JP5622769B2 - 半導体装置 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
近年、ポストスケーリング技術が取りざたされる中、メモリスタが注目を集めている。メモリスタとは、素子に流れる電流あるいは素子に印加される電圧によって抵抗値が変化する、2端子の受動素子である。メモリスタは遷移金属酸化物やカルコゲナイドなどの抵抗変化膜を上部電極と下部電極で挟んだシンプルな構造であり、特にワード線電極とビット線電極の間に抵抗変化膜をはさんでワード線とビット線の交点にメモリスタを形成するクロスポイント型メモリスタアレイは、CMOS回路上に容易にプロセス可能で、スケーラビリティーや回路の可塑性などの利点から、ロジックとメモリを融合させる新しい技術として期待されている。
クロスポイント型メモリスタで構成する基本要素回路の一例として、互いに相補的に動作する(スイッチ極性が逆になっている)メモリスタA,Bを備えるラッチ回路が知られている。例えば各メモリスタA,Bの一方の電極が共通の導線に接続される構成において、その導線に正電圧が印加された場合は、一方のメモリスタが低抵抗状態(以下の説明では、「close」と呼ぶ場合もある)に変化し、他方のメモリスタが高抵抗状態(以下の説明では、「open」と呼ぶ場合もある)に変化する。また、その導線に負電圧が印加された場合は、一方のメモリスタが高抵抗状態に変化し、他方のメモリスタが低抵抗状態に変化する。
Philip J. Kuekes, Ducan R. Stewart and R. Stanley Williams, J. Appl. Phys. 97, 034301 (2005).
しかしながら、従来においては、スイッチ極性が逆のメモリスタを実現するためには、一方のメモリスタの下部電極を他方のメモリスタの上部電極に配線するなどの配線の工夫を要するので、構成が複雑化してしまうという問題がある。本発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で、スイッチ極性が逆のメモリスタを実現可能な半導体装置を提供することである。
実施形態の半導体装置は、第1メモリスタと第2メモリスタとを備える。第1メモリスタは、第1電極と第2電極と第1抵抗変化膜とを有する。第1電極は、第1材料で構成される。第2電極は第2材料で構成される。第1抵抗変化膜は、第1電極および第2電極に挟まれるとともに第1電極および第2電極の各々と接続される。第2メモリスタは、第3電極と第4電極と第2抵抗変化膜とを有する。第3電極は第3材料で構成される。第4電極は第2材料で構成される。第2抵抗変化膜は、第3電極および第4電極に挟まれるとともに第3電極および第4電極の各々に接続される。第1抵抗変化膜は、可動イオンを含む薄膜であり、第1電極と第2電極との間の電位差に応じて抵抗状態が変化する。第2抵抗変化膜は、可動イオンを含む薄膜であり、第3電極と第4電極との間の電位差に応じて抵抗状態が変化する。第1材料はN型半導体である一方、第3材料はP型半導体である。そして、第1材料の仕事関数は第2材料の仕事関数よりも小さく、第3材料の仕事関数は第2材料の仕事関数よりも大きい。また、第1電極は、第1メモリスタの上部電極および下部電極のうちの一方の電極であり、第2電極は、第1メモリスタの上部電極および下部電極のうちの他方の電極である。さらに、第3電極は、第2メモリスタの上部電極および下部電極のうち、第1電極と同じ側の電極であり、第4電極は、第2メモリスタの上部電極および下部電極のうち、第2電極と同じ側の電極である。
実施形態のメモリスタを説明するための図。 第1実施形態のラッチ回路の構造例を示す鳥瞰図。 第1実施形態のラッチ回路の断面図。 第1実施形態のラッチ回路の断面図。 第1実施形態のラッチ回路の構造概念図。 第1実施形態のメモリスタの動作例を説明するための図。 第1実施形態のメモリスタの動作例を説明するための図。 第1実施形態のメモリスタの電流電圧特性を示す図。 第1実施形態のメモリスタの動作例を説明するための図。 第1実施形態のメモリスタの動作例を説明するための図。 第1実施形態のメモリスタの電流電圧特性を示す図。 第1実施形態のラッチ回路の動作例を説明するための図。 第1実施形態のラッチ回路の動作概念図を示す図。 第1実施形態のラッチ回路の動作例を説明するための図。 第1実施形態のラッチ回路の動作例を説明するための図。 第1実施形態のラッチ回路の動作例を説明するための図。 第1実施形態のラッチ回路の動作例を説明するための図。 第1実施形態のラッチ回路の製造方法の例を説明するための図。 対比例のラッチ回路の構造概念図。 変形例の製造方法を説明するための図。 変形例の製造方法を説明するための図。 変形例の製造方法を説明するための図。 変形例の製造方法を説明するための図。 第2実施形態のラッチ回路の構造例を示す鳥瞰図。 第2実施形態のラッチ回路の断面図。 第2実施形態のラッチ回路の断面図。 第3実施形態のラッチ回路の構造例を示す鳥瞰図。 第3実施形態のラッチ回路の断面図。 第3実施形態のラッチ回路の断面図。 変形例のラッチ回路の構造例を示す鳥瞰図。 変形例のラッチ回路の断面図。 変形例のラッチ回路の断面図。
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る半導体装置の実施の形態を詳細に説明する。以下では、互いに相補的に動作する2つのメモリスタを備える半導体装置の一例としてラッチ回路を挙げて説明するが、これに限定されるものではない。なお、本明細書中の回路図では、図1に示すように、メモリスタを矢印で表す。図1に示すように、一方の電極に正電圧が印可されてメモリスタが「close」になる場合、矢印の頭は当該一方の電極を指すように、矢印の向きが定義される。また、「close」は、矢印の頭が電極とつながっている図で表現し、「open」は、矢印の頭が電極から外れている図で表現する。
(第1実施形態)
