JP5608867B2 - 膵島イメージング用分子プローブ及びその使用 - Google Patents

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Description

本発明は、膵島イメージング用分子プローブ及びその使用に関する。
現在、日本における2型糖尿病は推定820万人を越えて増加し続けている。この対策として耐糖能検査を基準とした糖尿病発症前の介入が行われているが、充分な成果が得られていない。その原因として、耐糖能検査で機能異常が明らかとなる境界型の段階では膵島の障害はすでに高度に進行しており、介入開始時期としては遅い可能性がある。
すなわち、糖尿病の発症過程では、膵島量(とりわけ、膵β細胞量)が耐糖能異常に先行して減少するため、機能異常が検出・自覚される段階に至ってからでは、糖尿病はすでに治療が難しい段階となっている。一方、膵島量及び/又は膵β細胞量の減少を早期に発見することができれば、糖尿病を予防・治療できる可能性がある。したがって、糖尿病の予防・診断を行うために非侵襲の膵島イメージング技術、とりわけ膵島量及び/又は膵β細胞量を測定するための非侵襲の膵島イメージング技術が望まれている。その中でも、膵島、好ましくは、膵β細胞のイメージングや膵β細胞量の測定を非侵襲的に可能とする分子プローブが特に望まれている。
膵島のイメージング用分子プローブの設計において、β細胞に特異的な機能性タンパク質を中心に、膵島細胞における様々な標的分子が検討されている。中でも、標的分子として、膵β細胞に分布し、かつ、7回膜貫通型のG−タンパク質共役受容体であるGLP−1R(グルカゴン様ペプチド1受容体)が検討されている。
GLP−1Rを標的分子とするイメージング用分子プローブとして、GLP−1のペプチド誘導体、Exendin−3のペプチド誘導体及びExendin−4のペプチド誘導体が検討されている(例えば、特許文献1)。
また、その他には、例えば、GLP−1RアンタゴニストであるExendin−4(9−39)の誘導体を[18F]フッ素で標識した分子プローブ(例えば、非特許文献1)や、GLP−1RアゴニストであるExendin−4の誘導体をジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を介して[111In]インジウムで標識した分子プローブ(例えば、非特許文献2及び3)や、GLP−1RアンタゴニストであるExendin−4(9−39)の誘導体をDTPAを介して[111In]インジウムで標識した分子プローブ(例えば、非特許文献3)が検討されている。
しかしながら、膵島を非侵襲的に三次元イメージング可能な新たなイメージング用分子プローブが求められている。
特表2008−511557号公報
H. Kimura et al. Development of in vivo imaging agents targeting glucagons-like peptide-1 receptor (GLP-1R) in pancreatic islets. 2009 SNM Annual Meeting, abstract, Oral Presentations No.326 M. Gotthardt et al. A new technique for in vivo imaging of specific GLP-1 binding sites: First results in small rodents, Regulatory Peptides 137 (2006) 162-267 M. Beche et al. Are radiolabeled GLP-1 receptor antagonists useful for scintigraphy? 2009 SNM Annual Meeting, abstract, Oral Presentations No.327
そこで、本発明は、非侵襲的な膵島の三次元イメージングが可能なイメージング用分子プローブを提供する。
本発明は、膵島のイメージングに用いられる分子プローブであって、
下記式(1)で表されるポリペプチド、
下記式(1)のポリペプチドから1〜数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換したポリペプチドであって、膵島に結合可能なポリペプチド、又は、
下記式(1)のポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するポリペプチドであって、膵島に結合可能なポリペプチドを含む、膵島イメージング用分子プローブに関する。
Z-HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPSX-NH2 (1) (配列番号1)
上記式(1)において、「X」は、側鎖のアミノ基が、下記式(I)で表される基によって標識されたリジン残基を示し、「Z-」は、N末端のα−アミノ基が、非修飾であるか、又は電荷を有さない修飾基により修飾されていることを示し、「-NH2」は、C末端のカルボキシル基が、アミド化されていることを示す。
式(I)において、Aは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を示し、Rは、11C、13N、15O、18F、64Cu、67Ga、68Ga、75Br、76Br、77Br、99mTc、111In、123I、124I、125I又は131Iを含む置換基を示し、Rは、水素原子、又は、Rとは異なる1又は複数の置換基を示し、Rは、結合手、C−Cアルキレン基及びC−Cオキシアルキレン基のいずれかを示す。
また、本発明は、その他の態様として、本発明の膵島イメージング用分子プローブを製造するための膵島イメージング用分子プローブの前駆体であって、
下記式(2)で表されるポリペプチド、
下記式(2)のポリペプチドから1〜数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換したポリペプチドであって、標識化及び脱保護後に膵島に結合可能なポリペプチド、又は、
下記式(2)のポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するポリペプチドであって、標識化及び脱保護後に膵島に結合可能なポリペプチドを含む膵島イメージング用分子プローブ前駆体に関する。
*-HGEGTFTSDLSK* QMEEEAVRLFIEWLK* NGGPSSGAPPPSK-NH2 (2) (配列番号2)
上記式(2)において、「*-」は、N末端のα−アミノ基が、保護基により保護されているか、又は電荷を有さない修飾基により修飾されていることを示し、「K*」は、リジンの側鎖のアミノ基が、保護基により保護されていることを示し、「-NH2」は、C末端のカルボキシル基が、アミド化されていることを示す。
本発明によれば、例えば、ポジトロン放射断層撮影法(PET)やシングルフォトン放射線コンピュータ断層撮影法(SPECT)などにより、膵島の三次元イメージング、好ましくは非侵襲の膵島イメージングが可能となる。
図1は、実施例1のイメージング用分子プローブの体内分布の経時変化を示すグラフの一例である。 図2は、参考例1の分子プローブの体内分布の経時変化の結果の一例を示すグラフである。 図3は、参考例2の分子プローブの体内分布の経時変化の結果の一例を示すグラフである。 図4は、参考例3の分子プローブの体内分布の経時変化の結果の一例を示すグラフである。 図5は、実施例2のイメージング用分子プローブの体内分布の経時変化の結果の一例を示すグラフである。 図6は、参考例4の分子プローブの体内分布の経時変化の結果の一例を示すグラフである。 図7は、実施例2のイメージング用分子プローブを用いた膵臓切片のイメージング結果の一例を示す画像である。 図8は、実施例3のイメージング用分子プローブを用いたSPECT画像の一例である。
膵島の直径は、例えば、ヒトの場合、50〜500μm程度である。このような膵島を生体内において非侵襲的に画像化又は定量化するためには、例えば、膵島に特異的に集積して周囲組織とのコントラストを生じさせることが可能な分子プローブが必要であると考えられている。このため、様々な分子プローブの研究・開発が行われている。
例えば、非特許文献3では、GLP−1R陽性腫瘍及び膵島細胞における、Exendin−4(9−39)の誘導体であるLys40(Ahx−DTPA−111In)Exendin−4(9−39)のGLP−1R親和性の研究が行われている。同文献では、Lys40(Ahx−DTPA−111In)Exendin−4(9−39)の膵島への集積率は0.4%程度であり、GLP−1R陽性腫瘍細胞への集積率も7.5%程度であり、すなわち、Lys40(Ahx−DTPA−111In)Exendin−4(9−39)はGLP−1Rへの親和性が低いという結果が得られている。
また、非特許文献2では、Exendin−4(1−39)の誘導体である111In−DTPA−Lys40−Exendin−4の体内分布実験及びSPECT/MRI融合イメージングが行われている。同文献では、111In−DTPA−Lys40−Exendin−4は、腎臓に最も多く集積し、その集積率は投与後20時間で75%IA/g程度であること、膵臓への集積率は投与後20時間で5%IA/g程度であるとの結果が得られている。
しかしながら、上記の分子プローブよりも、例えば、膵臓により特異的に集積して周囲臓器との所望のコントラストを生じさせることが可能な新たな分子プローブが求められている。
本発明は、上記式(I)で表される基によって標識された分子プローブであれば、例えば、膵臓への集積率や膵臓への特異性が向上し、PETやSPECTによる非侵襲の膵島三次元イメージングに好適な分子プローブを提供できる、という知見に基づく。すなわち、本発明は、好ましくはPETやSPECTによる非侵襲の膵島三次元イメージングに好適な分子プローブ、より好ましくはPETによる非侵襲の膵島三次元イメージングに好適な分子プローブを提供し得るという効果を奏する。また、本発明は、好ましくは、非特許文献1、2及び3に記載されている分子プローブと比較して膵島により特異的に集積させることができるため、膵島の定量用イメージングに好適な分子プローブを提供し得るという効果を奏する。本発明によれば、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)を導入した111In−DTPA−Lys40−Exendin−4と比べて、例えば、容易に分子プローブを合成できるという効果を好ましくは奏する。
上記のとおり、糖尿病の発症過程では、耐糖能異常に先行して膵島量が減少することが知られている。このため、膵島イメージング及び/又は膵島量の測定を行うことにより、例えば、糖尿病の発症前や初期の状態で、膵島の微小な変化を見つけることができることから、糖尿病の超早期発見・診断が可能になる。このため、本発明のイメージング用分子プローブは、糖尿病の予防・早期発見・診断、好ましくは糖尿病の超早期発見・診断に有用である。
すなわち、本発明は、
[1] 膵島のイメージングに用いられる分子プローブであって、下記式(1)で表されるポリペプチド、下記式(1)のポリペプチドから1〜数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換したポリペプチドであって、膵島に結合可能なポリペプチド、又は下記式(1)のポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するポリペプチドであって、膵島に結合可能なポリペプチドを含む、膵島イメージング用分子プローブ、
Z-HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPSX-NH2 (1) (配列番号1)
上記式(1)において、「X」は、側鎖のアミノ基が下記式(I)で表される基によって標識されたリジン残基を示し、「Z-」は、N末端のα−アミノ基が非修飾であるか又は電荷を有さない修飾基により修飾されていることを示し、「-NH2」は、C末端のカルボキシル基がアミド化されていることを示す。
式(I)において、Aは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を示し、Rは、11C、13N、15O、18F、64Cu、67Ga、68Ga、75Br、76Br、77Br、99mTc、111In、123I、124I、125I又は131Iを含む置換基を示し、Rは、水素原子、又は、Rとは異なる1又は複数の置換基を示し、Rは、結合手、C−Cアルキレン基及びC−Cオキシアルキレン基のいずれかを示す。;
