JP5627366B2 - スクロール膨張機および冷凍サイクル装置 - Google Patents

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Description

本発明は、冷媒を膨張させて動力を回収するスクロール膨張機およびこのスクロール膨張機を備えた冷凍サイクル装置に関し、特に、2つに分割された揺動スクロールを背面合わせにして一方の片側に膨張機構を、他方の片側に圧縮機構を有するスクロール膨張機に関するものである。
従来のスクロール膨張機では、台板の両面に第1および第2の渦巻歯を有する可動スクロールと、可動スクロールの第1渦巻歯と第1固定スクロールの渦巻歯とを組み合わせて圧縮室を形成し、外周部に吸入口を、中央部に吐出口を設けた圧縮手段と、可動スクロールの第2渦巻歯と第2固定スクロールの渦巻歯とを組み合わせて膨張室を形成し、中央部に吸入口を、外周部に吐出口を設けた膨張手段とを備え、可動スクロールに作用するスラスト力の軽減を図っている(例えば、特許文献1参照)。
特開平03−59355号公報(第4頁〜第5頁、第1図、第2図)
上述のようなスクロール膨張機において、可動スクロールが駆動手段によって公転すると、圧縮手段側では外周部の吸入口から流入した低温低圧の流体が高温高圧まで圧縮され中央部の吐出口から吐出される。一方、膨張手段側では圧縮機を経て熱交換器で冷却された低温高圧の流体が中央部の吸入口から流入し、低温低圧まで膨張して外周部の吐出口から吐出される。このように、圧縮手段の中央部が高温、膨張手段の中央部が低温になると、膨張手段と圧縮手段が背面合わせで一体化したスクロール膨張機では、可動スクロールの台板を経由して圧縮手段側から膨張手段側に熱リークが生じ、サイクル効率が低下する問題があった。
本発明は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、圧縮手段側から膨張手段側への熱リークを抑制し、広い運転条件で高効率なスクロール膨張機を得ることを目的としている。
本発明に係るスクロール膨張機は、冷媒を膨張させて動力を回収するスクロール型の膨張機構と、前記回収した動力を利用して冷媒を圧縮するスクロール型のサブ圧縮機構とを有するスクロール膨張機であって、前記膨張機構は、第1の揺動スクロールと第1の固定スクロールとを有し、前記サブ圧縮機構は、第2の揺動スクロールと第2の固定スクロールとを有し、前記膨張機構および前記サブ圧縮機構を収容する密閉容器を有し、前記第1の揺動スクロールと前記第2の揺動スクロールとは、両者の間に断熱構造を形成して背面合わせの形態で構成されており、前記第1の揺動スクロールと前記第2の揺動スクロールとは、角度位相関係を保持するピンで接続されており、前記ピンは、前記第1の揺動スクロールおよび前記第2の揺動スクロールのいずれか一方の揺動スクロールの台板の外周部に設けられ、前記ピンが嵌合する溝の形状を、他方の揺動スクロールの台板に径方向に沿った長手形状に形成したことを特徴とするものである。
本発明のスクロール膨張機によれば、第1のスクロールと第2のスクロールは両者の間に断熱構造を設けて背面合わせに構成されているので、圧縮機構と膨張機構の間の台板を経由した伝熱経路の熱抵抗が増大し、圧縮機構と膨張機構の温度差が大きい場合にも、圧縮機構から膨張機構への熱リークが抑制され、広い運転条件でサイクル効率の低下が小さい高効率なスクロール膨張機を提供できる。
本発明の実施の形態1に係るスクロール膨張機の構成を示す縦断面図である。 図1に示すサブ圧縮機構の揺動スクロールの断面図(a)と下面図(b)である。 図1に示す膨張機構の揺動スクロールの上面図(a)と断面図(b)である。 スクロール膨張機を用いた冷凍サイクル装置の基本構成を模式的に示す回路図である。 スクロール膨張機の膨張機構およびサブ圧縮機構の概略断面図で、揺動スクロールに作用する圧力を説明するための模式図である。 スクロール膨張機を用いた冷凍サイクルにおける冷媒の状態量変化を示すモリエル線図である。 サブ圧縮機構から膨張機構への熱リークが大きいときの冷凍サイクルにおける冷媒の状態量変化を示すモリエル線図である。 本発明の実施の形態2に係るスクロール膨張機の構成を示す縦断面図である。 図8に示すサブ圧縮機構の揺動スクロールの断面図(a)と下面図(b)である。 本発明の実施の形態1および実施の形態2の揺動スクロールの熱変形を説明するための模式図である。 本発明の別の実施の形態によるスクロール膨張機の構成を示す縦断面図である。 図11に示す膨張機構の揺動スクロールの上面図(a)と断面図(b)である。 本発明の実施の形態3に係るスクロール膨張機の構成を示す縦断面図である。
