JP5618316B2 - 球状体の表面処理用治具、球状体の表面処理方法および球状部品の製造方法 - Google Patents

球状体の表面処理用治具、球状体の表面処理方法および球状部品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、球状体の表面処理用治具、球状体の表面処理方法および球状部品の製造方法に関し、より特定的には、表面の全域に対して表面処理を実施することを可能とする球状体の表面処理用治具、球状体の表面処理方法および球状部品の製造方法に関するものである。
球状体に対して表面改質処理、コーティング処理などの表面処理を実施する場合、当該球状体を浮上させた状態で表面処理を実施しない限り、球状体と当該球状体を保持する治具などの支持部材とが接触した状態で表面処理が実施されることとなる。その結果、球状体の表面のうち、当該支持部材と接触する領域(接触領域)においては表面処理が十分に進行しないおそれがある。特に、接触領域が大きい場合や、接触領域以外の領域(非接触領域)からの拡散などによる接触領域における表面処理の進行が期待できない場合などにおいては、表面の全域に対して表面処理を実施することができないという問題が生じる。
一方、球状体を浮上させた状態で表面処理を実施することにより、球状体の表面の全域に対して表面処理を実施することが可能となる。しかし、球状体を浮上させた状態で表面処理を実施する場合、処理コストが上昇し、また球状体の数量、大きさ、重量などが制限されるという問題がある。
これに対し、球状体を転動あるいは回転させつつ表面処理を実施する球状体の表面処理方法が提案されている(たとえば特許文献1〜3参照)。これにより、表面の全域に対して表面処理を実施することができる。
特開平9−209117号公報 特開2003−73807号公報 特開2003−59695号公報
球状体の表面処理においては、球状体の温度が表面処理の速度や品質に影響を与える場合が多い。この場合、球状体の温度が測定されつつ表面処理が実施されることが好ましい。しかしながら、上述のように球状体を転動あるいは回転させつつ表面処理を実施する方法では、表面処理の進行中に球状体の温度を正確に把握することが難しいという問題がある。
そこで、本発明の一の目的は、球状体の温度を正確に把握しつつ、表面の全域に対して表面処理を実施することを可能とする球状体の表面処理用治具、球状体の表面処理方法および球状部品の製造方法を提供することである。
また、球状体の表面処理においては、処理コストを低減する観点から、なるべく多くの球状体が同時に表面処理されることが好ましい。しかしながら、上記特許文献1〜3に開示の球状体の表面処理方法を含めて、従来の球状体の表面処理方法では、複数個の球状体を同時に表面処理した場合、球状体同士の間隔が適切に保たれず、あるいは球状体同士が接触して、正常な表面処理が実施できないおそれがあるという問題があった。
そこで、本発明の他の目的は、複数の球状体に対して正常な表面処理を表面の全域に対して実施することを可能とする球状体の表面処理用治具、球状体の表面処理方法および球状部品の製造方法を提供することである。
本発明の一の局面における表面処理用治具は、球状体の表面処理用治具であって、複数の貫通孔を有する第1保持部材と、複数の貫通孔を有する第2保持部材と、第1保持部材と第2保持部材との間に球状体を挟んだ状態で、第1保持部材と第2保持部材との相対的な位置関係を固定する固定部材とを備えている。そして、第2保持部材の複数の貫通孔は、第2保持部材を第1保持部材に沿って配置することにより、第1保持部材の複数の貫通孔に対応して位置するように形成されている。第1保持部材の複数の貫通孔および第2保持部材の複数の貫通孔の各々は、第1保持部材と第2保持部材との間に球状体を挟んだ状態で第1保持部材と第2保持部材との位置関係を反転させても、球状体を1つずつ支持することができるように設けられている。
上記本発明の一の局面における表面処理治具を用いることで、以下のように表面処理を実施することが可能となる。まず第1保持部材の複数の貫通孔の各々において球状体を1つずつ支持して表面処理を実施する。次に、第1保持部材の複数の貫通孔に第2保持部材の複数の貫通孔が対応して位置するように第2保持部材を第1保持部材に沿って配置した状態で、当該複数の球状体を前記第1保持部材と前記第2保持部材とにより挟持する。そして、第1保持部材と第2保持部材との位置関係を反転させた後、第1保持部材を球状体から離脱させることによって、第2保持部材の複数の貫通孔の各々において球状体を1つずつ支持して表面処理を実施する。
このような手順で表面処理を実施することにより、各転動体においては、第1保持部材に接触する領域と第2保持部材に接触する領域が異なるため、表面の全域に対して表面処理が実施される。また、球状体は第1保持部材または第2保持部材の貫通孔において支持された状態で表面処理されるため、球状体の温度を正確に把握しつつ表面処理を実施することができる。その結果、本発明の一の局面における表面処理治具によれば、球状体の温度を正確に把握しつつ、表面の全域に対して表面処理を実施することを可能とする球状体の表面処理用治具を提供することができる。さらに、固定部材により、球状体を第1保持部材と第2保持部材とにより挟持した状態で第1保持部材と第2保持部材との位置関係を反転させる際、球状体をより確実に支持することが可能となる。
本発明の一の局面における表面処理治具は、球状体の表面処理用治具であって、複数の貫通孔を有する第1保持部材と、複数の貫通孔を有する第2保持部材とを備えている。第2保持部材の前記複数の貫通孔は、第2保持部材を第1保持部材に沿って配置することにより、第1保持部材の前記複数の貫通孔に対応して位置するように形成されている。さらに、上記複数の貫通孔は球状体の直径の2倍以上の間隔で配置されている。これにより、球状体の間隔を十分に保つことが可能となる。その結果、たとえばプラズマ窒化などの球状体と他の部材との間に電圧を印加する表面処理が実施された場合でも、球状体同士の間におけるホローカソード(中空陰極)の発生をより確実に抑制することができる。
上記一の局面における表面処理治具において好ましくは、上記貫通孔は等間隔に配置されている。これにより、表面処理用治具において多数の貫通孔を密に配置することが可能となり、表面処理の効率向上に寄与することができる。
本発明の一の局面における球状体の表面処理方法は、上記本発明の一の局面における球状体の表面処理用治具を用いて実施される球状体の表面処理方法である。この球状体の表面処理方法は、第1保持部材の複数の貫通孔の各々において球状体を1つずつ支持することにより、第1保持部材によって複数の球状体を保持する工程と、第1保持部材によって保持された複数の球状体に対して表面処理を実施する工程とを備えている。この球状体の表面処理方法は、さらに、表面処理が実施された複数の球状体を第1保持部材と第2保持部材とにより挟持した状態で、第1保持部材と第2保持部材との位置関係を反転させる工程と、第1保持部材を複数の球状体から離脱させることによって、第2保持部材の複数の貫通孔の各々において球状体を1つずつ支持することにより、第2保持部材によって複数の球状体を保持する工程と、第2保持部材によって保持された複数の球状体に対して表面処理を実施する工程とを備えている。
上記一の局面における球状体の表面処理方法においては、球状体は、第1保持部材の貫通孔において保持された状態で表面処理が実施されるとともに、第2保持部材の貫通孔において保持された状態でも表面処理が実施される。ここで、球状体については、第1保持部材により保持され熱処理されている状態および第2保持部材により保持されて熱処理されている状態のいずれの状態においても、表面処理用治具に対して運動させる必要がない。そのため、球状体の温度を正確に測定し、把握しつつ表面処理を実施することができる。また、第1保持部材により保持されている状態と第2保持部材により保持されている状態とで、球状体における表面処理用治具との接触領域を変化させることができるため、球状体の表面の全域に対して表面処理を実施することが可能となる。以上のように、上記一の局面における球状体の表面処理方法によれば、球状体の温度を正確に把握しつつ、表面の全域に対して表面処理を実施することを可能とする球状体の表面処理方法を提供することができる。
上記本発明の一の局面における球状体の表面処理方法においては、球状体は導電体からなっており、上記表面処理は、球状体と球状体に対向して配置される部材との間に電圧が印加されつつ実施されてもよい。