[2] [1]記載の膵島イメージング用分子プローブを製造するための膵島イメージング用分子プローブの前駆体であって、下記式(2)で表されるポリペプチド、下記式(2)のポリペプチドから1〜数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換したポリペプチドであって、標識化及び脱保護後に膵島に結合可能なポリペプチド、又は下記式(2)のポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するポリペプチドであって、標識化及び脱保護後に膵島に結合可能なポリペプチドを含む、膵島イメージング用分子プローブ前駆体、
*-HGEGTFTSDLSK* QMEEEAVRLFIEWLK* NGGPSSGAPPPSK-NH2 (2) (配列番号2)
上記式(2)において、「*-」は、N末端のα−アミノ基が保護基により保護されているか又は電荷を有さない修飾基により修飾されていることを示し、「K*」は、リジンの側鎖のアミノ基が保護基により保護されていることを示し、「-NH2」は、C末端のカルボキシル基がアミド化されていることを示す。;
[3] 膵島のイメージング用分子プローブの製造方法であって、[2]記載の膵島イメージング用分子プローブ前駆体を標識化及び脱保護することを含む、膵島イメージング用分子プローブの製造方法;
[4] 前記膵島イメージング用分子プローブ前駆体の標識化が、下記式(I)で表される基を有する化合物を用いて標識化することを含む、[3]記載の膵島イメージング用分子プローブの製造方法、
式(I)において、Aは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を示し、Rは、11C、13N、15O、18F、64Cu、67Ga、68Ga、75Br、76Br、77Br、99mTc、111In、123I、124I、125I又は131Iを含む置換基を示し、Rは、水素原子、又は、Rとは異なる1又は複数の置換基を示し、Rは、結合手、C−Cアルキレン基及びC−Cオキシアルキレン基のいずれかを示す。;
[5] 膵島のイメージングを行うためのキットであって、[1]記載の膵島イメージング用分子プローブ及び[2]記載の膵島イメージング用分子プローブ前駆体の少なくとも一方を含む、キット;
[6] 前記膵島イメージング用分子プローブを注射液の形態で含有する、[5]記載のキット;
[7] 膵島のイメージングを行うための試薬であって、[1]記載の膵島イメージング用分子プローブを含む、膵島イメージング用試薬;
[8] 膵島のイメージング方法であって、予め膵島に結合させた[1]記載の膵島イメージング用分子プローブのシグナルを検出することを含む、膵島のイメージング方法;
[9] [2]記載の膵島イメージング用分子プローブ前駆体を標識化及び脱保護して[1]記載の膵島イメージング用分子プローブを製造することを含む、[8]記載の膵島のイメージング方法;
[10] さらに、前記膵島イメージング用分子プローブを用いた膵島イメージングの結果から膵島の状態を判定することを含む、[8]又は[9]記載の膵島のイメージング方法。
[11] 予め膵島に結合させた[1]記載の膵島イメージング用分子プローブのシグナルを検出すること、及び、検出した膵島イメージング用分子プローブのシグナルから膵島量を算出することを含む、膵島量の測定方法;
[12] さらに、算出した膵島量を提示することを含む、[11]記載の膵島量の測定方法;
に関する。
[膵島イメージング]
本明細書において「膵島イメージング」とは、膵島の分子イメージング(molecular imaging)であって、in vivoの膵島の空間的及び/又は時間的分布を画像化することを含む。また、本発明において、膵島イメージングは、糖尿病に関する予防・治療・診断の観点から、膵β細胞を標的分子とすることが好ましく、より好ましくは膵β細胞のGLP−1Rを標的分子とすることである。さらに、本発明において、膵島イメージングは、膵島量の定量性及びヒトに適用するという観点から、非侵襲での三次元のイメージングであることが好ましい。イメージングの方法としては、非侵襲の膵島イメージングが可能な方法であれば特に制限されず、例えば、ポジトロン放射断層撮影法(PET)、シングルフォトン放射線コンピュータ断層撮影法(SPECT)などを利用する方法が挙げられる。これらの中でも、本発明の分子プローブを利用し、膵島量の定量を行う観点からはPET及びSPECTが好ましい。
[本発明のイメージング用分子プローブ]
本発明のイメージング用分子プローブは、膵島イメージングに用いるポリペプチドであって、上記式(1)で表されるポリペプチドを含む膵島イメージング用分子プローブであり、好ましくは、上記式(1)で表されるポリペプチド、上記式(1)のポリペプチドから1〜数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換したポリペプチドであって、膵島に結合可能なポリペプチド、又は上記式(1)のポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するポリペプチドであって、膵島に結合可能なポリペプチドからなる膵島イメージング用分子プローブである。
上記式(1)のポリペプチドのアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列である。上記式(1)のポリペプチドの第40番目のリジンの側鎖のアミノ基は、上記式(I)で表される基で標識されている。上記式(1)のポリペプチドのN末端のα−アミノ基は、非修飾であるか又は電荷を有さない修飾基により修飾されている。上記式(1)のポリペプチドのC末端のカルボキシル基は、該分子プローブと膵β細胞との結合性の向上の観点から、好ましくは該分子プローブと膵β細胞のGLP−1Rとの結合性の向上の観点から、アミノ基によりアミド化されている。
ここで、上記式(1)(配列表の配列番号1)における第1番目から第39番目のアミノ酸配列は、N末端のα−アミノ基に結合しうる修飾基を除けば、エキセンジン−4(1−39)のアミノ酸配列と一致する。エキセンジン−4(1−39)は、GLP−1類似体であって、膵β細胞上に発現するGLP−1Rに結合することが知られている。このため、本発明のイメージング用分子プローブも、膵島、好ましくは膵β細胞、より好ましくは膵β細胞のGLP−1Rに結合可能である。したがって、本発明のイメージング用分子プローブは、例えば、膵β細胞のGLP−1Rイメージング用分子プローブとして使用することもできる。
本明細書において「膵島に結合可能」とは、膵島量の定量性及び検査・診断の用途の観点から、本発明のイメージング用分子プローブが膵β細胞に結合可能であることが好ましく、少なくとも膵臓において膵β細胞に特異的であることがより好ましく、少なくともヒトに対する非侵襲的なイメージングにおけるシグナル検出において他の器官・組織とシグナルが十分に区別することが可能なコントラストを有する程度に特異的であることがさらに好ましい。
本発明のイメージング用分子プローブは、その他の実施形態として、膵島イメージングに用いるポリペプチドであって、上記式(1)のポリペプチドから1〜数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換したポリペプチドであって、膵島に結合可能なポリペプチドを含み得る。ここで、前記1〜数個とは、1〜10、1〜9、1〜8、1〜7、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、及び1個を含みうる。この実施形態の本発明のイメージング用分子プローブにおいて、上記式(1)のポリペプチドから1〜数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換したポリペプチドである場合は、上記式(I)で表される基で標識化されるC末端のリジンを1つ含み、かつ、C末端のカルボキシル基のアミド化を含むことが好ましい。また、この実施形態の本発明のイメージング用分子プローブにおいて、N末端のα−アミノ基は、非修飾であってもよいし、電荷を有さない修飾基により修飾されていてもよい。上記式(1)のポリペプチドから1〜数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換したポリペプチドは、上記式(1)のポリペプチドと同様の作用効果を有することが好ましい。
また、本発明のイメージング用分子プローブは、さらにその他の実施形態として、膵島イメージングに用いるポリペプチドであって、上記式(1)のポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するポリペプチドであって、膵島に結合可能なポリペプチドを含み得る。ここで、前記相同性とは、当業者が通常用いるアルゴリズム、例えば、BLAST又はFASTAなどで算出されるものでよく、あるいは、比較する2つのポリペプチドの同一アミノ酸残基の数を一方のポリペプチド全長で除して得られる数に基づいてもよい。前記相同性は、85%以上、90%以上、95%以上を含みうる。この実施形態の本発明のイメージング用分子プローブにおいても、上記式(1)のポリペプチドと80%以上の相同性を有するポリペプチドである場合は、上記式(I)で表される基で標識化されるC末端のリジンを1つ含み、かつ、C末端のカルボキシル基のアミド化を含むことが好ましい。また、この実施形態の本発明のイメージング用分子プローブにおいて、N末端のα−アミノ基は、非修飾であってもよいし、電荷を有さない修飾基により修飾されていてもよい。上記式(1)のポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するポリペプチドは、上記式(1)のポリペプチドと同様の作用効果を有することが好ましい。
本発明のイメージング用分子プローブは、上記のとおり、膵島イメージングに用いられるものであって、ヒトの検査・診断の用途の観点から非侵襲性の膵島イメージングに用いられることが好ましく、同様の観点から膵島量を定量するための膵島イメージングに用いられることが好ましい。さらに、本発明のイメージング用分子プローブは、糖尿病の予防、治療又は診断のための膵島イメージングに用いられることが好ましく、より好ましくは糖尿病の予防、治療又は診断のための膵β細胞のGLP−1Rのイメージングに用いられることである。これらの膵島イメージングは、例えば、PET又はSPECTにより行われてもよい。したがって、本発明のイメージング用分子プローブは、例えば、上述する各種イメージングに用いる組成物、イメージング用試薬、造影剤、画像診断剤等として用いることができる。
[リジン残基の側鎖のアミノ基]
本発明のイメージング用分子プローブにおいて、上記式(1)のポリペプチドのアミノ酸配列においてXで表されるリジン残基の側鎖のアミノ基、つまり、上記式(1)のポリペプチドの第40番目のリジンの側鎖のアミノ基は、下記式(I)で表される基によって標識されている。
上記式(I)において、Aは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を示す。芳香族炭化水素基は、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基が好ましく、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,4−キシリル基、p−クメニル基、メシチル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アンスリル基、2−アンスリル基、9−アンスリル基、1−フェナンスリル基、9−フェナンスリル基、1−アセナフチル基、2−アズレニル基、1−ピレニル基、2−トリフェニレニル基、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、ターフェニル基等が挙げられる。芳香族複素環基は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を1又は2個有し、かつ、5〜10員の複素環基が好ましく、例えば、トリアゾリル基、3−オキサジアゾリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、1−ピローリル基、2−ピローリル基、3−ピローリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピラジル基、2−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、2−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、2−イミダゾリル基、3−ピラゾリル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、N−インドリル基、N−カルバゾリル基等が挙げられる。これらの中でも、Aは、フェニル基、トリアゾリル基、ピリジル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
