JP5624447B2 - 放射線検出装置及びシンチレータパネルの製造方法 - Google Patents

放射線検出装置及びシンチレータパネルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、光射出側に柱状結晶が複数立設されたシンチレータパネル、シンチレータパネルから射出された光を検出する光検出部を含む放射線検出装置と、シンチレータパネルの製造方法とに関する。
近年、照射されたX線やγ線、α線等の放射線を検出し、照射放射線量の分布を表す放射線画像のデータへ直接変換して出力するFPD(Flat Panel Detector)が実用化されている。また、FPD等の放射線検出装置と、画像メモリを含む電子回路及び電源部を内蔵し、放射線検出装置から出力される放射線画像データを画像メモリに記憶する可搬型の放射線検出パネル(以下、電子カセッテともいう)も実用化されている。放射線検出パネルは可搬性に優れているので、ストレッチャーやベッドに載せたまま被撮影者を撮影できると共に、放射線検出パネルの位置を変更することで撮影部位の調整も容易であるため、動けない被撮影者を撮影する場合にも柔軟に対処することができる。
上記放射線検出装置として、例えば、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板(以下、TFT基板と呼ぶ)からなる光検出部の上に、CsI:Tl、GOS(Gd2O2S:Tb)等のシンチレータ(蛍光体層)のパネルを配置した間接変換方式の放射線検出装置が知られている。シンチレータは、照射された放射線を光に変換し、光検出部は、TFT基板に設けられたPD(Photodiode)等からなる画素により、シンチレータが発生した光を電荷に変換して蓄積する。
間接変換方式の放射線検出装置には、放射線入射側からシンチレータ、光検出部を順に配置したPSS(Penetration Side Sampling)方式と、このPSS方式とは逆に、放射線入射側から光検出部、シンチレータを順に配置したISS(Irradiation Side Sampling)方式とがある。ISS方式の放射線検出装置は、光検出部を透過した放射線をシンチレータによって光に変換し、その光をPDによって光電変換している。シンチレータの膜厚方向の発光量は、放射線の入射側が出射側に比べて大きいので、ISS方式はPSS方式に比べて高解像度化に有利である。
特許文献1には、CsIからなるシンチレータを、光射出側に柱状結晶が複数立設された構成とした放射線検出装置が開示されている。このシンチレータでは、放射線の照射により柱状結晶内で発生した光は、柱状結晶のライトガイド効果によって柱状結晶中を進行していくので、シンチレータから射出される光の散乱が抑制されるため、照射された放射線を画像として検出する場合に、検出画像の鮮鋭度の低下を抑制できる。
なお、CsIからなるシンチレータの柱状結晶領域の充填率は、柱状結晶領域の厚みにも依存するが、例えば70〜85%程度が最適である。これは、充填率が70%以下ではシンチレータの発光量が少なくなり、充填率が85%以上では、柱状結晶領域がある厚み以上となったときに柱状結晶同士が接触するためである。柱状結晶同士が接触すると、柱状結晶中を進行する光の一部が接触している他の柱状結晶へ移る現象(この現象はクロストークともいう)が生じてしまう。このクロストークが、光検出部の画素の境界付近で発生した場合、本来とは異なる他の画素に光が入射してしまうため、画像のボケが引き起こされる。従って、隣り合う柱状結晶の間には、適当な大きさの隙間(空隙)が設けられている。
放射線検出装置に関連し、特許文献1には、シンチレータを覆う保護フイルムに柱状結晶の先端部分の一部を埋め込み、シンチレータの防湿性を向上させた構成が開示されている。特許文献2には、シンチレータと光検出部との間に、着色材を含有した樹脂からなる光遮蔽体を配置し、シンチレータから発生した拡散光を光遮蔽体により遮蔽する構成が開示されている。特許文献3には、柱状結晶の外部に透過して斜めに進行する光を遮る斜入光カット層を、シンチレータと光検出部との間に設けた構成が記載されている。また、特許文献4は、放射線増加スクリーンに関する発明であり、放射線検出パネルに関するものではないが、蛍光体、蛍光体を保護する保護層または蛍光体を接着する接着剤層のいずれかを着色材によって着色することにより、蛍光体の発光ピーク波長よりも長波長域の光を吸収する構成が開示されている。
国際公開WO 2010/029779号公報 特開2008−185393号公報 特開2009−047520号公報 特開昭62−110199号公報
図13に示すように、柱状結晶100a内で発生した光は、柱状結晶100aの外部との界面101に入射するが、このとき、界面101に入射する光の入射角度が、光が全反射される臨界角θcを超えている場合、光は柱状結晶100a内で全反射しながら光検出部の画素に向かって進んでいく。これに対し、柱状結晶100aの界面101に対する入射角度θxが臨界角θc以内の光102は、一部が柱状結晶100aの外部へ透過し、隣接する柱状結晶100bに入射する場合がある。柱状結晶100bの界面101から出射を透過した光102は、界面101で屈折が発生して進行方向が変化するが、この角度変化は、波長の短い光102aほど大きく、波長の長い光102bほど小さい。したがって、柱状結晶100bに透過した波長の長い光102bは、柱状結晶100bの界面で全反射せずに再度透過してしまう確率が高くなり、離れた位置まで到達しやすくなる。
上述したように、光が柱状結晶を透過していく現象が光検出器の画素の境界付近で発生した場合、上述したクロストークと同様に、本来光が入射すべき画素とは異なる他の画素に光が入射してしまうため、画像のボケが引き起こされる。特に、マンモグラフィに用いられる放射線検出装置は、一般撮影用の放射線検出装置に比べて画素サイズが小さいため、柱状結晶を透過して入射する光の影響が大きい。また、ISS方式の放射線検出装置は、柱状結晶の先端部が主な発光領域となるため、柱状結晶間を透過する光が多くなると画像のボケにつながりやすい。
特許文献2では、拡散光を遮蔽することができるが、全波長域の光を遮蔽するため、光取出し量が減少してしまう。特許文献3では、画素を跨いで入射する光を遮蔽することができるが、画素に合わせて斜入光カット壁を配置するのが難しい。また、シンチレータと光検出部との間に斜入光カット壁を配置した状態で、両者を固定するのが難しいという問題もある。また、特許文献4は、長波長域の光を吸収できるが、波長の長い光を全て吸収するため、光取出し量が低下してしまう。
本発明の目的は、シンチレータの柱状結晶で発生した光が、柱状結晶を透過して他の画素に入射するのを防止することにある。
