JP5498982B2 - 放射線撮影装置 - Google Patents

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Description

本発明は、照射された放射線を光に変換するシンチレータと、シンチレータによって変換された光を検出するセンサパネルとを備えた放射線撮影装置に関し、詳しくは、シンチレータとセンサパネルとを第1の接着層により貼り合せ、シンチレータを支持している支持基板と補強板とを第2の接着層により貼り合わせた放射線撮影装置に関する。
照射された放射線を光に変換するシンチレータと、シンチレータによって変換された光を検出するセンサパネルとを備えた間接変換方式の放射線検出器を用いて、照射された放射線により表される放射線画像を撮影できるようにした放射線撮影装置が実用化されている。
シンチレータには、CsI等を蒸着形成することにより、複数の柱状結晶からなるシンチレータ層を構成したものがある。柱状結晶からなるシンチレータでは、柱状結晶内で発生した光は、柱状結晶のライトガイド効果によって柱状結晶中を進行していくので、シンチレータから射出される光の散乱が抑制され、照射された放射線を画像として検出する場合に、検出画像の鮮鋭度の低下を抑制することができる。センサパネルは、ガラス等からなるセンサ基板上に、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス回路とPD(Photodiode)等からなる画素をマトリクス状に配置した光センサを設けたものであり、シンチレータから放射された光は、光センサによって検出される。
間接変換方式の放射線検出器には、センサパネル上にシンチレータを蒸着した直接蒸着方式と、支持基板にシンチレータを蒸着したシンチレータパネルとセンサパネルとを貼り合わせた貼り合せ方式とがある。柱状結晶からなるシンチレータは、蒸着初期の層は十分に柱状結晶化されない。そのため、センサパネルに蒸着初期の層が近接する直接蒸着方式に比べ、シンチレータの柱状結晶化された先端部がセンサパネルに貼り合わされる貼り合せ方式の方が高画質となる。
支持基板は、シンチレータの蒸着時に高温になるため、一般的には金属板(例えば、Al基板)が用いられている。そのため、シンチレータパネルとセンサパネルとを貼り合わせた後の放射線検出器では、支持基板と、ガラス等からなるセンサ基板との熱膨張係数差により、反りや反りによる各部の剥離等が生じることがあった。この問題を解決するため、支持基板に、支持基板の反りを矯正する補強板を貼り合わせた放射線検出器が発明されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
図9(A)は、特許文献1に開示された放射線検出器19の断面図であり、下方から、センサパネル23、シンチレータパネル24、補強板25が積層されている。センサパネル23とシンチレータ34との間、及び支持基板33と補強板25との間には、両者を貼り合わせる第1の接着層26及び第2の接着層27がそれぞれ設けられている。シンチレータ34の外周には、シンチレータ34を湿気などから保護する封止剤28が充填されている。
特開2006−078471号公報 特開2008−309769号公報
図9(B)は、放射線検出器19による放射線の検出中に、支持基板33に発生する変位量を表しており、同図(C)は、第1の接着層26にかかる応力を表している。これらのグラフから分るように、支持基板33は、補強板25に貼り合わされているため変位しない。しかし、支持基板33と補強板25との熱膨張係数差による応力は、補強板25よりも剛性が低いシンチレータ34を介して第1の接着層26にかかるため、シンチレータ34の外縁がセンサパネル23から剥がれてしまうことがあった。シンチレータ34の外縁がセンサパネル23から剥がれると、その剥離部分は、放射線画像の端縁に画像欠陥として表れるため、画質が低下してしまう。
本発明は、上記問題を解決するため、シンチレータパネルの支持基板と、センサパネルのセンサ基板との熱膨張係数差によって生じる応力により、シンチレータの端部がセンサパネルから剥離するのを防止することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の放射線撮影装置は、放射線を光に変換するシンチレータと、シンチレータを支持する支持基板とを有するシンチレータパネルと、シンチレータにより変換された光を検出する光センサと、光センサが設けられたセンサ基板とを有し、第1の接着層によってシンチレータと貼り合わされたセンサパネルと、第2の接着層によって支持基板と貼り合わされた補強板と、を備え、支持基板、センサ基板及び補強板のそれぞれに、熱膨張係数の異なる材質を用いた放射線撮影装置であり、補強板の面方向に直交する方向から見て、第2の接着層の外縁が、第1の接着層の外縁の内側になるように配置している。
上記構成は、センサ基板及び補強板の熱膨張係数が、支持基板の熱膨張係数よりも小さいときに、より顕著な効果を有する。また、上記構成とすることにより、支持基板のシンチレータのセンサパネルへの貼り合せ面よりも外側に張り出している庇状部が、第2の接着層によって補強板に貼り合わされない構成を得ることができる。
第2の接着層の端縁は、光センサの有効検出エリアの外側に配置されていることが好ましい。また、第2の接着層は、粘着剤からなることが好ましい。この場合、第2の接着層の厚みは、50μm以上500μm以下であることが好ましい。
補強板としては、カーボン基板を用いてもよい。この場合、単位体積あたりの硬度が高いピッチ系炭素繊維からなるカーボン基板を用いることが好ましい。また、補強板が長方形である場合には、炭素繊維の繊維方向を補強板の長手方向にするのが好ましい。このような補強板の厚みとしては、0.5mm以上5mm以下であること好ましい。また、補強板のサイズは、支持基板よりも小さく、かつ第2の接着層の配置範囲よりも大きくしてもよい。
