JP2012132768A - 放射線検出パネル及びシンチレータの製造方法 - Google Patents

放射線検出パネル及びシンチレータの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光射出側に柱状結晶が複数立設されたシンチレータを含み、筐体の天板に荷重が加わると隣り合う柱状結晶の間隔が変化する構成において、周辺部の柱状結晶同士が接触することを抑制する。
【解決手段】放射線の照射により光を発生するシンチレータ27は、蒸着基板26の一方の面に複数立設された柱状結晶30を有する。シンチレータ27は、電子カセッテの筐体内に収められており、筐体の天板に荷重が加わったときに、その荷重を受けて周縁部27bが中央部27aよりも大きく歪むが、周縁部27bの柱状結晶30間の隙間L2は、中央部27aの柱状結晶30間の隙間L1よりも広くなっているので、周縁部27bが大きく歪んでも、周縁部27bの柱状結晶30の先端同士が接触して破損することはない。
【選択図】図5

Description

本発明は、光射出側に柱状結晶が複数立設されたシンチレータ、及びシンチレータから射出された光を検出する光検出部を含む放射線検出パネルと、シンチレータの製造方法とに関する。
近年、照射されたX線やγ線、α線等の放射線を検出し、照射放射線量の分布を表す放射線画像のデータへ直接変換して出力するFPD(Flat Panel Detector)が実用化されている。また、FPD等の放射線検出器と、画像メモリを含む電子回路及び電源部を内蔵し、放射線検出器から出力される放射線画像データを画像メモリに記憶する可搬型の放射線検出パネル(以下、電子カセッテともいう)も実用化されている。放射線検出パネルは可搬性に優れているので、ストレッチャーやベッドに載せたまま被撮影者を撮影できると共に、放射線検出パネルの位置を変更することで撮影部位の調整も容易であるため、動けない被撮影者を撮影する場合にも柔軟に対処することができる。
上記放射線検出装置として、例えば、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板(以下、TFT基板と呼ぶ)からなる光検出部の上に、CsI:Tl、GOS(Gd2O2S:Tb)等のシンチレータ(蛍光体層)のパネルを配置した間接変換方式の放射線検出装置が知られている。シンチレータは、照射された放射線を光に変換し、光検出部は、TFT基板に設けられたPD(Photodiode)等からなる画素により、シンチレータが発生した光を電荷に変換して蓄積する。
特許文献1には、CsIからなるシンチレータを、光射出側に柱状結晶が複数立設された構成とした放射線検出装置が開示されている(図21(A)参照)。このシンチレータでは、放射線の照射により柱状結晶内で発生した光は、柱状結晶のライトガイド効果によって柱状結晶中を進行していくので、シンチレータから射出される光の散乱が抑制されるため、照射された放射線を画像として検出する場合に、検出画像の鮮鋭度の低下を抑制できる。上記構成のシンチレータにおいて、シンチレータ中の柱状結晶形成領域におけるCsIの充填率には適切な範囲があり、柱状結晶形成領域の厚みにも依存するが、例えば70〜85%程度が最適である。したがって、CsIの充填率を最適範囲とした場合、隣り合う柱状結晶の間には非常に小さな隙間が設けられる。
ところで、CsIからなるシンチレータはAl(アルミニウム)等からなる蒸着基板に蒸着することで形成され、光検出部はガラス等からなる基板上に形成されるが、Alとガラスは熱膨張率が大きく相違している(例えばAlの熱膨張率=30PPM程度に対し、ガラスの熱膨張率=3PPM程度)。このため、シンチレータから射出された光の検出効率の向上等を目的としてシンチレータと光検出部とを全面にわたって貼り合せた場合、図21(B)に示すように、温度変化に伴い、熱膨張率の相違を原因としてシンチレータ及び光検出部に反りが生じると共に、シンチレータの柱状結晶に大きな応力が加わるので、経時的に柱状結晶の破損等が生ずる恐れがある。これを回避するためには、シンチレータと光検出部とを貼り合わせることなく当接させ、シンチレータと光検出部との周縁部を、柔軟性を有する固定材で固定する構成が考えられている。
一方、放射線検出パネルについては、取扱性の向上等を目的として、シンチレータ及び光検出部を含むパネルを、箱形の筐体の天板の内面に貼り付けた状態で筐体内に収容することで、放射線検出パネルの薄型化を実現する構成が検討されている。
放射線検出装置に関連し、特許文献1には、TFT基板とその上に重ねられたシンチレータパネルとを接着剤によって接着する際に、シンチレータパネルに押し当てたローラにより、シンチレータパネルの周辺部の柱状結晶が破損するのを防止するため、周辺部の柱状結晶を中央部の柱状結晶よりも太くすることが開示されている。特許文献2には、シンチレータの内部応力によりシンチレータパネルとTFT基板との剥がれや、反りが発生するのを防止するため、シンチレータのTFT基板の画素に対面しない部分の充填率を、画素に対面する部分の充填率よりも低くすることが開示されている。
特開2003−066147号公報 特開2007−173544号公報
上述したように、シンチレータ及び光検出部を含むパネルを、箱形の筐体の天板の内面に貼り付けた構成では、例えば放射線画像の撮影に際して撮影台と被撮影者の体との間に放射線検出パネルが挿入された等の場合に、被撮影者の体の重みが筐体の天板に荷重として加わって天板が撓み、この撓みがシンチレータ及び光検出部に伝達されることで、シンチレータ及び光検出部に歪みが生ずる。更に、柱状結晶の破損等を回避するために、シンチレータと光検出部とを貼り合わせることなく当接させ、シンチレータと光検出部との周縁部を固定材により固定している場合には、図22に示すように、シンチレータの周縁部の動きが固定材により規制されるので、シンチレータの中央部よりも周縁部のほうが大きく歪むことが分かっている。
図21(C)に示すように、シンチレータと光検出部とが貼り合わされていない場合、個々の柱状結晶の先端部の位置が光検出部に対して移動可能となるので、シンチレータ及び光検出部の歪みにより、柱状結晶の先端部付近における隣り合う柱状結晶の間隙が大きく変化する。同図は、柱状結晶を模式的に示しているが、前述のように、シンチレータ中の柱状結晶形成領域におけるCsIの適切な充填率は70〜85%程度であるので、実際の柱状結晶間の隙間は非常に小さい。そのため、シンチレータの周縁部では、シンチレータの歪みに伴い、柱状結晶の先端同士が接触することがある。
CsIは、硬くて脆いという機械的特性を有するため、柱状結晶の先端同士が接触することによって、柱状結晶に割れや折れ等の破損が生じることがある。柱状結晶が破損すると、シンチレータへの放射線照射量のパターンに対してシンチレータからの光の射出光量のパターンが変化し、放射線検出精度の低下(照射された放射線を画像として検出する場合は検出画像の鮮鋭度の低下)が引き起こされる。
これに対して特許文献1、2には、シンチレータが天板の撓みによって歪んだときに、シンチレータの隣り合う柱状結晶の先端部同士が接触し、柱状結晶に割れや折れ等の破損が生じることがある、という課題について何ら開示がなく、上記課題を解決するための構成についても何ら記載されていない。
本発明は上記事実を考慮してなされたもので、光射出側に柱状結晶が複数立設されたシンチレータを含み、筐体の天板に荷重が加わると隣り合う柱状結晶の間隔が変化する構成において、周辺部の柱状結晶同士が接触することを抑制できる放射線検出パネルを得ることが目的である
上記課題を解決するために、本発明の放射線検出パネルは、放射線が照射される面に、荷重を受けて撓みを生じる天板が設けられた筐体と、筐体内に収容され、複数立設された柱状結晶を有し、照射された放射線を吸収して柱状結晶が複数立設された光射出側から光を射出するとともに、天板の撓みによって歪みを生じるシンチレータと、筐体内でシンチレータの光射出側に配置され、シンチレータの光射出側から射出された光を検出する光検出部とを含み、柱状結晶間の隙間は、柱状結晶が設けられている面内の中央部よりも、中央部の外周に配された周縁部のほうが広くなるようにしたものである。
周縁部の柱状結晶間の隙間は、天板の撓みによって前記シンチレータが歪んだときに、、隣り合う柱状結晶の先端同士が接触しない広さを有することが好ましい。