上記式(I)において、Rは、11C、13N、15O、18F、64Cu、67Ga、68Ga、75Br、76Br、77Br、99mTc、111In、123I、124I、125I又は131Iを含む置換基(以下、「放射性核種を含む置換基」ともいう)を示す。本明細書において「放射性核種を含む置換基」は、例えば、11C、13N、15O、18F、64Cu、67Ga、68Ga、75Br、76Br、77Br、99mTc、111In、123I、124I、125I又は131Iの各放射性核種、上記放射性核種により置換されたC−Cアルキル基、上記放射性核種により置換されたC−Cアルコキシ基等が挙げられる。本明細書において「C−Cアルキル基」とは、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基のことをいい、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。本明細書において「放射性核種により置換されたC−Cアルキル基」とは、1〜3個の炭素原子を有し、かつ、水素原子が上記放射性核種によって置換されたアルキル基のことをいう。本明細書において「C−Cアルコキシ基」とは、1〜3個の炭素原子を有するアルコキシ基のことをいい、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。本明細書において「放射性核種により置換されたC−Cアルコキシ基」とは、1〜3個の炭素原子を有し、かつ、水素原子が上記放射性核種によって置換されたアルコキシ基のことをいう。中でも、Rは、放射性ハロゲンを含む置換基が好ましく、例えば、18F、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I又は131Iを含む置換基が好ましい。PETを行う観点からは、Rは、ポジトロンを放出する放射性核種を含む置換基、例えば、18F、75Br、76Br、又は124Iを含む置換基が好ましい。SPECTを行う観点からは、Rは、γ線を放出する放射性核種を含む置換基、例えば、77Br、123I又は125Iを含む置換基が好ましい。Rは、定量性の観点からは、オルト位、メタ位、パラ位のいずれかで置換されていることが好ましく、より好ましくはメタ位又はパラ位である。
上記式(I)において、Rは、水素原子若しくはRとは異なる1又は複数の置換基を示す。Rは、水素原子であっても、置換基であってもよいが、水素原子であることが好ましい。つまり、上記式(I)において、Aは、R以外の置換基で置換されていないことが好ましい。Rが複数の置換基である場合、それらは、同一であっても良いし、異なっていてもよい。置換基としては、例えば、水酸基、電子求引性基、電子供与性基、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルキニル基等が挙げられる。電子求引性基としては、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、カルボニル基、スルホニル基、アセチル基、フェニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。本明細書において「C−Cアルキル基」とは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基のことをいい、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。本明細書において「C−Cアルケニル基」とは、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基のことをいい、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基が挙げられる。本明細書において「C−Cアルキニル基」とは、2〜6個の炭素原子を有するアルキニル基のことをいい、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基が挙げられる。これらの中でも、置換基は、水酸基及び電子求引性基が好ましい。
上記式(I)において、Rは、結合手、C−Cアルキレン基又はC−Cオキシアルキレン基であることが好ましい。本明細書において「C−Cアルキレン基」とは、1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基のことをいい、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状または分岐状のアルキレン基が挙げられる。本明細書において「C−Cオキシアルキレン基」とは、1〜6個の炭素原子を有するオキシアルキレン基のことをいい、例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシペンチル基等が挙げられる。Rとしては、分子プローブと膵島との親和性、好ましくは該分子プローブと膵β細胞との親和性、より好ましくは分子プローブと膵β細胞のGLP−1受容体との親和性の点から、結合手、メチレン基、エチレン基が好ましく、より好ましくは結合手である。
本発明のイメージング用分子プローブにおいて、上記式(I)で表される基は、下記式(Ia)で表される基が好ましく、より好ましくは下記式(Ib)で表される基([18F]4-fluorobenzoyl基)、下記式(Ic)で表される基([123I]3-iodobenzoyl基)、下記式(Id)で表される基([124I]3-iodobenzoyl基)、下記式(Ie)で表される基([125I]3-iodobenzoyl基)、下記式(If)で表される基([131I]3-iodobenzoyl基)である。下記式(Ia)において、Rは上記のとおりである。
[修飾基]
本発明のイメージング用分子プローブにおいて、上記式(1)のポリペプチドにおけるN末端のα−アミノ基は、N末端のα−アミノ基の正電荷を打ち消して、本発明のイメージング用分子プローブの腎臓への集積を抑制する点から、電荷を有さない修飾基で修飾されていてもよい。電荷を有さない修飾基としては、例えば、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、4−メトキシトリチル基(Mmt)、アミノ基、3から20個の炭素のアルキル基、9−フルオレンアセチル基、1−フルオレンカルボン酸基、9−フルオレンカルボン酸基、9−フルオレノン−1−カルボン酸基、ベンジルオキシカルボニル基、キサンチル基(Xan)、トリチル基(Trt)、4−メチルトリチル基(Mtt)、4−メトキシ2,3,6−トリメチル−ベンゼンスルホニル基(Mtr)、メシチレン−2−スルホニル基(Mts)、4,4−ジメトキシベンゾヒドリル基(Mbh)、トシル基(Tos)、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル基(Pmc)、4−メチルベンジル基(MeBzl)、4−メトキシベンジル基(MeOBzl)、ベンジルオキシ基(BzlO)、ベンジル基(Bzl)、ベンゾイル基(Bz)、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル基(Npys)、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジアキソシクロヘキシリデン)エチル基(Dde)、2,6−ジクロロベンジル基(2,6−DiCl−Bzl)、2−クロロベンジルオキシカルボニル基(2−Cl−Z)、2−ブロモベンジルオキシカルボニル基(2−Br−Z)、ベンジルオキシメチル基(Bom)、シクロヘキシルオキシ基(cHxO)、t−ブトキシメチル基(Bum)、t−ブトキシ基(tBuO)、t−ブチル基(tBu)、アセチル基(Ac)、トリフルオロアセチル基(TFA)o−ブロモベンジルオキシカルボニル基、t−ブチルジメチルシリル基、2−クロロベンジル(Cl−z)基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、イソプロピル基、ピバリル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、トリメチルシリル基等が挙げられる。中でも、修飾基は、アセチル基、ベンジル基、ベンジルオキシメチル基、o−ブロモベンジルオキシカルボニル基、t−ブチル基、t−ブチルジメチルシリル基、2−クロロベンジル基、2,6−ジクロロベンジル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、イソプロピル基、ピバリル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、トシル基、トリメチルシリル基及びトリチル基が好ましく、より好ましくはアセチル基である。
[本発明のイメージング用分子プローブの前駆体]
本発明は、その他の態様として、本発明のイメージング用分子プローブを製造するためのイメージング用分子プローブの前駆体であって、下記式(2)で表されるポリペプチド、下記式(2)のポリペプチドから1〜数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換したポリペプチドであって、標識化及び脱保護後に膵島に結合可能なポリペプチド、又は下記式(2)のポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するポリペプチドであって、標識化及び脱保護後に膵島に結合可能なポリペプチドを含むイメージング用分子プローブ前駆体に関する。本発明のイメージング用分子プローブは、例えば、本発明のイメージング用分子プローブの前駆体を用いて調製することができる。
*-HGEGTFTSDLSK* QMEEEAVRLFIEWLK* NGGPSSGAPPPSK-NH2 (2) (配列番号2)
本発明の分子プローブ前駆体は、本発明のイメージング用分子プローブを製造するためのイメージング用分子プローブの前駆体であって、上記式(2)で表されるポリペプチドを含むイメージング用分子プローブの前駆体であり、好ましくは、上記式(2)で表されるポリペプチド、上記式(2)のポリペプチドから1〜数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換したポリペプチドであって標識化及び脱保護後に膵島に結合可能なポリペプチド、又は上記式(2)のポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するポリペプチドであって標識化及び脱保護後に膵島に結合可能なポリペプチドからなるイメージング用分子プローブの前駆体である。
上記式(2)のポリペプチドのアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列である。上記式(2)のポリペプチドの第12番目のリジンの側鎖のアミノ基及び第27番目のリジンの側鎖のアミノ基には、アミノ基を保護するための保護基が結合している。上記式(2)のポリペプチドのN末端のα−アミノ基は、該アミノ基を保護するために保護基が結合しているか、又は電荷を有さない修飾基により修飾されている。上記式(2)のポリペプチドのC末端のカルボキシル基は、膵β細胞との結合性の向上の観点から、アミノ基によりアミド化されている。なお、本発明の分子プローブ前駆体において、上記式(2)のポリペプチドのC末端のアミド化されたカルボキシル基は、保護基やさらなる修飾基が結合していても良いし、結合していなくてもよく、好ましくはこれらが結合していないことであるが、本発明は、保護基による保護やさらなる修飾基が付加された形態を除外するものではない。