図2は、本実施形態のラッチ回路100の構造例を示す鳥瞰図である。図2に示すように、基板10の表面には、互いに平行に図2のY方向に沿って延在する電極1および電極2が形成される。そして、電極1および電極2の各々を覆うように抵抗変化膜20が成膜され、抵抗変化膜20の上面にはY方向と直交するX方向に延在する電極3が形成される。基板10の表面に垂直な方向(基板10の法線方向)から見た場合に、電極3は、電極1および電極2の各々と交差する。図2の構造例において、III−III線が示す断面を図3、IV−IV線が示す断面を図4に示す。
図5は、ラッチ回路100の構造概念図である。この例では、電極1および電極2が形成される層を「下部電極層」と表記し、電極3が形成される層を「上部電極層」と表記する。
図5に示すように、電極3と電極1は、両者の交差点で抵抗変化膜20を挟んでメモリスタAを形成する。つまり、メモリスタAは、電極1と、電極3と、電極1および電極3に挟まれるとともに電極1および電極3の各々と接続される抵抗変化膜20とを有すると捉えることができる。この例では、電極1はメモリスタAの下部電極として機能し、電極3はメモリスタAの上部電極として機能する。
また、図5に示すように、電極3と電極2は、両者の交差点で抵抗変化膜20を挟んでメモリスタBを形成する。つまり、メモリスタBは、電極2と、電極3と、電極2および電極3に挟まれるとともに第2電極2および電極3の各々と接続される抵抗変化膜20とを有すると捉えることができる。この例では、電極2はメモリスタBの下部電極として機能し、電極3はメモリスタBの上部電極として機能する。また、この例では、各メモリスタ(A,B)の一方の電極(この例では上部電極)は、一体に形成されていると捉えることができる。
また、この例では、電極1、電極2および電極3の各々は配線としても機能するが、これに限らず、例えば各メモリスタ(A,B)の電極(上部電極あるいは下部電極)と、その電極に接続される配線とが別個に形成されてもよい。この場合、各メモリスタ(A,B)の電極の材料と、配線の材料とは同じ材料でもよいし、異なる材料でもよい。ただし、本実施形態のように、各メモリスタの電極が配線を兼ねることにより、電極と配線とが別個に形成される場合に比べて、製造が容易になるという利点がある。
本実施形態では、(電極1の仕事関数)<(電極3の仕事関数)<(電極2の仕事関数)という関係が成立するように各電極の材料が選定される。以下、具体的な内容を説明する。以下の説明では、電極1の材料を「第1材料」、電極3の材料を「第2材料」、電極2の材料を「第3材料」と呼ぶ場合がある。
第2材料(電極3の材料)は、例えば金属であってもよい。本実施形態では、電極3は銀(以下、「Ag」と表記)で構成される。また、第1材料(電極1の材料)は、例えば半導体であってもよい。本実施形態では、電極1は、シリコンに砒素などの5価元素を不純物として添加したn型シリコン(以下、「nSi」と表記)で構成される。さらに、第3材料(電極2の材料)は、例えば半導体であってもよい。本実施形態では、電極2は、シリコンに硼素などの3価元素を不純物として添加したp型シリコン(以下、「pSi」と表記)で構成される。
また、抵抗変化膜20は、可動イオンを含む薄膜であり、例えばイオン伝導体などで構成され得る。イオン伝導体の例としては、金属フッ化物などの金属ハロゲン化物が挙げられる。本実施形態では、抵抗変化膜20は、10〜100nm程度のCaF薄膜で構成される。CaFはCaイオンの正四面体格子の中心にFイオンが存在する構造をしている。CaFは、Fイオンの一部が欠損して陽イオンとして振舞うF欠損を多量に含んでいる。F欠損は0.5eV程度の低いマイグレーションエネルギーを持ち、正四面体Ca結晶の中を比較的自由に動くことができる。従って、CaFの内部電界によってF欠損の分布が変化する。なお、抵抗変化膜20の材料は、上下の電極材料と協同してメモリスタの機能を実現できるものであればよく、その種類は任意である。CaFと同様の性質を持つ材料としては、例えばSrF、BaF、SrCl、PbF等の金属ハロゲン化物の他、ZrOx、TiOx、HfOx、NiO、TaOxなどの遷移金属酸化物、AlOx、MgOなどの金属酸化物、SiOxなどの半導体酸化物、AgS、CuS、AgSe、CuSe、GeS、GeSeなどの硫化物やセレン化物(カルコゲナイド)等が挙げられる。以下では、特に断りのない限り、抵抗変化膜20がCaFで構成される場合を例に挙げて説明する。
次に、各メモリスタ(A,B)の動作例を説明する。まず、図6乃至図8を参照しながら、メモリスタAの動作例を説明する。前述したように、電極1の材料であるnSiの仕事関数(4.1eV)は、電極3の材料であるAgの仕事関数(4.3eV)よりも小さい。図6に示すように、この仕事関数の差に起因して(フェルミ面をそろえるため)、CaFでの内部には電界が生じ、陽イオンはAg側に引き寄せられる一方、陰イオンはnSi側に引き寄せられる。この内部電界によってF欠損の分布が変化する。
図7に示すように、陽イオンとして振舞うF欠損は、CaFとAgの界面(抵抗変化膜20と電極3の界面)に蓄積してF欠損蓄積層を形成する。F欠損蓄積層は導電性が高く、電極のように振舞うことからバーチャルカソードと呼ばれている。F欠損蓄積層は比較的緩やかな内部電界で蓄積したものであるので、nSi側(電極1側)へ向かって濃度が徐々に薄くなっていくが、図7に示したように、一部のF欠損はCaFとnSiの界面のごく近くまでフィラメント状に伸びてきている(図7では、「F欠損フィラメント」と表記)。
ここで、Agに負の電圧バイアスを印加すると、CaFとnSiの界面近傍まで伸びているF欠損フィラメントは負に帯電し、さらに多くのF欠損を引き寄せ、先端が成長してCaFとnSiの界面に到達する。すると、系は急激に低抵抗状態(close)へ遷移する。一方、Agに正の電圧バイアスを印加すると、F欠損蓄積層は正に帯電するので、フィラメントの先端は分解し、CaFとnSiの界面から遠ざかり、系は高抵抗状態(open)へ遷移する。
図8は、実測したメモリスタAの電流電圧特性である。横軸は電極3(Ag)に印加される電圧を示す。図8の矢印は、電圧の掃引に伴う電流変化の方向を示している。また、図8において、X1からX2に至るまでの区間はcloseとなる区間を示し、Y1からY2に至るまでの区間はopenとなる区間を示す。上述のように、電極3(Ag)に負の電圧バイアスを印加すると、F欠損フィラメントの先端が成長して電流が急激に上昇し、低抵抗状態になる(closeする)ことが分かる。一方、電極3(Ag)に印加する電圧バイアスを正へ変化させると、F欠損フィラメントの先端が分解され、電流が低下して高抵抗状態になる(openする)ことが分かる。
