JP5604849B2 - 水素侵入抑制特性に優れた高張力厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、環境から鋼中への水素の侵入を抑制する水素侵入抑制特性に優れた高張力厚鋼板およびその製造方法に関し、特に引張強度が600MPa以上の溶接構造用厚鋼板として好適なものに関する。
近年、建設産業機械・タンク・ペンストック・海洋構造物・ラインパイプ等の鋼材使用分野では、構造物の大型化を背景として、使用する鋼材の高強度化が指向されている。
しかしながら、引張強さが600MPa以上の高張力鋼材では、鋼材の剪断加工後や溶接後、または鋼材使用中に、水素に起因する遅れ破壊を生じる場合があるため、耐遅れ破壊特性を向上することが望まれてきた。
遅れ破壊は、環境から鋼材中に侵入した水素が、応力誘起拡散や転位によって、応力集中部に徐々に集積し、ある限界量を超えると発生する。このため、耐遅れ破壊特性を向上させる材質設計の基本的な指針として、まず、水素の侵入そのものを抑制すること、次に、侵入した水素を無害化すること、さらに、水素が集積しても遅れ破壊を生じにくい組織にすることが考えられる。
これらの中で、侵入した水素を無害化する手法としては、例えばVやTiCなどの微細析出物によって、水素をトラップする方法などが知られている。また、遅れ破壊を生じにくい組織とするため、Pなどの不純物低減による粒界強化やオースフォームの活用、パーライト組織の活用などが検討されてきている。これらに比べて水素の侵入そのものを抑制する手法に関する検討例は少なく、PC鋼棒の分野にて、Niを活用した例が報告されているにすぎない(特許文献1や非特許文献1)。
特開平8−67912号公報
白神哲夫、石川信行、石黒守幸、山下英治、溝口茂:鉄と鋼,Vol.82(1996),777.
上述したように、水素の侵入そのものを抑制する手法は、PC鋼棒を対象とするもので成分組成や製造方法が大きく相違する溶接構造用厚鋼板を対象とするものではない。
すなわち、特許文献1や非特許文献1に記載されているNiによる水素侵入抑制効果は、炭素量が0.2〜0.6質量%の鋼材において、圧延後にスケールを機械的に剥離した後で、焼入れ・焼戻し処理に供した場合を対象としているので、炭素量が0.2質量%未満と低く、圧延後に、スケールの剥離を行わずに、そのまま空冷もしくは加速冷却や焼入れ、焼戻しなどの熱処理に供する溶接構造用厚鋼板にそのまま適用することはできない。
そこで本発明は、水素侵入抑制特性に優れた、引張強さが600MPa以上の高張力厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、水素の侵入を抑制することによって、溶接構造用厚鋼板の耐遅れ破壊特性を向上させるため鋭意研究を重ねた結果、スケールの組成、厚さ、スケールと地鉄との界面の地鉄側におけるNiの濃度の適正化によって、優れた水素侵入抑制効果が得られることを見出した。
本発明は、得られた知見を基に更に検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
1.鋼組成が、質量%で、C:0.02〜0.20%未満、Si:0.01〜0.8%、Mn:0.5〜2%、Ni:0.1〜5%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.008%、P:0.02%以下、S:0.004%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなり、
鋼材表面にヘマタイト(Fe)、マグネタイト(Fe)、および質量%で50%以上のウスタイト(FeO)で構成され、厚みが3〜100μmのスケール層を備え、前記スケール層と地鉄との界面の地鉄側におけるNiの濃度が、質量%で0.2%以上であることを特徴とする、水素侵入抑制特性に優れた高張力厚鋼板。
2.さらに、鋼組成が、質量%で、Cu:0.1〜3%を含有し、スケール層と地鉄との界面の地鉄側においてCuの濃度が、質量%で0.2%以上であることを特徴とする、1に記載の水素侵入抑制特性に優れた高張力厚鋼板。
