しかしながら、横型鍛造装置は、ワーク搬送やプレス回転を高速で実施するため、仕上げ型のダイから排出されたワークと、これを保持するトランスファ装置との同調を高精度に得ることが困難である。同調設定をしても装置各部の経時変化により同調性が低下する。このため、ワークが非正規の向きでトランスファ装置に保持されることが懸念される。特許文献1の横型鍛造装置は、トランスファ装置から引き継ぐワークが非正規の向きであったとき、その向きのままホールド軸でダイに送り込む点で改良の余地がある。また、ホールド軸はワークを横方向に挟持するだけなので、高速鍛造を実施しようとする程、トランスファ装置から高速に引き継ぐ際にワークに残る慣性、ホールド軸に伝わる機械振動等によりワークの挟持が不十分になることが懸念される。
そこで、この発明の課題は、横型鍛造装置において、仕上げ打ち後のワークに対して軸線回りの円周方向に方向性をもった下流工程のプレス加工を正確に実施できるようにすることである。
上記の課題を解決するため、この発明は、軸線上に中心を置いた円周表面部がダイ側横面に露出したワークを成形する仕上げ型と、前記仕上げ型のダイから排出された前記ワークを保持して下流に搬送するトランスファ装置と、前記トランスファ装置に搬送された前記ワークを横方向に挟持し、この挟持状態で横方向に変位することにより下流工程のダイに送り込むパンチ側のホールド軸及びダイ側のホールド軸とを備えた横型鍛造装置において、横方向に沿った中心軸に対して傾斜した案内周面部を有し、かつ前記両側のホールド軸に送られる前記ワークとの同軸度が所定未満のときに前記円周表面部を該案内周面部で滑らせて同軸度を所定以上に高めるセンタガイドと、前記センタガイドの中心軸と直角な方向に正対する一対の位相案内部と、前記各位相案内部から横方向ダイ側に連続する回り止め部とを備え、前記一対の位相案内部のそれぞれは、横方向ダイ側に進むに連れて正対間隔を次第に狭める傾きを有し、前記センタガイドが前記円周表面部を受けて前記所定以上の同軸度に保つ状態で前記両側のホールド軸が横方向に一層変位するようになっており、前記ワークが、前記一対の位相案内部間を非接触に通過可能であって前記下流工程の加工を実施可能な軸線回りに正規の向きをもち、かつ非正規の向きで前記一対の位相案内部に当接可能な一対の横端部を有し、前記一層変位で送られる前記ワークの前記一対の横端部と前記一対の位相案内部との当接に伴う反力で前記ワークが正規の向きまで回転させられ、前記一対の横端部が前記回り止め部間に至ってこれら回り止め部により正規の向きに保たれた状態で前記下流工程を実施する構成を採用した。
この発明において、「横方向」とは、ラムの往復方向をいう。「ワークの軸線」とは、ワークの回転中心となる横向きの直線であって、ワークがその回転方向以外の変位や傾きを生じることなく回転可能な回転中心線のことをいう。また、「円周」とは、特に言及しない限り、軸線上に中心を置いた円周のことをいう。
軸線上に中心を置いた円周表面部がダイ側横面に露出したワークなので、ワークの軸線とセンタガイドの中心軸間における所定の同軸度を境として、円周表面部とセンタガイドの傾斜をもった案内周面部との滑り接触の有無を設定し、両側のホールド軸の挟持でワークの傾きを問題ない程度に抑えることができる限り、その滑り接触による中心軸側へワークを寄せる案内で同軸度を所定以上に保証することができる。したがって、センタガイドを介して、横方向変位で送られるワークの軸線の向き・横方向に直角な方向の位置が下流工程のダイの型彫り部分に対して適切なことを保証できる。
