JP5622528B2 - 眼内レンズの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光学部と支持部とが一体成型されるワンピース型の眼内レンズの製造方法に関する。
従来、白内障の手術方法の一つとして水晶体を摘出した後、水晶体の代わりとして屈折力を持つ光学部と、光学部を眼内で支える支持部を持つ眼内レンズを眼内に挿入する方法が一般的に用いられている。また、患者眼に形成する切開創をできるだけ小さくするために、折り曲げ可能な柔軟性を有すると共に、所定の弾性を有する素材によって光学部と支持部とが一体成型された1ピース型の眼内レンズが使用され、注入にはインジェクターと呼ばれる眼内レンズ挿入器具を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
なお、1ピース型の眼内レンズは、透明性、生体親和性及び光学特性の点で有利とされている折り曲げ可能な軟性のアクリル重合体が採用されている。一方、このような軟性のアクリル重合体は高い粘着性を有している場合が多く、インジェクターによる眼内レンズ挿入の際に光学部に支持部が重ね合わさった状態で粘着してしまい、眼内での開放時に元の状態に戻らなくなるという問題が生じやすい。そこで、支持部の表面に凹凸を設ける粗面加工を施すことによって、眼内レンズの開放時の光学部と支持部との粘着を低減させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、光学部の周縁に粗面領域を形成することで、被検者眼の瞳孔径の大きさが変わる事などにより生じるグレアの発生を抑制することが知られている。
特開2009−240728号公報 国際公開第2006−123428号公報
前述した特許文献2の技術によれば、眼内レンズの支持部の表面に粗面加工を施す方法としては、ショットブラスト、エッチング等の方法により表面に予め粗面(凹凸)が形成された金型を使用して行うモールド成型によるものとしている。しかし、モールド成型の場合は、金型に流し込んだ材料が金型表面に形成された凹凸に十分に入り込むことができない可能性があるため、微細な表面状態を形成するためには限界がある。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、眼内レンズの表面の一部に微細な粗面加工を容易に施すことができる眼内レンズの製造方法を提供することを技術課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 粘着性を有する軟性アクリル基材により光学部と支持部とが一体的に形成され折り畳み可能な眼内レンズの製造方法において、前記支持部の少なくとも一部の表面を、第1の曲率半径の先端を有する第1切削部材による切削加工により梨地状に形成する第1切削工程と、前記第1の曲率半径よりも大きな第2の曲率半径の先端を有する第2切削部材による切削加工によって、前記光学部の表面を滑らかな表面状態に形成する第2切削工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、眼内レンズの表面の一部に微細な粗面加工を容易に施すことができる。
以下に本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1は1ピース型の眼内レンズ100の構成の説明図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は側面図である。眼内レンズ100は所定の屈折力を有する光学部110と、光学部110を眼内で支持するための一対の支持部120からなる。支持部120は、一端が自由端のループ形状とされる。
光学部110及び支持部120は、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの複合材料等、折り曲げ可能であると共に、嚢内で眼内レンズ100が固定されるために必要となる反発力を有する軟性眼内レンズ用の材料からなるアクリル基材(重合体)を切削加工することにより一体的に形成されている。本実施形態で用いるアクリル基材を構成するための眼内レンズ用の材料としては、例えば以下に挙げる公知の材料(アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル)を用いることができる。なお、表記上「・・・(メタ)アクリレート」とあるのは「・・・アクリレート」または「メタクリレート」を表す。
