図1は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1の構成図である。図2は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1に用いられる流体機械10の断面図である。まず、図1を参照しながら、冷凍サイクル装置1の概略構成について説明する。なお、ここで説明する冷凍サイクル装置1は、本発明を実施した好ましい形態の一例であって、本発明は、下記構成に何ら限定されるものではない。
<冷凍サイクル装置1の概要構成>
図1に示すように、冷凍サイクル装置1は、主圧縮機3と、放熱器4と、動力回収手段5と、蒸発器6と、副圧縮機2と、を有する冷媒回路9を備えている。冷媒回路9には、主圧縮機3から放熱器4を経て動力回収手段5に至る高圧側部分において超臨界圧力となる作動流体としての冷媒が充填されている。具体的に、本実施形態では、冷媒回路9には二酸化炭素が充填されている。しかし、本発明は、この構成に限定されるものではない。例えば、冷媒回路9には、高圧側において超臨界圧力とならない冷媒が充填されていてもよい。具体的に、冷媒回路9には、例えば、フロン系冷媒が充填されていてもよい。
主圧縮機3は、シャフト38によって、回転電動機の一種である電動機8に連結されている。主圧縮機3は、電動機8により駆動される。なお、本実施形態では、主圧縮機3がスクロール型の圧縮機である例について説明する。しかし、本発明において、主圧縮機3は、スクロール型の圧縮機に限定されない。本発明において、主圧縮機3は、例えば、ロータリ型の圧縮機であってもよい。
放熱器(ガスクーラ)4は、配管91を介して主圧縮機3の吐出管11dに接続されている。放熱器4は、主圧縮機3により圧縮された冷媒を放熱させる。言い換えれば、放熱器4は、主圧縮機3により圧縮された冷媒を冷却する。
動力回収手段5は、配管92を介して放熱器4に接続されている。本実施形態では、動力回収手段5は、ロータリ式の流体圧モータにより構成されている。具体的に、動力回収手段5は、放熱器4からの冷媒を吸入する工程と、吸入した冷媒を吐出する工程と、を実質的に連続して行う。すなわち、動力回収手段5は、放熱器4からの冷媒を吸入し、実質的に体積変化させることなく蒸発器6側に吐出する。ここで、冷媒回路9上、動力回収手段5を挟んで放熱器4側が比較的高圧となっており、蒸発器6側が比較的低圧となっている。このため、動力回収手段5に吸入された冷媒は、動力回収手段5から吐出されるときに膨張し、低圧となる。なお、本発明において、動力回収手段5は、ロータリ式の流体圧モータに限定されない。動力回収手段5は、ロータリ式以外の流体圧モータであってもよい。又、動力回収手段5は、冷媒を吸入する工程と、吸入した冷媒を膨張させる工程と、膨張させた冷媒を吐出する工程とを行うものであってもよい。すなわち、動力回収手段5は、膨張機であってもよい。
蒸発器6は、配管93を介して動力回収手段5に接続されている。蒸発器6は、動力回収手段5からの冷媒を加熱して蒸発させる。
副圧縮機2は、配管94を介して蒸発器6に接続されており、冷媒回路9上、蒸発器6と主圧縮機3との間に配置されている。副圧縮機2は、シャフト12によって動力回収手段5に連結されている。副圧縮機2は、動力回収手段5により回収された動力により駆動される。この副圧縮機2によって、蒸発器6側からの冷媒が予備的に昇圧された後に、主圧縮機3に供給される。本実施形態では、この副圧縮機2と、動力回収手段5とによって、動力回収機構7が構成されている。
なお、副圧縮機2は、吸入した冷媒を、作動室内において圧縮した後に吐出するものに限定されない。副圧縮機2は、例えば、蒸発器6からの冷媒を吸入する工程と、吸入した冷媒を主圧縮機3側に吐出する工程と、を実質的に連続して行う流体圧モータ(ブロアともいう。)であってもよい。つまり、副圧縮機2は、主圧縮機3に吸入される冷媒を昇圧できるものであれば特に限定されない。なお、ここでは、副圧縮機2が流体圧モータにより構成されている例を挙げて説明する。
<冷凍サイクル装置1の具体的構成>
(流体機械10)
図2に示すように、流体機械10は、略円筒状の密閉容器11,17と、主圧縮機3と、電動機8と、動力回収機構7とを備えている。主圧縮機3と電動機8とは密閉容器11内に設けられており、動力回収機構7は密閉容器17内に設けられている。本実施形態では、密閉容器11は密閉容器17の上側に固定されている。つまり、密閉容器11と密閉容器17とは上下に配置されている。
密閉容器11は、筒状の胴シェル11aと、上シェル11bと、下シェル11cとを備えている。胴シェル11aの上部開口は、蓋状の上シェル11bによって塞がれている。一方、胴シェル11aの下部開口は、碗状の下シェル11cによって塞がれている。密閉容器17は、筒状の胴シェル17aと、上シェル17bと、下シェル17cとを備えている。胴シェル17aの上部開口は、蓋状の上シェル17bによって塞がれている。一方、胴シェル17aの下部開口は、碗状の下シェル17cによって塞がれている。
密閉容器11の底部には、オイル(オイル)が溜められるオイル溜まり16が形成されている。密閉容器11におけるオイル溜まり16よりも高い位置には、主圧縮機3と、電動機8とが配置されている。詳細には、主圧縮機3がオイル溜まり16から最も離れて配置されている。電動機8は、主圧縮機3よりも低い位置に配置されている。
密閉容器17内にも、オイルが溜められるオイル溜まり18が形成されている。密閉容器17におけるオイル溜まり18内には、動力回収機構7が配置されている。動力回収機構7は副圧縮機2および動力回収手段5を備えているが、動力回収手段5よりも副圧縮機2の方が主圧縮機3寄りに配置されている。つまり、副圧縮機2は動力回収手段5よりも高い位置に配置されている。
また、流体機械10には、オイル溜まり16とオイル溜まり18とを連通させる連通路を形成する連通管60が設けられている。本実施形態では、連通管60は、密閉容器11の底部を形成する下シェル11cと密閉容器17の上部を形成する上シェル17bとに架け渡されている。具体的には、連通管60は、下シェル11cの中央部と上シェル17bの中央部とに架け渡されている。また、連通管60のオイル溜まり16側の開口部60aは、シャフト38の径方向に関して、シャフト38の中心軸Mの真下の位置に配置されている。
(電動機8および主圧縮機3の構成)
電動機8は、円筒状の固定子8bと、円筒状の回転子8aとにより構成されている。固定子8bは、焼き嵌めにより、密閉容器11の胴シェル11aに対して回転不能に固定されている。回転子8aは、固定子8bの内部に配置されている。回転子8aは、固定子8bに対して回転自在である。回転子8aの平面視中央には、軸方向に貫通する貫通孔が形成されている。その貫通孔に、回転子8aから上下に延びるシャフト38が挿入されて固定されている。このシャフト38は、電動機8が駆動されることで回転する。
シャフト38の下部は、胴シェル11aに固定された略円盤状の副軸受部材71に回転自在に支持されている。副軸受部材71は、オイル溜まり16内に配置されている。副軸受部材71には、1または複数の開口71aが形成されており、オイル溜まり16に溜められたオイルが副軸受部材71の上下を流動することができるようになっている。
シャフト38の下端部には、オイル供給部としてのオイルポンプ72が配置されている。このオイルポンプ72によって、オイル溜まり16に溜められたオイルが吸い上げられ、シャフト38の内部に形成されたオイル供給孔(図示せず)を介して、主圧縮機3にオイルが供給される。これにより、主圧縮機3の潤滑およびシールが図られている。主圧縮機3に供給されたオイルは、シャフト38等をつたって再びオイル溜まり16に戻る。
図2に示すように、主圧縮機3は、スクロール型の圧縮機である。主圧縮機3は、密閉容器11の胴シェル11aに対して固定されている。主圧縮機3は、固定スクロール32と、旋回スクロール33と、オルダムリング34と、軸受部材35と、マフラー36とを備えている。