上記課題を解決するために、本発明の放射線検出装置は、複数立設された柱状結晶を有し、照射された放射線を吸収して柱状結晶が複数立設された光射出側から光を射出するシンチレータと、柱状結晶の間に埋め込まれ、シンチレータが発生した光から所定の波長域成分の少なくとも一部を吸収する光吸収層とを有するシンチレータパネルと、このシンチレータパネルの光射出側に配置され、シンチレータの光射出側から射出された光を検出する光検出部とを備えており、柱状結晶と光吸収層との間に空隙を設けたものである。
光吸収層は、柱状結晶の先端部分の間に埋め込まれていることが好ましい。
光吸収層は、シンチレータよりも屈折率が低い樹脂と、樹脂内に混ぜられた着色材とから構成している。着色材には、シンチレータが発生した光から、所定の波長域成分の少なくとも一部を吸収する顔料、または染料を用いるのが好ましい。更に、光吸収層は、シンチレータの発光ピーク波長よりも長波長側の成分の少なくとも一部を吸収することが好ましい。
光検出部をシンチレータの放射線照射側に配置し、光検出部を透過した放射線をシンチレータに照射させてもよい。また、シンチレータとして、ヨウ化セシウムを用いてもよい。
本発明のシンチレータパネルの製造方法は、柱状結晶が複数立設されたシンチレータの柱状結晶の先端上に、柱状結晶が放射線を吸収して発生した光から、所定の波長域成分の少なくとも一部を吸収する着色材が混ぜられた樹脂シートを重ねる工程と、柱状結晶と樹脂シートとを相対的に押圧し、柱状結晶の間に樹脂シートを埋め込む工程と、樹脂シート及びシンチレータを加熱し、樹脂シートを硬化させ、かつ柱状結晶を熱膨張させる工程と、樹脂シート及びシンチレータの加熱を停止させ、元の体積に戻った柱状結晶と樹脂シートとの間に空隙を設ける工程と、を含むものである。
樹脂シートに混ぜられる着色材は、シンチレータの発光ピーク波長よりも長波長側の成分の少なくとも一部を吸収するような特性を有することが好ましい。
本発明の放射線検出装置によれば、シンチレータの柱状結晶の間に光吸収層を埋め込んだので、柱状結晶内から柱状結晶の外に出射した所定の波長域成分の光を吸収することができる。特に、光吸収層により、柱状結晶の外に出射して遠くまで透過する可能性が高い長波光を吸収できるので、柱状結晶の外に出射した光が本来入射すべき画素とは異なる画素に入射して画像のボケを引き起こすのを防止することができる。
光吸収層は、柱状結晶の先端部分の間に埋め込んでいるので、柱状結晶の先端部を除く大部分で、柱状結晶の光を伝達するライトガイド効果を維持することができる。柱状結晶と光吸収層との間に空隙を設けたので、柱状結晶の全域でライトガイド効果を維持することができる。また、柱状結晶の先端を光吸収層から露呈させているので、柱状結晶内を全反射した所定の波長域成分を吸収せずに画素に入射させることができる。光吸収層は、樹脂と、顔料あるいは染料等の着色剤とからなるので、ローコストに適用が可能である。
また、シンチレータと光検出部とを、光検出部を透過した放射線がシンチレータに入射されるように配置した放射線検出器では、柱状結晶の外に透過する光が多くなると画像のボケが発生しやすくなるが、光吸収層によりこれを効果的に防止することができる。
本発明のシンチレータパネルの製造方法によれば、シンチレータの柱状結晶間に、簡単に光吸収層を埋め込むことができる。また、柱状結晶と光吸収層との間の空隙も、柱状結晶の熱膨張を用いて簡単に形成することができる。
本発明を実施した電子カセッテを一部破断して示す斜視図である。 電子カセッテの概略断面図である。 シンチレータパネルの構成の一例を示す概略図である。 柱状結晶から出射される光の経路を模式的に示したシンチレータパネルの概略図である。 CsI:Tlの発光特性を示すグラフである。 長波吸収層が厚すぎる不的確なシンチレータパネルの概略図である。 長波吸収層の製造手順を模式的に示す概略図である。 柱状結晶に長波吸収層が埋め込まれていない不的確な状態を示す概略断面図である。 光検出部の構成を模式的に示した断面図である。 電子カセッテの電気系の要部構成を示すブロック図である。 コンソール及び放射線発生装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。 柱状結晶と長波吸収層との間に空隙を設けたシンチレータパネルを模式的に示す概略図である。 従来のシンチレータ内での光の経路を模式的に示す概略図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。図1には、本発明に係る放射線検出パネルの一例としての電子カセッテ10が示されている。電子カセッテ10は、放射線を透過させる材料からなり、全体形状がおよそ箱形で、矩形状の上面が、被撮影者の体を透過した放射線が照射される照射面11とされた筐体12を備えている。なお、筐体12のうち、照射面11が設けられている天板13以外の部分は、例えばABS樹脂等から構成され、天板13は例えばカーボン等から構成される。これにより、天板13による放射線の吸収を抑制しつつ、天板13の強度が確保される。なお、筐体12の厚みは、照射された放射線を感光材料に画像として記録する構成の旧来のカセッテにおける筐体の厚みと同サイズとされている。
電子カセッテ10の照射面11には、複数個のLEDからなり、電子カセッテ10の動作モード(例えば「レディ状態」や「データ送信中」等)やバッテリの残容量等の動作状態を表示するための表示部15が設けられている。なお、表示部15はLED以外の発光素子で構成してもよいし、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示手段で構成してもよい。また、表示部15は照射面11以外の部位に設けてもよい。
電子カセッテ10の筐体12内には、被撮影者の体を透過した放射線の到来方向に沿って、照射面11側から、光検出部17、シンチレータパネル18等が順に配置されている。また、筐体12の内部には、照射面11の長手方向に沿った一端側に、マイクロコンピュータを含む各種の電子回路や、充電可能かつ着脱可能なバッテリ(二次電池)を収容するケース19が配置されている。光検出部17を含む電子カセッテ10の各種電子回路は、ケース19内に収容されたバッテリから供給される電力によって作動する。ケース19内に収容された各種電子回路が放射線の照射に伴って損傷することを回避するため、筐体12内のうちケース19の照射面11側には鉛板等からなる放射線遮蔽部材が配設されている。
図2に示すように、光検出部17は全面に亘って天板13の内面に接着等によって貼り付けられている。また、光検出部17とシンチレータパネル18との間は、貼り合わされることなく当接されており、周縁部のみが全周に亘り、柔軟性を有する固定剤21によって固定されている。筐体12内の底面には、基台22が取付けられており、基台22の天板の下面には、制御基板23が取付けられている。制御基板23と光検出部17とは、フレキシブルケーブル24を介して電気的に接続されている。なお、光検出部17とシンチレータパネル18とは、貼り合わされていてもよい。
