前述のように、本発明は、作動ガス循環型エンジンにおいて、エンジン本体部を冷却するのに使用された熱媒体を利用する凝縮手段の冷却性能を向上させることを1つの目的とする。本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、エンジン本体部を冷却するのに使用された熱媒体を利用する凝縮手段を備える作動ガス循環型エンジンにおいて、エンジン本体部を冷却する前の熱媒体を当該凝縮手段に供給するバイパスを設けることにより、当該凝縮手段の冷却性能を向上させることができることを見出し、本発明を想到するに至ったものである。
即ち、本発明の第1態様は、
燃焼室と、前記燃焼室に連通した吸気ポートと、前記燃焼室に連通した排気ポートと、内部熱媒体循環通路とを備えるエンジン本体部と、
前記吸気ポートと前記排気ポートとを前記燃焼室の外部において接続する循環通路と、
前記循環通路に介装される第1凝縮手段と、
前記エンジン本体部と放熱手段との間で熱媒体を循環させて前記エンジン本体部を冷却する冷却手段と、
を備え、
燃料と、酸化剤と、作動ガスとが前記燃焼室に供給され、
前記燃料の燃焼によって生ずる熱エネルギーが運動エネルギーに変換され、
前記燃料の燃焼によって生ずる燃焼生成物と前記作動ガスとを含んでなる既燃ガスが、前記燃焼室から前記排気ポートを通して前記循環通路に排出され、
前記燃焼室から排出された前記既燃ガスが、前記第1凝縮手段に流入し、
前記第1凝縮手段において、前記エンジン本体部から流出し前記放熱手段へ戻る前記熱媒体との熱交換によって前記既燃ガスが冷却されて、前記既燃ガスに含まれる前記燃焼生成物の蒸気が、凝縮されて凝縮液となり、前記既燃ガスから分離・除去され、
斯くして前記燃焼生成物が除去された既燃ガスが、前記循環通路へと排出され、
前記第1凝縮手段から排出された前記既燃ガスが、前記循環通路から前記吸気ポートを通して前記燃焼室に供給される、
作動ガス循環型エンジンであって、
前記熱媒体の前記エンジン本体部への流入通路から分岐し、前記熱媒体の前記エンジン本体部からの流出通路の前記エンジン本体部と前記第1凝縮手段との間の領域において前記流出通路に合流する、熱媒体バイパス通路を更に備える、
作動ガス循環型エンジンである。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、燃料と酸化剤と作動ガスとを燃焼室に供給して燃料を燃焼させ、燃料の燃焼によって生ずる熱エネルギーを運動エネルギーに変換すると共に、燃焼室から排出された既燃ガスを循環通路を通して燃焼室に循環させる(再供給する)エンジンである。また、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、エンジン本体部と放熱手段との間で熱媒体を循環させてエンジン本体部を冷却する冷却手段を備える。更に、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、燃焼室に連通した排気ポートから排出される既燃ガス中に含まれる、燃料の燃焼によって生ずる生成物である燃焼生成物の蒸気が、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に再供給するための循環通路に介装された第1凝縮手段によって分離・除去される。
より具体的には、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、第1凝縮手段が、エンジン本体部から流出し放熱手段へ戻る熱媒体との熱交換によって既燃ガスを冷却し、既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気を凝縮させて凝縮液となし、既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気を既燃ガスから分離・除去する。斯くして燃焼生成物の蒸気が除去された既燃ガスは、第1凝縮手段から循環通路へと排出され、燃焼室へと再供給(循環)される。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える第1凝縮手段においては、エンジン本体部を冷却するのに使用された熱媒体を利用して、排気ポートから排出される既燃ガスを冷却し、既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気を凝縮させて、既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気を分離・除去する。かかる構成によれば、前述のように、エンジン本体部の近傍に配設された第1凝縮手段における熱交換に使用される熱媒体を冷却するための冷却手段(例えば、ラジエタ等の放熱器)等を別途設ける必要が無いため、エンジン本体部の近傍における凝縮手段を搭載するためのスペースを小さくすることができる。
しかしながら、上記のようにエンジン本体部を冷却するのに使用された熱媒体を利用して排気ポートから排出される既燃ガスを冷却する凝縮手段においては、エンジン本体部を冷却した結果として暖められた熱媒体によって既燃ガスを冷却することとなる。従って、当該凝縮手段においては既燃ガスを十分に冷却することが困難となり、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物の蒸気を効果的に凝縮させて、既燃ガスから分離・除去することが困難となる場合がある。結果として、当該凝縮手段から排出される既燃ガスには多量の燃焼生成物の蒸気が残存したままとなる虞がある。このように多量の燃焼生成物の蒸気を含む既燃ガスを、そのまま燃焼室に循環(再供給)すると、前述のように、作動ガス全体としての比熱比が低下し、上死点(TDC)付近における燃焼室内の温度や圧力が低下し、結果としてエンジンの熱効率の低下を招く虞がある。
そこで、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジン本体部を冷却する前の熱媒体を第1凝縮手段に供給するバイパスを設けることにより、第1凝縮手段の冷却性能を向上させる。より具体的には、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、上記のように、熱媒体のエンジン本体部への流入通路から分岐し、熱媒体のエンジン本体部からの流出通路のエンジン本体部と第1凝縮手段との間の領域において流出通路に合流する、熱媒体バイパス通路を更に備える。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、(エンジン本体部を冷却した結果として暖められた熱媒体よりも低い温度を有する)エンジン本体部を冷却する前の熱媒体を第1凝縮手段に供給することができる。従って、第1凝縮手段の冷却性能が向上するので、既燃ガスを十分に冷却して、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物の蒸気を効果的に凝縮させて、既燃ガスから効果的に分離・除去することができる。
上記の結果、例えば、既燃ガスの循環通路における第1凝縮手段の下流側(即ち、第1凝縮手段と吸気ポートとの間の領域)に第2凝縮手段が更に配設されている場合は、当該第2凝縮手段に流入する既燃ガスは、上記第1凝縮手段によって、燃焼生成物の蒸気が十分に分離・除去されているので、当該第2凝縮手段において熱媒体を循環させるための循環手段(例えば、循環ポンプ等)の仕事量を増大させて熱媒体の循環量を増大させる等の対策が不要となり、結果として、かかる構成を有する作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての燃費が悪化したり、当該設備の製造コストが増大したりする問題を回避することができる。
ところで、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて使用される燃料としては、例えば、ガソリン、軽油、天然ガス、プロパン、水素等の、種々の燃料を用いることができる。但し、本発明は、前述のように、作動ガス循環型エンジンにおいて、エンジン本体部を冷却するのに使用された熱媒体を利用する凝縮手段の冷却性能を向上させて、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去しようとするものである。従って、上記燃料としては、当該燃料の燃焼に伴って生ずる生成物が、少なくとも温度の下降に伴って凝縮する性質を有する燃焼生成物を含む燃料が想定される。かかる燃焼生成物としては、例えば、水が挙げられる。
上記燃料は、上記エンジンの運転状態における燃料の相(例えば、液相、気相等)に応じた構成を有する燃料貯蔵部(例えば、タンク、ボンベ等)に貯蔵することができる。また、上記燃料は、同燃料貯蔵部から、例えば、同エンジンの燃焼室内に直接噴射(所謂「筒内噴射」)しても、又は同エンジンの吸気ポート内に噴射する等して酸化剤及び作動ガスと予め混合してもよい。
かかる燃料噴射を行う噴射手段は、例えば、例えば、作動ガス循環型エンジンに関する各種制御を行うための電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)からの指示信号に応答して噴射口を弁体により開閉し、同噴射口が同弁体により開かれた際に同噴射手段に供給されている燃料の圧力により燃料を噴射する噴射弁であってよい。更に、燃料の噴射に用いられる圧力は、例えば、燃料が気相にある場合の燃料貯蔵部としての燃料タンク内の燃料ガスの圧力に基づくものであってもよく、例えば、燃料の圧力を高めるための圧縮機(例えば、コンプレッサ、ポンプ等)によって高められた燃料の圧力に基づくものであってもよい。更にまた、燃料の噴射に用いられる圧力は、燃料貯蔵部と噴射手段との間に介装された燃料噴射圧調整手段(例えば、圧力レギュレータ等)により一定の設定圧以上にならないように規制されていてもよい。
また、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて使用される酸化剤としては、例えば、酸素、過酸化水素等の、種々の酸化剤を用いることができる。上記酸化剤は、酸化剤貯蔵部(例えば、タンク、ボンベ等)に貯蔵することができ、同酸化剤貯蔵部から、例えば、同エンジンの燃焼室内に直接噴射しても、又は同エンジンの燃焼室内に供給される前に、作動ガスと予め混合してもよい。
更に、上記燃料の燃焼モードは、用いられる燃料の性状やエンジンの仕様等に応じて適宜選択することができる。より具体的には、例えば、少なくとも酸化剤と作動ガスとを含むガスが燃焼室内にて圧縮されている高圧縮状態にある期間内の所定の時期に燃料を燃焼室内に直接噴射(所謂「高圧噴射」)して燃料を拡散燃焼させてもよい。また、前述のように酸化剤と作動ガス及び予め混合された燃料を、燃焼室内に設けられた点火手段から発生した火花によって点火して火花点火燃焼させてもよい。
尚、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいてエンジン本体部や第1凝縮手段内を流れる既燃ガスを冷却するのに使用される熱媒体としては、当該技術分野において熱媒体として使用されている種々の熱媒体を採用することができる。具体的には、かかる熱媒体としては、例えば、水や油等の液状の流体を使用することができる。また、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の使用状況に応じて、熱媒体の性状を変更したり、好適な性状を有する熱媒体を選択して離することができる。例えば、水の凍結が懸念されるような低温環境において熱媒体として水を使用する場合は、所謂「不凍液」を熱媒体として使用することができる。
ここで、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンの構成につき、図3を参照しながら、更に詳しく説明する。図3は、前述のように、本発明の1つの実施態様に係る作動ガス循環型エンジンの構成を示す模式図である。図3に示す作動ガス循環型エンジンは、エンジン本体部10、燃料供給部20、酸化剤供給部30、循環通路40、第1凝縮手段50(及び第2凝縮手段50′)、並びに放熱器(ラジエタ)70(及び第2放熱器70′)を備える。当該エンジンは、燃焼室に酸化剤(例えば、酸素)及び作動ガス(例えば、アルゴンガス)を供給し、このガスを圧縮することにより高温高圧となったガス中に燃料(例えば、水素ガス)を噴射することにより燃料を拡散燃焼させる形式のエンジンである。尚、図3は、エンジン本体部10の特定気筒の断面のみを示しているが、複数の気筒を含むエンジンの場合は、他の気筒も同様な構成を備えることができる。
エンジン本体部10は、特定の構成に限定されるものではなく、例えば、シリンダヘッドと、シリンダブロックが形成するシリンダと、シリンダ内において往復運動するピストンと、クランク軸と、ピストンとクランク軸とを連結しピストンの往復運動をクランク軸の回転運動に変換するためのコネクティングロッドと、シリンダブロックに連接されたオイルパンとを備えるピストン往復動型エンジンであってもよい(何れも図示せず)。
この場合、ピストンの側面にはピストンリングが配設され、シリンダヘッド、シリンダ及びオイルパンから形成される空間は、ピストンにより、ピストンの頂面側の燃焼室と、クランク軸を収容するクランクケースと、に区画されている(何れも図示せず)。
シリンダヘッドには、燃焼室に連通した吸気ポートと、燃焼室に連通した排気ポートと、が形成されている(何れも図示せず)。吸気ポートには吸気ポートを開閉する吸気弁が配設され、排気ポートには排気ポートを開閉する排気弁が配設されている(何れも図示せず)。更に、シリンダヘッドには、燃料(例えば、水素ガス)を燃焼室内に直接噴射する燃料噴射弁11が配設されている。
上記燃料噴射弁11に燃料を供給する燃料供給部20は、燃料タンク(例えば、水素ガスタンク)、燃料ガス通路、燃料ガス圧レギュレータ、燃料ガス流量計及びサージタンク等を備えることができる(何れも図示せず)。また、循環通路40から吸気ポートを通して燃焼室内に吸入される作動ガスに酸化剤を供給する酸化剤供給部30は、酸化剤貯蔵部(例えば、酸素ガスタンク)、酸化剤通路、酸化剤流量調整機構(例えば、酸素ガス圧レギュレータ)、酸化剤流量計(例えば、酸素ガス流量計)、及び酸化剤混合機構(例えば、酸素ガスミキサ)を備えることができる(何れも図示せず)。
尚、エンジン本体部10、燃料供給部20、及び酸素供給部30の具体的な構成並びに動作については、例えば、作動ガス循環型水素エンジン等に関する当該技術分野において周知であるので、本明細書における詳細な説明は割愛する。循環通路40は、排気ポートと吸気ポートとを燃焼室の外部にて接続する「既燃ガス(循環ガス)の循環経路」を構成しており、第1凝縮手段50及び第2凝縮手段50′が介装されている。このように、図3に示す作動ガス循環型エンジンは、第2凝縮器50′及びその付帯設備を備えているが、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、第2凝縮器50′は必須の構成要件ではなく、第2凝縮器50′を備えない作動ガス循環型エンジンにも、本実施態様を適用することができる。
第1凝縮手段50及び第2凝縮手段50′は、上記のように、循環通路40に介装されている。即ち、第1凝縮手段50の入口部は循環通路40を介してエンジン本体部10の排気ポートに接続され、第1凝縮手段50の出口部は循環通路40を介して第2凝縮手段50′の入口部に接続されている。一方、第2凝縮手段50′の入口部は循環通路40を介して第1凝縮手段50の出口部に接続され、第2凝縮手段50′の出口部は循環通路40を介してエンジン本体部10の吸気ポートに接続されている。これにより、第1凝縮手段50及び第2凝縮手段50′は、入口部から流入する既燃ガス(循環ガス)を冷却して、既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気(例えば、水蒸気)を凝縮させて凝縮液(例えば、水)とし、当該凝縮液を非凝縮ガスと分離して、凝縮液排出口51から外部に排出すると共に、当該非凝縮ガスを出口部から循環通路40に供給する。