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ) アクリレート、 イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、tert−ペンチル(メタ)アクリレ−ト、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル(メタ)アクリルレート類、シリコン含有(メタ)アクリレート類を挙げることができる。
また、親水性の材料としては、例えば、以下に挙げるものを使用することができる。
N−ビニルピロリドン、α−メチレン−N−メチルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニルラクタム類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド類等を挙げることができる。
このような材料をモノマーとして2種類以上配合し、架橋剤、重合開始剤を微量加えた上で重合させることにより、軟性のアクリル基材(重合体)を得ることができる。なお、重合反応に用いられる架橋剤としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等に代表される架橋剤を用いることができる。また、重合開始剤としては2,2−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ベンゾイン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート等を使用することが好ましい。また、本実施形態で用いる軟性のアクリル基材は、室温にて含水させることなく容易に折り曲げ可能な特性を有するようにモノマー材料が選択され、重合されたものであり、このようなアクリル基材は常温にて所定の粘着性を有している。
光学部110は円盤状の部材であり、所定の曲率を持つ凸面で形成された前面111と、所定の曲率を持つ凸面で形成された後面112とを備える。支持部120は、光学部110の周縁の一部に形成され、対となる2つの支持部120は光軸Lを基準に向き合うように形成される。また、本実施形態では、支持部120の前面120a及び後面120bは、微細な凹凸を有する表面状態に形成されている(以下、梨地と記す)。
なお、本実施形態の梨地(艶消し仕上げ)とは、表面にミクロンオーダーの微細な凹凸又は溝が多数存在している状態を示しており、その程度(表面粗さ)は、「JIS B 0601 1994」で示されている表面粗さの最大高さRyで定義することができる。なお、表面粗さの最大高さRyとは、表面状態の凹凸を測定することにより得られる粗さ曲線からその平均線の基準長さだけ抽出して、この抽出箇所の最大値(山)と最小値(谷)との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定し、この値をマイクロメートルで表したものである。
例えば、本実施形態の梨地の表面粗さの最大高さRyは、Ry=10μm以上1000μm以下であり、より好ましくはRy=50μm以上500μm以下であるとする(なお、JIS規格ではRy=6.3以上を粗面としているが、ここでは、粘着性低減の効果を考慮して粗面の下限をRy=10μmとした)。
この場合、表面粗さの最大高さRyの値が10μmよりも小さいと表面状態が滑らかになることで、支持部120の光学部110への張り付きが抑制されにくくなる。一方、Ryの値が1000μmよりも大きいと、局所的な接触面積(個々の凹凸の接触面積)の最大値が大きくなることで、支持部120が光学部110に張り付きやすくなってしまう。
なお、支持部120に形成される梨地の表面粗さの最大高さRyは、眼内レンズ100の材料の種類に応じて、上記の条件を満たすように決定されれば良い。
これにより、光学部110と支持部120との接触面積が小さくなると共に、個々の凹凸の接触面積が分散されることで、図示を略すインジェクターからの眼内レンズ100の開放時には、支持部120と鏡面加工された光学部110との張り付きが抑えられる。なお、ここでは、支持部120の表面全体が梨地状に形成される例を示しているが、インジェクターの内部で眼内レンズ100が折り畳まれた状態で、少なくとも光学部110上に位置される支持部120の範囲(先端部分)が梨地状に形成されていれば良い。
なお、インジェクターとしては、特開2006−333924号公報に示す構成の他、周知のものを使用することができる。