固定スクロール32は、密閉容器11の胴シェル11aに対して変位不能に取り付けられている。固定スクロール32の下面には、平面視渦巻き状(例えばインボリュート形状等)のラップ32aが形成されている。旋回スクロール33は固定スクロール32に対向配置されている。旋回スクロール33の固定スクロール32に対向する面の中央部には、ラップ32aとかみ合う平面視渦巻き状(例えばインボリュート形状等)のラップ33aが形成されている。これらラップ32aおよび33aの間には、三日月状の作動室(圧縮室)39が区画形成されている。固定スクロール32には、作動室39に開口する開口32dが形成されている。この開口32dには、吸入管32cが取り付けられている。吸入管32cは、後述する連絡管70によって副圧縮機2の吐出経路50に連結されている。この連絡管70および吸入管32cを介して、作動室39に冷媒が供給される。
旋回スクロール33の対向表面の周縁部は、固定スクロール32の下側表面周縁部から突出したスラスト軸受32bに当接して支持されている。
旋回スクロール33の下面中央部には、シャフト38の偏心部38aが嵌合挿入されている。偏心部38aは、回転子8aから延びるシャフト38の上端部に設けられ、シャフト38とは異なる中心軸を有している。また、旋回スクロール33の下側にはオルダムリング34が配置されている。このオルダムリング34は旋回スクロール33を回転規制するものである。このオルダムリング34の機能により、旋回スクロール33はシャフト38の回転に伴って、シャフト38の中心軸から偏心した状態で旋回運動する。
旋回スクロール33の旋回運動に伴い、ラップ32aとラップ33aとの間に形成された作動室39が外側から内側に移動する。この移動に伴って、作動室39の容積が縮小される。これにより、吸入管32cから作動室39に吸入された冷媒が圧縮される。そして、圧縮された冷媒は、固定スクロール32の中央部に形成された吐出孔32eおよびマフラー36の内部空間36aを経由し、固定スクロール32および軸受部材35に貫通形成された吐出経路40から、密閉容器11の内部空間11eへと吐出される。吐出された冷媒は、内部空間11eに一時的に滞留し、その滞留期間中に、冷媒に混入したオイル等が重力や遠心力などにより分離される。そして、オイル等が分離された冷媒は、密閉容器11の上シェル11bに取り付けられた吐出管11dから冷媒回路9へと吐出される。
(動力回収機構7)
図2に示すように、動力回収機構7は、密閉容器17のオイル溜まり18内に配置されている。なお、本実施形態では、密閉容器17内の全体にオイルが充填されており、密閉容器17内の全体がオイル溜まり18となっている。動力回収機構7は、比較的下方に配置された動力回収手段5と、比較的上方に配置された副圧縮機2とによって構成されている。動力回収手段5と副圧縮機2とは、シャフト12および第1閉塞部材15を介して一体に配置されている。動力回収機構7は、副圧縮機2の構成部材である第3閉塞部材14において、胴シェル11aに固定されている。
−動力回収手段5の構成−
図2に示すように、動力回収手段5は、第1閉塞部材15と、第1シリンダ22と、第2閉塞部材13とを備えている。第1シリンダ22は、第1閉塞部材15と第2閉塞部材13との間に配置されている。第1シリンダ22は略円筒形の内部空間を有しており、その内部空間の上下は、第1閉塞部材15と第2閉塞部材13とによって閉塞されている。
シャフト12は、第1シリンダ22内を第1シリンダ22の軸方向に貫通している。シャフト12は第1シリンダ22の中心軸上に配置されている。シャフト12は、上記第2閉塞部材13と、後述する第3閉塞部材14とによって回転自在に支持されている。
第1ピストン21は、第1シリンダ22の内周面と第1閉塞部材15と第2閉塞部材13とにより区画形成された内部空間内に配置されている。第1ピストン21は、シャフト12の中心軸に対して偏心した状態でシャフト12に嵌め込まれている。具体的には、シャフト12は、シャフト12の中心軸と異なる中心軸を有する偏心部12bを備えている。この偏心部12bに筒状の第1ピストン21が嵌め込まれている。このため、第1ピストン21は、第1シリンダ22の中心軸に対して偏心している。したがって、第1ピストン21は、シャフト12の回転に伴って偏心回転運動する。
この第1ピストン21と第1シリンダ22の内周面と第1閉塞部材15と第2閉塞部材13とにより、第1シリンダ22内に第1作動室23が区画形成されている(図3も参照)。
図3に示すように、第1シリンダ22には、第1作動室23に開口する線条の溝22aが形成されている。この線条溝22aには、板状の第1仕切部材24が摺動自在に挿入されている。第1仕切部材24と線条溝22aの奥部との間には、付勢手段25が配置されている。この付勢手段25によって、第1仕切部材24は第1ピストン21の外周面に対して押圧されている。これにより、第1作動室23は、2つの空間に区画されている。具体的に、第1作動室23は、高圧側の吸入作動室23aと、低圧側の吐出作動室23bとに区画されている。
なお、付勢手段25は、例えば、ばねによって構成することができる。具体的に、付勢手段25は、圧縮コイルばねであってもよい。
また、付勢手段25は、所謂ガスばね等であってもよい。すなわち、第1仕切部材24が、第1仕切部材24の背面空間の体積を縮小する方向にスライドしたときに、第1仕切部材24と線条溝22aの奥部との間の空間内の圧力が、第1作動室23の圧力よりも高くなるように設定されており、その圧力差により、第1仕切部材24に対して第1ピストン21方向への押圧力が作用するようにしてもよい。具体的には、例えば、第1仕切部材24の背面空間を密閉空間として、背面空間の体積が第1仕切部材24により減少したときに第1仕切部材24に反力が加わるようにしてもよい。勿論、付勢手段25を、圧縮コイルばねやガスばね等の複数種類のばねにより構成してもよい。なお、第1作動室23の圧力とは、吸入作動室23aの圧力と吐出作動室23bの圧力との平均圧力をいうものとする。
吸入作動室23aの第1仕切部材24と隣接する部分には、図3に示すように、吸入経路27が開口している。図2に示すように、この吸入経路27は、第1シリンダ22の下側に位置する第2閉塞部材13に形成されている。吸入経路27は吸入管28と連通している。図1に示す放熱器4からの高圧の冷媒は、吸入管28および吸入経路27を介して吸入作動室23aに導かれる。
吸入経路27の吸入作動室23aに対する開口(吸入口)26は、吸入作動室23aの第1仕切部材24と隣接する部分から吸入作動室23aの広がる方向に円弧状に延びる略扇状に形成されている。吸入口26は、第1ピストン21が上死点に位置するときにおいてのみ、第1ピストン21によって完全に閉鎖される。そして、第1ピストン21が上死点に位置する瞬間を除いた全期間にわたって、吸入口26の少なくとも一部が吸入作動室23aに露出している。具体的には、平面視において、吸入口26の外側端辺26aが、上死点に位置する第1ピストン21の外周面に沿った円弧状に形成されている。言い換えれば、外側端辺26aは、第1ピストン21の外周面と略同一の半径の円弧状に形成されている。
一方、吐出作動室23bの第1仕切部材24と隣接する部分には、吐出経路30が開口している。図2に示すように、この吐出経路30も、吸入経路27と同様に、第2閉塞部材13に形成されている。吐出経路30は、吐出管31と連通している。これにより、吐出作動室23b内の冷媒は、吐出経路30および吐出管31を介して蒸発器6側に吐出される。
吐出経路30の吐出作動室23bに対する開口(吐出口)29は、吐出作動室23bの第1仕切部材24と隣接する部分から吐出作動室23bの広がる方向に円弧状に延びる略扇状に形成されている。吐出口29は、第1ピストン21が上死点に位置するときにおいてのみ、第1ピストン21によって完全に閉鎖される。そして、第1ピストン21が上死点に位置する瞬間を除いた全期間にわたって、吐出口29の少なくとも一部が吐出作動室23bに露出している。具体的には、平面視において、第1シリンダ22の径方向外側に位置する吐出口29の外側端辺29aが、上死点に位置する第1ピストン21の外周面に沿った円弧状に形成されている。言い換えれば、外側端辺29aは、第1ピストン21の外周面と略同一の半径の円弧状に形成されている。