尚、図3に示す作動ガス循環型エンジンが備える第1凝縮手段50は、前述のように、エンジン本体部10を冷却するのに使用された熱媒体を利用して、排気ポートから排出される既燃ガスを冷却し、既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気を凝縮させて、既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気を分離・除去する。かかる構成によれば、前述のように、エンジン本体部10の近傍に配設された第1凝縮手段50における熱交換に使用される熱媒体を冷却するための冷却手段(例えば、ラジエタ等の放熱器)等を別途設ける必要が無いため、エンジン本体部10の近傍における凝縮手段を搭載するためのスペースを小さくすることができる。
ところで、図2を参照しながら前述したように、凝縮手段によって既燃ガスを冷却することにより燃焼生成物を凝縮させて既燃ガスから分離・除去する際に、より多い量の燃焼生成物を分離・除去するためには、凝縮手段において既燃ガスを効果的に冷却して、既燃ガスの温度をより大幅に下降させる必要がある。しかしながら、第1凝縮手段50においては、上記のようにエンジン本体部10を冷却するのに使用された熱媒体を利用して排気ポートから排出される既燃ガスを冷却することから、エンジン本体部10を冷却した結果として暖められた熱媒体によって既燃ガスを冷却することとなる。従って、第1凝縮手段50においては既燃ガスを十分に冷却することが困難となり、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物の蒸気を効果的に凝縮させて、既燃ガスから分離・除去することが困難となる虞がある。結果として、第1凝縮手段50から排出される既燃ガスには多量の燃焼生成物の蒸気が残存したままとなる虞がある。このように多量の燃焼生成物の蒸気を含む既燃ガスを、そのまま燃焼室に循環(再供給)すると、前述のように、作動ガス全体としての比熱比が低下し、上死点(TDC)付近における燃焼室内の温度や圧力が低下し、結果としてエンジンの熱効率の低下を招く虞がある。
そこで、図3に示す作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジン本体部10を冷却する前の熱媒体を第1凝縮手段50に供給するバイパスを設けることにより、第1凝縮手段50の冷却性能を向上させる。より具体的には、図3に示す作動ガス循環型エンジンは、上記のように、熱媒体のエンジン本体部10への流入通路から分岐し、熱媒体のエンジン本体部10からの流出通路のエンジン本体部10と第1凝縮手段50との間の領域において流出通路に合流する、熱媒体バイパス通路60を更に備える。これにより、(エンジン本体部10を冷却した結果として暖められた熱媒体よりも低い温度を有する)エンジン本体部10を冷却する前の熱媒体を第1凝縮手段50に供給することができる。斯くして、第1凝縮手段50の冷却性能が向上するので、既燃ガスを十分に冷却して、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物の蒸気を効果的に凝縮させて、既燃ガスから効果的に分離・除去することができる。
上記の結果、例えば、既燃ガスの循環通路40の下流側(即ち、第1凝縮手段50とエンジン本体部10吸気ポートとの間の領域)に配設された第2凝縮手段50′に流入する既燃ガスにおいては、第1凝縮手段50によって、燃焼生成物の蒸気が十分に分離・除去されているので、第2凝縮手段50′において熱媒体を循環させるための循環ポンプPの仕事量を増大させて熱媒体の循環量を増大させる等の対策が不要となり、結果として、当該作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての燃費が悪化したり、当該設備の製造コストが増大したりする問題を回避することができる。
ところで、図3に示す作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジン本体部10及び第1凝縮手段50に熱媒体を循環させるための循環ポンプPが、熱媒体バイパス通路60が循環通路40と合流する箇所と第1凝縮手段50との間に配設されている。これにより、エンジン本体部10及び第1凝縮手段50に熱媒体を確実に循環させることができる。但し、循環ポンプPの配設箇所は上記に限定されるものではなく、エンジン本体部10及び第1凝縮手段50に熱媒体を循環させることが可能である限り、何れの箇所に循環ポンプPを配設してもよい。具体的には、循環ポンプPは、例えば、エンジン本体部10からの熱媒体の流出通路71における第1凝縮手段50と放熱器(ラジエタ)70との間の領域、エンジン本体部10への熱媒体の流入通路72における熱媒体バイパス通路60が熱媒体の流入通路72から分岐する箇所と放熱器(ラジエタ)70との間の領域等に配設することができる。
尚、上記酸化剤としては、前述のように、例えば、酸素、過酸化水素等の、種々の酸化剤を用いることができるが、例えば、入手の容易さや管理の容易さの観点から、酸化剤として酸素を用いることが望ましい。
また、作動ガスとしては、前述のように、空気や窒素等の、種々のガスを用いることができるが、例えば、アルゴン、ネオン、ヘリウム等の、比熱比が大きい不活性ガスを用いることが望ましい。かかる比熱比が大きいガスを作動ガスとして用いる場合、比較的小さい比熱比を有するガス(例えば、空気、窒素等)を作動ガスとして用いる場合と比較して、より高い熱効率でエンジンを運転することができる。上記に加えて、例えば、窒素酸化物のような汚染物質の排出を削減して環境保護に貢献しようとする観点からも、不活性ガスを用いることが望ましい。これらの不活性ガスの中では、アルゴンが内燃機関の作動ガスとして広く用いられている。
更に、燃料としては、前述のように、ガソリン、軽油、天然ガス、プロパン、水素等の種々の燃料を用いることができる。但し、本発明は、前述のように、作動ガス循環型エンジンにおいて、エンジン本体部を冷却するのに使用された熱媒体を利用する凝縮手段の冷却性能を向上させて、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去しようとするものである。従って、上記燃料としては、当該燃料の燃焼に伴って生ずる生成物が、少なくとも温度の下降に伴って凝縮する性質を有する燃焼生成物を含む燃料が想定される。かかる燃焼生成物としては、例えば、水が挙げられる。中でも、二酸化炭素(CO2)を排出せず、地球温暖化の防止に貢献しようとする観点からは、燃焼生成物として水(H2O)のみを発生させる水素を燃料として用いることが望ましい。
尚、図3に示す作動ガス循環型エンジンにおいては、前述のように、燃焼室に酸化剤及び作動ガスを供給し、このガスを圧縮することにより高温高圧となったガス中に燃料を噴射することにより燃料を拡散燃焼させる形式のエンジンが例示されている。しかしながら、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、前述のように、種々の酸化剤、作動ガス、及び燃料を用いることができる。従って、使用される酸化剤、作動ガス、及び燃料との組み合わせや、エンジンの設計仕様(例えば、圧縮比等)に応じて、燃焼室内における燃料の燃焼モードも適宜選択することができる。即ち、使用される酸化剤、作動ガス、及び燃料との組み合わせや、エンジンの設計仕様(例えば、圧縮比等)によっては、作動ガス及び酸化剤と予め混合された燃料を燃焼室内に設けられた点火手段から発生した火花によって点火して火花点火燃焼させる形式のエンジンにも、本実施態様を適用することもできる。
以上のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、上記のように、熱媒体のエンジン本体部への流入通路から分岐し、熱媒体のエンジン本体部からの流出通路のエンジン本体部と第1凝縮手段との間の領域において流出通路に合流する、熱媒体バイパス通路を更に備えることにより、(エンジン本体部を冷却した結果として暖められた熱媒体よりも低い温度を有する)エンジン本体部を冷却する前の熱媒体を第1凝縮手段に供給することができる。これにより、第1凝縮手段の冷却性能が向上するので、既燃ガスを十分に冷却して、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物の蒸気を効果的に凝縮させて、既燃ガスから効果的に分離・除去することができる。
ところで、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、例えば、冷却手段(例えば、ラジエタ等の放熱器)において冷却された熱媒体の流れが、エンジン本体部を冷却するための通路と、第1凝縮手段において既燃ガスを冷却するための通路とに分岐される。この際、熱媒体の流れは、例えば、エンジン本体部の温度、エンジン本体部の排気ポートから排出される既燃ガスの温度等に応じて、これら2つの通路に適切な流量にて配分されることが望ましい。従って、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、熱媒体の流れを、これら2つの通路に適切な流量にて配分する手段を備えることが望ましい。
従って、本発明の第2の実施態様は、
本発明の前記第1の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンであって、
前記熱媒体バイパス通路を流れる前記熱媒体の流量を調整するバイパス流量調整手段を更に備える、
作動ガス循環型エンジンである。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を調整するバイパス流量調整手段を更に備える。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を調整することができるので、結果として、冷却手段(例えば、ラジエタ等の放熱器)において冷却された熱媒体の流れを、エンジン本体部を冷却するための通路及び第1凝縮手段において既燃ガスを冷却するための通路(即ち、熱媒体バイパス通路)に、適切な流量にて配分することができる。
ここで、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンの構成につき、図4を参照しながら、更に詳しく説明する。図4は、前述のように、本発明のもう1つの実施態様に係る作動ガス循環型エンジンの構成を示す模式図である。図4に示す作動ガス循環型エンジンは、エンジン本体部10への熱媒体の流入通路72における熱媒体バイパス通路60が熱媒体の流入通路72から分岐する箇所に、バイパス流量調整手段74として、流量調整弁が配設されている点を除き、図3に示す作動ガス循環型エンジンと同様である。従って、図4に示す作動ガス循環型エンジンにつき、図3に示す作動ガス循環型エンジンについての説明と重複する内容については割愛する。
図4に示す作動ガス循環型エンジンにおいては、上記のように、エンジン本体部10への熱媒体の流入通路72における熱媒体バイパス通路60が熱媒体の流入通路72から分岐する箇所にバイパス流量調整手段74(流量調整弁)が配設されている。これにより、例えば、エンジン本体部の温度、エンジン本体部の排気ポートから排出される既燃ガスの温度等に応じて、放熱器(ラジエタ)70において冷却された熱媒体の、エンジン本体部10を冷却するための熱媒体の流入通路72における流量と第1凝縮手段50において既燃ガスを冷却するための熱媒体バイパス通路60における流量との比率を調整することができる。
ところで、図4に示す作動ガス循環型エンジンにおいては、上記のように、エンジン本体部10への熱媒体の流入通路72における熱媒体バイパス通路60が熱媒体の流入通路72から分岐する箇所にバイパス流量調整手段74(流量調整弁)を配設したが、バイパス流量調整手段74を配設する箇所は上記に限定されるものではない。即ち、放熱器(ラジエタ)70において冷却された熱媒体の、エンジン本体部10を冷却するための熱媒体の流入通路72における流量、及び第1凝縮手段50において既燃ガスを冷却するための熱媒体バイパス通路60における流量を調整することができる限り、バイパス流量調整手段74は何れの箇所に配設してもよい。
バイパス流量調整手段74としての流量調整弁を配設する箇所のもう1つの例として、例えば、図5に示す作動ガス循環型エンジンを挙げることができる。図5は、前述のように、図4に示す実施態様の1つの変形例に係る作動ガス循環型エンジンの構成を示す模式図である。図5に示すように、当該変形例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジン本体部10からの熱媒体の流出通路71における熱媒体バイパス通路60が熱媒体の流入通路71に合流する箇所に、バイパス流量調整手段74として、流量調整弁が配設されている。この場合も、例えば、エンジン本体部の温度、エンジン本体部の排気ポートから排出される既燃ガスの温度等に応じて、放熱器(ラジエタ)70において冷却された熱媒体の、エンジン本体部10を冷却するための熱媒体の流入通路72における流量と第1凝縮手段50において既燃ガスを冷却するための熱媒体バイパス通路60における流量との比率を調整することができる。
また、上述の図4及び図5に示す作動ガス循環型エンジンにおいてはバイパス流量調整手段74として流量調整弁を配設したが、バイパス流量調整手段74は流量調整弁に限定されるものではない。即ち、バイパス流量調整手段74は、放熱器(ラジエタ)70において冷却された熱媒体の、エンジン本体部10を冷却するための熱媒体の流入通路72における流量、及び第1凝縮手段50において既燃ガスを冷却するための熱媒体バイパス通路60における流量を調整することができる限り、如何なる構成を有するものであってもよい。
例えば、バイパス流量調整手段74のもう1つの例としては、可変絞りを挙げることができる。そこで、バイパス流量調整手段74として可変絞りを採用した変形例について、図6を参照しながら説明する。図6は、前述のように、図4に示す実施態様のもう1つの変形例に係る作動ガス循環型エンジンの構成を示す模式図である。図6に示すように、当該変形例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、バイパス流量調整手段74としての可変絞りが熱媒体バイパス通路60に介装されている。かかる構成により、バイパス流量調整手段74を流れる熱媒体の流量を調整することができ、結果として、例えば、エンジン本体部の温度、エンジン本体部の排気ポートから排出される既燃ガスの温度等に応じて、放熱器(ラジエタ)70において冷却された熱媒体の、エンジン本体部10を冷却するための熱媒体の流入通路72における流量と第1凝縮手段50において既燃ガスを冷却するための熱媒体バイパス通路60における流量との比率を調整することができる。
上述のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を調整するバイパス流量調整手段を更に備えることにより、例えば、エンジン本体部の温度、エンジン本体部の排気ポートから排出される既燃ガスの温度等に応じて、冷却手段(例えば、ラジエタ等の放熱器)において冷却された熱媒体の流れを、エンジン本体部を冷却するための通路と、第1凝縮手段において既燃ガスを冷却するための通路とに、適切な流量にて配分することができる。例えば、第1凝縮手段における既燃ガスの冷却性能を高めようとする場合は、バイパス流量調整手段により、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を増大させて、第1凝縮手段において既燃ガスを冷却するための通路における熱媒体の流量を増大させることができる。一方、エンジン本体部の冷却性能を高めようとする場合は、バイパス流量調整手段により、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を減少させて、エンジン本体部を冷却するための通路における熱媒体の流量を増大させることができる。