本発明の放射線撮影装置によれば、シンチレータパネルの支持基板とセンサパネルのセンサ基板との熱膨張係数差によって生じる応力が、シンチレータとセンサパネルとを貼り合わせている第1の接着層の端縁に集中しなくなるので、当該応力によってシンチレータの端縁がセンサパネルから剥離するのを防止することができる。
放射線撮影装置を一部破断して示す斜視図である。 放射線撮影装置の概略断面図である。 放射線検出器の端部側断面図と支持基板の変位量及び第1の接着層にかかる応力を表すグラフである。 補強板の面方向に直交する方向から見た放射線検出器の平面図である。 光センサの構成を模式的に示した断面図である。 放射線撮影装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。 コンソール及び放射線発生装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。 補強板のサイズを支持基板よりも小さくした放射線検出器の端部側断面図である。 従来の放射線検出器の端部側断面図と支持基板の変位量及び第1の接着層にかかる応力を表すグラフである。
図1に示すように、本発明に係る放射線撮影装置10は、全体形状がおよそ箱形で、矩形状の上面が放射線の照射面11とされた筐体12を備えている。筐体12は、放射線を透過させる材料からなり、照射面11が設けられている天板13以外の部分は、例えばABS樹脂等から構成され、天板13は例えばカーボン等から構成されている。これにより、天板13による放射線の吸収を抑制しつつ、天板13の強度が確保される。なお、筐体12は、放射線により感光材料に画像を記録する構成を備えた旧来のカセッテと同サイズであり、当該カセッテに代えて使用できるようになっている。
放射線撮影装置10の照射面11には、複数個のLEDからなり、放射線撮影装置10の動作モード(例えば「レディ状態」や「データ送信中」等)やバッテリの残容量等の動作状態を表示するための表示部16が設けられている。なお、表示部16は、LED以外の発光素子で構成してもよいし、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示手段で構成してもよい。また、表示部16は、照射面11以外の部位に設けてもよい。
放射線撮影装置10の筐体12内には、照射面11に対面するように、被撮影者の体を透過した放射線を検出するために、パネル状の放射線検出器19が配置されている。また、筐体12の内部には、照射面11の短手方向に沿った一端側に、マイクロコンピュータを含む各種の電子回路や、充電可能かつ着脱可能なバッテリ(二次電池)を収容するケース20が配置されている。放射線検出器19を含む放射線撮影装置10の各種電子回路は、ケース20内に収容されたバッテリから供給される電力によって作動する。ケース20内に収容された各種電子回路が放射線の照射に伴って損傷することを回避するため、筐体12内のうちケース20の照射面11側には鉛板等からなる放射線遮蔽部材が配設されている。
図2に示すように、放射線検出器19は、放射線が照射される方向に沿って、照射面11側からセンサパネル23、シンチレータパネル24及び補強板25が積層された構成を有している。センサパネル23とシンチレータパネル24との間、及びシンチレータパネル24と補強板25との間は、第1の接着層26及び第2の接着層27によってそれぞれ貼り合わされている。シンチレータパネル24の外周には、シンチレータを湿気などから保護する封止剤28が充填されている。センサパネル23は、天板13の内面に全面に亘って接着剤により貼り付けられている。筐体12内の底面には、制御基板29が配置されている。制御基板29とセンサパネル23とは、フレキシブルケーブル30を介して電気的に接続されている。
図3(A)は、放射線検出器19の端縁側の断面図であり、図2に対して上下を反転させた状態が図示されている。シンチレータパネル24は、支持基板33と、支持基板33上に蒸着により設けられたシンチレータ34と、支持基板33とシンチレータ34との外周を覆う保護膜35とから構成されている。支持基板33とシンチレータ34との間には、支持基板33とシンチレータ34との密着性を改善するシンチレータ下地層が設けられている。シンチレータ34は、被撮影者の体を透過して筐体12の照射面11に照射され、天板13及びセンサパネル23を透過して照射された放射線を吸収して光を放出する。一般に、シンチレータとしては、例えばCsI:Tl(タリウムを添加したヨウ化セシウム))や、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、GOS(GdS:Tb)等の材料を用いることができる。
本実施形態では、シンチレータ34として、支持基板33にCsI:Tlを蒸着することにより、放射線入射側かつセンサパネル23側に複数の柱状結晶38からなる柱状結晶領域を形成し、支持基板33側に非柱状結晶39からなる非柱状結晶領域を形成している。柱状結晶38は、その平均径が柱状結晶38の長手方向に沿っておよそ均一である。また、シンチレータ34は、支持基板33上に蒸着によって形成されることから、柱状結晶38の成長速度は、蒸着源からの距離に応じて異なる。したがって、シンチレータ34の端縁形状は、支持基板33からの高さが徐々に低くなるようなテーパー状となる。
シンチレータ34で発生した光は、柱状結晶38のライトガイド効果によって柱状結晶38内を進行し、センサパネル23へ射出される。その際に、センサパネル23側へ射出される光の拡散が抑制されるので、放射線撮影装置10によって検出される放射線画像のボケが抑制される。また、シンチレータ34の深部(非柱状結晶領域)に到達した光は、非柱状結晶39によってセンサパネル23側へ反射されるので、センサパネル23に入射される光量(シンチレータ34で発光された光の検出効率)が向上する。
なお、シンチレータ34の放射線入射側に位置する柱状結晶領域の厚みをt1とし、シンチレータ34の支持基板33側に位置する非柱状結晶領域の厚みをt2としたときに、t1とt2が下記の関係式(1)を満たすことが好ましい。なお、シンチレータ34の膜厚は、例えば200〜1000μm程度である。