なお、第1ピストン21が上死点に位置するときとは、図5(a)に示すように、第1ピストン21の中心軸(偏心軸)が最も第1仕切部材24寄りに位置するときをいう。また、「第1ピストン21が上死点に位置する瞬間」とは、厳密に第1ピストン21が上死点に位置している瞬間に限定されるものではなく、第1ピストン21が上死点に位置しているときを挟んである程度の期間を有するものであってもよい。すなわち、第1ピストン21が上死点に位置しているときの第1ピストン21の回転角(θ)を0°とすると、例えば、第1ピストン21の回転角(θ)が0°±5°以内である期間にわたって吸入口26および吐出口29の両方が閉じられるような構成も、吸入経路27と吐出経路30とが吹き抜けない構成に含まれるものとする。
上記のように吸入経路27と吐出経路30とを形成することによって、図5(a)に示すように、第1ピストン21が上死点に位置する瞬間においてのみ吸入口26と吐出口29との両方が完全に閉じられる。すなわち、第1作動室23がひとつとなる瞬間に吸入口26と吐出口29との両方が完全に閉じられる。より詳細には、吸入作動室23aが吐出経路30と連通する瞬間まで、吸入作動室23aは吸入経路27と連通している。そして、吸入作動室23aが吐出経路30と連通して吸入作動室23aが吐出作動室23bとなった瞬間以降は、吸入口26が第1ピストン21によって閉じられる。このため、吸入経路27から吐出経路30への冷媒の吹き抜けが抑制される。したがって、高効率な動力回収が実現される。
なお、吸入経路27から吐出経路30への冷媒の吹き抜けを完全に規制する観点からは、第1ピストン21が上死点に位置する瞬間において、吸入口26と吐出口29との両方が閉じられることが好ましい。但し、第1ピストン21が上死点に位置する瞬間において、吸入口26と吐出口29との一方のみしか閉じられていない場合であっても、吸入口26が閉じられるタイミングと、吐出口29が閉じられるタイミングとの差が、シャフト12の回転角にして10°程度よりも小さければ、吸入経路27と吐出経路30との間で実質的に吹き抜けは生じない。つまり、吸入口26が閉じられるタイミングと、吐出口29が閉じられるタイミングとの差が、シャフト12の回転角にして、10°程度よりも小さく設定することで、吸入経路27から吐出経路30への冷媒の吹き抜けを抑制することができる。
上述のように、吸入作動室23aは、常に吸入経路27と連通している。また、吐出作動室23bは、常に吐出経路30に連通している。言い換えれば、動力回収手段5において、冷媒を吸入する工程と、吸入した冷媒を吐出する工程とが実質的に連続して行われる。このため、吸入した冷媒は、実質的に体積変化することなく動力回収手段5を通過する。
−動力回収手段5の動作−
次に、図5を参照しながら動力回収手段5の動作原理について詳細に説明する。図5(a)は第1ピストン21の回転角(θ)が0°、360°、720°であるときの図である。図5(b)は第1ピストン21の回転角(θ)が90°、450°であるときの図である。図5(c)は第1ピストン21の回転角(θ)が180°、540°であるときの図である。図5(d)は第1ピストン21の回転角(θ)が270°、630°であるときの図である。なお、回転角(θ)は、図5において反時計回り方向を正としたときのものである。
図5(a)に示すように、第1ピストン21が上死点に位置するとき(θ=0°)、吸入口26および吐出口29はいずれも第1ピストン21によって閉じられている。このため、第1作動室23は吸入経路27および吐出経路30のいずれにも連通していない孤立した状態にある。
この状態から第1ピストン21が回転することにより、吸入経路27に連通する吸入作動室23aが形成される。ここで、吸入作動室23aは、冷媒回路9の高圧側に接続されている。このため、吸入口26が開くと、図5(b)〜(d)に示すように、吸入口26から流入する高圧の冷媒によって吸入作動室23aの容積が増大していく。この吸入作動室23aの容積拡大に伴って、第1ピストン21に加わる回転トルクがシャフト12の回転駆動力の一部となる。この冷媒の吸入工程は、回転角(θ)が360°になるまで、すなわち第1ピストン21が再び上死点に位置するまで行われる。つまり、冷媒の吸入工程は、吸入作動室23aが吐出経路30と連通する直前まで行われる。
図5(a)に示すように、第1ピストン21が再び上死点に位置した瞬間、本実施形態では、第1ピストン21によって吸入口26および吐出口29の両方が閉じられる。これにより、第1作動室23は再び孤立する。
この状態から、第1ピストン21が回転すると、孤立していた第1作動室23が吐出経路30と連通し、吐出作動室23bとなる。ここで、動力回収手段5よりも蒸発器6側は、主圧縮機3により、動力回収手段5よりも放熱器4側と比較して低圧となっている。このため、孤立した第1作動室23が吐出経路30と連通して吐出作動室23bとなった瞬間に、吐出作動室23b内の低温高圧の冷媒が低圧側に吸引される。この際、第1作動室23内の冷媒が膨張する。そして、吐出作動室23b内の圧力は、冷媒回路9の低圧側の圧力と等しくなる。この冷媒の吐出工程によって第1ピストン21に加わる回転トルクも、シャフト12の回転駆動力の一部となる。すなわち、シャフト12は、吸入作動室23aへの高圧の冷媒の流入と、吐出工程における冷媒の吸引とによって回転する。そして、このシャフト12の回転トルクは、後に詳述するように、副圧縮機2の動力として利用される。
さらに第1ピストン21の回転角(θ)が大きくなるに伴って、吐出作動室23b内の冷媒が冷媒回路9の低圧側に順次吐出されていく。そして、図5(a)に示すように、第1ピストン21が再び上死点に位置したとき(θ=720°)、吐出作動室23bは消滅する。この吐出工程と同期して、吸入作動室23aが再び形成され、次の吸入工程が行われる。以上のように、吸入工程開始から吐出工程終了までの一連の工程は、第1ピストン21が720°回転すると完了する。
−副圧縮機2の構成−
図2に示すように、副圧縮機2はシャフト12により動力回収手段5と連結されている。言い換えれば、動力回収手段5のシャフト12は、副圧縮機2のシャフトを兼ねている。さらに言い換えれば、動力回収手段5のシャフトと副圧縮機2のシャフトとは、一体に連結されている。
副圧縮機2の基本的な構成は、上述の動力回収手段5と略同一である。具体的に、副圧縮機2は、図2に示すように、第1閉塞部材15と、第3閉塞部材14とを備えている。第1閉塞部材15は、副圧縮機2と動力回収手段5との共通の構成部材である。第1閉塞部材15と第3閉塞部材14とは、相互に対向している。具体的には、第3閉塞部材14は、第1閉塞部材15の第2閉塞部材13と対向する面とは反対側の面と対向している。第1閉塞部材15と第3閉塞部材14との間には、第2シリンダ42が配置されている。第2シリンダ42は略円筒形の内部空間を有する。その第2シリンダ42の内部空間は、第1閉塞部材15と第3閉塞部材14とによって閉塞されている。
シャフト12は、第2シリンダ42内を第2シリンダ42の軸方向に貫通している。シャフト12は第2シリンダ42の中心軸上に配置されている。第2ピストン41は、第2シリンダ42の内周面と第1閉塞部材15と第3閉塞部材14とにより区画形成された略円筒形状の内部空間内に配置されている。第2ピストン41は、シャフト12の中心軸に対して偏心した状態でシャフト12に嵌め込まれている。具体的には、シャフト12は、シャフト12の中心軸と異なる中心軸を有する偏心部12cを備えている。この偏心部12cに筒状の第2ピストン41が嵌め込まれている。このため、第2ピストン41は、第2シリンダ42の中心軸に対して偏心している。したがって、第2ピストン41は、シャフト12の回転に伴って偏心回転運動する。
なお、第2ピストン41が取り付けられた偏心部12cは、第1ピストン21が取り付けられた偏心部12bと略同一の方向に偏心している。このため、本実施形態では、第1シリンダ22の中心軸に対する第1ピストン21の偏心方向と、第2シリンダ42の中心軸に対する第2ピストン41の偏心方向とは、相互に略同一である。
