JP3768591B2 - 生体組織スライス標本のポジトロン撮影装置 - Google Patents
生体組織スライス標本のポジトロン撮影装置 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、生物活性を保持した生体組織スライス標本のポジトロン撮影装置に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、様々な生体組織における代謝物質等の挙動を in vitro で簡便かつ正確に画像化することのできる新しいポジトロン撮影装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
オートラジオグラフィー (Autoradiography)法は、試料中の放射性核種やその標識化合物の分布を肉眼または顕微鏡で視認可能に記録する写真技術として、従来より化学、生物学等の分野で広く利用されている。しかしながら、従来のオートラジオグラフィー法では、例えば生体組織を対象とする場合には、組織標本を凍結させ、乾燥させ、数日間もフィルムに露呈させるため、当然のことながら組織標本は本来の代謝機能等の生物活性を消失していまう。このため、生きている組織において標識化合物の挙動を追跡することはできず、また複数の試験を同一標本に対して実施することも不可能であった。さらには、生物活性を有する組織にのみ生じる幾つかの重要な生物反応を計測できないという不都合も存在した。
【0003】
生体の組織を生体外(in vitro)に取り出し、統制された条件下でその構造および機能を調べることは、その組織をより詳細に理解するために不可欠の手法であるが、従来の放射化学標識物質によるオートラジオグラフィーは、上記のとおりの理由により不十分なものであった。このため、代謝機能等の生物活性を保持した状態の生体組織標本に標識化合物を取り込ませて、その挙動を簡便かつ正確に可視化することのできる手段が待望されていた。
【0004】
この発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、生体組織標本における放射性核種標識化合物の挙動を、その組織本来の生物活性の動態と関連させて画像化することのできる新しい撮影装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記課題を解決するものとして、β+ 粒子貫通薄膜を介してβ+ 粒子感応フィルム上に保持された生体組織スライス標本中のポジトロン核種標識化合物から放出されるβ+ 粒子を感応フィルムに定着させ、このフィルムの放射活性部位を画像化することによって生体組織スライス標本における上記化合物の挙動を撮影するための装置であって、生体組織スライス標本を保持するための培養容器と、この培養容器を載置するβ+ 粒子感応フィルムとによって構成されており、培養容器は、遮水性のβ+ 粒子貫通薄膜を底面に備えた外ケース体と、周壁下方の同一水平位置に複数の小孔を等間隔で有し、かつ底面にネットを備えた内ケース体とからなり、ネット上に生体組織スライス標本を保持した内ケース体を外ケース体内に下降させることによって外ケース体内の培養液が内ケース体底面のネットおよび周壁の小孔を通じて内ケース体内に均等に流入することを特徴とする生体スライス標本のポジトロン撮影装置を提供する。
【0006】
また、この発明のポジトロン撮影装置においては、上記の遮水性のβ+ 粒子貫通薄膜が、ポリプロピレン・フィルムであること、β+ 粒子感応フィルムが、蓄燐光体フィルムであることをそれぞれ好ましい態様としている。
すなわち、この発明の装置においては、生物個体から取り出した組織のスライス標本に、ポジトロン核種で標識した化合物を取り込ませ、このポジトロン核種が放出するβ+ 粒子をフィルムに定着させてその放射活性部位を画像化する。このポジトロン核種で標識した化合物は、従来より、ポジトロン断層撮影法(Positron emission tomography、PET)において用いられている。このPET法では、サイクロトロンで作成したポジトロン(陽電子、Positron)核種を用いてポジトロン標識化合物を合成し、これを生体内に投与後、標識化合物から放出された放射線粒子をPETで画像化する方法である。このポジトロン核種は炭素、窒素、酸素等の生体構成元素が主であることから(例えば、15O、11C、18F)、体内で代謝される各種物質や薬剤を、その構造を変化させることなく標識できるという特徴がある。