JP5623683B2 - 動物型糖鎖付加機能をもつ植物細胞 - Google Patents
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Description
タバコ培養細胞への遺伝子の導入は、植物細胞感染能を持つアグロバクテリウムを利用した。A.tumefaciensは、双子葉植物の形質転換に頻用されている。最近では、腫瘍形成にはTiプラスミド上に存在するvir領域にコードされた遺伝子群が関与していることが明らかとなっている。植物感染に際し、アグロバクテリウムは双子葉植物の分泌するフェノール系物質を感染シグナルとして受け取るとvir遺伝子群の転写は活性化され、その結果vir遺伝子にコードされた数個のタンパク質がT−DNA遺伝子の切り出し、移行、組み込みに機能することが知られている。また、T−DNAとvir領域は、それぞれ単独では腫瘍形成能を持たないが、それぞれ別のレプリコン上にあっても同一のアグロバクテリウム中に存在すれば腫瘍形成能を示す。バイナリーベクターを用いた外来遺伝子の導入はこの性質を利用したものである。
得られた形質転換体BY2−FT2〜13株について、それらのカルスから、後述の−材料および方法−のセクション10に記載の方法に従って、ゲノムDNAを調製しPCRによる(後述の−材料および方法−のセクション12を参照のこと)α1,6−FT遺伝子の組み込みを調べた。PCRには以下のプライマーを用いた。FT−Xba:5’−TGGTTCCTGGCGTTGGATTA(配列番号3)、およびFT−Sal:5’−GGATATGTGGGGTACTTGAC(配列番号4)。得られたPCR増幅産物を後述の−材料および方法−のセクション8に記載の方法に従って電気泳動した結果を図3に示す。
PCRによるゲノムDNA解析の結果、α1,6−FT遺伝子の導入が確認された形質転換体のうち増殖の速いBY2−FT2,3,4,6の4株について、後述の−材料および方法−のセクション11に記載の方法に従ってRNAを調製し、RT−PCRを行った(後述の−材料および方法−のセクション13を参照のこと)。結果を図4に示す。上記と同じプライマーを用いてRT−PCRを行い、得られた増幅産物を上記のDNAと同様の条件で電気泳動したところ、図4に示すように、4株とも1700bp付近にα1,6−FT遺伝子の増幅断片と思われるバンドが確認された。野生型BY2サンプルにおいてバンドは確認されず(図4中WTで示されるレーン)、またCaMV 35Sプロモーター配列をもとに設計したプライマー(CaMV primer)(配列番号5)とFT−Salプライマーを用いて行ったRT−PCRではバンドは見られなかった(図4、レーンA):CaMV primer:5'−CGTCTTCAAAGCAAGTGGAT(配列番号5)。
(α1,6−FT酵素活性の確認)
今回、α1,6−FT活性測定に使用したα1,6−FT活性測定キットには基質糖鎖として図10の一番に上に示した構造をもつ蛍光標識糖鎖が含まれている。これは東洋紡(株)においてYazawaら及びSekoらの報告(Glycoconj J 1998 Sep;15(9):863−71 Yazawa S, Kochibe N, Nishimura T, Shima C, Takai I, Adachi M, Asao T, Hada T, Enoki Y, Juneja LR;Biochim Biophys Acta 1997 Apr 17;1335(1−2):23−32 Seko A, Koketsu M, Nishizono M, Enoki Y, Ibrahim HR, Juneja LR ,Kim M, Yamamoto T)を参考に卵黄から、アスパラギン残基が結合した糖鎖(Gn,Gn−bi−Asn)を調製し、アスパラギン残基に蛍光物質(4−Fluoro−7−nitrobenzofurazan (NBD−F,同仁化学研究所))を付加したもの(Gn,Gn−bi−Asn−NBD)である。従来、糖転移酵素の活性測定には基質糖鎖の還元末端を2−アミノピリジンで蛍光標識したPA化糖鎖が用いられるが、このPA化糖鎖は還元末端のN−アセチルグルコサミンが開環構造をとるためα1,6−FTの基質糖鎖とはなり得ない。そのためα1,6−FT活性測定には様々なアクセプター糖鎖と手法が模索されてきた。