0.01≦(t2/t1)≦0.25・・・(1)
柱状結晶領域の厚みt1と非柱状結晶領域の厚みt2とが上記関係式を満たすことで、発光効率が高く光の拡散を防止する領域(柱状結晶領域)と、光を反射する領域(非柱状結晶領域)とのシンチレータ34の厚み方向に沿った比率が好適な範囲となる。これにより、シンチレータ34の発光効率、シンチレータ34で発光された光の検出効率、及び、放射線画像の解像度が向上する。なお、非柱状結晶領域の厚みt2が厚過ぎると発光効率の低い領域が増え、放射線撮影装置10の感度の低下に繋がることから、(t2/t1)は0.02以上かつ0.1以下の範囲であることがより好ましい。
上記構成のシンチレータ34において、シンチレータ34中の柱状結晶形成領域におけるCsIの充填率には適切な範囲があり、柱状結晶形成領域の厚みにも依存するが、例えば70〜85%程度が最適である。すなわち、CsIの充填率が過小(例えば70%未満)になるとシンチレータ34の発光量の低下が顕著になる一方、CsIの充填率が過大に(例えば85%よりも高く)なると、或る厚み以上では隣り合う柱状結晶が接触し始めるために、柱状結晶中を進行する光の一部が接触している他の柱状結晶へ移る現象(この現象はクロストークともいう)が生ずることで、シンチレータ34への放射線照射量のパターンに対してシンチレータ34からの光の射出光量のパターンが変化し、放射線検出精度の低下(照射された放射線を画像として検出する場合は検出画像の鮮鋭度の低下)が引き起こされる。従って、放射線検出の感度及び精度を確保するために、隣り合う柱状結晶の間には適当な大きさの隙間を設ける必要がある。
支持基板33は、シンチレータ34の蒸着時に高温になるため、支持基板33の材質には耐熱性の高い材料が望ましく、低コストという観点から選択すると、例えばアルミニウム等の金属が好適である。支持基板33の外縁には、シンチレータ34の外側に張り出した庇状部33aが設けられている。この庇状部33aは、支持基板33にCsI等を蒸着する際に支持基板33を保持するための領域であり、シンチレータ34のセンサパネル23に対する貼り合せ面から、支持基板33の端部までの範囲をいう。支持基板33にアルミニウムを用いた場合の厚みは、例えば、300〜1000μm程度である。なお、支持基板33が長手方向に反りにくくなるようにするため、圧延方向が長手方向に沿うように、支持基板33を構成してもよい。
保護膜35、及びシンチレータ下地層には、大気中の水分に対してバリア性を有する材料が用いられ、例えば熱CVD法、プラズマCVD法等の気相重合で得られる有機膜が用いられる。有機膜としては、ポリパラキシリレン製樹脂の熱CVD法によって形成された気相重合膜、または含フッ素化合物不飽和炭化水素モノマーのプラズマ重合膜不飽和炭化水素モノマーのプラズマ重合膜が用いられる。また有機膜と無機膜の積層構造を用いることも出来、無機膜の材料としては、例えば、窒化珪素(SiNx)膜、酸化珪素(SiOx)膜、酸窒化珪素(SiOxNy)膜、Al等が好適である。なお、シンチレータ34とセンサパネル23との密着性向上を図るため、保護膜35にUV処理やプラズマ処理を施してもよい。また、シンチレータ34と支持基板33との密着性向上のため、シンチレータ下地層にも同様にUV処理やプラズマ処理を施してもよい。
センサパネル23は、シンチレータ34の光射出側から射出された光を検出するものであり、平板状で平面視における外形形状が矩形状とされたセンサ基板42と、センサ基板42のシンチレータ34と貼り合わされる面に設けられた光センサ43とを備えている。センサ基板42には、光センサ43を構成するフォトダイオード(PD:PhotoDiode)を、例えばアモルファスシリコンの蒸着によって形成するため、耐熱性を有するガラス基板が用いられている。センサ基板42の厚みは、例えば300〜1000μm程度である。
なお、本実施形態では、シンチレータパネル24の放射線照射面側にセンサパネル23が配置されているが、シンチレータとセンサパネルとをこのような位置関係で配置する方式は、「表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)」と称する。シンチレータは、放射線入射側がより強く発光するので、シンチレータの放射線入射側に光検出部を配置する表面読取方式(ISS)は、シンチレータの放射線入射側と反対側に光検出部を配置する「裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)」よりも光検出部とシンチレータの発光位置とが接近することから、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高く、また光検出部の受光量が増大することで、結果として放射線撮影装置の感度が向上する。
センサパネル23とシンチレータパネル24とは、第1の接着層26によって貼り合わされている。また、シンチレータパネル24の支持基板33にはアルミニウム板が用いられ、センサパネル23のセンサ基板42にはガラス基板が用いられている。更に、放射線検出器19は、その動作中に高温になるため、支持基板33とセンサ基板42には熱膨張が発生する。しかし、アルミニウムとガラスとでは、アルミニウムの熱膨張係数が30PPM程度であるのに対し、ガラスの熱膨張係数は3PPM程度と大きな差があるため、従来の放射線検出器では反りが発生し、あるいは反りによってシンチレータがセンサパネルから剥離することがあった。本実施形態では、支持基板33とセンサ基板42との熱膨張係数差による放射線検出器19の反り等を防止するため、支持基板33に補強板25を貼り合わせている。
補強板25には、センサ基板42と同程度の熱膨張係数を有し、かつ適度な剛性を有する材質が好ましく、例えばカーボン基板が好適である。補強板25として用いるカーボン基板には、単位体積あたりの硬度が高いピッチ系の炭素繊維を使用したカーボン基板を用いるのが好ましい。また、図1に示すように、放射線検出器19は長方形であるため、長手方向に反りが発生しやすい。したがって、放射線検出器19の長手方向の反りを抑制するため、カーボン基板は、炭素繊維の繊維方向が長手方向に沿っていることが好ましい。更に、補強板25の剛性と重量との兼ね合いから、カーボン基板の厚みは、例えば5mm以下が好ましく、より好ましくは0.5mm以上5mm以下が好適である。