この第2ピストン41と第2シリンダ42の内周面と第1閉塞部材15と第3閉塞部材14とにより、第2シリンダ42内に第2作動室43が区画形成されている(図4も参照)。
図4に示すように、第2シリンダ42には、第2作動室43に開口する線条の溝42aが形成されている。この線条溝42aには、板状の第2仕切部材44が摺動自在に挿入されている。第2仕切部材44と線条溝42aの奥部との間には、付勢手段45が配置されている。この付勢手段45によって第2仕切部材44は第2ピストン41の外周面に対して押しつけられている。これにより、第2作動室43は、2つの空間に区画されている。具体的に、第2作動室43は、低圧側の吸入作動室43aと、高圧側の吐出作動室43bとに区画されている。
なお、付勢手段45は、例えば、ばねによって構成することができる。具体的に、付勢手段45は、圧縮コイルばねであってもよい。
また、付勢手段45は、所謂ガスばね等であってもよい。すなわち、第2仕切部材44が背面空間55の体積を縮小する方向にスライドしたときに、背面空間55内の圧力が、第2作動室43の圧力よりも高くなるように設定されており、その背面空間55と第2作動室43との間の圧力差により、第2仕切部材44に対して第2ピストン41方向への押圧力が作用するようにしてもよい。具体的には、例えば、背面空間55を密閉空間として、背面空間55の体積が第2仕切部材44により減少したときに第2仕切部材44に反力が加わるようにしてもよい。また、第2仕切部材44が最も第2ピストン41寄りに位置するときには背面空間55が密閉空間ではないものの、第2仕切部材44がある程度第2ピストン41から離れたときに背面空間55が密閉空間となるようにしてもよい。勿論、付勢手段45を、圧縮コイルばねやガスばね等の複数種類のばねにより構成してもよい。なお、第2作動室43の圧力とは、吸入作動室43aの圧力と吐出作動室43bの圧力との平均圧力をいうものとする。
吸入作動室43aの第2仕切部材44と隣接する部分には、図4に示すように、吸入経路47が開口している。図2に示すように、この吸入経路47は第2シリンダ42の上側に位置する第3閉塞部材14に形成されている。吸入経路47は、吸入管48と連通している。蒸発器6(図1参照)からの冷媒は、吸入管48および吸入経路47を介して吸入作動室43aに導かれる。
図4に示すように、吸入経路47の吸入作動室43aに対する開口(吸入口)46は、吸入作動室43aの第2仕切部材44と隣接する部分から吸入作動室43aの広がる方向に円弧状に延びる略扇状に形成されている。吸入口46は、第2ピストン41が上死点に位置するときにおいてのみ、第2ピストン41によって完全に閉鎖される。そして、第2ピストン41が上死点に位置する瞬間を除いた全期間にわたって、吸入口46の少なくとも一部が吸入作動室43aに露出している。具体的には、平面視において、第2シリンダ42の径方向外側に位置する吸入口46の外側端辺46aが、上死点に位置する第2ピストン41の外周面に沿った円弧状に形成されている。言い換えれば、外側端辺46aは、第2ピストン41の外周面と略同一の半径の円弧状に形成されている。
一方、吐出作動室43bの第2仕切部材44と隣接する部分には、吐出経路50が開口している。図2に示すように、この吐出経路50も、吸入経路47と同様に、第3閉塞部材14に形成されている。吐出経路50は、吐出管51と連通している。これにより、吐出作動室43b内の冷媒は、吐出経路50および吐出管51を介して主圧縮機3側に吐出される。主圧縮機3側に吐出された冷媒は、連絡管70および吸入管32cを介して主圧縮機3に供給される。
吐出経路50の吐出作動室43bに対する開口(吐出口)49は、吐出作動室43bの第2仕切部材44と隣接する部分から吐出作動室43bの広がる方向に円弧状に延びる略扇状に形成されている。吐出口49は、第2ピストン41が上死点に位置するときにおいてのみ、第2ピストン41によって完全に閉鎖される。そして、第2ピストン41が上死点に位置する瞬間を除いた全期間にわたって、吐出口49の少なくとも一部が吐出作動室43bに露出している。具体的には、平面視において、第2シリンダ42の径方向外側に位置する吐出口49の外側端辺49aが、上死点に位置する第2ピストン41の外周面に沿った円弧状に形成されている。言い換えれば、外側端辺49aは、第2ピストン41の外周面と略同一の半径の円弧状に形成されている。
なお、第2ピストン41が上死点に位置するときとは、図6(a)に示すように、第2ピストン41の中心軸(偏心軸)が最も第2仕切部材44寄りに位置するときをいう。また、「第2ピストン41が上死点に位置する瞬間」とは、厳密に第2ピストン41が上死点に位置している瞬間に限定されるものではなく、第2ピストン41が上死点に位置しているときを挟んである程度の期間を有するものであってもよい。すなわち、第2ピストン41が上死点に位置しているときの第2ピストン41の回転角(θ)を0°とすると、例えば、第2ピストン41の回転角(θ)が0°±5°以内である期間にわたって吸入口46および吐出口49の両方が閉じられるような構成も、吸入経路47と吐出経路50とが吹き抜けない構成に含まれるものとする。
上記のように吸入経路47と吐出経路50とを形成することによって、図6(a)に示すように、第2ピストン41が上死点に位置する瞬間においてのみ吸入口46と吐出口49との両方が完全に閉じられる。すなわち、第2作動室43がひとつとなる瞬間に吸入口46と吐出口49との両方が完全に閉じられる。より詳細には、吸入作動室43aが吐出口49と連通する瞬間まで、吸入作動室43aは吸入経路47と連通している。そして、吸入作動室43aが吐出経路50と連通して吸入作動室43aが吐出作動室43bとなった瞬間以降は、吸入口46が第2ピストン41によって閉じられる。このため、比較的圧力が高い吐出経路50から、比較的圧力が低い吸入経路47への冷媒の逆流が抑制される。したがって、高効率な過給が実現される。その結果、回収された動力の利用効率が向上する。
なお、吐出経路50から吸入経路47への冷媒の逆流を完全に規制する観点からは、第2ピストン41が上死点に位置する瞬間において、吸入経路47と吐出経路50との両方が閉じられることが好ましい。但し、第2ピストン41が上死点に位置する瞬間において、吸入口46と吐出口49との一方のみしか閉じられていない場合であっても、吸入口46が閉じられるタイミングと、吐出口49が閉じられるタイミングとの差が、シャフト12の回転角にして10°程度よりも小さければ、吐出経路50から吸入経路47への冷媒の逆流は実質的に生じない。つまり、吸入口46が閉じられるタイミングと、吐出口49が閉じられるタイミングとの差が、シャフト12の回転角にして、10°程度よりも小さく設定することで、吐出経路50から吸入経路47への冷媒の逆流を抑制することができる。
上述のように吸入作動室43aは、常に吸入経路47と連通している。また、吐出作動室43bは、常に吐出経路50に連通している。言い換えれば、副圧縮機2において、冷媒を吸入する工程と、吸入した冷媒を吐出する工程とが実質的に連続して行われる。このため、吸入した冷媒は、実質的に体積変化することなく副圧縮機2を通過する。
(副圧縮機2の動作)
次に、図6を参照しながら副圧縮機2の動作原理について詳細に説明する。図6(a)は第2ピストン41の回転角(θ)が0°、360°、720°であるときの図である。図6(b)は第2ピストン41の回転角(θ)が90°、450°であるときの図である。図6(c)は第2ピストン41の回転角(θ)が180°、540°であるときの図である。図6(d)は第2ピストン41の回転角(θ)が270°、630°であるときの図である。なお、回転角(θ)は、図6において反時計回り方向を正としたときのものである。
上述のように、シャフト12は、動力回収手段5によって回収された動力によって回転する。このシャフト12の回転と共に、第2ピストン41も回転し、副圧縮機2が駆動される。
図6(a)に示すように、第2ピストン41が上死点に位置するとき(θ=0°)、吸入口46および吐出口49はいずれも第2ピストン41によって閉じられている。このため、第2作動室43は吸入経路47および吐出経路30のいずれにも連通しておらず、第2作動室43は孤立した状態にある。