また、ポジトロン核種は、生物医学的研究等において一般的に用いられている放射性同位体(例えば、3H、14C、125I等)に比較して強いエネルギーのβ+ 粒子を放出し、しかもその半減期が短時間(15O:2.07分、11C:20.4分、18F:109.7分)であるという特徴を有している。これらの特徴は、標識化合物の高特異的な放射活性検出を可能とする。すなわち、その強いエネルギーによって、β+ 粒子が液体や生体組織に数百ミクロンの深さまで侵入し、生体組織のスライス標本を生きたままの状態で培養している間にその放射活性を検出することが可能である。しかも、その放射活性の強度はポジトロン核種の濃度に依存するため、標識化合物のスライス標本における挙動を正確に検出することができる。
【0007】
さらに、β+ 粒子感応フィルムから離れて存在するβ+ 粒子はβ- 粒子と衝突して消滅する可能性が高く、β+ 粒子感応フィルムに定着する確率は低下する。従って、生体スライス標本には取り込まれていないポジトロン標識化合物がその周囲に多量に存在していても、それらの化合物の存在は定量的画像化を損なうことはない。このことは、同一標本における標識化合物の取り込み・結合の過程を経時的に画像化することを可能にする。
【0008】
この発明の装置は、以上の原理からなる生体組織スライス標本のポジトロン撮影を、簡便かつ確実に実施するための装置である。以下、その実施の形態について詳しく説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
この発明のポジトロン撮影装置は、例えば図1に斜視図を例示したようなものとして構成することができる。例えば、この図1に例示した装置は、内外2つのケース体(1)(2)によって構成された培養容器(3)が、β+ 粒子感応フィルム(4)の上に載置されている。外ケース体(2)は、その上部および下部が開放で、底面が遮水性の薄膜(5)で封止されていることによって、この培養容器(3)内に培養液を満たすことができるようになっている。一方、内ケース体(1)は、同じくその上部および下部が開放で、底面にナイロンネット(6)を備えており、このナイロンネット(6)上に生体スライス標本(7)を保持するようになっている。
【0010】
外ケース体(2)の薄膜(5)はまた、β+ 粒子を効率良く貫通させるため、この薄膜(5)上のナイロンネット(6)に保持させたスライス標本(7)から放出されるβ+ 粒子が薄膜(5)下の感応フィルム(4)に確実に定着する。このような遮水性のβ+ 粒子貫通薄膜(5)としては、例えばポリプロピレン・フィルムを用いることができる。また、β+ 粒子感応フィルム(4)としては、X線フィルム等を用いることもできるが、X線フィルムより高感度で、しかもより広いダイナミックレンジを有する蓄燐光体スクリーンを用いるのが好ましい。
【0011】
そして、この発明のポジトロン撮影装置は、その特徴として、内ケース体(1)がその周壁下方の同一水平位置に複数の小孔(8)を等間隔で有しており、これによって複数の生体スライス標本(7)を試験する場合でも、全てを同一の条件で培養液に浸すことができるようになっている。すなわち、実際の測定に際しては、図2(A)に示したように、先ず、培養容器(3)から内ケース体(1)を取り出し、そのナイロンネット(6)にスライス標本(7)を保持させる。具体的には、この図2に示したように、スライス標本(7)と略同一の厚みを有し、上部にネット(9)を貼り合わせた金属リング(10)内に生体スライス標本(7)を載置するようにすればよい。次いで、培養液(11)を満たした外ケース体(2)内にこの内ケース体(1)を静かに下降させる。この時、外ケース体(2)内の培養液(11)は、内ケース体(1)の底面のナイロンネット(6)および周壁下方の小孔(8)から内ケース体(1)内に流入するため、複数個のスライス標本(7)が、時間的、空間的にほぼ均一に培養液(11)と接触するようになる。また、スライス標本(7)は金属リング(10)とその上部のネット(9)によって一定位置に保持され、培養液(11)の流入によっても移動することがなく、全ての標本を同一条件下で測定するが可能である。そして、図2(B)に示したように内ケース体(1)を外ケース体(2)に重ね合わせた後、これらをβ+ 粒子感応フィルム(4)上に載置して測定を開始する。
【0012】
なお、培養液(11)は、測定対象である生体組織スライス標本(7)の生物活性を維持するのに最も適したものを使用し、適宜必要に応じて酸素、二酸化炭素等を培養液(11)中に供給するようにしてもよい。