尚、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて第1凝縮手段における既燃ガスの冷却性能を高めるには、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量をできるだけ増大させることが望ましい。しかしながら、バイパス流量調整手段により、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を増大させると、その一方で、エンジン本体部を冷却するための通路における熱媒体の流量が減少するので、エンジン本体部の冷却性能が不十分となり、例えば、エンジンのオーバーヒート等の問題に繋がる虞が高まる。従って、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジン本体部の冷却性能を十分に確保しつつ、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量をできるだけ増大させて、第1凝縮手段における既燃ガスの冷却性能を高めることが望ましい。
従って、本発明の第3の実施態様は、
本発明の前記第2の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンであって、
前記作動ガス循環型エンジンの負荷を検出又は推定するエンジン負荷検出手段を更に備え、
前記バイパス流量調整手段によって、前記エンジン負荷検出手段によって検出又は推定される前記作動ガス循環型エンジンの負荷が大きいほど、前記熱媒体バイパス通路を流れる前記熱媒体の流量が少なくなるように、前記熱媒体バイパス通路を流れる前記熱媒体の流量を制御する、
作動ガス循環型エンジンである。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、当該作動ガス循環型エンジンの負荷を検出又は推定するエンジン負荷検出手段を更に備え、バイパス流量調整手段によって、エンジン負荷検出手段によって検出又は推定される作動ガス循環型エンジンの負荷が大きいほど、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量が少なくなるように、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を制御する。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジンの負荷に応じて、エンジン本体部の冷却性能を確保しつつ、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量をできるだけ増大させて、第1凝縮手段における既燃ガスの冷却性能を高めることができる。
尚、エンジンの負荷は、当該技術分野において周知であるように、例えば、アクセル踏み込み量、スロットル開度、及びエンジンの作動ガス吸入量等から求めることができる。即ち、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備えるエンジン負荷検出手段は、例えば、当該作動ガス循環型エンジンに関する各種制御を行うためのECU(電子制御装置)と、当該ECUに対して検出信号を伝達するように構成された、例えば、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル踏み込み量)を検出するためのアクセルセンサ、吸気通路に設けられたスロットルバルブの開度(スロットル開度)を検出するためのスロットルセンサ、エンジンへの作動ガス吸入量を計測するエアフロメータ等の各種センサとによって構成することができる。
この場合、エンジン負荷検出手段は、各種センサから伝達される検出信号に基づいてエンジンの負荷を算出するアルゴリズムを、例えば、ECUが備える記憶装置(例えば、ROM(Read−Only Memory)、RAM(Random−Access Memory)、不揮発性メモリ等)に格納されたプログラムに従って、ECUが備える中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって実行させることにより、作動ガス循環型エンジンの負荷を検出又は推定することができる。但し、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備えるエンジン負荷検出手段の構成は上記に限定されるものではなく、作動ガス循環型エンジンの負荷を検出又は推定することができる限りにおいて、如何なる構成であってもよい。
更に、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、バイパス流量調整手段によって、エンジン負荷検出手段によって検出又は推定された作動ガス循環型エンジンの負荷に応じて、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を制御する。より具体的には、エンジン負荷検出手段によって検出又は推定された作動ガス循環型エンジンの負荷が大きいほど、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量が少なくなるように、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を制御する。前述のように、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を減少させると、エンジン本体部を冷却するための通路における熱媒体の流量を増大させることができる。その結果、エンジン本体部の冷却性能を高めることができるので、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジンの負荷が高い場合においても、エンジン本体部の冷却性能が不十分となり、例えば、エンジンのオーバーヒート等の問題が生ずることを回避することができる。
ここで、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおける、当該エンジンの負荷に応じた第1凝縮手段及びエンジン本体部のそれぞれにおける熱媒体の流量の制御について、図7を参照しながら、更に詳しく説明する。図7は、前述のように、エンジンの負荷に対する、第1凝縮手段において既燃ガスを冷却する熱媒体の流量及びエンジン本体部を冷却する熱媒体の流量の対応関係を模式的に示すグラフである。図7に示す点線によって表されているように、この例においては、冷却手段(例えば、ラジエタ等の放熱器)、エンジン本体部、及び第1凝縮手段を循環する熱媒体の全体としての流量は一定であるとする。この場合、図7に示す実線によって表されているように、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量(即ち、第1凝縮手段において既燃ガスを冷却する熱媒体の流量)をエンジンの負荷の増大に伴って減少させる。これに従って、図7に示す一点鎖線によって表されているように、エンジン本体部を冷却する熱媒体の流量は、エンジンの負荷の増大に伴って増大する。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジンの負荷に応じたエンジン本体部の冷却性能を十分に確保しつつ、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量をできるだけ増大させて、第1凝縮手段における既燃ガスの冷却性能を高めることができる。
尚、エンジン負荷検出手段によって検出又は推定された作動ガス循環型エンジンの負荷に応じた熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量の制御は、例えば、エンジン本体部の冷却に必要とされる熱媒体の流量とエンジンの負荷との対応関係を事前実験等により予め求めておき、当該対応関係に対応するデータマップ(例えば、データ表等)を、当該作動ガス循環型エンジンに関する各種制御を行うためのECUが備える記憶手段に格納しておき、当該作動ガス循環型エンジンに関する各種制御を行うためのECUが備えるCPUに、エンジン負荷検出手段によって検出又は推定された作動ガス循環型エンジンの負荷におけるエンジン本体部の冷却に必要とされる熱媒体の流量を当該データマップから読み出させ、斯くして読み出された熱媒体の流量に対応する指示信号をバイパス流量調整手段に伝達して、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量が当該読み出された流量に合致するようにバイパス流量調整手段を動作させることによって実現することができる。かかる制御を実行するためのアルゴリズムもまた、例えば、ECUが備える記憶装置に格納されたプログラムに従って、ECUが備えるCPUによって実行させることができる。但し、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおける熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量の制御方式は上記に限定されるものではなく、エンジン負荷検出手段によって検出又は推定される作動ガス循環型エンジンの負荷が大きいほど、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量が少なくなるように、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を制御することができる限りにおいて、如何なる方式であってもよい。
ところで、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、上述のように、バイパス流量調整手段によって、エンジン負荷検出手段によって検出又は推定される作動ガス循環型エンジンの負荷に応じて、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を制御する。これにより、エンジンの負荷が高い場合においても、エンジン本体部の冷却性能が不十分となり、例えば、エンジンのオーバーヒート等の問題が生ずることを回避することができる。同様に、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を制御することにより、エンジン本体部の冷却性能が不十分となり、例えば、エンジンのオーバーヒート等の問題が生ずることを回避するための方策として、エンジン本体部から流出する熱媒体の温度に応じて、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を制御することもできる。
従って、本発明の第4の実施態様は、
本発明の前記第2の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンであって、
前記エンジン本体部から流出する前記熱媒体の温度を検出又は推定する流出熱媒体温度検出手段を更に備え、
前記バイパス流量調整手段によって、前記流出熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される前記エンジン本体部から流出する前記熱媒体の温度が高いほど、前記熱媒体バイパス通路を流れる前記熱媒体の流量が少なくなるように、前記熱媒体バイパス通路を流れる前記熱媒体の流量を制御する、
作動ガス循環型エンジンである。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、エンジン本体部から流出する熱媒体の温度を検出又は推定する流出熱媒体温度検出手段を更に備え、バイパス流量調整手段によって、流出熱媒体温度検出手段によって検出又は推定されるエンジン本体部から流出する熱媒体の温度が高いほど、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量が少なくなるように、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を制御する。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジン本体部から流出する熱媒体の温度に応じて、エンジン本体部の冷却性能を確保しつつ、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量をできるだけ増大させて、第1凝縮手段における既燃ガスの冷却性能を高めることができる。
尚、エンジン本体部から流出する熱媒体の温度は、当該技術分野において周知であるように、例えば、サーミスタ等の温度センサによって検出することができる。即ち、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える流出熱媒体温度検出手段は、例えば、当該作動ガス循環型エンジンに関する各種制御を行うためのECU(電子制御装置)と、当該ECUに対して検出信号を伝達するように構成された、例えば、サーミスタ等の温度センサとによって構成することができる。但し、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える流出熱媒体温度検出手段は、上記のようにエンジン本体部から流出する熱媒体の温度を直接的に検出するものに限定されるものではない。即ち、流出熱媒体温度検出手段は、エンジン本体部から流出する熱媒体の温度に関連する他の状態量等に基づいて、エンジン本体部から流出する熱媒体の温度を推定するものであってもよい。
更に、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、バイパス流量調整手段によって、流出熱媒体温度検出手段によって検出又は推定されるエンジン本体部から流出する熱媒体の温度に応じて、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を制御する。本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて実行される、流出熱媒体温度検出手段によって検出又は推定されるエンジン本体部から流出する熱媒体の温度に基づく熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量の制御方式は、前述の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて実行される、エンジン負荷検出手段によって検出又は推定される作動ガス循環型エンジンの負荷に基づく熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量の制御方式と同様であるので、ここでの詳細な説明は割愛する。
ここで、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンの構成につき、図8を参照しながら、更に詳しく説明する。図8は、前述のように、本発明のもう1つの実施態様に係る作動ガス循環型エンジンの構成を示す模式図である。図8に示す作動ガス循環型エンジンは、エンジン本体部10からの熱媒体の流出通路71における熱媒体バイパス通路60が熱媒体の流出通路71に合流する箇所とエンジン本体部10との間の領域に、流出熱媒体温度検出手段75として、温度センサが配設されている点を除き、図4に示す作動ガス循環型エンジンと同様である。従って、図8に示す作動ガス循環型エンジンにつき、図4に示す作動ガス循環型エンジンについての説明と重複する内容については割愛する。
図8に示す作動ガス循環型エンジンにおいては、上記のように、エンジン本体部10からの熱媒体の流出通路71における熱媒体バイパス通路60が熱媒体の流出通路71に合流する箇所とエンジン本体部10との間の領域に、流出熱媒体温度検出手段75として、温度センサが配設されている。これにより、エンジン本体部10から流出する熱媒体の温度に応じて、放熱器(ラジエタ)70において冷却された熱媒体の、エンジン本体部10を冷却するための熱媒体の流入通路72における流量と第1凝縮手段50において既燃ガスを冷却するための熱媒体バイパス通路60における流量との比率を調整することができる。
次に、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおける熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量の制御方法の一例につき、図9を参照しながら、更に詳しく説明する。図9は、前述のように、図8に示す実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて実行される、流出熱媒体温度検出手段によって検出又は推定されるエンジン本体部から流出する熱媒体の温度に基づく熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量の制御の一例における処理の流れを表すフローチャートである。図9に示すように、当該制御方法においては、先ずステップS01において、エンジン本体部から流出する熱媒体の温度(Tout)を流出熱媒体温度検出手段(例えば、サーミスタ等)によって取得する。次に、ステップS02において、上記熱媒体の温度(Tout)が、予め定められた所定の閾値(T0)よりも高いか否かが判定される。