次に、シンチレータパネル18について説明する。図3に示すように、シンチレータパネル18は、蒸着基板26、蒸着基板26上に設けられたシンチレータ27、シンチレータ27の上部に設けられた長波吸収層28から構成されている。長波長吸収層28は、本発明の光吸収層に相当する。
シンチレータ27は、被撮影者の体を透過して筐体12の照射面11に照射され、天板13及び光検出部17を透過して照射された放射線を吸収して光を放出する。一般に、シンチレータとしては、例えばCsI:Tl(タリウムを添加したヨウ化セシウム))や、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、GOS(Gd2O2S:Tb)等の材料を用いることができる。
ただし、本実施形態では、シンチレータ27として、蒸着基板26にCsI:Tlを蒸着することにより、放射線入射側かつ光検出部17側に複数の柱状結晶30からなる柱状結晶領域を形成し、シンチレータ27の放射線入射側と反対側に非柱状結晶31からなる非柱状結晶領域を形成している。蒸着基板26としては、耐熱性の高い材料が望ましく、例えば低コストという観点からアルミニウムが好適である。なお、本実施形態に係るシンチレータ27は、柱状結晶30の平均径が柱状結晶30の長手方向に沿っておよそ均一とされている。
シンチレータ27で発生された光は、柱状結晶30のライトガイド効果によって柱状結晶30内を進行し、光検出部17へ射出される。その際に、光検出部17側へ射出される光の拡散が抑制されるので、電子カセッテ10によって検出される放射線画像のボケが抑制される。また、シンチレータ27の深部(非柱状結晶領域)に到達した光は、非柱状結晶31によって光検出部17側へ反射されるので、光検出部17に入射される光の光量(シンチレータ27で発光された光の検出効率)が向上する。
なお、シンチレータ27の放射線入射側に位置する柱状結晶領域の厚みをt1とし、シンチレータ27の蒸着基板26側に位置する非柱状結晶領域の厚みをt2としたときに、t1とt2が下記の関係式(1)を満たすことが好ましい。
0.01≦(t2/t1)≦0.25・・・(1)
柱状結晶領域の厚みt1と非柱状結晶領域の厚みt2とが上記関係式を満たすことで、発光効率が高く光の拡散を防止する領域(柱状結晶領域)と、光を反射する領域(非柱状結晶領域)とのシンチレータ27の厚み方向に沿った比率が好適な範囲となる。これにより、シンチレータ27の発光効率、シンチレータ27で発光された光の検出効率、及び、放射線画像の解像度が向上する。なお、非柱状結晶領域の厚みt2が厚過ぎると発光効率の低い領域が増え、電子カセッテ10の感度の低下に繋がることから、(t2/t1)は0.02以上かつ0.1以下の範囲であることがより好ましい。
上記構成のシンチレータにおいて、シンチレータ27中の柱状結晶形成領域におけるCsIの充填率には適切な範囲があり、柱状結晶形成領域の厚みにも依存するが、例えば70〜85%程度が最適である。すなわち、CsIの充填率が過小(例えば70%未満)になるとシンチレータ27の発光量の低下が顕著になる一方、CsIの充填率が過大に(例えば85%よりも高く)なると、ある厚み以上では隣り合う柱状結晶30が接触し、クロストークが発生する。クロストークが発生すると、シンチレータ27への放射線照射量のパターンに対してシンチレータ27からの光の射出光量のパターンが変化し、放射線検出精度の低下(照射された放射線を画像として検出する場合は検出画像の鮮鋭度の低下)が引き起こされる。従って、放射線検出の感度及び精度を確保するために、隣り合う柱状結晶30の間に適当な大きさの間隙(空隙)が生じる充填率が好適である。
柱状結晶30の光射出側には、柱状結晶30の先端部分の間に埋め込まれた長波吸収層28が設けられている。図4に示すように、長波吸収層28は、柱状結晶30の先端が露呈されるように、柱状結晶30の先端部分の間に埋め込まれており、シンチレータ27で発生された光のうち、柱状結晶30を透過して柱状結晶30の外に出射した波長の長い光を吸収する。図5に示すように、CsI:Tlが発生する光は、発光ピーク波長が565nmであるが、幅広い波長域(400nm〜700nm)の光を含んでいる。本実施形態における波長の長い光とは、シンチレータ27の発光ピーク波長565nmよりも長い波長域であり、例えば、620〜630nm以上の波長域の光を表している。
長波吸収層28は、硬化性樹脂と、この硬化性樹脂中に分散された着色材とから構成されている。硬化性樹脂としては、柱状結晶30のライトガイド効果を有効に利用するため、CsIの屈折率1.8よりも低い屈折率を有し、かつ長波光成分以外の光を光検出部17に向けて透過させるため、透明性の高い材質であることが望ましい。このような材質の具体的な特性としては、例えば、硬化後の樹脂の透過率が550nmの波長で80%以上、更に屈折率が1.8よりも低いことが好ましく、例えば、フッ素系あるいはシリコーン系樹脂の、熱硬化性樹脂あるいは紫外線硬化性樹脂を用いることができる。
長波吸収層28に用いる着色材は、赤色の長波光成分を吸収するため、青色の着色材が用いられる。また、着色材としては、硬化性樹脂中に粒子として分散される顔料の他、硬化性樹脂中に溶けて混在される染料を用いてもよい。無機青色顔料としては、例えば、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄)等が好ましい。また、有機青色顔料としては、フタロシアニン、アントラキノン、インジゴイド、カルボニウム等を用いることができる。
長波吸収層28の厚みTは、光検出部17の画素サイズによって異なる。例えば、150〜300μm程度の一般撮影用の画素サイズでは、長波吸収層28の厚みTは、10〜100μm程度が好ましい。また、50〜70μm程度のマンモグラフィ用の画素サイズでは、長波吸収層28の厚みTは、5〜30μm程度が好ましい。なお、図6に示すように、長波吸収層28の厚みTが厚すぎるのは好ましくない。これは、長波吸収層28が厚すぎる場合、柱状結晶30の間に空気よりも屈折率が大きな樹脂が存在することになるため、柱状結晶30の光ガイド効果が低下してしまうからである。
長波吸収層28は、好ましくは、長波光成分の50%程度を吸収することが好ましい。そのため、長波光成分の吸収目標に応じて、硬化性樹脂中に含有する着色材の材質や量、長波吸収層28の厚み等を決定するのが好ましい。なお、長波光成分の吸収量が50%以下であっても、長波光成分を少しでも吸収すれば、画像ボケを防止する効果を得ることができる。
次に、長波吸収層28の製造方法について説明する。図7(A)に示すように、例えば、柔軟なプラスチック等からなる支持体34上に、例えばシリコーン系の熱硬化性樹脂に着色材を混入したゲル状樹脂35を塗布した接合用シート36を形成する。そして、ゲル状樹脂35が柱状結晶30の上に重ねられるように、接合用シート36をシンチレータ27の上に載置する。