球状体と球状体に対向して配置される部材との間に電圧が印加されつつ実施される表面処理、たとえばプラズマ窒化処理、プラズマ浸炭処理、PVD(Physical Vapor Deposition;物理蒸着)、CVD(Chemical Vapor Deposition;化学蒸着)などにおいては、球状体の温度が把握されつつ処理が実施されることが望ましい。そのため、本発明の球状体の表面処理方法を好適に適用することができる。
上記本発明の一の局面における球状体の表面処理方法においては、上記表面処理はプラズマ窒化処理であってもよい。プラズマ窒化処理においては、球状体の温度調整が重要であるため、本発明の球状体の表面処理方法を特に好適に適用することができる。
本発明の一の局面における球状部品の製造方法は、球状の成形体を準備する工程と、成形体の表面処理を実施する工程とを備えている。そして、上記表面処理は、上記本発明の一の局面における球状体の表面処理方法を用いて実施される。
上記本発明の一の局面における球状部品の製造方法によれば、球状体の温度を正確に把握しつつ、表面の全域に対して表面処理を実施することを可能とする上記本発明の球状体の表面処理方法を用いて表面処理が実施されることにより、良好に表面処理が実施された球状部品を製造することができる。
上記本発明の一の局面における球状部品の製造方法においては、球状部品は、転がり軸受の転動体であってもよい。良好に表面処理が実施された球状部品を製造することが可能な本発明の球状部品の製造方法は、表面全域の品質が重要な転がり軸受の転動体の製造方法として好適である。
本発明の他の局面における球状体の表面処理用治具は、球状体を転動可能に保持する複数の凹部と、複数の凹部の各々を取り囲むように配置され、球状体の移動を制限する突出部とを備えている。
上記他の局面における球状体の表面処理用治具においては、凹部の各々に球状体を1つずつ載置して複数の球状体を支持することができる。これにより、表面の全域に対して表面処理を実施するために各球状体を凹部内で転動させて治具との接触部を変化させた場合でも、球状体同士の間隔を適切に保つことができる。その結果、本発明の他の局面における表面処理用治具を用いることにより、複数の球状体に対して正常な表面処理を表面の全域に対して実施することができる。
上記他の局面における球状体の表面処理用治具においては、上記凹部は、凹部の最も深さの大きい領域に向けて徐々に深さが大きくなる形状を有していてもよい。これにより、球状体が凹部内においてスムーズに転動可能であるとともに、より確実に球状体同士の間隔を適切に保つことが可能となる。なお、このような条件を満たす凹部の具体的形状としては、たとえばすり鉢状の形状や壁面が球面である形状などを選択することができる。
上記他の局面における球状体の表面処理用治具においては、上記凹部は、球状体を保持する平面部を有し、突出部は、平面部から突出し、平面部を取り囲むように形成されていてもよい。これにより、球状体が凹部内においてスムーズに転動可能であるとともに、突出部による球状体同士の間隔の確保をより確実なものとすることができる。
上記他の局面における球状体の表面処理用治具において好ましくは、上記複数の凹部は球状体の直径の2倍以上の間隔で配置されている。これにより、球状体の間隔を十分に保つことが可能となる。その結果、たとえばプラズマ窒化などの球状体と他の部材との間に電圧を印加する表面処理が実施された場合でも、球状体同士の間におけるホローカソードの発生をより確実に抑制することができる。
上記他の局面における球状体の表面処理用治具において好ましくは、上記凹部は等間隔に配置されている。これにより、表面処理用治具において多数の凹部を密に配置することが可能となり、表面処理の効率向上に寄与することができる。
本発明の他の局面における球状体の表面処理方法は、上記本発明の他の局面における球状体の表面処理用治具における凹部の各々に球状体を1つずつ載置することにより、当該治具によって複数の球状体を支持する工程と、治具によって支持された複数の球状体に対して表面処理を実施する工程とを備えている。
本発明の他の局面における球状体の表面処理方法においては、複数の球状体が上記凹部の各々に1つずつ載置されて支持される。そのため、表面の全域に対して表面処理を実施するために各球状体を凹部内で転動させて治具との接触部を変化させた場合でも、球状体同士の間隔を適切に保つことができる。その結果、本発明の他の局面における球状体の表面処理方法によれば、複数の球状体に対して正常な表面処理を表面の全域に対して実施することができる。
上記他の局面における球状体の表面処理方法において、上記複数の球状体に対して表面処理を実施する工程では、球状体を治具に対して相対的に運動させつつ表面処理が実施されてもよい。
これにより、球状体において治具に接触する領域が変化しつつ表面処理が実施されるため、効率よく球状体の表面全域に対して表面処理を実施することができる。
上記他の局面における球状体の表面処理方法において、複数の球状体に対して表面処理を実施する工程は、球状体の第1の領域を上記治具により支持しつつ、球状体の表面処理を実施する工程と、球状体の第1の領域とは異なる第2の領域を上記治具により支持しつつ、球状体の表面処理を実施する工程とを含んでいてもよい。
これにより、表面処理を実施する工程において、まず球状体の第1の領域を治具により支持しつつ、球状体の表面処理を実施する。このとき、球状体は第1の領域が治具により支持されて静止しているため、球状体の温度を正確に測定し、把握することができる。その後、球状体の第2の領域を治具により支持しつつ、球状体の表面処理を実施する。このとき、球状体は第2の領域が治具により支持されて静止しているため、球状体の温度を正確に測定し、把握することができる。また、第1の領域において支持されている場合と第2の領域において支持されている場合とで、球状体における治具との接触領域を変化させることができるため、球状体の表面の全域に対して表面処理を実施することが可能となる。その結果、球状体の温度を正確に把握しつつ、表面の全域に対して表面処理を実施することができる。
上記他の局面における球状体の表面処理方法において好ましくは、第1の領域を支持しつつ表面処理を実施する工程よりも後であって、第2の領域を支持しつつ表面処理を実施する工程よりも前に、球状体を、第1の領域において支持される位置から第2の領域において支持される位置にまで上記治具に対して相対的に移動させる工程をさらに備えている。
これにより、球状体において治具により支持される領域を容易に変化させることが可能となり、効率よく表面の全域に対して表面処理を実施することができる。
上記他の局面における球状体の表面処理方法において好ましくは、上記複数の球状体に対して表面処理を実施する工程では、球状体の温度が測定されつつ表面処理が実施される。
これにより、球状体の温度を適切に制御しつつ表面処理を実施することが可能となるため、所望の表面処理の速度や品質を安定して得ることができる。
上記他の局面における球状体の表面処理方法においては、球状体は導電体からなっているものとし、球状体に対して表面処理を実施する工程では、球状体と球状体に対向して配置される部材との間に電圧が印加されつつ球状体の表面処理が実施されてもよい。
球状体と球状体に対向して配置される部材との間に電圧が印加されつつ実施される表面処理、たとえばプラズマ窒化処理、プラズマ浸炭処理、PVD、CVDなどにおいては、複数個の球状体を同時に表面処理する際、球状体同士の間隔が適切に保たれない場合、あるいは球状体同士が接触する場合、正常な表面処理が実施できないおそれがある。そのため、球状体同士の間隔が適切に維持されつつ、上記処理が実施されることが望ましい。したがって、球状体と球状体に対向して配置される部材との間に電圧が印加されつつ実施される表面処理に対しては、上記本発明の他の局面における球状体の表面処理方法を好適に適用することができる。
上記他の局面における球状体の表面処理方法においては、表面処理はプラズマ窒化処理であってもよい。複数の球状体に対してプラズマ窒化処理を実施する場合、球状体同士の間隔を適切に維持することが重要であるため、上記本発明の他の局面における球状体の表面処理方法を特に好適に適用することができる。
本発明の他の局面における球状部品の製造方法は、球状の成形体を準備する工程と、成形体の表面処理を実施する工程とを備えている。そして、当該表面処理は、上記本発明の他の局面における球状体の表面処理方法を用いて実施される。