センサパネル23とシンチレータ34とを貼り合わせている第1の接着層26は、シンチレータ34のセンサパネル23への貼り合せ面の全域に配置されている。第1の接着層26には、例えばアクリル系等の粘着シートが用いられる。粘着シートは、接着剤のように硬化しないので、センサ基板42の熱膨張による応力を吸収することができる。粘着シートは、例えば、所定のサイズに切断されてシンチレータ34に貼着されるので、層の厚みを一定にすることができる。シンチレータパネル24は、第1の接着層26を介してセンサパネル23に貼り合わされる。第1の接着層26の厚みは、粘着シートによる接着強度、応力緩和効果、放射線の吸収等を考慮して30μm程度が好ましい。
支持基板33と補強板25とを貼り合わせている第2の接着層27には、第1の接着層26と同様に、例えばアクリル系の粘着シートが用いられており、粘着シートは支持基板33の熱膨張により生じた応力を吸収する。図3(A)及び図4に示すように、補強板25の面方向に直交する方向において、第2の接着層27の外縁は、第1の接着層26の外縁の内側で、かつ光センサ43の有効検出エリア43aの外側に配置されており、支持基板33の庇状部33aは、補強板25に接着されていない。第2の接着層27の厚みは、粘着シートによる接着強度、応力緩和効果等を考慮して50μm以上500μm以下程度が好ましい。
従来の放射線検出器では、図9(A)に示すように、第2の接着層27を支持基板33の端縁まで配置させ、支持基板33と補強板25とを全域にわたって接着していた。そのため、同図(B)に示すように、支持基板33の熱膨張による変位は、補強板25によって抑制され、支持基板33とセンサ基板42との熱膨張係数差により発生した応力は、同図(C)に示すように、補強板25よりも剛性の低いシンチレータ34を介して第1の接着層26にかかり、シンチレータ34の端部がセンサパネル23から剥がれることがあった。
これに対し、本実施形態では、図3(A)及び図4に示すように、支持基板33の庇状部33aが補強板25に貼り合わされていないので、支持基板33とセンサ基板42との熱膨張係数差により生じる応力は、図3(b)に示すように、庇状部33aの熱膨張による変位によって緩和される。これにより、図3(C)に実線で示すように、第1の接着層26の端縁にかかる応力は、2点鎖線で示す従来例に比べて小さくなり、第1の接着層26にかかる応力のピーク位置は、第1の接着層26の外縁と第2の接着層27の外縁との間、すなわち第1の接着層26の外縁から内側に移動するので、当該応力によってシンチレータ34の端部がセンサパネル23から剥がれるのを防止することができる。
また、本実施形態では、第2の接着層27の外縁を、光センサ43の有効検出エリア43aの外側に配置しているため、第1の接着層26の応力集中部分が撮影した放射線画像内に入らない。これにより、放射線画像の端部に第1の接着層26にかかった応力を原因とする欠陥が表れるのを抑えることができる。
なお、第2の接着層27を構成する粘着シートは、長手方向に分割された複数枚のサイズの小さな粘着シートから構成してもよい。これによれば、粘着シートを支持基板33に貼り付ける際に、支持基板33と粘着シートとの間に気泡が残りにくくなり、貼り付け性が向上する。また、支持基板33及び補強板25が湾曲した際の応力を緩和し、シンチレータ34の剥離を防止することができる。
次に、センサパネル23の光センサ43について説明するは、図5に示すように、光センサ43は、フォトダイオード(PD:PhotoDiode)等からなる光電変換部46、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)47、及び蓄積容量48を備えた画素部49からなり、画素部49は、センサ基板42上にマトリクス状に複数形成されている。また、センサパネル23のうち、放射線の到来方向と反対側の面には、センサ基板42上を平坦にするための平坦化層50が形成されている。上述したように、センサパネル23は、接着層51によって天板13に貼り付けられている。
光電変換部46は、下部電極46aと上部電極46bとの間に、シンチレータ34から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換膜46cが配置されて構成されている。なお、下部電極46aは、シンチレータ34から放出された光を光電変換膜46cに入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ34の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。
なお、下部電極46aとしてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、90%以上の光透過率を得ようとすると抵抗値が増大し易くなるため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO 、TiO 、ZnO 等を用いることが好ましく、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からITOが最も好ましい。なお、下部電極46aは、全画素部共通の一枚構成としてもよいし、画素部毎に分割してもよい。
光電変換膜46cを構成する材料は、光を吸収して電荷を発生する材料であればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料等を用いることができる。光電変換膜46cをアモルファスシリコンで構成した場合、シンチレータ34から放出された光を広い波長域に亘って吸収するように構成することができる。アモルファスシリコンからなる光電変換膜46cの形成には、蒸着を行う必要があるため、センサ基板42には、耐熱性を有するガラス基板を用いるのが好ましい。