図7(B)に示すように、接合用シート36の支持体34の全域を均一な押圧力でシンチレータ27に押し付け、柱状結晶30の先端部をゲル状樹脂35内に埋め込む。例えば、接合用シート36と同程度の大きさを有する押圧板によって、接合用シート36の全域を同時に押圧してもよいし、接合用シート36上で転動される押圧ローラにより押圧してもよい。支持体34を押圧する押圧力としては、図4に示すように、柱状結晶30の先端部がゲル状樹脂35から露呈される強さであることが好ましい。支持体34の押圧力が強すぎる場合、柱状結晶30が破損してしまう。また、支持体34の押圧力が弱い場合、図8に示すように、柱状結晶30の先端部は、ゲル状樹脂35内に適切に押し込まれない。この場合、長波吸収層28により、シンチレータ27で発生された全ての光から長波光成分が吸収されてしまうので、柱状結晶30の先端部をゲル状樹脂35内に適切に押し込むことが必要である。
接合用シート36の押圧と同時に、接合用シート36が加熱され、硬化される。この加熱温度は、使用する熱硬化性樹脂によるが、例えば100〜150°C程度である。なお、紫外線硬化性樹脂を用いた場合には、接合用シート36の加熱に代えて、紫外線照射が行なわれる。
図7(C)に示すように、接合用シート36から支持体34を剥離し、シンチレータ27の上にゲル状樹脂35のみを残存させる。これにより、柱状結晶30の先端部分の間には、長波吸収層28が形成される。なお、接合用シート36は、支持体34を剥離しやすくするため、支持体34とゲル状樹脂35との間に剥離層を設けてもよい。本実施形態では、支持体34を剥離しているが、支持体34を残しておいてもよい。また、シンチレータパネル18を覆う保護フイルム38の内側にゲル状樹脂35の層を形成し、保護フイルム38によってシンチレータパネル18を覆うときに、ゲル状樹脂35を柱状結晶30の先端部分の間に埋め込んでもよい。
シンチレータパネル18の周囲は、保護フイルム38によって覆われている。保護フイルム38は、大気中の水分に対してバリア性を有する材料が用いられ、例えば熱CVD法、プラズマCVD法等の気相重合で得られる有機膜が用いられる。有機膜としては、ポリパラキシリレン製樹脂の熱CVD法によって形成された気相重合膜、または含フッ素化合物不飽和炭化水素モノマーのプラズマ重合膜不飽和炭化水素モノマーのプラズマ重合膜が用いられる。また有機膜と無機膜の積層構造を用いることも出来、無機膜の材料としては、例えば、窒化珪素(SiNx)膜、酸化珪素(SiOx)膜、酸窒化珪素(SiOxNy)膜、Al2O3等が好適である。
次に、光検出部17について説明する。光検出部17は、シンチレータ27の光射出側から射出された光を検出するものであり、図9に示すように、フォトダイオード(PD:PhotoDiode)等からなる光電変換部40、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)41及び蓄積容量42を備えた画素部43が、図4に示すように、平板状で平面視における外形形状が矩形状とされた絶縁性基板44上にマトリクス状に複数形成されたTFTアクティブマトリクス基板(以下、「TFT基板」という)によって構成されている。
なお、本実施形態では、シンチレータパネル18の放射線照射面側に光検出部17が配置されているが、シンチレータと光検出部をこのような位置関係で配置する方式は「表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)」と称する。シンチレータは放射線入射側がより強く発光するので、シンチレータの放射線入射側に光検出部を配置する表面読取方式(ISS)は、シンチレータの放射線入射側と反対側に光検出部を配置する「裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)」よりも光検出部とシンチレータの発光位置とが接近することから、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高く、また光検出部の受光量が増大することで、結果として放射線検出パネル(電子カセッテ)の感度が向上する。
光電変換部40は、下部電極40aと上部電極40bとの間に、シンチレータ27から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換膜40cが配置されて構成されている。なお、下部電極40aは、シンチレータ27から放出された光を光電変換膜40cに入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ27の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。なお、下部電極40aとしてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、90%以上の光透過率を得ようとすると抵抗値が増大し易くなるため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO、TiO、ZnO等を用いることが好ましく、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からITOが最も好ましい。なお、下部電極40aは、全画素部共通の一枚構成としてもよいし、画素部毎に分割してもよい。
また、光電変換膜40cはシンチレータ27から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。光電変換膜40cを構成する材料は光を吸収して電荷を発生する材料であればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料等を用いることができる。光電変換膜40cをアモルファスシリコンで構成した場合、シンチレータ27から放出された光を広い波長域に亘って吸収するように構成することができる。但し、アモルファスシリコンからなる光電変換膜40cの形成には蒸着を行う必要があり、絶縁性基板44が合成樹脂製である場合、絶縁性基板44の耐熱性が不足する可能性がある。
一方、光電変換膜40cは、有機光電変換材料を含む材料で構成した場合は、主に可視光域で高い吸収を示す吸収スペクトルが得られ、光電変換膜40cによるシンチレータ27から放出された光以外の電磁波の吸収が殆ど無くなるので、X線やγ線等の放射線が光電変換膜40cで吸収されることで発生するノイズを抑制できる。また、有機光電変換材料からなる光電変換膜40cは、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料を被形成体上に付着させることで形成させることができ、被形成体に対して耐熱性は要求されない。このため、本実施形態では、光電変換部40の光電変換膜40cを有機光電変換材料で構成している。
