JP5624705B2 - タングステン酸アンモニウム溶液の製造方法 - Google Patents
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Description
(イ)モリブデンを含有するタングステン酸溶液を強塩基性イオン交換樹脂に通液してモリブデンを吸着させ、アルカリ溶液で樹脂に付着したタングステンを洗い落とした後に、NaClOを含むNaCl溶液で樹脂からモリブデンを溶離させ、次いで、NaCl溶液を通液して樹脂を再生する(特許文献1)。
(ロ)アルカリ性タングステン酸溶液をpH7〜10になるまで酸処理し、生じた沈殿を濾別し、さらに濾液を塩基性イオン交換剤で分離して濾過し、この濾液を硫化物で処理してチオモリブデン酸塩を生成させ、このチオモリブデン酸塩を硫化物形のイオン交換剤で分離してモリブデンを除去する方法(特許文献2)。
〔1〕タングステン酸ナトリウム溶液に硫化物および硫酸を添加してpH3以下および硫黄濃度0.8g/L以上で該溶液のモリブデンを含む沈殿を生成させ、該沈殿を固液分離してモリブデンを除去した後に、該タングステン酸ナトリウム溶液に空気を吹き込んで該溶液中の残留硫黄を硫化水素ガスにして該溶液から追い出すと共に僅かに残留する硫黄を硫酸イオンにし、この残留硫黄を除去したタングステン酸ナトリウム溶液にアルカリを添加して該溶液のpHを10以上に調整し、この溶液をイオン交換樹脂に通液してタングステン酸イオンを吸着させ、次いで塩化アンモニウムとアンモニア水の混合液を通液してタングステン酸アンモニウム溶液を回収することを特徴とするタングステン酸アンモニウム溶液の製造方法。
〔2〕陽イオン交換膜を用いた隔膜電解を行ってタングステン酸ナトリウム溶液のpHを7〜8に調整した後に、該溶液に硫化物および硫酸を添加してモリブデン含有沈殿を生成させる上記[1]に記載するタングステン酸アンモニウム溶液の製造方法。
〔3〕上記[1]または上記[2]の何れかに記載する方法において、硫酸に代えて酢酸またはフッ酸を添加してモリブデン含有沈殿を生成させるタングステン酸アンモニウム溶液の製造方法。
本発明の製造方法は、タングステン酸ナトリウム溶液に硫化物および硫酸を添加してpH3以下および硫黄濃度0.8g/L以上で該溶液のモリブデンを含む沈殿を生成させ、該沈殿を固液分離してモリブデンを除去した後に、該タングステン酸ナトリウム溶液に空気を吹き込んで該溶液中の残留硫黄を硫化水素ガスにして該溶液から追い出すと共に僅かに残留する硫黄を硫酸イオンにし、この残留硫黄を除去したタングステン酸ナトリウム溶液にアルカリを添加して該溶液のpHを10以上に調整し、この溶液をイオン交換樹脂に通液してタングステン酸イオンを吸着させ、次いで塩化アンモニウムとアンモニア水の混合液を通液してタングステン酸アンモニウム溶液を回収することを特徴とするタングステン酸アンモニウム溶液の製造方法である。
本発明の製造方法を図1、図2に示す。
本発明の処理対象であるモリブデンを含有するタングステン酸ナトリウム溶液は、例えば、タングステン含有超硬質合金スクラップの回収工程や、タングステン鉱石の製錬処理工程において得られるタングステン酸ナトリウム溶液であって、概ねpH14程度のアルカリ性溶液である。
タングステン酸ナトリウム溶液に含まれるモリブデンを除去したタングステン酸ナトリウム精製溶液を回収する工程を以下に説明する。
固液分離後のタングステン酸ナトリウム溶液〔Na2WO4〕のナトリウム塩をアンモニウム塩に交換し、タングステン酸アンモニウム溶液〔(NH4)2WO4〕を回収する工程を以下に説明する。
〔実施例1〕
(1)脱Mo工程
陽イオン交換膜によって陽極槽と陰極槽(100×100×120mm、各容量1.2L、陽極および陰極はSUS304)に区画されたイオン交換膜電解装置を用い、陽極槽にタングステン酸ナトリウム溶液(182g-WO3/L、7.99g-Mo/L)1000mlを入れ、陰極槽に水酸化ナトリウム溶液(1mol/L)1000mlを入れ、5A定電流を通じてイオン交換膜電解を行った。電極面積は0.0056m2(80×70mm)であり、電流密度は892.9A/m2である。この隔膜電解を8時間行ったところ、溶液のpHは開始前の13.76から7.08に低下した。電流効率(Na移動量から算出)は91.8%であった。