BY2−FT3、4、6株について得られた粗タンパク質抽出液のα1,6−フコシルトランスフェラーゼ比活性を測定した。比活性は、HPLCのクロマトグラムから、後述の−材料と方法−のセクションの18.4に示した方法で求めた。その結果、形質転換されていないBY2株(表1中WTで示される)においては検出限界以下であったのに対し、BY2−FT6株で比活性が最も高く、6.03 U/mgタンパク質であった(表1)。ここで、1Uとは1分間あたり1pmolの基質を変換する酵素量とした。
アスパラギン結合型糖鎖の還元末端に存在するN−アセチルグルコサミンにα1,6−結合したフコース残基と強く結合するエンドウ豆レクチン(PSA)を用いて、導入したα1,6−FTのBY2−FT細胞内糖タンパク質糖鎖に与える影響を調べた。まず、後述の−材料および方法−のセクション14に記載に従いBY2−FT細胞より粗タンパク質抽出液を調製し、吸光度A280を測定することで粗タンパク質濃度の概略値を求めた(−材料および方法−のセクション15)。これに基づき後述の−材料および方法−のセクション16および17に記載に従い、SDS−PAGEを行い、そしてレクチン染色を行った。
細胞増殖が最も速いBY2−FT3株を選抜し、α1,6FT遺伝子導入形質転換細胞が産生する糖タンパク質の糖鎖構造を解析した。
7〜10日間培養したタバコ培養細胞BY2−FT3株の培養細胞(湿重量約3kg)を、ガラスホモジナイザーで処理することによって破砕し細胞溶解液を得た。この細胞溶解液を、12,000rpm、20分間、4℃で遠心分離することによって糖タンパク質を含む上清を得た。この上清を、dH2O(脱イオン水)に対して透析した後(1.5×104倍希釈)凍結乾燥して粉末サンプルを得た。
次いで、この粉末サンプルを、100℃で10時間ヒドラジン分解することによって、糖タンパク質に含まれる糖鎖を切り出した。このヒドラジン分解物に、過剰のアセトンを加え、4℃、8,000rpmで20分間遠心分離することで糖鎖を沈殿させた。得られた沈殿物に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および無水酢酸を添加し、糖鎖をNアセチル化した。次いで、得られた反応物を、Dowex 50×2(室町化学工業)を用いて脱塩処理し、さらに、0.1 Nアンモニア水で平衡化したTSK gel TOYO PERAL HW−40(TOSOH)ゲル濾過カラム(2.5×30cm)を通すことで、N結合型糖鎖を回収した。
回収したN結合型糖鎖を2アミノピリジンを用いてPA化した。PA化糖鎖はは、0.1Nアンモニア水溶液で平衡化したTSK gel TOYO PERAL HW−40(TOSOH)ゲル濾過カラム(2.5×30cm)に通すことによって精製した。
PA化糖鎖構造は、逆相(reversed−phase、RP)およびサイズ分画(size−fractionation、SF)HPLCの利用、エキソグリコシダーゼ消化による二次元糖鎖マッピング、そしてMALDI−TOF MS分析を行うことで解析した。
Nアセチルグルコサミニダーゼ(Diplococcus pneumoniae; Roche)酵素消化反応については、各PA化糖鎖を3mUのNアセチルグルコサミニダーゼを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.45)の下で、37℃で2日間反応させた。また、α-L-フコシダーゼ(bovine kidney;sigma)酵素反応については、10mMのα-L-フコシダーゼを含む0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.45)の下で、37℃で2日間反応させた。各酵素消化反応は100℃で3分間煮沸することで停止させ、12,000rpmで5分間遠心した後、上清をHPLCに供した。試料糖鎖の溶出時間を既知の糖鎖の溶出時間と比較した。
MALDI−TOF MS分析は、PerSeptive Biosystems Voyager DE RP Workstationを用いて行った。
BY2−FT3株細胞約3kgより調製したPA化糖鎖は、RP−HPLCおよびSF−HPLCを利用して精製した。RP−HPLCで分画した各フラクション(1〜10)(図11のAにそのクロマトグラムを示す)を回収した後、それぞれSF−HPLCに供した。RP−HPLCで分画したフラクション1から9までのピークをさらにSF−HPLC分析すると合計55のピークが得られた(データの一部を図11のBに示す)。これらピークのいくつかには、複数種のPA化糖鎖が含まれていることがあったので、その場合には、再度SF−HPLCにより糖鎖を完全に精製した。