3.さらに、鋼組成が、質量%で、Mo:1%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:2%以下、W:2%以下、Pb:2%以下の一種または二種以上を含有することを特徴とする、1または2に記載の水素侵入抑制特性に優れた高張力厚鋼板。
4.さらに、鋼組成が、質量%で、B:0.003%以下、Ca:0.01%以下、REM:0.02%以下、Mg:0.01%以下の一種または二種以上を含有することを特徴とする、1乃至3のいずれかに記載の水素侵入抑制特性に優れた高張力厚鋼板。
5.1乃至4のいずれか一つに記載の鋼組成を有する鋼を鋳造後、Ar変態点以下に冷却することなく、あるいはAc変態点以上に再加熱後、熱間圧延によって所定の板厚とすることを特徴とする水素侵入抑制特性に優れた高張力厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、水素侵入抑制特性に優れた引張強さが600MPa以上の溶接構造用厚鋼板およびその製造方法が得られ、産業上極めて有用である。
繰り返し腐食試験(CCT)を説明する図
本発明では、成分組成、スケール性状(スケールの組成、厚さ)、およびスケールと地鉄との界面における地鉄側における合金元素の濃度を規定する。
[成分組成]以下の説明において%は、何れも質量%である。
C:0.02〜0.20%未満
Cは、強度を確保するために含有するが、0.02%未満ではその効果が不十分であり、一方、0.20%以上になると母材および溶接熱影響部の靭性が劣化するとともに、溶接性が著しく劣化する。したがって、C含有量を0.02%以上0.20%未満に限定し、好ましくは0.06%以上0.20%未満である。
Si:0.01〜0.8%
Siは、製鋼段階の脱酸材および強度向上元素として含有するが、0.01%未満ではその効果が不十分であり、一方、0.8%を超えると粒界が脆化し、低温靭性を劣化させる。したがって、Si含有量を0.01〜0.8%に限定する。
Mn:0.5〜2%
Mnは、強度を確保するために含有するが、0.5%未満ではその効果が不十分であり、一方、2%を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化するとともに、溶接性が著しく劣化する。したがって、Mn含有量を0.5〜2%に限定する。
Ni:0.1〜5%
Ni含有鋼は、NiがFeよりも酸化しにくいため、鋼材が酸化するとき、Feが選択的に酸化され、Niがスケールと地鉄との界面の地鉄側に濃化する。Niは、面心立方格子であり、最密充填構造をしているため、水素の拡散係数が小さく、水素の侵入が抑制されるが、鋼中の含有量が0.1%未満では前記濃化時の水素侵入抑制効果が不十分であり、一方、5%を超えると、経済性が劣る。したがって、Ni含有量を0.1〜5%に限定し、好ましくは0.2〜5%である。また、Ni含有量が1.4%以上の場合には、スケール中にもNiが層状に濃化して水素侵入抑制特性を発揮し、この効果はNi含有量が2.4%以上の場合にさらに顕著となるので、Ni含有量として、より好ましい範囲は1.4〜5%、いっそう好ましい範囲は2.4〜5%である。
Al:0.005〜0.1%
Alは、脱酸材として、また結晶粒径の微細化のため含有させるが、0.005%未満の場合にはその効果が十分でなく、一方、0.1%を超えて含有すると、鋼板の表面疵が発生し易くなる。したがって、Al含有量を0.005〜0.1%に限定する。
N:0.0005〜0.008%
Nは、Tiなどと窒化物を形成することによって組織を微細化し、母材ならびに溶接熱影響部の靭性を向上させる効果を有するが、0.0005%未満の含有では組織の微細化効果が充分にもたらされず、一方、0.008%を超えて含有すると固溶N量が増加するために母材および溶接熱影響部の靭性を損なう。したがって、N含有量を0.0005〜0.008%に限定する。
P:0.02%以下