次に、図9乃至図11を参照しながら、メモリスタBの動作例を説明する。前述したように、電極2の材料であるpSiの仕事関数(5.2eV)は、電極3の材料であるAgの仕事関数(4.3eV)よりも大きいので、メモリスタAとは全く逆の現象が起こる。図9に示すように、電極2と電極3との間の仕事関数の差に起因して(フェルミ面をそろえるため)、CaFでの内部には電界が生じ、陽イオンはpSi側に引き寄せられる一方、陰イオンはAg側に引き寄せられる。この内部電界によってF欠損の分布が変化する。
図10に示すように、陽イオンとして振舞うF欠損は、CaFとpSiの界面(抵抗変化膜20と電極2の界面)に蓄積してF欠損蓄積層を形成する。F欠損蓄積層は比較的緩やかな内部電界で蓄積したものであるので、Ag側(電極3側)へ向かって濃度が徐々に薄くなっていくが、図10に示したように、F欠損フィラメントはCaFとAgの界面のごく近くまで伸びてきている。
ここで、Agに正の電圧バイアスを印加すると、pSiには相対的に負の電圧バイアスが印加されることになるので、CaFとAgの界面近傍まで伸びているF欠損フィラメントは負に帯電し、さらに多くのF欠損を引き寄せ、先端が成長してCaFとAgの界面に到達する。すると、系は急激に低抵抗状態(close)へ遷移する。一方、Agに負の電圧バイアスを印加すると、pSiには相対的に正の電圧バイアスが印加されることになるので、F欠損蓄積層は正に帯電してフィラメントの先端は分解し、CaFとAgの界面から遠ざかり、系は高抵抗状態(open)へ遷移する。
図11は、実測したメモリスタBの電流電圧特性である。横軸は電極3(Ag)に印加される電圧を示す。図11の矢印は、電圧の掃引に伴う電流変化の方向を示している。また、図11において、X3からX4に至るまでの区間はcloseとなる区間を示し、Y3からY4に至るまでの区間はopenとなる区間を示す。上述のように、電極3(Ag)に正の電圧バイアスを印加すると、F欠損フィラメントの先端が成長して電流が急激に上昇し、低抵抗状態になる(closeする)ことが分かる。一方、電極3(Ag)に印加する電圧バイアスを負へ変化させると、F欠損フィラメントの先端が分解され、電流が低下して高抵抗状態になる(openする)ことが分かる。
以上より、電極3に負の電圧バイアスを印加した場合、メモリスタAはcloseに遷移し、メモリスタBはopenに遷移する。一方、電極3に正の電圧バイアスを印加した場合、メモリスタAはopenに遷移し、メモリスタBはcloseに遷移する。つまり、メモリスタAとメモリスタBは、互いに相補的に動作する(互いに逆の極性を持つ)。
ここでは、電極3に負の電圧バイアスが印加される場合は、各メモリスタの上部電極(電極3)と下部電極(電極1または電極2)との間の電位差は負の極性である一方、電極3に正の電圧バイアスが印加される場合は、各メモリスタの上部電極と下部電極との間の電位差は正の極性であるとする。すなわち、メモリスタAにおいては、上部電極と下部電極との間の電位差が負の極性の場合はcloseになる一方、上部電極と下部電極との間の電位差が正の極性の場合はopenになる。また、メモリスタBにおいては、上部電極と下部電極との間の電位差が負の極性の場合はopenになる一方、上部電極と下部電極との間の電位差が正の極性の場合はcloseになる。
この例では、メモリスタAは請求項の「第1メモリスタ」に対応する一方、メモリスタBは請求項の「第2メモリスタ」に対応する。つまり、電極1は請求項の「第1電極」に対応し、電極2は請求項の「第3電極」に対応し、電極3は請求項の「第2電極」および「第4電極」に対応し、抵抗変化膜20は請求項の「第1抵抗変化膜」および「第2抵抗変化膜」に対応する。また、請求項の「第1の極性」は「負の極性」に対応し、請求項の「第2の極性」は「正の極性」に対応する。
なお、各メモリスタの上部電極と下部電極との間の電位差の極性の決め方は、上記に限られるものではない。例えば電極3に負の電圧バイアスが印加される場合は、各メモリスタの上部電極と下部電極との間の電位差は正の極性である一方、電極3に正の電圧バイアスが印加される場合は、各メモリスタの上部電極と下部電極との間の電位差は負の極性であるとしてもよい。この場合、メモリスタAにおいては、上部電極と下部電極との間の電位差が正の極性の場合はcloseになる一方、上部電極と下部電極との間の電位差が負の極性の場合はopenになる。また、メモリスタBにおいては、上部電極と下部電極との間の電位差が正の極性の場合はopenになる一方、上部電極と下部電極との間の電位差が負の極性の場合はcloseになる。この場合は、請求項の「第1の極性」は「正の極性」に対応し、請求項の「第2の極性」は「負の極性」に対応する。
以上に説明したように、本実施形態のラッチ回路100は、下部電極として機能する電極1、上部電極として機能する電極3、および、電極1と電極3との間に挟持された抵抗変化膜20を有するメモリスタAと、下部電極として機能する電極2、上部電極として機能する電極3、電極2と電極3との間に挟持された抵抗変化膜20を有するメモリスタBとを備える。そして、(電極1の材料の仕事関数)<(電極3の材料の仕事関数)<(電極2の材料の仕事関数)という関係が成立するように各電極の材料を選定することにより、メモリスタAおよびメモリスタBを互いに相補的に動作させることが可能になる。
後述するように、本実施形態では、(1)基板10上に各メモリスタの下部電極(電極1、電極2)を形成し、(2)各メモリスタを覆う抵抗変化膜20を成膜し、(3)抵抗変化膜20の上面に共通の上部電極(電極3)を形成するという工程により、互いに相補的に動作する2つのメモリスタを基板10上に形成することができるので、例えば一方のメモリスタの下部電極を他方のメモリスタの上部電極に配線するなどの工夫は必要としない。すなわち、本実施形態によれば、簡易な構成で、互いに相補的に動作するメモリスタを実現できる。
なお、本実施形態では、電極1の材料(第1材料)をnSi、電極2の材料(第3材料)をpSi、電極3の材料(第2材料)をAgとしたが、上記の仕事関数の関係が成立していれば、他の材料の組み合わせでもよい。
