本発明の一視点によれば、システムを起動させるにあたり、貯湯槽から貯湯通路を介して凝縮器に送られる水が凝縮器において凝縮作用を発揮できるように、貯湯槽のうち第1所定温度以下の水の量が所定量以上であるという第2条件が更に満足されるとき、制御部は、システムを起動許可させることが好ましい。第1条件および第2条件の双方が満足されるとき、凝縮器における凝縮水の生成量が一層増加し、タンクにおける水位が一層確保され易いためである。第1所定温度は、水蒸気含有ガスを冷却させて凝縮器において水蒸気含有ガスから凝縮水を生成できる温度が好ましく、水蒸気含有ガスの温度よりも低い温度である。例えば35、30℃または25℃が例示される。
本発明の一視点によれば、貯湯通路のうち凝縮器よりも上流の通路部分の水を外気を用いて冷却作用を発揮するラジエータ装置が設けられている。この場合、システムを起動させるにあたり、ラジエータ装置が当該通路部分の水を冷却する冷却作用を発揮できるように外気が第2所定温度以下であるという第3条件が更に満足されるとき、制御部は、システムを起動許可させることが好ましい。第1条件及び第3条件が満足されるとき、凝縮器における凝縮水の生成量が一層増加し、タンクにおける水位が一層確保されやすいためである。第2所定温度は、貯湯通路のうち凝縮器よりも上流の通路部分の水を外気で冷却できる温度を意味し、当該通路部分の水よりも低温である。例えば38、35℃、30℃または25℃が例示される。
本発明の一視点によれば、システムを起動させるにあたり、改質水タンクの水位が所定水位未満である場合であっても、凝縮器における凝縮水生成能力が確保されると判定されるときには、第1条件を緩和した緩和第1条件を改質水タンクの水位が満足するとき、制御部はシステムを起動許可させる。また、凝縮器における凝縮水生成能力が確保されないと判定されるときには、緩和第1条件の満足に拘わらず、制御部はシステムを起動許可させない。その理由としては、凝縮器における凝縮水生成能力が確保されると判定されるときには、改質水タンクの水位が所定水位未満であっても、システムの運転停止が抑えられるためである。
本発明の一視点によれば、センサは、タンクにおいてこれの重力方向における上部から下部に向けて位置する高水位、中水位を検知することが好ましい。この場合、制御部は、タンクの水位が高水位以上であるときにおいて通常の発電モードを実行することが好ましい。タンクの水位が高水位未満であり且つ中水位以上であるときにおいて燃料電池の最高発電出力に出力制限をかける出力制限モードを実行することが好ましい。システムを起動させるにあたり、タンクの水位が中水位以上であるときにおいてシステムを起動許可させると共に、改質水タンクの水位が中水位未満であるときにおいてシステムを起動許可させないことが好ましい。タンクの水位が中水位以上であれば、システムを起動させたとしても、タンクの水不足が原因でシステムの発電運転が停止することは抑えられるためである。本発明の一視点によれば、制御部は、システムを起動許可させた後に、燃料原料を改質器に供給させ、且つ、改質水搬送源を駆動させてタンクの改質水を改質器に供給させることが好ましい。これによりシステムの起動が進行する。
(実施形態1)
図1はシステムの概要を示す。これは固体酸化物形の燃料電池に適用している。システムは、基本的には、固体酸化物形の燃料電池1と、改質器2と、制御部100と、筐体9とを有する。更に、燃料電池システムは、筐体9の内部において、改質水系4と、燃料原料供給系5、カソードガス供給糸6、貯湯系7とを有する。なお図1では、燃料電池1は模式化されて図示されている。システムは、タンク44に水を長期間にわたりまたは半永久的に補給せずに発電運転する水自立タイプである。図1に示すように、改質器2は、蒸発部20と、燃料原料が供給される改質部22とを備えている。蒸発部20は、改質水系4から蒸発部20に供給される液相状の改質水を水蒸気化させる。改質部22は蒸発部20の下流に設けられており、蒸発部20で生成された水蒸気で燃料原料を水蒸気改質させてアノードガスを生成させる。アノードガスは水素ガスまたは水素含有ガスである。筐体9は、筐体9の収容室91と外気とを連通させる外気取込口92および排出口93をもつ。発電モジュール3は筐体9の内部に収容されており、発電室32を形成する断熱材で形成された容器状の断熱部30を有しており、断熱部30の内部に燃料電池1および改質器2を燃焼用空間23を介して収容して形成されている。発電モジュール3では、燃料電池1の上側には改質器2(改質部22および蒸発部20)が配置されている。発電モジュール3では、燃料電池1と改質器2(改質部22および蒸発部20)との間には、燃焼用空間23が形成されている。殊に、燃料電池1の上部と改質器2(改質部22および蒸発部20)の下部との間には、燃焼用空間23が形成されている。燃料電池1のアノードから吐出されたアノードオフガスが燃焼用空間23に排出される。アノードオフガスは、燃料電池1のアノードから排出されるガスを意味し、未反応の水素(可燃成分)を含有して燃焼可能である。カソードオフガスは未反応の酸素を含有している。燃焼用空間23に排出されたアノードオフガスは、酸素を含むカソードガスまたはカソードオフガス(燃焼用空気に相当)により燃焼され、燃焼炎24を燃焼用空間23において形成する。燃焼用空間23において燃焼炎24を形成したガスは、燃焼排気ガスとなる。燃焼用空間23における燃焼炎24は改質部22および蒸発部20の双方を加熱させ、改質部22の温度を改質反応温度領域に維持させる。
図1に示すように、改質水系4は、改質部22における水蒸気改質において水蒸気として消費される改質水を改質部22に供給するものであり、水精製器40と改質器2とを結ぶ改質水通路41と、改質水ポンプ42(改質水搬送源)と、給水バルブ43とを有する。水精製器40は、水を浄化させ得るイオン交換樹脂等の水精製材40aを有する。改質水通路41には、タンク44、改質水ポンプ42、給水バルブ43が設けられている。
図1に示すように、燃料原料供給系5は、炭化水素系等の燃料原料を改質器2に供給させるために燃料源50に繋がる燃料原料供給通路51と、入口バルブ52と、流量計53、脱硫器54と、燃料原料ポンプ55(燃料原料搬送源)とを有する。燃料原料供給通路51には、入口バルブ52、流量計53、脱硫器54および燃料原料ポンプ55がこの順番に設けられているが、順番はこれに限定されるものではない。カソードガス供給糸6は、空気であるカソードガスを燃料電池1のカソード12に供給するカソードガス供給通路60と、除塵フィルタ61と、カソードガスポンプ62(カソードガス搬送源)と、流量計63とを有する。カソードガス供給通路60には、除塵フィルタ61、カソードガスポンプ62および流量計63がこの順番に配置されているが、この順番に限定されるものではない。除塵フィルタ61は、筐体9の収容室91に配置されている。カソードガスポンプ62が駆動すると、外気は外気取込口92から収容室91に流入し、除塵フィルタ61およびカソードガス供給通路60を介してカソードガスとして燃料電池1の入口からカソード12に供給される。
図1に示すように、貯湯系7は、貯湯槽70と、凝縮器74および貯湯槽70を循環する貯湯通路71と、貯湯通路71に設けられた貯湯ポンプ72(貯湯水搬送源)と、凝縮器74とを有する。貯湯槽70の下部には出水口70pが設けられている。貯湯槽70の上部には入水口70iが設けられている。貯湯通路71は、出水口70pから凝縮器74までの往路71aと、凝縮器74から入水口70iまでの復路71cとを有する。貯湯ポンプ72が作動すると、貯湯槽72の底部付近の水は出水口70pから吐出され、貯湯通路71の往路71aから凝縮器74に供給され、凝縮器74における排気ガスとの熱交換により加熱される。加熱された水は復路71cを介して入水口70iから貯湯槽70に戻る。これにより貯湯槽70は温水を貯留させる。貯湯槽70には高さ方向に沿って複数個の温度センサ70tが配置されている。貯湯槽70の温水が給湯通路70hから温水消費部70kに取り出されると、補給通路70wから水道水等の補給水が補給される。よって貯湯槽70は常に満水状態となるように設定されている。
発電モジュール3の近傍には凝縮器74(熱交換器に相当)が設けられている。凝縮器74は、発電モジュール3から排出される燃焼排気ガスが通過するガス通路74gと、貯湯系7の貯湯通路71の水が通過する水通路74wとをもつ。凝縮器74のガス通路74gを流れる排気ガスの熱は、熱交換により水通路74wに伝達され、更に貯湯系7の貯湯通路71の水に伝達される。凝縮器74のガス通路74gから排気通路75が筐体9の排気口76に向けて延設されている。発電モジュール3の発電室32の排気ガスは、凝縮器74のガス通路74gおよび排気通路75を介して、排気口76から排出される。凝縮器74のガス通路74gから凝縮水通路77が水精製器40に向けて延設されている。この排気ガスは水蒸気含有ガスである。従って排気ガスに含まれている気相状の水分は、凝縮器74のガス通路74gにおいて水通路74wにより冷却されて凝縮水を生成する。凝縮水は凝縮水通路77から水精製器40を介してタンク44に貯留される。貯湯通路71の往路71aには、往路71aの水を強制的に冷却させ得る冷却装置として機能するラジエータ装置79が設けられている。ラジエータ装置79は、冷却フィンをもつと共に往路71aに連通する放熱通路をもつラジエータ79aと、ラジエータ79aに送風してこれを積極的に冷却させる冷却ファン79cとをもつ。冷却ファン79cの回転数は固定でも可変でも良い。なおラジエータ装置79は筐体9の外側でも良いし筐体9の内部でも良いし、あるいは、貯湯槽70を収容する図略の筐体の内部でも良い。