上記熱媒体の温度(Tout)が予め定められた所定の閾値(T0)よりも高い場合(ステップS02:Yes)、ステップS03において、バイパス流量調整手段により熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を減少させ、第1凝縮手段への熱媒体の供給量を減らす。結果として、エンジン本体部を冷却するための熱媒体の流入通路における熱媒体の流量が増大し、エンジン本体部への熱媒体の供給量が増大する。これにより、エンジン本体部から流出する熱媒体の温度よりも高い場合は、エンジン本体部の冷却能力が高まり、例えば、エンジンのオーバーヒート等の問題を回避することができる。
一方、上記熱媒体の温度(Tout)が予め定められた所定の閾値(T0)以下である場合(ステップS02:No)、ステップS04において、バイパス流量調整手段により熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を増加させ、第1凝縮手段への熱媒体の供給量を増やす。結果として、エンジン本体部を冷却するための熱媒体の流入通路における熱媒体の流量が減少し、エンジン本体部への熱媒体の供給量が減少する。これにより、エンジン本体部から流出する熱媒体の温度以下である場合は、第1凝縮手段における既燃ガスの冷却性能が高まり、既燃ガスを十分に冷却して、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物の蒸気を効果的に凝縮させて、既燃ガスから効果的に分離・除去することができる。
尚、図9に示す制御方法のより好ましい変形例として、上記熱媒体の温度(Tout)と所定の閾値(T0)との差の大きさに応じて、バイパス流量調整手段による熱媒体の流量の減少量及び増加量を変更してもよい。より具体的には、上記熱媒体の温度(Tout)と所定の閾値(T0)との差が大きいほど、バイパス流量調整手段による熱媒体の流量の減少量及び増加量を大きくするように制御してもよい。これにより、より一層効果的且つ迅速にエンジン本体部の冷却性能及び第1凝縮手段における既燃ガスの冷却性能を適正化することができる。
以上のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、バイパス流量調整手段によって、流出熱媒体温度検出手段によって検出又は推定されるエンジン本体部から流出する熱媒体の温度が高いほど、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量が少なくなるように、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を制御する。前述のように、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量を減少させると、エンジン本体部を冷却するための通路における熱媒体の流量を増大させることができる。その結果、エンジン本体部の冷却性能を高めることができるので、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、流出熱媒体温度検出手段によって検出又は推定されるエンジン本体部から流出する熱媒体の温度に応じたエンジン本体部の冷却性能を確保して、例えば、エンジンのオーバーヒート等の問題を回避しつつ、熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量をできるだけ増大させて、第1凝縮手段における既燃ガスの冷却性能を高めることができる。
ところで、本発明は、前述のように、エンジン本体部を冷却するのに使用された熱媒体を利用する凝縮手段を備える作動ガス循環型エンジンにおいて、エンジン本体部を冷却する前の熱媒体を当該凝縮手段に供給するバイパスを設けることにより、当該凝縮手段の冷却性能を向上させて、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去しようとするものである。従って、本発明に係る作動ガス循環型エンジンにおいて、例えば、既燃ガスの循環通路における第1凝縮手段の下流側(即ち、第1凝縮手段と吸気ポートとの間の領域)に第2凝縮手段が更に配設されている場合は、当該第2凝縮手段に流入する既燃ガスは、第1凝縮手段によって、燃焼生成物の蒸気が十分に分離・除去されているので、当該第2凝縮手段において熱媒体を循環させるための循環手段(例えば、循環ポンプ等)の仕事量を増大させて熱媒体の循環量を増大させる等の対策が不要となり、結果として、かかる構成を有する作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての燃費が悪化したり、当該設備の製造コストが増大したりする問題を回避することができる。このように、本発明に係る作動ガス循環型エンジンは、既燃ガスの循環通路における第1凝縮手段の下流側に第2凝縮手段が更に配設されている構成において、より顕著な効果を発揮することができる。
従って、本発明の第5の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第4の実施態様の何れか1つに係る作動ガス循環型エンジンであって、
前記循環通路の前記第1凝縮手段と前記吸気ポートとの間の領域に介装され、熱媒体との熱交換によって前記第1凝縮手段から流出する前記既燃ガスを冷却して、前記既燃ガスに含まれる前記燃焼生成物の蒸気を凝縮させて凝縮液となし、前記既燃ガスから分離・除去する、第2凝縮手段と、
前記第2凝縮手段における熱媒体の流量を調整する熱媒体流量調整手段と、
を更に備える、
作動ガス循環型エンジンである。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、循環通路の第1凝縮手段と吸気ポートとの間の領域に介装され、熱媒体との熱交換によって第1凝縮手段から流出する既燃ガスを冷却して、既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気を凝縮させて凝縮液となし、既燃ガスから分離・除去する、第2凝縮手段と、第2凝縮手段における熱媒体の流量を調整する熱媒体流量調整手段と、を更に備える。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、第1凝縮手段において既燃ガスから分離・除去されずに既燃ガス中に残存した燃焼生成物の蒸気を、第2凝縮手段において既燃ガスから更に分離・除去することができるので、燃焼室に循環(再供給)される既燃ガス全体としての比熱比が低下して、上死点(TDC)付近における燃焼室内の温度や圧力が低下し、結果としてエンジンの熱効率の低下を招く問題を回避することができる。
加えて、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、前述のように、熱媒体バイパス通路を介して、エンジン本体部を冷却する前の熱媒体を第1凝縮手段に供給することができるので、第1凝縮手段の冷却性能が向上し、既燃ガスを十分に冷却して、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物の蒸気を効果的に凝縮させて、既燃ガスから効果的に分離・除去することができる。つまり、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、第1凝縮手段において既燃ガスから分離・除去されずに既燃ガス中に残存する燃焼生成物の蒸気の量をより少なくすることができる。従って、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、例えば、第2凝縮手段において熱媒体を循環させるための循環手段(例えば、循環ポンプ等)の仕事量を抑えることができるので、前述のように、作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての燃費が悪化したり、当該設備の製造コストが増大したりする問題を回避することできる。
尚、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える第2凝縮手段は、循環通路の第1凝縮手段と吸気ポートとの間の領域に介装され、熱媒体との熱交換によって第1凝縮手段から流出する既燃ガスを冷却して、既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気を凝縮させて凝縮液となし、既燃ガスから分離・除去することができる限りにおいて、如何なる構成を有するものであってもよい。例えば、第2凝縮手段は、第2凝縮手段と放熱手段(例えば、ラジエタ等の放熱器)との間で熱媒体を循環させて、第2凝縮手段内を流れる既燃ガスを冷却することにより、既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気を分離・除去するものであってもよい。また、第2凝縮手段内を流れる既燃ガスを冷却するのに使用される熱媒体としては、エンジン本体部や第1凝縮手段内を流れる既燃ガスを冷却する熱媒体と同様に、当該技術分野において熱媒体として使用されている種々の熱媒体を採用することができる。具体的には、かかる熱媒体としては、例えば、水や油等の液状の流体を使用することができる。また、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の使用状況に応じて、熱媒体の性状を変更したり、好適な性状を有する熱媒体を選択して離することができる。例えば、水の凍結が懸念されるような低温環境において熱媒体として水を使用する場合は、所謂「不凍液」を熱媒体として使用することができる。
また、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える熱媒体流量調整手段は、第2凝縮手段における熱媒体の流量を調整することができる限りにおいて、如何なる構成を有するものであってもよい。例えば、熱媒体流量調整手段は、第2凝縮手段と放熱手段(例えば、ラジエタ等の放熱器)との間で熱媒体を循環させる熱媒体の通路に介装された流量調整手段(例えば、流量調整弁、可変絞り等)であってもよい。あるいは、熱媒体流量調整手段は、例えば、第2凝縮手段と放熱手段(例えば、ラジエタ等の放熱器)との間で熱媒体を循環させる循環手段(例えば、循環ポンプ等)の吐出量を変更して、熱媒体の流量を調整するものであってもよい。循環手段としてポンプを採用する場合、例えば、ポンプを駆動する動力源の回転速度を変更することにより、吐出量を変更することができる。
ところで、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える第2凝縮手段は、前述のように、熱媒体との熱交換によって第1凝縮手段から流出する既燃ガスを冷却して、第1凝縮手段において既燃ガスから分離・除去されずに既燃ガス中に残存する燃焼生成物の蒸気を既燃ガスから分離・除去する。従って、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて、前述のように、作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての燃費が悪化したり、当該設備の製造コストが増大したりする問題を回避するには、第1凝縮手段から流出する既燃ガス中に残存する燃焼生成物の蒸気の量に対して、第2凝縮手段の冷却能力が過大とならないように調整することが望ましい。
従って、本発明の第6の実施態様は、
本発明の前記第5の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンであって、
前記第1凝縮手段から流出する前記既燃ガスにおける前記燃焼生成物の蒸気の分圧を検出又は推定する蒸気分圧検出手段を更に備え、
前記熱媒体流量調整手段によって、前記蒸気分圧検出手段によって検出又は推定される前記第1凝縮手段から流出する前記既燃ガスにおける前記燃焼生成物の蒸気の分圧が大きいほど、前記第2凝縮手段における前記熱媒体の流量が多くなるように、前記第2凝縮手段における前記熱媒体の流量を制御する、
作動ガス循環型エンジンである。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、第1凝縮手段から流出する既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の分圧を検出又は推定する蒸気分圧検出手段を更に備え、熱媒体流量調整手段によって、蒸気分圧検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の分圧が大きいほど、第2凝縮手段における熱媒体の流量が多くなるように、第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御する。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、第1凝縮手段から流出する既燃ガス中に残存する燃焼生成物の蒸気の量に応じた流量にて、第2凝縮手段に熱媒体を循環させることができる。その結果、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、第2凝縮手段において熱媒体を循環させるための循環手段(例えば、循環ポンプ等)の仕事量を必要最小限に抑えることができるので、前述のように、作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての燃費が悪化したり、当該設備の製造コストが増大したりする問題を回避することできる。
ここで、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおける、第1凝縮手段から流出する既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の分圧に応じた第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御について、図10を参照しながら、更に詳しく説明する。図10は、前述のように、第1凝縮手段から流出する既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の分圧に対する、第2凝縮手段における熱媒体の流量の対応関係を模式的に示すグラフである。図10に示すように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、蒸気分圧検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の分圧が大きいほど、第2凝縮手段における熱媒体の流量が増大される。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、第2凝縮手段において熱媒体を循環させるための循環手段(例えば、循環ポンプ等)の仕事量を必要最小限に抑えて、前述のように、作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての燃費が悪化したり、当該設備の製造コストが増大したりする問題を回避することできる。
尚、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて実行される、蒸気分圧検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の分圧に基づく第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御方式は、前述の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて実行される、流出熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される前記エンジン本体部から流出する熱媒体の温度に基づく熱媒体バイパス通路を流れる熱媒体の流量の制御方式と基本的には同様であるので、ここでの詳細な説明は割愛する。