以下、本発明に係るスクロール膨張機の実施の形態について図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るスクロール膨張機1の構成を示す縦断面図である。なお、図1以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、このことは、明細書の全文において共通することである。
本発明の実施の形態1に係るスクロール膨張機1は、密閉容器10内にスクロール型の膨張機構と圧縮機構とを備え、膨張機構で冷媒を膨張させて動力を回収し、回収した膨張動力を利用して冷媒を圧縮する機能を有するものである。このスクロール膨張機1は、図1に示すように、膨張機構5と、サブ圧縮機構6と、を備えている。膨張機構5およびサブ圧縮機構6は、圧力容器である密閉容器10内に収容されている。
図1に示すように、膨張機構5は密閉容器10内の下方に設置されており、サブ圧縮機構6は膨張機構5の上方に設置されている。
膨張機構5は、台板51a上に渦巻歯51cが形成された固定スクロール51(第1の固定スクロール)と、台板52a上に渦巻歯52cが形成された揺動スクロール52(第1の揺動スクロール)とを有している。図1に示すように、固定スクロール51は下側に、揺動スクロール52は上側に配置されている。固定スクロール51の渦巻歯51cと揺動スクロール52の渦巻歯52cとは、互いに咬合するように配置されている。そして、渦巻歯51cと渦巻歯52cとによって、相対的に容積が変化する膨張室5aが形成されている。
サブ圧縮機構6は、台板61a上に渦巻歯61cが形成された固定スクロール61(第2の固定スクロール)と、台板62a上に渦巻歯62cが形成された揺動スクロール62(第2の揺動スクロール)とを有している。図1に示すように、固定スクロール61は上側に、揺動スクロール62は下側で、かつ、揺動スクロール52の上側に配置されている。固定スクロール61の渦巻歯61cと揺動スクロール62の渦巻歯62cとは、互いに咬合するように配置されている。そして、渦巻歯61cと渦巻歯62cとによって、相対的に容積が変化するサブ圧縮室6aが形成されている。ここで、膨張機構5の揺動スクロール52と、サブ圧縮機構6の揺動スクロール62とは、別体で構成されており、かつ、後述するように両者の間には断熱構造を形成したうえで背面合わせとして一体的に固定されている。
膨張機構5の固定スクロール51および揺動スクロール52、サブ圧縮機構6の固定スクロール61および揺動スクロール62の各中央部を貫通して軸8が設けられている。軸8は、膨張機構5の固定スクロール51およびサブ圧縮機構6の固定スクロール61それぞれの中央部に形成された軸受部51b、61bによって、回転自由に両持ち支持されている。揺動スクロール62と揺動スクロール52とは、サブ圧縮機構6の揺動スクロール62の中央部に一体に設けた偏心軸受部62bが揺動スクロール52の中央部に設けた貫通穴52bに内挿され、さらに軸8に嵌合・固定されたクランク部8b(揺動軸)によって貫通支持され、軸8の回転動作に伴って揺動運動できるようになっている。
膨張機構5には、冷媒を吸入する膨張吸入管13と、膨張した冷媒を吐出する膨張吐出管15とが接続されている。膨張吸入管13は、例えば、膨張機構5の外周側において、密閉容器10の側面に設置されており、固定スクロール51の台板51aに設けられた膨張吸入ポート51dを介して膨張機構5の中央部における膨張室5aに連通している。