上記式(2)のポリペプチドを含む本発明の分子プローブ前駆体を後述するアミノ基を標識化する標識システムで標識化すると、保護基により保護されていないC末端のリジンの側鎖のアミノ基、すなわち、上記式(2)のポリペプチドの第40番目のリジンの側鎖のアミノ基が標識化されうる。
ここで、上記式(2)(配列表の配列番号2)における第1番目から第39番目のアミノ酸配列は、リジンの側鎖のアミノ基に結合する保護基及びN末端のα−アミノ基に結合しうる保護基又は修飾基を除けば、エキセンジン−4(1−39)のアミノ酸配列と一致する。
本発明の分子プローブ前駆体は、その他の実施形態として、膵島イメージングに用いるポリペプチドであって、上記式(2)のポリペプチドから1〜数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換したポリペプチドであって、標識化及び脱保護後に膵島に結合可能なポリペプチドを含み得る。前記1〜数個は、上記のとおりである。この実施形態の本発明の分子プローブ前駆体において、上記式(2)のポリペプチドから1〜数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換したポリペプチドである場合は、標識化されうるC末端のリジンを1つ含み、かつ、C末端のカルボキシル基のアミド化を含み、その他のリジンを含む場合はその他のリジンの側鎖のアミノ基は保護基により保護されていることが好ましい。また、この実施形態の本発明の分子プローブ前駆体において、N末端のα−アミノ基は、非修飾であってもよいし、電荷を有さない修飾基により修飾されていてもよい。上記式(2)のポリペプチドから1〜数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換したポリペプチドは、標識化及び脱保護した後、上記式(2)のポリペプチドを標識化及び脱保護して得られるポリペプチドと同様の作用効果を有することが好ましく、より好ましくは上記式(1)のポリペプチドと同様の作用効果を有することである。
また、本発明の分子プローブ前駆体は、さらにその他の実施形態として、膵島イメージングに用いるポリペプチドであって、上記式(2)のポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するポリペプチドであって、標識化及び脱保護後に膵島に結合可能なポリペプチドを含み得る。前記相同性は、上記のとおりである。この実施形態の本発明の分子プローブ前駆体においても、上記式(2)のポリペプチドと80%以上の相同性を有するポリペプチドである場合は、標識化されうるC末端のリジンを1つ含み、かつ、C末端のカルボキシル基のアミド化を含み、その他のリジンを含む場合はその他のリジンの側鎖のアミノ基は保護基により保護されていることが好ましい。また、この実施形態の本発明の分子プローブ前駆体において、N末端のα−アミノ基は、非修飾であってもよいし、電荷を有さない修飾基により修飾されていてもよい。上記式(2)のポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するポリペプチドは、上記式(2)のポリペプチドを標識化及び脱保護して得られるポリペプチドと同様の作用効果を有することが好ましく、より好ましくは上記式(1)のポリペプチドと同様の作用効果を有することである。
上記式(2)において、「*-」は、N末端のα−アミノ基が保護基により保護されているか又は電荷を有さない修飾基により修飾されていることを示す。また、上記式(2)において、「K*」は、リジンの側鎖のアミノ基が保護基により保護されていることを示す。修飾基は、上記のとおりである。
[保護基]
保護基は、C末端のリジンの側鎖のアミノ基を標識化する間に、分子プローブ前駆体のその他のアミノ基を保護するものであって、そのような機能を果たせる公知の保護基を使用できる。保護基としては、特に制限されず、例えば、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、4−メトキシトリチル基(Mmt)、アミノ基、3から20個の炭素のアルキル基、9−フルオレンアセチル基、1−フルオレンカルボン酸基、9−フルオレンカルボン酸基、9−フルオレノン−1−カルボン酸基、ベンジルオキシカルボニル基、キサンチル基(Xan)、トリチル基(Trt)、4−メチルトリチル基(Mtt)、4−メトキシ2,3,6−トリメチル−ベンゼンスルホニル基(Mtr)、メシチレン−2−スルホニル基(Mts)、4,4−ジメトキシベンゾヒドリル基(Mbh)、トシル基(Tos)、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル基(Pmc)、4−メチルベンジル基(MeBzl)、4−メトキシベンジル基(MeOBzl)、ベンジルオキシ基(BzlO)、ベンジル基(Bzl)、ベンゾイル基(Bz)、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル基(Npys)、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジアキソシクロヘキシリデン)エチル基(Dde)、2,6−ジクロロベンジル基(2,6−DiCl−Bzl)、2−クロロベンジルオキシカルボニル基(2−Cl−Z)、2−ブロモベンジルオキシカルボニル基(2−Br−Z)、ベンジルオキシメチル基(Bom)、シクロヘキシルオキシ基(cHxO)、t−ブトキシメチル基(Bum)、t−ブトキシ基(tBuO)、t−ブチル基(tBu)、アセチル基(Ac)及びトリフルオロアセチル基(TFA)などが挙げられ、取扱いの点から、Fmoc及びBocが好ましい。
[本発明のイメージング用分子プローブの製造方法]
本発明のイメージング用分子プローブは、上記式(2)で表されるポリペプチドを含む分子プローブ前駆体を、標識化及び脱保護することにより製造することができる。標識化により、保護基が結合していないリジンの側鎖のアミノ基、つまり、C末端のリジンの側鎖のアミノ基が標識化されうる。
標識化は、本発明の分子プローブ前駆体を、イメージング方法に応じた標識化を行い、その後、保護基の脱保護をすることで調製することができる。上記分子プローブ前駆体の合成は、例えば、Fmoc法等の定法に従ったペプチド合成により製造することができ、そのペプチド合成方法は特に制限されない。
標識化に用いられる放射性核種としては、11C、13N、15O、18F、64Cu、67Ga、68Ga、75Br、76Br、77Br、99mTc、111In、123I、124I、125I又は131I等が挙げられる。標識化の手順としては、例えば、PETを行う場合には11C、15O、18F、124Iなどのポジトロン放出核種を、SPECTを行う場合には99mTc、111In、123I及び125Iなどのγ線放出核種を、公知の方法により標識化することが挙げられる。
標識化は、例えば、上記式(I)で表される基を有する標識化合物を用いて行うことが好ましい。標識化に用いる標識化合物は、上記式(I)で表される基が、エステル結合を介してスクシンイミドと結合したスクシンイミジルエステル化合物であることが好ましく、より好ましくは下記式(II)で表されるスクシンイミジルエステル化合物であり、さらに好ましくは下記式(IIa)で表されるスクシンイミジルエステル化合物である。下記式(II)において、A、R、R及びRは上記式(I)と同様である。下記式(IIa)において、Rは上記式(I)と同様である。
標識化に用いる標識化合物は、中でも、上記式(IIa)においてRが[18F]フッ素原子である[18F]N-succinimidyl 4-fluorobenzoateが好ましい。また、標識化に用いる放射性核種が123I、124I、125I又は131Iである場合は、標識化に用いる標識化合物は、例えば、上記式(IIa)においてRが[123I]ヨウ素原子である[123I]N-succinimidyl 3-iodobenzoate、Rが[124I]ヨウ素原子である[124I]N-succinimidyl 3-iodobenzoate、Rが[125I]ヨウ素原子である[125I]N-succinimidyl 3-iodobenzoate、Rが[131I]ヨウ素原子である[131I]N-succinimidyl 3-iodobenzoate等が好ましい。
本発明のイメージング用分子プローブの製造方法において、上記式(I)で表される基を有する標識化合物の合成は、自動合成装置を用いて行ってもよく、また、上記式(I)で表される基を有する標識化合物の合成、及び、該標識化合物を用いたイメージング用分子プローブ前駆体の標識化及び脱保護を、1つの自動合成装置によって行ってもよい。
本発明のイメージング用分子プローブの製造方法は、その他の態様として、N末端のα−アミノ基及び/又は側鎖の官能基が保護基によって保護された保護アミノ酸を用いて下記式(14)で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを合成すること、合成したポリペプチドの第12番目のリジン(Lys12)及び第27番目のリジン(Lys27)の側鎖のアミノ基を脱保護し、脱保護したアミノ基を脱保護前の保護基とは異なる保護基によって再度保護すること、下記式(14)のポリペプチドの第40番目のリジンの側鎖のアミノ基を脱保護すること、脱保護した第40番目のリジン(Lys40)の側鎖のアミノ基を放射性標識すること、及び放射性標識したポリペプチドを脱保護することを含むイメージング用分子プローブの製造方法に関する。
HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPSK (14) (配列番号14)
本態様のイメージング用分子プローブの製造方法によれば、目的とする第40番目のリジンの側鎖のアミノ基のみを選択的に標識することができる。したがって、本態様のイメージング用分子プローブの製造方法によれば、例えば、標識効率を向上させることができ、また、放射性標識された所望のペプチドの収率を向上させることができる。
ペプチドの合成は、例えば、公知の有機化学的ペプチド合成法を用いて行うことができ、例えば、社団法人日本生化学会編集『生化学実験講座』、第1巻、「タンパク質IV」、第207〜495頁(1977年、東京化学同人発行)、及び社団法人日本生化学会編集『新生化学実験講座』、第1巻、「タンパク質VI」、第3〜74頁(1992年、東京化学同人発行)等の記載に基づき行うことができる。
有機化学的ペプチド合成法としては、例えば、ペプチド固相合成法、及びペプチド液相合成法等が挙げられ、好ましくはペプチド固相合成法である。本明細書において「ペプチド固相合成法」とは、固相担体にアミノ酸又はペプチドのC末端をリンカーを介して固定し、N末端側に順次アミノ酸を伸長していく方法のことをいう。ペプチド固相合成法としては、例えば、Fmoc法及びBoc法等が挙げられ、好ましくはFmoc法である。本明細書において「Fmoc法」とは、N末端のα−アミノ基がFmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基)によって保護されたアミノ酸を用い、それらを縮合させることによってペプチドを合成する方法のことをいう。より具体的には、合成する各ペプチドのC末端に相当するアミノ酸又はC末端に相当するアミノ酸を含むペプチドを樹脂等の固相担体に結合させ、N末端のα−アミノ基の保護基であるFmoc基の脱保護及び洗浄と、保護アミノ酸の縮合及び洗浄とを繰り返し行うことによってペプチド鎖を伸長し、最後に最終的な脱保護反応を行うことによって目的のペプチドを合成することができる。ペプチド合成は、例えば、ペプチド自動合成装置を使用して行ってもよい。ペプチド自動合成装置としては、例えば、A443A型(Applied Biosystems社製)、PSSM8(島津製作所製)等が挙げられる。