ここで、電極1と電極2の材料はイオン化しにくいことが望ましい。高濃度ドープの半導体はイオン化しにくい電極材料のひとつである。半導体はドープする不純物の種類や濃度によって仕事関数を調整することができるため、電極1と電極2で同一の半導体材料(例えばシリコン)を用いた上で、不純物を添加する(ドープする)ことによって仕事関数差を制御することが可能である。一般に、電極1と電極2で異なる材料を用いた場合、仕事関数以外に材料固有の性質が異なるため、必ずしも思い通りに回路が動作しないことがあり得る。例えば、両者の間でイオン化傾向が異なる場合、仕事関数以外にも酸化還元電位を考慮する必要が出てくる。一方、電極1と電極2で同一の半導体材料を用いる場合は、ドーピング条件のみを変えることで仕事関数のみに差をつけることができ、電極1および電極2の各々の材料固有の性質による余計な設計要素を排除することができる。
電極に用いる半導体材料の例としては、シリコン(Si)の他、Ge、SiGe、SiC等のIV族半導体であっても良く、また、GaAs、GaSb、InP、InAs、InSbなどの化合物半導体であっても良い。電極1と電極2との間に仕事関数差をつけるためにはバンドギャップが大きいことが望ましく、通常のLSIの動作電圧を考えると、1eV以上のバンドギャップを持つ半導体、例えばシリコン(バンドギャップ:1.1eV)、SiC(3.2eV)、InP(1.4eV)、GaAs(1.5eV)などが望ましい。
各メモリスタの上部電極(電極3)の材料は、上述の通り、(電極1の仕事関数)<(電極3の仕事関数)<(電極2の仕事関数)を満たす必要がある。例えばシリコンやGaAsの場合、電子親和力はおよそ4.1eVであるので、高濃度N型半導体の仕事関数は4.1eV、高濃度P型半導体の仕事関数はそれぞれ5.2eV、5.6eVとなる。これらの半導体を下部電極(電極1、2)として用いる場合、上部電極として用いる材料の仕事関数Wは4.1≦W≦5.2eV(シリコン)、5.6eV(GaAs)を満たす必要がある。これを満たす金属は前述のAg(4.3eV)の他、例えばAl(4.2eV)、Ta(4.2eV)、Mo(4.5eV)、W(4.5eV)、Co(4.5eV)、Cr(4.5eV)、Cu(4.5eV)、Ru(4.7eV)、Au(4.7eV)、Pd(4.9eV)、Ni(5.2eV、GaAsのみ)、Ir(5.4eV、GaAsのみ)、TiN(4.7eV)等がある。一方、例えばInPを用いる場合は、電子親和力がおよそ4.4eVであるため、高濃度N型半導体の仕事関数は4.4eV、高濃度P型半導体の仕事関数は5.8eVとなる。この場合は、上部電極の材料としては、例えばMo(4.5eV)、W(4.5eV)、Co(4.5eV)、Cr(4.5eV)、Ru(4.7eV)、Au(4.7eV)、Pd(4.9eV)、Ni(5.2eV)、Ir(5.4eV)、Pt(5.7eV)が挙げられる。
次に、本実施形態のラッチ回路100の動作例を説明する。ラッチ回路100の動作は、不図示の制御回路によって制御される。制御回路は、各電極(1、2、3)に供給する電圧を制御して、ラッチ回路100の動作を制御する。ここでは、メモリスタAがopen、メモリスタBがcloseになる状態を「ロジック0」と定義し、メモリスタAがclose、メモリスタBがopenになる状態を「ロジック1」と定義する。また、メモリスタAおよびメモリスタBがopenになる状態を「リセット」と定義する。
ラッチ回路100の動作を開始する前に、制御回路は、ラッチ回路100の状態を「リセット」に設定する。より具体的には、図12に示すように、制御回路は、電極3に供給する電圧をGND(例えば0V)、電極1に供給する電圧を−VresetA(<GND)、電極2に供給する電圧をVresetB(>GND)に制御する。この場合、メモリスタAの上部電極(電極3)に対して、正の電圧バイアス(+VresetA)が印加され、メモリスタBの上部電極(電極3)に対して、負の電圧バイアス(−VresetB)が印加されていると捉えることができる。
図13は、各メモリスタ(A,B)の動作概念図を示す図である。ここでは、上部電極(電極3)に印加される電圧バイアスがVresetを超えれば、メモリスタはopenに遷移する。図12の例では、メモリスタAの上部電極に印加される電圧バイアス|+VresetA|>Vreset、メモリスタBの上部電極に印加される電圧バイアス|−VresetB|>Vresetとなるので、メモリスタAおよびメモリスタBの各々は、openに遷移する。これにより、ラッチ回路100の状態は「リセット」に設定される。
次に、ラッチ回路100の状態が「リセット」から「ロジック0」に設定される場合を説明する。この場合、図14に示すように、制御回路は、電極3に対して+V(>0)の電圧を印加し、電極2に対して−VbaseB(<0)の電圧を印加し、電極1に対して+VbaseA(>0)の電圧を印加する。この場合、メモリスタBの上部電極(電極3)に対して、正の電圧バイアス(V+VbaseB)が印加されていると捉えることができる。図13からも理解されるように、V+Vbase>Vsetであれば、メモリスタはcloseに遷移する。図14の例では、(V+VbaseB)>Vsetとなるので、メモリスタBはcloseに遷移する。一方、メモリスタAの上部電極(電極3)に印加される電圧バイアス|V−VbaseA|は、十分に小さい値となる(Vsetを下回る)ので、メモリスタAはopenのままである。このようにして、ラッチ回路100にデータが格納される。メモリスタは不揮発性であるので、電源を切っても、メモリスタBはclose状態、メモリスタAはopen状態に維持される。そして、「格納されたデータ」を出力するには、図15に示すように、制御回路は、電極2に印加する電圧を+Vに制御し、電極1に印加する電圧を−Vに制御する。これにより、電極3に+Vが出力される(出力Vout=+V)。