膨張吐出管15は、例えば、サブ圧縮機構6の外周側において、密閉容器10の側面に設置されており、固定スクロール61の台板61aに設けられた膨張吐出ポート51eを介して膨張機構5の揺動スクロール52およびサブ圧縮機構6の揺動スクロール62の外周側に形成された圧力空間となる揺動スクロール運動空間71に連通している。
膨張機構5で膨張減圧された冷媒は、膨張機構5の最外周部に位置する膨張室5aから揺動スクロール運動空間71に吐出され、さらに膨張吐出ポート51eを経て、膨張吐出管15から外部に吐出される。揺動スクロール運動空間71は、例えば、膨張機構5の固定スクロール51の台板51aの外周部に設けられた環状凸部51fと、サブ圧縮機構6の固定スクロール61の台板61aの外周部に設けられた環状凸部61fとを突き合わせ、この突き合わされた環状凸部51fおよび環状凸部61fと、膨張機構5の揺動スクロール52の台板52aおよびサブ圧縮機構6の揺動スクロール62の台板62aとで囲まれた空間となっている。
サブ圧縮機構6には、冷媒を吸入するサブ圧縮吸入管12と、圧縮された冷媒を吐出するサブ圧縮吐出管14とが接続されている。サブ圧縮吸入管12は、例えば、密閉容器10の上面に設置されており、さらにサブ圧縮機構6の固定スクロール61の台板61aに設けられたサブ圧縮吸入ポート61dを介してサブ圧縮機構6の外周部におけるサブ圧縮室6aに連通している。
サブ圧縮吐出管14は、例えば、密閉容器10の上部側面に設置されている。このサブ圧縮吐出管14は、サブ圧縮機構6の固定スクロール61より上方に形成された密閉容器10内の上部空間70に連通している。さらに、サブ圧縮機構6の固定スクロール61の台板61aには、圧縮された冷媒を吐出するためのサブ圧縮吐出ポート61eが形成されており、さらにサブ圧縮吐出ポート61eの上部空間70側の先端部には吐出弁30が設けられている。この吐出弁30は、開閉することでサブ圧縮吐出ポート61eと上部空間70とを連通・遮断するようになっている。
サブ圧縮機構6で圧縮昇圧された冷媒は、サブ圧縮機構6の中央部におけるサブ圧縮室6aからサブ圧縮吐出ポート61eを経て上部空間70に吐出され、さらにサブ圧縮吐出管14を経て外部に吐出される。
サブ圧縮機構6の渦巻歯61c、62cの先端面にはチップシール溝(図示省略)が形成され、このチップシール溝にサブ圧縮室6aを仕切るチップシール21が装着されている。また、膨張機構5の渦巻歯51c、52cの先端面にはチップシール溝(図示省略)が形成され、このチップシール溝に膨張室5aを仕切るチップシール22が装着されている。
サブ圧縮機構6においては、固定スクロール61における揺動スクロール52に対向する面であって渦巻歯61cの外周側に環状の外周シール溝(図示省略)が形成され、この外周シール溝に揺動スクロール62と固定スクロール61との摺接面をシールする外周シール23が装着されている。
サブ圧縮機構6には揺動スクロール52、62の自転運動を規制し、公転運動のみを行うように図示しないオルダムリングが設けられている。揺動スクロール52、62が公転運動(揺動運動)することによって発生する遠心力を相殺するために、軸8の両端部には、バランスウェイト9a、9bが取り付けられている。
また、密閉容器10の内部には、冷凍機油等の潤滑油80を貯留する下部空間72が形成されている。そして、軸8の下端部には給油ポンプ81が潤滑油80を汲み上げるように取り付けられている。軸8には、軸長方向に延びる給油孔8cと、給油孔8cに連通し固定スクロール61の軸受部61bの側面に向けて一端が開口する横向きの給油孔8dと、給油孔8dの他端に連通し、軸8の中心部を上端まで延びるガス抜き孔8eとが設けられている。また、固定スクロール61の外周部に設けた環状凸部61fおよび固定スクロール51の外周部に設けた環状凸部51fにそれぞれ油戻し孔17が貫通形成されており、油戻し孔17は上部空間70と下部空間72とを連通させている。なお、油戻し孔17は揺動スクロール運動空間71を経由しないように設けられている。