Fmoc法によってペプチド合成を行う場合、ペプチド合成に用いる保護アミノ酸としては、通常のFmoc−ペプチド合成法に用いられるFmoc−アミノ酸誘導体が使用できる。具体的には、側鎖に官能基のあるアミノ酸(His、Asp、Ser、Lys、Gln、Glu、Arg、Asn、Trp)については、官能基の種類に応じて保護基によって官能基が保護され、かつN末端のα−アミノ基がFmocによって保護されたアミノ酸が使用でき、その他のアミノ酸についてはN末端のα−アミノ基がFmocによって保護されたアミノ酸が使用できる。
放射性標識を行わない第12番目及び第27番目のリジンとしては、選択的な脱保護の点から、放射性標識部位である第40番目のリジンの側鎖のアミノ基の保護基とは異なる保護基によって側鎖のアミノ基が保護されたリジンを使用することが好ましい。例えば、40番目のリジンとして側鎖のアミノ基がFmoc以外のカルバメート系の保護基によって保護されたリジンを使用し、第12番目及び第27番目のリジンとして側鎖のアミノ基がトリチル型の保護基によって保護されたリジンを使用してもよい。Fmoc以外のカルバメート系の保護基としては、例えば、Boc、Cbz、Alloc、Troc等が挙げられ、中でもBocが好ましい。トリチル型の保護基としては、例えば、Mmt、Trt、Mtt、Mtr等が挙げられ、より選択的な脱保護の点から、Mmt及びMttが好ましい。
つぎに、上記式(14)のポリペプチドの第12番目及び第27番目のリジンの側鎖のアミノ基の脱保護及び再度の保護を行う。
脱保護は、例えば、第40番目のリジンの側鎖のアミノ基を脱保護することなく行うことが好ましく、より好ましくは第12番目及び第27番目のリジンの側鎖のアミノ基以外の官能基を脱保護することなく第12番目及び第27番目のリジンの側鎖のアミノ基のみを選択的に脱保護することである。第12番目及び第27番目のリジンの側鎖のアミノ基の保護基が、トリチル型の保護基である場合は、例えば、弱酸性の条件下とすることによって選択的にトリチル型の保護基を除去して第12番目及び第27番目のリジンの側鎖のアミノ基を脱保護することができる。弱酸性の条件下とする試薬としては、例えば、トリフルオロ酢酸を含む試薬等が挙げられる。
再度の保護は、例えば、除去した保護基とは異なる保護基で、脱保護した第12番目及び第27番目のリジンの側鎖のアミノ基を保護することを含み、好ましくはペプチド合成に用いたN末端のα−アミノ基の保護基で保護することであり、より好ましくはFmocによって保護することである。Fmocは、例えば、アミン存在下でFmoc試薬と第12番目及び第27番目のリジンの側鎖のアミノ基とを反応させることによって導入することができる。Fmoc試薬としては、例えば、N−(9−フルオレニルメトキシカルボニルオキシ)コハク酸イミド(Fmoc−OSu)、及び9−フルオレニルカルビニルクロリド(Fmoc−Cl)等が挙げられる。
また、第12番目及び第27番目のリジンの側鎖のアミノ基の脱保護及び再度の保護を行う際に、例えば、上記ポリペプチドのN末端のα−アミノ基の脱保護及び再度の保護を行ってもよい。
ついで、上記式(14)のポリペプチドの第40番目のリジンの側鎖のアミノ基の脱保護を行う。これにより、放射性標識を行うプローブ前駆体を得ることができる。
脱保護は、少なくとも第40番目のリジンの側鎖のアミノ基を脱保護すればよく、放射性標識後の脱保護操作を簡略化する点から、好ましくはN末端のα−アミノ基、第12番目及び第27番目のリジンの側鎖のアミノ基以外の官能基を脱保護することが好ましい。これにより、N末端のα−アミノ基、第12番目及び第27番目のリジンの側鎖のアミノ基が保護基で保護され、かつ第40番目のリジンの側鎖のアミノ基が脱保護された状態のペプチドを得ることができる。脱保護は、脱保護を行う保護基の種類に応じて公知の方法に準じて行うことができる。また、当該脱保護は、ペプチドの固相担体からの切り出しとともに行い、例えば、固相担体からの切り出しを行う条件で、上記保護基の脱保護を行ってもよい。
そして、脱保護した第40番目のリジンの側鎖のアミノ基を放射性標識する。放射性標識するポリペプチド(分子プローブ前駆体)は、第40番目のリジンの側鎖のアミノ基が脱保護され、かつ第12番目及び第27番目のリジンの側鎖のアミノ基が保護されており、好ましくは、第40番目のリジンの側鎖のアミノ基が脱保護され、かつ第12番目及び第27番目のリジンの側鎖のアミノ基並びにN末端のα―アミノ基が保護されていることから、目的とする第40番目のリジンの側鎖のアミノ基のみを選択的に放射性標識することができる。
放射性標識は、放射性標識するポリペプチドに応じて、公知の方法に準じて行うことができる。放射性標識に用いる標識化合物としては特に制限されないが、例えば、上述する式(I)で表される基を有する標識化合物や、金属放射性同位元素(金属核種)をキレート可能なキレート化合物等が挙げられる。金属核種としては、例えば、64Cu、67Ga、68Ga、82Rb、99mTc、111In、186Reが挙げられる。キレート化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、6−ヒドラジノピリジン−3−カルボン酸(HYNIC)、テトラアザシクロドデカン四酢酸(DOTA)、dithisosemicarbazone(DTS)、diaminedithiol(DADT)、mercaptoacetylglycylglycylglycine(MAG3)、monoamidemonoaminedithiol(MAMA)、diamidedithiol(DADS)、propylene diamine dioxime(PnAO)等が挙げられる。本発明のイメージング用分子プローブを製造する点からは、標識化合物としては、上記式(I)で表される基を有する標識化合物が好ましく、より好ましくは上記式(II)で表されるスクシンイミジルエステル化合物であり、さらに好ましくは上記式(IIa)で表されるスクシンイミジルエステル化合物である。
最後に、放射性標識後のポリペプチドの残りの保護基を除去する。残りの保護基としては、例えば、第12番目及び第27番目のリジンの側鎖のアミノ基の保護基、N末端のα−アミノ基の保護基があげられる。これにより、第40番目のリジンの側鎖のアミノ基が放射性標識されたポリペプチドを製造することができる。脱保護は、保護基の種類に応じて公知の方法に準じて行うことができる。保護基がFmocである場合は、例えば、ピペリジン条件下とすることで脱保護することができる。
本発明のイメージング用分子プローブの製造方法は、放射性標識された純度の高いペプチドを製造する点から、さらに、精製工程等を含んでいてもよい。精製工程は、例えば、第40番目のリジンの側鎖のアミノ基の脱保護と放射性標識との間、放射性標識とその後の脱保護(最終の脱保護)との間、及び最終の脱保護後に行うことができる。また、本発明のイメージング用分子プローブの製造方法は、例えば、放射性標識されたポリペプチドのN末端のα−アミノ基を電荷を有さない修飾基によって修飾する工程や、C末端のカルボキシル基をアミド化する工程を含んでいてもよい。
[イメージング方法]
本発明は、その他の態様として、本発明のイメージング用分子プローブを用いて膵島をイメージングすることを含む膵島のイメージング方法に関する。また、本発明は、さらにその他の態様として、予め膵島に結合させた本発明のイメージング用分子プローブのシグナルを検出することを含む膵島のイメージング方法に関する。イメージング方法において、イメージングするために十分な量を予め膵島に結合させた本発明のイメージング用分子プローブのシグナルを検出することが好ましい。膵島イメージングについては上記のとおりである。本発明の膵島イメージング方法は、検査・診断の用途の観点から、膵β細胞のイメージング方法であることが好ましい。
本発明のイメージング用分子プローブのシグナルの検出は、例えば、PETを用いた測定及び/又はSPECTを用いた測定等により行うことができる。PETを用いた測定及びSPECTを用いた測定には、例えば、イメージの撮影、膵島量の測定等を含む。
SPECTを用いた測定は、例えば、本発明のイメージング用分子プローブを予め膵島に結合させた対象から放出されるγ線をガンマカメラにより測定することを含む。ガンマカメラによる測定は、例えば、本発明のイメージング用分子プローブの標識に使用した上記放射性核種から放出される放射線(γ線)を一定時間単位で測定することを含み、好ましくは放射線が放出される方向及び放射線数量を一定時間単位で測定することを含む。本発明のイメージング方法は、さらに、放射線の測定により得られた測定された本発明のイメージング用分子プローブの分布を断面画像として表すこと、及び、得られた断面画像を再構成することを含んでいてもよい。対象としては、ヒト及び又はヒト以外の哺乳類が挙げられる。
PETを用いた測定は、例えば、本発明のイメージング用分子プローブを予め膵島に結合させた対象から、ポジトロンと電子ととの対消滅により生成するガンマ線をPET用検出器で同時計数することを含み、さらに、計測した結果に基づきポジトロンを放出する放射性核種の位置の三次元分布を描写することを含んでいてもよい。
本発明のイメージング方法において、SPECTの測定又はPETの測定とあわせて、X線CTやMRIの測定を行ってもよい。これにより、例えば、SPECTにより得られた画像又はPETにより得られた画像(機能画像)と、CTにより得られた画像又はMRIにより得られた画像(形態画像)とを融合させた融合画像を得ることができる。
本発明の膵島のイメージング方法は、さらに、本発明のイメージング用分子プローブを用いたイメージングの結果から膵島の状態を判定することを含んでもよい。分子プローブを用いたイメージングの結果から膵島の状態を判定することは、例えば、膵島イメージングの画像を解析することにより膵島の有無を判断すること、膵島量の増減を判断すること等を含む。
本発明の膵島のイメージング方法は、本発明のイメージング用分子プローブを対象に投与することを含んでいてもよく、画像化のために所望のコントラストを得るために十分な量の本発明のイメージング用分子プローブを投与することが好ましい。本発明のイメージング用分子プローブのシグナル検出は、分子プローブの投与から一定時間経過後行うことが好ましい。投与対象としては、ヒト及び/又はヒト以外の哺乳類が挙げられる。対象への投与は、局所的であってもよく、全身的であってもよい。投与経路は、対象の状態等に応じて適宜決定できるが、例えば、静脈、動脈、皮内、腹腔内への注射又は輸液等が挙げられる。本発明のイメージング用分子プローブは、担体とともに投与することが好ましい。担体としては、例えば、水性溶媒及び非水性溶媒が使用できる。水性溶媒としては、例えば、リン酸カリウム緩衝液、生理食塩水、リンゲル液、蒸留水等が挙げられる。非水性溶媒としては、例えば、ポリエチレングリコール、植物性油脂、エタノール、グリセリン、ジメチルスルホキサイド、プロピレングリコール等が挙げられる。膵島のイメージング又は膵島量の測定のための本発明のイメージング用分子プローブの用量は、例えば、1μg以下とすることができる。投与から測定までの時間は、例えば、分子プローブの膵島への結合時間、分子プローブの種類及び分子プローブの分解時間等に応じて適宜決定できる。
[膵島量の測定方法]
本発明は、さらにその他の態様として、膵島量の測定方法であって、予め膵島に結合させた本発明のイメージング用分子プローブのシグナルを検出すること、及び、検出した分子プローブのシグナルから膵島量を算出することを含む膵島量の測定方法に関する。本発明の膵島量の測定方法は、本発明のイメージング用分子プローブを用いて膵島イメージングを行うことを含んでもよい。膵島イメージングは上記のとおりである。分子プローブを用いたイメージングの結果からの膵島量の算出は、例えば、膵島イメージングの画像を解析すること等により行うことができる。また、イメージングの結果からイメージングの対象物の定量を行うことは、当業者であれば、例えば、検量線や適当なプログラムを用いて容易に行うことができる。本発明の膵島量の測定方法は、検査・診断の用途の観点から、膵β細胞量の測定方法であることが好ましい。
本発明の膵島量の測定方法は、さらに、算出した膵島量を提示することを含んでいてもよい。算出した膵島量提示することは、例えば、算出した膵島量を保存又は外部に出力することを含む。外部に出力することは、例えば、モニタに表示すること、及び、印字すること等を含む。
[糖尿病の予防、治療、診断方法]