TFT47は、ゲート電極、ゲート絶縁膜及び活性層(チャネル層)が積層され、更に活性層上にソース電極とドレイン電極が所定の間隔を隔てて形成されている。活性層は、例えばアモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかにより形成することができるが、活性層を形成可能な材料はこれらに限定されるものではない。
図6に示すように、光センサ43には、一定方向(行方向)に沿って延設され個々のTFT47をオンオフさせるための複数本のゲート配線54と、前記一定方向と交差する方向(列方向)に沿って延設され、蓄積容量48(及び光電変換部46の下部電極46aと上部電極46bの間)に蓄積された電荷をオン状態のTFT47を介して読み出すための複数本のデータ配線55が設けられている。
センサパネル23の個々のゲート配線54はゲート線ドライバ58に接続されており、個々のデータ配線55は信号処理部59に接続されている。被撮影者の体を透過した放射線(被撮影者の体の画像情報を担持した放射線)が放射線撮影装置10に照射されると、シンチレータ34のうち照射面11上の各位置に対応する部分からは、前記各位置における放射線の照射量に応じた光量の光が放出され、個々の画素部49の光電変換部46では、シンチレータ34のうちの対応する部分から放出された光の光量に応じた大きさの電荷が発生され、この電荷が個々の画素部49の蓄積容量48(及び光電変換部46の下部電極46aと上部電極46bの間)に蓄積される。
上記のようにして個々の画素部49の蓄積容量48に電荷が蓄積されると、個々の画素部49のTFT47は、ゲート線ドライバ58からゲート配線54を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT47がオンされた画素部49の蓄積容量48に蓄積されている電荷は、アナログの電気信号としてデータ配線55を伝送されて信号処理部59に入力される。従って、個々の画素部49の蓄積容量48に蓄積された電荷は行単位で順に読み出される。
信号処理部59は、個々のデータ配線55毎に設けられた増幅器及びサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線55を伝送された電気信号は増幅器で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。
信号処理部59には画像メモリ62が接続されており、信号処理部59のA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ62に順に記憶される。画像メモリ62は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ62に順次記憶される。
画像メモリ62は、放射線撮影装置10全体の動作を制御する制御部64と接続されている。制御部64は、マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPU64a、ROM及びRAMを含むメモリ64b、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部64cを備えている。
また、制御部64には無線通信部66が接続されている。無線通信部66は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。制御部64は、無線通信部66を介してコンソール70(図7参照)と無線通信が可能とされており、コンソール70との間で各種情報の送受信が可能とされている。
また、放射線撮影装置10には電源部67が設けられており、上述した各種電子回路(ゲート線ドライバ58や信号処理部59、画像メモリ62、無線通信部66、制御部64等)は電源部67と各々接続され(図示省略)、電源部67から供給された電力によって作動する。電源部67は、放射線撮影装置10の可搬性を損なわないように、前述のバッテリ(二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種電子回路へ電力を供給する。ゲート線ドライバ58、信号処理部59、画像メモリ62、制御部64、無線通信部66及び電源部67は、上述したケース20内、もしくは制御基板29に設けられている。
図7に示すように、コンソール70はコンピュータからなり、装置全体の動作を司るCPU71、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM72、各種データを一時的に記憶するRAM73、及び、各種データを記憶するHDD74を備え、これらはバスを介して互いに接続されている。またバスには、通信I/F部75及び無線通信部76が接続され、ディスプレイ77がディスプレイドライバ78を介して接続され、更に、操作パネル79が操作入力検出部80を介して接続されている。
通信I/F部75は接続端子75a、通信ケーブル82及び放射線発生装置83の接続端子83aを介して放射線発生装置83と接続されている。コンソール70(のCPU71)は、放射線発生装置83との間での曝射条件等の各種情報の送受信を通信I/F部75経由で行う。無線通信部76は放射線撮影装置10の無線通信部66と無線通信を行う機能を備えており、コンソール70(のCPU71)は放射線撮影装置10との間で、画像データ等の各種情報の送受信を無線通信部76経由で行う。また、ディスプレイドライバ78はディスプレイ77への各種情報を表示させるための信号を生成・出力し、コンソール70(のCPU71)はディスプレイドライバ78を介して操作メニューや撮影された放射線画像等をディスプレイ77に表示させる。また、操作パネル79は複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される。操作入力検出部80は操作パネル79に対する操作を検出し、検出結果をCPU71へ通知する。