本発明の他の局面における球状部品の製造方法によれば、複数の球状体同士の間隔を適切に維持しつつ表面の全域に対して表面処理を実施することを可能とする上記本発明の他の局面における球状体の表面処理方法を用いて表面処理が実施されることにより、良好に表面処理が実施された球状部品を製造することができる。
上記他の局面における球状部品の製造方法においては、球状部品は、転がり軸受の転動体であってもよい。良好に表面処理が実施された球状部品を製造することが可能な本発明の他の局面における球状部品の製造方法は、表面全域の品質が重要である転がり軸受の転動体の製造方法として好適である。
本発明の別の局面における球状体の表面処理用治具は、複数の貫通孔を有する第1保持部材と、先端部に球状体を保持する保持領域を有する複数の突出部を含む第2保持部材とを備えている。そして、第1保持部材および第2保持部材は、上記複数の突出部の各々が上記複数の貫通孔の各々を貫通可能な構造となっている。
本発明の別の局面における球状体の表面処理用治具は、上記複数の突出部の各々が上記複数の貫通孔の各々を貫通するように第1保持部材と第2保持部材とを組み合わせた状態において、複数の突出部の保持領域の各々の上に球状体を1つずつ載置することにより、第2保持部材によって複数の球状体を保持することができる(第1の保持状態)。また、本発明の球状体の表面処理用治具は、突出部を貫通孔から離脱させた状態で、複数の貫通孔の各々において球状体を1つずつ支持することにより、第1保持部材によって複数の球状体を保持することができる(第2の保持状態)。したがって、本発明の別の局面における球状体の表面処理用治具を用いることにより、以下のような手順で表面処理を実施することができる。
まず、上記第1の保持状態および第2の保持状態のうち一方の保持状態において球状体を保持しつつ表面処理を実施する。このとき、球状体は第1保持部材の貫通孔の外周部および第2保持部材の保持領域のいずれか一方により保持されているため、球状体の温度を正確に測定し、把握することができる。次に、上記第1の保持状態および第2の保持状態のうち他方の保持状態において球状体を保持しつつ表面処理を実施する。このときも、球状体は第1保持部材の貫通孔の外周部および第2保持部材の保持領域の他方により保持されているため、球状体の温度を正確に測定し、把握することができる。また、第1の保持状態と第2の保持状態とで、球状体における表面処理用治具との接触領域を変化させることができるため、球状体の表面の全域に対して表面処理を実施することが可能となる。以上のように、本発明の別の局面における球状体の表面処理用治具によれば、球状体の温度を正確に把握しつつ、表面の全域に対して表面処理を実施することを可能とする球状体の表面処理用治具を提供することができる。
上記別の局面における球状体の表面処理用治具において好ましくは、第1保持部材は、第1保持部材を貫通するガイド孔をさらに有し、第2保持部材は、当該ガイド孔を貫通するガイド部をさらに含んでいる。
これにより、第1保持部材と第2保持部材との相対的な位置関係をガイドすることができるため、第1保持部材および第2保持部材の一方による球状体の保持から他方による球状体の保持への移行を容易に実現することができる。なお、当該移行をより容易にする観点から、第1保持部材は、第1保持部材を貫通する複数のガイド孔を有しており、第2保持部材は、当該複数のガイド孔に対応する複数のガイド部を含んでいることがより好ましい。
上記別の局面における球状体の表面処理用治具において好ましくは、突出部が貫通孔を貫通しない状態で第1保持部材を支持する支持部材をさらに備えている。これにより、第1保持部材によって球状体が保持される状態を容易に安定させることができる。
上記別の局面における球状体の表面処理用治具において好ましくは、上記複数の貫通孔は球状体の直径の2倍以上の間隔で配置されている。
これにより、球状体の間隔を十分に保つことが可能となる。その結果、たとえばプラズマ窒化などの球状体と他の部材との間に電圧を印加する表面処理が実施された場合でも、球状体同士の間におけるホローカソードの発生をより確実に抑制することができる。
上記別の局面における球状体の表面処理用治具において好ましくは、貫通孔は等間隔に配置されている。これにより、表面処理用治具において多数の貫通孔を密に配置することが可能となり、表面処理の効率向上に寄与することができる。
本発明の別の局面における球状体の表面処理方法は、上記別の局面における第2保持部材によって複数の球状体を保持する工程と、当該第2保持部材によって保持された複数の球状体に対して表面処理を実施する工程と、上記別の局面における第1保持部材によって複数の球状体を保持する工程と、当該第1保持部材によって保持された複数の球状体に対して表面処理を実施する工程とを備えている。上記第2保持部材によって複数の球状体を保持する工程では、上記球状体の表面処理用治具において、複数の貫通孔の各々を複数の突出部の各々が貫通した状態で、当該複数の突出部の保持領域の各々の上に球状体を1つずつ載置することにより、第2保持部材によって複数の球状体が保持される。また、上記第1保持部材によって複数の球状体を保持する工程では、貫通孔から突出部を離脱させた状態で、上記複数の貫通孔の各々において球状体を1つずつ支持することにより、第1保持部材によって複数の球状体が保持される。
本発明の別の局面における球状体の表面処理方法においては、球状体は、第1保持部材の貫通孔の外周部において保持された状態で表面処理が実施されるとともに、第2保持部材の保持領域によって保持された状態でも表面処理が実施される。ここで、球状体については、第1保持部材により保持されて熱処理されている状態および第2保持部材により保持されて熱処理されている状態のいずれの状態においても、表面処理用治具に対して運動させる必要がない。そのため、球状体の温度を正確に測定し、把握しつつ表面処理を実施することができる。また、第1保持部材により保持されている状態と第2保持部材により保持されている状態とで、球状体における表面処理用治具との接触領域を変化させることができるため、球状体の表面の全域に対して表面処理を実施することが可能となる。以上のように、本発明の別の局面における球状体の表面処理方法によれば、球状体の温度を正確に把握しつつ、表面の全域に対して表面処理を実施することを可能とする球状体の表面処理方法を提供することができる。
上記別の局面における球状体の表面処理方法において好ましくは、上記表面処理は、球状体の温度が測定されつつ実施される。
これにより、球状体の温度を適切に制御しつつ表面処理を実施することが可能となるため、表面処理の所望の速度や品質を安定して得ることができる。
上記別の局面における球状体の表面処理方法においては、球状体は導電体からなっているものとし、球状体に対して表面処理を実施する工程では、球状体と球状体に対向して配置される部材との間に電圧が印加されつつ球状体の表面処理が実施されてもよい。
球状体と球状体に対向して配置される部材との間に電圧が印加されつつ実施される表面処理、たとえばプラズマ窒化処理、プラズマ浸炭処理、PVD、CVDなどにおいては、球状体の温度が把握されつつ処理が実施されることが望ましい。そのため、本発明の別の局面における球状体の表面処理方法を好適に適用することができる。
上記別の局面における球状体の表面処理方法においては、表面処理はプラズマ窒化処理であってもよい。プラズマ窒化処理においては、球状体の温度調整が重要であるため、本発明の別の局面における球状体の表面処理方法を特に好適に適用することができる。
本発明の別の局面における球状部品の製造方法は、球状の成形体を準備する工程と、成形体の表面処理を実施する工程とを備えている。そして、当該表面処理は、上記本発明の別の局面における球状体の表面処理方法を用いて実施される。
本発明の別の局面における球状部品の製造方法によれば、球状体の温度を正確に把握しつつ、表面の全域に対して表面処理を実施することを可能とする上記本発明の別の局面における球状体の表面処理方法を用いて表面処理が実施されることにより、良好に表面処理が実施された球状部品を製造することができる。
上記別の局面における球状部品の製造方法においては、球状部品は、転がり軸受の転動体であってもよい。良好に表面処理が実施された球状部品を製造することが可能な本発明の別の局面における球状部品の製造方法は、表面全域の品質が重要な転がり軸受の転動体の製造方法として好適である。