支持部120は、嚢内で光学部110を支えるための腕部121と、光学部110と腕部121とを繋ぐ根元部122とを備える。腕部121は、一端が自由端とされ、他端が根元部122に繋げられている。例えば、以上のような眼内レンズ100の最外径(最大全長)は、嚢内に眼内レンズを設置した際に支持部120の外側から内側に向かって好適な応力がかかる程度の大きさとされ、好ましくは9mm以上15mm以下である。また、光学部110の直径は、瞳孔の大きさに基づいて設定され、好ましくは4mm以上8mm以下とされる。
なお、本実施形態での眼内レンズ100の眼内への射出時において、図示を略すインジェクターの内部では眼内レンズ100は、光学部110上に支持部120が載せられた状態で光学部110が折り畳まれる構成とされる。このため、支持部120は、眼内レンズ100を折り畳むために腕部121(支持部120)を圧縮する際に腕部121が光学部110の径内に収まる長さを有するように形成される。
次に、以上のような構成の眼内レンズの製造方法を説明する。図2は眼内レンズ製造システム2の制御ブロック図である。眼内レンズ製造システム2は旋盤とバイトを用いた眼内レンズ切削加工装置200とエンドミルを用いてフライス加工を行う眼内レンズ切削加工装置250とからなる。
眼内レンズ切削加工装置200は、眼内レンズ100を形成するための基材であるコア150(後述する)を接着するための回転台201と、回転台201に固定されたコア150を切削するための第1加工部である第1バイト210及び第2加工部である第2バイト220と、回転台201を回転軸Loを中心に回転させるためのモータ230と、第1バイト210を3次元的に移動させるための駆動機構231と、第2バイト220を3次元的に移動させるための駆動機構232と、モータ230及び移動機構231,232の駆動を制御するための制御部240、各種加工条件(眼内レンズを形成するための設計条件)を入力するための入力手段245とからなる。なお、ここでは入力手段245により所定の加工条件が予め入力されているものとする。また、ここでは、回転台201のコア150を接着するための設置面は切削により形成される眼内レンズ100の全長よりも大きいサイズで形成されているとする。
本実施形態では眼内レンズ100の表面を梨地状に加工する場合には第1バイト210が使用され、光学部110の表面を鏡面に加工する場合には第2バイト220が使用される。第1バイト210及び第2バイト220の詳細な説明は後述する。
眼内レンズ切削加工装置250は、眼内レンズ切削加工装置200で加工されたコアを固定するための保持台251と、保持台251に固定されたコアを切出すための切削部であるエンドミル252と、エンドミル252をXYZ軸の三次元方向に移動させるための移動機構253と、移動機構253の駆動を制御するための制御部254とからなる。
ここで、第1バイト210と第2バイト220の構成を説明する。図3は第1バイト210及び第2バイト220の先端付近の拡大図であり、図3(a)は第1バイト210の上面図、図3(b)は第1バイト210の側面図、図3(c)は第2バイト220の上面図、図3(d)は第2バイト220の側面図である。
図3(a)、(b)において、第1バイト210の刃211はコア150を切削するために十分な硬度を有する素材で形成されており、例えば、ダイヤモンドで形成される。刃211の先端(刃先)p1の曲率半径R1は鋭利に形成されており、例えば、曲率半径R1は1.0mm以下で切削可能な大きさに決定される。そして、先端p1がコア150の加工面s(図4参照)に接触された状態で、回転台201が所定速度で回転されると共に、第1バイト210が所定速度(送り速度)で回転台201の外周から回転中心(又はその逆方向)へと移動されることによって、加工面sの表面には上述したような均一又は不均一で微細な凹凸(梨地)が形成されるようになる。なお、図3(b)に示すように、刃211は厚み方向に角度αの傾斜を有するように形成されており、これにより加工面sと先端p1とが好適に接触されるようになる。
なお、加工面sに形成される梨地は、回転台201の回転速度と、第1バイト210の送り速度と、第1バイト210の刃211の先端p1の曲率半径R1の加工条件の組み合わせにより決定される。具体的には、先端p1の曲率半径R1が小さい方が加工面sにより微細な粗面が形成されやすくなる。同様に、回転台201の回転速度が遅い方が粗面が形成されやすくなり、第1バイト210の送り速度が速い方が梨地を形成しやすくなる。