このようにワークが適切に位置にある状態で、ワークの軸線回りの向きが下流工程を実施するのに適切な正規の向きなら、ワークをそのまま横方向に送り込み、一方、非正規の向きならば、そのワークを強制的に回転させて正規の向きに直してから送り込むようにすれば、円周方向に方向性をもった下流工程のプレス加工を正確に実施することができる。両側のホールド軸がワークを横方向に挟持するものなので、送り中にワークを強制回転させることが可能である。
具体的には、センタガイドがワークの円周表面部を受けて所定以上の同軸度に保つことにより、ワークの円周表面部を軸線回りに強制的に回転させるための軸部とし、センタガイドを滑り軸受部とすることができる。このように同軸度が保たれた状態で両側のホールド軸が一層変位するようにすれば、その一層変位により送られるワークをダイ側の他の部材に横方向から当接させることにより、カム機構の如く、ワークを軸線回りに任意の向きまで回転させることができる。
すなわち、センタガイドの中心軸と直角な方向に正対する一対の位相案内部を備え、ワークが、一対の位相案内部間を非接触に通過可能であって下流工程の加工を実施可能な正規の向きをもち、かつ非正規の向きで一対の位相案内部に当接可能な一対の横端部を有し、一層変位による送られるワークの一対の横端部と一対の位相案内部との当接に伴う反力でワークが正規の向きまで回転させられるようにすればよい。ワークが非正規の向きで送られるときのみ、ワークが一対の位相案内部に当接するので、正規の向きで送られるときは、そのまま回り止め部に送り込むことができる。非正規の向きのときに一対の横端部と一対の位相案内部が当接する際の反力は、一対の横端部及び位相案内部の形態及び配置に基き、ワークの軸線回りの回転力となるように設定できる。一対の位相案内部のそれぞれが横方向ダイ側に進むに連れて正対間隔を次第に狭める傾きを有するので、一層変位で送られるワークが正規の向きになるまで継続的に反力付与を行い、正規の向きになると一対の横端部が一対の位相案内部を通過するように設定できる。
この通過時点ではワークが確実に正規の向きなので、一対の各位相案内部から横方向ダイ側に連続する回り止め部を備えておけば、通過した一対の横端部が直ちに回り止め部間に至る。これら回り止め部で一対の横端部が軸線回りに回転を制限し、ワークを正規の向きに保つことができる。
このようにワークが一対の回り止め部により正規の向きに保たれた状態で下流工程を実施するため、軸線回りの円周方向に方向性をもった下流工程のプレス加工を正確に実施することができる。
また、特許文献1の装置と比しても、ホールド軸によるワーク送り中に加工精度を低下させ得る回転変位が起きても、正規の向きに直した状態で下流工程を実施できるので、プレス加工を正確に実施することができる。
前記センタガイドが前記所定以上の同軸度に保つ状態で前記両側のホールド軸と共に前記一層変位することにより、前記一対の横端部が前記一対の位相案内部に当接することが好ましい。
所定以上の同軸度を保つセンタガイドと両側のホールド軸とが共に一層変位するので、センタガイドは、下流工程のパンチがワークを打つ位置から横方向パンチ側へワークを迎えにいって円周表面部を案内する。
センタガイドを横方向に固定したときと比して、センタガイドがワークを迎えに行った分、ワークがトランスファ装置から解放された後、ワークの同軸度が狂い得る時間及び送り距離が短くなり、早期に同軸度の保証を得ることができる。このため、ホールド軸によるワーク送り中に同軸度の狂いを抑えることができ、センタガイドによる同軸度の修正が容易になる。
また、横方向に固定したセンタガイドを採用すると、ワークが下流工程のダイの型彫りに嵌る非円周表面部を有するとき、円周表面部の横方向長さや、ワークの円周表面部と非円周表面部との横方向における位置関係によっては、同軸度が狂わないようにワークを強制回転させるのに円周表面部の支持が不十分になり得る。センタガイドがワークの円周表面部を横方向パンチ側に迎えに行き、そのセンタガイド等の一層変位により一対の横端部が一対の位相案内部に当接するようにすれば、その分、円周表面部をセンタガイドで横方向に長く支持することができる。したがって、一対の位相案内部等による向き保証を適用可能なワーク形態を拡大することができる利点もある。