光検出部とシンチレータの前記光射出側との間は、貼り合わせされることなく当接されていることが好ましい。また、光検出部とシンチレータの光射出側との間は、中心部のみが貼り合わされていてもよい。更に、シンチレータ及び光検出部は各々平板状とされ、天板におよそ平行な方向への相対移動が阻止されるように各々の周縁部が固定されていることが好ましい。また、光検出部は、シンチレータの放射線照射側に配置されており、シンチレータには、光検出部を透過した放射線が照射されるように構成してもよい。
周縁部の柱状結晶を、中央部の柱状結晶よりも太くしてもよい。また、シンチレータは、柱状結晶間の隙間が異なるようにされた複数枚の小サイズシンチレータから構成してもよい。複数枚の小サイズシンチレータは、柱状結晶が設けられた支持基板の側面にそれぞれ設けられた凸部及び凹部の嵌合によって接合してもよい。
光検出部が形成された平板状の支持体が可撓性を有していることが好ましい。また、光検出部を構成する光電変換部が有機光電変換材料を含む材料からなり、光検出部を構成するスイッチング素子の活性層が有機半導体材料を含む材料からなることが好ましい。
本発明のシンチレータの製造方法は、蒸着基板の一方の面に、中央部よりも周縁部の相対密度が低くなるように蛍光体を蒸着して下地層を形成する工程と、下地層の上に蛍光体を蒸着することにより蛍光体の柱状結晶を形成し、下地層の相対密度差により、周縁部の柱状結晶間の隙間を中央部の柱状結晶間の隙間よりも広くする工程と、を含むものである。
また、シンチレータの別の製造方法は、蒸着基板の中央部よりも周縁部の温度が高くなるように加熱する工程と、蒸着基板の一方の面に蛍光体を蒸着することにより蛍光体の柱状結晶を形成し、蒸着基板の温度差により、周縁部の柱状結晶を中央部の柱状結晶よりも太くし、かつ周縁部の柱状結晶間の隙間を中央部の柱状結晶間の隙間よりも広くする工程と、を含むものである。
本発明の放射線検出パネルによれば、シンチレータの周縁部の柱状結晶間の隙間を中央部よりも広くしたので、筐体の天板に加えられた荷重によってシンチレータの周縁部が中央部よりも大きく歪んだときでも、周縁部の柱状結晶同士が接触して破損するのを防止することができる。また、周縁部の柱状結晶間の隙間は、天板の撓みによってシンチレータが歪んだときでも先端同士が接触しない広さとしているので、周縁部の柱状結晶は破損しない。
また、シンチレータ及び光検出部の周縁部が固定されている場合、光検出部とシンチレータの光射出側との間が貼り合わせされることなく当接されている場合には、シンチレータの周縁部の歪みが大きくなり、シンチレータが歪んだときに柱状結晶の先端が動きやすくなるが、このような場合でも周縁部の柱状結晶の破損を防止することができる。
また、周縁部の柱状結晶の太さを中央部よりも太くしたので、周縁部の柱状結晶間の隙間を広くしても、周縁部の発光量を中央部と同程度にすることができる。更に、シンチレータを複数枚の小サイズシンチレータにより構成したので、中央部と周縁部とで柱状結晶間の隙間が異なるシンチレータを比較的容易に構成することができる。
本発明のシンチレータの製造方法によれば、周縁部の柱状結晶間の隙間を中央部よりも広くしたシンチレータや、更には、周縁部の柱状結晶の太さを中央部よりも太くしたシンチレータを簡単に形成することができる。
第1実施形態の電子カセッテを一部破断して示す斜視図である。 第1実施形態の電子カセッテの概略断面図である。 第1実施形態のシンチレータパネルの構成の一例を示す概略図である。 第1実施形態のシンチレータの柱状結晶間の隙間の分布を示す平面図である。 第1実施形態のシンチレータの柱状結晶間の隙間の分布を示す側面図である。 周縁部の柱状結晶間の隙間と、天板に加えられた荷重との関係を示すグラフである。 第1実施形態のシンチレータを製造するシンチレータ製造装置を模式的に示す概略図である。 光検出部の構成を模式的に示した断面図である。 電子カセッテの電気系の要部構成を示すブロック図である。 コンソール及び放射線発生装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。 第2実施形態のシンチレータの柱状結晶間の隙間及び太さの分布を示す平面図である。 第2実施形態のシンチレータの柱状結晶間の隙間及び太さの分布を示す側面図である。 第2実施形態のシンチレータを製造するシンチレータ製造装置を模式的に示す概略図である。 第3実施形態のシンチレータを示す平面図である。 第3実施形態のシンチレータの概略断面図である。 第4実施形態の電子カセッテの概略断面図及び平面図である。 第5実施形態の電子カセッテの概略断面図である。 第6実施形態の電子カセッテの展開状態を示す概略図である。 第6実施形態の電子カセッテの収納状態を示す概略図である。 第7実施形態の電子カセッテを示す概略図である。 従来のシンチレータの柱状結晶の状態を模式的に示す概略図である。 従来のシンチレータの歪みかたを模式的に示す概略図である。
[第1実施形態]
図1には、本発明に係る放射線検出パネルの一例としての電子カセッテ10が示されている。電子カセッテ10は、放射線を透過させる材料からなり、全体形状がおよそ箱形で、矩形状の上面が、被撮影者の体を透過した放射線が照射される照射面11とされた筐体12を備えている。なお、筐体12のうち、照射面11が設けられている天板13以外の部分は、例えばABS樹脂等から構成され、天板13は例えばカーボン等から構成される。これにより、天板13による放射線の吸収を抑制しつつ、天板13の強度が確保される。なお、筐体12の厚みは、照射された放射線を感光材料に画像として記録する構成の旧来のカセッテにおける筐体の厚みと同サイズとされている。
電子カセッテ10の照射面11には、複数個のLEDからなり、電子カセッテ10の動作モード(例えば「レディ状態」や「データ送信中」等)やバッテリの残容量等の動作状態を表示するための表示部15が設けられている。なお、表示部15はLED以外の発光素子で構成してもよいし、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示手段で構成してもよい。また、表示部15は照射面11以外の部位に設けてもよい。
電子カセッテ10の筐体12内には、被撮影者の体を透過した放射線の到来方向に沿って、照射面11側から、光検出部17、シンチレータパネル18等が順に配置されている。また、筐体12の内部には、照射面11の長手方向に沿った一端側に、マイクロコンピュータを含む各種の電子回路や、充電可能かつ着脱可能なバッテリ(二次電池)を収容するケース19が配置されている。光検出部17を含む電子カセッテ10の各種電子回路は、ケース19内に収容されたバッテリから供給される電力によって作動する。ケース19内に収容された各種電子回路が放射線の照射に伴って損傷することを回避するため、筐体12内のうちケース19の照射面11側には鉛板等からなる放射線遮蔽部材が配設されている。
図2に示すように、光検出部17は全面に亘って天板13の内面に接着等によって貼り付けられている。また、光検出部17とシンチレータパネル18との間は、貼り合わされることなく当接されており、周縁部のみが全周に亘り、シリコーン樹脂等の柔軟性を有する固定材21によって固定されている。筐体12内の底面には、基台22が取付けられており、基台22の天板の下面には、制御基板23が取付けられている。制御基板23と光検出部17とは、フレキシブルケーブル24を介して電気的に接続されている。
次に、シンチレータパネル18について説明する。図3に示すように、シンチレータパネル18は、蒸着基板26、蒸着基板26上に設けられたシンチレータ27、シンチレータ27を覆う保護フイルム28から構成されている。シンチレータ27は、被撮影者の体を透過して筐体12の照射面11に照射され、天板13及び光検出部17を透過して照射された放射線を吸収して光を放出する。一般に、シンチレータとしては、例えばCsI:Tl(タリウムを添加したヨウ化セシウム))や、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、GOS(Gd2O2S:Tb)等の材料を用いることができる。