しかし、眼内レンズ材料の種類(硬さ),刃211に使用する材料が変わると同一の加工条件で粗面の形成状態が変わるため、加工条件は加工に使用する材料の組み合わせ等を考慮して、所望の粗面を形成するように調節されれば良い。
例えば、先端p1の曲率半径R1は1.0mm以下、回転台201の回転速度は1000rpm以上30000rpm以下、第1バイト210の送り速度は、10mm/min以上200mm/min以下の範囲で調節される。
また、ある眼内レンズ材料に対して、刃211の先端p1の曲率半径R1が比較的に大きい場合は、一度に加工面sを削り取る量が増加されるので、回転台201の回転速度を遅く設定する又は送り速度を速く設定する。一方、刃211の先端p1の曲率半径R1が比較的に小さい場合には、一度の加工面sを削り取る量が減少されるので、回転台201の回転速度が早く設定する又は送り速度を遅く設定する等の加工条件の調節を行う。
これにより、加工に使用される材料の違い等に関わらず、加工面sに接触された第1バイト210によって、周囲の材料を巻き込むような切削加工が行われることで、切削後の加工面sが所望の梨地に形成されるようになる。
なお、ここでは刃211の先端p1の曲率半径R1を基準として、回転速度と送り速度の加工条件を決定する例を示したが、最初に回転速度又は送り速度を決定してから残りの加工条件が決定されるようにしても良い。
なお、回転台201の回転速度が遅く設定されると加工時間が長くなり、回転速度が速く設定されると刃211に負荷がかかることで劣化が早くなる可能性が高くなる。同様に、送り速度が遅いと加工時間が長くなり、速すぎるとバイトの劣化が早くなる可能性がある。そこで、回転速度と送り速度とは、切削加工装置200の性能と加工時間とを考慮してそれぞれ適切な速度となるように調節されるようにしても良い。
なお、本実施形態では、コア150の表面を滑らかに削り取るために第2バイト220を用意している。第2バイト220の刃221の先端p2の曲率半径R2は、第1バイト210の先端p1の曲率半径R1よりも大きくなるように形成されており、これにより、先端p2が加工面sに接触された状態で、第1バイト210を用いる場合と略等しい加工条件で、コア150の表面が滑らかに削り取られるようになる。そのため、切削加工装置200の制御部240による制御を簡単にすることができる。
なお、本実施形態では先端の曲率半径が異なる2つのバイトを用いて、加工面sに梨地と滑らかな表面状態を形成する例を示しているが、1つのバイトを用いて表面加工を行うようにしても良い。この場合には、梨地の表面状態と滑らかな表面状態とを形成する場合で、モータ230による回転台201の回転速度、又は駆動機構232による第1バイト210の送り速度を調節する。具体的には、梨地の表面状態を形成する場合と比べて、滑らかな表面状態を形成する場合の回転速度を早く設定する(又は送り速度を遅く設定する。又は両方を調節しても良い)。これにより、所定の曲率半径を有する1つのバイトを用いて、加工面sに梨地と滑らかな表面状態の両方を形成することができるようになる。
次に、以上のような構成の眼内レンズ製造システム2を用いた、眼内レンズ100の加工動作を説明する。ここでは、図1に示すように、支持部120の表面全体が梨地状に加工され、光学部110の前後面の全体表面が鏡面に加工される場合を説明する。なお、軟性のアクリル基材を切削する場合には事前に基材を凍結させておくか、常時冷気を当てながら基材を硬化させつつ切削を行う。なお、ここでは、第1バイト210の刃211の曲率半径0.1mm、第2バイト220の刃221の曲率半径0.3mmのものが使用されるとする。
図4は眼内レンズ100の製造方法を模式化した説明図である。はじめに、前述のアクリル基材(重合体)を周知の方法で所定の型内にて重合させることで、均一な厚さの板材を形成する(図示は省略する)。板材の厚さは、眼内レンズ100の削り出しに十分な厚さであれば良く、例えば、眼内レンズ100の最大厚0.6mmの場合に、板材は3mmの厚さ程度に形成される。次に、板材を図示なき円筒形のカッターで切断して、図4(a)に示すような、所定の直径φと厚みを有するコア150を形成させる。なお、直径φは光学部110と支持部120とが眼内レンズ切削加工装置250で一体的に切出されるのに十分な大きさを有していると共に、ここでは、回転台201の設置面よりも大きいサイズに形成されていれば良い。なお、コア150は、これ以外にもアクリル重合体を円筒状に重合させたものを所定の厚さに切断する等、周知の方法で形成することができる。