なお、センタガイドがワークを迎えに行っても、両側のホールド軸と共に一層変位してワークが下流工程のダイに送り込まれるので、センタガイドを下流工程の実施の妨げにならないように適宜にダイから退避させることができる。
前記センタガイドが内周部分で前記所定以上の同軸度に保ち、前記センタガイドの外周が前記下流工程のダイの内周との接触により該ダイに対して中心軸に直角な全方向に位置決めされる状態で、前記一対の横端部が前記位相案内部に当接することがより好ましい。
両側のホールド軸と共にセンタガイドが一層変位するため、下流工程のダイと別体のセンタガイドを、そのダイに対してその中心軸に直角な全方向に位置決めすることが必要になる。センタガイドの内周部分でワークの案内保持を行うと、センタガイドをダイの内周に接触させて直接にダイに対して位置決めすることができる。ワークとの同軸度を保つセンタガイドの内周部分の外側がダイの内周に直接に位置決めされた状態で、一対の横端部が位相案内部に当接するため、当接時の衝撃で同軸度が狂うことをダイの剛性を利用して防止することができる。
前記センタガイドは、エジェクタのようにクランクプレス軸からのパワートレインで両側のホールド軸と同調させて一層変位するように設けることが可能である。同調の調整は手間を要するので、前記センタガイドを非駆動式に設けてダイ側の構造を単純化することが好ましい。
具体的には、前記センタガイドが、ばね部材を介して横方向に支持されており、前記ばね部材の弾性抵抗で前記センタガイドの横方向ダイ側への変位が抑制されることにより、前記ワークと滑り接触する前記センタガイドが前記所定以上の同軸度を保つ状態になり、この状態になってから前記ワークが前記センタガイドと横方向に係合し、係合した前記ワーク及び前記センタガイドを介してパンチ側の前記ホールド軸に押される前記ばね部材の圧縮により該センタガイドが前記両側のホールド軸と共に前記一層変位するようにすればよい。
ばね部材の弾性の設定だけで、センタガイドに対してワークを滑らせて案内、同軸度保持を可能としつつ、同軸度保持状態になってからワークとセンタガイドとが横方向に係合するので、これらを介してパンチ側のホールド軸を一層変位させるための駆動力でばね部材を押すことができる。これに伴ってばね部材の圧縮が進行するので、その弾性反発によりワークがセンタガイドから外れることを確実に防止しながら、非駆動式のセンタガイドを両側のホールド軸と共に一層変位させることができる。
ここで、前記センタガイドが内周部分で前記所定以上の同軸度に保ち、前記センタガイドが横方向両側に開放された筒体からなり、前記ばね部材がコイルばねからなり、前記両側のホールド軸のうち、ダイ側のホールド軸が、前記センタガイド及び前記ばね部材の内側を通されたエジェクタからなることがより好ましい。
センタガイドが内周部分で所定以上の同軸度に保つとき、センタガイドとして、横方向両側に開放された筒体を採用することができる。さらに、ばね部材としてコイルばねを採用すれば、センタガイド及びコイルばねの内側を通るようにエジェクタを組み込むことができる。このエジェクタはダイからワークを横方向に突き出す位置にあるので、ダイ側のホールド軸に用いることができる。ホールド軸がエジェクタからなるので、別々に設けるよりもダイ側の構造単純化を図ることができる。