次に、ラッチ回路100の状態が「リセット」から「ロジック1」に設定される場合を説明する。この場合、図16に示すように、制御回路は、電極3に対して−Vの電圧を印加し、電極2に対して−VbaseBの電圧を印加し、電極1に対して+VbaseAの電圧を印加する。この場合、メモリスタAの上部電極(電極3)に対して、負の電圧バイアスは、(−V−VbaseA)が印加されると捉えることができる。そして、図16の例では、|−V−VbaseA|>Vsetとなるので、メモリスタAはcloseに遷移する。一方、メモリスタBの上部電極(電極3)に印加される電圧バイアス|−V+VbaseB|は、十分に小さい値となる(Vsetを下回る)ので、メモリスタBはopenのままである。このようにして、ラッチ回路100にデータが格納される。メモリスタは不揮発性であるので、電源を切っても、メモリスタBはopen状態、メモリスタAはclose状態に維持される。そして、「格納されたデータ」を出力するには、図17に示すように、制御回路は、電極2に印加する電圧を+Vに制御し、電極1に印加する電圧を−Vに制御する。これにより、電極3に−Vが出力される(出力Vout=−V)。
ここでは、電極3に印加する電圧Vを、比較的小さい電圧(VsetやVresetに比べて小さい電圧)に制御することにより、伝送線路の途中にある他のラッチ回路やメモリスタの状態遷移が引き起こされることを抑制しつつ、電極1に対してVbaseA、電極2に対して−VbaseBを補助的に印加することにより、メモリスタA,Bの状態を遷移させる構成となっている。
次に、図18を参照しながら、本実施形態のラッチ回路100の製造方法の例を説明する。まず、基板10上に絶縁膜11を成膜する(図18の(a))。絶縁膜11は例えばSiOであり、膜厚は例えば50nmである。以下では、絶縁膜11はSiOで構成される場合を例に挙げて説明する。次に、リソグラフィーとエッチング技術を利用して、紙面に垂直な方向(図18のY方向)に沿って延びる溝を絶縁膜11に掘る(図18の(b))。溝の幅(Y方向と直交するX方向の寸法)は最小加工寸法f程度である。基板10が導電性の場合、溝の底は絶縁膜11が残るように、絶縁膜の膜厚よりも溝を浅くする。基板10が絶縁性の場合は、基板10の表面に到達するまで溝を掘っても構わない。
次に、CVDやスパッタ等の方法で、電極1の材料を成膜し、電極1の材料(第1材料)で溝を埋める(図18の(c))。前述の通り、第1材料は、イオン化しにくい材料であることが望ましい。ここでは、第1材料がnSiである場合を例に挙げて説明する。次に、CMPあるいはRIEなどの方法により、絶縁膜11の上面(表面)が露出するまで、Z方向にnSiを削る(図18の(d))。これにより、絶縁膜11の中にnSiがライン状に埋め込まれた構造になる。
次に、リソグラフィーとエッチング技術を用いて、電極1のnSiラインと平行な溝を絶縁膜11に掘り、電極1の場合と同様に、電極2の材料(第3材料)で溝を埋める(図18の(e))。第3材料は電極3(上部電極)よりも仕事関数が大きな材料であり、やはりイオン化しにくい材料であることが望ましい。ここでは、第3材料がpSiである場合を例に挙げて説明する。
以上のように形成したnSiのラインパターンおよびpSiのラインパターンの上に、抵抗変化膜20を成膜する。抵抗変化膜20は、例えばCaF薄膜であり、膜厚は例えば10〜100nm程度である(図18の(f))。ここでは、抵抗変化膜20がCaFである場合を例に挙げて説明する。次に、nSiのラインパターンおよびpSiのラインパターンの延在方向と直交する方向(図18のX方向)に延びるとともに、基板10の法線方向(図18のZ方向)から見てnSiのラインパターンおよびpSiのラインパターンの各々と交差する電極3の材料(第2材料)のラインパターンを、抵抗変化膜20の上面に形成する(図18の(g))。第2材料は例えばAgであり、厚さは例えば10〜100nm程度である。図18の(h)は、図18の(g)のV−V線の断面を示す図である。図18の(h)に示すように、ラインの幅(Y方向の寸法)はf以下である。また、ラインのピッチは2fである。電極3の材料(第2材料)の成膜、ラインのパターニング方法は一般的なLSIの配線プロセスに準ずるものであり、詳細な説明は省略する。以上のようにして図2のラッチ回路100が形成される。
ここで、リソグラフィーの合わせ精度は最小加工寸法の20%程度である。従って2本の電極1(nSiライン)の間に電極2(pSiライン)を埋め込む場合、±20%程度の合わせズレを考慮して、図18の(i)に示すように、nSiラインの間隔を1.5f以上に設計する必要がある。このことは、nSiラインとpSiラインのペアが占める最小幅、つまりペアの最小ピッチは1.5f+1f(nSiラインの幅)=2.5fであることを意味する。一方、上述の通り、電極3(上部電極)の最小ピッチは2fである。従って、このラッチ回路100の最小サイズは、2.5f×2f=5fとなる。
一方、図19は、2種類の電極材料(101、102)を用いてメモリスタAx,Bxが形成される場合の構造概念図である。この場合、2つのメモリスタ(Ax,Bx)を相補的に動作させるためには、例えば一方のメモリスタAxの下部電極と、他方のメモリスタBxの上部電極とを接続する必要がある。このため、図19の例では、上部電極層と下部電極層との間にビアが設けられて、一方のメモリスタAxの下部電極と、他方のメモリスタBxの上部電極とが接続されている。つまり、図19の例では、ビアを形成するための領域を確保する必要があり、最小加工寸法をfとすると、同一配線層内の配線間隔は3f程度以上になる。従って、ひとつのラッチ回路の下部電極層ピッチは6f、上部電極層ピッチは3fとなり、ひとつのラッチ回路あたり18f程度以上の面積が必要になる。
これに対して、本実施形態では、一方のメモリスタの下部電極を他方のメモリスタの上部電極に配線する必要が無いので、ビアを形成するための領域は不要となる。したがって、図19の例に比べて、ひとつのラッチ回路を形成するのに必要な基板10上の面積を小さくできる。上述したように、本実施形態では、ひとつのラッチ回路を形成するのに必要な基板10上の面積の最小サイズは5fで済む。LSIの素子高密度化の観点からは、ラッチ回路の面積を小さくすることが望ましいため、ラッチ回路の最小サイズを低減可能な本実施形態の構成は格別に有効である。
(第1実施形態の変形例1)