この状態から第2ピストン41が回転することにより、吸入経路47に連通した吸入作動室43aが形成される。第2ピストン41の回転角(θ)が360°になるまで、回転角(θ)が増大するにつれ、吸入作動室43aが拡大していく。回転角(θ)が360°に達したときに、冷媒の吸入工程が終了する。
回転角(θ)が360°に達するまで、吸入作動室43aは、常に吸入経路47と連通している。回転角(θ)が360°に達したとき、吸入経路47は、第2ピストン41によって閉鎖される。また、回転角(θ)が360°のときは、吐出経路50も閉じられている。すなわち、第2作動室43は、吸入経路47と吐出経路50との両方から隔離され、孤立する。そして、回転角(θ)が360°を超えて回転すると、第2作動室43は、吐出経路50と連通し、吐出作動室43bになる。そして、第2ピストン41の回転角(θ)が360°からさらに大きくなると、吐出作動室43bの容量が小さくなっていく。それと共に吐出作動室43bから冷媒が主圧縮機3側に吐出されていく。そして、図6(a)に示すように、第2ピストン41が再び上死点に位置したとき(θ=720°)、吐出作動室43bは消滅する。この吐出工程にわたって、吐出作動室43bは吐出経路50に常に連通している。そして、この吐出工程と同期して、吸入作動室43aが再び形成され、次の吸入工程が行われる。以上のように、吸入工程開始から吐出工程終了までの一連の工程は、第2ピストン41が720°回転すると完了する。
上述のように、第2作動室43は、実質的に容量が不変である。かつ、吸入作動室43aは吸入経路47と常に連通している。吐出作動室43bは吐出経路50と常に連通している。このため、副圧縮機2の第2作動室43内においては、冷媒は圧縮も膨張もしない。シャフト12が動力回収手段5によって回転し、副圧縮機2が駆動される分、第2作動室43の上流側よりも第2作動室43の下流側の方が高圧になる。言い換えれば、動力回収手段5によって回収された動力で駆動される副圧縮機2によって、吐出口49よりも主圧縮機3側の圧力が吸入口46よりも蒸発器6側の圧力より高くなる。つまり、副圧縮機2によって昇圧される。
なお、本実施形態において、上記動力回収手段5の第1ピストン21が上死点に位置するタイミングと、副圧縮機2の第2ピストン41が上死点に位置するタイミングとは相互に略同一となっている。
(バランスウエイト52)
図2に示すように、流体機械10には、バランスウエイト52が設けられている。具体的には、シャフト12の上端部にバランスウエイト52aが取り付けられ、シャフト12の下端部にバランスウエイト52bが取り付けられている。なお、本明細書では、バランスウエイト52aとバランスウエイト52bとを総称してバランスウエイト52と称する。
バランスウエイト52は、シャフト12と、シャフト12に対して偏心した状態で取り付けられた第1ピストン21と、シャフト12に対して偏心した状態で取り付けられた第2ピストン41とを含む動力回収機構7のシャフト12の回転軸周りの重量ばらつきを低減するためのものである。特には、動力回収機構7のシャフト12の回転軸周りの重量バランスを均一にするためのものである。
具体的には、バランスウエイト52aおよび52bのそれぞれは、図2に示すように、シャフト12の中心軸を中心軸とする円柱状に形成されている。すなわち、バランスウエイト52aおよび52bのそれぞれの形状は、シャフト12の回転軸に対して軸対称である。バランスウエイト52aおよび52bのそれぞれには、シャフト12の中心軸を中心とした平面視円弧状の内部空間54が形成されている。このため、バランスウエイト52aおよび52bのそれぞれは、シャフト12の中心軸周りに重量偏差を有する。そして、図2に示すように、バランスウエイト52aおよび52bは、第1ピストン21と第2ピストン41との偏心方向の反対方向の部分の方が、偏心方向の部分よりも重くなるようにシャフト12に対して取り付けられている。つまり、バランスウエイト52aおよび52bは、内部空間54が形成された側が、シャフト12の中心軸よりも第1ピストン21と第2ピストン41との偏心方向側に位置するように取り付けられている。
(密閉容器11と密閉容器17の位置関係)
密閉容器11と密閉容器17とは、密閉容器11のオイル溜まり16に溜められるオイルの油面OLが、動力回収機構7よりも上方に位置する様に配置されている。本実施形態では、密閉容器11が密閉容器17の上側に固定されることにより、密閉容器11と密閉容器17とは、オイル溜まり16に溜められるオイルの油面OLが、動力回収機構7よりも上方に位置する様に配置されている。また、オイル溜まり16に溜められるオイルの油面OLは、オイル溜まり18に溜められるオイルよりも上方に配置されている。ここで、「オイル溜まり18に溜められるオイルよりも上方」とは、本実施形態のように密閉容器17内にオイルが充満している場合には、密閉容器17内の最も高い位置よりも上方であることを意味し、密閉容器17内にガスが混入して密閉容器17内のオイルに油面が生じている場合には、当該油面よりも上方であることを意味する。
密閉容器11と密閉容器17とは、それぞれの外径が略等しくなる様に形成されている。つまり、密閉容器11と密閉容器17とは、胴シェル11aと胴シェル17aとの外径が略等しくなる様に形成されている。そして、密閉容器11と密閉容器17とは接合部材19により一体的に接合されている。接合部材19は、略円筒形状に形成されている。また、具体的には、接合部材19の内径は、密閉容器11,17の胴シェル11a,17aの外径と略等しくなる様に形成されている。接合部材19の上側に密閉容器11が嵌め込まれ、接合部材19の下側に密閉容器17が嵌め込まれた状態で、両密閉容器11,17は接合されている。
なお、本実施形態では、密閉容器11の下シェル11cと密閉容器17の上シェル17bとは、それぞれ外側に凸なドーム型形状に形成されている。そのため、密閉容器11と密閉容器17とを上下に配置して接合部材19で接合すると、密閉容器11の下シェル11cの径方向中央部と密閉容器17の上シェル17bの径方向中央部とが接することとなる。なお、下シェル11cと上シェル17bとは、当該接触部分以外の部分では接触しない。これにより、下シェル11cと上シェル17bとの間には、隙間空間61が形成される。
なお、本実施形態の接合部材19には、1つまたは複数の連通孔19aが設けられている。連通孔19aは、隙間空間61と外部とを連通する。また、本実施形態では、接合部材19は、密閉容器11,17よりも熱伝導率の低い材料で構成されている。例えば、密閉容器11,17を銅で構成し、接合部材19を鉄で構成するようにしてもよい。
《冷凍サイクル》
次に、図7を参照しながら、冷凍サイクル装置1における冷凍サイクルについて説明する。図7中に示す点Fは臨界点である。F−Lは飽和液線である。F−Gは飽和ガス線である。LPは臨界点Fを通る等圧線である。RTは臨界点Fを通る等温線である。図7に示すモリエル線図上で、飽和ガス線F−Gより右側で等圧線LPより下の領域は気相である。飽和液線F−Lより左側で等温線RTより下側の領域は液相である。等圧線LPよりも上側で、かつ等温線RTよりも上側の領域は超臨界相である。飽和液線F−Lより右側で飽和ガス線F−Gよりも左側の領域は気液二相である。なお、図7中、hA、hB、hC、hD、hEは、それぞれA、B、C、D、Eの各点における冷媒のエンタルピーを示している。
図7中のABCDEの閉ループは、図1で示した動力回収型の冷凍サイクル装置1の冷凍サイクルを示している。ABCDEの閉ループ中のA−Bは、副圧縮機による冷媒の状態変化を示している。B−Cは、主圧縮機3における冷媒の状態変化を示している。C−Dは、放熱器4における冷媒の状態変化を示している。D−Eは、動力回収手段5による冷媒の状態変化を示している。E−Aは、蒸発器6における冷媒の状態変化を示している。
主圧縮機3において、冷媒は点Bの気相の状態から高温高圧の超臨界相(点C)の状態へと圧縮される。主圧縮機3で圧縮された冷媒は、放熱器4において、超臨界相(点C)から液相(点D)の状態にまで冷却される。