ただし、本実施形態では、シンチレータ27として、蒸着基板26にCsI:Tlを蒸着することにより、放射線入射側かつ光検出部17側に複数の柱状結晶30からなる柱状結晶領域を形成し、シンチレータ27の放射線入射側と反対側に非柱状結晶31からなる非柱状結晶領域を形成している。蒸着基板26としては、耐熱性の高い材料が望ましく、例えば低コストという観点からアルミニウムが好適である。なお、本実施形態に係るシンチレータ27は、柱状結晶30の平均径が柱状結晶30の長手方向に沿っておよそ均一とされている。
シンチレータ27で発生された光は、柱状結晶30のライトガイド効果によって柱状結晶30内を進行し、光検出部17へ射出される。その際に、光検出部17側へ射出される光の拡散が抑制されるので、電子カセッテ10によって検出される放射線画像のボケが抑制される。また、シンチレータ27の深部(非柱状結晶領域)に到達した光は、非柱状結晶31によって光検出部17側へ反射されるので、光検出部17に入射される光の光量(シンチレータ27で発光された光の検出効率)が向上する。
なお、シンチレータ27の放射線入射側に位置する柱状結晶領域の厚みをt1とし、シンチレータ27の蒸着基板26側に位置する非柱状結晶領域の厚みをt2としたときに、t1とt2が下記の関係式(1)を満たすことが好ましい。
0.01≦(t2/t1)≦0.25・・・(1)
柱状結晶領域の厚みt1と非柱状結晶領域の厚みt2とが上記関係式を満たすことで、発光効率が高く光の拡散を防止する領域(柱状結晶領域)と、光を反射する領域(非柱状結晶領域)とのシンチレータ27の厚み方向に沿った比率が好適な範囲となる。これにより、シンチレータ27の発光効率、シンチレータ27で発光された光の検出効率、及び、放射線画像の解像度が向上する。なお、非柱状結晶領域の厚みt2が厚過ぎると発光効率の低い領域が増え、電子カセッテ10の感度の低下に繋がることから、(t2/t1)は0.02以上かつ0.1以下の範囲であることがより好ましい。
上記構成のシンチレータ27において、シンチレータ27中の柱状結晶形成領域におけるCsIの充填率には適切な範囲があり、柱状結晶形成領域の厚みにも依存するが、例えば70〜85%程度が最適である。すなわち、CsIの充填率が過小(例えば70%未満)になるとシンチレータ27の発光量の低下が顕著になる一方、CsIの充填率が過大に(例えば85%よりも高く)なると、或る厚み以上では隣り合う柱状結晶が接触し始めるために、柱状結晶中を進行する光の一部が接触している他の柱状結晶へ移る現象(この現象はクロストークともいう)が生ずることで、シンチレータ27への放射線照射量のパターンに対してシンチレータ27からの光の射出光量のパターンが変化し、放射線検出精度の低下(照射された放射線を画像として検出する場合は検出画像の鮮鋭度の低下)が引き起こされる。従って、放射線検出の感度及び精度を確保するために、隣り合う柱状結晶の間には適当な大きさの隙間を設ける必要がある。
電子カセッテ10は、筐体12の天板13に光検出部17を接着し、光検出部17に重ねられたシンチレータパネル18を周縁部に設けた固定材21によって光検出部17に固定しているため、天板13に荷重が加えられると、天板13はその荷重によって撓み、この撓みは光検出部17を介してシンチレータ27に伝わり、光検出部17とシンチレータ27とが歪んでしまう。また、このときにシンチレータ27は、周縁部が固定材21により動きが規制されるため、平面内における中央部よりもその外周の周縁部のほうが大きく歪む(図22参照)。更に、シンチレータ27の柱状結晶30は、光検出部17に固定されていないため、光検出部17及びシンチレータ27が歪んだときに光検出部17に対して大きく移動し(図21(C)参照)、特に大きく歪む周縁部の柱状結晶30は、その先端同士が接触して割れや折れ等の破損を生じることがある。
本実施形態では、天板13に加えられた荷重によって、シンチレータ27の周縁部の柱状結晶30が破損するのを防止するため、図4及び図5に示すように、シンチレータ27の柱状結晶形成領域において、中央部27a内で隣接する柱状結晶30間の隙間L1よりも、中央部27aの外周に配置された周縁部27b内で隣接する柱状結晶30間の隙間L2を広くしている。また、隙間L2は、電子カセッテ10の仕様によって設定されている天板13の耐荷重が天板13に加えられたときであっても、周縁部27bの柱状結晶30の先端同士が接触しない長さになっている。図6は、周縁部27bの柱状結晶30間の隙間L2と、天板13に加わる荷重との関係を示しており、隙間L2は、天板13に耐荷重がかかったときに「0」にならない長さに設定されている。
これにより、シンチレータ27の周縁部27b内の柱状結晶30の破損を原因とする、検出精度や画像の鮮鋭度の低下を防止することができる。なお、周縁部27bの柱状結晶30間の隙間を大きくすることにより、周縁部27b内のCsIの充填率が低下するが、撮影で主に用いられるのは中央部なので、周縁部の画質が多少低下しても実質的な問題はない。また、シンチレータ27の中央部27aと周縁部27bとでCsIの充填率が異なるため、発光量に差異が生じるが、発光量(充填率)の差に応じて光検出部17の感度補正を行なうことにより、画質に対する影響は生じない。
次に、シンチレータ27の製造方法について説明する。従来、蒸着基板にシンチレータを形成する際に、蒸着基板とシンチレータとの接着性を良好にし、かつシンチレータの感度を向上させるため、蒸着基板に蛍光体母体化合物と賦活剤とからなる結晶で構成された下地層を形成し、この下地層の上に、蛍光体母体化合物と賦活剤とからなる柱状結晶で構成されたシンチレータを形成する手法が知られている。また、この手法では、シンチレータの相対密度が下地層の相対密度に応じて変化することが知られている。すなわち、下地層の相対密度が低いときには、シンチレータの相対密度も低くなって柱状結晶間の隙間が大きくなり、下地層の相対密度が高いときには、シンチレータの相対密度も高くなって柱状結晶間の隙間が小さくなる。相対密度とは、蛍光体固有の密度に対する下地層及びシンチレータの密度の相対値を意味する。本実施形態では、下地層の相対密度とシンチレータ27の相対密度との関係を利用して、周縁部27bの柱状結晶30間の隙間L2を、中央部27aよりも広くしている。
図7は、本実施形態に用いられるシンチレータ製造装置32の概略構成を示している。シンチレータ製造装置32は、真空容器33を備えており、真空容器33には、真空容器33内の排気及び大気の導入を行なう真空ポンプ34が設けられている。
真空容器33内の上部には、蒸着基板26を保持するための基板ホルダ35が設けられている。基板ホルダ35は、下面に複数のヒータ35a備えた熱反射板35bと、熱反射板35bに対面するように蒸着基板26を保持する保持部材35cとを備えている。ヒータ35aは、蒸着時に蒸着基板26を加熱することにより、シンチレータ27の膜質調整に用いられる。ヒータ35aは、蒸着基板26の全体を均一に加熱できるように、熱反射板35bの下に等間隔で配置されており、熱反射板35bは、ヒータ35aの熱を蒸着基板26に向けて反射する。基板ホルダ35は、熱反射板35bに設けられた回転軸35dが図示しないモータによって回転されることにより、真空容器33内で水平方向に回転される。
基板ホルダ35の下方には、蒸着基板26の周縁部を覆うマスク板36が配置されている。マスク板36は、図示しない挿脱機構によって、蒸着基板26の下方に挿入される挿入位置と、蒸着基板26の下方から退避される退避位置との間で移動自在とされている。また、マスク板36は、図示しない回転機構により、挿入位置にあるときに、基板ホルダ35に同期して水平方向に回転される。
マスク板36の下方には、蒸着基板26に下地層を形成する下地用蒸着源37と、下地層の上にシンチレータ27を形成するシンチレータ用蒸着源38とが配置されている。下地用蒸着源37及びシンチレータ用蒸着源38は、それぞれ下地層及びシンチレータ27の原料を加熱して蒸発させる熱源を有している。
次に、シンチレータ製造装置32によるシンチレータ27の製造手順について説明する。図7(A)に示すように、基板ホルダ35に蒸着基板26が取り付けられる。次いで、真空ポンプ34により、真空容器33内が真空にされる。回転軸35dを中心に基板ホルダ35及びマスク板36の回転が開始されるとともに、下地用蒸着源37では熱源により下地層の原料が加熱される。