光電変換膜40cを有機光電変換材料で構成した場合、光電変換膜40cで放射線が殆ど吸収されないので、放射線が透過するように光検出部17が配置される表面読取方式(ISS)において、光検出部17を透過することによる放射線の減衰を抑制することができ、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。従って、光電変換膜40cを有機光電変換材料で構成することは、特に表面読取方式(ISS)に好適である。
光電変換膜40cを構成する有機光電変換材料は、シンチレータ27から放出された光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ27の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ27の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ27から放出された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ27の放射線に対する発光ピーク波長との差が10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ27の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜40cで発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
放射線検出パネルに適用可能な光電変換膜40cについて具体的に説明する。放射線検出パネルにおける電磁波吸収/光電変換部位は、電極40a,40bと、該電極40a,40bに挟まれた光電変換膜40cを含む有機層である。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び、層間接触改良部位等を積み重ねるか、若しくは混合することで形成することができる。
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質を有する有機化合物である。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物である。従って、ドナー性有機化合物としては、電子供与性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容し易い性質を有する有機化合物である。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物である。従って、アクセプター性有機化合物は、電子受容性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。
有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料や、光電変換膜40cの構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
また、光電変換部40は、少なくとも電極対40a,40bと光電変換膜40cを含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜及び正孔ブロッキング膜の少なくとも何れかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
電子ブロッキング膜は、上部電極40bと光電変換膜40cとの間に設けることができ、上部電極40bと下部電極40aとの間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極40bから光電変換膜40cに電子が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。電子ブロッキング膜には電子供与性有機材料を用いることができる。実際に電子ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜40cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜40cの材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIp、若しくはそれより小さいIpを有するものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
電子ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部40の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
正孔ブロッキング膜は、光電変換膜40cと下部電極40aとの間に設けることができ、上部電極40bと下部電極40aとの間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極40aから光電変換膜40cに正孔が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。正孔ブロッキング膜には電子受容性有機材料を用いることができる。実際に正孔ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜40cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜40cの材料の電子親和力(Ea)と同等のEa、若しくはそれより大きいEaを有するものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
正孔ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部40の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
なお、光電変換膜40cで発生した電荷のうち、正孔が下部電極40aに移動し、電子が上部電極40bに移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜の位置を逆にすれば良い。また、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜は両方設けることは必須ではなく、何れかを設けておけば、或る程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
TFT41は、ゲート電極、ゲート絶縁膜及び活性層(チャネル層)が積層され、更に活性層上にソース電極とドレイン電極が所定の間隔を隔てて形成されている。活性層は、例えばアモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかにより形成することができるが、活性層を形成可能な材料はこれらに限定されるものではない。