放射線発生装置83は、放射線源85と、コンソール70との間で曝射条件等の各種情報の送受信を行う通信I/F部86と、コンソール70から受信した曝射条件(この曝射条件には管電圧、管電流の情報が含まれている)に基づいて放射線源85を制御する線源制御部87とを備えている。
次に本実施形態の作用を説明する。放射線撮影装置10を使用して放射線画像の撮影を行う場合、撮影者(例えば放射線技師等)は、被撮影者の撮影対象部位と撮影台との間に、照射面11側を上方へ向けた放射線撮影装置10を挿入し、向きや位置等を調整する準備作業を行う。
撮影者は、準備作業が完了すると、操作パネル79を操作して撮影開始を指示する。これにより、コンソール70では、曝射開始を指示する指示信号を放射線発生装置83へ送信し、放射線発生装置83は放射線源85から放射線を射出させる。放射線源85から射出された放射線は、被撮影者の体を透過して放射線撮影装置10の照射面11に照射され、天板13及びセンサパネル23を透過してシンチレータ34の照射/光射出面に照射される。シンチレータ34は照射/光射出面に照射された放射線を吸収し、吸収した放射線量に応じた光量の光を射出する。
センサパネル23は、画素部49に照射された光を画像として検出し、画像メモリ62に画像データを記憶する。CPU64aは、画像メモリ62に記憶された画像データを無線通信部66によってコンソール70へ送信する。コンソール70のCPU71は、放射線撮影装置10から受信した画像データを、RAM73を介してHDD74に記憶する。また、CPU71は、ディスプレイドライバ78を介して、HDD74に記憶されている画像データからなる放射線画像をディスプレイ77に表示させる。
上述した放射線画像の撮影により、放射線検出器19は高温になるため、センサ基板42と支持基板33とが熱膨張係数差により応力が生じるが、この応力は支持基板33の庇状部33aが熱膨張によって変位することにより緩和されるので、第1の接着層26の端縁にかかる応力は、庇状部33aを補強板25に貼り合わせていた従来例に比べて低くなる。これにより、当該応力によってシンチレータ34の端縁がセンサパネル23から剥がれるのを防止することができる。また、放射線画像の端部にシンチレータ34の剥離を原因とする欠陥が表れることもない。
上記実施形態では、補強板25と支持基板33とを貼り合わせる第2の接着層27の外縁が、センサパネル23とシンチレータ34と貼り合わせる第1の接着層26の外縁の内側になるように配置したが、図8に示すように、補強板25自体を、第1の接着層26の外縁の内側に配置されるようなサイズで構成し、補強板25の全域を支持基板33に貼り合わせてもよい。これによれば、補強板25による支持基板33の補強機能を維持したまま、補強板25のサイズを小型、軽量化することができる。
また、上記実施形態では、光電変換部46の光電変換膜46cをアモルファスシリコンによって構成したが、光電変換膜46cは、有機光電変換材料を含む材料で構成してもよい。この場合、主に可視光域で高い吸収を示す吸収スペクトルが得られ、光電変換膜46cによるシンチレータ34から放出された光以外の電磁波の吸収が殆ど無くなるので、X線やγ線等の放射線が光電変換膜46cで吸収されることで発生するノイズを抑制できる。また、有機光電変換材料からなる光電変換膜46cは、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料をセンサ基板42上に付着させることで形成させることができ、センサ基板42に対して耐熱性は要求されない。このため、ガラス以外の材質からなるセンサ基板を用いることもできる。
光電変換膜46cを有機光電変換材料で構成した場合、光電変換膜46cで放射線が殆ど吸収されないので、放射線が透過するようにセンサパネル23が配置される表面読取方式(ISS)において、センサパネル23を透過することによる放射線の減衰を抑制することができ、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。従って、光電変換膜46cを有機光電変換材料で構成することは、特に表面読取方式(ISS)に好適である。
光電変換膜46cを構成する有機光電変換材料は、シンチレータ34から放出された光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ34の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ34の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ34から放出された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ34の放射線に対する発光ピーク波長との差が10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ34の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜46cで発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
放射線検出パネルに適用可能な光電変換膜46cについて具体的に説明する。放射線検出パネルにおける電磁波吸収/光電変換部位は、電極46a、46bと、該電極46a,46bに挟まれた光電変換膜46cを含む有機層である。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び、層間接触改良部位等を積み重ねるか、若しくは混合することで形成することができる。
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質を有する有機化合物である。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物である。従って、ドナー性有機化合物としては、電子供与性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容し易い性質を有する有機化合物である。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物である。従って、アクセプター性有機化合物は、電子受容性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。