次に、図20を参照しながら、ラッチ回路の別の製造方法の例を説明する。図18の例では、電極1および電極2を絶縁膜11中に埋め込んで作成する方法を説明したが、基板10が絶縁性の場合は、図20の例のように、絶縁膜11を設けずに基板10上に形成しても良い。まず、基板(絶縁性の基板)10上にレジスト12を塗布する(図20の(a))。次に、リソグラフィーとエッチング技術を利用してY方向に沿って延びる溝をレジスト12に掘る(図20の(b))。溝の幅(X方向の寸法)は最小加工寸法f程度である。次に、CVDやスパッタなどの方法で、電極1の材料(ここではnSi)を成膜し、電極1の材料で溝を埋める(図20の(c))。次に、有機溶剤などでレジストを除去すると、電極1の材料のラインのみが基板10上に残る(図20の(d))。同様にして、電極1の材料のラインと平行な電極2の材料(ここではpSi)のラインを基板10上に形成する(図20の(e))。前述の通り、リソグラフィーの合わせ精度から、電極1のラインと電極2のラインのペアの最小ピッチは2.5fである。その後は図18の場合と同様に、抵抗変化膜20を成膜し(図20の(f))、電極3(上部電極)を形成する(図20の(g))。図18の(i)と同様に、ラッチ回路100の最小サイズは2.5f×2f=5fとなる。
(第1実施形態の変形例2)
次に、図21を参照しながら、ラッチ回路の別の製造方法の例を説明する。電極1,2を半導体で構成する場合は、イオン注入を打ち分けるという方法で電極を作成することも可能である。その例を図21の(a)〜(g)に示す。
まず、絶縁性の基板10上に非ドープ半導体もしくは不純物濃度が1×1018cm−3未満の低濃度ドープ半導体13を成膜する(図21の(a))。以下では、ドープ半導体13が非ドープSiである場合を例に挙げて説明する。次に、リソグラフィーおよびエッチング技術を用いて、互いに平行にY方向に延びる2本のSiラインが基板10上に形成されるように、ドープ半導体13を加工する(図21の(b))。Siラインの幅はfもしくはスリミング技術によってf以下にできる。Siラインのピッチは2fである。
次に、リソグラフィーによって、隣り合うSiラインのうちの一方のみをレジスト12で覆う。ラインの最小間隔がf程度であるので、リソグラフィーの合わせ精度±0.2fで隣り合うSiラインのうちの一方のみをレジスト12で覆うことは可能である。このレジスト12をマスクとしてドナー不純物のイオン注入を行う(図21の(c))。ドナー不純物は例えばAsである。これにより、nSiのライン(電極1のライン)が基板10上に形成される。
同様にして、Asを注入したSiラインをレジスト12で覆い、Asを注入していないSiラインのみにアクセプタ不純物のイオン注入を行う(図21の(d))。アクセプタ不純物は例えばBである。不純物注入後に必要に応じて不純物の活性化のための熱処理を行う。これにより、pSiのライン(電極2のライン)が基板10上に形成される。
次に、電極1および電極2を覆うように抵抗変化膜20を成膜する(図21の(e))。抵抗変化膜20は例えば膜厚10〜100nmのCaF膜である。抵抗変化膜20を成膜後、その抵抗変化膜20の上面に電極3(上部電極)を形成する(図21の(f)、(g))。
より具体的には、図18の例と同様に、電極1および電極2の延在方向と直交する方向(X方向)に延びるとともに、基板10の法線方向(Z方向)から見て電極1のラインパターンおよび電極2のラインパターンの各々と交差する電極3のラインパターンを、抵抗変化膜20の上面に形成する。なお、図21の(g)は、図21(f)のVI−VI線の断面を示す図である。
(第1実施形態の変形例3)
図21の例では、絶縁性の基板10に非ドープSi(真性の半導体材料)を成膜し、ライン状に切り出す方法を説明したが、例えば図22に示すように、絶縁膜11に埋め込む方法で電極1,2用のラインを形成しても良い。まず、基板10上に絶縁膜11を成膜する(図22の(a))。次に、リソグラフィーとエッチング技術を利用して、互いに平行に紙面に垂直な方向(Y方向)に沿って延びる2本の溝を絶縁膜11に掘り(図22の(b))、この溝に非ドープSiを埋め込む(図22の(c))。この埋め込み方法は図18の(a)〜(d)と全く同様であるので、詳細な説明は省略する。埋め込み後のプロセスは図21の(c)〜(g)と全く同様であるので、詳細な説明は省略する。最終的には、図22の(f)および(g)に示す構造が出来上がる。
図21および図22の製造方法例では、電極1,2用のラインを、非ドープSiから1回のリソグラフィーで切り出しているため、図21の(f)および図22の(f)に示したとおり、各ラインの最小ピッチは2fである。従って、電極1と電極2のペアで考えると最小ピッチは4fとなる。上部電極(電極3)の最小ピッチが2fであるので、このラッチ回路の最小面積は4f×2f=8fである。
(第1実施形態の変形例4)
次に、図23を参照しながら、ラッチ回路の別の製造方法の例を説明する。これまでに説明した方法では、電極1,2をリソグラフィーによって作り分けていた。このため、2回以上の合わせ精度の高いリソグラフィーが必要であり、製造コストがかかる。そこで、以下では、リソグラフィーの回数を1回とする製造方法の例を説明する。
まず、CVDなどの方法で、絶縁性の基板10上に電極1の材料(第1材料)を成膜する(図23の(a))。第1材料は例えばnSiであり、厚さは例えば20nm程度である。ここでは、第1材料がnSiである場合を例に挙げて説明する。次に、リソグラフィーおよびエッチング技術を用いて、互いに平行にY方向に延びる2本のnSiラインが基板10上に形成されるように、成膜されたnSiを加工する(図23の(b))。リソグラフィーの最小加工寸法がfである場合、nSiラインのピッチは2fとなる。マスク材のラインの幅(X方向の寸法)はf程度で形成できるが、必要に応じてスリミングなどを施すことにより、f以下にすることもできる。
次に、nSiラインを覆う側壁材14を基板10上に成膜する(図23の(c))。側壁材14は例えばSiN、SiOなどの絶縁体であり、厚さは例えば5nm程度である。次に、例えばRIEなどの直進性の良いエッチング技術を用いて、nSiラインの側面に側壁15が形成されるように、側壁材14をエッチングする(図23の(d))。ここで、直進性の良いエッチング技術を用いることにより、nSiラインの側面に側壁材14を残して側壁15を形成することが可能になる。