上述のセンタガイドの一層変位に係る具体的手段は、例えば、前記ワークが、前記円周表面部と、前記円周表面部から横方向パンチ側に連続し、かつ非円周状に出張った鍔部と、前記鍔部に付いたばりとを外周に有し、前記下流工程のダイ及びパンチが、前記ばりをせん断する抜き型からなるときに採用することができる。
下流工程においては、円周表面部から横方向パンチ側に連続し、かつ非円周状に出張った鍔部に付いたばりをせん断するため、ばりをダイの型彫り部分に含まれた内周刃に横方向から引っ掛けるワーク配置となる。このワーク配置が適切に行われるので、ばりかじりを防止することができる。
前記のばり抜きにおいては、ワークの外周にある円周表面部をセンタガイドの内周部分で受けることができる。その円周表面部から横方向パンチ側に連続する鍔部に付いたばりが下流工程のダイに引っ掛かる状態で下流工程を実施するので、上述のように円周表面部を保持するセンタガイドを前記両側のホールド軸と共に一層変位させてワークをダイに送り込むことができる。鍔部に付いたばりのせん断なので、ダイの内周で鍔部以外のワーク外周部分を成形することがない。
そこで、前記センタガイドの外周が前記下流工程のダイの内周との接触により該ダイに対して中心軸に直角な全方向に位置決めされる状態で下流工程を実施することが好ましい。
ダイの内周にセンタガイドのワーク保持部分の外側が直接に位置決めされるので、パンチ打ち時、ダイとセンタガイドのワーク保持部分とが一体となってワークを支持し、ワークの軸ずれを防止することができる。
なお、ばりを下流工程のダイに引っ掛けた状態で、ダイ内周とワーク外周との接触によりワークを十分に支持することが可能ならば、センタガイドをエジェクタの如くダイの内側から退避させることも可能である。このようにセンタガイドを退避させるときと比して、ダイ内周とセンタガイド外側の位置決めを採用すると、結果的に、下流工程の実施後、センタガイドをダイ内側の比較的に横方向パンチ側に寄った位置から次のワーク送りに備えて横方向パンチ側に復帰させることができるので、加工能率の向上に有利である。
特に、前記下流工程のパンチが、内周を有する先端部で前記鍔部を打つように設けられ、パンチ側の前記ホールド軸が、前記下流工程のパンチの先端部内周よりも内側を通って前記ワークに突き当り、前記ばりが前記下流工程のダイに当接する前の時期に、前記下流工程のパンチがパンチ側の第二のホールド軸として該鍔部に突き当たることが好ましい。
鍔部に付いたばりをせん断する下流工程のパンチは、鍔部をばりに沿って打てればよく、内周を有する先端部で打つように設けることができる。下流工程のパンチの先端部内周よりも内側でワークを打つ必要がないので、ここにパンチ側のホールド軸を通してワークに突き当て、トランスファ装置からワークを引き継ぐことができる。下流工程のパンチが内周を有する先端部で鍔部を打つものなので、両側のホールド軸がワークを挟持した後、下流工程のダイにばりが当接する前の時期に、下流工程のパンチを第二のホールド軸として鍔部に突き当てることができる。このように下流工程のパンチが下流工程のダイへのワーク横方向送りに参加するので、鍔部が下流工程のダイに引っ掛かってワークの変位が止まるのと同時にばり抜きを実施することができ、加工能率の向上に有利である。
前記一対の横端部がばりからなることが好ましい。
ワークのばりに一対の横端部を成形することにより、一対の位相案内部と鍛造品本体との当接を無くすことができるので、鍛造品本体を傷める心配がない。また、鍛造品本体に一対の横端部として利用できる部分がないときも、ばりを利用すれば、別途専用に、取り代となる一対の横端部を成形することがなく、材料歩留まりの悪化を避けることができる。ばり抜きと共に一対の横端部を鍛造品本体から分離できるので、一対の横端部を成形したために除去工程が増えることはない。
