JP5626998B2 - 空気処理機用エアフィルタ濾材 - Google Patents

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本発明は、空気処理機用エアフィルタ濾材に関する。
従来から、空気清浄機や空調機などの空気循環型の空気処理機には、空気を濾過するためにエアフィルタ濾材が用いられている。このような空気処理機用エアフィルタ濾材には、例えば特許文献1に開示されるようなポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」という。)多孔質膜がよく用いられる。
ところで、空気処理機は、煙草が吸われる環境下に設置されることもある。この場合、エアフィルタ濾材に煙草のヤニなどが付着してエアフィルタ濾材の通気性が低下する。このため、エアフィルタ濾材を一定期間ごとに交換する必要がある。
あるいは、洗浄によりエアフィルタ濾材の機能を回復させることができれば、エアフィルタ濾材を洗浄して再使用することも可能である。これを実現するためには、PTFE多孔質膜に撥油処理を施して、煙草のヤニが剥がれやすくすることが考えられる。
しかしながら、従来のPTFE多孔質膜では、撥油処理を施すと、通気度が大きく低下する。空気処理機では、エアフィルタ濾材を速度の速い空気が通過するため、空気処理機用エアフィルタ濾材には特に高い通気度が要求される。
なお、特許文献2には、撥油処理が施されたPTFE多孔質膜を用いた掃除機用エアフィルタ濾材が開示されているが、このエアフィルタ濾材は、PTFE多孔質膜を構成するフィブリルの長さが短く、通気度が低いために、空気処理機用エアフィルタ濾材には適していない。
特公平8−32791号公報 特開2005−253711号公報
本発明は、このような事情に鑑み、通気度が高くかつ洗浄による機能回復性が良好な空気処理機用エアフィルタ濾材を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、撥油処理が施されたPTFE多孔質膜と、前記PTFE多孔質膜の片面に積層された通気性支持材と、を備える空気処理機用エアフィルタ濾材であって、通気度がフラジール数で表示して10cm3/cm2/s〜100cm3/cm2/sの範囲内であり、火のついた40本の煙草が設置された、JEM−1467で規定された測定容器内の空気を、前記PTFE多孔質膜側から2m3/分で30分間通過させた後に、洗剤を吹き付けた上で温水中に浸して洗浄する再生試験を行ったときに、前記再生試験の後に測定したフラジール数が前記再生試験の前に測定したフラジール数の90%以上である、空気処理機用エアフィルタ濾材を提供する。
ここで、フラジール数とは、JIS L 1096に規定されるフラジールテスター法を用いて測定される数値である。
本発明によれば、通気度が高くかつ洗浄による機能回復性が良好な空気処理機用エアフィルタ濾材を得ることができる。
本発明の一実施形態に係る空気処理機用エアフィルタ濾材の断面図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に、本発明の一実施形態に係る空気処理機用エアフィルタ濾材1(以下単に「エアフィルタ濾材1」という。)を示す。このエアフィルタ濾材1は、撥油処理が施されたPTFE多孔質膜2と、PTFE多孔質膜2の片面(図1では下面)に積層された通気性支持材3とを備えている。
PTFE多孔質膜2は、例えば次のようにして作製される。
まず、PTFE微粉末に液状潤滑剤を加えた混合物を押出法および圧延法の少なくとも1つの方法により未焼成状態で所定方向に延びるシート状に成形してシート状成形体を得る。
PTFE微粉末は、特に制限されるものではなく、種々の市販のものを使用できる。例えば、ポリフロンF104(ダイキン工業社製)、フルオンCD−123(旭硝子社製)、テフロン(登録商標)6J(三井・デュポンフロロケミカル社製)などが挙げられる。
液状潤滑剤は、PTFE微粉末を濡らすことができ、蒸発や抽出などの方法によって除去できるものであれば特に制限されるものではない。例えば、炭化水素類の流動パラフィン、ナフサ、トルエン、キシレンが挙げられ、他にもアルコール類、ケトン類、エステル類、フッ素系溶剤が挙げられる。また、これらの2種類以上の混合物を使用してもよい。潤滑剤の添加量は、シート状成形体の成形方法によって異なるが、通常、PTFE微粉末100重量部に対して約5〜50重量部である。
PTFE微粉末に液状潤滑剤を加えた混合物をシート状に成形する方法の一例としては、液状潤滑剤を加えたPTFE微粉末をシリンダーで圧縮し、ラム押出機で押し出してシート状に成形した後に、ロール対で適当な厚み(通常、0.05〜0.5mm)に圧延する。
圧延後は、液状潤滑剤を含んだシート状成形体を、液状潤滑剤が蒸発しない温度、通常は常温でシート状成形体の長手方向と直交する幅方向に予備延伸してもよい。このときの延伸倍率は、1.5〜20倍が好ましい。なお、予備延伸は、液状潤滑剤で満たされた浴槽中で行ってもよい。
その後、加熱法または抽出法によりシート状成形体から液状潤滑剤を除去してシート状成形体を乾燥させる。