次に、CVDあるいはスパッタなどの方法で、側壁15が形成されたnSiラインを覆うように、電極2の材料(第3材料)を基板10上に成膜する(図23の(e))。ここでは、第3材料がpSiである場合を例に挙げて説明する。次に、CMPあるいはRIEなどの方法により、nSiラインが露出するまで、Z方向にpSiを削る(図23の(f))。これにより、nSiラインとpSiラインが交互に並ぶ(図23の(f))。nSiラインとpSiラインは、側壁15によって電気的に絶縁されている。なお、例えばウェットエッチングなどの方法で側壁15を除去してもよい。側壁15を除去してもnSiラインとpSiラインとの間にはエアギャップが残るため、両者は電気的に絶縁される。
次に、nSiラインパターンおよびpSiラインパターンの上面に抵抗変化膜20を成膜し、成膜した抵抗変化膜20の上面に上部電極(電極3)を形成する(図23の(g)、(h))。抵抗変化膜20は例えば厚さ10〜100nmのCaF薄膜である。上部電極は、nSiのラインパターンおよびpSiのラインパターンの延在方向と直交する方向(X方向)に延びるとともに、基板10の法線方向(Z方向)から見てnSiのラインパターンおよびpSiのラインパターンの各々と交差するライン状電極であり、材料は例えばAgである。
以上の製造方法で作成したラッチ回路では、電極1のラインのピッチが2fであり、電極2は電極1の間に形成することから、電極1,2のペアの最小ピッチは2fである。上部電極(電極3)の最小ピッチは2fであるので、ラッチ回路の最小面積は2f×2f=4fであり、ラッチ回路のサイズのさらなる低減を図ることが可能になる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。上述の第1実施形態と共通する部分については、同一の符号を付して適宜に説明を省略する。第2実施形態では、電極1および電極2は、基板10の表面上に形成された配線層の上面に形成される点で第1実施形態と相違する。以下、具体的に説明する。
図24は、第2実施形態のラッチ回路200の構造例を示す鳥瞰図である。図24に示すように、基板10上には、互いにY方向に沿って平行に延在する電極1および電極2が形成される。そして、電極1および電極2の各々を覆うように抵抗変化膜20が成膜され、抵抗変化膜20の上面にはY方向と直交するX方向に延在する電極3が形成される。基板10の法線方向から見た場合に、電極3は、電極1および電極2の各々と交差する。
電極1および電極2と基板10の間には、電極1および電極2の材料よりも抵抗率の低い材料で形成された配線層16が介在している。かかる配線層16が、第1電極および第2電極の各々に接続されることにより、電極1および電極2のY方向の抵抗を小さくすることができる。つまり、配線層16は、電極1および電極2のY方向の抵抗を低減させる役割を果たす。図24の構造例において、IX−IX線が示す断面を図25、X−X線が示す断面を図26に示す。
第1実施形態と同様に、電極3と電極1はその交差点で抵抗変化膜20をはさんでメモリスタAを形成し、電極3と電極2はその交差点で抵抗変化膜20をはさんでメモリスタBを形成する。電極1および電極2は、例えば半導体で形成されており、例えば電極1の材料はnSi、電極2の材料はpSiである。配線層16は電極1および電極2の材料よりも抵抗率の低い材料で形成される。例えば電極1,2が半導体で形成される場合は、配線層16の材料としては金属などが望ましい。例えば耐熱性が高く、反応性の低い金属であっても良く、例えばW、Mo、TiN等であっても良い。また、加工が容易な金属であってもよく、例えばAl、Cu等であっても良い。また、配線層16は、二種類以上の金属の多層構造であっても良い。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。上述の各実施形態と共通する部分については、同一の符号を付して適宜に説明を省略する。第3実施形態では、電極1および電極2は上部電極として機能し、電極3は下部電極として機能する点で上述の各実施形態と相違する。以下、具体的に説明する。
図27は、第3実施形態のラッチ回路200の構造例を示す鳥瞰図である。図27に示すように、基板10上には、Y方向に沿って延在する電極3が形成される。そして、電極3を覆うように抵抗変化膜20が成膜され、抵抗変化膜20の上面には、互いに平行にX方向に延在する電極1および電極2が形成される。基板10の法線方向から見た場合に、電極3は、電極1および電極2の各々と交差する。図27の構造例において、XI−XI線が示す断面を図28、XII−XII線が示す断面を図29に示す。電極3と電極1はその交差点で抵抗変化膜20をはさんでメモリスタAを形成し、電極3と電極2はその交差点で抵抗変化膜20をはさんでメモリスタBを形成する。本実施形態は、上述の各実施形態の電極1,2と電極3を上下に入れ替えた構造であり、他はすべて同様であるので、詳細な説明は省略する。
(第3実施形態の変形例)
なお、下部電極として機能する電極3が絶縁膜11に埋め込まれた構造でもよい。この場合、図22の例のように、基板10上に絶縁膜11が形成されることが必要である。図30は、基板10の表面上に成膜された絶縁膜11の中に電極3が埋め込まれた構造の例を示す鳥瞰図である。図30の構造例において、XIII−XIII線が示す断面を図31、XIV−XIV線が示す断面を図32に示す。
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
上述の各実施形態では、各メモリスタ(A,B)に含まれる抵抗変化膜は、共通の抵抗変化膜20で構成されている。つまり、請求項の「第1抵抗変化膜」および「第2抵抗変化膜」は一体に形成される形態を例示しているが、これに限らず、請求項の「第1抵抗変化膜」および「第2抵抗変化膜」は別個に(非連続に)形成される形態であってもよい。ただし、上述の各実施形態のように、請求項の「第1抵抗変化膜」および「第2抵抗変化膜」が一体に形成される形態によれば、「第1抵抗変化膜」と「第2抵抗変化膜」とが別個に形成される場合に比べて、製造が容易になるという利点がある。