Pは焼戻し処理時にパケット境界等の結晶粒界に偏析しやすく、0.02%を超えて含有すると隣接結晶粒の接合強度を低下させ、疲労特性や低温靭性、耐遅れ破壊特性などを劣化させる。したがって、P含有量を0.02%以下に限定する。
S:0.004%以下
Sは、非金属介在物であるMnSを生成しやすく、0.004%を超えて含有すると、介在物の量が多くなり、内部破壊の起点として作用し、疲労特性を劣化させる。したがって、S含有量を0.004%以下に限定する。
以上が本発明の基本成分組成であるが、さらに、特性を向上させる場合、Cu、Mo、Nb、V、Ti、Cr、W、Pb、B、Ca、REM、Mgから選ばれる1種または2種以上を添加することができる。
Cu:0.1〜3%
Cu含有鋼は、CuがFeよりも酸化しにくいため、鋼材が酸化するとき、Feが選択的に酸化され、Cuがスケールと地鉄との界面の地鉄側に濃化する。Cuは、面心立方格子であり、最密充填構造をしているため、水素の拡散係数が小さく、水素の侵入が抑制されるが、鋼中の含有量が0.1%未満では前記濃化時の水素侵入抑制効果が不十分である。一方、Cu含有量が3%を超えると、鋼片加熱時や溶接時に熱間での割れを生じやすくする。したがって、Cuを添加する場合には、その含有量を0.1〜3%とすることが好ましい。
Mo:1%以下
Moは、焼入れ性および強度を向上する作用を有するので、必要に応じて添加することができるが、1%を超える添加は経済性が劣る。したがって、Moを添加する場合には、その含有量を1%以下にすることが好ましい。なお、Moは焼戻し軟化抵抗を大きくする作用を有し、1000MPa以上の引張強さを確保するためには、0.2%以上含有させることが好ましい。
Nb:0.1%以下
Nbは、マイクロアロイング元素として強度を向上させると同時に、未再結晶域の上限温度を高温側にシフトさせることによって、比較的高温の圧延でも未再結晶域圧延を行うことを可能にするので、必要に応じて添加することができるが、0.1%を越えて含有すると溶接熱影響部の靭性を劣化させる。したがって、Nbを添加する場合には、その含有量を0.1%以下とすることが好ましい。
V:0.5%以下
Vは、マイクロアロイング元素として強度を向上させるので、必要に応じて添加することができるが、0.5%を超えて含有すると溶接熱影響部の靭性を劣化させる。したがって、Vを添加する場合には、その含有量を0.5%以下とすることが好ましい。
Ti:0.1%以下
Tiは、圧延加熱時あるいは溶接時にTiNを生成し、オーステナイト粒の成長を抑制し、母材ならびに溶接熱影響部の靭性を向上させるので、必要に応じて添加することができるが、0.1%を超えて含有すると溶接熱影響部の靭性を劣化させる。したがって、Tiを添加する場合には、その含有量を0.1%以下に限定することが好ましい。
Cr:2%以下
Crは、強度および靭性を向上する作用を有しており、また高温強度特性に優れるので、必要に応じて添加することができる。特に引張強さ900MPa以上の高強度特性を得るために0.3%以上含有させることが好ましい。しかしながら、Cr含有量が2%を超えると、溶接性が劣化する。したがって、Crを添加する場合には、その含有量を2%以下に限定することが好ましい。
W:2%以下
Wは、強度を向上する作用を有するので、必要に応じて添加することができる。しかしながら、W含有量が2%を超えると、溶接性が劣化する。したがって、Wを添加する場合は、その含有量を2%以下に限定することが好ましい。
Pb:2%以下
Pb含有鋼は、PbがFeよりも酸化しにくいため、鋼材が酸化するとき、Pbがスケールと地鉄界面の地鉄側に濃化する。Pbは、面心立方格子であり、最密充填構造をしているため、水素の拡散係数が小さく、水素の侵入が抑制されるので、水素侵入抑制効果を得るために、Pbを0.1%以上含有させることができる。しか
しながら、Pb含有量が2%を超えると、熱間加工性が低下する。したがって、Pbを添加する場合には、その含有量を2%以下に限定することが好ましい。
B:0.003%以下