本発明は、さらにその他の態様として、糖尿病の予防又は治療又は診断方法に関する。上記のとおり、糖尿病の発症過程では、膵島量(とりわけ、膵β細胞量)が耐糖能異常に先行して減少するが、機能異常が検出・自覚される段階に至ってからでは、糖尿病はすでに治療が難しい段階となっている。しかし、本発明のイメージング用分子プローブを用いたイメージング方法及び/又は膵島量の測定方法によれば、膵島量及び/又は膵β細胞量の減少を早期に発見することができ、ひいては、新たな糖尿病の予防・治療・診断法が構築できる。糖尿病の予防・治療・診断の対象としては、ヒト及び/又はヒト以外の哺乳類が挙げられる。
本発明の糖尿病の診断方法は、本発明のイメージング用分子プローブを用いて膵島のイメージングを行うこと、及び、得られた膵島の画像及び/又は膵島量に基づき膵島の状態を判定することを含み、さらに、判定結果に基づき糖尿病の診断を行うことを含んでいてもよい。膵島の状態の判定は、例えば、得られた膵島の画像と基準となる膵島の画像とを比較すること、得られた膵島量と基準となる膵島量とを比較すること等により、膵島量の増減又は変化を判定することを含む。また、膵島の状態の判定は、情報処理装置を用いて行ってもよく、膵島量が減少していると判定したときには、その情報を提示し、膵島量が増加又は維持されていると判定したときには、その情報を提示することが好ましい。判定結果に基づく糖尿病の診断は、例えば、糖尿病発症のリスクを判定すること、糖尿病と判断すること、糖尿病の進行度合いを判断することを含む。
本発明の糖尿病の治療方法は、本発明のイメージング用分子プローブを用いて膵島のイメージングを行うこと、及び、得られた膵島の画像及び/又は膵島量に基づき膵島の状態を判定して糖尿病の診断を行うこと、前記診断に基づき糖尿病の治療することを含む。膵島の状態の判定及び糖尿病の診断は、本発明の糖尿病の診断方法と同様に行うことができる。本発明の糖尿病の治療方法は、対象に対して行われる投薬や食事療法を含む治療効果を膵島量の変化に着目して評価することを含むことができる。
本発明の糖尿病の予防方法は、本発明のイメージング用分子プローブを用いて膵島のイメージングを行うこと、及び、得られた膵島の画像及び/又は膵島量に基づき膵島の状態を判定して糖尿病発症のリスクを判定することを含む。本発明の糖尿病の予防方法は、例えば、定期的に膵島量の測定を行い、膵島量の減少傾向の有無をチェックすることが含むことができる。
本発明は、好ましいその他の態様として、糖尿病の超早期診断方法に関する。本発明の糖尿病の超早期診断方法は、例えば、人間ドック、健康診断において本発明の方法により膵島のイメージング及び/又は膵島量の測定を行うこと、及び、得られた膵島の画像及び/又は膵島量に基づき膵島の状態を判定することを含むことができる。また、本発明の糖尿病の治療方法は、本発明の方法により膵島のイメージング及び/又は膵島量の測定を行うこと、及び、得られた膵島の画像及び/又は膵島量に基づき膵島の機能回復を評価することを含むことができる。
[本発明のキット]
本発明は、さらにその他の態様として、本発明のイメージング用分子プローブを含むキットに関する。本形態のキットの実施形態としては、本発明のイメージング方法を行うためのキット、本発明の膵島量の測定方法を行うためのキット、本発明の糖尿病の予防又は治療又は診断のキットなどが挙げられる。これらの各実施形態において、それぞれの形態に応じた取扱い説明書を含むことが好ましい。
本発明のキットにおいて、本発明のイメージング用分子プローブは、注射液の形態で含むことが好ましい。したがって、本発明のキットは、本発明のイメージング用分子プローブを含有する注射液を含むことが好ましい。注射液は、有効成分とする本発明のイメージング用分子プローブを含み、さらに、例えば、担体等の医薬品添加物を含んでいてもよい。本明細書において医薬品添加物は、日本薬局方、アメリカ薬局方、ヨーロッパ薬局方等で医薬品添加物として許認可を受けている化合物のことをいう。担体としては、例えば、水性溶媒及び非水性溶媒が挙げられる。水性溶媒としては、例えば、リン酸カリウム緩衝液、生理食塩水、リンゲル液、蒸留水等が挙げられる。非水性溶媒としては、例えば、ポリエチレングリコール、植物性油脂、エタノール、グリセリン、ジメチルスルホキサイド、プロピレングリコール等が挙げられる。また、本発明のキットは、本発明のイメージング用分子プローブを入れるための容器をさらに含んでいてもよく、本発明のイメージング用分子プローブ及び本発明のイメージング用分子プローブを含有する注射液が容器に充填されていてもよい。容器としては、例えば、シリンジやバイアル瓶等が挙げられる。
本発明のキットは、例えば、バッファー、浸透圧調整剤等の分子プローブを調製するための成分や、注射器等の分子プローブの投与に使用する器具等をさらに含むことができる。
[本発明のキットのさらなる態様]
本発明は、さらにその他の態様として、上記の分子プローブ前駆体を含むキットに関する。本発明の分子プローブ前駆体を含むキットの実施形態としては、本発明のイメージング用分子プローブを調製するためのキット、本発明のイメージング方法を行うためのキット、本発明の膵島量の測定方法を行うためのキット、本発明の糖尿病の予防又は治療又は診断のキットなどが挙げられる。本発明の分子プローブ前駆体を含むキットは、これらの各実施形態において、それぞれの形態に応じた取扱い説明書を含むことが好ましい。
本発明の分子プローブ前駆体の形態は特に限定されず、例えば、溶液、粉末等が挙げられ、取扱の点からは、粉末が好ましく、より好ましくは凍結乾燥された粉末(凍結乾燥製剤)である。
本発明の分子プローブ前駆体を含むキットは、例えば、イメージング用分子プローブ前駆体の標識化に使用する化合物であって、上記式(I)で表される基を有する標識化合物を含んでいてもよい。上記式(I)で表される基を有する標識化合物において、上記式(I)で表される基がエステル結合を介してスクシンイミドと結合したスクシンイミジルエステル化合物であることが好ましく、より好ましくは上記式(II)で表されるスクシンイミジルエステル化合物、さらに好ましくは上記式(IIa)で表されるスクシンイミジルエステル化合物である。該実施形態のキットは、中でも、標識化合物として[18F]N-succinimidyl 4-fluorobenzoateや、[18F]N-succinimidyl 4-fluorobenzoateの出発原料を含むことがより好ましい。出発原料としては、例えば、ethyl 4-(trimethylammonium triflate) benzoate、ethyl 4-(tosyloxy)benzoate、ethyl 4-(methylsulfonyloxy)benzoate等が挙げられる。該実施形態のキットは、さらに、例えば、上記標識化合物を用いた本発明のイメージング用分子プローブ前駆体の標識化方法が記載された取扱い説明書を含んでもよい。
本発明の分子プローブ前駆体を含むキットは、[123I]N-succinimidyl 3-iodobenzoate、[124I]N-succinimidyl3-iodobenzoate、[125I]N-succinimidyl3-iodobenzoate、及び/又は[131I]N-succinimidyl3-iodobenzoate等の標識化合物や、該標識化合物の出発原料を含むことが好ましい。出発原料としては、例えば、2,5-dioxopyrrolidin-1-yl 3-(tributylstannyl)benzoate、2,5-dioxopyrrolidin-1-yl 3-bromobenzoate、2,5-dioxopyrrolidin-1-yl 3-chlorobenzoate、及び2,5-dioxopyrrolidin-1-yl 3-iodobenzoate等が挙げられる。
本発明の分子プローブ前駆体を含むキットは、さらに、例えば、イメージング用分子プローブの脱保護に使用する試薬及び/又は標識化に使用する試薬を含んでいてもよい。
本発明の分子プローブ前駆体を含むキットは、さらに、例えば、標識化合物の自動合成装置、及び、該標識化合物の自動合成装置を用いた上記式(I)で表される基を有する標識化合物の合成方法が記載された取扱い説明書を含んでいてもよい。該自動合成装置は、標識化合物の合成に加えて、例えば、合成した標識化合物を用いたイメージング用分子プローブ前駆体の標識化及び脱保護が可能な自動合成装置であってもよい。該キットは、さらに、標識化合物の合成に使用する放射性核種を含む試薬を含んでいてもよい。放射性核種を含む試薬としては、例えば、11C、13N、15O、18F、64Cu、67Ga、68Ga、75Br、76Br、77Br、99mTc、111In、123I、124I、125I又は131Iといった放射性同位元素を含む試薬が挙げられる。
本発明は、さらにその他の態様として、本発明の分子プローブ前駆体を合成するための自動ペプチド合成装置、及び、上記式(I)で表される基を有する標識化合物及び/又は標識化合物の自動合成装置を含むキットに関する。該自動合成装置は、標識化合物の合成に加えて、例えば、合成した標識化合物を用いた分子プローブ前駆体の標識化及び脱保護が可能な自動合成装置であってもよい。該キットは、本発明の分子プローブ前駆体の合成方法が記載された取扱い説明書を含んでいてもよい。該取扱い説明書には、さらに、例えば、上記式(I)で表される基を有する標識化合物の合成方法、それを用いた標識化方法、及び、脱保護方法等が記載されていてもよい。該キットは、さらに、標識化合物の合成に使用する放射性核種を含む試薬を含んでいてもよい。
本発明は、さらにその他の態様として、本発明の分子プローブ前駆体の合成、上記標識化合物の合成、上記標識化合物を用いたイメージング用分子プローブ前駆体の標識化及び脱保護を行う自動合成装置、及び、該自動合成装置を用いた本発明のイメージング用分子プローブの製造方法が記載された取扱い説明書を含むキットに関する。取扱い説明書には、例えば、分子プローブ前駆体の合成方法、上記標識化合物の合成方法、上記標識化合物を用いた分子プローブ前駆体の標識化及び脱保護方法等が記載されていることが好ましい。該キットは、さらに、標識化合物の合成に使用する放射性核種を含む試薬を含んでいてもよい。
[本発明のイメージング用試薬]
本発明は、さらにその他の態様として、本発明のイメージング用分子プローブを含むイメージング用試薬に関する。本発明のイメージング用試薬は、有効成分として本発明のイメージング用分子プローブを含み、さらに、例えば、担体等の医薬品添加物を含んでいてもよい。担体は、上記のとおりである。
以下に、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定して解釈されない。
なお、本明細書の記載において、以下の略語を使用する。
OBu:ブチルエステル基
Boc:ブトキシカルボニル基
Trt:トリチル基
Pdf:2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル基
Mmt:4−メトキシトリチル基
Fmoc:9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基
(実施例1)
配列番号1の第40番目のリジン残基の側鎖のアミノ基が、[18F]4-fluorobenzoyl基で標識され(以下、「[18F]FB標識」とも言う)、かつ、C末端のカルボキシル基がアミド化されている下記式(3)の分子プローブ(配列番号3)を用いてマウスの体内分布の測定を行った。まず、下記式(3)の分子プローブは、以下のようにして調製した。
[分子プローブの調製]
ポリペプチドの合成は、Applied Biosystems社製ペプチド自動合成機(433A型)を用いて添付のソフトに従って行った。側鎖に官能基のあるアミノ酸は、それぞれ、His(Trt)、Asp(OBu)、Ser(OBu)、Lys(Boc)、Gln(Trt)、Glu(OBu)、Arg(Pbf)、Asn(Trt)、Trp(Boc)を用いた。第12番目及び第27番目のリジンとしてはLys(Mmt)を使用した。Rink Amide MBHA(0.125mmol、0.34mmol/g)を出発樹脂とし、配列に従って逐次アミノ酸を延長し、下記式(4)で表される保護ペプチド樹脂を得た。なお、下記式(4)において、Lys(Mmt)以外は側鎖の保護基の表記を省略した。
Fmoc-HGEGTFTSDLSK(Mmt)QMEEEAVRLFIEWLK(Mmt)NGGPSSGAPPPSK-樹脂 (4) (配列番号4)