活性層を形成可能な非晶質酸化物としては、例えば、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。なお、活性層を形成可能な非晶質酸化物はこれらに限定されるものではない。
また、活性層を形成可能な有機半導体材料としては、例えば、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報で詳細に説明されているため、説明を省略する。
TFT41の活性層を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかによって形成すれば、X線等の放射線を吸収せず、或いは吸収したとしても極めて微量に留まるため、ノイズの発生を効果的に抑制することができる。
また、活性層をカーボンナノチューブで形成した場合、TFT41のスイッチング速度を高速化することができ、また、TFT41における可視光域の光の吸収度合いを低下させることができる。なお、活性層をカーボンナノチューブで形成する場合、活性層にごく微量の金属性不純物が混入しただけでTFT41の性能が著しく低下するため、遠心分離等により非常に純度の高いカーボンナノチューブを分離・抽出して活性層の形成に用いる必要がある。
なお、有機光電変換材料で形成した膜及び有機半導体材料で形成した膜は何れも十分な可撓性を有しているので、有機光電変換材料で形成した光電変換膜40cと、活性層を有機半導体材料で形成したTFT41と、を組み合わせた構成であれば、患者の体の重みが荷重として加わる光検出部17の高剛性化は必ずしも必要ではなくなる。
また、絶縁性基板44は光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものであればよい。ここで、TFT41の活性層を構成する非晶質酸化物や、光電変換部40の光電変換膜40cを構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、絶縁性基板44としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、合成樹脂製の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このような合成樹脂製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。なお、絶縁性基板44には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
なお、アラミドは200度以上の高温プロセスを適用できるため、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドはITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて基板を薄型化できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して絶縁性基板44を形成してもよい。
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂とを複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラ
ス基板等と比べて絶縁性基板44を薄型化できる。
絶縁性基板44としてガラス基板を用いた場合、光検出部17全体としての厚みは、例えば0.7mm程度になるが、本実施形態では電子カセッテ10の薄型化を考慮し、絶縁性基板44として、光透過性を有する合成樹脂からなる薄型の基板を用いている。これにより、光検出部17全体としての厚みを、例えば0.1mm程度に薄型化できると共に、光検出部17に可撓性をもたせることができる。また、光検出部17に可撓性をもたせることで、電子カセッテ10の耐衝撃性が向上し、電子カセッテ10に衝撃が加わった場合にも破損し難くなる。また、プラスチック樹脂や、アラミド、バイオナノファイバ等は何れも放射線の吸収が少なく、絶縁性基板44をこれらの材料で形成した場合、絶縁性基板44による放射線の吸収量も少なくなるため、表面読取方式(ISS)により光検出部17を放射線が透過する構成であっても、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
なお、電子カセッテ10の絶縁性基板44として合成樹脂製の基板を用いることは必須ではなく、電子カセッテ10の厚さは増大するものの、ガラス基板等の他の材料からなる基板を絶縁性基板44として用いるようにしてもよい。
また、図10に示すように、光検出部17には、一定方向(行方向)に沿って延設され個々のTFT41をオンオフさせるための複数本のゲート配線46と、前記一定方向と交差する方向(列方向)に沿って延設され、蓄積容量42(及び光電変換部40の下部電極40aと上部電極40bの間)に蓄積された電荷をオン状態のTFT41を介して読み出すための複数本のデータ配線47が設けられている。また、図9に示すように、光検出部17のうち、放射線の到来方向と反対側の端部には、TFT基板上を平坦にするための平坦化層48が形成されている。また、光検出部17と天板13との間には接着層49が設けられており、光検出部17は接着層49によって天板13に貼り付けられている。
光検出部17の個々のゲート配線46はゲート線ドライバ51に接続されており、個々のデータ配線47は信号処理部52に接続されている。被撮影者の体を透過した放射線(被撮影者の体の画像情報を担持した放射線)が電子カセッテ10に照射されると、シンチレータ27のうち照射面11上の各位置に対応する部分からは、前記各位置における放射線の照射量に応じた光量の光が放出され、個々の画素部43の光電変換部40では、シンチレータ27のうちの対応する部分から放出された光の光量に応じた大きさの電荷が発生され、この電荷が個々の画素部43の蓄積容量42(及び光電変換部40の下部電極40aと上部電極40bの間)に蓄積される。
上記のようにして個々の画素部43の蓄積容量42に電荷が蓄積されると、個々の画素部43のTFT41は、ゲート線ドライバ51からゲート配線46を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT41がオンされた画素部43の蓄積容量42に蓄積されている電荷は、アナログの電気信号としてデータ配線47を伝送されて信号処理部52に入力される。従って、個々の画素部43の蓄積容量42に蓄積された電荷は行単位で順に読み出される。
信号処理部52は、個々のデータ配線47毎に設けられた増幅器及びサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線47を伝送された電気信号は増幅器で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。