給油ポンプ81で汲み上げられた潤滑油80は、給油孔8cを上昇して横向きの給油孔8dからサブ圧縮機構6の固定スクロール61の軸受部61bに供給されるとともに、固定スクロール61の下方に設けられている揺動スクロールの偏心軸受部62b、固定スクロール51の軸受部51bにも順次流下して供給される。そして、油を含有するガスがガス抜き孔8eを通って上部空間70へ流出し、油戻し孔17を経由して油と共にガスが下部空間72へ流入する。
図2は、図1に示すサブ圧縮機構6の揺動スクロール62の断面図(a)と下面図(b)である。なお、図2(a)の断面図は同図(b)のA−A断面を表している。
また、図3は、図1に示す膨張機構5の揺動スクロール52の上面図(a)と断面図(b)である。なお、図3(b)の断面図は同図(a)のB−B断面を表している。
図1〜図3に示すように、膨張機構5の揺動スクロール52とサブ圧縮機構6の揺動スクロール62との間には、断熱層として、揺動スクロール運動空間圧となる空間部16が設けられている。揺動スクロール52と揺動スクロール62は、固定手段として、例えば、ネジ18で一体に締結されている。ネジ締結部は、揺動スクロール62の台板62aの下面の外周部に下面より突出する複数の取付座62dを設け、取付座62dと揺動スクロール52の台板52aとの間に耐冷媒性断熱部材20を介在させて、ネジ18で揺動スクロール52と揺動スクロール62とを締結する構成となっている。耐冷媒性断熱部材20としては、例えばエンジニアプラスチックなどがある。
このような構成とすることによって、揺動スクロール52と揺動スクロール62とは、両者の間に断熱構造を介して背面合わせで一体的に固定される。揺動スクロール52と揺動スクロール62との間に設けられる空間部16は、隣接する取付座62dと取付座62dとの間の空隙を通して揺動スクロール運動空間71と連通している。したがって、揺動スクロール62から揺動スクロール52へ伝わろうとする熱に対する抵抗(断熱性)が高いものとなる。なお、実施の形態1では、取付座はサブ圧縮機構6の揺動スクロール62に設けたが、逆に膨張機構5の揺動スクロール52の台板52aにその上面より突出するように設けてもよい。
また、ネジ締めにより揺動スクロール62の渦巻歯62cと揺動スクロール52の渦巻歯52cとの相対角度がずれないように保持するため、揺動スクロール62と揺動スクロール52の角度位相関係は、図示しないピンで保持される。ピンは、図2に示す揺動スクロール62の台板62aの外周部に設けられたピン穴62eと、図3に示す揺動スクロール52の台板52aの外周部に設けられたピン穴52eに嵌め合わされている。揺動スクロール62と揺動スクロール52とは、揺動スクロール62に同心に設けられた偏心軸受部62bを構成する円筒部62fが揺動スクロール52に同心に設けられた貫通穴52bに密接に嵌合しているため、上記のように1箇所のピンで角度位相関係を保持することができる。
次に、実施の形態1に係るスクロール膨張機1の動作について説明する。膨張機構5においては、固定スクロール51の渦巻歯51cと揺動スクロール52の渦巻歯52cとで形成される膨張室5a内で、膨張吸入管13から吸入した高圧の冷媒が膨張することによって動力が発生する。膨張室5a内で膨張減圧した冷媒は、一旦揺動スクロール運動空間71に吐出された後、膨張吐出ポート51eを経て膨張吐出管15から密閉容器10外へ吐出される。膨張機構5で発生した動力によって、サブ圧縮機構6の固定スクロール61の渦巻歯61cと揺動スクロール62の渦巻歯62cとで形成されるサブ圧縮室6a内で、サブ圧縮吸入管12から吸入した冷媒が圧縮昇圧される。サブ圧縮室6a内で圧縮昇圧された冷媒は、サブ圧縮吐出ポート61eから吐出弁30を経て、一旦密閉容器10内の上部空間70に吐出された後、サブ圧縮吐出管14を通って密閉容器10外へ吐出される。
図4は、実施の形態1に係るスクロール膨張機1を用いた冷凍サイクル装置100の基本構成を模式的に示す回路図である。この冷凍サイクル装置100は、冷媒を循環させることで冷房運転または暖房運転を実行できるものである。この冷凍サイクル装置100に用いられる冷媒としては、二酸化炭素のような高圧側が超臨界となる冷媒を用いることを想定している。