また、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える蒸気分圧検出手段は、第1凝縮手段から流出する既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の分圧を検出又は推定することができる限りにおいて、如何なる構成を有するものであってもよい。例えば、蒸気分圧検出手段は、既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の濃度を検出又は推定するものであってもよい。あるいは、蒸気分圧検出手段は、既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の量に関連する他の状態量等に基づいて、第1凝縮手段から流出する既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の分圧を推定するものであってもよい。
しかしながら、一般的には、第1凝縮手段から流出する既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の分圧を迅速且つ簡便に検出又は推定することは困難である場合が多い。一方、図2に示す既燃ガスにおける燃焼生成物の飽和蒸気量と温度との関係を表すグラフを参照しながら前述したように、既燃ガス中に蒸気として含まれることが可能な燃焼生成物の最大量(飽和蒸気量)は、既燃ガスの温度の上昇と共に増大し、既燃ガスの温度の下降と共に減少する。従って、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度が高いほど、当該既燃ガスが、より多い量の燃焼生成物の蒸気を含んでいる可能性が高い。つまり、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度を、第1凝縮手段から流出する既燃ガス中に残存する燃焼生成物の蒸気の量の目安として利用することができる。
従って、本発明の第7の実施態様は、
本発明の前記第5の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンであって、
前記第1凝縮手段から流出する前記既燃ガスの温度を検出又は推定する既燃ガス温度検出手段を更に備え、
前記熱媒体流量調整手段によって、前記既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される前記第1凝縮手段から流出する前記既燃ガスの温度が高いほど、前記第2凝縮手段における前記熱媒体の流量が多くなるように、前記第2凝縮手段における前記熱媒体の流量を制御する、
作動ガス循環型エンジンである。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度を検出又は推定する既燃ガス温度検出手段を更に備え、熱媒体流量調整手段によって、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度が高いほど、第2凝縮手段における熱媒体の流量が多くなるように、第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御する。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度が高く、当該既燃ガスが多量の燃焼生成物の蒸気を含んでいる可能性が高い場合には、熱媒体流量調整手段によって第2凝縮手段における熱媒体の流量を増大させることにより、第2凝縮手段の冷却能力を高めて、既燃ガスの温度をより大幅に下降させて、より多い量の燃焼生成物を既燃ガスから分離・除去することができる。
一方、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度が低く、当該既燃ガスが少量の燃焼生成物の蒸気しか含んでいない可能性が高い場合には、熱媒体流量調整手段によって第2凝縮手段における熱媒体の流量を減少させることにより、第2凝縮手段の冷却能力を下げ、第2凝縮手段において熱媒体を循環させるための循環手段(例えば、循環ポンプ等)の仕事量を、当該既燃ガス中に残存する燃焼生成物の蒸気の量に応じた必要最小限に抑えることができる。その結果、前述のように、作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての燃費が悪化したり、当該設備の製造コストが増大したりする問題を回避することができる。
尚、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて実行される、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度に基づく第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御方式は、前述の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて実行される、蒸気分圧検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の分圧に基づく第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御方式と同様であるので、ここでの詳細な説明は割愛する。
また、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える既燃ガス温度検出手段は、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度を検出又は推定することができる限りにおいて、如何なる構成を有するものであってもよい。例えば、既燃ガス温度検出手段は、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンに関する各種制御を行うためのECU(電子制御装置)と、当該ECUに対して検出信号を伝達するように構成された、例えば、サーミスタ等の温度センサとによって構成することができる。但し、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える既燃ガス温度検出手段は、上記のように第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度を直接的に検出するものに限定されるものではない。即ち、既燃ガス温度検出手段は、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度に関連する他の状態量等に基づいて、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度を推定するものであってもよい。
ここで、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンの構成につき、図11を参照しながら、更に詳しく説明する。図11は、前述のように、本発明のもう1つの実施態様に係る作動ガス循環型エンジンの構成を示す模式図である。図11に示す作動ガス循環型エンジンは、既燃ガスの循環通路40における第1凝縮手段50と第2凝縮手段50′との間の領域に、既燃ガス温度検出手段76として、温度センサが配設されている点を除き、図4に示す作動ガス循環型エンジンと同様である。従って、図11に示す作動ガス循環型エンジンにつき、図4に示す作動ガス循環型エンジンについての説明と重複する内容については割愛する。
図11に示す作動ガス循環型エンジンにおいては、上記のように、既燃ガスの循環通路40における第1凝縮手段50と第2凝縮手段50′との間の領域に、既燃ガス温度検出手段76として、温度センサが配設されている。これにより、第1凝縮手段50から流出する既燃ガスの温度に応じて、放熱器(ラジエタ)70′において冷却された熱媒体の第2凝縮手段50′における流量を適切に制御することができる。より具体的には、図11に示す作動ガス循環型エンジンにおいては、既燃ガス温度検出手段76によって検出又は推定される第1凝縮手段50から流出する既燃ガスの温度が高く、当該既燃ガスが多量の燃焼生成物の蒸気を含んでいる可能性が高い場合には、熱媒体流量調整手段(循環ポンプP)によって第2凝縮手段50′における熱媒体の流量を増大させることにより、第2凝縮手段の冷却能力を高め、既燃ガスの温度をより大幅に下降させて、より多い量の燃焼生成物を分離・除去することができる。
一方、既燃ガス温度検出手段76によって検出又は推定される第1凝縮手段50から流出する既燃ガスの温度が低く、当該既燃ガスが少量の燃焼生成物の蒸気しか含んでいない可能性が高い場合には、熱媒体流量調整手段(循環ポンプP)によって第2凝縮手段50′における熱媒体の流量を減少させることにより、第2凝縮手段50′の冷却能力を下げ、第2凝縮手段50′における熱媒体流量調整手段(循環ポンプP)の仕事量を、当該既燃ガス中に残存する燃焼生成物の蒸気の量に応じた必要最小限に抑えることができる。その結果、前述のように、作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての燃費が悪化したり、当該設備の製造コストが増大したりする問題を回避することができる。
次に、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおける、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度に応じた第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御について、図12を参照しながら、更に詳しく説明する。図12は、前述のように、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度に対する、第2凝縮手段における熱媒体の流量の対応関係を模式的に示すグラフである。図12に示すように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度が高いほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が増大され、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度が低いほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が減少される。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、第2凝縮手段において熱媒体を循環させるための循環手段(例えば、循環ポンプ等)の仕事量を必要最小限に抑えて、前述のように、作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての燃費が悪化したり、当該設備の製造コストが増大したりする問題を回避することができる。
ところで、本発明に係る作動ガス循環型エンジンが備える第1凝縮手段においては、エンジン本体部から流出し放熱手段へ戻る熱媒体との熱交換によって既燃ガスを冷却し、既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気を凝縮させて凝縮液となし、既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気を既燃ガスから分離・除去する。従って、第1凝縮手段においては、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度が低いほど、既燃ガスの温度がより大幅に下降して、より多い量の燃焼生成物の蒸気が分離・除去される。逆に、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度が高いほど、既燃ガスの温度の下降量は小さく、既燃ガスから分離・除去される燃焼生成物の蒸気の量も少ない。従って、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度が高いほど、第1凝縮手段から流出する既燃ガスが、より多い量の燃焼生成物の蒸気を含んでいる可能性が高い。つまり、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度を、第1凝縮手段から流出する既燃ガス中に残存する燃焼生成物の蒸気の量の目安として利用することができる。
従って、本発明の第8の実施態様は、
本発明の前記第5の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンであって、
前記第1凝縮手段に流入する前記熱媒体の温度を検出又は推定する流入熱媒体温度検出手段を更に備え、
前記熱媒体流量調整手段によって、前記流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される前記第1凝縮手段に流入する前記熱媒体の温度が高いほど、前記第2凝縮手段における前記熱媒体の流量が多くなるように、前記第2凝縮手段における前記熱媒体の流量を制御する、
作動ガス循環型エンジンである。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度を検出又は推定する流入熱媒体温度検出手段を更に備え、熱媒体流量調整手段によって、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度が高いほど、第2凝縮手段における熱媒体の流量が多くなるように、第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御する。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度が高く、第1凝縮手段から流出する既燃ガスが多量の燃焼生成物の蒸気を含んでいる可能性が高い場合には、熱媒体流量調整手段によって第2凝縮手段における熱媒体の流量を増大させることにより、第2凝縮手段の冷却能力を高め、既燃ガスの温度をより大幅に下降させて、より多い量の燃焼生成物を既燃ガスから分離・除去することができる。
一方、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度が低く、第1凝縮手段から流出する既燃ガスが少量の燃焼生成物の蒸気しか含んでいない可能性が高い場合には、熱媒体流量調整手段によって第2凝縮手段における熱媒体の流量を減少させることにより、第2凝縮手段の冷却能力を下げ、第2凝縮手段において熱媒体を循環させるための循環手段(例えば、循環ポンプ等)の仕事量を、第1凝縮手段から流出する既燃ガス中に残存する燃焼生成物の蒸気の量に応じた必要最小限に抑えることができる。その結果、前述のように、作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての燃費が悪化したり、当該設備の製造コストが増大したりする問題を回避することができる。
尚、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて実行される、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度に基づく第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御方式は、前述の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて実行される、蒸気分圧検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の分圧に基づく第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御方式と同様であるので、ここでの詳細な説明は割愛する。