以上の説明から明らかなように、上記本発明の一の局面および別の局面における球状体の表面処理用治具、球状体の表面処理方法および球状部品の製造方法によれば、球状体の温度を正確に把握しつつ、表面の全域に対して表面処理を実施することを可能とする球状体の表面処理用治具、球状体の表面処理方法および球状部品の製造方法を提供することができる。
また、本発明の他の局面における球状体の表面処理用治具、球状体の表面処理方法および球状部品の製造方法によれば、複数の球状体に対して正常な表面処理を表面の全域に対して実施することを可能とする球状体の表面処理用治具、球状体の表面処理方法および球状部品の製造方法を提供することができる。
実施の形態1における球状部品の製造方法の概略を示すフローチャートである。 実施の形態1における球状体の表面処理用治具の構成を示す概略断面図である。 実施の形態1における保持板の構成を示す概略平面図である。 実施の形態1における表面処理工程を説明するための概略断面図である。 実施の形態1における表面処理工程を説明するための概略断面図である。 実施の形態1における表面処理工程を説明するための概略断面図である。 実施の形態1における表面処理工程を説明するための概略断面図である。 実施の形態1における表面処理工程を説明するための概略断面図である。 保持板の第1の変形例を示す概略平面図である。 保持板の第2の変形例を示す概略平面図である。 実施の形態2における球状部品の製造方法の概略を示すフローチャートである。 実施の形態2における球状体の表面処理用治具の構成を示す概略平面図である。 図12の線分XIII−XIIIに沿う概略断面図である。 実施の形態3における球状部品の製造方法の概略を示すフローチャートである。 実施の形態4における球状体の表面処理用治具の構成を示す概略平面図である。 図15の線分XVI−XVIに沿う概略断面図である。 実施の形態5における球状部品の製造方法の概略を示すフローチャートである。 実施の形態5における球状体の表面処理用治具の構成を示す概略平面図である。 実施の形態5における表面処理工程を説明するための概略断面図である。 実施の形態5における表面処理工程を説明するための概略断面図である。 実施の形態5における表面処理工程を説明するための概略断面図である。 実施の形態6における表面処理工程を説明するための概略断面図である。 実施例1の実験結果を示す図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
まず、上記本発明の一の局面に対応する実施の形態である実施の形態1について説明する。図1を参照して、実施の形態1における球状部品の製造方法においては、まず、工程(S10)として球状体準備工程が実施される。具体的には、工程(S10)においては、たとえば転がり軸受の転動体(玉軸受の玉)の形状(球状)に成形加工され、焼入焼戻処理が実施された成形体が準備される。成形体の素材としては、たとえば鋼であるAMS規格5630(AISI規格440C、JIS規格SUS440C)、AMS規格6490(AISI規格M50)、AMS規格5626(AISI規格T1、JIS規格SKH2)などを採用することができる。
次に、工程(S20)〜(S50)として、工程(S10)において準備された球状の成形体の表面処理を実施する表面処理工程が実施される。本実施の形態においては、表面処理として、プラズマ窒化が実施される。具体的には、まず、工程(S20)として第1支持工程が実施される。この工程(S20)においては、プラズマ窒化を実施するための処理室の内部に配置された実施の形態1における球状体の表面処理用治具により、当該成形体が支持される。ここで、実施の形態1における球状体の表面処理用治具について説明する。
図2および図3を参照して、実施の形態1における球状体の表面処理用治具としての治具1は、円盤状の形状を有し、円形の断面を有する複数の貫通孔11が形成された第1保持部材としての第1保持板10と、第1保持板10と同様に円盤状の形状を有し、円形の断面を有する複数の貫通孔21が形成された第2保持部材としての第2保持板20と、第1保持板10と第2保持板20とを挟持することにより、第1保持板10と第2保持板20との相対的な位置関係を固定する固定部材としてのクランプ30と、治具1を支持する支持部材40とを備えている。クランプ30は、第1保持板10および第2保持板20に対して、たとえばねじやユニバーサルジョイントなどによって固定可能となっていてもよい。なお、図3には、2枚の保持板のうち第1保持板10を代表して示すが、第2保持板20は第1保持板と同じ構造を有している。
次に、上記治具1を用いた工程(S20)の具体的手順について説明する。図4を参照して、工程(S20)においては、まず、表面処理を実施するための処理室の底壁90上に第1保持板10を支持部材40により支持して配置する。次に、第1保持板10の貫通孔11の各々において、工程(S10)において準備された球状体としての成形体91を1つずつ支持することにより、第1保持板10によって複数の成形体91を保持する。
次に、工程(S30)として第1プラズマ窒化工程が実施される。この工程(S30)では、たとえばAMS6490からなる球状の成形体91がプラズマ窒化される。具体的には、工程(S20)において治具1の第1保持板10に支持された成形体91が、たとえば圧力50Pa以上1000Pa以下の窒素と水素との混合ガス雰囲気中において、放電電圧50V以上600V以下、放電電流0.001A以上300A以下の条件下で350℃以上500℃以下の温度域に1時間以上50時間以下保持された後、冷却されることによりプラズマ窒化される。また、工程(S30)においては、成形体91の温度が測定されるとともに、当該温度が上記範囲となるように調整され、かつ上記範囲の放電電圧および放電電流が達成されるように、成形体91と成形体91に対向して配置される部材である電極との間に電圧が印加されつつ成形体91のプラズマ窒化処理が実施される。
次に、工程(S40)として第2支持工程が実施される。この工程(S40)では、図5を参照して、まず第1保持板10の貫通孔11と第2保持板20の貫通孔21とが互いに対応して位置するように、第2保持部材としての第2保持板20を第1保持板10に沿って配置する。その後、第2保持板20を第1保持板10に近づけることにより、工程(S30)においてプラズマ窒化処理が実施された複数の成形体91が第1保持板10と第2保持板20とにより挟持される。さらに、クランプ30が第1保持板10および第2保持板20の端部に嵌め込まれることにより、第1保持板10と第2保持板20との間隔を小さくする向きの力が加えられつつ第1保持板10と第2保持板20との相対的な位置関係が固定される。そして、矢印αに示すように第1保持板10と第2保持板20との間に成形体91を挟んだ状態で、第1保持板10と第2保持板20との位置関係を反転させ、図6に示すように支持部材40上に載置する。
その後、図7に示すようにクランプ30を取り外して第1保持板10と第2保持板20との位置関係の固定を解除した上で、図8に示すように第1保持板10を成形体91から離脱させる。これにより、第2保持板20の貫通孔21の各々において成形体91が1つずつ支持される。このとき、成形体91は、上記第1保持板10によって保持される場合とは異なった領域が第2保持板20と接触した状態で第2保持板20により保持される。
次に、工程(S50)として、第2プラズマ窒化工程が実施される。この工程(S50)では、図8に示すように成形体91が第2保持板20により支持される点を除き、工程(S30)と同様に成形体91のプラズマ窒化処理が実施される。以上の工程により、実施の形態1における表面処理工程が終了する。そして、実施の形態1における球状部品としての転がり軸受の転動体の製造方法は、その後必要に応じて表面の研磨などが実施される仕上げ工程が実施されることにより完了する。
本実施の形態における球状体の表面処理用治具としての治具1を用いた球状体の表面処理方法、および球状部品としての転がり軸受の転動体の製造方法においては、成形体91は、第1保持板10の貫通孔11において保持された状態でプラズマ窒化処理されるとともに、第2保持板20の貫通孔21において保持された状態でも表面処理が実施される。ここで、成形体91については、第1保持板10により保持されて熱処理されている状態および第2保持板20により保持されて熱処理されている状態のいずれの状態においても、治具1に対して運動させる必要がない。そのため、成形体91の温度を正確に測定し、把握しつつプラズマ窒化処理を実施することができる。また、第1保持板10により保持されている状態と第2保持板20により保持されている状態とで、成形体91における治具1との接触領域を変化させることができるため、成形体91の表面の全域に対して表面処理を実施することができる。その結果、本実施の形態におけるプラズマ窒化方法によれば、成形体91の温度を正確に把握しつつ、表面の全域に対して窒化処理を実施することができる。