1.5%TFA−5%TIS−93.55%CHClを用いた定法処理により、上記式(4)で表される保護ペプチド樹脂から、まず、第12番目及び第27番目のリジン残基の側鎖の保護基(Mmt基)を除去し、遊離した第12番目及び第27番目のリジン残基の側鎖のアミノ基をFmoc化した。ついで、第12番目及び第27番目のリジン残基並びにN末端のアミノ基のFmoc基以外の全保護基の除去と樹脂からのペプチドの切り出しとを、92.5%TFA−2.5%TIS−2.5%HO−2.5%エタンジチオールを用いた定法処理によって行った。反応終了後、ろ別により担体樹脂を取り除き、乾燥エーテルを加えて粗生成物を沈殿させ、ろ別した。得られた粗生成物は、島津製作所のLC8A分取装置(ODS カラム3cmx25cm)を用い、0.1%TFAを含むCHCN−HOのリニアーグラジエントの系で精製し、フラクションコレクターを用いて目的の画分を集めた後、下記式(5)の分子プローブ前駆体を凍結乾燥白色粉末として得た。
Fmoc-HGEGTFTSDLSK(Fmoc)QMEEEAVRLFIEWLK(Fmoc)NGGPSSGAPPPSK-NH2 (5) (配列番号5)
得られた上記式(5)の分子プローブ前駆体(500μg)を、Borate Buffer(pH7.8)に溶解させ、それに[18F]N-succinimidyl 4-fluorobenzoate([18F]SFB)を加え反応溶液をpH8.5〜9.0に調整し標識化を行った。その後、DMF、Piperidineを加えることで脱保護反応を行い、目的物である上記式(3)の分子プローブ(配列番号1の第40番目のリジン残基が標識化された分子プローブ)を得た。なお、上記式(3)の分子プローブにおいて、N末端のα−アミノ基は非修飾である。
[体内分布]
調製した上記式(3)の分子プローブ(2.9μCi)を無麻酔の6週齢ddYマウス(雄性、体重30g)に静脈注射(尾静脈)により投与した。投与5分後、15分後、30分後、60分後、120分後に各臓器を摘出した(n=5)。各臓器の重量と放射能とを測定し、単位重量あたりの放射能から集積量(%dose/g)を算出した。その結果の一例を下記表1及び図1に示す。図1は、各臓器への分子プローブの集積の経時変化を示すグラフである。
上記表1及び図1に示すとおり、上記式(3)の分子プローブの膵臓への集積(単位重量あたりの集積量)は、投与後5分で12.1%dose/g、投与後15分で14.7%dose/g、投与後30分で28.0%dose/gであった。上記式(3)の分子プローブは、投与後15分〜120分の時間帯において、肺及び腎臓を除けば、膵臓に最も多く集積した。また、上記式(3)の分子プローブは、投与後60分〜120分の時間帯において、肺を除けば、膵臓に最も多く集積した。投与後15分〜120分の時間帯では、膵臓への集積が25%dose/gを超えるレベルで維持された。さらに、上記式(3)の分子プローブは、血液への集積に対する膵臓への集積比(膵臓の集積/血液の集積)が高く、投与後30分以降における集積比は3を超え、特に、投与後60分〜120分の時間帯における集積比は5を超えていた。これらのことから、上記式(3)の分子プローブによれば、例えば、PETによる画像化のための所望のコントラストが得られることが示唆された。また、上記表1及び図1に示すとおり、上記式(3)の分子プローブは、骨への放射能集積が低く、生体内で脱フッ素代謝を受けていないことが示唆された。これらのことにより、上記式(3)で表される本実施例1の分子プローブは、膵β細胞のイメージングに適していると考えられる。
(参考例1)
参考例1として、配列番号6のN末端のα−アミノ基と第19番目のリジン残基に保護基(Fmoc)が結合し、C末端のカルボキシル基がアミド化されている下記式(6)の分子プローブ前駆体から分子プローブを調製し、その分子プローブを用いてマウスの体内分布の測定を行った。つまり、配列番号6のアミノ酸配列において第4番目のリジンの側鎖のアミノ基に[18F]FBが結合し、かつ、C末端のカルボキシル基がアミド化された下記式(7)で表される分子プローブ(配列番号7)を用いてマウスの体内分布の測定を行った。分子プローブ前駆体及び分子プローブの調製並びに体内分布の測定は、実施例1と同様に行った。その結果の一例を下記表2及び図2に示す。
Fmoc-DLSKQMEEEAVRLFIEWLK(Fmoc)NGGPSSGAPPPS-NH2 (6) (配列番号6)
(参考例2)
参考例2として、配列番号8のN末端のα−アミノ基と第4番目のリジン残基に保護基(Fmoc)が結合し、C末端のカルボキシル基がアミド化されている下記式(8)の分子プローブ前駆体から分子プローブを調製し、その分子プローブを用いてマウスの体内分布の測定を行った。つまり、配列番号8のアミノ酸配列において第19番目のリジンの側鎖のアミノ基に[18F]FBが結合し、かつ、C末端のカルボキシル基がアミド化された下記式(9)で表される分子プローブ(配列番号9)を用いてマウスの体内分布の測定を行った。分子プローブ前駆体及び分子プローブの調製並びに体内分布の測定は、実施例1と同様に行った。その結果の一例を下記表3及び図3に示す。
Fmoc-DLSK(Fmoc)QMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS-NH2 (8) (配列番号8)
上記表1〜3及び図1〜3に示すとおり、上記式(3)で表される本実施例1の分子プローブは、上記式(7)で表される参考例1の分子プローブ及び上記式(9)で表される参考例2の分子プローブと比べて膵臓への集積量が多く、また、膵臓の隣接臓器である肝臓への集積量が少なかった。特に、投与後30分以降の時間帯において、上記式(3)で表される本実施例1の分子プローブは、膵臓への集積量が、参考例1の分子プローブ及び上記参考例2の分子プローブに比べて5倍以上であった。このことからも、本実施例1で調製した分子プローブは、特異的に膵臓に集積したといえる。
上記式(7)で表される分子プローブをマウスに投与することにより、マウスの膵島の三次元イメージング画像が得られている。また、上記式(9)で表される分子プローブをマウスに投与することにより、マウスの膵島の非侵襲的な三次元イメージング画像が得られている。上記のとおり、C末端のリジンの側鎖を標識した上記式(3)で表される本実施例1の分子プローブは、上記式(7)で表される参考例1の分子プローブ及び上記式(9)で表される参考例2の分子プローブと比べて膵臓への集積量が極めて多く、また、膵臓の隣接臓器である肝臓への集積量が少ないことから、本実施例1の分子プローブにより、非侵襲的な膵島の三次元イメージングが可能なことが示唆された。
これらの結果より、本発明の分子プローブであれば、ヒトにおいて非侵襲的膵臓の三次元イメージング、とりわけ非侵襲的膵β細胞の三次元イメージングが可能なことが示唆された。
(参考例3)
参考例3として、下記式(10)で表される分子プローブ(配列番号10)を用い、実施例1と同様にマウスの体内分布の測定を行った。その結果の一例を下記表4及び図4に示す。
上記表1及び4に示すとおり、上記式(3)で表される本実施例1の分子プローブは、上記式(10)で表される参考例3の分子プローブと比べて膵臓への集積量が多く、また、膵臓の隣接臓器である肝臓への集積量が少なかった。特に、投与後30分以降の時間帯において、上記式(3)で表される本実施例1の分子プローブは、参考例3の分子プローブに比べて約2.5倍以上であった。よって、本実施例1で調製した分子プローブは、特異的に膵臓に集積したといえる。
実施例1の分子プローブ、及び参考例1〜3の分子プローブの体内分布実験により得られた集積量に基づき、各プローブについての膵臓/肝臓比(膵臓の集積量/肝臓の集積量)を下記表5に、膵臓/腎臓比(膵臓の集積量/腎臓の集積量)を下記表6、膵臓/血液比(膵臓の集積量/腎臓の集積量)を下記表7に示す。
上記表5に示すように、実施例1の分子プローブ(上記式(3)の分子プローブ)は、参考例1〜3の分子プローブと比較して顕著に膵臓/肝臓比が経時的に高くなった。特に、投与後30分以降の時間帯では、実施例1の分子プローブは参考例1〜3の分子プローブに対して3.4倍を超える膵臓/肝臓比を示し、投与後60分以降の時間帯では6倍を超える膵臓/肝臓比を示した。上記表6に示すように、実施例1の分子プローブは、参考例1〜3の分子プローブと比較して膵臓/腎臓比が経時的に高くなり、実施例1の分子プローブの膵臓/腎臓比は投与後60分以降の時間帯で1を超えた。上記表7に示すように、実施例1の分子プローブは、参考例1〜3の分子プローブと比較して膵臓/血液比が経時的に顕著に高くなり、実施例1の分子プローブの膵臓/血液比は投与後早期で1を超え、良好な血液クリアランスを示した。このように膵臓への集積量が高い一方で、膵臓の周辺臓器への集積が少なく、血液クリアランスに優れる本実施例1の分子プローブによれば、イメージングした際に、明瞭な膵臓の画像が得られることが示唆された。
これらの結果より、本発明のイメージング用分子プローブであれば、ヒトにおいて非侵襲的膵臓の三次元イメージング、とりわけ非侵襲的膵β細胞の三次元イメージングが可能なことが示唆された。
(実施例2)
[分子プローブの調製]
[18F]SFBに替えて[125I]N-succinimidyl 3-iodobenzoate([125I]SIB)を使用した以外は実施例1と同様にして下記式(11)の分子プローブ(配列番号11)を調製した。下記式(11)の分子プローブは、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、第40番目のリジン残基の側鎖のアミノ基が[125I]3-iodobenzoyl基で標識され(以下、「[125I]IB標識」とも言う)、C末端のカルボキシル基がアミド化され、かつN末端のα−アミノ基が非修飾である。
[体内分布]
調製した上記式(11)の分子プローブ(0.48μCi)を無麻酔の6週齢ddYマウス(雄性、体重30g)に静脈注射(尾静脈)により投与した。投与5分後、15分後、30分後、60分後、120分後に各臓器を摘出した(n=5)。各臓器の重量と放射能とを測定し、単位重量あたりの放射能から集積量(%dose/g)を算出した。その結果の一例を下記表8及び図5に示す。図5は、各臓器への分子プローブの集積の経時変化を示すグラフである。
上記表8及び図5に示すとおり、上記式(11)で表される本実施例2の分子プローブは、投与後30分〜120分の時間帯において、肺を除けば膵臓に最も多く集積し、膵臓への集積が24%dose/gを超えるレベルで維持された。また、上記表8及び図5に示すとおり、上記式(11)の分子プローブは、甲状腺への集積に大きな変化が見られないことから、生体内での脱ヨウ素代謝受けていないことが示唆された。これらのことにより、本実施例2で調製した上記式(11)の分子プローブは、膵β細胞のイメージング、好ましくは膵β細胞のGLP−1Rのイメージングに適していると考えられる。
(参考例4)
参考例4として、下記式(12)で表される分子プローブ(配列番号12)を用い、実施例1と同様にマウスの体内分布の測定を行った。その結果の一例を下記表9及び図6に示す。
上記表8及び9に示すとおり、上記式(11)で表される本実施例2の分子プローブは、上記式(12)で表される参考例4の分子プローブと比べて膵臓への集積量が多く、特に、投与後30分以降の時間帯において、上記式(11)の分子プローブは、参考例4の分子プローブに比べて約2.5倍を超えていた。また、上記式(11)の分子プローブは、参考例4の分子プローブと比べて膵臓の隣接臓器である肝臓への集積量が少なかった。よって、本実施例2で調製した上記式(11)の分子プローブは、特異的に膵臓に集積したといえる。
実施例2の分子プローブ及び参考例4の分子プローブの体内分布実験により得られた集積量に基づき、各プローブについて膵臓/肝臓比を下記表10に、膵臓/腎臓比を下記表11、膵臓/血液比を下記表12に示す。
上記表10に示すように、実施例2の分子プローブ(上記式(11)の分子プローブ)は、参考例4の分子プローブと比較して顕著に膵臓/肝臓比が経時的に高くなった。特に、投与後30分以降の時間帯では、実施例2の分子プローブは参考例4の分子プローブに対して2.5倍を超える膵臓/肝臓比を示した。上記表11に示すように、実施例2の分子プローブは、参考例4の分子プローブと比較して膵臓/腎臓比が経時的に高くなり、実施例2の分子プローブの膵臓/腎臓比は投与後30分以降の時間帯で1を超えた。上記表12に示すように、実施例2の分子プローブは、参考例4の分子プローブと比較して膵臓/血液比が経時的に顕著に高くなり、実施例2の分子プローブの膵臓/血液比は投与後30分以降時間帯で1を超え、良好な血液クリアランスを示した。このように膵臓への集積量が高い一方で、膵臓の周辺臓器への集積が少なく、血液クリアランスに優れる本実施例2の分子プローブによれば、イメージングした際に、明瞭な膵臓の画像が得られることが示唆された。