また、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える流入熱媒体温度検出手段は、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度を検出又は推定することができる限りにおいて、如何なる構成を有するものであってもよい。例えば、流入熱媒体温度検出手段は、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンに関する各種制御を行うためのECU(電子制御装置)と、当該ECUに対して検出信号を伝達するように構成された、例えば、サーミスタ等の温度センサとによって構成することができる。但し、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える流入熱媒体温度検出手段は、上記のように第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度を直接的に検出するものに限定されるものではない。即ち、流入熱媒体温度検出手段は、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度に関連する他の状態量等に基づいて、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度を推定するものであってもよい。
ここで、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンの構成につき、図13を参照しながら、更に詳しく説明する。図13は、前述のように、本発明のもう1つの実施態様に係る作動ガス循環型エンジンの構成を示す模式図である。図13に示す作動ガス循環型エンジンは、エンジン本体部10からの熱媒体の流出通路71における循環ポンプPと第1凝縮手段50との間の領域に、流入熱媒体温度検出手段77として、温度センサが配設されている点を除き、図4に示す作動ガス循環型エンジンと同様である。従って、図13に示す作動ガス循環型エンジンにつき、図4に示す作動ガス循環型エンジンについての説明と重複する内容については割愛する。
図13に示す作動ガス循環型エンジンにおいては、上記のように、エンジン本体部10からの熱媒体の流出通路71における循環ポンプPと第1凝縮手段50との間の領域に、流入熱媒体温度検出手段77として、温度センサが配設されている。これにより、第1凝縮手段50に流入する熱媒体の温度に応じて、放熱器(ラジエタ)70′において冷却された熱媒体の第2凝縮手段50′における流量を適切に制御することができる。より具体的には、図13に示す作動ガス循環型エンジンにおいては、流入熱媒体温度検出手段77によって検出又は推定される第1凝縮手段50に流入する熱媒体の温度が高く、第1凝縮手段50から流出する既燃ガスが多量の燃焼生成物の蒸気を含んでいる可能性が高い場合には、熱媒体流量調整手段(循環ポンプP)によって第2凝縮手段50′における熱媒体の流量を増大させることにより、第2凝縮手段の冷却能力を高め、既燃ガスの温度をより大幅に下降させて、より多い量の燃焼生成物を分離・除去することができる。
一方、流入熱媒体温度検出手段77によって検出又は推定される第1凝縮手段50に流入する熱媒体の温度が低く、第1凝縮手段50から流出する既燃ガスが少量の燃焼生成物の蒸気しか含んでいない可能性が高い場合には、熱媒体流量調整手段(循環ポンプP)によって第2凝縮手段50′における熱媒体の流量を減少させることにより、第2凝縮手段50′の冷却能力を下げ、第2凝縮手段50′における熱媒体流量調整手段(循環ポンプP)の仕事量を、第1凝縮手段50から流出する既燃ガス中に残存する燃焼生成物の蒸気の量に応じた必要最小限に抑えることができる。その結果、前述のように、作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての燃費が悪化したり、当該設備の製造コストが増大したりする問題を回避することができる。
次に、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおける、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度に応じた第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御について、図14を参照しながら、更に詳しく説明する。図14は、前述のように、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度に対する、第2凝縮手段における熱媒体の流量の対応関係を模式的に示すグラフである。図14に示すように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度が高いほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が増大され、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度が低いほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が減少される。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、第2凝縮手段において熱媒体を循環させるための循環手段(例えば、循環ポンプ等)の仕事量を必要最小限に抑えて、前述のように、作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての燃費が悪化したり、当該設備の製造コストが増大したりする問題を回避することができる。
ところで、エンジン本体部の冷却性能及び第1凝縮手段における既燃ガスの冷却性能は、本発明に係る作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の周囲の外気温による影響を受ける。特に、エンジン本体部の冷却及び第1凝縮手段における熱交換による既燃ガスの冷却に使用される熱媒体を冷却するための冷却手段として、例えば、ラジエタ等の放熱器を使用する場合、当該冷却手段によって冷却された後の当該熱媒体の温度は、周囲の外気温による影響を顕著に受ける。具体的には、周囲の外気温が高いほど、蒸気冷却手段によって冷却された後の熱媒体の温度は高く、周囲の外気温が低いほど、蒸気冷却手段によって冷却された後の熱媒体の温度は低くなる。つまり、第1凝縮手段を循環する熱媒体の流量が一定である場合においても、第1凝縮手段における既燃ガスの冷却性能は、周囲の外気温が高いほど低く、周囲の外気温が低いほど高くなる。
従って、例えば、循環通路における既燃ガスの流量、エンジン本体部の排気ポートから排出される既燃ガスの温度及び当該既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の含有率、並びに第1凝縮手段を循環する熱媒体の流量が一定である場合、本発明に係る作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の周囲の外気温が高いほど(第1凝縮手段における既燃ガスの冷却性能が低いので)第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度は高く、周囲の外気温が低いほど(第1凝縮手段における既燃ガスの冷却性能が高いので)第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度は低くなる。
しかしながら、現実には、エンジン本体部の排気ポートから排出される既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の含有率は、例えば、エンジンの運転状況に応じて燃焼室内において燃焼した燃料の量等によって変動する。例えば、循環通路における既燃ガスの流量、エンジン本体部の排気ポートから排出される既燃ガスの温度、第1凝縮手段を循環する熱媒体の流量、及び周囲の外気温が一定である場合(即ち、当該既燃ガスの温度と周囲の外気温との差も一定である場合)、当該既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の含有率が高いほど第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度は高くなり、当該既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の含有率が低いほど第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度は低くなる。これは、第1凝縮手段における燃焼生成物の蒸気の凝結に伴って放出される潜熱に起因して、エンジン本体部の排気ポートから排出される既燃ガスの見掛け上の熱容量が、当該既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の含有率が高いほど大きく、当該既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の含有率が低いほど小さくなるためである。
以上より、例えば、循環通路における既燃ガスの流量、エンジン本体部の排気ポートから排出される既燃ガスの温度、第1凝縮手段を循環する熱媒体の流量、及び第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度が一定である場合、本発明に係る作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の周囲の外気温が高い(即ち、当該既燃ガスの温度と周囲の外気温との差が小さい)にもかかわらず、当該既燃ガスの温度が上記一定の温度まで下降したということは、エンジン本体部の排気ポートから排出される既燃ガスの見掛け上の熱容量が小さい(即ち、当該既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の含有率が低い)ことを意味する。逆に、周囲の外気温が低い(即ち、当該既燃ガスの温度と周囲の外気温との差が大きい)にもかかわらず、当該既燃ガスの温度が上記一定の温度までしか下降しなかったということは、エンジン本体部の排気ポートから排出される既燃ガスの見掛け上の熱容量が大きい(即ち、当該既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の含有率が高い)ことを意味する。
従って、前述のように既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度に基づいて(熱媒体流量調整手段によって)第2凝縮手段における熱媒体の流量を調整して、第2凝縮手段において熱媒体を循環させるための循環手段(例えば、循環ポンプ等)の仕事量を、当該既燃ガス中に残存する燃焼生成物の蒸気の量に応じた必要最小限に抑える実施態様において、当該循環手段の仕事量をより緻密に制御するためには、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と周囲の外気温との差に基づいて第2凝縮手段における熱媒体の流量を調整することが望ましい。
従って、本発明の第9の実施態様は、
本発明の前記第7の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンであって、
外気温を検出又は推定する外気温検出手段を更に備え、
前記熱媒体流量調整手段によって、前記既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される前記第1凝縮手段から流出する前記既燃ガスの温度と前記外気温検出手段によって検出又は推定される前記外気温との差が大きいほど、前記第2凝縮手段における前記熱媒体の流量が多くなるように、前記第2凝縮手段における前記熱媒体の流量を制御する、
作動ガス循環型エンジンである。
本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、本発明の前記第7の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンと同様に、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度を検出又は推定する既燃ガス温度検出手段を備え、熱媒体流量調整手段によって、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度が高いほど、第2凝縮手段における熱媒体の流量が多くなるように、第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御する。逆に、熱媒体流量調整手段は、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度が低いほど、第2凝縮手段における熱媒体の流量が少なくなるように、第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御する。
上記に加えて、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、外気温を検出又は推定する外気温検出手段を更に備え、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差が大きいほど、第2凝縮手段における熱媒体の流量が多くなるように、第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御する。逆に、当該作動ガス循環型エンジンは、熱媒体流量調整手段によって、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差が小さいほど、第2凝縮手段における熱媒体の流量が少なくなるように、第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御する。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度に基づいて第2凝縮手段における熱媒体の流量を調整すると共に、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差に基づいて第2凝縮手段における熱媒体の流量を補正する。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンによれば、第1凝縮手段から流出する既燃ガス中に残存する燃焼生成物の蒸気の量により正確に基づいて、第2凝縮手段における既燃ガスの冷却性能をより緻密に適正化することができる。
尚、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて実行される、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度及び当該既燃ガスの温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差に基づく第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御方式は、前述の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて実行される、蒸気分圧検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の分圧に基づく第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御方式と基本的には同様であるので、ここでの詳細な説明は割愛する。
また、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える外気温検出手段は、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の周囲の外気温を検出又は推定することができる限りにおいて、如何なる構成を有するものであってもよい。例えば、外気温検出手段は、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンに関する各種制御を行うためのECU(電子制御装置)と、当該ECUに対して検出信号を伝達するように構成された、例えば、サーミスタ等の温度センサとによって構成することができる。但し、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える外気温検出手段は、上記のように周囲の外気温を直接的に検出するものに限定されるものではない。即ち、外気温検出手段は、周囲の外気温に関連する他の状態量等に基づいて、周囲の外気温を推定するものであってもよい。