II、5C−III、5D−II、6B、6F−I、7Eは、フコシダーゼで切断でき、RP−HPLCにおいて分解産物の溶出時間が分解前のものと比べて前に移動した(データは示さず)。これは、これらの糖鎖にα1,6−フコースが結合していることを示している(Glycoconj J 1998 Jan;15(1):89−91 HPLC method for the determination of Fuc to Asn−linked GlcNAc fucosyltransferases. Roitinger A, Leiter H, Staudacher E, Altmann F.)。
1.無菌タバコ植物体の作成
1.5ml容微量遠心チューブに、タバコ(Nicotiana tabacum SR1株(日本たばこ産業株式会社葉タバコ研究所、静岡県磐田郡豊田町東原700から入手した)の種子を入れ、70%エタノールを添加し、3分間振り混ぜることによりタバコの種子を滅菌した。次いで、エタノール溶液を棄て、1mlの滅菌水でタバコの種子を洗浄した。続いてアンチホルミン溶液(市販の次亜塩素酸ナトリウム溶液を10倍に希釈して用いた)を1ml入れて、チューブを時々振り混ぜながら15分間放置した。次いで、アンチホルミン溶液を棄てて、タバコの種子を滅菌水で3回洗浄した。
Anらの方法(An,G.,Ebert,P.R.,Mitra,A.and Ha,S.B.(1988) Binary vectors. In Plant Molecular Biology Manual,A3,1-19,Academic Dordrecht)に従ってタバコ植物体の形質転換を行った。
形質転換体植物体FT(1)、FT(2)、FT1、FT2、およびFT3から得られた約100mgの各植物体試料を、液体窒素中で凍結した。この凍結試料を粉砕した後、DAeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を用い、キットの指示書に従って、各試料から染色体DNAを調製した。
実施例2と同様に、アスパラギン結合型糖鎖の還元末端に存在するN−アセチルグルコサミンにα1,6結合したフコース残基と強く結合するエンドウ豆レクチン(PSA)(Yamamoto K,Tsuji T, Osawa T.,(1982) Carbohydrate Res.,110,283-289,Debray H.,Montreuil J.,(1989)Carbohydrate Res.,185,15-26)を用いて、導入したα1,6−FTの形質転換体で産生された糖タンパク質を解析した。
−材料および方法−
1.使用植物、菌株、プラスミド
(1.1.使用植物)
植物における形質転換体として、タバコBY2培養細胞(Nicotiana tabacum L.cv.Bright Yellow 2)を用いた。
(1.2.使用菌株)
使用菌株を表2に示す。
(2.1.バクテリア培養用培地)
2×YT培地:Bacto−tryptone 16g/l,Yeast extract 10g/l,NaCl 5g/lを用いた。平板培地には12g/lの精製寒天粉末を加えた。必要に応じて終濃度がそれぞれアンピシリン(明治製菓(株))50mg/l、カナマイシン(明治製菓(株))50mg/l、ハイグロマイシン(和光純薬)20mg/l、クロラムフェニコール(和光純薬)25mg/l,リファンピシン(和光純薬)50 mg/l, ストレプトマイシン(和光純薬)20 mg/l となるように加えた。
(2.2.タバコ培養細胞用培地)
改変LS寒天培地:
改変LS培地のKH2PO4を170mg/lにし、KOHでpH5.8に調節し、さらにゲランガム(和光純薬)3g/lを加えた。必要に応じて、終濃度がそれぞれカナマイシン150mg/l,カルベニシリン(和光純薬)250mg/l, ハイグロマイシン20mg/l, メソトレキサート(和光純薬)0.1mg/l,ビアラホス(明治製薬)10mg/lを加えた。
試薬は特に指定のない限り、和光純薬工業、ナカライテスクのものを用いた。制限酵素、修飾酵素は、東洋紡、宝酒造、ニッポンジーン、シグマ、NEB、のものをそれぞれの説明書に従って使用した。
(4.1.コンピテントセルの調製)