信号処理部52には画像メモリ54が接続されており、信号処理部52のA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ54に順に記憶される。画像メモリ54は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ54に順次記憶される。
画像メモリ54は電子カセッテ10全体の動作を制御するカセッテ制御部56と接続されている。カセッテ制御部56はマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPU56a、ROM及びRAMを含むメモリ56b、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュ
メモリ等からなる不揮発性の記憶部56cを備えている。
また、カセッテ制御部56には無線通信部58が接続されている。無線通信部58は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部56は、無線通信部58を介してコンソール62(図11参照)と無線通信が可能とされており、コンソール62との間で各種情報の送受信が可能とされている。
また、電子カセッテ10には電源部60が設けられており、上述した各種電子回路(ゲート線ドライバ51や信号処理部52、画像メモリ54、無線通信部58、カセッテ制御部56等)は電源部60と各々接続され(図示省略)、電源部60から供給された電力によって作動する。電源部60は、電子カセッテ10の可搬性を損なわないように、前述のバッテリ(二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種電子回路へ電力を供給する。ゲート線ドライバ51、信号処理部52、画像メモリ54、カセッテ制御部56、無線通信部58及び電源部60は、上述したケース19内、もしくは制御基板23に設けられている。
図11に示すように、コンソール62はコンピュータからなり、装置全体の動作を司るCPU64、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM65、各種データを一時的に記憶するRAM66、及び、各種データを記憶するHDD67を備え、これらはバスを介して互いに接続されている。またバスには、通信I/F部68及び無線通信部69が接続され、ディスプレイ70がディスプレイドライバ71を介して接続され、更に、操作パネル72が操作入力検出部73を介して接続されている。
通信I/F部68は接続端子62a、通信ケーブル75及び放射線発生装置76の接続端子76aを介して放射線発生装置76と接続されている。コンソール62(のCPU64)は、放射線発生装置76との間での曝射条件等の各種情報の送受信を通信I/F部68経由で行う。無線通信部69は電子カセッテ10の無線通信部58と無線通信を行う機能を備えており、コンソール62(のCPU64)は電子カセッテ10との間で、画像データ等の各種情報の送受信を無線通信部69経由で行う。また、ディスプレイドライバ71はディスプレイ70への各種情報を表示させるための信号を生成・出力し、コンソール62(のCPU64)はディスプレイドライバ71を介して操作メニューや撮影された放射線画像等をディスプレイ70に表示させる。また、操作パネル72は複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される。操作入力検出部73は操作パネル72に対する操作を検出し、検出結果をCPU44へ通知する。
また、放射線発生装置76は、放射線源78と、コンソール62との間で曝射条件等の各種情報の送受信を行う通信I/F部79と、コンソール62から受信した曝射条件(この曝射条件には管電圧、管電流の情報が含まれている)に基づいて放射線源78を制御する線源制御部80と、を備えている。
次に本実施形態の作用を説明する。電子カセッテ10を使用して放射線画像の撮影を行う場合、撮影者(例えば放射線技師等)は、被撮影者の撮影対象部位と基台との間に、照射面11側を上方へ向けた電子カセッテ10を挿入し、向きや位置等を調整する準備作業を行う。
撮影者は、準備作業が完了すると、操作パネル72を操作して撮影開始を指示する。これにより、コンソール62では、曝射開始を指示する指示信号を放射線発生装置76へ送信し、放射線発生装置76は放射線源78から放射線を射出させる。放射線源78から射出された放射線は、被撮影者の体を透過して電子カセッテ10の照射面11に照射され、天板13及び光検出部17を透過してシンチレータ27の照射/光射出面に照射される。シンチレータ27は照射/光射出面に照射された放射線を吸収し、吸収した放射線量に応じた光量の光を射出する。
図4に示すように、柱状結晶30内で発生した光L1は、柱状結晶30の外部との界面33に入射する。このとき、界面33に入射する光L1の入射角度θaが、光が全反射される臨界角θcを超えている場合、光L1は柱状結晶30内で全反射しながら光検出部17に向かって進行していく。柱状結晶30内を進行した光L1は、柱状結晶30の長波吸収層28から露呈されている先端部を通って光検出部17の画素部43aに入射する。
臨界角θcは、柱状結晶30の屈折率をn1、柱状結晶30の間に存在する隙間に存在する空気の屈折率をn2としたときに、下記式(2)により求めることができる。例えば、CsIの屈折率が1.8、空気の屈折率が1であるとき、臨界角θcはおよそ34°となる。
θc=sin−1(n2/n1)・・・(2)
上記に対し、柱状結晶30の界面33に対する入射角度が臨界角θc以内の光L2は、一部が柱状結晶30aの外部へ透過し、隣接する柱状結晶30bに入射する場合がある。柱状結晶30aを透過した光L2は、界面33で屈折が発生して進行方向が変化する。例えば、柱状結晶30aの外部へ透過した光L2の界面33への入射角度がθ1であり、界面33から出射する出射角度がθ2であり、透過した光が隣接する柱状結晶30bの界面33から出射する出射角度がθ3であるとき、これらの角度θ1〜θ3には、θ1>θ2<θ3の関係が生じる。また、θ1に対するθ3の角度変化は、波長の短い光L2aほど大きく、波長の長い光L2bほど小さい。したがって、柱状結晶30bへ透過した光L2うち、波長が長い光L2bは、柱状結晶30bの界面33で全反射せずに再度透過してしまう確率が高くなる。
なお、図4では、柱状結晶30の充填率を高く(例えば、80%)した場合を示している。そのため、柱状結晶30間の間隔Sは、柱状結晶の柱径Dに比べて非常に短いので、柱状結晶30間の光の経路は、波長に関わらず同一と見なしている。