Bは、焼入れ性を向上する作用を有するので、添加することができる。しかしながら、B含有量が0.003%を超えると、靭性を劣化させる。したがって、Bを添加する場合には、その含有量を0.003%以下に限定することが好ましい。
Ca:0.01%以下
Caは、硫化物系介在物の形態制御を通じて靱性改善に寄与するので、添加することができる。しかしながら、0.01%を超えて含有すると清浄度の低下を招く。したがって、Caを添加する場合には、その含有量を0.01%以下に限定することが好ましい。
REM:0.02%以下
REM(注:REMとはRare Earth Metalの略、希土類金属)は、鋼中でREM(O、S)として硫化物を生成することによって結晶粒界の固溶S量を低減して、SR(応力歪取焼鈍)割れなどの再熱割れを抑制する効果があるので、添加することができる。しかしながら、0.02%を超えて含有すると、沈殿晶帯にREM硫化物が著しく集積し、材質の劣化を招く。したがって、REMを添加する場合には、その添加量を0.02%以下に限定することが好ましい。
Mg:0.01%以下
Mgは、溶銑脱硫材として使用することができる。しかしながら、0.01%を超えて含有すると清浄度の低下を招く。したがって、Mgを添加する場合には、その添加量を0.01%以下に限定する。
上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、本発明の作用効果を害さない範囲であれば、上記以外の元素の含有を拒むものではない。たとえば、SnはFeよりも酸化しにくいため、鋼材が酸化するとき、Snがスケールと地鉄界面の地鉄側に濃化し、水素侵入抑制効果を発揮するので、鋼中にSnを0.01〜3%含有させてもよい。
[スケール性状]
スケール組成
スケール組成は、ヘマタイト、マグネタイト、およびウスタイトの3種類のスケールで構成され、かつ、スケール中のウスタイトの質量%が50%以上存在することが必要である。
スケールと地鉄の密着性が最も向上し、水素の侵入に対して最も有効に機能するためである。なお、ヘマタイトおよびマグネタイトの存在量は、いずれも、質量%で1%以上とする。スケール組成は、X線回折の測定結果から求めることができる。
スケール層の厚さ
スケール層の厚さは3〜100μmに限定する。スケール厚さが3μm未満の場合には、スケールと地鉄との界面の地鉄側におけるNi濃度が低下し、水素侵入の抑制効果が不十分であり、一方、100μmを超えるとスケールと地鉄の密着性が劣化し、スケール中にNiが層状に濃化した場合のスケール自体による水素侵入抑制効果が不十分となる。したがって、スケール厚さを3〜100μmに限定する。
[スケールと地鉄との界面]
スケールと地鉄との界面の地鉄側におけるNi濃度
スケールと地鉄との界面の地鉄側におけるNiの濃度を質量%で0.2%以上とする。スケールと地鉄との界面の地鉄側におけるNiの濃度が0.2%未満の場合には、水素拡散係数の小さなNiの濃化が充分でなく、水素の侵入を効果的に抑制できない。したがって、スケールと地鉄との界面の地鉄側におけるNiの濃度を0.2%以上に限定する。
スケールと地鉄との界面の地鉄側におけるCu濃度
Niの他に、選択元素としてCuを含有する鋼の場合には、スケールと地鉄との界面の地鉄側におけるCuの濃度を質量%で0.2%以上にすると、水素拡散係数の小さなCuの濃化により、水素の侵入をより効果的に抑制できるので、好ましい。
[製造条件]
以下の説明で温度規定は鋼材の板厚中心部におけるものとする。中心部近傍はほぼ同様の温度履歴になるので、必ずしも厳密な中心そのものに限定するものではない。
本発明では、溶鋼から鋳片を製造する方法は特に規定しない。転炉法・電気炉法等で溶製された鋼や、連続鋳造・造塊法等で製造されたスラブやインゴットなどが利用できる。
熱間圧延条件
鋳片を圧延して厚鋼板を製造する際、Ar変態点以下に冷却することなく、そのまま熱間圧延を開始しても、あるいは、一度冷却した鋳片をAc変態点以上に再加熱した後に熱間圧延を開始しても良い。これは、この温度域で圧延を開始すれば、本発明の有効性は失われないためである。