宿主大腸菌を2mlの2×YT培地に植菌し、その一晩培養液を坂口フラスコに入れた200mlの2×YT培地に植菌した。37℃で600nmにおける濁度が0.6になるまで振とう培養し、遠心分離(5,000rpm、10分間、0℃)し、上澄み液を捨て、菌体を50mM CaCl2、15%グリセロール混合液5mlに懸濁した後、エッペンドルフチューブに分注し、コンピテントセルとして−80℃で保存した。
(4.2.大腸菌の形質転換)
コンピテントセルを氷中で解凍後、1〜15μlのDNA溶液を加え、氷中に30分放置した。42℃に90秒間置き、直ちに氷中に戻した。1mlの2×YT培地を加えて37℃で1時間培養し、適当な抗生物質を含む寒天培地に広げ、37℃で一晩培養した。
Bevanらのtriparental法を用いて行った。pGPTV系プラスミドを持つ大腸菌、ヘルパープラスミドpRK2013を持つ大腸菌を37℃で一晩、アグロバクテリウムEHA101株もしくはLBA4404株を28℃で二晩、それぞれの抗生物質の入った培地で培養した。
(6.1.タバコ培養細胞の継代培養)
300mlのマイヤーフラスコに改変LS培地を95ml入れ、温度(25〜27℃)、撹拌速度(120rpm)、暗所下で培養を行った。そして、7日毎に定常期に達した細胞を2mlずつ植え継いだ。また、7日目に十分量の細胞数が得られない場合、植え継ぐ量を2倍の4mlとした。
(6.2.タバコ培養細胞の形質転換)
抗生物質を含む2×YT培地中28℃で2日間培養したアグロバクテリウム培養液(pGPTV系プラスミドを持つEHA101株、LBA4404株)、100μlと培養4日目のタバコ培養細胞懸濁液4mlをシャーレに入れてよく混合し、25℃で暗所で静置した。2日後シャーレのなかの培養液を遠心管に移して遠心分離(1,000rpm、5分間)により上澄みを除いた。次に250mg/lのカルベニシリンを含む新しい培地を入れて遠心分離し、細胞を洗浄した。この操作を3回繰り返し、アグロバクテリウムを除いた培養細胞を20mg/lのハイグロマイシン、250mg/lのカルベニシリンを含む改変LS寒天培地にまき、25℃暗所で培養した。約2〜3週間後にカルス化した細胞を新しい改変LS寒天培地上に移し、増殖しているクローンを選択した。さらに2〜3週間後に直径1cm程度に成長したカルスをハイグロマイシン、カルベニシリンを含む改変LS培地30mlに移し、継代培養を行った。
大腸菌やアグロバクテリウムからのプラスミドの少量調製はBirnboinとDolyのアルカリ抽出法に従った。抗生物質を含む2×YT培地で一晩培養(アグロバクテリウムは二晩)した菌体をエッペンドルフチューブに移し、遠心分離(12,000rpm、5分間、室温)により集菌した。この菌体を100μlのSolution I(アグロバクテリウムの場合は5mg/lのlysozymeを含む)に懸濁し、室温に5分間放置した。次に、200μlのSolution IIを加え、よく混合し、氷中に5分間静置した。150μlのSolution IIIを加え、よく混合し、氷中に5分間静置した。遠心分離(12,000rpm、5分間、室温)後、上清を別のチューブに移し、RNAse処理(37℃、30分間)を行った。フェノール−クロロホルム抽出後エタノール沈殿を行い、適当量のTE bufferに溶解した。
TBE bufferにより作成した1.0〜1.5%(w/v)アガロースを使用した。試料に1/5量のGel−Loading bufferを加え、ゲルのスロットに注入した。泳動装置はMupid−2(コスモバイオ)を用い、1×TBE buffer中、100Vの定電圧下で行った。泳動後、ゲルを0.5μg/mlのエチジウムブロマイド水溶液に20分間浸して染色した後、トランスイルミネーター上で観察した。
Gene clean kit Ver .2(フナコシ)を用いて行った。目的断片を含むアガロースゲルをエッペンドルフチューブに移し、1/2倍量のTBE modifier、4.5倍量のNaIを加え、55℃で完全にゲルを溶かした。これに5μlのMatrixを加えてよく混合し、氷中で10分間放置した。軽く遠心分離した後、上清を捨て、200μlのWash bufferで3度沈殿を洗浄した。この沈殿を6μlのTE bufferに懸濁し、55℃で5分から10分間加熱溶出後遠心分離し、DNA溶液である上清を得た。
(10.1.タバコ培養細胞からの染色体DNAの調製)