前記一対の位相案内部が、これらの正対方向及び前記センタガイドの中心軸に直角な方向に真直ぐに設けられ、前記一対の横端部が、正規の向きのときに前記一対の位相案内部と平行になる方向に真直ぐに成形されることが好ましい。
位相案内部、回り止め部及び横端部がそれぞれ特定の方向に真直ぐな形態なので、非直線部として各部を形成したときと比して、正規の向きを基準として各部の関係を簡単に設定することができる。
高速鍛造を行う横型鍛造装置では、仕上げ型のダイから正規に排出されたワークの軸線回りの向きと、下流工程のダイにワークを送り込む正規の向きとが一致しており、トランスファ装置等の各部の制御もその前提で行われる。
したがって、前記トランスファ装置が、前記仕上げ型のダイから非正規の向きに排出された前記ワークを正規の向きに直して保持することが好ましい。
トランスファ装置から正規の向きのワークをホールド軸に引き継ぐことが保証されているので、位相案内部によるワークの向き直しは、ホールド軸によるワーク送り中に起り得るワークの回転変位を対象にするだけで済む。したがって、トランスファ装置からワークが非正規の向きホールド軸に引き継がれるときと比して、位相案内部による直しの程度が軽くなるので、その直し時間を短くすることができ、位相案内部をコンパクトに設けることができる。
例えば、前記トランスファ装置が、互いに均等に駆動される一対のフィンガを有し、これら一対のフィンガの挟持部と、仕上げ型のダイから正規に排出されたワークとが、軸線を含む平面に関して鏡面対称に当接すると、該ワークが軸線回りに正規の向きで挟持されるようになっており、前記ワークが、前記仕上げ型のダイから正規に排出されたときに前記鏡面対称にぴたりと当接する非円周状の被挟持部を円周方向に関して各片側の一箇所だけに有し、前記ワークが非正規の向きのとき、前記一対のフィンガの挟持部が、前記均等な駆動に伴って非鏡面対称に対応側の前記被挟持部を円周方向一箇所のみで傾きをもって押すことにより該ワークを正規の向きまで回転させた位置で挟持するようにすればよい。
この発明において、「仕上げ型のダイから正規に排出された」とは、ワークの軸線が仕上げ型のダイに対して横方向以外の方向に変位せず、かつ横方向に対して傾くことなく、ワークが当該ダイから自由になって一対のフィンガにより挟持可能な横方向位置に達したことをいう。
高速鍛造を行う横型鍛造装置においてはエジェクタ及び一対のフィンガの駆動も高速なので、仕上げ型のダイから自由になったワークが自転し得る時間は、エジェクタの動作タイミングと一対のフィンガの動作タイミングの調整上、許容せざるを得ない僅かな時間である。したがって、ワークが非正規の向きになるとしても正規の向きに比して軸線回りに限られた範囲の回転角をもつだけなので、ダイから正規に排出されたワークを基準とした一対のフィンガの均等な駆動、及び挟持部と被挟持部とが鏡面対称に当接する挟持態様を前提にして、専ら、これら挟持部及び被挟持部の形態及び配置関係に基いて、一対のフィンガがワークを正規の向きでのみ挟持するように設定できる。
すなわち、ワークが非正規の向きのとき、正規に排出されたときと比して非円周状の被挟持部が軸線回りに回転角をもつので、正規に排出されたときと同じく互いに均等に駆動される一対のフィンガの非円周状の挟持部が対応側の被挟持部に傾きをもって当接し、ワークに軸線回りの回転力が与えられるように設定できる。
ここで、ワークが被挟持部を円周方向に関して各片側の一箇所だけに有するので、非正規の向きのとき、均等に駆動される一対のフィンガの挟持部が非鏡面対称に対応側の被挟持部を円周方向一箇所のみで傾きをもって押すように設定できる。このように押す限り、ワークの軸線回りの両回転方向のモーメントが釣り合うことはない。一対のフィンガの挟持部がワークを正規の向きに強制的に回転させた時点で、正規に排出されたときと同様の当接状態を得られるので、正規の向きに直したワークをそのまま挟持することができる。