次に、図4(b)に示すように回転台201の表面にワックス(接着剤)gを塗布して回転台201の設置面よりも大きいサイズのコア150の片面を接着させる。そして、制御部240は、回転台201を回転させながら、刃221をコア150の周縁に当てて載置面と同じ大きさに揃える様に切削することにより、コア150の中心と回転台201の中心とを合わせる芯出しを行う。なお、芯出しの方法としては、これ以外にも、コアのサイズと回転台のサイズ(中心位置)とが、予め眼内レンズ製造システム2に入力された状態で、制御部240により自動的に行われるようにしても良い。
また、ここでは、始めに光学部110の前面111と支持部120の前面120aとを形成するために、回転台201には眼内レンズ100の後面112が形成される側が接着されるとするが、始めに切削加工が行われるのは前面側でも後面側でも良い。
次に、入力手段245により入力された加工条件に基づいて制御部240はモータ230を駆動させて、所定の回転速度(ここでは、10000rpmとする)で回転台201(コア150)を回転軸Loを中心に回転させる。また、制御部240は移動機構232を駆動制御し、第2バイト220を切削開始位置まで移動させる。制御部240は支持部を形成するための領域S2を切削すべく、はじめに刃221をコア150の側壁から軸L0(光軸となる軸)に向けて所定の送り速度(ここでは、100mm/min)で移動させていき、コア150の表面sから支持部120を形成する予定面の付近まで、所定の切削深さのステップでコア150を粗く削り取っていく(図4(b)参照)。そして、支持部120を形成する予定面の付近となったら、第1バイト210の刃211に切り換えて第1バイト210による切削加工を行うことにより、切削されたコアの表面(領域S2)を微細な凹凸からなる梨地状の表面とする。
次に、制御部240は切削加工に使用するバイトを第2バイト220とし、刃221を用いて光学部を形成するための領域S1を所定の切削深さのステップで粗く削り取っていく。なお、光学部110を形成する予定面の付近となったときには、制御部240は刃221を軸L0に向けて送る速度を減速させて、より丁寧な切削が行われるようにしても良い。このようにすると、光学部110の表面が精度良く滑らかに削り出されるようになる。
以上のような切削加工により、図4(c)に示すような眼内レンズ100の前面111側が形成されたコア150bが得られる。なお、ここでは、領域S1に梨地状の表面を形成した後、領域S2の表面を滑らかに削り取る方法を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。例えば、光学部110又は支持部120を形成する予定面となるまでコア150全体の粗い削り出しを行った後、刃211による領域S1の梨地状の表面加工と、刃221による光学部110の滑らかな表面加工とが行われる様にしても良い。これ以外にも切削の加工幅が大きい刃211及び刃221を使用することによって、領域S1の梨地状の表面と領域S2の滑らかな表面とが、粗い削り出しを含み、一度に行われるようにしても良い。
次に、コア150bを回転台201から取り外し、眼内レンズ切削加工装置250によるMC加工(エンドミル加工)を行うため、固定台251にコア150bを接着させる。なお、眼内レンズ切削加工装置250により形成される眼内レンズの外縁形状は予めプログラムに入力されているとする。(これ以外にも、眼内レンズ切削加工装置200に入力された加工条件がLANケーブル等を介して眼内レンズ切削加工装置250と共有されていても良い。)
制御部254は移動機構253を駆動させてエンドミル252を回転させながら三次元方向で移動させてコア150bの厚み方向に切削加工を行う。これにより、図4(d)に示すような眼内レンズ100の外縁形状が形成されたコア150cが形成される。なお、エンドミル252による切削は支持部の厚さ(肉厚)よりも深く削ることにより、次の工程である後面側の切削時に領域S2において支持部と他の部分とが分離されるようにしておく。
次に、図4(e)に示すように、コア150cの光学部110の前面111側を、ワックスgが塗布された回転台201に取り付けて、第1バイト210,第2バイト220を用いて前述と同様の手順により、支持部を形成する予定面の領域S1と、光学部を形成する予定面の領域S2の切削加工を行う。これにより眼内レンズ100の後面112側が形作られる。(なお、眼内レンズ100の後面112側の切削加工は前面111側の切削加工と同様であるため、ここでの説明は省略する)。