加熱により蒸発した下地層の原料は、マスク板36を介して蒸着基板26に蒸着されるので、蒸着基板26の中央部に下地層が形成される。蒸着基板26の中央部に対する下地層の蒸着終了後、マスク板36が基板ホルダ35の下方から退避され、蒸着基板26の全域に下地層が蒸着される。これにより、先に蒸着が開始されていた蒸着基板26の中央部の下地層は、後から蒸着が開始された周縁部の下地層に比べて相対密度が高くなる。下地層は、蛍光体母体化合物と賦活剤とからなる結晶で構成されており、蛍光体母体化合物は、例えばCsIであり、賦活剤はTlである。
次いで、下地用蒸着源37の熱源が停止され、これに代わって、シンチレータ用蒸着源38の熱源によりシンチレータの原料が加熱される。熱源の加熱により蒸発したシンチレータの原料は、蒸着基板26の下地層の上に蒸着されるが、蒸着されたシンチレータ27の相対密度は、下地層の相対密度に影響を受けるので、蒸着基板26の中央部の相対密度に比べて、周縁部の相対密度が高くなる。これにより、シンチレータ27の周縁部27bの柱状結晶30間の隙間L2は、中央部27aの隙間L1よりも大きくなる。なお、下地層を用いたシンチレータの製造方法については、国際公開WO2010/029779号公報において詳細に説明されているので、詳しい説明を省略する。
次に、光検出部17について説明する。光検出部17は、シンチレータ27の光射出側から射出された光を検出するものであり、図8に示すように、フォトダイオード(PD:PhotoDiode)等からなる光電変換部40、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)41及び蓄積容量42を備えた画素部43が、図3に示すように、平板状で平面視における外形形状が矩形状とされた絶縁性基板44上にマトリクス状に複数形成されたTFTアクティブマトリクス基板(以下、「TFT基板」という)によって構成されている。
なお、本実施形態では、シンチレータパネル18の放射線照射面側に光検出部17が配置されているが、シンチレータと光検出部をこのような位置関係で配置する方式は「表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)」と称する。シンチレータは放射線入射側がより強く発光するので、シンチレータの放射線入射側に光検出部を配置する表面読取方式(ISS)は、シンチレータの放射線入射側と反対側に光検出部を配置する「裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)」よりも光検出部とシンチレータの発光位置とが接近することから、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高く、また光検出部の受光量が増大することで、結果として放射線検出パネル(電子カセッテ)の感度が向上する。
光電変換部40は、下部電極40aと上部電極40bとの間に、シンチレータ27から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換膜40cが配置されて構成されている。なお、下部電極40aは、シンチレータ27から放出された光を光電変換膜40cに入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ27の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。なお、下部電極40aとしてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、90%以上の光透過率を得ようとすると抵抗値が増大し易くなるため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO、TiO、ZnO等を用いることが好ましく、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からITOが最も好ましい。なお、下部電極40aは、全画素部共通の一枚構成としてもよいし、画素部毎に分割してもよい。
また、光電変換膜40cはシンチレータ27から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。光電変換膜40cを構成する材料は光を吸収して電荷を発生する材料であればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料等を用いることができる。光電変換膜40cをアモルファスシリコンで構成した場合、シンチレータ27から放出された光を広い波長域に亘って吸収するように構成することができる。但し、アモルファスシリコンからなる光電変換膜40cの形成には蒸着を行う必要があり、絶縁性基板44が合成樹脂製である場合、絶縁性基板44の耐熱性が不足する可能性がある。
一方、光電変換膜40cは、有機光電変換材料を含む材料で構成した場合は、主に可視光域で高い吸収を示す吸収スペクトルが得られ、光電変換膜40cによるシンチレータ27から放出された光以外の電磁波の吸収が殆ど無くなるので、X線やγ線等の放射線が光電変換膜40cで吸収されることで発生するノイズを抑制できる。また、有機光電変換材料からなる光電変換膜40cは、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料を被形成体上に付着させることで形成させることができ、被形成体に対して耐熱性は要求されない。このため、本実施形態では、光電変換部40の光電変換膜40cを有機光電変換材料で構成している。
光電変換膜40cを有機光電変換材料で構成した場合、光電変換膜40cで放射線が殆ど吸収されないので、放射線が透過するように光検出部17が配置される表面読取方式(ISS)において、光検出部17を透過することによる放射線の減衰を抑制することができ、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。従って、光電変換膜40cを有機光電変換材料で構成することは、特に表面読取方式(ISS)に好適である。
光電変換膜40cを構成する有機光電変換材料は、シンチレータ27から放出された光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ27の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ27の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ27から放出された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ27の放射線に対する発光ピーク波長との差が10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ27の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜40cで発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
放射線検出パネルに適用可能な光電変換膜40cについて具体的に説明する。放射線検出パネルにおける電磁波吸収/光電変換部位は、電極40a,40bと、該電極40a,40bに挟まれた光電変換膜40cを含む有機層である。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び、層間接触改良部位等を積み重ねるか、若しくは混合することで形成することができる。
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質を有する有機化合物である。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物である。従って、ドナー性有機化合物としては、電子供与性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容し易い性質を有する有機化合物である。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物である。従って、アクセプター性有機化合物は、電子受容性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。