ISOPLANT(ニッポンジーン)を用いて行った。タバコ培養細胞約0.1gにSolution Iを300μl加えて撹拌し、さらにSolution IIを150μl加えてボルテックスにより撹拌して完全に混合した。50℃で15分間保温した後、Solution IIIを150μl加えて撹拌し、氷上に15分間放置した。遠心分離(12,000rpm、15分間、4℃)後、上清をとりエタノール沈殿を2度行った。沈殿を20μlのTE bufferに溶解し、1μlのRNAseA(10mg/ml)で30分間処理した。
(10.2.タバコカルスからの染色体DNAの調製)
カルス体からの染色体DNAの調製はDNeasy Plant Mini Prep Kit(QIAGEN)を用いて行った。直径約1cmに成長したカルスを液体窒素で凍結した後、乳鉢、乳棒を用いて粉末状になるまで破砕した。この粉末(100mg)をサンプルとしてキットの説明書に従いDNAを調製した。
カルス体からの全RNAの調製はRNeasy Mini Prep Kit(QIAGEN)を用いて行った。操作にあたり、乳鉢、乳棒と滅菌水は0.05% dimethyl pyrocarbonate処理した後、オートクレーブ(120℃、30分間)したものを使用した。直径約1cmに成長したカルスを液体窒素で凍結した後、乳鉢、乳棒を用いて粉末状になるまで破砕し、この粉末(約100mg)をサンプルとしてキットの説明書に従いRNAを調製した。
(12.1.反応系)
染色体DNA 1μl、10×PCR buffer(宝酒造 Takara Ex Taq付属)5μl、dNTPs(宝酒造Takara Ex Taq付属、2.5mM)4μl、primer(各20pmol)、Takara Ex Taq(5U/μl、宝酒造)0.5μl、滅菌水を50μlになるように加えた。
(12.2.反応条件)
反応は以下に示す条件下で行った。サーマルサイクラーはPCR System 9700(PE Biosystems)を用いた。
(13.1.逆転写反応)
RNA PCR Kit Ver.2.1(宝酒造)を用いて行った。Kitに付属しているMgCl2(5mM)4μl、10×RNA PCR buffer 2μl、RNAse Free H2O 8.5μl、dNTPs(1mM)2μl、RNAse Inhibitor(1U/μl)0.5μl、Reverse Transcriptase(0.25U/μl)1μl、Oligo dT−Adaptor Primer(0.125μM)1μl、と上記11に従い調製したRNA Sample 1μlを混合し、以下のプログラムで反応を行った。サーマルサイクラーはPCR System 9700(PE Biosystems)を用いた:サイクル数1 50℃ 30分;99℃ 5分;5℃ 5分。
(13.2.逆転写反応後のPCR)
MgCl2(2.5mM)6μl、10×RNA PCR buffer 8μl、蒸留滅菌水63.5μl、TaKaRa Taq(2.5 U/100μl)0.5μl、Primer(20pmol)を混合し、上記13.1の逆転写反応を終了したチューブに添加した。マイクロ遠心機で約10秒遠心した後、以下に示す条件で反応を行った:StageI サイクル数1 94℃2分;StageII サイクル数45 94℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 1.5分。
植え継ぎ7日目のタバコ培養細胞を遠心分離(3,000rpm、15分間、4℃)にて収穫した後、得られたタバコ培養細胞と同体積の50mM リン酸ナトリウムbuffer(pH7.0)を加え、穏やかに転倒混和し細胞を洗浄した。この作業を3回繰り返した後、遠心分離(3,000rpm、15分間、4℃)により収穫した細胞をハンディーホモヂナイザー(20ml IKEMOTO)に移し細胞を破砕した。その後、細胞破砕液を50ml遠心チューブに移し、遠心分離(12,000rpm、20分間、4℃)して粗タンパク質抽出液である上清を得た。必要に応じて、Protease inhibitor cocktail tablet(BOEHRINGER MANNHEIM)を50mlの抽出液当たり1錠加えた。さらに粗タンパク質の濃縮が必要な際には70%飽和となるように硫酸アンモニウム(和光純薬)を加え、氷上で4から5時間静置した後、遠心分離(12,000rpm、20分間、4℃)して得られたタンパク質を500μlの滅菌水に懸濁して以後の解析に用いた。