眼内レンズ100の後面112側の切削加工が完了したら、吸盤などによる吸着により形作られた眼内レンズ100を吸着させて、回転台201から取外す。そして、研磨剤がついたスポンジ等、周知の研磨方法によって光学部110及び支持部120が形成された眼内レンズ100の表面を磨くことによって、眼内レンズ100が完成される。
なお、上記の説明では、光学部110の前後面はレンズとなる滑らかな面を得るための切削加工を行い、支持部120の前後面は微細な凹凸からなる梨地状を得るための切削加工を行う場合を説明したが、これ以外にも、眼内レンズ製造システム2を用いて、眼内レンズ100の表面状態を任意に設定することができる。
例えば、光学部110と支持部120との張付きが生じない場合等には、光学部110の周縁から所定の範囲Saに梨地状の表面処理を行うことで、光学部110の周縁からの入射光によるグレア等の発生を抑制することができ、被検者は周囲の明るさの変化などに関わらず常に安定した見え方を維持できるようになる。なお、範囲Saは光学部110の有効光学径を除く範囲内に設定されれば良い。
勿論、図5に示すように、支持部120の表面と光学部110の所定範囲Saの両方に梨地状の表面処理が行われるようにしても良い。この場合、入力手段245による第1バイト210と第2バイト220の切削の切換位置を光学部110の周縁を含むように調節する。そして、眼内レンズ製造システム2により、上記と同様の方法によって表面処理が行われることによって、所望の眼内レンズ100が形成される。
また、本実施形態では支持部全体の表面を梨地状にするものとしているが、これに限るものではなく、例えば、支持部の先端のみや支持部の前側の表面等、インジェクターによる眼内レンズの折り曲げ時において特に光学部と接触しやすい部分のみに対して梨地状の表面とすることもできる。
以上のように、同一の眼内レンズ製造システム2を用いて、眼内レンズ100の大きさ又は種類等の違いに関わらず、簡単に眼内レンズの表面に鏡面加工と梨地加工を行うことができるようになる。また、支持部120の表面が微細な梨地状に形成されることで、支持部120と光学部110との接触面積が小さくなり、眼内レンズ100の眼内への開放時に、光学部110と支持部120との接着が抑制されるようになる。なお、眼内レンズ100にプラズマ照射、紫外線照射等の周知の表面処理を行うと、更に支持部120の粘着性自体を低減することが可能である。
このように、1台の眼内レンズ製造システム2を用いて、用途に応じて様々な表面状態を有する眼内レンズ100の提供ができるようになる。
なお、本実施形態では眼内レンズ100の片面の表面処理を行った後、エンドミル252を用いて眼内レンズ100の輪郭形状を形成し、その後に眼内レンズ100の反対側の表面処理を行う手順を説明したが、これに限られるものではなく、眼内レンズ100の両面の表面処理を行った状態で、エンドミル252で眼内レンズ100の輪郭形状の切削加工を行うようにしても良い。また、本実施形態では支持部の先端が自由端であるループ状の支持部としているが、これに限るものではなく、プレートタイプの支持部であっても本発明を適用することができる。
1ピース型の眼内レンズの構成の説明図である。 眼内レンズ製造システムの制御ブロック図である。 第1バイト及び第2バイトの先端付近の拡大図である。 眼内レンズの製造方法を模式化した説明図である。 眼内レンズの表面処理方法の変用例である。
2 眼内レンズ製造システム
100 眼内レンズ
110 光学部
120 支持部
200、250 眼内レンズ切削加工装置
210 第1バイト
211、221 刃
220 第2バイト

Claims (2)

  1. 粘着性を有する軟性アクリル基材により光学部と支持部とが一体的に形成され折り畳み可能な眼内レンズの製造方法において、
    前記支持部の少なくとも一部の表面を、第1の曲率半径の先端を有する第1切削部材による切削加工により梨地状に形成する第1切削工程と、
    前記第1の曲率半径よりも大きな第2の曲率半径の先端を有する第2切削部材による切削加工によって、前記光学部の表面を滑らかな表面状態に形成する第2切削工程と、
    を有することを特徴とする眼内レンズの製造方法。
  2. 請求項1の眼内レンズの製造方法において、
    前記第2切削工程は更に、前記第1切削工程で切削加工が行われる範囲以外の前記支持部の表面を、滑らかな表面状態に形成することを特徴とする眼内レンズの製造方法。
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