上述したように、波長が長い光L2bは、屈折による角度変化が小さいため、離れた位置まで到達しやすくなる。従来は、光が柱状結晶30を透過していく現象が光検出部17の画素部43の境界付近で発生した場合に、本来入射すべき画素とは異なる他の画素に長い波長の光が入射してしまい、画像のボケが引き起こされるという問題があった。しかし、本実施形態では、柱状結晶30の先端部分の間に埋め込まれている長波吸収層28により、波長の長い光L2bを吸収するので、光L2bが本来入射すべき画素部43aの隣の画素部43bに入射することはない。
また、柱状結晶30の先端部は、長波吸収層28から露呈されているので、柱状結晶30内を全反射してきた光L1は、この露呈部分を通って光検出部17の画素部43aに入射することができる。これにより、柱状結晶30内を全反射した光L1の光量が低下することはない。また、長波吸収層28は、画像のボケの原因となる長波光成分のみを吸収し、その他の波長域の光は透過するので、光量の低下を発生させることなく、画質を向上することができる。
光検出部17は、画素部43に照射された光を画像として検出する。そして、光検出部17による検出結果は画像信号として読み出され、画像データへ変換されてコンソール62へ送信される。
次に本発明の他の態様を説明する。柱状結晶30の間に長波吸収層28が埋め込まれている部分では、樹脂の屈折率が1.4程度と空気よりも大きいため、柱状結晶30内の光が全反射するための臨界角θcが約51°となり、空気の場合の臨界角34°よりも大きくなる。そのため、上記実施形態では、柱状結晶30のライトガイド効果をできるだけその先端部分まで発揮させるため、柱状結晶30の先端部分の間にのみ長波吸収層28を埋め込んでいる。しかしながら、図12に示すように、各柱状結晶30と長波吸収層28との間に空隙Gを設けるとともに、長波吸収層28の厚みを厚くしてもよい。これによれば、柱状結晶30のライトガイド効果は、空隙G内に存在する空気によって、その先端まで維持することができる。また、長波吸収層28を厚くすることにより、柱状結晶30の深部で柱状結晶30の外に透過した光も吸収することができる。これにより、シンチレータ27内の光の斜行による画像のボケをより効果的に防止することができる。
次に、柱状結晶30と長波吸収層28との間に空隙Gを形成する方法について説明する。シンチレータ27に用いているCsIは、熱膨張率が約50PPMと高いが、電子カセッテ10により撮影を行なう際のCsIの温度は、熱膨張するほど高くはない。例えば、図7(B)に示したように、柱状結晶30の間に埋め込まれたゲル状樹脂35を加熱して硬化させる際に、シンチレータ27も一緒に加熱して熱膨張させる。これにより、ゲル状樹脂35は、熱膨張した柱状結晶30の外形に合わせて硬化されて長波吸収層28となるため、温度が低下して体積が元に戻った柱状結晶30と長波吸収層28との間には、柱状結晶30の熱膨張の分だけ空隙Gが形成される。このように、空隙Gを簡単に形成し、長波吸収層28による波長の長い光の吸収効果を高めることができる。
上記実施形態では、光吸収層により、シンチレータの発光ピーク波長よりも長波長側の成分を吸収するようにしたが、着色材の選択により、長波長成分以外の波長域の光を吸収するように構成してもよい。また、ISS方式の放射線検出装置を例に説明したが、本発明は、PSS方式の放射線検出装置にも適用が可能である。放射線検出装置を電子カセッテに組み込む例について説明したが、立位型、臥位型の撮影装置や、マンモグラフィ装置等の様々な放射線用撮影装置に組み込むことも可能である。その他、上記の実施形態で説明した本発明に係る放射線検出パネルとしての電子カセッテ10の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
10 電子カセッテ
17 光検出部
18 シンチレータパネル
27 シンチレータ
28 長波吸収層
30 柱状結晶
34 支持体
35 ゲル状樹脂
36 接合用シート
43 画素部
G 空隙
θc 臨界角

Claims (10)

  1. 複数立設された柱状結晶を有し、照射された放射線を吸収して前記柱状結晶が複数立設された光射出側から光を射出するシンチレータと、前記柱状結晶の間に埋め込まれ、前記シンチレータが発生した光から所定の波長域成分の少なくとも一部を吸収する光吸収層と、を有するシンチレータパネルと、
    前記シンチレータパネルの前記光射出側に配置され、前記シンチレータの前記光射出側から射出された光を検出する光検出部とを備えており、
    前記柱状結晶と前記光吸収層との間に空隙を設けたことを特徴とする放射線検出装置。
  2. 前記光吸収層は、前記柱状結晶の先端部分の間に埋め込まれていることを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
  3. 前記柱状結晶の先端は、前記光吸収層から露呈されていることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線検出装置。
  4. 前記光吸収層は、前記シンチレータよりも屈折率が低い樹脂と、前記樹脂内に混ぜられた着色材とを含むことを特徴とする請求項1〜いずれか1項に記載の放射線検出装置。
  5. 前記着色材は、前記シンチレータが発生した光から、所定の波長域成分の少なくとも一部を吸収する顔料、または染料であることを特徴とする請求項に記載の放射線検出装置。
  6. 前記光吸収層は、前記シンチレータの発光ピーク波長よりも長波長側の成分の少なくとも一部を吸収することを特徴とする請求項1〜いずれか1項に記載の放射線検出装置。
  7. 前記光検出部は、前記シンチレータの放射線照射側に配置されており、前記シンチレータには、前記光検出部を透過した放射線が照射されることを特徴とする請求項1〜いずれか1項に記載の放射線検出装置。
  8. 前記シンチレータは、ヨウ化セシウムからなることを特徴とする請求項1〜いずれか1項に記載の放射線検出装置。
  9. 柱状結晶が複数立設されたシンチレータの前記柱状結晶の先端上に、前記シンチレータが放射線を吸収して発生した光から、所定の波長域成分の少なくとも一部を吸収する着色材が混ぜられた樹脂シートを重ねる工程と、
    前記柱状結晶と前記樹脂シートとを相対的に押圧し、前記柱状結晶の間に前記樹脂シートを埋め込む工程と、
    前記樹脂シート及び前記シンチレータを加熱し、前記樹脂シートを硬化させ、かつ前記柱状結晶を熱膨張させる工程と、
    前記樹脂シート及び前記シンチレータの加熱を停止させ、元の体積に戻った前記柱状結晶と前記樹脂シートとの間に空隙を設ける工程と、
    を含むことを特徴とするシンチレータパネルの製造方法。
  10. 前記着色材は、前記シンチレータの発光ピーク波長よりも長波長側の成分の少なくとも一部を吸収することを特徴とする請求項に記載のシンチレータパネルの製造方法。
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