有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料や、光電変換膜40cの構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
また、光電変換部40は、少なくとも電極対40a,40bと光電変換膜40cを含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜及び正孔ブロッキング膜の少なくとも何れかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
電子ブロッキング膜は、上部電極40bと光電変換膜40cとの間に設けることができ、上部電極40bと下部電極40aとの間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極40bから光電変換膜40cに電子が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。電子ブロッキング膜には電子供与性有機材料を用いることができる。実際に電子ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜40cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜40cの材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIp、若しくはそれより小さいIpを有するものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
電子ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部40の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
正孔ブロッキング膜は、光電変換膜40cと下部電極40aとの間に設けることができ、上部電極40bと下部電極40aとの間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極40aから光電変換膜40cに正孔が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。正孔ブロッキング膜には電子受容性有機材料を用いることができる。実際に正孔ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜40cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜40cの材料の電子親和力(Ea)と同等のEa、若しくはそれより大きいEaを有するものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
正孔ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部40の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
なお、光電変換膜40cで発生した電荷のうち、正孔が下部電極40aに移動し、電子が上部電極40bに移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜の位置を逆にすれば良い。また、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜は両方設けることは必須ではなく、何れかを設けておけば、或る程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
TFT41は、ゲート電極、ゲート絶縁膜及び活性層(チャネル層)が積層され、更に活性層上にソース電極とドレイン電極が所定の間隔を隔てて形成されている。活性層は、例えばアモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかにより形成することができるが、活性層を形成可能な材料はこれらに限定されるものではない。
活性層を形成可能な非晶質酸化物としては、例えば、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。なお、活性層を形成可能な非晶質酸化物はこれらに限定されるものではない。
また、活性層を形成可能な有機半導体材料としては、例えば、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報で詳細に説明されているため、説明を省略する。
TFT41の活性層を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかによって形成すれば、X線等の放射線を吸収せず、或いは吸収したとしても極めて微量に留まるため、ノイズの発生を効果的に抑制することができる。
また、活性層をカーボンナノチューブで形成した場合、TFT41のスイッチング速度を高速化することができ、また、TFT41における可視光域の光の吸収度合いを低下させることができる。なお、活性層をカーボンナノチューブで形成する場合、活性層にごく微量の金属性不純物が混入しただけでTFT41の性能が著しく低下するため、遠心分離等により非常に純度の高いカーボンナノチューブを分離・抽出して活性層の形成に用いる必要がある。
なお、有機光電変換材料で形成した膜及び有機半導体材料で形成した膜は何れも十分な可撓性を有しているので、有機光電変換材料で形成した光電変換膜40cと、活性層を有機半導体材料で形成したTFT41と、を組み合わせた構成であれば、患者の体の重みが荷重として加わる光検出部17の高剛性化は必ずしも必要ではなくなる。
また、絶縁性基板44は光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものであればよい。ここで、TFT41の活性層を構成する非晶質酸化物や、光電変換部40の光電変換膜40cを構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、絶縁性基板44としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、合成樹脂製の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このような合成樹脂製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。なお、絶縁性基板44には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
なお、アラミドは200度以上の高温プロセスを適用できるため、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドはITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて基板を薄型化できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して絶縁性基板44を形成してもよい。
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂とを複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラ
ス基板等と比べて絶縁性基板44を薄型化できる。
絶縁性基板44としてガラス基板を用いた場合、光検出部17全体としての厚みは、例えば0.7mm程度になるが、本実施形態では電子カセッテ10の薄型化を考慮し、絶縁性基板44として、光透過性を有する合成樹脂からなる薄型の基板を用いている。これにより、光検出部17全体としての厚みを、例えば0.1mm程度に薄型化できると共に、光検出部17に可撓性をもたせることができる。また、光検出部17に可撓性をもたせることで、電子カセッテ10の耐衝撃性が向上し、電子カセッテ10に衝撃が加わった場合にも破損し難くなる。また、プラスチック樹脂や、アラミド、バイオナノファイバ等は何れも放射線の吸収が少なく、絶縁性基板44をこれらの材料で形成した場合、絶縁性基板44による放射線の吸収量も少なくなるため、表面読取方式(ISS)により光検出部17を放射線が透過する構成であっても、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