したがって、本実施の形態における球状体の表面処理用治具としての治具1を用いた球状体の表面処理方法、および球状部品としての転がり軸受の転動体の製造方法によれば、球状体である成形体91の温度を正確に把握しつつ表面の全域に対してプラズマ窒化が実施され、良好に表面処理が実施された転がり軸受の転動体を製造することができる。
なお、上記実施の形態においては、球状体(成形体91)に対して表面処理(プラズマ窒化処理)が2回実施される場合について説明したが、たとえば工程(S50)の後に第1保持板10およびクランプ30を用いて再度工程(S20)および(S30)と同様のプロセスを繰り返すことにより、必要に応じて3回以上実施してもよい。
また、本実施の形態における第1保持板10の貫通孔11および第2保持板20の貫通孔21は、成形体91の直径の2倍以上の間隔で配置されていることが好ましい。これにより、成形体91の間隔を十分に保つことが可能となり、ホローカソードの発生をより確実に抑制することができる。ホローカソードの発生をさらに確実に抑制するためには、貫通孔11,21は、成形体91の直径の5倍以上の間隔で配置されていることが望ましい。
さらに、貫通孔11,21は等間隔に配置されていることが好ましい。これにより、第1保持板10および第2保持板20において多数の貫通孔11,21を密に配置することが可能となり、同時に熱処理可能な成形体91の数量を多くすることができる。その結果、表面処理の効率を向上させることができる。
また、上記実施の形態1においては、第1保持板10および第2保持板20として貫通孔11,21の断面形状が円形であり、平面形状が円形の保持板が採用される場合について説明したが、本発明の一の局面における第1保持部材および第2保持部材の構造はこれに限られない。具体的には。たとえば、図9に示すように貫通孔11,21の断面形状は円形であってもよいし、図10に示すように多角形形状(三角形形状)であってもよい。また、第1保持板10および第2保持板20の平面形状は図9に示すように四角形形状であってもよいし、中央に穴を有する円盤状(ドーナツ状)となっていてもよく、取り扱いを容易にする目的で当該ドーナツ状の形状が半径方向に切断されて複数個に分割されることにより、図10に示すように扇形のうち中心付近が欠落した形状としてもよい。つまり、第1保持板10および第2保持板20の平面形状は、表面処理を実施するための処理室の形状や取り扱いの容易性等を考慮して種々の形状を採用することができる。そして、貫通孔11,21の断面形状は、球状体を保持可能な形状であれば、任意の形状を採用することができる。また、本発明の第1保持部材および第2保持部材としては、上記板状の部材に代えて、格子状の網状部材を採用することもできる。この場合、格子の間隔は球状体の直径よりも小さくする必要がある。
(実施の形態2)
次に、上記本発明の他の局面に対応する実施の形態である実施の形態2について説明する。図11を参照して、実施の形態2における球状部品の製造方法においては、まず、工程(S110)として球状体準備工程が実施される。この工程(S110)は、上記実施の形態1の工程(S10)と同様に実施することができる。
次に、工程(S120)〜(S130)として、工程(S110)において準備された球状の成形体の表面処理を実施する表面処理工程が実施される。本実施の形態においては、表面処理として、プラズマ窒化が実施される。具体的には、まず、工程(S120)として支持工程が実施される。この工程(S120)においては、プラズマ窒化を実施するための処理室の内部に載置された実施の形態2における球状体の表面処理用治具により、当該成形体が支持される。ここで、実施の形態2における球状体の表面処理用治具について説明する。
図12および図13を参照して、実施の形態2における球状体の表面処理用治具としての治具101は、平板状のベース板110からなっており、当該ベース板110には、壁面が球面形状を有する複数の凹部112と、当該複数の凹部112の各々を取り囲むように配置された突出部111とが形成されている。この凹部112は、成形体91を保持する機能を有している。また、凹部112の壁面の曲率半径は、球状体としての球状の成形体91の半径よりも十分大きくなっており、成形体91は凹部112の内部において転動可能となっている。一方、突出部111は、凹部112の最も深さの大きい領域から十分な高さを有しており、成形体91が凹部112内で転動した場合でも、凹部112の外部に飛び出さないように成形体91の移動を制限する機能を有している。なお、ベース板110の形状としては種々の形状を採用することができるが、たとえば中央に穴を有する円盤状(ドーナツ状)となっていてもよいし、取り扱いを容易にする目的で当該ドーナツ状の形状が半径方向に切断されて三等分されることにより、図12に示すように扇形のうち中心付近が欠落した形状としてもよい。
次に、上記治具101を用いた工程(S120)の具体的手順について説明する。図12および図13を参照して、まず工程(S110)において準備された球状の成形体91が、治具101の凹部112の各々に1つずつ載置される。そして、成形体91が載置された治具101が、プラズマ窒化が実施されるプラズマ窒化炉の処理室内に装入される。これにより、複数の成形体91が治具101によって処理室内において支持される。
次に、図11を参照して、工程(S130)としてプラズマ窒化工程が実施される。この工程(S130)では、たとえばAMS6490からなる球状の成形体91がプラズマ窒化される。具体的には、工程(S120)において治具101に支持された成形体91が、圧力50Pa以上1000Pa以下の窒素と水素との混合ガス雰囲気中において、放電電圧50V以上600V以下、放電電流0.001A以上300A以下の条件下で350℃以上500℃以下の温度域に1時間以上50時間以下保持された後、冷却されることによりプラズマ窒化される。以上の工程により、実施の形態2における表面処理工程が終了する。そして、実施の形態2における球状部品としての転がり軸受の転動体の製造方法は、その後必要に応じて表面の研磨などが実施される仕上げ工程が実施されることにより完了する。
ここで、本実施の形態における球状体の表面処理用治具としての治具101を用いた球状体(成形体91)の表面処理方法、および球状部品としての転がり軸受の転動体の製造方法によれば、工程(S130)において、治具101に対して揺動、振動および間欠的な回転のうち少なくとも1つの運動が付与される。これにより、成形体91が治具101に対して相対的に運動(転動)しつつプラズマ窒化処理が実施される。その結果、成形体91において治具101に接触する領域が変化しつつプラズマ窒化処理が実施されるため、効率よく成形体91の表面全域に対してプラズマ窒化処理を実施することができる。また、成形体91が治具101の凹部112により1つずつ保持されていることにより、上述のように各成形体91を凹部112内で転動させた場合でも、成形体91同士の間隔を適切に保つことができる。そのため、成形体91同士の間でホローカソードが発生して成形体の温度が上昇し、窒化深さが部分的に深くなる現象等を抑制することができる。その結果、良好なプラズマ窒化処理が実施された球状体(成形体)が得られ、高い品質を有する転がり軸受の転動体(玉)を製造することができる。
ここで、本実施の形態における治具101の凹部112は、成形体91の直径の2倍以上の間隔で配置されていることが望ましい。これにより、成形体91の間隔を十分に保つことが可能となり、ホローカソードの発生をより確実に抑制することができる。ホローカソードの発生をさらに確実に抑制するためには、凹部112は、成形体91の直径の5倍以上の間隔で配置されていることが望ましい。
また、本実施の形態における治具101の凹部112は、等間隔に配置されていることが好ましい。これにより、治具101において多数の凹部112を密に配置することが可能となり、表面処理の効率向上に寄与することができる。