このタングステン酸ナトリウム溶液に水硫化ソーダ(濃度70wt%)を30.4g添加し、さらに硫酸(濃度6.5mol/L)36mlを添加してpHを2.86にした。4時間攪拌後、生成した沈殿物を濾過分離してモリブデンを除去したタングステン酸ナトリウム溶液1020mlを得た。この濾液のモリブデン濃度は0.005g/Lであった。
(2)脱S工程
上記脱Mo工程後のタングステン酸ナトリウム溶液に空気を吹き込んでバブリングを12時間行い、溶存する硫黄を液中から除去した。
(3)pH再調整工程
上記脱S工程後のタングステン酸ナトリウム溶液に苛性ソーダを46.5g添加してpHを12.7にした。
(4)イオン交換工程
上記pH再調整工程後のタングステン酸ナトリウム溶液398ml(181g-WO3/L)に純水を加えて希釈し、WO3濃度20g/Lの溶液3.6Lを調製した。この溶液を強塩基性イオン交換樹脂カラム(樹脂量300ml、直径20mm×高さ900mm)に通液した。該カラムには予め苛性ソーダと塩化アンモニウムとアンモニア水の混合液を通液してコンディショニングを行った。タングステン酸ナトリウム溶液の通液速度はカラム中の樹脂量に対する空間速度(SV)1hr-1とし、通液量は3.6L(樹脂量の12倍)とした。次に、純水をSV2hr-1にて0.6L通水した後に、樹脂に吸着したWO3を溶離するため、塩化アンモニウムとアンモニア水の混合液(2mol/Lの塩化アンモニウムと40g/LのNH3水の混合水)をSV2hr-1にて0.6L通液してタングステン酸アンモニウム溶液を回収した。その後に純水をSV2hr-1にて0.6L通水してカラムを洗浄した。
(5)結果
回収したタングステン酸アンモニウム溶液について、WO3回収量は41.2gであり、樹脂1Lに対するWO3吸着量は137g/L-Rであった。
(1)脱Mo工程
タングステン酸ナトリウム溶液(183g-WO3/L、7.94g-Mo/L)1000mlに水硫化ソーダ(濃度70wt%)を30.3g添加し、さらに硫酸(濃度6.5mol/L)110mlを添加してpHを13.72から2.90に調整した。これを4時間攪拌後、生成した沈殿物を濾過分離してモリブデンを除去したタングステン酸ナトリウム溶液1101mlを得た。この濾液のモリブデン濃度は0.004g/Lであった。
(2)脱S工程
上記脱Mo工程後のタングステン酸ナトリウム溶液に空気を吹き込んでバブリングを12時間行い、溶存する硫黄を液中から除去した。
(3)pH再調整工程
上記脱S工程後のタングステン酸ナトリウム溶液に苛性ソーダを46.1g添加してpHを12.7にした。
(4)イオン交換工程
上記pH再調整工程後のタングステン酸ナトリウム溶液431ml(167g-WO3/L)に純水を加えて希釈し、WO3濃度20g/Lの溶液3.6Lを調製した。この溶液を強塩基性イオン交換樹脂カラム(樹脂量300ml、直径20mm×高さ900mm)に通液した。該カラムには予め苛性ソーダと塩化アンモニウムとアンモニア水の混合液を通液してコンディショニングを行った。タングステン酸ナトリウム溶液の通液速度はカラム中の樹脂量に対する空間速度(SV)1hr-1とし、通液量は3.6L(樹脂量の12倍)とした。次に、純水をSV2hr-1にて0.6L通水した後に、樹脂に吸着したWO3を溶離するため、塩化アンモニウムとアンモニア水の混合液(2mol/Lの塩化アンモニウムと40g/LのNH3水の混合水)をSV2hr-1にて0.6L通液してタングステン酸アンモニウム溶液を回収した。その後に純水をSV2hr-1にて0.6L通水してカラムを洗浄した。
(5)結果
回収したタングステン酸アンモニウム溶液について、WO3回収量は33.6gであり、樹脂1Lに対するWO3吸着量は112g/L-Rであった。
(1)脱Mo工程
タングステン酸ナトリウム溶液(184g-WO3/L、7.95g-Mo/L)1000mlに水硫化ソーダ(濃度70wt%)を30.3g添加し、さらに塩酸(濃度12mol/L)120mlを添加してpHを13.71から2.80にした。これを4時間攪拌後、生成した沈殿物を濾過分離してモリブデンを除去したタングステン酸ナトリウム溶液1115mlを得た。この濾液のモリブデン濃度は0.009g/Lであった。
(2)脱S工程
上記脱Mo工程後のタングステン酸ナトリウム溶液に空気を吹き込んでバブリングを12時間行い、溶存する硫黄を液中から除去した。
(3)pH再調整工程
上記脱S工程後のタングステン酸ナトリウム溶液に苛性ソーダを46.4g添加してpHを12.7にした。
(4)イオン交換工程