その後、冷媒は、動力回収手段5において、飽和液(点S)の状態を経て、中温高圧の液相(点D)から気液二相(点E)の状態まで膨張(圧力降下)する。この圧力降下(膨張)の工程において、点Dから点Sまでは冷媒が非圧縮性の液相であるため、冷媒の比容積はそれほど変化しない。その一方、点Sから点Eの間は液相から気相への相変化による急激な比容積の変化を伴う圧力降下、すなわち、膨張を伴う圧力降下となる。
動力回収手段5からの冷媒は、蒸発器6において加熱され、蒸発を伴いながら気液二相(点E)から気相(点A)の状態へと変化する。蒸発器6により加熱された冷媒は、副圧縮機2にて昇圧され、点Bの状態へと変化する。
ところで、このような冷凍サイクル装置1では、主圧縮機3から冷媒回路9に吐出されるオイルの量が、容積形流体機械(本実施形態では動力回収機構7)から冷媒回路9に吐出されるオイルの量よりも少ないことがある。そのため、容積形流体機械の潤滑やシールが好適に行われなくなるおそれがあった。
《作用および効果》
しかし、本流体機械10によれば、オイル溜まり16とオイル溜まり18とは連通管60により連通されており、また、オイル溜まり16のオイルの油面OLは、オイル溜まり18に溜まったオイルよりも上方に位置している。そのため、オイル溜まり18のオイルが不足した場合には、オイル溜まり16のオイルが、連通管60を通じて自動的に供給される。したがって、オイル溜まり18のオイルが不足してしまうことを防止することができる。そのため、動力回収機構7の潤滑やシールを好適に行うことができ、冷凍サイクル装置1の信頼性を向上させることができる。
また、本実施形態では、密閉容器11と密閉容器17とは、密閉容器11のオイル溜まり16に溜められるオイルの油面OLが、動力回収機構7よりも上方に位置する様に配置されている。そのため、オイル溜まり18内のオイルが減少した場合であっても、動力回収機構7が常にオイルに浸漬する様に、オイル溜まり16からオイルが補給される。これにより、動力回収機構7に確実にオイルを供給することができる。
また、密閉容器11は密閉容器17の上端よりも高い位置に配置されている。そのため、密閉容器17においてオイルが不足した場合に、密閉容器11から密閉容器17にオイルを迅速かつ確実に供給することができる。
また、本流体機械10によれば、密閉容器11,17を上記のように配置し、連通管60を付加するという簡単な構成により、オイル溜まり18におけるオイルの不足を防止することができる。そのため、密閉容器11の内部構造に大幅な設計変更等を施すことなく、既存の圧縮機等を流用することが可能である。したがって、本実施形態によれば、上述の効果を奏する流体機械10を低コストで実現することができる。
なお、本実施形態では、動力回収手段5により動力が回収され、回収された動力は副圧縮機2の動力として利用される。このため、高いエネルギー効率が実現されている。具体的に、図7を用いて説明すると、動力回収手段5では、冷媒から(hD−hE)に相当するエンタルピー差に相当するエネルギーが動力として回収される。おおよそのところ、この回収されたエンタルピー(hD−hE)に、動力回収手段5の効率ηexpと副圧縮機2の効率ηpumpとを乗じて得られるエンタルピーηexp・ηpump(hD−hE)=(hB−hA)に相当するエネルギーが、副圧縮機2によって冷媒に与えられる。その結果、冷媒は、図7に示す点Aから点Bまで昇圧される。
例えば、副圧縮機2が配置されていない冷凍サイクル装置では、主圧縮機3が蒸発器6の出口側の点Aから放熱器4の入口側の点Cまで冷媒を圧縮する。それに対して、動力回収手段5に接続された副圧縮機2が設けられた本実施形態の冷凍サイクル装置1では、副圧縮機2から吐出されることによって、冷媒は点Aから点Bまで昇圧される。このため、主圧縮機3は、冷媒を点Bから点Cまで圧縮すればよい。したがって、主圧縮機3の仕事量を(hB−hA)に相当するエネルギー分だけ減らすことができる。その結果、冷凍サイクル装置1のCOPを向上させることができる。
また、本流体機械10では、内部に主圧縮機3が設けられた密閉容器11は、内部に動力回収機構7が設けられた密閉容器17の上側に配置されている。つまり、密閉容器11と密閉容器17とは上下に配置されている。そのため、密閉容器11のオイル溜まり16に溜められるオイルの油面OLが動力回収機構7よりも上方に位置する様に配置しつつ、両密閉容器11,17をコンパクトに配置することができる。
また、本実施形態によれば、密閉容器11と密閉容器17とを上下に積み重ねることによって、主圧縮機3と動力回収手段5と副圧縮機2とを備える単一の流体機械10が構成されている。そのため、密閉容器11の内部構造を何ら変更することなく、単独の圧縮機として通常用いられるものを、そのまま流用することができる。すなわち、従来の圧縮機を設計変更することなく流用することが可能である。したがって、本流体機械10は、設計および量産が容易である。
また、本流体機械10の連通管60は、密閉容器17の上側に固定された密閉容器11の底部を形成する下シェル11cと、密閉容器17の上部を形成する上シェル17bとに架け渡されている。これにより、オイル溜まり16とオイル溜まり18とを連通させる連通管60を短く形成することができる。そのため、オイル溜まり16,18間におけるオイルの移動が円滑になり、オイルの過不足をより迅速に解消することができる。また、連通管60を容易に形成することができるため、流体機械10および冷凍サイクル装置1の低コスト化を実現することができる。なお、本発明に係る連通路は、連通管60により形成されることに限定されない。例えば、連通管60を設けず、密閉容器11の底部と密閉容器17の上部に孔を設け、これらの孔により連通路を形成してもよい。
また、本流体機械10の密閉容器11と密閉容器17とは、接合部材19によって一体的に接合されている。これにより、密閉容器11と密閉容器17との接合の強度が高くなる。したがって、信頼性の高い冷凍サイクル装置1を得ることができる。
また、本流体機械10の密閉容器11と密閉容器17とは、外径が略等しい。具体的には、密閉容器11の胴シェル11aと密閉容器17の胴シェル17aとの外径が略等しくなる様に形成されている。このことにより、安定した状態で両容器を設置することができる。また、外径が揃っていることにより、密閉容器11,17を接合する接合部材19を複雑な形状にしなくてよい。そのため、密閉容器11と密閉容器17とをより強固に接合することができる。したがって、信頼性の高い冷凍サイクル装置1を提供することができる。
また、本流体機械10の接合部材19は、内径が密閉容器11,17の外径と略等しい略円筒形状に形成されている。このことにより、円筒形状の接合部材19の上部に密閉容器11を嵌め込み、下部に密閉容器17を嵌め込むことにより、両密閉容器11,17を容易に接合することができる。また、密閉容器11,17に係合部を設けることなく接合部材19により密閉容器11,17を接合させることができるため、従来用いていた既存の密閉容器を設計変更することなく用いることができる。また、接合の強度が増し、安定的に接合することができるため、信頼性の高い冷凍サイクル装置1を提供することができる。
また、本流体機械10の接合部材19は、密閉容器11,17よりも熱伝導率の低い材料により構成されている。そのため、接合部材19によって、密閉容器11と密閉容器17との間の熱移動を抑制することができる。
また、本流体機械10の密閉容器11の下シェル11cと密閉容器17の上シェル17bとは接している。そのため、当該接触部分に連通管60を設けることにより、連通管60の長さを短くできる。そのため、オイル溜まり16,18間におけるオイルの移動が円滑になり、オイルの過不足をより効果的に解消することができる。また、連通管60を容易に形成することができるため、流体機械10および冷凍サイクル装置1の低コスト化を促進することができる。