ここで、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおける、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度及び当該既燃ガスの温度と外気温との差に基づく第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御について、図15を参照しながら、更に詳しく説明する。図15は、前述のように、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度に対する第2凝縮手段における熱媒体の流量の対応関係が、当該既燃ガスの温度と外気温との差に応じて変化することを表す模式的なグラフである。図15に示すグラフにおいては、複数の外気温における第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と第2凝縮手段における熱媒体の流量との対応関係を表す複数の直線が描かれている。
図15に示す例においては、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と第2凝縮手段における熱媒体の流量との対応関係を表す直線が、外気温の低下に応じて、第2凝縮手段における熱媒体の流量が増大する方向に平行移動している。逆に言うと、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と第2凝縮手段における熱媒体の流量との対応関係を表す直線が、外気温の上昇に応じて、第2凝縮手段における熱媒体の流量が減少する方向に平行移動している。これにより、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度が高いほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が多く、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度が低いほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が少なくなり、且つ第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差が大きいほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が多く、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と当該外気温との差が小さいほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が少なくなるように、第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御することができる
上記のような種々の外気温における第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と第2凝縮手段における熱媒体の流量との対応関係は、例えば実機モデル等を利用する事前実験により、予め求めておくことができる。斯くして得られた上記対応関係に対応するデータマップ(例えば、データ表等)を、当該作動ガス循環型エンジンに関する各種制御を行うためのECUが備える記憶手段に格納しておき、当該作動ガス循環型エンジンに関する各種制御を行うためのECUが備えるCPUに、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度及び当該既燃ガスの温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差に対応する第2凝縮手段における熱媒体の流量を当該データマップから読み出させ、斯くして読み出された熱媒体の流量に対応する指示信号を熱媒体流量調整手段に伝達して、第2凝縮手段における熱媒体の流量が当該読み出された流量に合致するように熱媒体流量調整手段を動作させることによって、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度及び当該既燃ガスの温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差に基づく第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御を実現することができる。かかる制御を実行するためのアルゴリズムもまた、例えば、ECUが備える記憶装置に格納されたプログラムに従って、ECUが備えるCPUによって実行させることができる。
但し、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御方式は上記に限定されるものではなく、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度が高いほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が多く、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度が低いほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が少なくなり、且つ第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差が大きいほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が多く、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と当該外気温との差が小さいほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が少なくなるように、第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御することができる限りにおいて、如何なる方式であってもよい。
また、図15に示す例においては、上述のように、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と第2凝縮手段における熱媒体の流量との対応関係を表す直線が、外気温の低下及び上昇に応じて、それぞれ、第2凝縮手段における熱媒体の流量が増大及び減少する方向に平行移動している。しかしながら、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と外気温との差に応じて当該既燃ガスの温度に対する第2凝縮手段における熱媒体の流量の対応関係が変化するパターンは、上記に限定されるものではない。例えば、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と第2凝縮手段における熱媒体の流量との対応関係を表す直線の傾きが、外気温の低下及び上昇に応じて、それぞれ増大及び減少する場合もあり得る。また、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と外気温との差に応じて当該既燃ガスの温度に対する第2凝縮手段における熱媒体の流量の対応関係が変化するパターンは、例えば、上記のような第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と第2凝縮手段における熱媒体の流量との対応関係を表す直線の傾きの変化と、前述のような第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と第2凝縮手段における熱媒体の流量との対応関係を表す直線の平行移動との組み合わせであってもよい。
上述のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンによれば、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度に基づいて第2凝縮手段における熱媒体の流量だ調整されると共に、既燃ガス温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差に基づいて第2凝縮手段における熱媒体の流量が補正される。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、第1凝縮手段から流出する既燃ガス中に残存する燃焼生成物の蒸気の量により正確に基づいて、第2凝縮手段における既燃ガスの冷却性能をより緻密に適正化することができる。
上記と同様の概念は、前述のように流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度に基づいて(熱媒体流量調整手段によって)第2凝縮手段における熱媒体の流量を調整して、第2凝縮手段において熱媒体を循環させるための循環手段(例えば、循環ポンプ等)の仕事量を、当該既燃ガス中に残存する燃焼生成物の蒸気の量に応じた必要最小限に抑える実施態様にも適用することができる。
即ち、本発明の第10の実施態様は、
本発明の前記第8の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンであって、
外気温を検出又は推定する外気温検出手段を更に備え、
前記熱媒体流量調整手段によって、前記流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される前記第1凝縮手段に流入する前記熱媒体の温度と前記外気温検出手段によって検出又は推定される前記外気温との差が大きいほど、前記第2凝縮手段における前記熱媒体の流量が多くなるように、前記第2凝縮手段における前記熱媒体の流量を制御する、
作動ガス循環型エンジンである。
本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、本発明の前記第8の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンと同様に、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度を検出又は推定する流入熱媒体温度検出手段を備え、熱媒体流量調整手段によって、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度が高いほど、第2凝縮手段における熱媒体の流量が多くなるように、第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御する。逆に、当該作動ガス循環型エンジンは、熱媒体流量調整手段によって、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度が低いほど、第2凝縮手段における熱媒体の流量が少なくなるように、第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御する。
上記に加えて、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、外気温を検出又は推定する外気温検出手段を更に備え、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差が大きいほど、第2凝縮手段における熱媒体の流量が多くなるように、第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御する。逆に、当該作動ガス循環型エンジンは、熱媒体流量調整手段によって、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差が小さいほど、第2凝縮手段における熱媒体の流量が少なくなるように、第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御する。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度に基づいて第2凝縮手段における熱媒体の流量を調整すると共に、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差に基づいて第2凝縮手段における熱媒体の流量を補正する。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンによれば、第1凝縮手段から流出する既燃ガス中に残存する燃焼生成物の蒸気の量により正確に基づいて、第2凝縮手段における既燃ガスの冷却性能をより緻密に適正化することができる。
尚、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて実行される、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度及び当該熱媒体の温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差に基づく第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御方式は、前述の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて実行される、蒸気分圧検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段から流出する既燃ガスにおける燃焼生成物の蒸気の分圧に基づく第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御方式と基本的には同様であるので、ここでの詳細な説明は割愛する。
また、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える外気温検出手段は、上述のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の周囲の外気温を検出又は推定することができる限りにおいて、如何なる構成を有するものであってもよい。例えば、外気温検出手段は、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンに関する各種制御を行うためのECU(電子制御装置)と、当該ECUに対して検出信号を伝達するように構成された、例えば、サーミスタ等の温度センサとによって構成することができる。但し、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える外気温検出手段は、上記のように周囲の外気温を直接的に検出するものに限定されるものではない。即ち、外気温検出手段は、周囲の外気温に関連する他の状態量等に基づいて、周囲の外気温を推定するものであってもよい。
ここで、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおける、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度及び当該熱媒体の温度と外気温との差に基づく第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御について、図16を参照しながら、更に詳しく説明する。図16は、前述のように、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度に対する第2凝縮手段における熱媒体の流量の対応関係が、当該熱媒体の温度と外気温との差に応じて変化することを表す模式的なグラフである。図16に示すグラフにおいては、複数の外気温における第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と第2凝縮手段における熱媒体の流量との対応関係を表す複数の直線が描かれている。