培養容器(3)のサイズ等については特段の制限はなく、一度に試験するスライス標本(7)の数量等に応じて適宜とすることができる。また、その形状も方形の箱型に限定されるものではなく、円形等とすることもできる。
【0013】
スライス標本(7)は、動物個体の各器官から単離した正常組織、または癌組織等から公知の方法に従って作成することができる。例えば、脳のスライス標本は、神経科学の研究領域で広く用いられている Yamamoto & MacIlwain の方法( J. Neurochem., 13, p1333-1343, 1966)に従って作成することができる。また、ポジトロン核種標識化合物は、生体組織におけるその挙動追跡を目的とする物質を15O、11C、18F等によって公知の方法に従い標識することによって作成することができる。そして、この標識化合物を含有した培養液中にスライス標本を一定時間浸すことによって、スライス標本中に標識化合物を取り込ませることができる。
【0014】
次に、この発明の撮影装置を用いて脳スライス標本のポジトロン撮影を行った実施例を示し、この発明についてさらに詳しく説明する。
【0015】
【実施例】
上記 Yamamoto & MacIlwain の方法に従って麻酔下のラットから素早く脳を取り出し、脳冠状断面スライス標本(300μm)を作成し、図1および図2に示した装置の内ケース体(1)に配置した後、通常の培養液を満たした第1の外ケース体(2)内に内ケース体(1)を移し、酸素95%:二酸化炭素5%存在下37℃で脳スライス標本を予備培養した。一方、ポジトロン核種11Cをサイクロトロンにおいて作成し、この11Cによってベンゾジアゼピン受容体のリガンド(Ro15−1788)を標識し、この11C標識化リガンドを希釈した培養液(11)を第2の外ケース体(2)に満たした。そして、予備培養した脳スライス標本を内ケース体(1)ごと第2の外ケース体(2)内に移し、この第2のケース体(2)をβ+ 粒子感応フィルム(4)上に載置して、酸素95%:二酸化炭素5%存在下37℃で20分間培養し、11C標識化リガンドの結合部位を画像化した。
【0016】
結果は図3に示したとおりであり、大脳皮質、海馬等に強い放射活性が検出され、このことからベンゾジアゼピン受容体がこれらの脳部位に存在することが確認された。
【0017】
【発明の効果】
以上、詳しく説明したとおり、この発明によって、生体組織標本における各種の物質の挙動を、その組織本来の生物活性の動態と関連させて画像化することのできるポジトロン撮影装置が提供される。これによって、生体組織の構造および機能をより詳細に解析することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のポジロトン撮影装置の構成を例示した斜視図である。
【図2】(A)(B)は、各々、図1に示した装置の使用方法を例示した側断面図である。
【図3】この発明の撮影装置によって撮影したラットの脳スライス標本と、そのポジトロン撮影の結果を示した図面に代わる写真である。
【符号の説明】
1 内ケース体
2 外ケース体
3 培養容器
4 β+ 粒子感応フィルム
5 β+ 粒子貫通薄膜
6 ナイロンネット
7 生体組織スライス標本
8 小孔
9 ネット
10 金属リング
11 培養液
【発明の属する技術分野】
この発明は、生物活性を保持した生体組織スライス標本のポジトロン撮影装置に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、様々な生体組織における代謝物質等の挙動を in vitro で簡便かつ正確に画像化することのできる新しいポジトロン撮影装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
オートラジオグラフィー (Autoradiography)法は、試料中の放射性核種やその標識化合物の分布を肉眼または顕微鏡で視認可能に記録する写真技術として、従来より化学、生物学等の分野で広く利用されている。しかしながら、従来のオートラジオグラフィー法では、例えば生体組織を対象とする場合には、組織標本を凍結させ、乾燥させ、数日間もフィルムに露呈させるため、当然のことながら組織標本は本来の代謝機能等の生物活性を消失していまう。このため、生きている組織において標識化合物の挙動を追跡することはできず、また複数の試験を同一標本に対して実施することも不可能であった。さらには、生物活性を有する組織にのみ生じる幾つかの重要な生物反応を計測できないという不都合も存在した。
【0003】