次に、液状潤滑剤が除去されたシート状成形体を、通常350〜400℃で長手方向に延伸する。このときの延伸倍率は、40〜200倍が好ましい。40倍よりも低い倍率では、最終的に得られるPTFE多孔質膜中に見られるフィブリル長さが短くなり、平均孔径が小さくなって高い通気性が得られ難くなるからである。また、倍率が高くなりすぎると、シート状成形体の破断が起こり、膜を得ることができない。より好ましい延伸倍率は60〜160倍である。
その後、長手方向に延伸されたシート状成形体を、通常40〜400℃で幅方向に延伸する。このときの延伸倍率は、3〜40倍が好ましい。また、延伸時の温度は、高通気性を得るため、および延伸時の破断を防ぐために、100〜300℃がより好ましい。
工業的には、工程数が少ない方が好ましいが、上記の長手方向および幅方向への延伸を複数回に分けて行ってもよい。また、最初に長手方向に延伸すれば、その後の長手方向または幅方向への延伸順序や組み合わせは特に制限されない。
以上の工程により、フィブリルが長手方向に支配的に伸びた膜構造を有するPTFE多孔質膜2が得られる。このPTFE多孔質膜2では、長手方向におけるフィブリルの長さが100μm以上である。
PTFE多孔質膜2への撥油処理は、表面張力の小さな物質を含む撥油剤をPTFE多孔質膜2に塗布し、これを乾燥することにより行うことができる。撥油剤はPTFE多孔質膜2より表面張力の低い被膜を形成できればよく、例えば、パーフルオロアルキル基を有する高分子を含む撥油剤が好適である。空気処理機用という用途では、撥油剤として特にフッ化アクリレートを用いることが好ましい。撥油剤の塗布は、含浸やスプレーなどで行うことができる。
PTFE多孔質膜2への撥油剤の塗布は、PTFE多孔質膜2単体に対して行ってもよいし、PTFE多孔質膜2に通気性支持材3を積層した後に行ってもよい。例えば、PTFE多孔質膜2に通気性支持材3を積層した積層体を、撥油剤を希釈剤で希釈した撥油処理液に浸した後に乾燥させてもよい。このように、通気性支持材3にも撥油処理が施されていてもよい。
通気性支持材3は、エアフィルタ濾材1の強度を確保する役割を果たす。通気性支持材3は、材質、構造、形態が特に限定されるものではないが、通気性支持材3には、PTFE多孔質膜2より通気性に優れた材料、例えば、不織布、メッシュ(網目状ネット)、その他の多孔質材を用いることができる。ただし、強度、捕集性、柔軟性、作業性の点からは不織布が好ましい。また、通気性支持材3の材質としては、例えば、ポリオレフィレン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)など)、芳香族ポリアミドあるいはこれらの複合材などを用いることができる。
PTFE多孔質膜2と通気性支持材3とを接合する方法は、特に限定されるものではないが、例えば熱ラミネートにより行うことが好ましい。熱ラミネートによりPTFE多孔質膜2上に通気性支持材3を積層するには、熱ロール温度を例えば130〜200℃に加熱し、これを例えば10〜40N/mで押し付けることにより、PTFE多孔質膜2と通気性支持材3とを接合することができる。そのときのライン速度は、熱ロール径や加熱温度もしくは加熱方法により異なるが、例えば5.0〜20.0m/minが好ましい。
さらに、本実施形態のエアフィルタ濾材1は、上述したPTFE多孔質膜2の作成時の延伸倍率や撥油処理などにより、通気度がフラジール数で表示して10cm3/cm2/s〜100cm3/cm2/sの範囲内となるように構成されている。より好ましい通気度は、フラジール数で表示して30cm3/cm2/s〜66cm3/cm2/sの範囲内である。
また、本実施形態のエアフィルタ濾材1では、火のついた40本の煙草が設置された、JEM−1467で規定された測定容器内の空気を、PTFE多孔質膜2側から2m3/分で30分間通過させた後に、洗剤を吹き付けた上で温水中に浸して洗浄する再生試験を行ったときに、前記再生試験の後に測定したフラジール数が前記再生試験の前に測定したフラジール数の90%以上である。
再生試験は、具体的には以下のように行う。
まず、JEM−1467で規定された測定容器内に、火のついた40本の煙草を設置するとともに、エアフィルタ濾材1が吸引部に取り付けられた空気清浄機を設置する。ついで、空気洗浄機を稼働させて、エアフィルタ濾材1を通じて測定容器内の煙草の煙を含む空気を2m3/分で30分間吸引する。その後、エアフィルタ濾材1を空気清浄機から取り外し、取り外したエアフィルタ濾材1を、洗剤(花王社製ハイター)を吹き付けてから10分経過後に50℃の温水中に15分間浸して洗浄する。洗浄後は、エアフィルタ濾材1を乾燥させる。
本実施形態のエアフィルタ濾材1では、長手方向に大きく延伸されたPTFE多孔質膜2に撥油処理が施されているので、通気度が高いだけでなく、洗浄したときに煙草のヤニが剥がれやすい。このため、エアフィルタ濾材1を簡単に洗浄するだけで機能を通気度が高い初期状態近くまで回復させることができ、空気処理機での再使用に好適である。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に何ら制限されるものではない。