また、本流体機械10によれば、密閉容器17の上部を形成する上シェル17bと、当該上シェル17b上に固定される密閉容器11の底部を形成する下シェル11cとは、耐圧設計の観点から、それぞれ外側に凸状のドーム型形状に形成されている。そのため、密閉容器11と密閉容器17とを上下に配置して接合部材19で接合すると、密閉容器11の下シェル11cの半径方向中央部と密閉容器17の上シェル17bの半径方向中央部とが接することとなる。なお、下シェル11cと上シェル17bとは、当該接触部分以外の部分では接触しない。これにより、下シェル11cと上シェル17bとの間には、隙間空間61が形成される。この隙間空間61は断熱層となる。そのため、本流体機械10によれば、密閉容器11,17間における熱移動量を低減することができる。
なお、下シェル11cおよび上シェル17bの形状はこれに限られない。また、図8に示すように、密閉容器11と密閉容器17とは、互いに接することなく接合部材19により接合されていてもよい。すなわち、密閉容器11の底部と密閉容器17と上部との間に隙間が設けられていてもよい。このような場合においても、密閉容器11と密閉容器17との間の隙間空間が断熱層となり、密閉容器11,17間における熱移動量を低減させることができる。
また、本実施形態では、主圧縮機3からの冷媒は、密閉容器11の内部空間11eへと吐出され、密閉容器11内において、冷媒からオイルが分離される。分離されたオイルは、再びオイル溜まり16に戻る。このように、冷媒に混入したオイルは、密閉容器11内にて冷媒から分離されてオイル溜まり16に戻るため、オイル溜まり16に溜められたオイルの減少が抑制される。一方、副圧縮機2からの冷媒は、密閉容器17内には吐出されずに連絡管70を介して主圧縮機3に導かれる。そのため、密閉容器17内において冷媒中に溶け込んだオイルは、密閉容器11内へ導かれることとなる。その結果、オイル溜まり16内のオイルの減少は抑制されるが、オイル溜まり18に溜められるオイルは減少し易くなる。したがって、前述の効果、すなわち、動力回収機構7にオイルを安定的に供給できるという効果が、より顕著に発揮される。
また、図2では、水力直径が全長よりも小さい連通管60が示されているが、連通管60は、水力直径が全長よりも大きくなる様に形成されていてもよい。このように形成することにより、連通管60内でのオイルの流動抵抗を減少させることができる。したがって、密閉容器11,17間におけるオイルの移動が円滑になり、オイルの過不足を迅速に解消することができる。
また、本実施形態では、密閉容器17内において、副圧縮機2が比較的高温の主圧縮機3寄りに配置されており、比較的低温の動力回収手段5は、副圧縮機2よりも主圧縮機3から離れた位置に配置されている。そのため、圧縮機3から動力回収手段5への熱移動をより防止することができる。そのため、冷凍サイクル装置1のCOPの低下を防止することができる。
なお、動力回収手段5とは異なり、副圧縮機2は多少温度上昇しても大きな問題はない。主圧縮機3から副圧縮機2へ熱移動が生じると、主圧縮機3において冷媒に付与されるエネルギーがそれだけ低下するものの、副圧縮機2へ移動した熱量分だけ、副圧縮機2から吐出される冷媒の温度が上昇する。言い換えれば、主圧縮機3において冷媒に付与されるエネルギーは減少するものの、副圧縮機2において冷媒に付与されるエネルギーは増大し、主圧縮機3に、より高温の冷媒が供給されることとなる。つまり、主圧縮機3から副圧縮機2へ熱移動が生じても、主圧縮機3が冷媒に付与するエネルギーの減少分が、副圧縮機2が冷媒に付与するエネルギーの増加分によって実質的に相殺されるため、冷凍サイクル装置1のCOPは、それほど低下しない。
なお、本実施形態では、副圧縮機2および動力回収手段5がそれぞれ流体圧モータである例について説明したが、副圧縮機2および動力回収手段5のそれぞれが、吸入した冷媒を圧縮または膨張させる工程を行った後に冷媒を吐出するものであってもよい。しかし、副圧縮機2を流体圧モータとすることで、摺動損失や過圧縮損失等を低減することができ、また、動力回収手段5を流体圧モータとすることで、摺動損失や過膨張損失等を低減することができる。
また、流体圧モータは、上記圧縮工程が行われる圧縮機や膨張工程が行われる膨張機と比較して、シンプルな構成を有する。したがって、副圧縮機2および動力回収手段5を流体圧モータとすることで、流体機械10の構成をより簡素化すると共に小型化することができる。その結果、冷凍サイクル装置1のさらなる簡素化、小型化および低コスト化を図ることができる。なお、構成の簡素化、小型化および低コスト化の観点から、副圧縮機2および動力回収手段5は、それぞれロータリ型の流体圧モータであることが特に好ましい。
このように、動力回収機構7を小型化することで、オイル溜まり18の容量を小さくすることも可能となる。それにより、オイル溜まり18に溜められるオイルの量も少なくすることができる。よって、動力回収機構7へより確実にオイルを供給することができる。
また、副圧縮機2および動力回収手段5のそれぞれを流体圧モータで構成することによって、動力回収手段5による回収トルクの波形および副圧縮機2の負荷トルクの波形の両方を、シャフト12の回転角360°を一周期とした略正弦波状にすることができる。その結果、シャフト12が減速せずにスムーズに回転する。よって、エネルギーの回収効率を向上させることができる。また、冷凍サイクル装置1における振動および騒音の発生を抑制することができる。
具体的に、動力回収手段5の第1ピストン21が上死点に位置するタイミングと、副圧縮機2の第2ピストン41が上死点に位置するタイミングとを同期させることにより、負荷トルクの波形と、回収トルクの波形とを相互にあわせることができる。言い換えれば、シャフト12のどのような回転角においても、負荷トルクと回収トルクとの比率が、実質的に一定となる。したがって、シャフトの回転速度ムラを抑制することができる。その結果、冷凍サイクル装置1のエネルギー効率をより向上させることができる。また、シャフトの回転速度ムラを抑制できるので、冷凍サイクル装置1の振動および騒音を抑制することもできる。
より具体的に、本実施形態では、シャフト12に対して第1仕切部材24が配置された方向と、シャフト12に対して第2仕切部材44が配置された方向とを相互に略同一にすると共に、第1ピストン21の第1シリンダ22の中心軸に対する偏心方向と、第2ピストン41の第2シリンダ42の中心軸に対する偏心方向とも相互に略同一にすることによって、動力回収手段5の第1ピストン21が上死点に位置するタイミングと、副圧縮機2の第2ピストン41が上死点に位置するタイミングとを同期させている。このようにすることによって、流体機械10の製造が容易になる。
また、第1ピストン21の第1シリンダ22の中心軸に対する偏心方向と、第2ピストン41の第2シリンダ42の中心軸に対する偏心方向とも相互に略同一にすることによって、シャフト12と、そのシャフト12を軸支する第2閉塞部材13および第3閉塞部材14との間の摩擦力を低減することができる。
詳細には、動力回収手段5の第1ピストン21には、比較的高圧の吸入作動室23aから比較的低圧の吐出作動室23bの方向に向かう差圧力が作用する。同様に、副圧縮機2の第2ピストン41には、比較的高圧の吐出作動室43bから比較的低圧の吸入作動室43aに向かう差圧力が作用する。これらの差圧力は、偏心部12b、12cを介してシャフト12を押し、シャフト12を軸支する第2閉塞部材13および第3閉塞部材14の軸受部に作用する。その結果、シャフト12に対して回転阻害力が生じ、シャフト12の摩耗、軸受部の摩耗が促進される。それに対して、本実施形態では、第1ピストン21と第2ピストン41とで、差圧力の向きが互いに反対方向となっている。このため、第1ピストン21と第2ピストン41との間で、差圧力が相殺する。その結果、シャフト12と、第2閉塞部材13および第3閉塞部材14との間の摩擦力を低減することができる。よって、シャフト12を回転させるために必要な動力を低減することができ、エネルギー回収を向上させることができる。また、シャフト12と、第2閉塞部材13および第3閉塞部材14との摩耗も抑制することができる。
また、本流体機械10の主圧縮機3は、オイル溜まり16よりも上方に設けられており、オイル溜まり16のオイルに浸漬されていない。そのため、オイル溜まり16内のオイルが主圧縮機3によって加熱されることが抑制される。これにより、連通管60を通じてオイル溜まり18に供給される前のオイルの温度上昇を抑制することができるので、連通管60を介してオイル溜まり18内のオイルが加熱されることも抑制でき、主圧縮機3から動力回収手段5への熱移動量を低減させることができる。したがって、冷凍サイクル装置1のCOPの低下を防止することができる。