生体の組織を生体外(in vitro)に取り出し、統制された条件下でその構造および機能を調べることは、その組織をより詳細に理解するために不可欠の手法であるが、従来の放射化学標識物質によるオートラジオグラフィーは、上記のとおりの理由により不十分なものであった。このため、代謝機能等の生物活性を保持した状態の生体組織標本に標識化合物を取り込ませて、その挙動を簡便かつ正確に可視化することのできる手段が待望されていた。
【0004】
この発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、生体組織標本における放射性核種標識化合物の挙動を、その組織本来の生物活性の動態と関連させて画像化することのできる新しい撮影装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記課題を解決するものとして、β+ 粒子貫通薄膜を介してβ+ 粒子感応フィルム上に保持された生体組織スライス標本中のポジトロン核種標識化合物から放出されるβ+ 粒子を感応フィルムに定着させ、このフィルムの放射活性部位を画像化することによって生体組織スライス標本における上記化合物の挙動を撮影するための装置であって、生体組織スライス標本を保持するための培養容器と、この培養容器を載置するβ+ 粒子感応フィルムとによって構成されており、培養容器は、遮水性のβ+ 粒子貫通薄膜を底面に備えた外ケース体と、周壁下方の同一水平位置に複数の小孔を等間隔で有し、かつ底面にネットを備えた内ケース体とからなり、ネット上に生体組織スライス標本を保持した内ケース体を外ケース体内に下降させることによって外ケース体内の培養液が内ケース体底面のネットおよび周壁の小孔を通じて内ケース体内に均等に流入することを特徴とする生体スライス標本のポジトロン撮影装置を提供する。
【0006】
また、この発明のポジトロン撮影装置においては、上記の遮水性のβ+ 粒子貫通薄膜が、ポリプロピレン・フィルムであること、β+ 粒子感応フィルムが、蓄燐光体フィルムであることをそれぞれ好ましい態様としている。
すなわち、この発明の装置においては、生物個体から取り出した組織のスライス標本に、ポジトロン核種で標識した化合物を取り込ませ、このポジトロン核種が放出するβ+ 粒子をフィルムに定着させてその放射活性部位を画像化する。このポジトロン核種で標識した化合物は、従来より、ポジトロン断層撮影法(Positron emission tomography、PET)において用いられている。このPET法では、サイクロトロンで作成したポジトロン(陽電子、Positron)核種を用いてポジトロン標識化合物を合成し、これを生体内に投与後、標識化合物から放出された放射線粒子をPETで画像化する方法である。このポジトロン核種は炭素、窒素、酸素等の生体構成元素が主であることから(例えば、15O、11C、18F)、体内で代謝される各種物質や薬剤を、その構造を変化させることなく標識できるという特徴がある。また、ポジトロン核種は、生物医学的研究等において一般的に用いられている放射性同位体(例えば、3H、14C、125I等)に比較して強いエネルギーのβ+ 粒子を放出し、しかもその半減期が短時間(15O:2.07分、11C:20.4分、18F:109.7分)であるという特徴を有している。これらの特徴は、標識化合物の高特異的な放射活性検出を可能とする。すなわち、その強いエネルギーによって、β+ 粒子が液体や生体組織に数百ミクロンの深さまで侵入し、生体組織のスライス標本を生きたままの状態で培養している間にその放射活性を検出することが可能である。しかも、その放射活性の強度はポジトロン核種の濃度に依存するため、標識化合物のスライス標本における挙動を正確に検出することができる。
【0007】
さらに、β+ 粒子感応フィルムから離れて存在するβ+ 粒子はβ- 粒子と衝突して消滅する可能性が高く、β+ 粒子感応フィルムに定着する確率は低下する。従って、生体スライス標本には取り込まれていないポジトロン標識化合物がその周囲に多量に存在していても、それらの化合物の存在は定量的画像化を損なうことはない。このことは、同一標本における標識化合物の取り込み・結合の過程を経時的に画像化することを可能にする。
【0008】
この発明の装置は、以上の原理からなる生体組織スライス標本のポジトロン撮影を、簡便かつ確実に実施するための装置である。以下、その実施の形態について詳しく説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