なお、電子カセッテ10の絶縁性基板44として合成樹脂製の基板を用いることは必須ではなく、電子カセッテ10の厚さは増大するものの、ガラス基板等の他の材料からなる基板を絶縁性基板44として用いるようにしてもよい。
また、図9に示すように、光検出部17には、一定方向(行方向)に沿って延設され個々のTFT41をオンオフさせるための複数本のゲート配線46と、前記一定方向と交差する方向(列方向)に沿って延設され、蓄積容量42(及び光電変換部40の下部電極40aと上部電極40bの間)に蓄積された電荷をオン状態のTFT41を介して読み出すための複数本のデータ配線47が設けられている。また、図8に示すように、光検出部17のうち、放射線の到来方向と反対側の端部には、TFT基板上を平坦にするための平坦化層48が形成されている。また、光検出部17と天板13との間には接着層49が設けられており、光検出部17は接着層49によって天板13に貼り付けられている。
光検出部17の個々のゲート配線46はゲート線ドライバ51に接続されており、個々のデータ配線47は信号処理部52に接続されている。被撮影者の体を透過した放射線(被撮影者の体の画像情報を担持した放射線)が電子カセッテ10に照射されると、シンチレータ27のうち照射面11上の各位置に対応する部分からは、前記各位置における放射線の照射量に応じた光量の光が放出され、個々の画素部43の光電変換部40では、シンチレータ27のうちの対応する部分から放出された光の光量に応じた大きさの電荷が発生され、この電荷が個々の画素部43の蓄積容量42(及び光電変換部40の下部電極40aと上部電極40bの間)に蓄積される。
上記のようにして個々の画素部43の蓄積容量42に電荷が蓄積されると、個々の画素部43のTFT41は、ゲート線ドライバ51からゲート配線46を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT41がオンされた画素部43の蓄積容量42に蓄積されている電荷は、アナログの電気信号としてデータ配線47を伝送されて信号処理部52に入力される。従って、個々の画素部43の蓄積容量42に蓄積された電荷は行単位で順に読み出される。
信号処理部52は、個々のデータ配線47毎に設けられた増幅器及びサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線47を伝送された電気信号は増幅器で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。
信号処理部52には画像メモリ54が接続されており、信号処理部52のA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ54に順に記憶される。画像メモリ54は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ54に順次記憶される。
画像メモリ54は電子カセッテ10全体の動作を制御するカセッテ制御部56と接続されている。カセッテ制御部56はマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPU56a、ROM及びRAMを含むメモリ56b、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュ
メモリ等からなる不揮発性の記憶部56cを備えている。
CPU56aは、画像メモリ54に記憶された画像データの、シンチレータ27の周縁部27bに対応する部分に対し、中央部27aと周縁部27bとの感度(充填率)に基づいた感度補正を行なう機能を有している。これにより、シンチレータ27の周縁部27bに設けられた柱状結晶30間の隙間L2を中央部27aよりも広くしても、画像に対する影響は生じない。
また、カセッテ制御部56には無線通信部58が接続されている。無線通信部58は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部56は、無線通信部58を介してコンソール62(図10参照)と無線通信が可能とされており、コンソール62との間で各種情報の送受信が可能とされている。
また、電子カセッテ10には電源部60が設けられており、上述した各種電子回路(ゲート線ドライバ51や信号処理部52、画像メモリ54、無線通信部58、カセッテ制御部56等)は電源部60と各々接続され(図示省略)、電源部60から供給された電力によって作動する。電源部60は、電子カセッテ10の可搬性を損なわないように、前述のバッテリ(二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種電子回路へ電力を供給する。ゲート線ドライバ51、信号処理部52、画像メモリ54、カセッテ制御部56、無線通信部58及び電源部60は、上述したケース19内、もしくは制御基板23に設けられている。
図10に示すように、コンソール62はコンピュータからなり、装置全体の動作を司るCPU64、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM65、各種データを一時的に記憶するRAM66、及び、各種データを記憶するHDD67を備え、これらはバスを介して互いに接続されている。またバスには、通信I/F部68及び無線通信部69が接続され、ディスプレイ70がディスプレイドライバ71を介して接続され、更に、操作パネル72が操作入力検出部73を介して接続されている。
通信I/F部68は接続端子62a、通信ケーブル75及び放射線発生装置76の接続端子76aを介して放射線発生装置76と接続されている。コンソール62(のCPU64)は、放射線発生装置76との間での曝射条件等の各種情報の送受信を通信I/F部68経由で行う。無線通信部69は電子カセッテ10の無線通信部58と無線通信を行う機能を備えており、コンソール62(のCPU64)は電子カセッテ10との間で、画像データ等の各種情報の送受信を無線通信部69経由で行う。また、ディスプレイドライバ71はディスプレイ70への各種情報を表示させるための信号を生成・出力し、コンソール62(のCPU64)はディスプレイドライバ71を介して操作メニューや撮影された放射線画像等をディスプレイ70に表示させる。また、操作パネル72は複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される。操作入力検出部73は操作パネル72に対する操作を検出し、検出結果をCPU44へ通知する。
また、放射線発生装置76は、放射線源78と、コンソール62との間で曝射条件等の各種情報の送受信を行う通信I/F部79と、コンソール62から受信した曝射条件(この曝射条件には管電圧、管電流の情報が含まれている)に基づいて放射線源78を制御する線源制御部80と、を備えている。
次に本実施形態の作用を説明する。電子カセッテ10を使用して放射線画像の撮影を行う場合、撮影者(例えば放射線技師等)は、被撮影者の撮影対象部位と撮影台との間に、照射面11側を上方へ向けた電子カセッテ10を挿入し、向きや位置等を調整する準備作業を行う。
このとき、被撮影者の撮影部位や撮影姿勢によっては、筐体12の天板13に被撮影者の体重がかかることがある。天板13は、被撮影者の体重によって撓み、この撓みは光検出部17を介してシンチレータ27に伝わり、シンチレータ27の特に周縁部27bに大きな歪みが生じる(図20参照)。従来の電子カセッテでは、シンチレータ27の周縁部27b内で、柱状結晶30の先端同士が接触することがあった。
しかし、本実施形態のシンチレータ27は、図4〜図6に示すように、シンチレータ27の柱状結晶形成領域において、中央部27a内で隣接する柱状結晶30間の隙間L1よりも、中央部27aの外周に配置された周縁部27b内で隣接する柱状結晶30間の隙間L2を長くし、かつ天板13に荷重が加えられたときであっても、周縁部27bの柱状結晶30の先端同士が接触しない長さにしている。これにより、シンチレータ27の周縁部27b内の柱状結晶30の破損を原因とする、検出精度や画像の鮮鋭度の低下を防止することができる。