図4において、スクロール膨張機1の膨張機構5が駆動するサブ圧縮機構6の前段(上流側)には、主圧縮機11の電動機構11bが駆動する主圧縮機構11aが接続されており、主圧縮機構11aの前段(上流側)には、冷媒を加熱する蒸発器4が接続されている。すなわち、スクロール膨張機1のサブ圧縮機構6が主圧縮機11の主圧縮機構11aの吐出側に接続されている。一方、サブ圧縮機構6の後段(下流側)には、冷媒を冷却するガスクーラー2が設置されており、ガスクーラー2の後段(下流側)には、スクロール膨張機1の膨張機構5と膨張弁3(絞り装置)とが並列に配置されている。なお、図示は省略するが、スクロール膨張機1のサブ圧縮機構6を主圧縮機11の主圧縮機構11aの吸入側に接続してもよい。
ここで、スクロール膨張機1を備えた冷凍サイクル装置100の動作を図4に基づいて説明する。
主圧縮機11の主圧縮機構11aが電動機構11bによって駆動されると、主圧縮機構11aで冷媒が昇圧される。昇圧された冷媒は、主圧縮機11から吐出され、スクロール膨張機1のサブ圧縮機構6に流入し、サブ圧縮機構6によって、さらに昇圧される。サブ圧縮機構6で昇圧された冷媒は、ガスクーラー2に流入して冷却された後、その一部は、スクロール膨張機1の膨張機構5に送られ、膨張減圧される。膨張機構5を通過する流量の調整および起動時における差圧の確保のため、スクロール膨張機1の膨張機構5と並列に膨張弁3が設けられている。ガスクーラー2で冷却された残りの冷媒は、膨張弁3に送られ、膨張減圧される。膨張機構5において、冷媒が等エントロピー的に膨張することによって、軸8を介して膨張機構5からサブ圧縮機構6に膨張動力が伝えられ、サブ圧縮仕事として用いられる。膨張機構5で膨張した冷媒は、蒸発器4で加熱された後、再び主圧縮機11の主圧縮機構11aに戻る。
図5は、実施の形態1に係るスクロール膨張機1の膨張機構5及びサブ圧縮機構6の概略断面図で、揺動スクロール52、62に作用する圧力を説明するための模式図である。
図5を用いて、揺動スクロール52、62に作用する圧力について説明する。この実施の形態1に係るスクロール膨張機1においては、膨張機構5は、高圧Phから低圧Plまでの膨張過程を担い、サブ圧縮機構6は、中間圧Pmから高圧Phまでの圧縮過程を担う。このため、揺動スクロール52、62においては、中央部の膨張室5aおよび中央部のサブ圧縮室6aの双方に高圧Phが作用し、外周部の膨張室5aには低圧Plが、外周部のサブ圧縮室6aには中間圧Pmが作用する。サブ圧縮機構6で圧縮された吐出ガスは、サブ圧縮吐出ポート61eから吐出弁30を経て、密閉容器10内の上部空間70に吐出された後、容器外へ吐出される。そして、下部空間72は、揺動スクロール運動空間71を経由しない油戻し孔17を通じて上部空間70と同じ圧縮後圧力となる。一方、膨張機構5で膨張した冷媒は、揺動スクロール運動空間71に開放され、膨張吐出管15から容器外へ吐出される。揺動スクロール運動空間71と中間圧Pmとなるサブ圧縮機構6の外周部は、外周シール23によってシールされており、揺動スクロール運動空間71内は膨張後圧力となっている。
図5において、矢印は、低圧Plを基準とした揺動スクロール52、62に作用する軸方向差圧力の分布を示す。揺動スクロール52、62の中央部の差圧力は、膨張機構5側もサブ圧縮機構6側もPh−Plで等しい。しかしながら、揺動スクロール52、62の外周部の差圧力は、膨張機構5側では0となり、サブ圧縮機構6側ではPm−Plとなる。揺動スクロール52、62はネジ18で一体化されており、揺動スクロール52、62に作用するスラスト荷重Fは、この差圧力を積分して求められる。サブ圧縮機構6に設けられた外周シール23の直径および断面径の大きさを調整することで、揺動スクロール52、62に作用するスラスト荷重が過大とならないように調整することが可能である。
図6は、実施の形態1に係るスクロール膨張機1を用いた冷凍サイクルにおける冷媒の状態量変化を示すモリエル線図である。図6において、縦軸は圧力P、横軸はエンタルピーhを表し、破線は等温線である。