したがって、非正規の向きのワークを確実に正規の向きに直してから挟持することができる。
ここで、前記一対の横端部が前記両側の被挟持部からなることが好ましい。
一対の横端部と、両側の被挟持部は、ワークと他の部材との当接でワークに回転力を与えるためのワーク部分なので、兼用することができる。このため、両部を別箇所に成形したときと比して、ワーク形態の単純化を図ることができ、材料歩留まりを向上させ易くなる。
上述した両側の被挟持部と、一対のフィンガとによるワークの向き直し手段は、上述のホールド軸、センタガイド及び位相案内面に係る手段の採用の是非によらず、横型鍛造装置に採用することができる。
上述の向き直し手段の採用により、仕上げ型のダイからワークが非正規の向きに排出されたとしても、トランスファ装置から非正規の向きのワークを下流工程のダイに向けて送り込むことが無くなるので、その分、仕上げ打ち後のワークに対して軸線回りの円周方向に方向性をもったプレス加工を正確に実施することができる。
前記一対のフィンガの挟持部が、前記均等な駆動により正対する位置で正対方向及び横方向に直角な方向に真直ぐに設けられ、前記両側の被挟持部が、前記仕上げ型のダイから正規に排出されたときに前記一対のフィンガの挟持部と平行になる方向に真直ぐに成形されることが好ましい。
被挟持部及び挟持部がそれぞれ特定の方向に真直ぐな形態なので、非直線部として各部を形成したときと比して、正規の向きを基準として各部の関係を簡単に設定することができる。
前記ワークが、前記両側の被挟持部から横方向に外れたところに円周状の外周部を有し、前記一対のフィンガが、挟持するワークと、前記仕上げ型のダイから正規に排出されたワークとの同軸度を前記円周状の外周部に対する接線方向の当接面で保証する心出しガイドを備えることが好ましい。
一対のフィンガでワークを両側から挟持するため、ワークの軸線に直角な方向の位置決めを考えると、一対のフィンガの挟持部がワークを挟む方向と交差する方向の位置決めが難しい。このため、この発明においても、正規に排出されたワークの軸線との同軸度を保証する心出しガイドを採用し、この同軸度保証により、トランスファ装置からの横方向送りのみでワークを下流工程のダイに適切に配置できるようにすることが好ましい。
具体的には、両側の被挟持部から横方向に外れたところに円周状の外周部を有するワークであれば、挟持部とは別に、ワークの円周状の外周部に対する当接面を一対のフィンガに設けることができる。心出しガイドは、ワークの円周状の外周部に対する接線方向の当接面でワークを押して軸線の位置を直すため、ワークを軸線に直角な任意の方向に位置決でき、また、挟持するワークが正規の向きか非正規の向きかによらず、上述の強制回転を阻害しないように、挟持するワークと、仕上げ型のダイから正規に排出されたワークとの同軸度を保証することができる。
前記両側の被挟持部がばりからなることが好ましい。
ワークのばりに被挟持部を成形することにより、挟持部と鍛造品本体との当接を無くすことができるので、鍛造品本体を傷める心配がない。また、鍛造品本体に被挟持部として利用できる部分がないときでも、ばりを利用すれば、別途専用に、つかみ代となる被挟持部を成形することがなく、材料歩留まりの悪化を避けることができる。ばり抜きと共に被挟持部を鍛造品本体から分離できるので、被挟持部を成形したために除去工程が増えることはない。
この発明は、ハブ輪製造用の鍛造品を成形する横型鍛造装置に適用することができる。ここで、「ハブ輪」とは、車体側のナックル又は車輪に締結するための取付フランジを一体に成形された環状体からなり、その内外周のいずれか一方に軌道又は軌道輪装着用の嵌め合い面が研削された部品をいう。