この発明のポジトロン撮影装置は、例えば図1に斜視図を例示したようなものとして構成することができる。例えば、この図1に例示した装置は、内外2つのケース体(1)(2)によって構成された培養容器(3)が、β+ 粒子感応フィルム(4)の上に載置されている。外ケース体(2)は、その上部および下部が開放で、底面が遮水性の薄膜(5)で封止されていることによって、この培養容器(3)内に培養液を満たすことができるようになっている。一方、内ケース体(1)は、同じくその上部および下部が開放で、底面にナイロンネット(6)を備えており、このナイロンネット(6)上に生体スライス標本(7)を保持するようになっている。
【0010】
外ケース体(2)の薄膜(5)はまた、β+ 粒子を効率良く貫通させるため、この薄膜(5)上のナイロンネット(6)に保持させたスライス標本(7)から放出されるβ+ 粒子が薄膜(5)下の感応フィルム(4)に確実に定着する。このような遮水性のβ+ 粒子貫通薄膜(5)としては、例えばポリプロピレン・フィルムを用いることができる。また、β+ 粒子感応フィルム(4)としては、X線フィルム等を用いることもできるが、X線フィルムより高感度で、しかもより広いダイナミックレンジを有する蓄燐光体スクリーンを用いるのが好ましい。
【0011】
そして、この発明のポジトロン撮影装置は、その特徴として、内ケース体(1)がその周壁下方の同一水平位置に複数の小孔(8)を等間隔で有しており、これによって複数の生体スライス標本(7)を試験する場合でも、全てを同一の条件で培養液に浸すことができるようになっている。すなわち、実際の測定に際しては、図2(A)に示したように、先ず、培養容器(3)から内ケース体(1)を取り出し、そのナイロンネット(6)にスライス標本(7)を保持させる。具体的には、この図2に示したように、スライス標本(7)と略同一の厚みを有し、上部にネット(9)を貼り合わせた金属リング(10)内に生体スライス標本(7)を載置するようにすればよい。次いで、培養液(11)を満たした外ケース体(2)内にこの内ケース体(1)を静かに下降させる。この時、外ケース体(2)内の培養液(11)は、内ケース体(1)の底面のナイロンネット(6)および周壁下方の小孔(8)から内ケース体(1)内に流入するため、複数個のスライス標本(7)が、時間的、空間的にほぼ均一に培養液(11)と接触するようになる。また、スライス標本(7)は金属リング(10)とその上部のネット(9)によって一定位置に保持され、培養液(11)の流入によっても移動することがなく、全ての標本を同一条件下で測定するが可能である。そして、図2(B)に示したように内ケース体(1)を外ケース体(2)に重ね合わせた後、これらをβ+ 粒子感応フィルム(4)上に載置して測定を開始する。
【0012】
なお、培養液(11)は、測定対象である生体組織スライス標本(7)の生物活性を維持するのに最も適したものを使用し、適宜必要に応じて酸素、二酸化炭素等を培養液(11)中に供給するようにしてもよい。
培養容器(3)のサイズ等については特段の制限はなく、一度に試験するスライス標本(7)の数量等に応じて適宜とすることができる。また、その形状も方形の箱型に限定されるものではなく、円形等とすることもできる。
【0013】
スライス標本(7)は、動物個体の各器官から単離した正常組織、または癌組織等から公知の方法に従って作成することができる。例えば、脳のスライス標本は、神経科学の研究領域で広く用いられている Yamamoto & MacIlwain の方法( J. Neurochem., 13, p1333-1343, 1966)に従って作成することができる。また、ポジトロン核種標識化合物は、生体組織におけるその挙動追跡を目的とする物質を15O、11C、18F等によって公知の方法に従い標識することによって作成することができる。そして、この標識化合物を含有した培養液中にスライス標本を一定時間浸すことによって、スライス標本中に標識化合物を取り込ませることができる。
【0014】
次に、この発明の撮影装置を用いて脳スライス標本のポジトロン撮影を行った実施例を示し、この発明についてさらに詳しく説明する。
【0015】
【実施例】