図6に示すように、ガスクーラー2で熱交換することによって、点dから点cまで冷却された冷媒は、膨張弁のような絞りによる減圧機構では点c→点b’のように等エンタルピー的に膨張する。しかしながら、膨張機構5では、等エントロピー的に膨張することによって点cから点bとなる。このため、点b’でのエンタルピーhb’と点bでのエンタルピーhbの差hb’−hb分だけ、膨張動力として回収される。膨張後、蒸発器4で熱交換され、点bから点aまで加熱された冷媒ガスは、主圧縮機11の主圧縮機構11aで点aから点d’まで圧縮された後、スクロール膨張機1のサブ圧縮機構6で点d’から点dまで圧縮される。上記のように、本発明の実施の形態1においては、主圧縮機11の主圧縮機構11aで冷凍サイクルの圧縮過程の一部を担い、スクロール膨張機1のサブ圧縮機構6で圧縮過程の残りの一部を担う。サブ圧縮機構6におけるエンタルピー差hd−hd’分の圧縮動力は、hb’−hb分の回収動力によって賄われる。
ここで、図6中の点b、点c、点d、点d’の温度をそれぞれTa、Tb、Tc、Td、Td’とすると、Tb<Tc<Td’<Tdとなる。すなわち、膨張機構5は低温のTcからTbに分布し、サブ圧縮機構6は高温のTd’からTdに分布している。本実施の形態は、サブ圧縮機構6と膨張機構5を背面合わせで一体化しているため、サブ圧縮機構6から膨張機構5の温度差によって、揺動スクロールの台板52a、62aを通って熱リークが生じる。
図7は、熱リーク量が大きいときの冷凍サイクルにおける冷媒の状態量変化を示すモリエル線図である。
図7に示すように、熱リークによって膨張機構5の温度が上昇すると、膨張機構5の吐出点が点bから点bbに移動し、サブ圧縮機構6の吐出点が点dから点ddへ移動する。すなわち、熱リークがないときに比べて、蒸発器4のエンタルピー差やガスクーラー2のエンタルピー差が縮小し、冷房能力や暖房能力が低下する。
本実施の形態1では、サブ圧縮機構6と膨張機構5との間に空間部16からなる断熱層を設け、さらに伝熱経路となるネジ締結部を温度差の小さい揺動スクロール52と揺動スクロール62の外周に設けるとともに、取付座62dと台板52aの金属接触部には、エンジニアプラスチックなど金属より熱伝導率が1桁から2桁小さい耐冷媒性断熱部材20を設けて、熱抵抗を増大させている。
以上のような構成によれば、揺動スクロール52、62に作用するスラスト荷重の低減が可能な背面合わせの構成でありながら、サブ圧縮機構6から膨張機構5への熱リーク量を抑制できるので、広い運転条件で能力低下の小さい高性能なスクロール膨張機を得ることができる。
実施の形態2.
図8は、本発明の実施形態2に係るスクロール膨張機1の構成を示す縦断面図である。図9は、図8に示すサブ圧縮機構6の揺動スクロール62の断面図(a)と下面図(b)である。なお、図9(a)の断面図は同図(b)のC−C断面を表している。
ここでは、実施の形態1と相違する点を中心に説明することにする。
実施の形態1と異なるのは、膨張機構5の揺動スクロール52とサブ圧縮機構6の揺動スクロール62とをネジ等によって締結せずに、ピン19で揺動スクロール52と揺動スクロール62とを半固定にしている点である。ここで、半固定というのは、揺動スクロール62の熱による膨張・収縮を許容する固定方法をいう。また、ピン19は揺動スクロール52と揺動スクロール62との角度位相関係を保持する機能を有するものである。そのため、揺動スクロール52の台板52aの外周部にはピン19が嵌合するピン穴52eを設け、揺動スクロール62の台板62aの外周部の取付座62dにはピン19が嵌合する半径方向に長手形状に形成されたピン溝62fを設ける。ピン溝62fは台板62aの外周端が開口された上面視でU字状の形状に形成されているが、特にこの形状に限定されるものではない。強度的に問題がなければ長穴の形状でもかまわない。
なお、本実施の形態2ではネジ締結しないため、実施の形態1に比べて取付座62dと揺動スクロール52の台板52aとの隙間が大きく、熱抵抗が大きいので、ここでは、耐冷媒性断熱部材20を設けず、直接、揺動スクロール62の台板62aに設けられた取付座62dを揺動スクロール52の台板52aの上面に接触させた例を示している。
また、図9(b)では2箇所ピン19を設けた例を示しているが、揺動軸と位置決めされるのでピン19は1箇所でもよい。