(実施例1)
PTFE微粉末(ポリフロンF−104、ダイキン工業社製)100重量部に対して、液状潤滑剤としての炭化水素油(アイソパーM、エッソ石油社製)25重量部を均一に混合し、この混合物を圧縮して予備成型した後に押出機で押し出して所定方向に延びる幅150mmのシート状成形体を得た。このシート状成形体を液状潤滑剤を含んだ状態で金属製圧延ロール間に通して厚さ0.2mmに圧延した。その後、シート状成形体を220℃に加熱することにより液状潤滑剤を除去し、シート状成形体を乾燥させた。このシート状成形体を、360℃で長手方向に100倍の倍率で延伸した後に、150℃で幅方向に10倍の倍率で延伸し、さらに寸法を固定した上で焼成して、PTFE多孔質膜を作製した。
その後、作製したPTFE多孔質膜に、PETおよびPEからなる不織布(目付量70g/m2)を熱ラミネートにより積層した。熱ラミネートでは、熱ロール温度を180℃、ライン速度を10.0m/minとした。
次に、撥油剤として信越化学社製のX−70−029Bを用い、これを重量%で0.5%になるように希釈剤(FSシンナー、信越化学社製)で希釈して撥油処理液を生成した。そして、この撥油処理液を20℃に保ち、この中に、上記のようにして得たPTFE多孔質膜と通気性支持材の積層体を約3秒間完全に浸した後、ゆっくりと引き上げて常温で約1時間放置して乾燥させた。これによりエアフィルタ濾材を得た。
(実施例2)
PTFE多孔質膜を作製する際に、シート状成形体を幅方向に15倍の倍率で延伸した以外は実施例1と同様にしてエアフィルタ濾材を得た。
(比較例1)
PTFE多孔質膜を作製する際に、シート状成形体を、280℃で長手方向に20倍の倍率で延伸した後に、150℃で幅方向に30倍の倍率で延伸した。また、撥油処理液を生成する際に、撥油剤を0.1重量%となるように希釈剤で希釈した。これら以外は実施例1と同様にしてエアフィルタ濾材を得た。
(試験)
実施例および比較例のエアフィルタ濾材に対して、上述した再生試験を行った。この再生試験では、試験前、空気清浄機からエアフィルタ濾材を取り外した後(洗浄前)、および洗浄後に、フラジール数(通気度)の測定を行った。測定は、任意の5点で行い、その平均値を算出した。測定には、JIS L 1096に基づくテクステスト社製のフラジール試験機(FX3300)を用いた。その結果を表1に示す。なお、表1では、再生試験の前のフラジール数に対する再生試験の後のフラジール数を「回復率」として%で表している。
Figure 0005626998
表1から、フィブリルが長手方向に支配的に伸びた膜構造を有するPTFE多孔質膜に撥油処理を施した実施例1,2では、通気度が高いエアフィルタ濾材を得ることができ、このエアフィルタ濾材は洗浄により機能が良好に回復することが分かる。これに対し、フィブリルの長さがそれほど長くない比較例では、得られたエアフィルタ濾材のフラジール数が10cm3/cm2/s未満と低く、再生試験による通気度の回復率も90%に遠く及ばなかった。
1 空気処理機用エアフィルタ濾材
2 PTFE多孔質膜
3 通気性支持材

Claims (3)

  1. 撥油処理が施されたポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と、前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の片面に積層された通気性支持材と、を備える空気処理機用エアフィルタ濾材であって、
    前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜は、ポリテトラフルオロエチレン微粉末に液状潤滑剤を加えた混合物をシート状成形体に成形し、前記成形したシート状成形体から前記液状潤滑剤を除去した後、前記シート状成形体を、延伸温度350〜400℃および延伸倍率40〜200倍で長手方向に延伸し、延伸温度40〜400℃および延伸倍率10〜15倍で幅方向に延伸し、さらに撥油処理して得た多孔質膜であり、
    通気度がフラジール数で表示して10cm3/cm2/s〜100cm3/cm2/sの範囲内であり、
    火のついた40本の煙草が設置された、JEM−1467で規定された測定容器内の空気を、前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜側から2m3/分で30分間通過させた後に、洗剤を吹き付けた上で温水中に浸して洗浄する再生試験を行ったときに、前記再生試験の後に測定したフラジール数が前記再生試験の前に測定したフラジール数の90%以上である、洗浄により再生可能な空気処理機用エアフィルタ濾材。
  2. 前記シート状成形体の幅方向の延伸の延伸温度が100〜300℃である、請求項1に記載の空気処理機用エアフィルタ濾材。
  3. 前記通気度がフラジール数で示して26.4cm 3 /cm 2 /s〜82.3cm 3 /cm 2 /sの範囲内である、請求項1または2に記載の空気処理機用エアフィルタ濾材。
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