上記pH再調整工程後のタングステン酸ナトリウム溶液436ml(165g-WO3/L)に純水を加えて希釈し、WO3濃度20g/Lの溶液3.6Lを調製した。この溶液を実施例1と同様の条件でイオン交換を行いタングステン酸アンモニウム溶液を回収した。
〔イオン交換処理:強塩基性イオン交換樹脂カラム(樹脂量300ml、直径20mm×高さ900mm)に通液した。該カラムには予め苛性ソーダと塩化アンモニウムとアンモニア水の混合液を通液してコンディショニングを行った。タングステン酸ナトリウム溶液の通液速度はカラム中の樹脂量に対する空間速度(SV)1hr-1とし、通液量は3.6L(樹脂量の12倍)とした。次に、純水をSV2hr-1にて0.6L通水した後に、樹脂に吸着したWO3を溶離するため、塩化アンモニウムとアンモニア水の混合液(2mol/Lの塩化アンモニウムと40g/LのNH3水の混合水)をSV2hr-1にて0.6L通液してタングステン酸アンモニウム溶液を回収した。その後に純水をSV2hr-1にて0.6L通水してカラムを洗浄した。〕
(5)結果
回収したタングステン酸アンモニウム溶液について、WO3回収量は23.4gであり、樹脂1Lに対するWO3吸着量は78g/L-Rであった。
(1)脱Mo工程
タングステン酸ナトリウム溶液(182g-WO3/L、7.85g-Mo/L)1000mlに水硫化ソーダ(濃度70wt%)を29.9g添加し、さらに、硝酸(濃度13mol/L)を112ml添加してpHを13.71から2.75にした。これを4時間攪拌後、生成した沈殿物を濾過分離してモリブデンを除去したタングステン酸ナトリウム溶液1104mlを得た。この濾液のモリブデン濃度は0.010g/Lであった。
(2)脱S工程
上記脱Mo工程後のタングステン酸ナトリウム溶液に空気を吹き込んでバブリングを12時間行い、溶存する硫黄を液中から除去した。
(3)pH再調整工程
上記脱S工程後のタングステン酸ナトリウム溶液に苛性ソーダを46.4g添加してpHを12.7にした。
(4)イオン交換工程
上記pH再調整後のタングステン酸ナトリウム溶液439ml(164g-WO3/L)に純水を加えて希釈し、WO3濃度20g/Lの溶液3.6Lを調製した。この溶液を実施例1と同様の条件でイオン交換を行いタングステン酸アンモニウム溶液を回収した。
〔イオン交換処理:強塩基性イオン交換樹脂カラム(樹脂量300ml、直径20mm×高さ900mm)に通液した。該カラムには予め苛性ソーダと塩化アンモニウムとアンモニア水の混合液を通液してコンディショニングを行った。タングステン酸ナトリウム溶液の通液速度はカラム中の樹脂量に対する空間速度(SV)1hr-1とし、通液量は3.6L(樹脂量の12倍)とした。次に、純水をSV2hr-1にて0.6L通水した後に、樹脂に吸着したWO3を溶離するため、塩化アンモニウムとアンモニア水の混合液(2mol/Lの塩化アンモニウムと40g/LのNH3水の混合水)をSV2hr-1にて0.6L通液してタングステン酸アンモニウム溶液を回収した。その後に純水をSV2hr-1にて0.6L通水してカラムを洗浄した。〕
(5)結果
回収したタングステン酸アンモニウム溶液について、WO3回収量は18.8gであり、樹脂1Lに対するWO3吸着量は62g/L-Rであった。
Claims (3)
- タングステン酸ナトリウム溶液に硫化物および硫酸を添加してpH3以下および硫黄濃度0.8g/L以上で該溶液のモリブデンを含む沈殿を生成させ、該沈殿を固液分離してモリブデンを除去した後に、該タングステン酸ナトリウム溶液に空気を吹き込んで該溶液中の残留硫黄を硫化水素ガスにして該溶液から追い出すと共に僅かに残留する硫黄を硫酸イオンにし、この残留硫黄を除去したタングステン酸ナトリウム溶液にアルカリを添加して該溶液のpHを10以上に調整し、この溶液をイオン交換樹脂に通液してタングステン酸イオンを吸着させ、次いで塩化アンモニウムとアンモニア水の混合液を通液してタングステン酸アンモニウム溶液を回収することを特徴とするタングステン酸アンモニウム溶液の製造方法。
- 陽イオン交換膜を用いた隔膜電解を行ってタングステン酸ナトリウム溶液のpHを7〜8に調整した後に、該溶液に硫化物および硫酸を添加してモリブデン含有沈殿を生成させる請求項1に記載するタングステン酸アンモニウム溶液の製造方法。
- 請求項1または請求項2の何れかに記載する方法において、硫酸に代えて酢酸またはフッ酸を添加してモリブデン含有沈殿を生成させるタングステン酸アンモニウム溶液の製造方法。
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