上記 Yamamoto & MacIlwain の方法に従って麻酔下のラットから素早く脳を取り出し、脳冠状断面スライス標本(300μm)を作成し、図1および図2に示した装置の内ケース体(1)に配置した後、通常の培養液を満たした第1の外ケース体(2)内に内ケース体(1)を移し、酸素95%:二酸化炭素5%存在下37℃で脳スライス標本を予備培養した。一方、ポジトロン核種11Cをサイクロトロンにおいて作成し、この11Cによってベンゾジアゼピン受容体のリガンド(Ro15−1788)を標識し、この11C標識化リガンドを希釈した培養液(11)を第2の外ケース体(2)に満たした。そして、予備培養した脳スライス標本を内ケース体(1)ごと第2の外ケース体(2)内に移し、この第2のケース体(2)をβ+ 粒子感応フィルム(4)上に載置して、酸素95%:二酸化炭素5%存在下37℃で20分間培養し、11C標識化リガンドの結合部位を画像化した。
【0016】
結果は図3に示したとおりであり、大脳皮質、海馬等に強い放射活性が検出され、このことからベンゾジアゼピン受容体がこれらの脳部位に存在することが確認された。
【0017】
【発明の効果】
以上、詳しく説明したとおり、この発明によって、生体組織標本における各種の物質の挙動を、その組織本来の生物活性の動態と関連させて画像化することのできるポジトロン撮影装置が提供される。これによって、生体組織の構造および機能をより詳細に解析することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のポジロトン撮影装置の構成を例示した斜視図である。
【図2】(A)(B)は、各々、図1に示した装置の使用方法を例示した側断面図である。
【図3】この発明の撮影装置によって撮影したラットの脳スライス標本と、そのポジトロン撮影の結果を示した図面に代わる写真である。
【符号の説明】
1 内ケース体
2 外ケース体
3 培養容器
4 β+ 粒子感応フィルム
5 β+ 粒子貫通薄膜
6 ナイロンネット
7 生体組織スライス標本
8 小孔
9 ネット
10 金属リング
11 培養液
Claims (3)
- β+ 粒子貫通薄膜を介してβ+ 粒子感応フィルム上に保持された生体組織スライス標本中のポジトロン核種標識化合物から放出されるβ+ 粒子を感応フィルムに定着させ、このフィルムの放射活性部位を画像化することによって生体組織スライス標本における上記化合物の挙動を撮影するための装置であって、生体組織スライス標本を保持するための培養容器と、この培養容器を載置するβ+ 粒子感応フィルムとによって構成されており、培養容器は、遮水性のβ+ 粒子貫通薄膜を底面に備えた外ケース体と、周壁下方の同一水平位置に複数の小孔を等間隔で有し、かつ底面にネットを備えた内ケース体とからなり、ネット上に生体組織スライス標本を保持した内ケース体を外ケース体内に下降させることによって外ケース体内の培養液が内ケース体底面のネットおよび周壁の小孔を通じて内ケース体内に均等に流入することを特徴とする生体スライス標本のポジトロン撮影装置。
- 遮水性のβ+ 粒子貫通薄膜が、ポリプロピレン・フィルムである請求項1のポジトロン撮影装置。
- β+ 粒子感応フィルムが、蓄燐光体フィルムである請求項1のポジトロン撮影装置。
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JP10956196A JP3768591B2 (ja) | 1996-04-30 | 1996-04-30 | 生体組織スライス標本のポジトロン撮影装置 |
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JP10956196A Expired - Fee Related JP3768591B2 (ja) | 1996-04-30 | 1996-04-30 | 生体組織スライス標本のポジトロン撮影装置 |
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KR20110043766A (ko) * | 2008-09-20 | 2011-04-27 | 고쿠리츠 다이가쿠 호진 교토 다이가쿠 | 췌도 이미징용 분자 프로브 전구체 및 그의 사용 |
WO2011027584A1 (ja) * | 2009-09-04 | 2011-03-10 | 国立大学法人京都大学 | 膵島イメージング用分子プローブ及びその使用 |
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1996
- 1996-04-30 JP JP10956196A patent/JP3768591B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH09292466A (ja) | 1997-11-11 |
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