DC Protein Assay Kit(Bio−Rad)を用いて行った。このキットはLowly−Folin法に基づいている。説明書の指示に従い反応液を混合し、室温で15分間放置した。その後、750nm吸光度を測定した。仔牛血清アルブミンを標準として0.05〜0.4mg/mlの範囲で検量線を引いてタンパク質量を求めた。
(16.1.トリス-グリシンドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)
Laemmliの方法に従い、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行った。泳動用ゲルとしては分離ゲルに12.5%、濃縮用ゲルに2.5%のポリアクリルアミドゲル(アクリルアミド:ビスアクリルアミド=30:0.8)、泳動用緩衝液としてはトリス-グリシン緩衝液を用いた。試料12μlは試料用緩衝液中で100℃で3分間加熱して変性させ、100Vの定電圧で泳動を行った。
(16.2.分子量マーカー)
クマシーブルー染色と銀染色を行った。クマシーブルー染色は染色液(0.1%クマシーブリリアントブルーR−250、メタノール:酢酸:水=5:5:2(v/v)混液)中にゲルを30分間浸して染色後、脱染色液(メタノール:酢酸:水=2:1:7(v/v)混液)中で一晩振とうして脱染色を行った。銀染色は和光純薬製の銀染色キットを使い、方法はキットの説明書に従った。
SDS−PAGE後のゲルをblotting buffer中で15分間平衡化させた後、セミドライタイプブロッティング装置(セミドライトランスファー装置BE−310バイオクラフト)を用いて、1mA/cm2の定電流で60分〜70分間タンパク質を、PVDFメンブレン(Bio−Rad, Immun−Blot PVDF Membrane for Protein Blotting, 0.2 mm)にブロッティングした。ブロッティング後、PVDFメンブレンを0.6%H2O2/メタノール(v/v)溶液中に浸し、タバコ培養細胞内在性のペルオキシダーゼのブロッキングを行った。ブロッキング後、PVDFメンブレンをwashing bufferで洗浄(10分間、3回)した。次に5% Skim Milkを含むwashing buffer中にメンブレンを浸し室温で2時間穏やかに反応させた後、同様にwashing bufferでPVDFメンブレンを洗浄した。その後、ペルオキシダーゼ標識PSAレクチン(1mg/ml, EY LABORATORIES,INC.)をwashing bufferで1000倍希釈したものにPVDFメンブレンを浸し、室温で90分間反応させた。反応後、上記と同様にメンブレンを洗浄した後PODイムノステインセット(和光純薬)を用い、発色反応を行った。Washing bufferの組成:10mM Tris−HCl(pH7.4)、0.15 M NaCl、0.05% Tween20。
(18.1.粗酵素液の調製)
培養7日目の形質転換体タバコ培養細胞を遠心分離(3,000rpm、20分間、4℃)によって収穫した後、上記14と同様に抽出bufferを用いて細胞を洗浄、再収穫した。その後、ハンディーホモジナイザーを用いて細胞を破砕し、遠心分離(12,000 rpm、20分間、4℃)して得られた上清を粗酵素液とした。抽出bufferの組成:20mM Tris−HCl(pH7.5)、0.175% CHAPS。
(18.2.α1,6−フコシルトランスフェラーゼの酵素反応)
α1,6−活性測定に際し、操作は全て暗所下で行った。東洋紡(株)より贈与されたα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性測定用基質液(15μl)の入ったチューブに上記19.1で調製した粗酵素液5μlを混合し、37℃、3時間の酵素反応を行った。1分間の煮沸により酵素反応を停止させた後、チューブを直ちに氷中に移し1分間放置した。さらにスピンダウンによって滴を落とした後、蒸留水80μlを加え遠心分離(12,000rpm、1分間、4℃)した。得られた上清のうち30μlをHPLC分析に供した。用いたα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性測定用基質液15μlあたりの内訳は、0.5M MES/NaOH buffer,pH7.5 8μl、1nmole/μl Gn,Gn−bi−Asn−NBD 1μl、5nmole/ml GDP−Fucose (和光純薬)2μl、MilliQ水4μlである。用いたHPLCシステム(日立社製)は、インターフェイス(L-7000)、蛍光検出器(LaChrom L−7480)、ポンプ(LaChrom L−7100)、カラムオーブン(LaChrom L−7300)から成る。