有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料や、光電変換膜46cの構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
また、光電変換部46は、少なくとも電極対46a,46bと光電変換膜46cを含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜及び正孔ブロッキング膜の少なくとも何れかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
電子ブロッキング膜は、上部電極46bと光電変換膜46cとの間に設けることができ、上部電極46bと下部電極46aとの間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極46bから光電変換膜46cに電子が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。電子ブロッキング膜には電子供与性有機材料を用いることができる。実際に電子ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜46cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜46cの材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIp、若しくはそれより小さいIpを有するものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
電子ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部46の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
正孔ブロッキング膜は、光電変換膜46cと下部電極46aとの間に設けることができ、上部電極46bと下部電極46aとの間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極46aから光電変換膜46cに正孔が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。正孔ブロッキング膜には電子受容性有機材料を用いることができる。実際に正孔ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜46cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜46cの材料の電子親和力(Ea)と同等のEa、若しくはそれより大きいEaを有するものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
正孔ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部46の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
なお、光電変換膜46cで発生した電荷のうち、正孔が下部電極46aに移動し、電子が上部電極46bに移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜の位置を逆にすれば良い。また、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜は両方設けることは必須ではなく、何れかを設けておけば、或る程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
また、TFT47の活性層を形成可能な非晶質酸化物としては、例えば、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。なお、活性層を形成可能な非晶質酸化物はこれらに限定されるものではない。
また、活性層を形成可能な有機半導体材料としては、例えば、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報で詳細に説明されているため、説明を省略する。
TFT47の活性層を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかによって形成すれば、X線等の放射線を吸収せず、或いは吸収したとしても極めて微量に留まるため、ノイズの発生を効果的に抑制することができる。
また、活性層をカーボンナノチューブで形成した場合、TFT47のスイッチング速度を高速化することができ、また、TFT47における可視光域の光の吸収度合いを低下させることができる。なお、活性層をカーボンナノチューブで形成する場合、活性層にごく微量の金属性不純物が混入しただけでTFT47の性能が著しく低下するため、遠心分離等により非常に純度の高いカーボンナノチューブを分離・抽出して活性層の形成に用いる必要がある。
なお、有機光電変換材料で形成した膜及び有機半導体材料で形成した膜は何れも十分な可撓性を有しているので、有機光電変換材料で形成した光電変換膜46cと、活性層を有機半導体材料で形成したTFT47と、を組み合わせた構成であれば、患者の体の重みが荷重として加わるセンサパネル23の高剛性化は必ずしも必要ではなくなる。