さて、システムが起動するときには、燃料原料ポンプ55が駆動し、燃料原料が脱硫器54、燃料原料供給通路51、蒸発部20および改質部22を経て燃料電池1に供給され、燃料電池1を介して燃焼用空間23に供給される。またカソードガスポンプ62が駆動するため、カソードガス(空気)が燃焼用空気として燃焼用空間23に供給される。これにより可燃性の燃料原料が燃焼用空間23においてカソードガス(燃焼用空気)により燃焼され、燃焼炎24を燃焼用空間23において形成する。燃焼炎24は改質部22および蒸発部20を高温に加熱させ、改質反応可能とさせるとともに燃料電池を暖機する。
次に、燃料電池1の発電運転時には、燃料原料ポンプ55が駆動し、燃料原料が燃料原料供給通路51を介して改質器2の蒸発部20に供給される。また改質水ポンプ42が駆動し、タンク44の液相状の改質水が改質水通路41を介して蒸発部20に供給される。ここで、蒸発部20は加熱されているため、蒸発部20は改質水を水蒸気化させる。水蒸気は改質部22に供給される。改質部22は燃料原料を水蒸気改質させ、アノードガスを生成させる。
燃料原料がメタン系である場合には、水蒸気改質ではアノードガスの生成は、次の(1)式に基づくと考えられている。固体酸化物形の燃料電池1では、H2他にCOも燃料となりうる。
(1)…CH4+2H2O→4H2+CO2
CH4+H2O→3H2+CO
生成されたアノードガスは、アノードガス通路14およびアノードガスマニホルド13を介して、燃料電池1のアノード11の入口に供給されて発電に使用される。またカソードガスポンプ62が駆動しているため、筐体9の外部の外気がカソードガスとして除塵フィルタ61およびカソードガス供給通路60を介して燃料電池1のカソード12の入口に供給される。これにより燃料電池1は発電する。発電反応においては、水素含有ガスで供給されるアノード11では基本的には(2)の反応が発生すると考えられている。酸素が供給されるカソード12では基本的には(3)の反応が発生すると考えられている。カソード12において発生した酸素イオン(O2−)がカソード12からアノード11に向けて電解質を伝導する。
(2)…H2+O2−→H2O+2e−
COが含まれている場合には、CO+O2−→CO2+2e−
(3)…1/2O2+2e−→O2−
発電反応後のアノードオフガスは、発電反応しなかった水素や未反応の燃料原料(メタン)を含む。カソードオフガスは発電反応に未反応な酸素を含む。アノードオフガスおよびカソードオフガスは、燃料電池1の上方の燃焼用空間23に排出され、燃焼炎24を燃焼用空間23において形成する。燃焼炎24における燃焼反応において水素やメタンが酸素と反応するため、燃焼反応によりH2Oが生成される。燃焼した後の燃焼排気ガスは、凝縮器74のガス通路74g、ガス出口78を経て排気通路75を流れ、更に、排気通路75の先端の排気口76から筐体9の外部に放出される。ここで、凝縮器74のガス通路74gを流れる排気ガスは、水分を含む。この水分は、改質反応に必要な改質水量に対して余剰に投入した水(通常、改質触媒,燃料電池触媒のコーキング良くしのために必要な水量に対して2.5以上(S/C)を投入する。)、上記した(2)におけるH2O、燃焼炎24の燃焼反応により生成されたH2Oを含む。排気ガスに含まれている水分は、凝縮器74のガス通路74gにおいて水通路74wにより冷却されて凝縮し、凝縮水を生成させる。凝縮器74のガス通路74gで生成された凝縮水は凝縮水通路77から水精製器40に供給され、水精製器40で精製される。精製された水は、タンク44に改質水44wとして貯留される。凝縮水を改質水として再利用することにより、システムが水自立可能となる。水自立とは、長期にわたりあるいは半永久的に改質水をシステムに補給せずに済む状態を意味する。上記したように燃料電池1のアノード11の上部からアノードオフガスが燃焼用空間23に吐出され、カソード12から吐出されたカソードオフガスが燃焼用空間23に吐出され、アノードオフガスがカソードオフガスにより燃焼されて燃焼炎24を形成し、改質部22および蒸発部20を加熱させる。なお、固体酸化物形の燃料電池1を搭載するシステムによれば、定常運転における燃料電池1の作動温度は400〜1100℃の範囲内、500〜800℃の範囲内が例示される。
排気通路75のうち凝縮器74のガス通路74gの下流の部位の排気ガスの温度T2を検知するガス温度センサ201が設けられている。貯湯通路71の往路71aのうち凝縮器74の水通路74wよりも上流の水の温度T1を検知する水温センサ202が設けられている。外気温度T3を検知する外気温度センサ205が外気取込口92付近に設けられている。但し、センサ205は筐体9の外方に配置されていても良い。センサ201,202,205,70tの温度信号は制御部100に入力される。制御部100は、入力処理回路と、出力処理回路と、CPUと、メモリとを有する。制御部100は、ポンプ62,55,72,42,バルブ52,43、ファン79c等の補機を制御する。
燃料電池1はインバータ501およびスイッチング素子502を介して電力負荷504および商用電源505に系統連系されている。電力負荷504はブレーカ506を介して商用電源505に接続されている。燃料電池1の発電出力が不足するとき、スイッチング素子502がオンしている状態において、商用電源505から電力負荷504に給電される。スイッチング素子502が断電されると、燃料電池1と商用電源505とは断電される。ここで、貯湯通路71のうち凝縮器74よりも上流の往路71aの水の温度T1が既定温度以上である場合には、凝縮器74における冷却能力が低下し、凝縮器74における凝縮生成量が低下する。このためタンク44に貯留される改質水の水位が過剰に低下するおそれがある場合、制御部100は、ラジエータ装置79のファン79cを作動させるかあるいはファン79cの単位時間あたりの出力(回転数)を増加させることにより、貯湯通路71のうち凝縮器74よりも上流の往路71a(凝縮器74の入口側)の水の温度T1を低下させる。これにより凝縮器74の水通路74wにおける冷却能力が増加し、凝縮器74のガス通路74gにおいて凝縮される凝縮水の生成量が増加する。凝縮水は凝縮器74から凝縮水通路77を介してタンク44に重力で流下する。こうして凝縮水がタンク44に供給され改質水として利用される。なお本実施形態によれば、システムが停止しているときには、貯湯ポンプ72および冷却ファン79cは停止している。システムが起動すれば、貯湯ポンプ72および冷却ファン79cは必要に応じて駆動する。
図2はタンク44を示す。タンク44には、これの上部から下部に向けて、オーバフロー水位Over、第1水位としての高水位High,第2水位としての中水位Mid,第3水位としての低水位Lowの3水準の水位が設定されている。高水位Highを検知できる高水位センサ301(第1水位センサ)、中水位Midを検知できる中水位センサ302(第2水位センサ)、低水位Lowを検知できる低水位センサ303(第3水位センサ)がそれぞれタンク44に設けられている。高水位センサ301、中水位センサ302および低水位センサ303といった各センサは、導電率センサでも良いしフロートセンサでも良い。導電率センサについては、水が存在すれば水の導電率2〜10μS/cmを示すのに対し、水がない場合は電極間が空気となるため、0μS/cmとなり、導電率とともに純水の有無、不純物の混在の有無を検知可能である。センサ301,302,303のうち最も下部に配置されている低水位センサ303については、導電率センサが好ましい。その理由としては、タンク44の水量が低下したとしても、タンク44の底部に水は存在する。このためタンク44に不純物が混在すれば、導電率の変化により不純物の混在の有無、純水の有無を検知できる確率が高くなるためである。タンク44に貯留されている過剰の水をオーバフローさせるオーバフロー部44pが、タンク44の上部に設けられている。よって、高水位Highよりも上方にオーバフロー水位Overが設けられている。通常の発電モードであれば、タンク44の水位は高水位High以上に維持されるようにシステムは設定されており、タンク44において水が増加しても、オーバフロー部44pから水がオーバフローし、システム外に排水される。本実施形態によれば、システムは、タンク44に水を長期間にわたりまたは半永久的に補給せずに発電運転する水自立タイプである。このため水道水等の補給水を水精製器40またはタンク44に補給させる補給配管が基本的には配置されていない。
本実施形態における起動許可についての基本的な考え方について下記に示す。凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が少なくなると、タンク44に回収される改質水が少なくなる。例えば、貯湯槽70が温水で満水状態(満蓄状態)であり、貯通通路71の水温が高く、且つ、外気温度T3が高温といった場合(例えば夏季)には、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が少なくなり、タンク44に回収される改質水も少なくなる傾向がある。このような改質水貯留にとって厳しい条件においても、システムの省エネルギ性,CO2削減率,経済性等においてメリットが充分に発揮されるように、システムの起動に要するエネルギ,システムの停止に要するエネルギを考慮し、起動させたシステムを時間TM3ぶんは最低限発電させることが好ましい。システムを起動させたとしても、システムの発電運転が短時間継続するものの、改質水の不足のためシステムが短時間のうちに再び停止すると、充分な省エネルギ性が得られず、システムのランニングコストが増加するためである。
省エネルギ性について検討した例を下記に示す。すなわち、システムの起動エネルギーをJ1[kWh]とし,システムの停止エネルギーをJ2[kWh]とするシステムの場合、システムの起動および停止の1回で、J12のエネルギーが使用される。J12=J1+J2