撮影者は、準備作業が完了すると、操作パネル72を操作して撮影開始を指示する。これにより、コンソール62では、曝射開始を指示する指示信号を放射線発生装置76へ送信し、放射線発生装置76は放射線源78から放射線を射出させる。放射線源78から射出された放射線は、被撮影者の体を透過して電子カセッテ10の照射面11に照射され、天板13及び光検出部17を透過してシンチレータ27の照射/光射出面に照射される。シンチレータ27は照射/光射出面に照射された放射線を吸収し、吸収した放射線量に応じた光量の光を射出する。
光検出部17は、画素部43に照射された光を画像として検出し、画像メモリ54に画像データを記憶する。CPU56aは、画像メモリ54に記憶された画像データを、シンチレータ27の周縁部27bに対応する部分の感度が、中央部27aに対応する部分と同程度となるように補正するので、シンチレータ27の中央部27aと周縁部27bとの感度(充填率)の差異は、画質に影響しない。補正後の画像データは、電子カセッテ10からコンソール62へ送信される。
次に本発明の他の実施形態について説明する。なお、既に説明済みの実施形態に対応する部分については同一の符号を付して、同じ機能を有する部分については説明を省略する。
[第2実施形態]
上記実施形態では、シンチレータ27の周縁部27bの柱状結晶30間の隙間L2を中央部27aの隙間L1よりも大きくしたが、これにより、周縁部27bのCsIの充填率が中央部27aよりも低くなっている。CsIの充填率が低下すると、周縁部27bの発光量が低下するため、できれば中央部27aと同程度の充填率を維持するのが好ましい。
そこで、本実施形態では、図11及び図12に示すように、シンチレータ90の周縁部90bに、中央部90aの柱状結晶30よりも太い柱状結晶91を設けるとともに、柱状結晶91間の隙間L3を、上記実施形態の隙間L1よりも大きく、かつ天板13に耐荷重が加わったときでも柱状結晶91の先端同士が接触しない大きさにしている。これによれば、上記実施形態と同様に、シンチレータ90が歪んだときに、周縁部90bの柱状結晶91の破損を防止でき、柱状結晶91を太くした分だけ周縁部90bの充填率が向上するので、周縁部90bの発光量を多くすることができる。また、柱状結晶91の強度も向上する。
次に、上記シンチレータ90の製造方法について説明する。従来、蒸着基板にシンチレータを蒸着して形成する際に、蒸着基板の温度を高くすることによって柱状結晶が太くなり、柱状結晶間の隙間が大きくなることが知られている。これは、蒸着基板の温度を高くすることにより、柱状結晶の成長が促進されて複数本の柱状結晶から太い柱状結晶が形成されることにより、柱状結晶間の隙間も大きくなるためである。本実施形態では、蒸着基板26の温度制御による柱状結晶を成長促進することにより、周縁部90bの柱状結晶91を太くし、かつ隙間L3を中央部90aよりも広くしている。
図13は、本実施形態に用いられるシンチレータ製造装置93の概略構成を示している。なお、シンチレータ製造装置93は、上記実施形態のシンチレータ製造装置32とほぼ同じ構成を有しているが、マスク板36が省略されている。その他、シンチレータ製造装置32と同一の部品については、同符号を用いて詳しい説明は省略する。
本実施形態では、基板ホルダ35のヒータ35aが、蒸着基板26の周縁部に多く対面するように配置されている。これにより、蒸着基板26に下地層及びシンチレータ90を蒸着するときには、蒸着基板26の周縁部の温度が中央部よりも高くなる。したがって、シンチレータ90の周縁部90bの柱状結晶の成長が促進されるので、中央部90aの柱状結晶30よりも太く、広い隙間L3を有する柱状結晶91を形成することができる。なお、蒸着基板の温度を制御することによって柱状結晶の太さを制御する手法は、特許文献1において詳細に説明されているので、詳しい説明を省略する。
[第3実施形態]
上記各実施形態では、蒸着基板26に形成される柱状結晶の隙間や太さを制御することにより、周縁部の柱状結晶の隙間を広くしているが、隙間の異なる柱状結晶を設けたシンチレータをタイル状に並べて構成してもよい。例えば、図14に示すシンチレータ95では、柱状結晶30の隙間を上記実施形態と同じL1とした第1シンチレータ96を中央部に配置し、柱状結晶30の隙間を上記実施形態と同じL2とした第2〜第5シンチレータ97〜100を第1シンチレータ96の周縁部に配置している。
図15に示すように、第1〜第5シンチレータ96〜100の接続には、各シンチレータ96〜100の蒸着基板96a〜100aの側面に設けられた凸部101と凹部102との嵌合が用いられている。例えば、第1シンチレータ96の第2及び第3シンチレータ97、98と嵌合する側面には凸部101が設けられており、第2及び第3シンチレータ97、98の対応する側面には凹部102が設けられている。また、第1シンチレータ96の第4及び第5シンチレータ99、100と嵌合する側面には凹部102が設けられており、第4及び第5シンチレータ99、100の対応する側面には凸部101が設けられている。更に、第2シンチレータ97と第3シンチレータ98、第3シンチレータ98と第4シンチレータ99、第4シンチレータ99と第5シンチレータ100、第5シンチレータ100と第2シンチレータ97の間も凸部101と凹部102とによって接続されている。
これによれば、柱状結晶30の隙間の分布をより簡単に形成することができる。また、各シンチレータ96〜100は、蒸着基板96a〜100aの側面に設けた凸部101及び凹部102によって接続されているので、各シンチレータ96〜100の接続部分に柱状結晶30の欠落を生じさせることもない。なお、本実施形態では、5枚のタイル状のシンチレータ96〜100を使用しているが、実際には3種類のタイル状のシンチレータで構成できるので、コスト上昇を抑えることができる。
[第4実施形態]
上記第1実施形態では、光検出部17とシンチレータ18とを張り合わせずに当接させ、光検出部17とシンチレータ18との周縁部を全周に亘り、柔軟性を有する固定材21によって固定しているが、光検出部17とシンチレータ18は、その他の固定構造によって固定してもよい。例えば、図16(A)に示す電子カセッテ103のように、光検出部17とシンチレータ18とを張り合わせずに当接させ、周縁部は固定せずに、同図(B)に示すように、光検出部17とシンチレータ18とを平面視したときの中心部のみを接着剤等からなる固定部104によって固定してもよい。
これによれば、シンチレータ18の周縁部が光検出部17に固定されていないので、シンチレータ18の周縁部の歪みが中央部よりも大きくなる現象を解消することができる。また、光検出部17とシンチレータ18とが全面にわたって張り合わされていないので、蒸着基板26と光検出部17の絶縁性基板44との熱膨張差による反りの発生を防止することもできる。
また、第1実施形態の光検出部17とシンチレータ18との周縁部を固定する固定材21と、本実施形態の光検出部17とシンチレータ18との中心部を固定する固定部104とを組み合わせてもよい。
[第5実施形態]
上記第1実施形態の電子カセッテ10では、光検出部17及びシンチレータ27からなるパネルを筐体12の天板13に貼り付けているが、電子カセッテ10のリワーク性を考慮する場合、天板13から簡単に取り外すことができ、更に、天板13から取り外す際に光検出部17やシンチレータ27が破損しないような構造で天板13に取り付けられることが好ましい。これを実現するため、光検出部17の周縁部のみを天板13に貼り付けることが考えられるが、パネルの自重によって中心部が撓んでしまうという問題があった。
これを解決するため、例えば、図17に示す電子カセッテ105のように、光検出部17をカーボン板106に貼り付け、カーボン板106の周縁部を接着剤107によって天板13に貼り付けてもよい。これによれば、光検出部17及びシンチレータ27からなるパネルのリワーク性を向上させ、かつ中央部の撓みを防止することができる。また、シンチレータ27の各柱状結晶の耐荷重性も向上させることができる。
[第6実施形態]
上記各実施形態では、平板矩形状にした電子カセッテを例に説明したが、例えば、折り畳み可能な電子カセッテに本発明を適用してもよい。図18に示す電子カセッテ110は、上述した光検出部17、シンチレータ27、ゲート線ドライバ51、信号処理部52等が内蔵され、照射された放射線による放射線画像を撮影する平板状の撮影ユニット111と、上述したカセッテ制御部56や電源部60及び無線通信宇58等が内蔵され、表面に操作部114が設けられた制御ユニット112とがヒンジ113によって開閉可能に連結されている。撮影ユニット111と制御ユニット112とは、ヒンジ113内に設けられた接続配線により接続されている。
