも高くしても、建物の階高を低く抑えることができる。」といった建物構造82の効果を得ようとしても、本来のクリーンルームとしての役割りが果たせなくなってしまう。
このように、本発明の第1及び第2の実施形態で示した建物構造32、88、92、98、100、106、160、180は、従来のクリーンルームを有する建物構造から容易に想到されたものではなく、サーバールームを有する建物構造の構造的特徴をうまく利用した技術的思想に基づいて創出されたものである。
また、第1及び第2の実施形態で示したような、床部36を免震する技術は、建物における耐震技術の1つであるが、近年、データセンターにおける耐震技術のニーズは、高くなっている。
データセンター内に設置されるコンピューターサーバーは、企業やユーザーが24時間・365日休まずに情報サービスを提供したり受けたりするための根幹をなすものであるから、データセンターには、立地の良さやセキュリティの高さなどに加えて、地震によりコンピューターサーバーが稼働停止するリスクを避けるための高い耐震性が求められている。
このような背景から、近年、データセンターには、様々な免震・制振技術が採用され、サーバールームの床部を免震床にする例も増えてきている。第1及び第2の実施形態で示した本発明の建物構造32、88、92、98、100、106、160、180は、今後、データセンターにおいて普及が期待される免震床のメンテナンス性の問題解決に大いに役立つ技術である。
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1及び第2の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
(実施例)
本実施例では、第1の実施形態で示した本発明の建物構造32(図2を参照のこと)と、図18の側面図に示す、従来のフリーアクセスフロアを有する建物構造154とを比較し、第1の実施形態で述べた建物構造32の効果を検証する。
図2には、建物構造32の実設計上の寸法が示されている。下方に位置する床スラブ34の上面から床部36の上面までの高さが2,000mm、床部36の上面から上方に位置するトラス梁22(H形鋼30)の下端面までの高さが3,000mm、下方に位置するスラブ34の上面から上方に位置する床スラブ34の上面までの階高が5,450mmとなっている。
図18には、建物構造154の実設計上の寸法が示されている。下方に位置する床スラブ156の上面には、転がり免震支承158と粘性体ダンパー162とが設置され、この転がり免震支承158の上に空気バネ164が設置されている。また、鉄骨フレーム166が空気バネ164の上に載置され、この鉄骨フレーム166の上に立設された支持脚168に床部170が支持されている。
床パネル等によって構成された床部170の上には、コンピューターサーバーが収納されたラック54が載置されている。上方に位置する梁172の下端面には、天井ボード等によって構成された天井部174が設けられ、上方に位置する梁172横に発生する空気溜まりを防ぐと共に、床部170との間に床上建物空間176を形成している。
下方に位置する床スラブ156の上面から床部170の上面までの高さが1,000mm、床部170の上面から天井部174の下面までの高さが3,000mm、下方に位置する床スラブ156の上面から上方に位置する床スラブ156の上面までの階高が5,500mmとなっている。
図2、図18からわかるように、建物構造32の床上建物空間56と、建物構造154の床上建物空間176との高さを3,000mmで同じにした場合、建物構造154では、下方に位置する床スラブ156の上面から床部170の上面までの高さが1,000mmであるのに対して、建物構造32では、下方に位置する床スラブ34の上面から床部36の上面までの高さを2倍の2,000mmとすることができる。床部36の厚さと根太44の高さとを合計した高さを100mmとし、この値を引いたとしても1,900mmの高さの床下空間50を確保することができる。
また、建物構造154の階高が5,500mmであるのに対して、建物構造32では、この階高よりも小さい5,450mmとすることができる。すなわち、高い高さの床下空間50を確保できているにも関わらず、建物構造32の階高を低く抑えることができ、さらには、建物構造154の階高よりも低くすることができている。
また、建物構造32では、1,900mmの高さ(床部36の厚さと根太44の高さとを合計した高さを100mmとした場合)の床下空間50を確保できているので、人が床下空間50に立ち入って、設備用メンテナンス作業や免震装置メンテナンス作業を効率よく行えることが容易に想像できる。
これに対して、建物構造154では、支持脚168、鉄骨フレーム166、転がり免震支承158、空気バネ164、及び粘性体ダンパー162が邪魔になり、下方に位置する床スラブ156の上面から床部170の下面までの間に人の立ち入れる空間がない。すなわち、建物構造32における「人の立ち入り可能な高さの床下空間50」に相当する空間が建物構造154にはないので、建物構造154における床スラブ156の上面から床部170の下面までの間の空間では、どのようなメンテナンス作業を行うことも困難であることが容易に想像できる。