要するに、本発明の半導体装置(例えばラッチ回路)は、第1材料で構成される第1電極(実施形態の「電極1」に対応)と、第2材料で構成される第2電極(実施形態の「電極3」に対応)と、第1電極および第2電極に挟まれるとともに第1電極および第2電極の各々と接続される第1抵抗変化膜(実施形態の「抵抗変化膜20」に対応)と、を有する第1メモリスタ(実施形態の「メモリスタA」に対応)と、第3材料で構成される第3電極(実施形態の「電極2」に対応)と、第2材料で構成される第4電極(実施形態の「電極3」に対応)と、第3電極および第4電極に挟まれるとともに第3電極および第4電極の各々に接続される第2抵抗変化膜(例えば実施形態の「抵抗変化膜20」)と、を有する第2メモリスタ(例えば実施形態の「メモリスタB」)と、を備え、第1材料の仕事関数は、第2材料の仕事関数よりも小さく、第3材料の仕事関数は、第2材料の仕事関数よりも大きい形態であればよい。
なお、上述の各実施形態および変形例は、適宜に組み合わせることが可能である。
1 電極
2 電極
3 電極
10 基板
11 絶縁膜
12 レジスト
13 ドープ半導体
14 側壁材
15 側壁
16 配線層
20 抵抗変化膜
100 ラッチ回路
200 ラッチ回路
A メモリスタ
B メモリスタ

Claims (9)

  1. 第1材料で構成される第1電極と、第2材料で構成される第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に挟まれるとともに前記第1電極および前記第2電極の各々と接続される第1抵抗変化膜と、を有する第1メモリスタと、
    第3材料で構成される第3電極と、前記第2材料で構成される第4電極と、前記第3電極および前記第4電極に挟まれるとともに前記第3電極および前記第4電極の各々に接続される第2抵抗変化膜と、を有する第2メモリスタと、を備え、
    前記第1抵抗変化膜は、可動イオンを含む薄膜であり、前記第1電極と前記第2電極との間の電位差に応じて抵抗状態が変化し、
    前記第2抵抗変化膜は、可動イオンを含む薄膜であり、前記第3電極と前記第4電極との間の電位差に応じて抵抗状態が変化し、
    前記第1材料はN型半導体である一方、前記第3材料はP型半導体であり、
    前記第1材料の仕事関数は、前記第2材料の仕事関数よりも小さく、前記第3材料の仕事関数は、前記第2材料の仕事関数よりも大きく、
    前記第1電極は、前記第1メモリスタの上部電極および下部電極のうちの一方の電極であり、
    前記第2電極は、前記第1メモリスタの上部電極および下部電極のうちの他方の電極であり、
    前記第3電極は、前記第2メモリスタの上部電極および下部電極のうち、前記第1電極と同じ側の電極であり、
    前記第4電極は、前記第2メモリスタの上部電極および下部電極のうち、前記第2電極と同じ側の電極である、
    半導体装置。
  2. 第1材料で構成されるとともにデータを読み出す場合において入力側に接続される第1電極と、第2材料で構成されるとともにデータを読み出す場合において出力側に接続される第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に挟まれるとともに前記第1電極および前記第2電極の各々と接続される第1抵抗変化膜と、を有する第1メモリスタと、
    第3材料で構成されるとともにデータを読み出す場合において入力側に接続される第3電極と、前記第2材料で構成されるとともにデータを読み出す場合において出力側に接続される第4電極と、前記第3電極および前記第4電極に挟まれるとともに前記第3電極および前記第4電極の各々に接続される第2抵抗変化膜と、を有する第2メモリスタと、を備え、
    前記第1抵抗変化膜は、可動イオンを含む薄膜であり、前記第1電極と前記第2電極との間の電位差に応じて抵抗状態が変化し、
    前記第2抵抗変化膜は、可動イオンを含む薄膜であり、前記第3電極と前記第4電極との間の電位差に応じて抵抗状態が変化し、
    前記第1材料の仕事関数は、前記第2材料の仕事関数よりも小さく、前記第3材料の仕事関数は、前記第2材料の仕事関数よりも大きく、
    前記第1電極は、前記第1メモリスタの上部電極および下部電極のうちの一方の電極であり、
    前記第2電極は、前記第1メモリスタの上部電極および下部電極のうちの他方の電極であり、
    前記第3電極は、前記第2メモリスタの上部電極および下部電極のうち、前記第1電極と同じ側の電極であり、
    前記第4電極は、前記第2メモリスタの上部電極および下部電極のうち、前記第2電極と同じ側の電極である、
    半導体装置。
  3. 前記第1電極と前記第2電極との間の電位差が第1の極性の場合は、前記第1メモリスタは低抵抗状態になる一方、前記第1電極と前記第2電極との間の電位差が前記第1の極性とは逆の極性を示す第2の極性の場合は、前記第1メモリスタは高抵抗状態になり、
    前記第3電極と前記第4電極との間の電位差が前記第1の極性の場合は、前記第2メモリスタは高抵抗状態になる一方、前記第3電極と前記第4電極との間の電位差が前記第2の極性の場合は、前記第2メモリスタは低抵抗状態になる、
    請求項1または請求項2の半導体装置。
  4. 前記第2電極および前記第4電極は一体に形成される、
    請求項1または請求項2の半導体装置。
  5. 前記第1抵抗変化膜および前記第2抵抗変化膜は一体に形成される、
    請求項1または請求項2の半導体装置。
  6. 前記第1材料はN型半導体である一方、前記第3材料はP型半導体である、
    請求項2の半導体装置。
  7. 前記N型半導体および前記P型半導体の各々の半導体材料はシリコンであり、前記第2材料は仕事関数が4.1eV以上の金属である、
    請求項1または請求項6の半導体装置。
  8. 前記第1抵抗変化膜および前記第2抵抗変化膜の各々は、イオン伝導体である、
    請求項1または請求項2の半導体装置。
  9. 前記第1抵抗変化膜および前記第2抵抗変化膜の各々は、金属フッ化物である、
    請求項8の半導体装置。
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