なお、冷媒として二酸化炭素を用いた場合は、放熱器4における圧力と、蒸発器6における圧力との差が比較的大きくなる。このため、二酸化炭素を冷媒として用いる場合は、本実施形態のように、放熱器4と蒸発器6との間に動力回収手段5を配置することで、比較的大きなエネルギー回収が可能となり、より高いエネルギー効率を実現することができる。
《変形例1》
上記実施形態では、連通管60の開口部60aは、シャフト38の径方向に関して、シャフト38の中心軸Mの真下の位置に配置されている例について説明した。しかし、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図9,10に示すように、開口部60aは、シャフト38の径方向において、シャフト38の中心軸Mからずれた位置に配置されていてもよい。オイル溜まり16内において、シャフト38の中心軸M付近では対流が大きくなる。図10に示すように、オイルポンプ72等(図10参照)が設けられている場合には、特に対流が大きくなる。このような対流が開口部60aの真上で発生すると、比較的高温のオイル溜まり16から比較的低温のオイル溜まり18への熱移動が促進されるおそれがある。しかし、本変形例の構成によれば、開口部60aは中心軸Mからずれた位置に配置される。そのため、シャフト38やオイルポンプ72によって生じる対流による影響を抑制することができる。したがって、このような構成によれば、冷凍サイクル装置1のCOPの低下を防止することができる。
《変形例2》
上記実施形態および変形例1では、密閉容器11と密閉容器17とが直に接している場合について説明した。しかし、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図9に示すように、密閉容器11と密閉容器17との間に断熱材62を設けてもよい。このような構成によれば、密閉容器11,17間における熱移動をさらに低減させることができる。また、上記実施形態および変形例1のように、密閉容器11の下シェル11cと密閉容器17の上シェル17bとが沿わない形状である場合、断熱材62を挟むことにより、密閉容器11,17をより安定的に接合することができる。
《変形例3》
上記実施形態および変形例1,2では、オイル供給部としてのオイルポンプ72を用いて主圧縮機3にオイルを供給する例について説明した。しかし、本発明は、この構成に限定されるものではない。例えば、図9に示すように、オイルポンプ72を設けず、主圧縮機81を電動機8よりもオイル溜まり16寄りに配置し、主圧縮機81をオイル溜まり16に直接浸漬することで、主圧縮機81にオイルを供給するようにしてもよい。この場合、オイルポンプが不要となるので、オイルポンプによって生じるオイル溜まり16におけるオイルの対流を防止することができる。そのため、オイル溜まり16の対流に起因する密閉容器11から密閉容器17への熱移動を防止することができる。なお、主圧縮機81をオイル溜まり16に直接浸漬する場合は、主圧縮機81をロータリ型の圧縮機とすることが好ましい。
《変形例4》
上記実施形態および変形例1〜3では、連通管60が一つだけ設けられた例について説明した。しかし、本発明は、この構成に限定されない。連通管60を複数備えていてもよく、例えば、図10に示すように、連通管60を2つ備えていてもよい。
ところで、動力回収機構7はオイル溜まり18に溜められるオイルに浸漬されている。そのため、動力回収機構7の回転により、オイル溜まり18内のオイルは撹拌される。これにより、オイル溜まり18のオイルに溶け込んだ冷媒は発泡することがある。このような状況下において、連通管60が一つしかないと、例えば、密閉容器11から密閉容器17へオイルが供給される場合、オイル溜まり18内において発泡した冷媒を密閉容器11に戻すことができない。そのため、密閉容器17に冷媒が溜まり、潤滑不良となることがある。
しかし、本変形例のように、連通管60が複数設けられている場合、例えば、一つの連通管60を介して密閉容器11から密閉容器17にオイルを供給すると共に、他の連通管60を介して、密閉容器17内で発泡した冷媒を密閉容器11内に戻すことが可能となる。これにより、冷媒の潤滑不良を解消することができる。したがって、冷凍サイクル装置1の信頼性を向上させることができる。
《変形例5》
上記実施形態および変形例1〜4では、密閉容器11の底部を形成する下シェル11cと密閉容器17の上部を形成する上シェル17bとが、それぞれ外側に凸なドーム型形状に形成されている場合について説明した。しかし、本発明は、この構成に限定されるものではない。下シェル11cと上シェル17bとは、互いに沿う様な形状に形成されていてもよい。下シェル11cと上シェル17bとは、例えば、図10に示すように、互いに平らな表面を有し、当該表面を接触させた上で、接合部材19により接合されることとしてもよい。このように、下シェル11cと上シェル17bとが沿う様に配置されることにより、密閉容器11と密閉容器17とを安定的に接合することができる。したがって、このような構成によれば、冷凍サイクル装置1の信頼性を向上させることができる。
《変形例6》
上記実施形態および変形例1〜5では、密閉容器11と密閉容器17とが上下方向に接合される場合について説明した。しかし、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、図11に示すように、密閉容器11と密閉容器17とは接合されず、水平方向に並べて配置されていてもよい。この場合、密閉容器11と密閉容器17とを、オイル溜まり16に溜められるオイルの油面OLが、動力回収機構7よりも上方に位置する様に配置することが好ましい。このように配置し、オイル溜まり16,18を連通管60で連通させることにより、上記実施形態および変形例1〜6と同様の効果を奏することができる。
《変形例7》
変形例7は、変形例6の連通管60に、図12に示す絞り機構64を設けたものである。本変形例によれば、絞り機構64により、密閉容器11内の圧力と密閉容器17内の圧力とを調整することができる。具体的には、この絞り機構64により、密閉容器17内の圧力が密閉容器11内の圧力未満となる様に調整することができる。これにより、背面空間55(図4参照)の圧力上昇を抑制することができる。したがって、第2仕切部材44と第2ピストン41との間に過剰な圧力が付加されず、第2仕切部材44と第2ピストン41との摩耗を抑制することができる。
《その他の変形例》
冷媒回路9には、高圧側において超臨界圧力とならない冷媒が充填されていてもよい。具体的に、冷媒回路9には、例えば、フロン系冷媒が充填されていてもよい。
上記実施形態および変形例では、冷媒回路9が、主圧縮機3と、放熱器4と、動力回収手段5と、蒸発器6と、副圧縮機2とにより構成されている例について説明したが、冷媒回路9は、上記構成要素以外の構成要素をさらに有するものであってもよい。
《本明細書における用語等の定義》
本明細書において、「オイル」には、鉱油のみならず合成油も含まれる。
「流体圧モータ」とは、冷媒を吸入する吸入工程と、冷媒を吐出する吐出工程とを実質的に連続して行うものをいう。具体的に、流体圧モータでは、冷媒の吸入経路と吐出経路とが同時に閉じられる期間が実質的にない。言い換えれば、流体圧モータは、実質的に全期間にわたって冷媒の吸入経路と吐出経路とのうち少なくとも一方が開放されている。ここで、「吸入経路と吐出経路とが同時に閉じられる期間が実質的にない」とは、トルク変動が生じない程度において瞬間的に吸入経路と吐出経路とが同時に閉じられることを含む概念である。
一方、「膨張機」とは、冷媒を吸入する吸入工程と、吸入した冷媒を膨張させる膨張工程と、膨張した冷媒を吐出する吐出工程とを行うものをいう。つまり、「膨張機」は、吸入工程終了後、一旦作動室を孤立させ、その孤立した作動室で冷媒を膨張させた後に、作動室から冷媒を吐出するものである。