さらに、本実施の形態における工程(S130)では、成形体91の温度が測定されつつプラズマ窒化処理が実施されることが好ましい。これにより、所望のプラズマ窒化処理の速度や品質を安定して得ることができる。ここで、本実施の形態においては、工程(S130)における成形体91の移動範囲が治具101の凹部112内に限定されるため、成形体91の温度の測定が容易となっている。
(実施の形態3)
次に、上記本発明の他の局面に対応する他の実施の形態である実施の形態3について説明する。図14および図11を参照して、実施の形態3における球状体の表面処理用治具を用いた球状体の表面処理方法、および球状部品としての転がり軸受の転動体の製造方法は、基本的には実施の形態2の場合と同様に実施され、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2における工程(S130)として実施されるプラズマ窒化工程に代えて、実施の形態3では第1プラズマ窒化工程である(S131)および第2プラズマ窒化工程である工程(S132)が実施されるとともに、工程(S131)と(S132)との間に球状体移動工程である工程(S140)が実施される点において、実施の形態2の場合とは異なっている。
すなわち、実施の形態3における球状部品の製造方法においては、まず、工程(S110)および(S120)が実施の形態2と同様に実施される。次に、工程(S131)として第1プラズマ窒化工程が実施される。この工程(S131)では、実施の形態2の工程(S130)と基本的には同様にプラズマ窒化処理が実施される。しかし、工程(S131)では、実施の形態2の工程(S130)とは異なり、治具101に対して揺動、振動、間欠的な回転などの運動が付与されず、治具101に対して成形体91が静止した状態でプラズマ窒化処理が実施される。
次に、工程(S140)として球状体移動工程が実施される。この工程(S140)では、治具101に対して成形体91を転動させることにより、成形体91を、第1の領域において支持される位置から第2の領域において指示される位置にまで治具101に対して移動させる。具体的には、図12および図13を参照して、工程(S140)ではプラズマ窒化炉の処理室内に配置された治具101の裏面113が水平面となす角度が工程(S131)の場合とは異なるものとなるように、治具101が傾けられる。これにより、成形体91が凹部112内において転動し、治具101と接触する領域が変化する。
本実施の形態における成形体91の表面処理工程においては、上述のように、まず工程(S131)において成形体91の第1の領域を治具101により支持しつつ、成形体91の表面処理(プラズマ窒化処理)が実施される。このとき、成形体91は第1の領域が治具101により支持されて静止しているため、成形体91の温度を正確に測定し、把握することができる。その後、工程(S132)において、成形体91の第2の領域が治具101により支持されつつ、成形体91のプラズマ窒化処理が実施される。このとき、成形体91は第2の領域が治具101により支持されて静止しているため、成形体91の温度を正確に測定し、把握することができる。また、第1の領域において支持されている場合と第2の領域において支持されている場合とで、成形体91における治具101との接触領域を変化させることができるため、成形体91の表面の全域に対してプラズマ窒化処理を実施することができる。その結果、本実施の形態のプロセスによれば、成形体91の温度を正確に把握しつつ、表面の全域に対してプラズマ窒化処理を実施することができる。
(実施の形態4)
次に、上記本発明の他の局面に対応する他の実施の形態である実施の形態4について説明する。実施の形態4における球状体の表面処理用治具を用いた球状体の表面処理方法、および球状部品としての転がり軸受の転動体の製造方法は、基本的には実施の形態2の場合と同様に実施され、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態4における治具102は、その凹部および突出部の形状において実施の形態2の場合とは異なっている。
すなわち、図15および図16を参照して、実施の形態4における球状体の表面処理用治具としての治具102は平板状のベース板121からなっており、当該ベース板121には、直方体形状を有する複数の凹部123と、当該複数の凹部123の底面123Aから突出し、底面123Aの各々を取り囲むように配置された突出部122とが形成されている。底面123Aは、たとえば図15および図16に示すように四角形(正方形)形状を有しており、マトリックス状に並べて配置されている。そして、突出部122は当該底面123Aの各々を取り囲む壁として配置されている。この凹部123は、球状体である成形体91を保持する機能を有している。また、正方形形状を有する底面123Aの一辺の長さは成形体91の直径よりも十分大きくなっており、成形体91は凹部123の内部において転動可能となっている。一方、突出部122は、底面123Aから十分な高さをもって突出しており、成形体91が凹部123内で転動した場合でも、凹部123の外部に飛び出さないように成形体91の移動を制限する機能を有している。なお、ベース板121の平面形状は、実施の形態2の場合と同様に種々の形状を選択することができる。
そして、本実施の形態における球状体の表面処理方法、および球状部品としての転がり軸受の転動体の製造方法は、上記本実施の形態における治具102を用いて上述の実施の形態2または実施の形態3と同様に実施することができる。
(実施の形態5)
次に、図17〜図21を参照して、上記本発明の別の局面に対応する実施の形態である実施の形態5について説明する。なお、図19〜図21は、図18の線分A−Aに沿う断面を示している。
図17を参照して、実施の形態5における球状部品の製造方法においては、まず、工程(S210)として球状体準備工程が実施される。この工程(S210)は、上記実施の形態1の工程(S10)と同様に実施することができる。
次に、工程(S220)〜(S250)として、工程(S210)において準備された球状の成形体の表面処理を実施する表面処理工程が実施される。本実施の形態においては、表面処理として、プラズマ窒化が実施される。具体的には、まず、工程(S220)として第1支持工程が実施される。この工程(S220)においては、プラズマ窒化を実施するための処理室の内部に載置された実施の形態5における球状体の表面処理用治具により、当該成形体が支持される。ここで、実施の形態5における球状体の表面処理用治具について説明する。
図18および図19を参照して、実施の形態5における球状体の表面処理用治具としての治具201は、第1保持部材210と、第2保持部材220とを備えている。第1保持部材210は、平板状のベース板211からなっており、ベース板211にはベース板211を貫通する複数の貫通孔212と、ベース板211を貫通するガイド孔213とが形成されている。貫通孔212は、ベース板211において等間隔に配置されている。また、ガイド孔213は、ベース板211の複数箇所(本実施の形態では2箇所)に形成されている。なお、貫通孔212の平面形状としては多角形形状、円形形状、楕円形形状など様々な形状を採用することができるが、球状体を安定して保持することを可能とする観点から、保持すべき球状体の直径よりも僅かに小さい直径を有する円形、または内接円の直径が保持すべき球状体の直径よりも僅かに小さい正多角形形状とすることが好ましい。
一方、第2保持部材220は、先端部に球状体を保持するための球面状の保持領域221Aが形成された棒状の形状を有する複数の突出部221と、突出部221よりも長い棒状の形状を有するガイド部材としてのガイド棒222とを備えている。複数の突出部221は、ベース板211の貫通孔212の間隔に対応する等間隔に配置されており、互いに平行に突出している。また、ガイド棒222は、ベース板211のガイド孔213に対応する複数箇所(本実施の形態では2箇所)に形成されており、突出部221と平行に配置されている。なお、ベース板211の形状としては種々の形状を採用することができるが、たとえば中央に穴を有する円盤状(ドーナツ状)となっていてもよいし、取り扱いを容易にする目的で当該ドーナツ状の形状が半径方向に切断されて三等分されることにより、図18に示すように扇形のうち中心付近が欠落した形状としてもよい。