撮影ユニット111及び制御ユニット112は、一方に対して他方がヒンジ113を回動中心にて回動することにより、撮影ユニット111と制御ユニット112とが並んだ展開状態(図18)と、撮影ユニット111と制御ユニット112とが重なり合って折り畳まれた収納状態(図19)とに開閉可能とされている。光検出部17は、図18に示すように展開状態において上面になり、図19に示すように収納状態において制御ユニット112によって隠されるように撮影ユニット111内に内蔵されている。これにより、収納状態では、光検出部17及びシンチレータ27に対する押圧や衝撃による破損を防止することができる。
[第7実施形態]
また、図20に示す電子カセッテ115のように、光検出部17及びシンチレータ27等が内蔵された撮影部116を薄く形成し、この撮影部116の一端に、カセッテ制御部56や電源部60等が内蔵された制御部117を設けてもよい。これによれば、撮影部116を被撮影者と撮影台との間に挿入するのが容易になる。
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明の態様は、これに限定されるものではない。表1に示すように、第1実施形態のシンチレータ27に対応する実施例1と、第2実施形態のシンチレータ90に対応する実施例2と、中央部と周縁部との柱状結晶の間隔が同一とされた従来のシンチレータに対応する比較例の各シンチレータを作成し、これらを用いた電子カセッテを作成して性能を評価した。
Figure 2012132768
[実施例1]
実施例1のシンチレータは、下地層の密度条件を中央部と周縁部とで約4:3とし、蒸着基板の温度条件を中央部及び周縁部で共に270°Cとすることにより、中央部及び周縁部の柱状結晶の柱径をともに4μmとし、中央部の柱状結晶間の隙間を1μm、周縁部の柱状結晶間の隙間を1.3μmとした。また、中央部及び周縁部のCsIの充填率は、それぞれ80%及び60%となっている。
[実施例2]
実施例2のシンチレータは、下地層の密度条件を中央部及び周縁部で同条件とし、蒸着基板の温度条件を中央部で230°Cとし、周縁部で300°Cとすることにより、中央部の柱状結晶の柱径を4μm、柱状結晶間の隙間を1μmとし、周縁部の柱状結晶の柱径を8μm、柱状結晶間の隙間を2μmとした。また、中央部及び周縁部のCsIの充填率は、ともに80%となっている。
[比較例]
比較例のシンチレータは、下地層の密度条件と蒸着基板の温度条件とを中央部及び周縁部で同条件とすることにより、中央部及び周縁部の柱状結晶の柱径をともに4μmとし、柱状結晶間の隙間を1μmとしている。また、中央部及び周縁部のCsIの充填率は、ともに80%となっている。
[評価]
実施例1、2及び比較例のシンチレータを第1実施形態の電子カセッテ10にセットし、天板と光検出部とを接触させた筐体構造において、天板全面に125kgの荷重を繰り返し1000回加える耐久評価試験を行ない、耐久評価試験後に、シンチレータの周縁部の柱状結晶を詳細に観察した。
耐久評価試験の結果、本発明のシンチレータ(実施例1、2)は、いずれも周縁部の柱状結晶にクラックや折れ等の破損がなかった。一方、従来のシンチレータ(比較例)では、周縁部の柱状結晶にクラックが観察された。このように、本発明は、電子カセッテの天板に荷重が加わってシンチレータに歪みが生じたときにシンチレータの周縁部の柱状結晶の破損を防止する点で従来よりも優れている。
上記実施形態では、ISS方式の放射線検出装置を例に説明したが、本発明は、PSS方式の放射線検出装置にも適用が可能である。また、放射線検出装置を電子カセッテに組み込む例について説明したが、立位型、臥位型の撮影装置や、マンモグラフィ装置に組み込むことも可能である。その他、上記の実施形態で説明した本発明に係る放射線検出パネルとしての電子カセッテの構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
10 電子カセッテ
17 光検出部
18 シンチレータパネル
21 固定材
26 蒸着基板
27、90,100 シンチレータ
27a、90a 中央部
27b,90b 周縁部
30,91 柱状結晶
32,93 シンチレータ製造装置

Claims (13)

  1. 放射線が照射される面に、荷重を受けて撓みを生じる天板が設けられた筐体と、
    前記筐体内に収容され、複数立設された柱状結晶を有し、照射された放射線を吸収して前記柱状結晶が複数立設された光射出側から光を射出するとともに、前記天板の撓みによって歪みを生じるシンチレータと、
    前記筐体内で前記シンチレータの前記光射出側に配置され、前記シンチレータの前記光射出側から射出された光を検出する光検出部と、を含み、
    前記柱状結晶間の隙間は、前記柱状結晶が設けられている面内の中央部よりも、前記中央部の外周に配された周縁部のほうが広いことを特徴とする放射線検出パネル。
  2. 前記周縁部の前記柱状結晶間の隙間は、前記天板の撓みによって前記シンチレータが歪んだときに、隣り合う前記柱状結晶の先端同士が接触しない広さを有することを特徴とする請求項1記載の放射線検出パネル。
  3. 前記光検出部と前記シンチレータの前記光射出側との間は、貼り合わせされることなく当接されていることを特徴とする請求項1または2記載の放射線検出パネル。
  4. 前記光検出部と前記シンチレータの前記光射出側との間は、中心部のみが貼り合わされていることを特徴とする請求項1または2記載の放射線検出パネル。
  5. 前記シンチレータ及び前記光検出部は各々平板状とされ、前記天板におよそ平行な方向への相対移動が阻止されるように各々の周縁部が固定されていることを特徴とする請求項3または4記載の放射線検出パネル。
  6. 前記光検出部は、前記シンチレータの放射線照射側に配置されており、前記シンチレータには、前記光検出部を透過した放射線が照射されることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の放射線検出パネル。
  7. 前記周縁部の柱状結晶は、前記中央部の柱状結晶よりも太いことを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の放射線検出パネル。
  8. 前記シンチレータは、前記柱状結晶間の隙間が異なるようにされた複数枚の小サイズシンチレータからなることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の放射線検出パネル。
  9. 複数枚の前記小サイズシンチレータは、前記柱状結晶が設けられた支持基板の側面にそれぞれ設けられた凸部及び凹部の嵌合によって接合されることを特徴とする請求項8記載の放射線検出パネル。
  10. 前記光検出部が形成された平板状の支持体が可撓性を有していることを特徴とする請求項1〜9いずれか記載の放射線検出パネル。
  11. 前記光検出部を構成する光電変換部が有機光電変換材料を含む材料からなり、前記光検出部を構成するスイッチング素子の活性層が有機半導体材料を含む材料からなることを特徴とする請求項10記載の放射線検出パネル。
  12. 蒸着基板の一方の面に、中央部よりも周縁部の相対密度が低くなるように蛍光体を蒸着し、下地層を形成する工程と、
    前記下地層の上に蛍光体を蒸着することにより前記蛍光体の柱状結晶を形成し、前記下地層の相対密度差により、前記周縁部の柱状結晶間の隙間を前記中央部の柱状結晶間の隙間よりも広くする工程と、を含むことを特徴とするシンチレータの製造方法。
  13. 蒸着基板の中央部よりも周縁部の温度が高くなるように加熱する工程と、
    前記蒸着基板の一方の面に蛍光体を蒸着することにより前記蛍光体の柱状結晶を形成し、前記蒸着基板の温度差により、前記周縁部の柱状結晶を前記中央部の柱状結晶よりも太くし、かつ前記周縁部の柱状結晶間の隙間を前記中央部の柱状結晶間の隙間よりも広くする工程と、を含むことを特徴とするシンチレータの製造方法。
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