一方、システムが規定発電量および規定効率で発電した場合において、ΔJ3kWのエネルギーの低減があると仮定する。システムが時間TM3発電するとき、ΔJ3×TM3[kWh]のエネルギーが低減できる。
(ΔJ3×TM3)≧(J12+α)の関係式が満たされるように、時間TM3が決定される。なお、αに関しては、システムのコストおよび償却期間等を含めて優位性が出るように適宜設定される。従って、システムを起動させた後に時間TM3以上の発電が可能な条件がそろった場合には、制御部100は、システムに起動許可を与え、システムを起動させることが好ましい。
制御部100は、システムの起動許可を与える第1条件〜第3条件を考慮する。
(i)タンク44の水位に関する第1条件
(ii)貯湯槽70に溜められている第1所定温度以下の冷水の量(水位)に関する第2条件
(iii)外気温度T3の温度に関する第3条件
ここで、外気温度T3は、貯湯通路71のうち凝縮器74よりも上流に位置する往路71aの貯湯水をラジエータ装置79の冷却ファン79cで冷却する場合には、凝縮器74を冷却させるための往路71cの水を積極的に冷却できる温度に相当する
本実施形態によれば、起動前では、ポンプ62,55,42,72,ファン79cは停止されている。システムを起動させるにあたり、まず、制御部100は、タンク44の水位が所定の中水位Mid以上という第1条件を満たすか否かを判定する。更に、貯湯槽70のうち第1所定温度以下の冷水の量が所定量以上であるという第2条件を満たすか否かを判定する。ここで、貯湯槽70の上部には温水が存在する。水の比重差のため、貯湯槽70の下部には、温水よりも温度が低い水がほぼ分離して存在する。これを本実施形態では温水に対する用語として、冷水という。冷水は第1所定温度(例えば30℃または35℃)以下の温度とする。冷水の量は冷水の水位に相当する。貯湯槽70の高さ方向には複数の温度センサ70tが設けられており、各温度センサ70tからの温度信号により制御部100は冷水の水位を認識できる。冷水の水位を図1においてA1,A2(A1<A2)と仮定する。第1所定温度は、貯湯槽70から貯湯通路71の往路71a(凝縮器74よりも上流の通路部分)を介して凝縮器74の水通路74wに送られる水が凝縮器74において凝縮作用を発揮できるように設定される。更に、外気温度T3が第2所定温度(例えば20〜35℃のうちの任意温度)以下であるという第3条件を満たすか否かを判定する。第2所定温度は、ラジエータ装置79の冷却ファン79cの作動により外気が往路71a(凝縮器74よりも上流の通路部分)の水を冷却する冷却作用を発揮できるように設定される。
そして、第1条件、第2条件および第3条件のうちのいずれかの条件が満たされるとき、システムに水を補給せずに水自立タイプのシステムであっても、システムを起動させたとしても改質水不足のおそれがないと推定されるため、システムを起動許可させる信号が制御部100により出力される。制御部100は、システムを起動許可させた後に、燃料原料を発電モジュール3に供給させると共にカソードガスポンプ62の駆動によりカソードガスを燃焼用空気として発電モジュール3に供給させる。これにより燃焼炎24を形成し、燃焼炎24で蒸発部20および改質部22を加熱させる。制御部100は、改質部22が改質反応に適する温度領域まで昇温させ、その後、ポンプ42(改質水搬送源)を駆動させてタンク44の改質水を改質部22に供給させて改質反応によりアノードガスを生成させる。アノードガスは発電モジュール3の燃料電池1のアノード11に供給される。発電モジュール3に供給されたアノードガスおよびカソードガスにより燃料電池1は発電する。改質水の不足が抑えられるため、起動後に短時間での短時間にシステムの運転が停止するといった不具合が未然に防止される。よってシステムの省エネルギ性が確保され、システムのランニングコストの増加が抑えられる。
(実施形態2)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1および図2を準用する。本実施形態においても、システムは、タンク44に水を長期間にわたりまたは半永久的に補給せずに発電運転する水自立タイプである。システムを起動させるにあたり、タンク44に溜められている水が中水位Mid以上であるという第1条件が満足されると、制御部100はシステムに起動許可を与える。
更に、システムの発電運転中において、制御部100が実行する制御について以下に説明する。
(1)システムが電力負荷504の負荷に応じて通常の発電モードを実行しているときには、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が良好であり、タンク44の水量が良好である。このため、高水位センサ301がONして高水位を検知する。中水位センサ302がONして中水位を検知する。更に低い水位センサ303がONして低水位を検知する。この場合、システムの通常の発電モード(電力負荷等に基づき発電)を実行させる。燃料電池1の発電電力が不足しており連系が必要であれば、系統連系している商用電源505の電力が電力負荷504に供給される。
(2)発電運転において、タンク44の水位が低下している場合には、高水位センサ301がOFFで水位を検知せず、中水位センサ302がONで中水位を検知し、低水位センサ303がONで低水位を検知する場合がある。この場合には、タンク44の水位は、高水位Highと中水位Midとの間に位置しており、タンク44の水位はやや低下している。そこで発電運転中において、制御部100は、電力負荷504の要請に拘わらず、燃料電池1の最高発電出力を、これの定格電力Wset未満である電力W1に出力制限させる制御を実行する。電力W1としては、定格電力Wsetの95%〜40%の範囲、特に90〜50%のうちの任意値が例示される。このようにタンク44の水位が高水位High未満になると、燃料電池1の発電出力が出力制限されるため、改質器2における改質水の消費量が低下し、タンク44から改質器2に供給される単位時間あたりの改質水の量が低減される。
更に発電運転において、タンク44の水位が高水位High未満になると、場合によっては、冷却ファン79cをオンさせるかその回転数を(高水位High以上の水位の場合よりも)増加させる第1操作、ポンプ72の出力を(高水位High以上の水位の場合よりも)増加させる第2操作のうちの少なくとも一つを実行し、凝縮器74の水通路74wの入口の水の温度T1を低下させ、凝縮器74において凝縮する凝縮水の生成量を増加させる増水操作を実行することもできる。その場合、上記で発電出力制限をすることで、ラジエータ装置79の熱負荷を低減しT1温度をより良く低下させることが可能で凝縮水の増水を向上できる。なお、電力負荷504の電力が不足するときには、燃料電池1と系統連系している商用電源505の電力を電力負荷504に給電させる。
(3)発電運転において、高水位センサ301がOFFで水位を検知せず、中水位センサ302がOFFで水位を検知せず、低水位センサ303がONで低水位を検知する場合がある。この場合には、タンク44の水位は中水位Mid未満となり、中水位Midと低水位Lowとの間に位置しており、タンク44の水位はかなり低下している。この場合、制御部100はシステムの発電運転を停止させる発電停止モードを実行する。この場合、制御部100の記憶部に予め格納されている発電停止シーケンスに基づいて停止させることが好ましい。更に、場合によっては、中水位High以上の水位の場合よりも冷却ファン79cの回転数(出力)を更に増加させる第1操作、ポンプ72の出力を更に増加させる第2操作のうちの少なくとも一つを実行し、凝縮器74の水通路74wの入口の水の温度T1を低下させ、凝縮器74において凝縮する凝縮水の生成量を増加させる増水操作を実行することができる。但し増水操作を実行せず、発電停止モードを実行しても良い。なお燃料電池1の発電電力が不足するときには、商用電源505から電力負荷504に供給される。
(4)発電運転において、高水位センサ301がOFFで水位を検知せず、中水位センサ302がOFFで水位を検知せず、低水位センサ303がOFFで水位を検知しない場合がある。この場合には、タンク44の水位は低水位Low未満に位置しており、かなり低下している。この場合には、制御部100は、システムを緊急停止させる。電力負荷504に商用電源505からの電力が供給される。この場合、燃料電池1の発電を停止させてタンク44の水が改質器2に供給されることを停止させる。この場合、タンク44の水位がかなり不足しているため、ポンプ42を停止させ、改質水を改質器2に供給させない。これにより、改質水不足による改質触媒,燃料電池触媒のコーキングによる劣化や故障を抑止することができる。
(5)各水位センサ301,302,303のON,OFFが論理的に整合するか否かについて判定することが好ましい。論理的に整合しないときには、制御部100は、水位センサの張り付き等の異常で発生していると判定し、システムを緊急停止させる。ここで、各水位センサはONであれば、水ありを検知し、OFFであれば、水無しを検知する。例えば、高水位センサ301がONであり、高水位を検知しているにも拘わらず、中水位センサ302がOFFで中水位を検知していない場合には、論理的にあり得ないため、水位センサの故障と推定される。また、中水位センサ302がONで中水位を検知しているにもかかわらず、低水位センサ303がOFFで低水位を検知しない場合には、論理的にあり得ないため、水位センサの故障と推定される。
以上説明したように本実施形態によれば、発電運転している場合において、タンク44の水位が高水位High以上であることがセンサ301により検知されるとき、制御部100は、電力負荷504の大きさに応じて通常の発電モードで運転する。しかしながらタンク44の水位が高水位High未満であり且つ中水位Mid以上であることがセンサ301,302により検知されるとき、制御部100は、電力負荷504の大きさに拘わらず、燃料電池1の最高発電出力を、これの定格電力Wset未満の発電電力W1に出力制限させ、タンク44の水量の減少速度を抑制させる。これによりシステムの水自立運転を実行することができる。なお、水自立運転であれば、水道水などの補給水が存在しない環境でもシステムを設置できる。更に、水道水などの補給水がシステムに補給されることが長期にわたり抑えられるため、水精製器40のイオン交換樹脂等の水精製材40aの劣化が抑えられる利点が得られる。なおシステムは水自立運転が前提であるため、水道水等の補給水を水精製器40またはタンク44に補給させる補給配管が基本的には配置されていない。タンク44の水位が低下しても、システムに出力制限をかけつつ、タンク44の水量を増加させる増水操作を実行すれば、水自立運転が更に容易である。
上記したように本実施形態によれば、タンク44には3水準の水位センサ、すなわち、高水位センサ301、中水位センサ302、低水位センサ303が設けられている。このため、貯湯槽70が温水で満水とされ、かつ、夏季のように気温が高い場合には、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が不足しがちとなるものの、外部の水(例えば水道水)をシステムに補給させることなく、水自立運転が可能となる。すなわち、猛暑日を除く一年間のうちのほとんどの日において、システムの通常の発電モードによれば(水自立時)、タンク44の水は高水位Highとオーバフロー水位overとの間における水位で運転され、タンク44の水量は充分である。
本実施形態によれば、前述したようにタンク44の水位が高水位Highよりも低下し、高水位センサ301がOFFとなって水を検知しなくなると、システムの最高発電電力が、システムの定格電力Wsetよりも低い規定発電電力W1となるように、制御部100は、電力負荷504の消費電力に拘わらず、システムの発電運転に出力制限をかける。出力制限により、改質器2において消費される改質水量を低下させる。また、燃料電池1の発電出力が低下するときには、ラジエータ装置79における熱負荷が低減する。これにより貯湯通路71を流れる水の温度が低下し、発電モジュール3の発電室32から排気通路75に向けて排出される排気ガスの温度の低下が可能となり、水収支量(水収支量=凝縮器74において生成された凝縮水の量−改質器2に供給された改質水の量)を増大させることができる。上記した本実施形態によれば、基本的には、貯湯槽70が温水で満水であり、かつ、夏季のように外気温度が高いときであっても、タンク44の水位が高水位High未満であり且つ中水位Mid以上であれば、システムの発電電力に出力制限をかけることで、システムの運転継続が可能となる。しかしながら、予想以上の条件(設置環境等により予想以上に高温の時間帯が長い場合、貯湯ポンプ72の故障で規定流量ぶん、貯湯通路71に水を流せない場合等)で万一発生するおそれがある。この場合には、タンク44の水位がかなり下がり、高水位センサ301および中水位センサ302の双方がOFFになるおそれがある。この場合には、中水位センサ302がOFFになり水を検知できない場合には、タンク44の水は中水位Mid未満であり且つ低水位Low以上であるため、システムを発電停止モード゛に移行させる。
以上説明したように本実施形態によれば、システムを起動させるにあたり、タンク44の水位が中水位Midである第2水位以上であるとき、改質水の不足のおそれがないと推定されるため、制御部100は、システムを起動許可させる信号を出力する。タンク44の水位が中水位Midである第2水位未満であるとき、制御部100は、システムを起動許可させない。更に、システムの発電運転中についてみると、水タンク44の水位が高水位Highである第1水位未満に低下するときには、制御部100は、システムの最高発電出力を定格電力未満のW1に制限させる。また、タンク44の水位が高水位Highである第1水位以上のときには、タンク44の水は充分であるため、制御部100は、システムの最高発電出力を定格電力未満のW1に制限させない。
(実施形態3)
本実施形態は前記した実施形態1,2と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1および図2を準用する。本実施形態によれば、システムを起動させるにあたり、制御部100は、タンク44の水位が所定の高水位High以上という第1条件を満たすか否かを判定する。そして第1条件が満たされるとき、改質水の不足のおそれがないと推定されるため、制御部100はシステムを起動許可させた後、前述同様にシステムを起動させて発電運転する。
(実施形態4)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1および図2を準用する。システムを起動させるにあたり、制御部100は、タンク44の水位が低水位Low(第1条件を緩和した緩和第1条件に相当)を満たすか否かを判定する。更に、貯湯槽70のうち第1所定温度以下の冷水の水量が所定量以上(すなわち、冷水が水位A2(A2>A1)以上であること)であるという第2条件を満たすか否かを判定する。更に、外気温度T3が第2所定温度(例えば20℃)以下と低温であるという第3条件を満たすか否かを判定する。そして、緩和第1条件、第2条件および第3条件が満たされるとき、システムの運転中における改質水不足のおそれがないと推定されるため、制御部100はシステムを起動許可させる信号を出力する。
(実施形態5)
図3は実施形態5を示す。本実施形態は前記した前記した各実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1および図2を準用する。システムは、タンク44に水を長期間にわたりまたは半永久的に補給せずに発電運転する水自立タイプである。システムが起動許可される前には、ポンプ42,55,62,72,冷却ファン79cは停止されている。本実施形態においても、システムを起動させるにあたり、タンク44に溜められている水が中水位Mid以上であるという第1条件が満足されると、改質水の不足のおそれがないと推定されるため、制御部100はシステムに起動許可を与える。但し、タンク44に溜められている水が中水位Mid未満であっても、凝縮器74における凝縮水生成量が期待できる場合には、第1条件を緩和した緩和第1条件を設定する。そして緩和第1条件が満足されると、制御部100はシステムに起動許可を与える確率を高める。
図3に示すフローチャートは、システムが起動前において待機しているとき、周期的(例えば20ミリ秒ごとに)に実行される。まず、システムを起動させて発電運転させる起動運転指示があるか否かを判定する(ステップS2)。システムの起動運転指示は、学習制御,タイマー運転,ユーザーによる起動スイッチ102の操作等によりシステムに発信される。起動運転指示がない場合には(ステップS2のNO)、システムの待機は継続される(ステップS10)。システムの起動運転指示があるとき(ステップS2のYES)、制御部100は、まず、タンク44の水位が中水位Mid(所定水位)以上である第1条件を満たすか否かを判定する(ステップS4)。水位が中水位Mid以上であり、第1条件が満足されるとき(ステップS4のYES)、時間TM3以上の運転が可能と判断される。このため、制御部100はシステム起動許可を出力し(ステップS6)、更に、システムを起動させる(ステップS8)。この場合、制御部100は、燃料原料およびカソードガスを発電モジュール3内に供給させて燃焼炎24を形成、燃焼炎24により蒸発部20を昇温させると共に改質部22を改質反応に適する温度領域に昇温させる。燃焼炎24は同時に燃料電池1を昇温させる。改質部22が昇温したら、ポンプ42を駆動させてタンクの改質水を蒸発部20を介して改質部22に供給させる。これにより改質部22において改質反応が発生し、アノード活物質である水素を含有するアノードガスが生成される。アノードガス及びカソードガスにより燃料電池1は発電する。
しかしタンク44の水位が中水位Mid未満であり、第1条件が満足されないときであっても(ステップS4のNO)、制御部100は、タンク44の水位が低水位Low(所定水位)以上であるか否かを判定する(ステップS12)。タンク44の水位が低水位Low未満である場合には(ステップS12のNO)、タンク44内の水がかなり少ないため、制御部100はアラーム104を発報して起動禁止処理をする(ステップS16)。この場合、水補給ラインがないため、ユーザーもしくはメンテナンス者が水の補給を実施する。具体的には筐体9のパネルを外し、収容室91内のタンク44または水精製器40に水を補給し、補給後にパネルを取り付ける。
タンク44の水位が低水位Low以上である場合には(ステップS12のYES)、制御部100は、貯湯槽70の冷水が水位A2(高水位)以上であるか否かを判定する(ステップS14)。このようにタンク44の水位が中水位Mid未満であり、第1条件が満足されないときであっても、低水位Low以上である場合には、第1条件を緩和した緩和第1条件が満足される。この場合、貯湯槽70の冷水の水位がA2以上であれば(ステップS14のYES)、第2条件が満足されている。この場合、起動後のポンプ72が駆動すれば、凝縮器74においてガス通路74gを流れる排気ガス(水蒸気含有ガス)は、水通路74wにより冷却されて凝縮され、凝縮水の生成量が良好に確保される。すなわち、システムが起動すれば、ポンプ72が駆動するため、凝縮器74における凝縮水生成能力が確保されると判定される。このため制御部100は、時間TM3以上の発電可能と判断し、システムの起動許可を出力し(ステップS6)、更に、システムを起動させる(ステップS8)。
ところで、外気温度T3が高温であると、ラジエータ装置79の冷却ファン79cで往路71aの水を充分に冷却できない。この場合、タンク44の改質水が不足するおそれがある。このような厳しい環境においても、貯湯槽70の底部の冷水が水位A2以上であり、貯湯槽70の冷水の量が確保されている場合には、システムが起動してポンプ72が駆動すれば、凝縮器74の凝縮水生成能力を確保でき、システムを起動させたとしても時間TM以上運転できる。このような観点から、貯湯槽70における冷水の水位A2の高さは、設定されている。一例を示すと、システムの起動における貯湯水の使用量をQ1[リットル]とし,発電で使用する貯湯水の使用量をQ2[リットル](=q2[リットル/min]×TM3)とする。この場合、貯湯槽70における冷水の水位A2の高さは、Q1+Q2以上の水量を確保できるように設定されている。
また、貯湯槽70の底部の冷水が水位A2未満である場合には(ステップS14のNO)、冷水は少な目であり、凝縮器74における凝縮水の生成量をあまり期待できないおそれがある。そこで制御部100は外気温度T3が閾値T3-aより低いかどうかを判定する(ステップS20)。外気温度T3が閾値T3-aよりも高い(T3>T3-a)場合には(ステップS20のNO)、第3条件が満足されず、ラジエータ装置79の冷却能力が低下するため、往路71aの水を充分に冷却できず、凝縮器74における凝縮水の生成量が必ずしも充分ではないおそれがある。そこで、貯湯槽70の冷水が水位A2未満の場合には、時間TM3以上の発電が困難であると判断されるため、起動許可は抑えられる。ここで、閾値T3-aは、基本的には、ラジエータ装置79における冷却能力に基づいて決定される温度(第2所定温度に相当)である。1日の気温変化等を考慮し、時間TM3内においてタンク44が水枯れ状態となり、システムが停止に至らないような温度が、閾値T3-aとして設定されている。なお、閾値T3-aは時刻に対してマップとして設定されてもよい。例えば、システムの起動運転指示が出力された時刻がAM6:00のときには、T3-a=30℃にできる。システムの起動運転指示が出力された時刻が12:00のときには、T3-a=35℃などが例示される。前述したように、タンク44の水位が中水位Mid未満(第1条件が満足されない場合)であっても、低水位Low以上である場合には(ステップS12のYES)、緩和第1条件が満足される。この場合、ユーザーが貯湯槽70の温水を消費するときには、貯湯槽70の底部の冷水の水位の高さが水位A2以上に増加し、第2条件が満足される(ステップS14のYES)。このためステップS14からステップS6に進み、制御部100はシステム起動許可を出力し(ステップS6)、システムを起動させる(ステップS8)。
また、タンク44の水位が中水位Mid未満であっても水位Low以上である場合には(ステップS12のYES)、緩和第1条件は満足される。この場合、貯湯槽70の冷水が水位A2よりも低いとき(第2条件が満足されないとき)であっても(ステップS14のNO)、外気温度T3が閾値T3-a以下と低いため第3条件が満足される(T3≦T3-a)。この場合、貯湯槽70の冷水の水位がA1(A1<A2)以上である場合(第2条件を緩和した緩和第2条件が満足される場合)には(ステップS22のYES)、起動によりラジエータ装置79のファン79cが駆動すれば、貯湯通路71の往路71aの水を効果的に冷却でき、凝縮器74における凝縮水の生成量を確保でき、タンク44の水を増加できる。すなわち、システムが起動すれば、凝縮器74における凝縮水生成能力が確保されると判定される。よって、時間TM3以上の発電が可能と判断され、制御部100は、システム起動許可を出力し(ステップS6)、システムを起動させる(ステップS8)。システムが起動すれば、ポンプ72、ファン79cが駆動するため、凝縮器74の凝縮水生成能力が高まる。
更に、タンク44の水位が中水位Mid未満であっても低水位Low以上である場合には(ステップS12のYES,緩和第1条件が満足される場合)、貯湯槽70の冷水が水位A1未満とかなり少ないとき(ステップS22のNO,緩和第2条件が満足されないとき)であっても、外気温度T3が閾値T3-b(例えば10℃)よりも低温であれば(T3≦T3-b,ステップS24のYES)、起動によりポンプ72,ラジエータ装置79のファン79cが駆動すれば、ラジエータ装置79の冷却能力が確保され、貯湯通路71の往路71aの水の冷却を期待できる。ひいては、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量を増加でき、タンク44の水位が上昇する。すなわち、システムが起動すれば、凝縮器74における凝縮水生成能力が確保されると判定される。この場合、時間TM3以上の発電が可能と判断される。従って、制御部100はステップS24からステップS6に進み、システム起動許可を出力し、システムを起動させる(ステップS8)。ここで、T3-bは、T3-aよりも低温である。
貯湯槽70の冷水の水位A1の高さについては、外気温度T3が閾値T3-a(例えば20℃)以下である(T3≦T3-a)場合において、発電が時間TM3以上の継続できるような水量が設定されている。ここで、貯湯槽70内の冷水がなくなった場合(すなわち、貯湯槽70が温水で満水状態)にラジエータ装置79による水冷却効果が低下し、凝縮器74における凝縮水生成能力が低下し、水枯れが発生するおそれがある。このため、水枯れなくシステムを運転可能な時間の和が時間TM3以上となるように、貯湯槽70の冷水の水位A1の高さが設定されている。
貯湯槽70の冷水が水位A1未満と少なく(ステップS22のNO、第2条件を緩和した緩和第2条件が満足されないとき)、且つ、外気温度T3が閾値温度T3-bよりも高温であるときには(ステップS24のNO)、凝縮器74における凝縮水生成能力が良好に確保されないおそれがある。よってシステムを起動させたとしても、直ぐに停止するおそれが高いため、制御部100はステップS24からステップS2に戻る。ここで、閾値T3-bは、貯湯槽70が温水で満水状態が続いたとしても、つまり、貯湯槽70の冷水が存在しないときであっても、ラジエータ装置79による冷却のみで時間TM3以上発電可能となる温度である。閾値T3-bの考え方は、閾値T3-aと同様である。
貯湯槽70の冷水が水位A1未満と少ないときであっても(ステップS22のNO,緩和第2条件が満足されないとき)、外気温度T3が閾値T3-b以下と低温であるとき(ステップS24のYES,T3≦T3-b)には、ラジエータ装置79のファン79cの駆動で貯湯通路71の往路71aの水が効果的に冷却され、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が増加され、水枯れのおそれは解消される。すなわち、システムが起動すれば、凝縮器74における凝縮水生成能力が確保されると判定される。従って、制御部100は、システム起動許可を出力し(ステップS6)、システムを起動させる(ステップS8)。システムが起動すれば、ポンプ72、ファン79cが駆動するため、凝縮器74の凝縮水生成能力が高まり、タンク44が増水される。上記したようにユーザーが貯湯槽70の温水を使用せず貯湯槽70の温水が満水である状態が続いても、冬場や寒冷地等のように、外気温度T3が温度T3−a,または、温度T3−bよりも低い場合には、ファン79cが回転すれば、ラジエータ装置79の冷却能力が確保され、凝縮器74における凝縮水生成能力が確保されるため、制御部100はシステムを起動させることができる。このように本実施形態によれば、システムに水を補給せずに、水自立を行うことができる。更に、システムにおいて、年間等を通してのトータル効率,省エネルギー性,経済性等の向上を図ることが可能となる。
図4は、図3に示す制御を実施した場合の特性例の概念を模式的に示す。特性線M1はタンク44の水位の変化を示す。特性線M2はユーザの発電要求を示す。特性線M3は燃料電池1の発電出力の変化を示す。特性線M4は貯湯槽70の冷水の水位の変化示す。t0で起動許可の指示が来たとする。その場合、改質水タンクはMid以下(Step4 NO)であるが、Low以上(Step12 YES)、貯湯槽 冷水水位A2以上(Step14 YES)のため、緩和条件1を満足するため、制御部100はt0において起動許可を与え起動を開始する。その後、改質部、燃料電池の暖機が完了した時刻tuで燃料電池1の発電が開始される。但し、時刻tuでは、タンク44の水が高水位High未満であるため、発電出力に制限がかかる。よって時刻tu以降では、ユーザの発電要求が出力W2であるにも拘わらず、燃料電池1の最高発電出力は、W2よりも低いW1に抑えられている。タンク44の水が高水位High以上となった時刻tw以降では、上記した制限が解除される。このため燃料電池1の発電出力は、ユーザの発電要求とほぼ同じとなり、W1よりも高いW2に増加される。発電時間が経過するにつれて、凝縮器74における熱交換で加熱された温水が貯湯槽70に帰還する流量が増加するため、特性線M4に示すように貯湯槽70の冷水の水位は次第に低下する。しかし特性線M1に示すように、タンクの水位は冷水による凝縮器での凝縮量増大で水位が上昇し、ユーザが湯を全く使用せずタンクの冷水水位がゼロになった(温水で満水になった)としても既定時間TM3以上の発電が可能となる。
(実施形態6)
図5は実施形態6を示す。本実施形態は前記した各実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1および図2を準用する。システムは水自立タイプである。図5に示すフローチャートは、システムが待機しているとき、周期的に実行される。まず、システムを起動させて発電運転させる起動運転指示があるか否かを判定する(ステップSB2)。システムの起動運転指示は、学習制御,タイマー運転,ユーザーによる起動スイッチ102の操作等によりシステムに発信される。起動運転指示がない場合には(ステップSB2のNO)、システムの待機は継続される(ステップSB10)。システムの起動運転指示があるとき(ステップSB2のYES)、制御部100は、まず、タンク44の水位が中水位Mid以上か否かを判定する(ステップSB4)。中水位Mid以上であるとき(ステップSB4のYES)、第1条件が満足され、タンク44の水量が十分にあり、改質水の不足のおそれがないと推定されるため、時間TM3以上の運転が可能と判断される。このため、制御部100はシステム起動許可を出力し(ステップSB6)、更に、システムを起動させる(ステップSB8)。これにより改質部22において改質反応が発生し、アノード活物質である水素を含有するアノードガスが生成される。
タンク44の水位が中水位Mid未満であるとき(ステップSB4のNO)、第1条件が満足されない。そこで、制御部100は、タンク44の水位が低水位Low以上であるか否かを判定する(ステップSB12)。タンク44の水位が低水位Low未満である場合には(ステップSB12のNO)、緩和第1条件すらも満足されず、タンク44内の水が少ないため、制御部100はシステム起動許可を出力することなく、アラーム104を発報して起動禁止処理をする(ステップSB16)。タンク44の水位が中水位Mid未満で且つ低水位Low以上である場合には(ステップSB12のYES)、緩和第1条件が満足される。そこで、制御部100は、貯湯槽70の冷水が水位A2(高水位)以上であるか否かを判定する(ステップSB14)。貯湯槽70の冷水が水位A2(高水位)以上である場合には(ステップSB14のYES)、第2条件が満足される。よって、タンク44の水位が低い場合であっても、外気温度T3の如何に関わらず、ポンプ72が駆動して貯湯槽70の冷水を貯湯通路71の往路71aに多量に供給できる。この場合、凝縮器74において貯湯通路71の水通路74wによりガス通路74gにおいて凝縮される凝縮水の生成量が確保される。すなわち、システムが起動すれば、凝縮器74における凝縮水生成能力が確保されると判定される。このため、タンク44の水位が中水位Mid未満で且つ低水位Low以上であるにも拘わらず、つまり、タンク44の水量が少ないにも拘わらず、制御部100は、時間TM3以上の発電可能と判断し、システムの起動許可を出力し(ステップSB6)、更に、システムを起動させる(ステップSB8)。貯湯槽70の冷水が水位A2(高水位)未満である場合には(ステップSB14のNO)、緩和第1条件が満足されるものの第2条件が満足されないため、制御部100は、システム起動許可を出力することなく、ステップSB2に戻る。
(実施形態7)
図6は実施形態7を示す。本実施形態は前記した前記した各実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1および図2を準用する。本実施形態においても、システムは水自立タイプである。システムを起動させるにあたり、タンク44に溜められている水が中水位Mid以上であるという第1条件が満足されると、制御部100はシステムに起動許可を与える。但し、タンク44に溜められている水が中水位Mid未満であり、第1条件が満足されないであっても、第3条件が満足されると、制御部100はシステムに起動許可を与える。
図6に示すフローチャートは、システムが待機しているとき、周期的に実行される。まず、システムを起動させて発電運転させる起動運転指示があるか否かを判定する(ステップSC2)。システムの起動運転指示は、学習制御,タイマー運転,ユーザーによる起動スイッチ102の操作等によりシステムに発信される。起動運転指示がない場合には(ステップSC2のNO)、システムの待機は継続される(ステップSC10)。システムの起動運転指示があるとき(ステップSC2のYES)、制御部100は、まず、タンク44の水位が中水位Mid以上か否かを判定する(ステップSC4)。中水位Mid以上であるとき(ステップSC4のYES)、第1条件が満足され、タンク44の水量が充分にあり、時間TM3以上の運転が可能と判断される。このため、制御部100はシステム起動許可を出力し(ステップSC6)、更に、システムを起動させる(ステップSC8)。タンク44の水位が中水位Mid未満であるとき(ステップSC4のNO)、第1条件が満足されない。そこで制御部100は、タンク44の水位が低水位Low以上であるか否かを判定する(ステップSC12)。タンク44の水位が低水位Low未満である場合には(ステップSC12のNO)、緩和第1条件すら満足されず、タンク44内の水が少ないため、制御部100はシステム起動許可を出力することなく、アラーム104を発報して起動禁止処理をする(ステップSC16)。タンク44の水位が中水位Mid未満で且つ低水位Low以上ある場合には(ステップSC12のYES)、緩和第1条件が満足される。そこで制御部100は、外気温度T3が閾値T3−a以下であるか否かを判定する(ステップSC14)。外気温度T3が閾値T3−a以下と低い場合には(ステップSC14のYES)、第3条件が満足されるため、タンク44の水位が低い場合であっても、ラジエータ装置79が往路71aの水を効果的に冷却でき、凝縮器74において凝縮する凝縮水の生成量を確保でき、タンク44の水位を高めることができる。すなわち、システムが起動すれば、凝縮器74における凝縮水生成能力が確保されると判定される。このため、タンク44の水位が低水位Low以上であれば、中水位Mid未満と低いにも拘わらず、つまり、タンク44の水量が少ないにも拘わらず、制御部100は、時間TM3以上の発電可能と判断し、システムの起動許可を出力し(ステップSC6)、更に、システムを起動させる(ステップSC8)。外気温度T3が閾値T3−aよりも高温である場合には(ステップSC14のNO)、制御部100は、システム起動許可を出力することなく、ステップSC2に戻る。ステップSC14おける閾値は、閾値T3−aではなく、閾値T3−bとしても良い。
(実施形態8)
本実施形態は前記した各実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図6を準用する。システムは水自立タイプである。貯湯通路71の往路71aの水の温度T1もしくは排気通路75の排気ガス温度T2に基づいて、ラジエータ装置79の冷却ファン79cはON,OFF制御され、貯湯通路71の往路71aの水を冷却する。例えば、T1≧38℃で冷却ファン79cはONされ、T1≦40℃で冷却ファン79cはOFFとされる。もしくは、排気ガス温度T2≧43℃で冷却フアン79cはONとされ,排気ガス温度T2≦45℃で冷却ファン79cはOFFとされる。
凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量は、排気ガスの飽和水蒸気曲線に基づき排気ガスの温度T2で決定される。排気ガスの温度T2は貯湯通路71の往路71aの水の温度T1に基づいて決定される。このため凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量は、貯湯通路71の水の温度T1,排気ガスの温度T2で制御可能である。応答性を考えると、ラジエータ装置79の冷却能力が早期に現れる貯湯通路71の水の温度T1で制御した方が好ましい。タンク44の水位センサに基づく制御を下記に記す。通常時には、タンク44の水位は高水位Highとオーバフロー水位overとの間になるようにシステムが運転される。貯湯槽70が温水で満水ではない場合には、貯湯槽70の底部付近には低温の水が存在する。この低温の水が凝縮器74の水通路74wに供給される。排気通路75の排気ガスの温度T2を凝縮器74のガス通路74gにおいて42〜45℃以下まで冷却できれば、凝縮器74において凝縮する凝縮水の生成量が増加し、ひいてはタンク44に溜められる改質水の量が増加する。このため、システムにおける改質水の収支がプラスとなり、水道水等の補給水を改質水としてシステムに長期にわたり補給せずとも良く、システムは水自立可能となる。ここで、凝縮器74におけるガス通路74gの排気ガスと水通路74wの水との温度差を2℃と仮定すると、貯湯通路71の水が40〜43℃以下の温度域になるように、ラジエータ装置79により貯湯通路71のうち凝縮器74の水通路74wの入口温度を冷却できれば、システムは水自立が可能である。タンク44の水位が高水位Highとオーバフロー水位overとの間に存在する場合には、タンク44に溜められている水量は、システムの定格運転が継続したとしても、充分である。このため、制御部100は、電力負荷504が消費する消費電力の大きさに基づき燃料電池1の発電電力を制御することができる。ここで定格とは、システムに対して指定された条件の下でも製造者が保証する使用上の限界を意味する。
これに対して、貯湯槽70が温水で満水状態であり、かつ、外気温度が高い場合(例えば夏季の猛暑日または熱帯地方等)においては、貯湯通路71の往路71a(凝縮器74の入口側)の水の温度T1が高くなるため、凝縮器74における冷却能が不足し、ひいては凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が不足するおそれがある。このように外気温度が高い場合には、ラジエータ装置79により貯湯通路71の往路71aの水を冷却しても、水の温度T1は40〜43℃を高温側に超える温度域となる。このため、仮に定格発電運転を継続させると、凝縮器74における冷却能が不足し、凝縮器74において生成される凝縮水の生成量が不足となる。この場合、タンク44の水位が低下するおそれがある。そこで、制御部100は、高水位センサ301がOFFである(水がない)ことを検知した場合には、電力負荷504が消費する消費電力の大小に関わらず、制御部100は、システムの最高発電電力をW1(定格電力Wset未満)となるように出力制限をかける。一般的には、発電電力が低い方が、改質燃料量を低減、ひいては改質水量を低減できタンク44の水位の低下を抑制できるとともに、冷却装置の熱負荷を低減することでT1温度の低下、ひいては凝縮器74の凝縮能力の向上により凝縮水の増大を図ることができる。上記により、タンク44内に溜められている改質水の水量の減少を抑制することが可能となる。
ところで、タンク44のうち高水位High以上でオーバフロー水位over以下に溜められる水のタンク容量をH1(図2参照)とする。タンク44のうちこれの高水位High未満で且つ中水位Mid以上に溜められる水のタンク容量をH2(図2参照)とする。
タンク容量H1,H2の決定について以下に説明を加える。図7の特性線WAは、ある年の夏季の特定の基準日において実際に測定した気温変化を示す。この基準日は、凝縮水の生成にとって1年間におけるほぼ最悪条件となるように、システムが設置される所定国(日本国)における年間最高気温を示した猛暑日を示す。図7の特性線WAに示すように、昼間において、7時(午前7時)から15時(午後3時)にかけて外気温度が上昇している。2時(午前2時)から7時(午前7時)には、外気温度が相対的に低い。20時(午後8時)から24時(午前0時)には、外気温度が相対的に低い。外気温度が高い場合には、凝縮器74における凝縮が制限され、凝縮器74において生成される凝縮水の生成量が低下し、タンク44の水位が低下する傾向がある。このため、タンク44のタンク容量H1,H2の決定にあたり、凝縮水の生成量の減少が激しい年間最高気温を示す猛暑日を基準とする。よって猛暑日を基準日として設定している。
図8は、ラジエータ装置79で貯湯通路71の水を冷却しつつ、燃料電池1の発電電力W1にて、1日中発電運転を継続させている状態におけるタンク44の水収支のシミレーション結果を示す。この場合、外気温度に対して+4℃まで、ラジエータ装置79の能力,凝縮器74の能力で排気ガスを冷却可能であった場合においての規定時間(1分当り)の水収支を示す。図8の横軸は時間を示し、縦軸はタンク44の水収支(相対表示)を示す。ここで、昼間には外気温度が上昇しているため、図8の特性線WBに示すように、凝縮器74において凝縮される生成水量が低下し、9時(午前9時)〜19時(午後7時)にかけて、外気温度の影響を受けて水収支がマイナスとなる。しかし夜間には、外気温度が低下しているため、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が増加し、図7および図8の特性線WBに示すように、水収支がプラスとなる。
図9および図10の特性線WCは、上記した基準日における一日あたりのタンク44における水収支のシミレーション結果を示す。この場合、燃料電池1は連続して発電しており、その発電出力はW1である。図9の横軸は時間を示し、縦軸はタンク44の水収支(相対表示)を示す。各時間での累積をみていくと、1日運転において水収支がゼロとなるように、基準日における所定の基準時刻(図9および図10では24時=午前0時)を設定し、この基準時刻(24時)におけるタンク44の水の貯留量を相対0値と相対表示する。
図9及び図10の特性線WCによれば、タンク44に貯留される水貯留量は、基準日の一日における気温の変化に応じてプラス側およびマイナス側に交互に曲線(例えばサインカーブ)状に変化する。すなわち、特性線WCによれば、1時から8時にかけて水収支プラスが維持されつつ、水は増加し続けている。更に、9時から14時にかけて、水収支プラスはプラスが維持されつつも水は減少し続ける。14時から18時にかけて、水収支マイナスが維持されつつ、水は減少し続ける。19時〜24時にかけて、水収支マイナスが維持されつつ、水は増加し続ける。ここで、基準日(猛暑日)における気温に応じて変化するタンク44における改質水貯留量について、相対0値に対する最高ピーク値をVmaxとする。また、改質水貯留量の相対0値に対する最小ピーク値をVminとする。
本実施形態によれば、タンク44のうちこれの高水位High以上でオーバフロー水位over以下に改質水を貯留可能なタンク容量をH1とすると、タンク容量H1は、凝縮水の生成量が低下するため、タンク44の水枯れが発生する傾向がある猛暑日における最高ピーク値Vmaxに基づいて設定されている。具体的には、タンク容量H1は、最高ピーク値Vmaxと第1マージン容量Vαとの合計和に基づいて設定されている。第1マージン容量Vαは、安全率を考慮したタンク44における余裕水量を意味し、システムの種類、システムの設置環境等に応じて適宜設定される。VmaxおよびVαの量が同一単位であれば、Vmax>Vαとすることができる。
また、タンク44のうちこれの高水位High未満で且つ中水位Mmid以上に改質水を貯留可能なタンク容量をH2とすると、タンク容量H2は、凝縮水の生成量が低下する傾向がある猛暑日における最小ピーク値Vminに基づいて設定されている。具体的には、タンク容量H2は、最小ピーク値Vminと第2マージン容量Vβとの合計和に基づいて設定されている。第2マージン容量Vβは、安全率を考慮したタンク44における余裕水量を意味し、システム、システムの設置環境等に応じて適宜設定される。VminおよびVβの量が同一単位であれば、Vmin>Vβとすることができる。なおVα=Vβ,Vα>Vβ、Vα<Vβにできる。Vα>Vβであれば、高水位High以上の水量を増加できる利点があり、出力制限を抑制できる。なおVα=Vβ≒0でも良い。
このような本実施形態によれば、タンク44の容量の大型化を抑えつつ、システムの水自立が可能であり、水道水等の補給水を改質水としてシステムに長期にわたり補給せずともよいことが理解できる。つまり、図10の特性線WCによれば、0時〜14時(午後2時)までは、余剰の凝縮水をタンク44に貯蓄することができる。これに対して14時(午後2時)〜24時(午前0時)では、タンク44の水位が低下するが、14時〜24時までのほぼ10時間相当分における不足水の容量は、タンク容量H2として、タンク44に確保することができる。従って、タンク1における貯留水量が低下しつつも、システムを発電停止させることなく、燃料電池1を継続的に発電運転させることが可能となる。本実施形態によれば、上記観点に基づき、タンク44のタンク容量H1,タンク容量H2は決定されている。上記したようにタンク44のタンク容量H1,H2が決定されている。このため、凝縮水の生成量が低下する猛暑日であっても、タンク44は水不足になることはない。
しかしながら想定外の環境状態、貯湯ポンプ72の故障等で、凝縮器74が冷却されない場合等には、異常等の諸要因によりタンク44の水位が更に低下するおそれがある。そこで、中水位センサ302がOFF(水がない)である検出した場合には、制御部100はシステムを発電モードから発電停止モード゛に移行する。発電停止モードは、システムが正常に停止するときにおける発電停止手段である。
発電停止モードについて、次のI〜IIIにおいて説明を加える。
I.発電停止指示により、制御部100は、ポンプ55,42の出力を低下させ、改質器2に供給される燃料原料および改質水を最低流量とさせる。更に、制御部100は、カソードガスポンプ62の出力を増加させてカソードガスを増加させる。これにより、燃焼用空間23における燃焼炎24の燃焼を継続しながら、発電モジュール3の内部を冷却させる。この場合、改質器2もしくは燃料電池1の温度が既定温度Tc以下になるまで、燃料電池1のアノード等のアノード系を還元雰囲気にするため、燃料原料および改質水を改質器2に供給させ、還元性をもつ水素含有ガスを生成させながら、発電モジュール3を冷却させる。
II.改質器2もしくは燃料電池1の温度が既定温度Tc以下に低下したら、ポンプ55,42を停止させ、燃料原料および改質水を改質器2に供給させる操作を遮断させる。この場合、発電モジュール3の発電室32に残留している水素をカソードガスで排気通路75に排出させてパージさせる。
III.改質器2もしくは燃料電池1の温度がIIより低い既定温度Te以下に冷却されたら、システムを完全停止させ、システムの補機類(例えばバルブやポンプ)も完全停止させる。
さて、タンク44のうち中水位Mid未満で且つ低水位Low以上のタンク容量をH3とする。タンク容量H3の設定方法について説明する。すなわち、図1011はシステムの発電停止モードにおけるタンク44の水収支例を示す。発電停止モードでは、前述したように、改質器2に供給される燃料原料の燃焼量および改質水量が少ないのに対し、発電モジュール3の内部を冷却させるため発電モジュール3内に供給されるカソードガス量が多くなる。このため、排気通路75を流れる排気ガスに含まれる水蒸気分率が低くなるため、排気ガスの温度が10℃以下に冷却されないと、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が不足することになる。しかし実際には、排気ガスの温度を10℃以下に冷却することは困難であるため、発電停止モードでは、最悪の場合には改質水がVshortageぶん不足するおそれがある。そこで、タンク44のうち、中水位Mid未満で且つ低水位Low以上のタンク容量H3については、発電停止モード゛で不足する不足値Vshortageと、次回の起動で必要な分の水量Vstartとを確保することが好ましい。ここで、図12は起動モード゛における水収支を示すが、発電運転時とほぼ同等の水収支特性を示すため、図12の特性に拘わらず、水量Vstartとしては実質的に50〜100cc程度であれば良いと考えられる。タンク44の中水位Midが検知されると、システムは発電モードから発電停止モードに移行する。同様に、予想外の諸要因等にて、タンク44の水位が更に低下し、水位が低水位Low未満となった場合には、制御部100は緊急停止を行う。ここで、緊急停止とは、改質水を改質器2に供給を停止することを前提とした停止方法であり、更に改質器2に収容されている改質触媒および燃料電池が劣化しないように、燃料原料等を改質器に供給することも止める。貯湯水,換気空気等のように、発電と直接的に関係なき部位は稼動してもよいし、あるいは、全補機を停止しても良い。これにより、タンク44の改質水が完全になくなった場合において、改質器2に供給する改質水が不足して改質触媒および燃料電池1が劣化することが抑止され、改質器2および燃料電池1の劣化が抑止される。この場合には、制御部100は、異常であると判定し、貯湯ポンプ72の点検等をメンテナンスするとともに、改質水の補給を実施する。
以上説明したように本実施形態においても、前記した実施形態と同様に、タンク44の水位が高水位High以上であることがセンサ301,302により検知されるとき、制御部100は、電力負荷504の大きさに応じて燃料電池1の発電出力を制御する。タンク44の水位が高水位High未満であることをセンサにより検知されるとき、制御部100は、電力負荷504の大きさに拘わらず、燃料電池1の発電出力をこれの定格電力未満に出力制限することにより、タンク44の改質水の減少を抑制させる。これによりシステムの水自立運転を実行することができる。すなわち、一連の制御、およびタンク44の構成により、新しい水を改質水としてシステムに補給することなく、水自立の発電運転が可能となる。タンク44の改質水の水位が過剰に低下する場合のような異常時には、改質器2および燃料電池1が劣化するに至る前にシステム停止することが可能となる。純水は高い電気絶縁性をもつ。改質水の品質が劣化すれば、水の電気伝導率が高くなる。このため、低水位センサ303として導電率計を用いた場合には、水精製器40のイオン交換樹脂の劣化、水精製能力の劣化、燃料電池の劣化等に起因してタンク44の水質が悪化(つまり、導電率が上昇)していることが、水の導電率の異常として検知が可能となる。殊に、低水位センサ303はタンク44に設けられている水位センサのうち最も下方に配置されている。このため、タンク44の水位の変動に拘わらず、タンク44に溜められている水の品質を検知できる効果が得られる。
(他の実施形態)
(1)第2条件のみが成立するときでも起動許可。
タンク44の水量が緩和第1条件を満足しなくても、仮にタンク44の水量がほとんど存在しなくても、燃料原料とカソードガスを供給し燃焼空間で燃焼させた燃焼排気ガスを凝縮器74により凝縮水としてタンク44に回収し、タンク44の水量がある程度確保できたら改質水の供給を開始すれば起動できる。ただし緩和第1条件を満足したときに起動許可する方が改質器2内におけるコーキングを低減できるため好ましい。
(2)第3条件のみ成立するときでも起動許可。
説明は上記と同じである。
(3)改質水タンク4の水量、貯湯槽70のうち第1所定温度以下の水の量に基づいて起動許可される。決められた所定水位、所定量によって起動許可判断するのではなく、改質水タンク44の水量、貯湯槽70のうち第1所定温度以下の水の量を用いてシステム起動後の改質水の水量の収支を演算し、時間TM3以上の発電が可能な条件が成立する場合に起動許可する。この場合には、貯湯水の冷水温度も演算ファクターに加えてもよい。また学習制御により起動する場合には、運転計画を考慮して演算することが好ましい。あらかじめ装置の性能ファクターなどを考慮して、改質水タンク44の水量、貯湯槽70のうち第1所定温度以下の水の量と起動許可との関係を決めたマップを使用して起動許可判断しても良い。なお、貯湯槽70の冷水の水量は、温度センサ70tの中間にあっても複数の温度センサ70tの値を使用して演算することにより算出できる。また改質水タンク44の水量は、例えば、タンク44の底に設けた圧力センサで検出した圧力から算出できる。
(4)制御部100は、改質水タンク44の水量、貯湯槽70のうち第1所定温度以下の水の量、外気の温度に基づいて起動許可する。この場合、決められた所定水位、所定量、所定温度によって起動許可判断するではなく、制御部100は、改質水タンク44の水量、貯湯槽70のうち第1所定温度以下の水の量、外気の温度を用いてシステム起動後の改質水の水量の収支を演算し、時間TM3以上の発電が可能な条件が成立する場合に起動許可する。この場合、貯湯水の冷水温度も演算ファクターに加えてもよい。学習制御により起動する場合には、運転計画を考慮して演算する。あらかじめ装置の性能ファクターなどを考慮して、改質水タンク44の水量、貯湯槽70のうち第1所定温度以下の水の量、外気の温度と起動許可との関係を決めたマップを使用して起動許可判断しても良い。
(適用形態)
図13は適用形態の一例を示す。本形態は前記した実施形態と同様な構成および作用効果を示すため、他の図を準用できる。図13に示すように、複数の燃料電池1は、カソードガスが供給される通路32rを介して並設されてスタックを形成している。燃料電池1同士は図略の集電体により電気的に接続されている。燃料電池1は、アノードガスが流れる通路11rをもつ多孔質導電部11wと、燃料極として機能するアノード11と、カソードガスが供給される通路32rに対面する酸化剤極として機能するカソード12と、アノード11およびカソード12で挟まれた固体酸化物を母材とする電解質膜15と、緻密質のコネクタ10xとを有する。固体酸化物は、酸素イオン(O2−)を伝導させる性質性をもつものであり、YSZ等のジルコニア系、ランタンガレート系が例示される。アノード11は、ニッケル−セリア系サーメットが例示される。カソード12は、サマリウムコバルタイト、ランタンマンガナイトが例示される。材質は上記に限定されるものではない。なお、燃料電池1の下部には、アノードガスを燃料電池1の入口に案内するアノードガスマニホルド13が配置されている。
(その他)
上記した実施形態によれば、タンク44には高水位センサ301、中水位センサ302、低水位センサ303が設けられているが、単一のセンサで高水位、中水位、低水位を検知することにしても良い。高水位センサ301、中水位センサ302、低水位センサ303が設けられているが、高水位センサ301および中水位センサ302だけでも良い。要するにタンク44における複数段階の水位を検知できれば良い。凝縮器74で生成された凝縮水を、水精製機能をもつ水精製器40に溜めて精製させた後にタンク44に貯留させているが、これに限らず、凝縮器74で生成された凝縮水をタンク44に貯留させた後、水精製器40から改質器2に向けて搬送させても良い。
上記した実施形態は、水自立タイプのシステムに適用しているが、これに限らず、水道水等の補給水を水精製器40またはタンク44に補給する水補給タイプのシステムに適用しても良い。上記した実施形態は固体酸化物形の燃料電池システムに適用しているが、これに限らず、アノードガス、アノードオフガス、カソードオフガスのうちの1種または2種以上の水蒸気含有ガスを凝縮させて凝縮水を生成させる凝縮器を有する燃料電池システムであれば良く、固体高分子形、溶融炭酸塩形またはリン酸形の燃料電池システムに適用することもできる。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
上記した記載から次の技術的思想も把握できる。
[付記項1]改質水で燃料原料を改質させてアノードガスを生成させる改質器と、アノードガスおよびカソードガスにより発電する燃料電池と、システムの排熱で加熱された温水を貯留する貯湯槽と、システムの運転に伴い発生する水蒸気含有ガスを冷却させて凝縮水を生成させる凝縮器と、貯湯槽の水を凝縮器に冷却水として供給する貯湯通路と、貯湯槽の水を貯湯通路に冷却水として供給して凝縮器の水蒸気含有ガスを冷却させる貯湯水搬送源と、凝縮器で生成された凝縮水を回収して液相状の改質水として溜める改質水タンクと、改質水タンクに溜められている改質水を改質器に供給する改質水搬送源とを具備する燃料電池システム。改質水タンクに溜められている改質水を改質器に供給することができる。
[付記項2]付記項1において、制御部はシステムを起動させるにあたり、貯湯槽のうち所定温度以下の水量が所定量以上であるという条件が満足されるとき、システムを起動許可させる信号を出力する燃料電池システム。
[付記項3]付記項1または2において、制御部はシステムを起動させるにあたり、外気温度が所定温度以下であるという条件が満足されるとき、システムを起動許可させる信号を出力する燃料電池システム。
[付記項4]付記項1〜3において、制御部はシステムを起動させるにあたり、改質水タンクの水位が所定水位(例えば中水位Mid等の第2水位)以上であるという条件が満足されるとき、システムを起動許可させる信号を出力する燃料電池システム。
[付記項5]付記項1〜4において、制御部はシステムを発電運転しているとき、改質水タンクの水位が所定水位(例えば高水位High等の第1水位)未満のとき、システムの最高発電出力を定格電力未満のW1に制限させ、改質水タンクの水位が所定水位(例えば高水位High等の第1水位)以上のとき、システムの最高発電出力を定格電力未満のW1に制限させない燃料電池システム。