なお、700℃以上の温度域で圧延を終了することが好ましい。これは、700℃未満で圧延を行うと、スケールが部分的に剥離する場合があり、水素侵入を抑制する効果が小さくなるおそれがあるためである。
Ar変態点(℃)およびAc変態点(℃)は、例えばAr=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Mo、Ac=854−180C+44Si−14Mn−17.8Ni−1.7Crにより求めることができる。各式において各元素記号は鋼中含有量(質量%)とする。
直接焼入れあるいは加速冷却
熱間圧延終了後、母材強度および母材靭性を確保するため、直接焼入れあるいは加速冷却を行う。直接焼入れあるいは加速冷却後に、靭性の向上等を目的として、焼戻し処理を行っても良い。焼戻し処理を行う場合には、スケール性状に影響を及ぼさないAc変態点以下の温度域にて行うことが好ましい。水冷処理や焼戻し処理は、本発明の有効性に影響を与えないためである。
Ac変態点(℃)は、例えばAc=723−14Mn+22Si−14.4Ni+23.3Crにより求めることができる。式において各元素記号は鋼中含有量(質量%)とする。
焼戻し時の加熱方式は、誘導加熱、通電加熱、赤外線輻射加熱、雰囲気加熱等のいずれの方式でも良い。
なお、以上、本発明に係る厚鋼板とその製造方法について説明したが、以上説明したような製造条件が適用される鋼材ならば、その形状は厚鋼板に限らず、たとえば、形鋼や棒鋼などに対しても、本発明を適用することが可能である。その場合、製造条件における温度履歴の規定は、たとえば形鋼ならば本発明に係る特性を付与する部位の板厚中心、棒鋼ならば径方向の中心、として、本発明を適用すればよい。ただし、これらの場合も、中心部近傍はほぼ同様の温度履歴となるので、中心そのものに限定するものではない。
本発明の有効性を実施例によって説明する。種々の化学成分の鋼を溶製してスラブに鋳造し、加熱炉で加熱後、圧延を行い種々の板厚の鋼板とした。圧延後、引続き水冷に供し、次いで、一部の鋼板を除いて、雰囲気加熱装置またはソレノイド型誘導加熱装置を用いて焼戻し処理を行った。
なお、水冷後または焼戻し後の冷却は空冷とし、圧延終了、水冷開始、水冷停止、焼戻し温度などの板厚中心部における温度は、放射温度計による鋼板表面の逐次における温度測定結果から、伝熱計算によって求めた。
スケール中のウスタイトの含有量は、Cu管球を用いたX線回折による測定結果から同定した。なお、同じくX線回折による測定結果から、本実施例における供試鋼すべてにおいて、スケールは、質量%で、1%以上のヘマタイト、1%以上のマグネタイト、および残部マグネタイトからなる3種類のスケールで構成されていることが確認された。
スケール層の厚さは、各供試鋼から表層を含む厚さ10mm×縦20mm×横20mmの試験片を採取し、SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)写真(倍率200倍)で表層断面を10箇所測定し、画像処理により求めた平均値とした。
また、同じ試験片を用いて、スケールと地鉄の界面におけるNiとCuの濃度は、EPMA(Electron Probe Micro−Analyzer:X線マイクロアナライザ)による線分析結果から同定し、10箇所の平均値とした。
また、降伏応力および引張強さは、全厚引張試験片を用いた引張試験(JIS Z 2241(1998)準拠)により測定し、シャルピー衝撃試験によって延性・脆性破面遷移温度を求めた。シャルピー衝撃試験片は、板厚25mm以上の場合、採取位置を板厚中心とし、板厚10mm以下の場合、ハーフサイズとした。
一方、鋼中への水素侵入挙動を評価するため、繰り返し腐食試験(CCT:Cyclic Corrosion Test)により腐食促進処理を施した後の鋼中に残存する拡散性水素量を測定した。繰り返し腐食試験(CCT)は、図1に示す、5質量%の食塩水噴霧を含む1サイクル24時間の乾湿繰り返し試験を30サイクル実施し、CCT完了から15min後に、鋼材中の水素をガスクロマトグラフ式の水素昇温脱離分析法(昇温速度:200℃/h)にて測定し、300℃以下で放出される水素を拡散性水素と定義し、拡散性水素量が、0.25質量ppm以下を本発明範囲とした。