また、センサ基板42は、光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものであればよい。ここで、TFT47の活性層を構成する非晶質酸化物や、光電変換部46の光電変換膜46cを構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、センサ基板42としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、合成樹脂製の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このような合成樹脂製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。なお、センサ基板42には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
なお、アラミドは200度以上の高温プロセスを適用できるため、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドはITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて基板を薄型化できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層してセンサ基板42を形成してもよい。
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂とを複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラ
ス基板等と比べてセンサ基板42を薄型化できる。
センサ基板42としてガラス基板を用いた場合、センサパネル23全体としての厚みは、例えば0.7mm程度になるが、センサ基板42として光透過性を有する合成樹脂からなる薄型の基板を用いることにより、センサパネル23全体としての厚みを、例えば0.1mm程度に薄型化できると共に、センサパネル23に可撓性をもたせることができる。また、センサパネル23に可撓性をもたせることで、放射線撮影装置10の耐衝撃性が向上し、放射線撮影装置10に衝撃が加わった場合にも破損し難くなる。また、プラスチック樹脂や、アラミド、バイオナノファイバ等は何れも放射線の吸収が少なく、センサ基板42をこれらの材料で形成した場合、センサ基板42による放射線の吸収量も少なくなるため、表面読取方式(ISS)によりセンサパネル23を放射線が透過する構成であっても、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
上記実施形態では、ISS方式の放射線検出装置を例に説明したが、本発明は、PSS方式の放射線検出装置にも適用が可能である。また、放射線検出器をカセッテサイズの筐体に組み込む例について説明したが、立位型、臥位型の撮影装置や、マンモグラフィ装置に組み込むことも可能である。その他、上記の実施形態で説明した本発明に係る放射線撮影装置の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
10 放射線撮影装置
19 放射線検出器
23 センサパネル
24 シンチレータパネル
25 補強板
26 第1の接着層
27 第2の接着層
33 支持基板
33a 庇状部
34 シンチレータ
42 センサ基板
43 光センサ

Claims (11)

  1. 放射線を光に変換するシンチレータと、前記シンチレータを支持する支持基板とを有するシンチレータパネルと、
    前記シンチレータにより変換された光を検出する光センサと、前記光センサが設けられたセンサ基板とを有し、第1の接着層によって前記シンチレータと貼り合わされたセンサパネルと、
    第2の接着層によって前記支持基板と貼り合わされた補強板と、を備え、
    前記支持基板、前記センサ基板及び前記補強板のそれぞれに、熱膨張係数の異なる材質を用いた放射線撮影装置であって、
    前記補強板の面方向に直交する方向から見て、前記第2の接着層の外縁が、前記第1の接着層の外縁の内側に配置されていることを特徴とする放射線撮影装置。
  2. 前記センサ基板及び前記補強板の熱膨張係数は、前記支持基板の熱膨張係数よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の放射線撮影装置。
  3. 前記支持基板は、前記シンチレータの前記センサパネルへの貼り合せ面よりも外側に張り出した庇状部を有しており、前記庇状部は、前記第2の接着層によって前記補強板に貼り合わされていないことを特徴とする請求項1または2記載の放射線撮影装置。
  4. 前記第2の接着層の外縁は、前記光センサの有効検出エリアの外側に配置されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の放射線撮影装置。
  5. 前記第2の接着層は、粘着剤からなることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の放射線撮影装置。
  6. 前記第2の接着層の厚みは、50μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項5記載の放射線撮影装置。
  7. 前記補強板は、カーボン基板であることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の放射線撮影装置。
  8. 前記カーボン基板は、ピッチ系炭素繊維からなることを特徴とする請求項7記載の放射線撮影装置。
  9. 前記補強板は長方形であり、前記炭素繊維の繊維方向は、前記補強板の長手方向であることを特徴とする請求項7または8記載の放射線撮影装置。
  10. 前記補強板の厚みは、0.5mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項7〜9いずれか記載の放射線撮影装置。
  11. 前記補強板のサイズは、前記支持基板よりも小さく、かつ前記第2の接着層の配置範囲よりも大きいことを特徴とする請求項7〜10いずれか記載の放射線撮影装置。
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