次に、上記治具201を用いた工程(S220)の具体的手順について説明する。工程(S220)においては、第1保持部材210および第2保持部材220は、図18および図19に示すように、複数の突出部221の各々が複数の貫通孔212の各々を貫通するように組み合わせて配置される。そして、貫通孔212を貫通している突出部221の保持領域221Aの各々の上には、工程(S210)において準備された球状体としての成形体91が1つずつ載置される。これにより、複数の成形体91は第2保持部材220によって保持される。そして、成形体91が載置された治具201が、プラズマ窒化が実施されるプラズマ窒化炉の処理室内に装入され、処理室内において治具201を支持する支持領域231上に配置される。これにより、複数の成形体91が治具201によって処理室内において支持される。
次に、図17を参照して、工程(S230)として第1プラズマ窒化工程が実施される。この工程(S230)では、たとえばAMS6490からなる球状の成形体91がプラズマ窒化される。具体的には、工程(S220)において治具201に支持された成形体91が、圧力50Pa以上1000Pa以下の窒素と水素との混合ガス雰囲気中において、放電電圧50V以上600V以下、放電電流0.001A以上300A以下の条件下で350℃以上500℃以下の温度域に1時間以上50時間以下保持された後、冷却されることによりプラズマ窒化される。また、工程(S230)においては、成形体91の温度が測定されるとともに、当該温度が上記範囲となるように調整され、かつ上記範囲の放電電圧および放電電流が達成されるように、成形体91と成形体91に対向して配置される部材である電極との間に電圧が印加されつつ成形体91のプラズマ窒化処理が実施される。
次に、工程(S240)として第2支持工程が実施される。この工程(S240)では、治具201の第1保持部材210が、治具201を支持する支持領域231から離れる側(第2保持部材220から離れる側)に向けて移動される。これにより、図20に示すように、第1保持部材210の貫通孔212から第2保持部材220の突出部221が離脱する。その結果、複数の貫通孔212の各々において成形体91が1つずつ支持されることにより、第1保持部材210によって複数の成形体91が保持される。このとき、第2保持部材220に対する第1保持部材210の移動は、突出部221に平行なガイド棒222とベース板211に形成されたガイド孔213とによってガイドされる。そのため、成形体91を保持する部材が突出部221からベース板211に移行する際に、成形体91が転動することが抑制される。その結果、成形体91において突出部221に接触する領域とベース板211に接触する領域との重複を確実に回避することができる。
さらに、図21に示すように、成形体91が第1保持部材210により保持され、突出部221が貫通孔212を貫通しない状態で、第1保持部材210が支持部材223により支持されるとともに第2保持部材220の突出部221が除去される。支持部材223は、様々な形状のものを採用することができるが、たとえばガイド棒222が円柱状の形状を有する場合、図21に示すように、ガイド棒222の直径に対応する貫通孔が形成された中空円筒状の支柱が底面の直径を含む断面で分断された2つの部材からなるものとすることができる。そして、この2つの部材の内周面がガイド棒222の外周面に接触するように当該2つの部材からなる支持部材223がガイド棒222に嵌め込まれることにより、支持部材223による第1保持部材210の支持を達成することができる。なお、工程(S240)において突出部221が除去されるのは、突出部221と成形体91との間でのホローカソードの発生を回避するためである。
次に、工程(S250)として、第2プラズマ窒化工程が実施される。この工程(S250)では、図21に示すように成形体91が第1保持部材210により支持される点を除き、工程(S230)と同様に成形体91のプラズマ窒化処理が実施される。以上の工程により、実施の形態5における表面処理工程が終了する。そして、実施の形態5における球状部品としての転がり軸受の転動体の製造方法は、その後必要に応じて表面の研磨などが実施される仕上げ工程が実施されることにより完了する。
本実施の形態における球状体の表面処理用治具としての治具201を用いた球状体の表面処理方法、および球状部品としての転がり軸受の転動体の製造方法においては、工程(S230)において、突出部221の保持領域221Aで成形体91が保持されつつプラズマ窒化が実施されるため、成形体91の温度を正確に測定し、把握することができる。その後、工程(S240)において、成形体91が突出部221の保持領域221Aで支持される状態からベース板211の貫通孔212で支持される状態に成形体91の支持状態が変更される。そして、工程(S250)において、ベース板211の貫通孔212で成形体91が保持されつつ、プラズマ窒化が実施される。このときも、成形体91は貫通孔212において保持されているため、成形体91の温度を正確に測定し、把握することができる。また、工程(S230)と工程(S250)とで、成形体91における治具201との接触領域を変化させることができるため、成形体91の表面の全域に対してプラズマ窒化を実施することができる。
その結果、本実施の形態における球状体の表面処理用治具としての治具201を用いた球状体の表面処理方法、および球状部品としての転がり軸受の転動体の製造方法によれば、球状体である成形体91の温度を正確に把握しつつ表面の全域に対してプラズマ窒化が実施され、良好に表面処理が実施された転がり軸受の転動体を製造することができる。
なお、本実施の形態においては、まず第2保持部材220により成形体91を保持してプラズマ窒化処理を実施した後、第1保持部材210によって成形体91を保持してさらにプラズマ窒化処理を実施する態様について説明したが、まず第1保持部材210により成形体91を保持してプラズマ窒化処理を実施した後、第2保持部材220によって成形体91を保持してさらにプラズマ窒化処理を実施する態様を採用してもよい。
また、本実施の形態におけるベース板211の貫通孔212は、成形体91の直径の2倍以上の間隔で配置されていることが望ましい。これにより、成形体91の間隔を十分に保つことが可能となり、ホローカソードの発生をより確実に抑制することができる。ホローカソードの発生をさらに確実に抑制するためには、貫通孔212は、成形体91の直径の5倍以上の間隔で配置されていることが望ましい。
(実施の形態6)
次に、本発明の別の局面に対応する他の実施の形態である実施の形態6について説明する。なお、図22は、実施の形態5における図21に対応する。
実施の形態6における球状体の表面処理用治具を用いた球状体の表面処理方法、および球状部品としての転がり軸受の転動体の製造方法は、基本的には実施の形態5の場合と同様に実施され、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態6における治具201は、ガイド棒222および支持部材223の長さが実施の形態5の場合よりも長く、これに伴って工程(S240)の手順が実施の形態5の場合とは一部異なっている。
図17を参照して、実施の形態6における転がり軸受の転動体の製造方法においては、まず工程(S210)〜(S230)が実施の形態5の場合と同様に実施される。そして、工程(S240)についても基本的には実施の形態5の場合と同様に実施されるが、上述のように、ガイド棒222および支持部材223の長さが実施の形態5の場合よりも長い。これにより、支持部材223によって第1保持部材210が支持された時点で、突出部221と成形体91との間にホローカソードの発生を回避するために十分な距離が確保される。そのため、実施の形態6における工程(S240)では、突出部221が除去されることなく工程(S240)が完了する。その後、工程(S250)および必要に応じて成形体91の表面の研磨などが実施される仕上げ工程が実施されることにより、実施の形態6における転がり軸受の転動体の製造方法は完了する。
以上のように、実施の形態6における転がり軸受の転動体の製造方法によれば、実施の形態5の場合に比べて製造プロセスを簡略化することができる。
なお、良好なプラズマ窒化処理が球状体(成形体91)に対して実施されているか否かについては、球状体の表層における窒化深さの均一性によって評価することができる。具体的には、球状体の表層における窒化深さの最も大きい値と最も小さい値との差を最も大きい値で除した上で100を乗じた値(以下、窒化深さの差(%))が、たとえば50%以下となる程度に窒化深さの均一性が確保されていることが好ましい。
ここで、窒化深さは、たとえば断面における硬度分布の測定、窒素濃度分布の測定、断面における腐食組織(ミクロ組織)の観察などの方法により測定することができる。