前記ハブ輪製造用の鍛造品を成形するためのワークは、円周状の内外周を横方向ダイ側の端からもった筒部と、円周状の内外周を横方向パンチ側の端からもった第二の筒部と、両筒部の外周を隔てるように非円周状に出張った鍔部と、筒部の内周を横方向に分ける位置で筒内側を閉塞する筒底壁と、鍔部の外周に付いたばりとからなり、筒部の端面、鍔部のパンチ側横面及び筒底壁のパンチ側横面は、軸線に直角な平面に沿うように仕上げ打ちされる。このワークに施すプレス加工として、鍔部のばり抜き、筒底壁のセンタ穴抜きとがある。
鍔部の外周に付いたばりは、前記一対の横端部及び/又は前記被挟持部とすることができる。ワークの横方向ダイ側の端から存在する筒部の内外周は、それぞれワークのダイ側横面に露出している。このため、筒部の内外周は、それぞれ前記円周表面部とすることができる。筒部及び第二の筒部の外周は、それぞれ前記円周状の外周部とすることができる。筒部の端面、鍔部のパンチ側横面、筒底壁のパンチ側横面のそれぞれは、軸線に直角な平面に沿うので、前記ホールド軸を横方向から突き当てる部分とすることができる。これらの面は、軸線に直角な平面に沿うので、両側のホールド軸でワークを挟持した状態でもワークを傾かないように強制回転させることができる。このように、ハブ輪製造用のワークを成形する横型鍛造装置は、上述の手段の全部を適宜に組み合わせて採用できるので、この発明に好適である。
上述のように、この発明は、横型鍛造装置において、トランスファ装置に搬送されたワークを横方向に挟持するホールド軸の横方向変位で引き継ぎ、これらホールド軸がワークを下流工程のダイへ送り込む間に、センタガイドがワークの円周表面部を案内・保持することで下流工程のダイに対する軸線の位置・向きを適切に保ち、この状態になってから、ワークが非正規の向きのときは、ワークの一対の横端部と一対の位相案内部との当接でワークを正規の向きまで強制回転させ、各位相案内部から横方向に連続する回り止め部間に一対の横端部を配置してワークを正規の向きに保つ状態で下流工程を実施することにより、ワークに対して軸線回りの円周方向に方向性をもった下流工程のプレス加工を正確に実施することができる。
また、この発明は、横型鍛造装置において、ダイから正規に排出されたワークの位置・姿勢と、このワークを基準とした一対のフィンガの均等な駆動及び鏡面対称の挟持態様とを前提にして、ワークに成形する非円周状の被挟持部を円周方向に関して各片側の一箇所だけとし、ワークが非正規の向きのときは、一対のフィンガの挟持部が対応側の被挟持部を非鏡面対称に円周方向一箇所のみで正規の向きに対する傾きをもって押し、ワークを確実に正規の向きに強制回転させた位置で挟持することにより、トランスファ装置から非正規の向きのワークを下流工程のダイに向けて送り込むことを無くしたので、ワークに対して軸線回りの円周方向に方向性をもった下流工程のプレス加工を正確に実施することができる。
以下、添付図面に基いて実施形態を説明する。実施形態に係る横型鍛造装置は、図2に要部を抜粋して示すように、仕上げ型のダイ11及びパンチ12と、仕上げ打ちされたワーク1にプレス成形を実施する下流工程のダイ21及びパンチ22と、仕上げ型のダイ11から排出されたワーク1を保持して下流工程のダイ21とパンチ22間に搬送するトランスファ装置と、トランスファ装置に搬送されたワーク1を横方向に挟持し、この挟持状態で横方向に変位することにより下流工程のダイ21に送り込むホールド軸23、24とを備えている。