(18.3.酵素活性の有無)
HPLC分析により行った。カラムは逆相系のMightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)(関東化学4.6×150mm)を使用した。α1,6−FT活性測定に用いた基質糖鎖は蛍光標識されており、蛍光検出器(Ex;470nm、Em;530nm)によって特異的に検出することが可能である。また、α1,6−フコシル化糖鎖標準品にはα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性測定用基質混合物にα1,6−フコシルトランスフェラーゼ(40mU/ml、東洋紡)5μlを加え、上記の1.18に従って37℃、15分間反応させたものを使用した。
(18.4.活性測定)
以下の条件でのHPLC分析により得られる基質と反応物のピークの面積比を取り、粗酵素液タンパク質1mg当たり1分間に転移するフコース量として活性値を求めた。粗酵素液中の総タンパク質の定量は上記の15に従って行った。
Claims (12)
- 形質転換された植物細胞であって、該植物細胞は、哺乳動物のα1,6−フコシルトランスフェラーゼをコードする第一の導入された遺伝子、及び異種糖タンパク質をコードする第二の導入された遺伝子を有し、ここで、該フコシルトランスフェラーゼは、該形質転換された植物細胞内の該異種糖タンパク質に付着した糖鎖の還元末端アセチルグルコサミン残基にα1,6−結合でフコース残基を転移する、前記植物細胞。
- 請求項1に記載の形質転換された植物細胞から再生されたトランスジェニック植物体。
- 以下のステップ:
哺乳動物のα1,6−フコシルトランスフェラーゼをコードする第一遺伝子、及び前記異種糖タンパク質をコードする第二遺伝子を、宿主植物細胞内に導入する、
を含む、請求項1に記載の形質転換された植物細胞の生産方法。
- 糖タンパク質の製造方法であって、以下のステップ:
植物細胞内に、哺乳動物のα1,6−フコシルトランスフェラーゼをコードする第一遺伝子、及び異種糖タンパク質をコードする第二遺伝子を導入することにより植物細胞を形質転換し、ここで、該フコシルトランスフェラーゼは、該異種糖タンパク質に付着した糖鎖の還元末端アセチルグルコサミン残基にフコース残基を転移し、
得られた形質転換された植物細胞を培養し、そして
糖タンパク質を単離する、
を含む前記方法。
- 前記フコシルトランスフェラーゼが、前記形質転換された植物細胞の細胞内小器官で発現される、請求項4に記載の方法。
- 前記哺乳動物のα1,6−フコシルトランスフェラーゼは、ヒトのα1,6−フコシルトランスフェラーゼである、請求項1に記載の形質転換された植物細胞。
- 前記ヒトのα1,6−フコシルトランスフェラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の形質転換された植物細胞。
- 前記形質転換された植物細胞内の内因性α1,3−フコシルトランスフェラーゼとβ1,2−キシロシルトランスフェラーゼは失活している、請求項1、6、及び7のいずれか1項に記載の形質転換された植物細胞。
- 前記細胞内小器官が、小胞体(ER)又はゴルジ体である、請求項5に記載の方法。
- 前記哺乳動物のα1,6−フコシルトランスフェラーゼは、ヒトのα1,6−フコシルトランスフェラーゼである、請求項3〜5、及び9のいずれか1項に記載の方法。
- 前記ヒトのα1,6−フコシルトランスフェラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列を有する、請求項10に記載の方法。
- 前記形質転換された植物細胞内の内因性α1,3−フコシルトランスフェラーゼとβ1,2−キシロシルトランスフェラーゼを失活させるステップをさらに含む、請求項3〜5、10、及び11のいずれか1項に記載の方法。
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