表1に供試鋼の化学成分を、表2に鋼板の製造条件、スケール層の厚さ、スケール中のウスタイトの含有量、スケールと地鉄の界面におけるNiとCuの濃度を、表3に得られた鋼板の降伏応力、引張強さ、シャルピー衝撃試験による延性・脆性破面遷移温度、CCTによる腐食促進試験によって鋼材中に侵入した拡散性水素量を示す。
表2において、鋼板No.18〜21は、化学成分が本発明範囲外の比較例でスケール/地鉄界面におけるNi濃度が本発明範囲外である。
表3より、本発明例(鋼板No.1〜17)は、いずれも引張強さが600MPa以上、拡散性水素量が0.25質量ppm未満で優れた水素侵入抑制特性を備えている。
一方、比較例(鋼板No.18〜21)は、いずれも拡散性水素量が0.25質量ppm超えで水素侵入抑制特性に劣ることが確認された。
Figure 0005604849
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Claims (5)

  1. 鋼組成が、質量%で、C:0.02〜0.20%未満、Si:0.01〜0.8%、Mn:0.5〜2%、Ni:1.4〜5%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.008%、P:0.02%以下、S:0.004%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなり、
    鋼材表面に、質量%で1%以上のヘマタイト(Fe)、質量%で1%以上のマグネタイト(Fe)、および質量%で50%以上のウスタイト(FeO)で構成され、厚みが3〜100μmのスケール層を備え、
    前記スケール層と地鉄との界面の地鉄側におけるNiの濃度が、質量%で5.2%以上であることを特徴とする、水素侵入抑制特性に優れた高張力厚鋼板。
  2. さらに、鋼組成が、質量%で、Cu:0.21〜1.31%を含有し、スケール層と地鉄との界面の地鉄側においてCuの濃度が、質量%で0.2%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の水素侵入抑制特性に優れた高張力厚鋼板。
  3. さらに、鋼組成が、質量%で、Mo:1%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:2%以下、W:2%以下、Pb:2%以下の一種または二種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の水素侵入抑制特性に優れた高張力厚鋼板。
  4. さらに、鋼組成が、質量%で、B:0.003%以下、Ca:0.01%以下、REM:0.02%以下、Mg:0.01%以下の一種または二種以上を含有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の水素侵入抑制特性に優れた高張力厚鋼板。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一つに記載の鋼組成を有する鋼を鋳造後、Ar変態点以下に冷却することなく、あるいはAc変態点以上に再加熱後、熱間圧延によって所定の板厚とすることを特徴とし、鋼材表面に、質量%で1%以上のヘマタイト(Fe)、質量%で1%以上のマグネタイト(Fe)、および質量%で50%以上のウスタイト(FeO)で構成され、厚みが3〜100μmのスケール層を備え、前記スケール層と地鉄との界面の地鉄側におけるNiの濃度が、質量%で5.2%以上である水素侵入抑制特性に優れた高張力厚鋼板の製造方法。
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