[2次元イメージング解析]
調製した上記式(11)の分子プローブ(4μCi/150μL)を無麻酔のMIP−GFPマウス(雄性、体重20g)に静脈注射により投与し、投与30分後及び60分後に膵臓を摘出した(n=2)。摘出した膵臓から切片を切り出し、切片をスライドガラス上に置き、その上にカバーガラスを載せた。切片の蛍光及び放射能(オートラジオグラフィー)は、画像解析装置(商品名:Typhoon 9410、GEヘルスケア社製)を用いて測定した(露光時間:18時間)。その結果の一例を図7に示す。
コントロールとして、標識化していないexendin(9−39)(コールドプローブ、配列番号15)を無麻酔のMIP−GFPマウス(雄性、体重20g)に静脈注射により前投与した(0.5mg/mLを0.1mL)。前投与から30分後に上記式(11)の分子プローブ(4μCi/150μL)を静脈注射により投与し、上記式(11)の分子プローブの投与から30分後及び60分後に膵臓を摘出した(n=2)。摘出した膵臓から切片を切り出し、得られた切片について、上記と同様にして蛍光及び放射能の測定を行った。その結果の一例を、上記式(11)の分子プローブのみを投与した結果とあわせて図7に示す。
図7は、上記式(11)の分子プローブを投与したMIP−GFPマウス、及びコールドプローブを前投与したMIP−GFPマウス(コントロール)の膵臓切片のイメージ解析の結果の一例を示す画像である。図7において、左側が投与後60分に膵臓を摘出した切片についての蛍光シグナル(a)及び放射性シグナル(b)を示す画像であり、右側が投与後30分に膵臓を摘出した切片についての蛍光シグナル(a)及び放射性シグナル(b)を示す画像であり、それぞれにおいて、左側がコールドプローブを前投与した切片(コントロール)の画像、右側が上記式(11)の分子プローブのみを投与した切片の画像である。
図7(a)に示すように、いずれのMIP−GFPマウスの膵臓切片においても、画像解析装置によって蛍光GFPシグナルが観察された。一方、図7(b)に示すように、コールドプローブを前投与した切片からは放射性シグナルはほとんど検出されなかった。このことから、コールドプローブを前投与してGLP−1受容体への結合を阻害することにより、上記式(11)の分子プローブの取り込みが阻害されたことが観察できた。また、図7(a)及び(b)に示すように、標識化された上記式(11)の分子プローブから検出された放射性シグナルの局在性は、GFPシグナルとほぼ一致していた。このことから、上記式(11)の分子プローブが、膵β細胞のGLP−1受容体に特異的に集積することが確認できた。
ここで、125I、123I及び131Iはいずれもγ線放出核種である。さらに、125I及び123Iは核スピン数も同一である。これらのことから、上記式(11)の分子プローブの標識化に使用する放射性ヨウ素原子(125I)を、123I又は131Iとした場合であっても、上記式(13)の分子プローブとほぼ同様の挙動を示すことが推測される。また、124Iとした場合であっても、上記式(11)の分子プローブとほぼ同様の挙動を示すと推測される。したがって、上記式(11)の分子プローブの125Iを、123I、124I又は131Iとした分子プローブを使用することにより、例えば、SPECTやPET等での膵β細胞の非侵襲の三次元イメージング、好ましくは膵β細胞の定量が可能なことが示唆された。
(実施例3)
[分子プローブの調製]
[18F]SFBに替えて[123I]N-succinimidyl 3-iodobenzoate([123I]SIB)を使用した以外は実施例1と同様にして下記式(13)の分子プローブ(配列番号13)を調製した。下記式(13)の分子プローブは、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、第40番目のリジン残基の側鎖のアミノ基が[123I]3-iodobenzoyl基で標識され(以下、「[123I]IB標識」とも言う)、C末端のカルボキシル基がアミド化され、かつN末端のα−アミノ基が非修飾である。
[三次元イメージング]
上記式(13)の分子プローブを用いてマウスのSPECT撮像を行った。上記式(13)の分子プローブ(276μCi/310μL)を麻酔した6週齢ddYマウス(雄性、体重約30g)に静脈注射により投与し、SPECT撮像を行った。SPECT撮像は、ガンマカメラ(製品名:SPECT2000H−40、日立メディコ製)を用いて下記の撮像条件で、分子プローブ投与後30分から32分間行った。得られた画像を、下記の再構成条件で再構成処理を行った。
撮像条件
コリメータ :LEPH pinholeコリメータ
収集範囲 :360°
ステップ角度 :11.25°
収集時間 :1方向あたりの収集時間40秒
60秒ごと1フレーム×32フレーム(計32分間)
再構成条件
前処理フィルタ:Butterworthフィルタ(order:10、cutoff周波数:0.08)
その結果の一例を図8に示す。画像は分子プローブ投与30分後のものである(積算時間:32分)。図8において、左から順に、横断像(transverse view)、矢状断像(sagittal view)、及び冠状断像(coronal view)を示す。図8おける白丸が膵臓の位置を示す。
図8に示すとおり、上記式(13)の分子プローブを用いることによって、マウスにおいて非侵襲的に膵臓の位置を確認することができた。つまり、本発明の分子プローブによって非侵襲的に膵島を三次元イメージングすることが可能であることが確認できた。
このように、ヒトよりも膵臓のサイズが小さく、かつ、臓器が密集しているマウスにおいて非侵襲的に膵臓の位置を確認できたことから、マウスよりも膵臓のサイズが大きく、かつ、臓器が密集していないヒトであれば、例えば、膵臓の位置、膵臓のサイズをより明確に判別でき、さらには、膵臓におけるプローブの発現量を測定できることが示唆された。
これらの結果より、本発明のイメージング用分子プローブであれば、ヒトにおいて非侵襲的な膵島の三次元イメージングが可能であり、とりわけ膵β細胞の三次元イメージングや膵β細胞のGLP−1受容体を非侵襲的に三次元イメージングすることが可能なことが示唆された。
以上説明したとおり、本発明は、例えば、医療分野、分子イメージングの分野、糖尿病に関する分野などで有用である。
配列番号1:本発明の膵島イメージング用分子プローブのアミノ酸配列
配列番号2:本発明の膵島イメージング用分子プローブ前駆体のアミノ酸配列
配列番号3:実施例1の膵島イメージング用分子プローブのアミノ酸配列
配列番号4:実施例1の膵島イメージング用分子プローブの製造に用いるポリペプチドのアミノ酸配列
配列番号5:実施例1の膵島イメージング用分子プローブの製造に用いる分子プローブ前駆体のアミノ酸配列
配列番号6:参考例1の分子プローブ前駆体のアミノ酸配列
配列番号7:参考例1の分子プローブのアミノ酸配列
配列番号8:参考例2の分子プローブ前駆体のアミノ酸配列
配列番号9:参考例2の分子プローブのアミノ酸配列
配列番号10:参考例3の分子プローブのアミノ酸配列
配列番号11:実施例2のイメージング用分子プローブのアミノ酸配列
配列番号12:参考例4の分子プローブのアミノ酸配列
配列番号13:実施例3のイメージング用分子プローブのアミノ酸配列
配列番号14:本発明のイメージング用分子プローブの製造に用いるポリペプチドのアミノ酸配列
配列番号15:Exendin(9−39)のアミノ酸配列

Claims (10)

  1. 膵島のイメージングに用いられる分子プローブであって、
    下記式(1)で表されるポリペプチド、又は、
    下記式(1)のポリペプチドのアミノ酸配列と0%以上の相同性を有するポリペプチドであって、膵島に結合可能なポリペプチドを含む、膵島イメージング用分子プローブ。
    Z-HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPSX-NH2 (1) (配列番号1)
    上記式(1)において、
    「X」は、側鎖のアミノ基が、下記式(I)で表される基によって標識されたリジン残基を示し、
    「Z-」は、N末端のα−アミノ基が、非修飾であるか、又は電荷を有さない修飾基により修飾されていることを示し、
    「-NH2」は、C末端のカルボキシル基が、アミド化されていることを示す。
    式(I)において、
    Aは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を示し、
    1は、11C、13N、15O、18F、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I又は131Iを含む置換基を示し、
    2は、水素原子、又は、R1とは異なる1又は複数の置換基を示し、
    3は、結合手、C1−C6アルキレン基及びC1−C6オキシアルキレン基のいずれかを示す。
  2. 請求項1記載の膵島イメージング用分子プローブを製造するための膵島イメージング用分子プローブの前駆体であって、
    下記式(2)で表されるポリペプチド、又は、
    下記式(2)のポリペプチドのアミノ酸配列と0%以上の相同性を有するポリペプチドであって、標識化及び脱保護後に膵島に結合可能なポリペプチドを含む、膵島イメージング用分子プローブ前駆体。
    *-HGEGTFTSDLSK* QMEEEAVRLFIEWLK* NGGPSSGAPPPSK-NH2 (2) (配列番号2)
    上記式(2)において、
    「*-」は、N末端のα−アミノ基が、保護基により保護されているか、又は電荷を有さない修飾基により修飾されていることを示し、
    「K*」は、リジンの側鎖のアミノ基が、保護基により保護されていることを示し、
    「-NH2」は、C末端のカルボキシル基が、アミド化されていることを示す。
  3. 膵島のイメージング用分子プローブの製造方法であって、
    請求項2記載の膵島イメージング用分子プローブ前駆体を標識化及び脱保護することを含む、膵島イメージング用分子プローブの製造方法。
  4. 前記膵島イメージング用分子プローブ前駆体の標識化が、下記式(I)で表される基を有する化合物を用いて標識化することを含む、請求項3記載の膵島イメージング用分子プローブの製造方法。
    式(I)において、
    Aは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を示し、
    1は、11C、13N、15O、18F、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I又は131Iを含む置換基を示し、
    2は、水素原子、又は、R1とは異なる1又は複数の置換基を示し、
    3は、結合手、C1−C6アルキレン基及びC1−C6オキシアルキレン基のいずれかを示す。
  5. 膵島のイメージングを行うためのキットであって、
    請求項1記載の膵島イメージング用分子プローブ及び請求項2記載の膵島イメージング用分子プローブ前駆体の少なくとも一方を含む、キット。
  6. 前記膵島イメージング用分子プローブを注射液の形態で含有する、請求項5記載のキット。
  7. 膵島のイメージングを行うための試薬であって、
    請求項1記載の膵島イメージング用分子プローブを含む、膵島イメージング用試薬。
  8. 膵島のイメージング方法であって、
    予め膵島に結合させた請求項1記載の膵島イメージング用分子プローブのシグナルを検出することを含む、膵島のイメージング方法。
  9. 予め膵島に結合させた請求項1記載の膵島イメージング用分子プローブのシグナルを検出すること、及び、
    検出した膵島イメージング用分子プローブのシグナルから膵島量を算出することを含む、膵島量の測定方法。
  10. さらに、算出した膵島量を提示することを含む、請求項9記載の膵島量の測定方法。
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