断面における硬度分布の測定では、たとえばプラズマ窒化処理が完了した球状体を表面に垂直な断面(平面)で切断し、当該断面において表面から中心に向かう方向に硬度分布を測定する。そして、所定値以上の硬度を有する領域の厚み、あるいは母材(窒化されていない領域)に対して所定値以上硬度の高い領域の厚みを窒化深さと考えることができる。
また、窒素濃度分布の測定では、たとえば上記硬度分布の測定と同様の球状体の断面における窒素濃度分布をEPMA(Electron Probe Micro Analyser)により調査し、所定の濃度(たとえば0.1質量%)以上となっている厚みを窒化深さと考えることができる。この窒素濃度分布は、プラズマ窒化処理が完了した球状体を表面に垂直な方向にスパッタリングしつつ、GDS(GD−OES)分析(Glow Discharge Optical Emission Spectroscopy;グロー放電分光分析)により、測定することもできる。
さらに、断面における腐食組織(ミクロ組織)の観察では、たとえば上記硬度分布の測定と同様の球状体の断面を硝酸濃度3〜10質量%程度のナイタル(硝酸アルコール溶液)にて腐食する。このとき、窒化層は母材に比べて濃く腐食される(腐食され易い)ため、腐食された断面を光学顕微鏡やSEM(Scanning Electron Microscope;走査型電子顕微鏡)により観察して、窒化深さを測定することができる。
また、本発明の球状体の表面処理用治具を構成する素材としては、適用すべき表面処理の温度等に耐え得る種々の素材を採用することができるが、成形が容易で十分な強度を有する鋼を素材として採用することが好ましく、特に、鋼に含まれる合金元素がスパッタリング等により球状体に付着することを抑制するため、合金元素の含有量の小さい低合金鋼(たとえば、軟鋼(JIS G3131)、炭素鋼(JIS G4051)など)を素材として採用することが好ましい。
以下、本発明の実施例1について説明する。プラズマ窒化処理における球状体同士の好ましい間隔を調査する実験を実施した。実験の手順は以下の通りである。
まず、長さ60mm、高さ100mm、厚み10mmのS45C(JIS規格機械構造用炭素鋼)製の板を準備し、プラズマ窒化炉の処理室内に装入して、プラズマ窒化を実施した。プラズマ窒化は、圧力200〜300Paの窒素および水素ガスの混合雰囲気中において450℃に加熱し、2時間保持する条件下で実施した。このとき、当該板を1枚のみ装入した場合と、3枚装入した場合との2通りのプラズマ窒化を実施した。いずれの場合も、温度制御用に板を別途1枚装入し、温度制御用の板の温度が450℃となるようにプラズマ窒化炉の出力を調節した。また、3枚装入した場合については、当該板同士の間隔を5mm〜50mmの範囲で5段階変化させた。そして、それぞれの場合について、板の温度を測定した。
次に、図23を参照して実験の結果を説明する。図23において、横軸は板を3枚装入した場合の板の間隔を示しており、縦軸は板の温度を示している。また、丸印は、板を3枚装入した場合における板の温度の測定値を示している。さらに、破線は、板を1枚のみ装入した場合における板の温度の測定値を示している。
図23を参照して、板同士の間隔が5mmとなるように板を3枚装入した場合、板の温度は1050℃以上にまで上昇している。これは、板同士の間隔が小さかったため、ホローカソード状態が形成されたことによるものと考えられる。そして、板同士の間隔が広くなるにつれて板の温度は低下し、間隔が30mmである場合、板を1枚のみ装入した場合に近い温度となった。さらに、間隔が50mmである場合、板の温度は板を1枚のみ装入した場合とほぼ同じ温度となった。このことから、上述のように200〜300Paあるいはそれ以上の圧力下でプラズマ窒化処理を実施する場合、被処理物である球状体の間隔を30mm以上とすることにより、温度の調整が容易となり、50mm以上とすることにより、温度の調整がより容易となると考えられる。したがって、本発明の球状体の表面処理用治具における複数の凹部や貫通孔同士の間隔は、30mm以上とすることが好ましく、50mm以上とすることがより好ましいと考えられる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の球状体の表面処理用治具、球状体の表面処理方法および球状部品の製造方法は、表面の全域に対して表面処理を実施することが求められる球状体の表面処理用治具、球状体の表面処理方法および球状部品の製造方法に、特に有利に適用され得る。
1 治具、10 第1保持板、11,21 貫通孔、20 第2保持板、30 クランプ、40 支持部材、90 底壁、91 成形体、101,102 治具、110 ベース板、111 突出部、112 凹部、113 裏面、121 ベース板、122 突出部、123 凹部、123A 底面、201 治具、210 第1保持部材、211 ベース板、212 貫通孔、213 ガイド孔、220 第2保持部材、221 突出部、221A 保持領域、222 ガイド棒、223 支持部材、231 支持領域。

Claims (8)

  1. 球状体の表面処理用治具であって、
    複数の貫通孔を有する第1保持部材と、
    複数の貫通孔を有する第2保持部材と、
    前記第1保持部材と前記第2保持部材との間に前記球状体を挟んだ状態で、前記第1保持部材と前記第2保持部材との相対的な位置関係を固定する固定部材とを備え、
    前記第2保持部材の前記複数の貫通孔は、前記第2保持部材を前記第1保持部材に沿って配置することにより、前記第1保持部材の前記複数の貫通孔に対応して位置するように形成されており、
    前記第1保持部材の前記複数の貫通孔および前記第2保持部材の前記複数の貫通孔の各々は、前記第1保持部材と前記第2保持部材との間に前記球状体を挟んだ状態で前記第1保持部材と前記第2保持部材との位置関係を反転させても、前記球状体を1つずつ支持することができるように設けられている、球状体の表面処理用治具。
  2. 球状体の表面処理用治具であって、
    複数の貫通孔を有する第1保持部材と、
    複数の貫通孔を有する第2保持部材とを備え、
    前記第2保持部材の前記複数の貫通孔は、前記第2保持部材を前記第1保持部材に沿って配置することにより、前記第1保持部材の前記複数の貫通孔に対応して位置するように形成されており、
    前記複数の貫通孔は前記球状体の直径の2倍以上の間隔で配置されている球状体の表面処理用治具。
  3. 前記貫通孔は等間隔に配置されている、請求項1または請求項2に記載の球状体の表面処理用治具。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の球状体の表面処理用治具を用いて実施される球状体の表面処理方法であって、
    前記第1保持部材の前記複数の貫通孔の各々において前記球状体を1つずつ支持することにより、前記第1保持部材によって前記複数の球状体を保持する工程と、
    前記第1保持部材によって保持された前記複数の球状体に対して表面処理を実施する工程と、
    表面処理が実施された前記複数の球状体を前記第1保持部材と前記第2保持部材とにより挟持した状態で、前記第1保持部材と前記第2保持部材との位置関係を反転させる工程と、
    前記第1保持部材を前記複数の球状体から離脱させることによって、前記第2保持部材の前記複数の貫通孔の各々において前記球状体を1つずつ支持することにより、前記第2保持部材によって前記複数の球状体を保持する工程と、
    前記第2保持部材によって保持された前記複数の球状体に対して表面処理を実施する工程とを備えた、球状体の表面処理方法。
  5. 前記球状体は導電体からなっており、
    前記表面処理は、前記球状体と前記球状体に対向して配置される部材との間に電圧が印加されつつ実施される、請求項に記載の球状体の表面処理方法。
  6. 前記表面処理はプラズマ窒化処理である、請求項またはに記載の球状体の表面処理方法。
  7. 球状の成形体を準備する工程と、
    前記成形体の表面処理を実施する工程とを備え、
    前記表面処理は、請求項のいずれか1項に記載の球状体の表面処理方法を用いて実施される、球状部品の製造方法。
  8. 前記球状部品は転がり軸受の転動体である、請求項に記載の球状部品の製造方法。
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