図10は、実施の形態1と実施の形態2の揺動スクロールの熱変形を説明するための模式図である。
図10(a)は、実施の形態1による揺動スクロールの運転中の熱変形、図10(b)は実施の形態2による揺動スクロールの熱変形を説明するための模式図である。
上述の通り、サブ圧縮機構6は膨張機構5に比べて高温となると、サブ圧縮機構6の揺動スクロール62が熱膨張する。実施の形態1のように揺動スクロール62と揺動スクロール52とをネジ18で締結した場合、図10(a)のように台板62aが台板52aに対して径方向へ伸びようとするのに対し、両端がネジ18で固定されているために揺動スクロール62が変形し、渦巻歯62c周辺で隙間が生じる恐れがある。一方、実施の形態2では、図10(b)に示すように、ネジ締結部がなく、さらにピン溝62fの形状を径方向に沿って長手な形状としているので、台板62aの径方向への伸びをピン溝62fで吸収でき、揺動スクロール62に無理な変形が発生しない。
実施の形態2に示すスクロール膨張機1の動作は、実施の形態1に示すスクロール膨張機1と同様である。
この構造により、実施の形態1と同様に熱リークの抑制効果が得られるとともに、サブ圧縮機構6の揺動スクロール62の台板62aが熱膨張差によって径方向へ伸びた場合にも、その伸びを長手形状のピン溝62fで吸収するので、揺動スクロール62に無理な変形が発生せず、性能の高いスクロール膨張機を得ることができる。
なお、実施の形態2では、揺動スクロール52とピン19を別体で設けているが、揺動スクロール52とピン19を一体化して設けてもよく、部品点数の削減と組立て時間を短縮できるとともに、上記と同様の効果がある。
また、図11および図12に示すように、ピン19を揺動スクロール62の偏心軸受部62bの外周部に一体に径方向に突出して設け、揺動スクロール52の貫通穴52bの内周面にピン19が嵌められるピン溝52fを設けてもよく、同様の効果がある。
さらに、ピンおよびピン溝の嵌め合い関係を実施の形態2の関係と逆転させても同様である。
実施の形態3.
図13は、本発明の実施形態3に係るスクロール膨張機1の構成を示す縦断面図である。実施の形態1および実施の形態2と異なるのは、揺動スクロール62と揺動スクロール52とが、偏心軸受部62bを共有して一体化されている点である。但し、実施の形態1で示したようなネジ18や取付座62d等はなく、また実施の形態2で示したようなピン19やピン溝62f等もなく、単に所定の間隔の空間部16を揺動スクロール62と揺動スクロール52との間に設けて揺動スクロール62、52を一体的に結合するものである。したがって、この空間部16は全周が揺動スクロール運動空間71に開放された形態となっている。
この構造により、実施の形態1と同様、熱リーク抑制効果により、高性能なスクロール膨張機が得られるとともに、ネジ締結部品や角度位相関係を保持するピン19などを設ける必要がなく、部品点数の削減や組立工程を短縮できる効果がある。
本発明の実施の形態1〜3では、揺動スクロール52、62の中心部を軸8が貫通し、両持ち支持されて揺動運動する構成を示したが、揺動スクロールの外部に軸を設ける外部駆動構成であってもよく、そのような外部駆動構成とすれば、温度差の大きい中心部に空間部16を設けることができるので、さらに熱リークを抑制できる効果がある。
1 スクロール膨張機、2 ガスクーラー、3 膨張弁、4 蒸発器、5 膨張機構、5a 膨張室、6 サブ圧縮機構、6a サブ圧縮室、7 オルダムリング、8 軸、8b クランク部、8c 給油孔、8d 給油孔、8e ガス抜き孔、9a、9b バランスウェイト、10 密閉容器、11 主圧縮機、11a 主圧縮機構、11b 電動機構、12 サブ圧縮吸入管、13 膨張吸入管、14 サブ圧縮吐出管、15 膨張吐出管、16 空間部、17 油戻し孔、18 ネジ、19 ピン、20 耐冷媒性断熱部材、21 チップシール、22 チップシール、23 外周シール、30 吐出弁、51 固定スクロール、51a 台板、51b 軸受部、51c 渦巻歯、51d 膨張吸入ポート、51e 膨張吐出ポート、51f 環状凸部、52 揺動スクロール、52a 台板、52b 貫通穴、52c 渦巻歯、52e ピン穴、52f ピン溝、61 固定スクロール、61a 台板、61b 軸受部、61c 渦巻歯、61d サブ圧縮吸入ポート、61e サブ圧縮吐出ポート、61f 環状凸部、62 揺動スクロール、62a 台板、62b 偏心軸受部、62c 渦巻歯、62d 取付座、62e ピン穴、62f ピン溝、62g 円筒部、70 上部空間、71 揺動スクロール運動空間、72 下部空間、80 潤滑油、81 給油ポンプ、100 冷凍サイクル装置。