図16に示す例においては、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と第2凝縮手段における熱媒体の流量との対応関係を表す直線が、外気温の低下に応じて、第2凝縮手段における熱媒体の流量が増大する方向に平行移動している。逆に言うと、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と第2凝縮手段における熱媒体の流量との対応関係を表す直線が、外気温の上昇に応じて、第2凝縮手段における熱媒体の流量が減少する方向に平行移動している。これにより、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度が高いほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が多く、当該熱媒体の温度が低いほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が少なくなり、且つ第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差が大きいほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が多く、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と当該外気温との差が小さいほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が少なくなるように、第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御することができる
上記のような種々の外気温における第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と第2凝縮手段における熱媒体の流量との対応関係は、例えば実機モデル等を利用する事前実験により、予め求めておくことができる。斯くして得られた上記対応関係に対応するデータマップ(例えば、データ表等)を、当該作動ガス循環型エンジンに関する各種制御を行うためのECUが備える記憶手段に格納しておき、当該作動ガス循環型エンジンに関する各種制御を行うためのECUが備えるCPUに、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度及び当該熱媒体の温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差に対応する第2凝縮手段における熱媒体の流量を当該データマップから読み出させ、斯くして読み出された熱媒体の流量に対応する指示信号を熱媒体流量調整手段に伝達して、第2凝縮手段における熱媒体の流量が当該読み出された流量に合致するように熱媒体流量調整手段を動作させることによって、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度及び当該熱媒体の温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差に基づく第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御を実現することができる。かかる制御を実行するためのアルゴリズムもまた、例えば、ECUが備える記憶装置に格納されたプログラムに従って、ECUが備えるCPUによって実行させることができる。
但し、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える第2凝縮手段における熱媒体の流量の制御方式は上記に限定されるものではなく、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度が高いほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が多く、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度が低いほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が少なくなり、且つ第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差が大きいほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が多く、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と当該外気温との差が小さいほど第2凝縮手段における熱媒体の流量が少なくなるように、第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御することができる限りにおいて、如何なる方式であってもよい。
また、図16に示す例においては、上述のように、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と第2凝縮手段における熱媒体の流量との対応関係を表す直線が、外気温の低下及び上昇に応じて、それぞれ、第2凝縮手段における熱媒体の流量が増大及び減少する方向に平行移動している。しかしながら、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と外気温との差に応じて当該既燃ガスの温度に対する第2凝縮手段における熱媒体の流量の対応関係が変化するパターンは、上記に限定されるものではない。例えば、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と第2凝縮手段における熱媒体の流量との対応関係を表す直線の傾きが、外気温の低下及び上昇に応じて、それぞれ増大及び減少する場合もあり得る。また、第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と外気温との差に応じて当該熱媒体の温度に対する第2凝縮手段における熱媒体の流量の対応関係が変化するパターンは、例えば、上記のような第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と第2凝縮手段における熱媒体の流量との対応関係を表す直線の傾きの変化と、前述のような第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と第2凝縮手段における熱媒体の流量との対応関係を表す直線の平行移動との組み合わせであってもよい。
上述のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンによれば、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度に基づいて第2凝縮手段における熱媒体の流量だ調整されると共に、流入熱媒体温度検出手段によって検出又は推定される第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度と外気温検出手段によって検出又は推定される外気温との差に基づいて第2凝縮手段における熱媒体の流量が補正される。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、第1凝縮手段に流入する熱媒体に残存する燃焼生成物の蒸気の量により正確に基づいて、第2凝縮手段における既燃ガスの冷却性能をより緻密に適正化することができる。
ところで、上記酸化剤としては、前述のように、例えば、酸素、過酸化水素等の、種々の酸化剤を用いることができるが、例えば、入手の容易さや管理の容易さの観点からは、酸化剤として酸素を用いることが望ましい。
従って、本発明の第11の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第10の実施態様の何れか1つに係る作動ガス循環型エンジンであって、
前記酸化剤が酸素である、
作動ガス循環型エンジンである。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、酸化剤として酸素を用いる。酸素は、上述のように、入手及び管理が容易であるので、作動ガス循環型エンジンにおける酸化剤として望ましい。尚、酸化剤として酸素を用いる本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、例えば、酸化剤貯蔵部としての酸素ボンベに酸素を貯蔵することができる。そして、同酸化剤貯蔵部から、例えば、同エンジンの燃焼室内に酸素を直接噴射しても、又は同エンジンの燃焼室内に供給される前に、酸素を作動ガスと予め混合してもよい。
ところで、前述のように、上記作動ガスとしては、例えば、空気や窒素等の、種々のガスを用いることができるが、エンジンの熱効率を高め、且つ、例えば、窒素酸化物のような、環境保護の観点から排出を抑制することが求められている汚染物質を削減するためには、例えば、大きい比熱比を有する単原子の不活性ガスを用いることが望ましい。かかる比熱比が大きいガスを作動ガスとして用いる場合、比較的小さい比熱比を有するガス(例えば、空気、窒素等)を作動ガスとして用いる場合と比較して、より高い熱効率でエンジンを運転することができる。かかる大きい比熱比を有する単原子の不活性ガスとしては、希ガス類に属するヘリウム、ネオン、アルゴン等を挙げることができるが、内燃機関の作動ガスとしては、これらの中ではアルゴンが広く用いられている。
従って、本発明の第12の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第11の実施態様の何れか1つに係る作動ガス循環型エンジンであって、
前記作動ガスがアルゴンである、
作動ガス循環型エンジンである。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、作動ガスとしてアルゴンを用いる。アルゴンは、上述のように、内燃機関の作動ガスとしては、これらの中ではアルゴンが広く用いられており、入手及び管理が容易であるので、作動ガス循環型エンジンにおける作動ガスとして望ましい。また、高い比熱比を有し且つ不活性なアルゴンを作動ガスとして使用する本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、本発明の利点を十分に発揮して、同エンジンを高い熱効率にて運転することができ、且つ、例えば、窒素酸化物のような、環境汚染物質の排出を抑制することができる。尚、作動ガスとしてアルゴンを用いる本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、作動ガスとしてのアルゴンは、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に再供給するための循環通路内に密封されるので、基本的には、作動ガスを貯蔵・供給するための作動ガス貯蔵部を設ける必要は無い。しかしながら、例えば、同エンジンの運転に伴って、作動ガスとしてのアルゴンが循環通路から漏れ出した場合に、漏れ出したアルゴンを循環通路に補填することを目的として、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが、作動ガス貯蔵部(例えば、ボンベ等)を更に備えていてもよい。
ところで、上記燃料としては、前述のように、例えば、ガソリン、軽油、天然ガス、プロパン、水素等の、種々の燃料を用いることができる。しかしながら、ガソリンを始めとする炭化水素系燃料を用いる場合は、燃焼生成物として二酸化炭素(CO2)も発生するため、二酸化炭素をも既燃ガス(循環ガス)から分離・除去する必要が生ずる。一方、本発明は、前述のように、作動ガス循環型エンジンにおいて、部品点数及び圧力損失の増大を最小限に抑えつつ、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去しようとするものである。より具体的には、本発明は、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に再供給するための循環通路に介装された凝縮手段によって、排気ポートから排出される既燃ガス中に含まれる燃焼生成物の蒸気を分離・除去する作動ガス循環型エンジンにおいて、部品点数及び圧力損失の増大を最小限に抑えつつ、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去しようとするものである。従って、上記燃料としては、燃焼生成物として水蒸気(H2O)のみを生ずる水素を使用することが特に望ましい。
従って、本発明の第13の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第12の実施態様の何れか1項に係る作動ガス循環型エンジンであって、
前記燃料が水素である、
作動ガス循環型エンジンである。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、燃焼生成物として水(H2O)のみを生ずる水素を燃料として使用する。従って、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、炭化水素系燃料を使用する作動ガス循環型エンジンにおける燃焼生成物に含まれる二酸化炭素を分離・除去するための手段を設ける必要が無い。即ち、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、排気ポートから排出される既燃ガス中に含まれる水蒸気を分離・除去する凝縮手段を、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に再供給するための循環通路に介装することによって、既燃ガス中に含まれる全ての燃焼生成物を分離・除去することができる。
以上のように、本発明に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジン本体部を冷却するのに使用された熱媒体を利用する凝縮手段を備える作動ガス循環型エンジンにおいて、エンジン本体部を冷却する前の熱媒体を当該凝縮手段に供給するバイパスを設けることにより、当該凝縮手段の冷却性能を向上させて、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去することができる。また、本発明に係る作動ガス循環型エンジンにおいて、例えば、既燃ガスの循環通路における第1凝縮手段の下流側(即ち、第1凝縮手段と吸気ポートとの間の領域)に第2凝縮手段が更に配設されている場合は、当該第2凝縮手段に流入する既燃ガスは、第1凝縮手段によって、燃焼生成物の蒸気が十分に分離・除去されているので、当該第2凝縮手段において熱媒体を循環させるための循環手段(例えば、循環ポンプ等)の仕事量を増大させて熱媒体の循環量を増大させる等の対策が不要となり、結果として、かかる構成を有する作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての燃費が悪化したり、当該設備の製造コストが増大したりする問題を回避することができる。この場合、第1凝縮手段から流出する既燃ガスの温度や第1凝縮手段に流入する熱媒体の温度に基づいて第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御することにより、第2凝縮手段において熱媒体を循環させるための循環手段(例えば、循環ポンプ等)の仕事量を必要最小限に抑えて、作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての燃費の悪化や、当該設備の製造コストの増大等の問題を抑制しつつ、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物の蒸気をより効果的に分離・除去することができる。更に、外気温の影響を考慮に入れて第2凝縮手段における熱媒体の流量を制御することにより、第2凝縮手段における仕事量を更に緻密に管理することができる。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成及び実行手順の組み合わせを有する幾つかの実施例について説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることができる。