JP5609758B2 - ハイブリッド車 - Google Patents
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Description
本発明は、ハイブリッド車に関し、詳しくは、内燃機関と、走行用の電動機と、電動機からの出力が要求される電動機要求トルクと車両の振動を抑制するための制振トルクとの和のトルクが電動機から出力されるよう電動機を制御する電動機制御手段と、を備えるハイブリッド車に関する。
従来、この種のハイブリッド車としては、エンジンと、エンジンのクランクシャフトにキャリアが接続されると共に駆動輪にデファレンシャルギヤやギヤ機構を介して連結された駆動軸にリングギヤが接続された動力分配機構と、動力分配機構のサンギヤに接続されたモータMG1と、駆動軸に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2と電力をやりとりするバッテリとを備えるものにおいて、モータMG2の回転角加速度にて車両の駆動力変動を検出して、検出した駆動力変動や主要な変動周波数成分の変動トルクを相殺するために、モータMG2制振のための制御ゲインを用いてモータMG2のトルク指令値を補正してモータMG2を駆動制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車では、こうした制御により、車両に生じる駆動力変動を低減している。そして、このモータMG2制振のための制御ゲインをエンジン始動動作または停止動作の都度、学習して更新することにより、車両の振動特性の経年変化や個体毎の振動特性のばらつきに対応できるようにしている。
上述のハイブリッド車では、エンジンの始動時や停止時には着目しているものの、それ以外のとき、例えば、アクセルオフされたときなどに一時的にエンジンへの燃料カットを行なうときや、その燃料カットからエンジンへの燃料噴射を復帰するときなどについては何ら考慮されていない。また、こうしたハイブリッド車では、制振ゲインを大きくして制振トルクを大きくすると、車両の振動を十分に抑制可能となる反面、車速によっては車両の共振による異音が大きくなりやすい場合がある。したがって、状況に応じて車両の振動や異音をより適正に抑制できるようにすることが望まれる。
本発明のハイブリッド車は、状況に応じて車両の振動や異音をより適正に抑制できるようにすることを主目的とする。
本発明のハイブリッド車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明のハイブリッド車は、
内燃機関と、走行用の電動機と、前記電動機からの出力が要求される電動機要求トルクと車両の振動を抑制するための制振トルクとの和のトルクが前記電動機から出力されるよう該電動機を制御する電動機制御手段と、を備えるハイブリッド車において、
前記電動機制御手段は、前記内燃機関を始動する際には第1の制御ゲインを用いて前記制振トルクを設定し、前記内燃機関を停止する際には前記第1の制御ゲインより小さな第2の制御ゲインを用いて前記制振トルクを設定し、前記内燃機関への燃料カットを行なう際には前記第1の制御ゲインより小さく前記第2の制御ゲイン以上の第3の制御ゲインを用いて前記制振トルクを設定し、燃料カットを行なっている前記内燃機関への燃料噴射を復帰する際には前記第1の制御ゲインより小さく前記第2の制御ゲイン以上の第4の制御ゲインを用いて前記制振トルクを設定する手段である、
ことを特徴とする。
内燃機関と、走行用の電動機と、前記電動機からの出力が要求される電動機要求トルクと車両の振動を抑制するための制振トルクとの和のトルクが前記電動機から出力されるよう該電動機を制御する電動機制御手段と、を備えるハイブリッド車において、
前記電動機制御手段は、前記内燃機関を始動する際には第1の制御ゲインを用いて前記制振トルクを設定し、前記内燃機関を停止する際には前記第1の制御ゲインより小さな第2の制御ゲインを用いて前記制振トルクを設定し、前記内燃機関への燃料カットを行なう際には前記第1の制御ゲインより小さく前記第2の制御ゲイン以上の第3の制御ゲインを用いて前記制振トルクを設定し、燃料カットを行なっている前記内燃機関への燃料噴射を復帰する際には前記第1の制御ゲインより小さく前記第2の制御ゲイン以上の第4の制御ゲインを用いて前記制振トルクを設定する手段である、
ことを特徴とする。
この本発明のハイブリッド車では、内燃機関を始動する際には第1の制御ゲインを用いて車両の振動を抑制するための制振トルクを設定し、内燃機関を停止する際には第1の制御ゲインより小さな第2の制御ゲインを用いて制振トルクを設定し、内燃機関への燃料カットを行なう際には第1の制御ゲインより小さく第2の制御ゲイン以上の第3の制御ゲインを用いて制振トルクを設定し、燃料カットを行なっている内燃機関への燃料噴射を復帰する際には第1の制御ゲインより小さく第2の制御ゲイン以上の第4の制御ゲインを用いて制振トルクを設定し、電動機からの出力が要求される電動機要求トルクと制振トルクとの和のトルクが電動機から出力されるよう電動機を制御する。内燃機関を始動する際には、通常、内燃機関を停止する際や内燃機関への燃料カットを行なう際,燃料カットを行なっている内燃機関への燃料噴射を復帰する際に比して車両に生じる振動が大きくなりすい。一方、内燃機関を停止する際や内燃機関への燃料カットを行なう際,燃料カットを行なっている内燃機関への燃料噴射を復帰する際には、通常、内燃機関を始動する際に比して運転者が異音を感じやすい。したがって、内燃機関を始動する際には、比較的大きな第1の制御ゲインを用いて制振トルクを設定して電動機の制御に用いることにより、車両の振動をより抑制することができ、内燃機関を停止する際や内燃機関への燃料カットを行なう際,燃料カットを行なっている内燃機関への燃料噴射を復帰する際には、第1の制御ゲインより小さな第2〜第4の制御ゲインを用いて制振トルクを設定して電動機の制御に用いることにより、車両の振動の抑制と異音の抑制との両立を図ることができる。即ち、状況に応じて車両の振動や異音をより適正に抑制することができる。
こうした本発明のハイブリッド車において、前記第4の制御ゲインは、前記第3の制御ゲインより大きな制御ゲインである、ものとすることもできる。これは、燃料カットを行なっている内燃機関への燃料噴射を復帰する際には、内燃機関への燃料カットを行なう際に比して車両に生じる振動が大きくなりやすい、という理由に基づく。
また、本発明のハイブリッド車において、前記電動機制御手段は、前記内燃機関の始動完了後でも、所定時間が経過するまでは前記第1の制御ゲインを用いて前記制振トルクを設定する手段である、ものとすることもできる。
さらに、本発明のハイブリッド車において、動力を入出力可能な発電機と、前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸と車軸に連結された駆動軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、を備えるものとすることできる。
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料とするエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22のクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動輪38a,38bにデファレンシャルギヤ37を介して連結された駆動軸36にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸36に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、インバータ41,42を制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40と、インバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力をやりとりするバッテリ50と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52と、車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以下、HVECUという)70と、を備える。
エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号、例えば、クランクシャフトの回転位置を検出するクランクポジションセンサからのクランクポジションθcrやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサからの冷却水温Tw,燃焼室内に取り付けられた圧力センサからの筒内圧力Pin,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブや排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサからのカムポジションθca,スロットルバルブのポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサからのスロットルポジションSP,吸気管に取り付けられたエアフローメータからの吸入空気量Qa,同じく吸気管に取り付けられた温度センサからの吸気温Ta,排気系に取り付けられた空燃比センサからの空燃比AF,同じく排気系に取り付けられた酸素センサからの酸素信号O2などが入力ポートを介して入力されており、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁への駆動信号やスロットルバルブのポジションを調節するスロットルモータへの駆動信号,イグナイタと一体化されたイグニッションコイルへの制御信号,吸気バルブの開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、エンジンECU24は、HVECU70と通信しており、HVECU70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。なお、エンジンECU24は、クランクシャフトに取り付けられた図示しないクランクポジションセンサからの信号に基づいてクランクシャフトの回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの回転位置θm1,θm2や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力ポートを介して入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、モータECU40は、HVECU70と通信しており、HVECU70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の回転角速度ωm1,ωm2や回転数Nm1,Nm2を演算したり、モータMG2の回転角速度ωm2に基づいてモータMG2の回転軸に換算した駆動輪38a,38bの回転角速度としての駆動輪回転角速度ωbを演算したりしている。実施例では、駆動輪回転角速度ωbは、モータMG2から駆動輪38a,38bの間の特性に限定することにより得られる2慣性系の制御系設計モデルに対して制御サンプル時間で0次ホールドを用いて離散化したモデルを用いて演算するものとした。
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧Vbやバッテリ50の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流Ib,バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりHVECU70に送信する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいてそのときのバッテリ50から放電可能な電力の容量の全容量に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算したりしている。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。HVECU70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号やシフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。HVECU70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸36に出力すべき要求トルクTr*を計算し、この要求トルクTr*に対応する要求動力が駆動軸36に出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されて駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや、要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力が駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード,エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力を駆動軸36に出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードと充放電運転モードとは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力が駆動軸36に出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するモードであり、実質的な制御における差異はないため、以下、両者を合わせてエンジン運転モードという。
エンジン運転モードでは、HVECU70は、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accと車速センサ88からの車速Vとに基づいて駆動軸36に出力すべき要求トルクTr*を設定し、設定した要求トルクTr*に駆動軸36の回転数Nr(例えば、モータMG2の回転数Nm2や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数)を乗じて走行に要求される走行用パワーPdrv*を計算すると共に計算した走行用パワーPdrv*からバッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて得られるバッテリ50の充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じてエンジン22から出力すべきパワーとしての要求パワーPe*を設定する。そして、要求パワーPe*を効率よくエンジン22から出力することができるエンジン22の回転数NeとトルクTeとの関係としての動作ライン(例えば燃費最適動作ライン)を用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で、エンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*となるようにするための回転数フィードバック制御によってモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*を設定すると共にモータMG1をトルク指令Tm1*で駆動したときにプラネタリギヤ30を介して駆動軸36に作用するトルクを要求トルクTr*から減じてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とについてはエンジンECU24に送信し、トルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40に送信する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによってエンジン22が運転されるようエンジン22の吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などを行ない、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
モータ運転モードでは、HVECU70は、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸36に出力すべき要求トルクTr*を設定し、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定する共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸36に出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータECU40に送信する。そして、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
実施例のハイブリッド自動車20は、モータ運転モードで運転している最中に、運転者のアクセルペダル83の踏み込みによってバッテリ50からの電力だけでは走行用パワーPdrv*を賄うことができないときや、バッテリ50の蓄電割合SOCがエンジン運転モードに切り替えるために予め定められた閾値以下になったとき、その他、車両の状態がエンジン運転モードに切り替えるために予め定められた状態に至ったときに、エンジン22を始動してエンジン運転モードに移行する。エンジン22の始動は、モータMG1から比較的大きなトルクを出力してエンジン22をモータリングすると共にモータMG1からのトルクの出力によって駆動軸36に作用するトルクをモータMG2からのトルクによってキャンセルし、エンジン22の回転数Neが予め定められた制御開始回転数に至ったときに燃料噴射制御や点火制御などを開始することによって行なわれる。
また、実施例のハイブリッド自動車20は、エンジン運転モードで運転している最中に、バッテリ50の蓄電割合SOCが閾値以上で走行用パワーPdrv*をバッテリ50からの放電で賄うことができるときや、運転者により図示しないモータ走行スイッチが押されたとき、その他、車両の状態がモータ運転モードに切り替えるために予め定められた状態に至ったときに、エンジン22の運転を停止してモータ運転モードに移行する。エンジン22の運転停止は、エンジン22をアイドリング制御しながら可変バルブタイミング機構による吸気バルブの開閉タイミングが最遅角(最も遅いタイミング)に変更されるようエンジン22を制御し、可変バルブタイミング機構の吸気バルブの開閉タイミングが最遅角になると、燃料噴射と点火を停止し、次にエンジン22を始動するときに始動性が良好となるクランク角位置で停止するようモータMG1によって停止位置を調整することにより行なわれる。
次に、実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に走行中の車両の振動を抑制する際の動作について説明する。図2は、モータECU40により実行されるモータ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
モータ制御ルーチンが実行されると、モータECU40は、まず、モータMG2のトルク指令Tm2*や、モータMG2の回転角速度ωm2,モータMG2の回転軸に換算した駆動輪38a,38bの回転角速度である駆動輪回転角速度ωbなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG2のトルク指令Tm2*は、上述の駆動制御で設定されたものを入力するものとした。また、モータMG2の回転角速度ωm2や駆動輪回転角速度ωbは、回転位置検出センサ44からのモータMG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものを入力するものとした。
こうしてデータを入力すると、状況に応じて、モータMG2によって車両の振動を抑制する制振トルクを設定するのに用いる制御ゲインkvを設定する(ステップS110〜S200)。具体的には、エンジン22を始動する際には第1の値kset1を制御ゲインkvに設定し(ステップS110,S160)、エンジン22を停止する際には第1の値kset1より小さな第2の値kset2を制御ゲインkvに設定し(ステップS130,S170)、エンジン22への燃料カットを行なう際には第1の値kset1より小さく第2の値kset2と同一またはそれより若干大きな第3の値kset3を制御ゲインkvに設定し(ステップS140,S180)、燃料カットを行なっているエンジン22への燃料噴射を復帰する際には第1の値kset1より小さく第3の値kset3より大きな第4の値kset4を制御ゲインkvに設定し(ステップS150,S190)、これら以外のとき、即ち、エンジン22を始動する際でもなく、エンジン22を停止する際でもなく、エンジン22への燃料カットを行なう際でもなく、燃料カットを行なっているエンジン22への燃料噴射を復帰する際でもないときには、第1の値kset1より小さな第5の値kset5を制御ゲインkvに設定する(ステップS200)。このように制御ゲインkvを設定する理由については後述する。なお、実施例では、エンジン22を停止する際とエンジン22への燃料カットを行なう際とについては、エンジン22への燃料カットを行なってエンジン22の回転数Neが所定回転数Nref(例えば、1000rpmや1200rpmなど)近傍から値0まで低下する場合にはエンジン22を停止する際と判断し、走行中にアクセルペダル83がオフとされるなどしてエンジン22の回転数Neが所定回転数Nrefより高い状態でエンジン22への燃料カットを行なう場合についてはエンジン22への燃料カットを行なう際と判断するものとした。
こうして制御ゲインkvを設定すると、次式(1)により駆動輪回転角速度ωbとモータMG2の回転角速度ωm2との差に制御ゲインkvを乗じることによって制振トルクTvの仮の値としての仮制振トルクTvtmpを設定し(ステップS210)、次式(2)に示すように仮制振トルクTvtmpの大きさ(正側および負側の大きさ)を制限トルクTlimによって制限することにより制振トルクTvを設定し(ステップS220)、モータMG2のトルク指令Tm2*と制振トルクTvとの和をモータMG2の実行用トルクT2*として設定し(ステップS230)、設定した実行用トルクT2*がモータMG2から出力されるようインバータ42の図示しないスイッチング素子のスイッチング制御を行なうことによってモータMG2を駆動制御して(ステップS240)、本ルーチンを終了する。ここで、制限トルクTlimは、車両の振動を抑制することができる程度で且つモータMG2から出力する実行トルクT2*がバッテリ50の入出力制限Win,Woutを超えない程度に制振トルクTvの大きさを制限するために設定されたものであり、実験などにより定めることができる。
Tvtmp=kv・(ωb-ωm2) (1)
Tv=max(min(Tvtmp,Tlim),-Tlim) (2)
Tv=max(min(Tvtmp,Tlim),-Tlim) (2)
ここで、エンジン22を始動する際や停止する際,エンジン22への燃料カットを行なう際,燃料カットを行なっているエンジン22への燃料噴射を復帰する際,これら以外のときに応じて制御ゲインkvを設定する理由について説明する。一般に、車両に生じる振動は、エンジン22を始動する際に大きくなりやすく、燃料カットを行なっているエンジン22への燃料噴射を復帰する際にはエンジン22を始動する際ほどではないもののある程度大きくなりやすく、エンジン22を停止する際やエンジン22への燃料カットを行なう際にはエンジン22を始動する際やエンジン22への燃料噴射を復帰する際に比して大きくなりにくい。これは、エンジン22を始動する際には、モータMG1からのエンジン22をモータリングするための比較的大きなトルクの出力やエンジン22での初爆などによって車両に比較的大きな振動が生じやすく、エンジン22への燃料噴射を復帰する際には、エンジン22での爆発燃焼の復帰時に車両にある程度の振動が生じやすいという理由に基づく。また、こうした車両では、制御ゲインkvに大きな値を設定するほど制振トルクTvが大きくなる傾向があり、制振トルクTvが大きいほど車両の振動を十分に抑制可能となるものの、制振トルクTvに起因するモータMG2のトルク変動(回転数Nm2の変動)の周波数と車両の共振の周波数とが略一致するような車速V(モータMG2の回転数Nm2)では、制振トルクTvが大きいほど異音が大きくなりやすい。実施例では、これらを踏まえて、エンジン22を始動する際には、車両の振動を抑制するために、比較的大きな第1の値kset1を制御ゲインkvに設定するものとした。また、エンジン22を停止する際や、エンジン22への燃料カットを行なう際には、車両にそれほど大きな振動が生じにくいことを考慮して、異音を抑制するために、第1の値kset1より小さな第2の値kset2や第3の値kset3を制御ゲインkvに設定するものとした。さらに、燃料カットを行なっているエンジン22への燃料噴射を復帰する際には、車両の振動の抑制と異音の抑制との両立を図るために、第1の値kset1より小さく第3の値kset3より大きな第4の値kset4を制御ゲインkvに設定するものとした。このように、エンジン22を始動する際や停止する際,エンジン22への燃料カットを行なう際,燃料カットを行なっているエンジン22への燃料噴射を復帰する際,これら以外のときに応じて制御ゲインkvを設定すると共にこの制御ゲインkvを用いて設定した制振トルクTvとトルク指令Tm2*との和のトルクがモータMG2から出力されるようインバータ42のスイッチング素子を制御してモータMG2を駆動制御することにより、エンジン22を始動する際や停止する際にだけ制御ゲインを調整するものに比して、状況に応じて車両の振動や異音をより適正に抑制することができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、エンジン22を始動する際には第1の値kset1を制御ゲインkvに設定し、エンジン22を停止する際には第1の値kset1より小さな第2の値kset2を制御ゲインkvに設定し、エンジン22への燃料カットを行なう際には第1の値kset1より小さく第2の値kset2以上の第3の値kset3を制御ゲインkvに設定し、燃料カットを行なっているエンジン22への燃料噴射を復帰する際には第1の値kset1より小さく第2の値kset2以上の第4の値kset4を制御ゲインkvに設定し、設定した制振トルクTvとトルク指令Tm2*との和のトルクがモータMG2から出力されるようインバータ42のスイッチング素子を制御してモータMG2を駆動制御するから、状況に応じて車両の振動や異音をより適正に抑制することができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22を始動する際には第1の値kset1を制御ゲインkvに設定し、エンジン22を停止する際には第1の値kset1より小さな第2の値kset2を制御ゲインkvに設定し、エンジン22への燃料カットを行なう際には第1の値kset1より小さく第2の値kset2と同一またはそれより若干大きな第3の値kset3を制御ゲインkvに設定し、燃料カットを行なっているエンジン22への燃料噴射を復帰する際には第1の値kset1より小さく第3の値kset3より大きな第4の値kset4を制御ゲインkvに設定し、これら以外のときには第1の値kset1より小さな第5の値kset5を制御ゲインkvに設定するものとしたが、エンジン22の始動完了後でも、予め定められた時間(例えば、300msecや500msecや700msecなど)が経過するまでは第1の値kset1を制御ゲインkvに設定するものとしてもよい。また、エンジン22への燃料カットを行なっている際と、燃料カットを行なっているエンジン22への燃料噴射を復帰する際とでは、同一の値(第3の値kset3または第4の値kset4)を制御ゲインkvに設定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22を始動する際でもなく、エンジン22を停止する際でもなく、エンジン22への燃料カットを行なう際でもなく、燃料カットを行なっているエンジン22への燃料噴射を復帰する際でもないときには、第5の値kset5を制御ゲインkvに設定するものとしたが、このときにおいて、例えば、アクセル開度Accが所定開度(例えば、80%や90%など)以上のときや、駆動軸36に出力されるトルクが値0を跨いでその符号が反転するときなど、状況に応じて異なる制御ゲインを設定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、駆動輪回転角速度ωbについては、モータMG2から駆動輪63a,63bの間の特性に限定することにより得られる2慣性系の制御系設計モデルに対して制御サンプル時間で0次ホールドを用いて離散化したモデルを用いて演算するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、駆動輪38a,38bに車輪速センサを取り付けて車輪速センサからの信号に基づいて演算するものなどとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2からの動力を駆動軸36に出力するものとしたが、図3の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2からの動力を駆動軸36が接続された車軸(駆動輪38a,38bが接続された車軸)とは異なる車軸(図3における車輪39a,39bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。この場合、モータMG2の回転角速度ωm2に基づいてモータMG2の回転軸に換算した車輪39a,39bの回転角速度としての駆動輪回転角速度ωbを演算し、上述の式(1)により仮制振トルクTvtmpを計算すればよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力をプラネタリギヤ30を介して駆動輪38a,38bに接続された駆動軸36に出力するものとしたが、図4の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフトに接続されたインナーロータ232と駆動輪38a,38bに動力を出力する駆動軸36に接続されたアウターロータ234とを有しエンジン22からの動力の一部を駆動軸36に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力をプラネタリギヤ30を介して駆動輪38a,38bに接続された駆動軸36に出力すると共にモータMG2からの動力を駆動軸36に出力するものとしたが、図5の変形例のハイブリッド自動車320に例示するように、駆動輪38a,38bに接続された駆動軸36に変速機330を介してモータMGを取り付け、モータMGの回転軸にクラッチ329を介してエンジン22を接続する構成とし、エンジン22からの動力をモータMGの回転軸と変速機330とを介して駆動軸36に出力すると共にモータMGからの動力を変速機330を介して駆動軸に出力するものとしてもよい。あるいは、図6の変形例のハイブリッド自動車420に例示するように、エンジン22からの動力を変速機430を介して駆動輪38a,38bに接続された駆動軸36に出力すると共にモータMGからの動力を駆動輪38a,38bが接続された車軸とは異なる車軸(図6における車輪39a,39bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。即ち、エンジンと走行用の動力を出力する電動機とを備えるものであれば如何なるタイプのハイブリッド自動車としてもよいのである。
実施例では、本発明をハイブリッド自動車20の形態として説明したが、自動車以外の車両(例えば、列車など)の形態としてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、図2のモータ制御ルーチンを実行するモータECU40が「電動機制御手段」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、ハイブリッド車の製造産業などに利用可能である。
20,120,220,320,420 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、30 プラネタリギヤ、36 駆動軸、37 デファレンシャルギヤ、38a,38b 駆動輪、39a,39b 車輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、70 ハイブリッド用電子制御ユニット(HVECU)、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ、234 アウターロータ、329 クラッチ、330,430 変速機、MG,MG1,MG2 モータ。
Claims (2)
- 内燃機関と、走行用の電動機と、前記電動機からの出力が要求される電動機要求トルクと車両の振動を抑制するための制振トルクとの和のトルクが前記電動機から出力されるよう該電動機を制御する電動機制御手段と、を備えるハイブリッド車において、
前記電動機制御手段は、前記内燃機関を始動する際には第1の制御ゲインを用いて前記制振トルクを設定し、前記内燃機関を停止する際には前記第1の制御ゲインより小さな第2の制御ゲインを用いて前記制振トルクを設定し、前記内燃機関への燃料カットを行なう際には前記第1の制御ゲインより小さく前記第2の制御ゲイン以上の第3の制御ゲインを用いて前記制振トルクを設定し、燃料カットを行なっている前記内燃機関への燃料噴射を復帰する際には前記第1の制御ゲインより小さく前記第2の制御ゲイン以上の第4の制御ゲインを用いて前記制振トルクを設定する手段である、
ことを特徴とするハイブリッド車。 - 請求項1記載のハイブリッド車であって、
前記第4の制御ゲインは、前記第3の制御ゲインより大きな制御ゲインである、
ハイブリッド車。
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