Claims (7)

  1. 冷媒を膨張させて動力を回収するスクロール型の膨張機構と、前記回収した動力を利用して冷媒を圧縮するスクロール型のサブ圧縮機構とを有するスクロール膨張機であって、
    前記膨張機構は、第1の揺動スクロールと第1の固定スクロールとを有し、
    前記サブ圧縮機構は、第2の揺動スクロールと第2の固定スクロールとを有し、
    前記膨張機構および前記サブ圧縮機構を収容する密閉容器を有し、
    前記第1の揺動スクロールと前記第2の揺動スクロールとは、両者の間に断熱構造を形成して背面合わせの形態で構成されており、
    前記第1の揺動スクロールと前記第2の揺動スクロールとは、角度位相関係を保持するピンで接続されており、
    前記ピンは、前記第1の揺動スクロールおよび前記第2の揺動スクロールのいずれか一方の揺動スクロールの台板の外周部に設けられ、
    前記ピンが嵌合する溝の形状を、他方の揺動スクロールの台板に径方向に沿った長手形状に形成したことを特徴とするスクロール膨張機。
  2. 前記第1の揺動スクロールと前記第2の揺動スクロールとの間には、断熱層として、両揺動スクロールの外周側に形成される揺動スクロール運動空間に連通する中空の断熱空間部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のスクロール膨張機。
  3. 前記第1の揺動スクロールと前記第2の揺動スクロールとは、取付座および耐冷媒性断熱部材を介してネジで締結されていることを特徴とする請求項1または2記載のスクロール膨張機。
  4. 冷媒を膨張させて動力を回収するスクロール型の膨張機構と、前記回収した動力を利用して冷媒を圧縮するスクロール型のサブ圧縮機構とを有するスクロール膨張機であって、
    前記膨張機構は、第1の揺動スクロールと第1の固定スクロールとを有し、
    前記サブ圧縮機構は、第2の揺動スクロールと第2の固定スクロールとを有し、
    前記膨張機構および前記サブ圧縮機構を収容する密閉容器を有し、
    前記第1の揺動スクロールと前記第2の揺動スクロールとは、両者の間に断熱構造を形成して背面合わせの形態で構成されており、
    前記第1の揺動スクロールおよび前記第2の揺動スクロールの中心部を貫通する軸と前記軸の一部に設けられ、前記軸の回転中心から偏心た揺動軸と、該揺動軸を支持する揺動軸受と、を設け、
    前記第1の揺動スクロールおよび前記第2の揺動スクロールのいずれか一方と前記揺動軸受とを一体に形成したことを特徴とするクロール膨張機。
  5. 前記揺動軸受の外周面に前記第1の揺動スクロールと前記第2の揺動スクロールとの角度位相関係を保持する前記ピンを一体に設け、
    前記揺動軸受を内包する揺動スクロール側に前記ピンが嵌合する嵌合溝を設けたことを特徴とする請求項記載のスクロール膨張機。
  6. 前記第1の揺動スクロールと前記第2の揺動スクロールとは、前記断熱空間部が全周にわたり前記揺動スクロール運動空間に連通するように、前記揺動軸受を共有して一体に形成されていることを特徴とする請求項または記載のスクロール膨張機。
  7. 主圧縮機と、請求項1〜のいずれかに記載のスクロール膨張機と、ガスクーラーと、絞り装置と、蒸発器と、を有し、
    前記サブ圧縮機構が、前記主圧縮機の吐出側又は吸入側に接続され、
    前記膨張機構が、前記絞り装置と並列になるように、前記ガスクーラーと前記蒸発器との間に接続されている
    ことを特徴とする冷凍サイクル装置。
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