この横型鍛造装置は、ラム(図示省略)の往復方向を水平方向の一直線に沿う向きとした多段フォーマからなる。「横方向」は、ラムの往復方向に相当するから、ラムに装着されたパンチ12、22の往復方向に相当する。以下、「ダイ側」とは、トランスファ装置の下流工程へ向かう下方向送りの停止位置におけるワークの位置を基準として、横方向にダイへ近い側を意味し、横方向にパンチ側に近い側を意味して「パンチ側」という。「横方向パンチ側」とは、横方向にパンチ側に向う方向といい、「横方向ダイ側」とは、横方向にダイ側に向う方向という。また、ダイ側からの横方向投影図に現れる物の表面を「ダイ側横面」といい、パンチ側からの横方向投影図に現れる物の表面を「パンチ側横面」という。
この横型鍛造装置は、図3(a)〜(e)の順に各工程を経てハブ輪製造用の鍛造品を成形する用途に構成されている。(a)の工程では、丸棒状の鋼材を切断して円柱状のビレットを成形する。(b)の工程では、体積配分を行って荒地を鍛造する荒打ちを行う。(c)の工程では、荒地に型鍛造を施してワーク1を成形する仕上げ打ちを行う。(d)の工程では、ワーク1のばり抜きを行う。(e)の工程では、ワーク1’のセンタ穴抜きを行う。
図3(c)に示すように、ワーク1は、軸線L上に中心を置いた円周状の内外周を横方向ダイ側の端からもった筒部2と、円周状の内外周を横方向パンチ側の端からもった第二の筒部3と、両筒部2、3の外周を隔てるように出張った非円周状の鍔部4と、筒部2の内周を横方向に分ける位置で筒内側を閉塞する筒底壁5と、鍔部4の外周に含まれたばり6とからなる。筒部2、3の端面、鍔部4のパンチ側横面及び筒底壁5の両横面は、それぞれ軸線Lに直角な平面に沿うように仕上げ打ちされている。ワーク1に含まれた鍛造品本体は、図3(d)のばりカス、及び図3(e)の穴抜きカスを除いた部分からなる。以下、「円周」、「回転」は、特に言及しない限り、軸線L回りの円周、回転のことをいう。
筒部2、3の内外周は、軸線L上に中心を置いた円周表面部となっている。筒部2の内外周は、ワーク1の横方向長さのダイ側端となる筒部2の端面の内外周を成す。すなわち、筒部2の内外周は、ワーク1のダイ側横面に露出している。同様に、第二の筒部3の内外周もパンチ側横面に露出している。筒部2、3の内外周を利用して軌道又は軌道輪嵌着用の嵌め合い面を形成することができる。なお、筒部2、3の内外周は、軸線Lに沿った全範囲で同一径の円周表面からなる態様に限定されず、例えば、抜け勾配を与えることもできる。
鍔部4のパンチ側横面4aは、取付フランジの締結面になるので、軸線に直角な平面に沿うように成形される。図3(c)、(d)を対比すれば明らかなように、鍔部4は、パンチ側横面4aから横方向ダイ側に連続し、かつ円周方向の複数箇所に等配された肉盛部4bと、パンチ側横面4aから横方向ダイ側に連続し、かつ円周方向に隣り合う肉盛部4b、4b間に連続する減肉部4cとからなる。肉盛部4bには、前記の締結用のボルト挿通孔を形成することができる。各減肉部4cは、余分な肉部を無くして軽量化するため、肉盛部4bと比してパンチ側横面4aからの横方向長さ及び軸線Lからの直線距離が短くなっている。肉盛部4bには、前記の締結用のボルト挿通孔を形成することができる。
ばり6は、パンチ側横面4aから横方向に連続し、かつ鍔部4の外周全周に付いている。ばり6は、非円周状の複雑鍛造部である鍔部4の鍛造精度を確保するのに生じている。なお、筒底壁5はビレットから筒部2、3の内外周を鍛造したことで生じている。
図4に示すように、ワーク1は、全体として180°回転対称性をもった形状になっている。肉盛部4b、減肉部4cは、90°回転対称性をもって等配されている。これらの等配位置は、それぞれ図示の0°−180°線を基準に考えると、45°、135°、225°、315°配置となっている。肉盛部4b、減肉部4c、及びばり6は、軸線Lを含む0°−180°方向の平面、及び90°−270°方向の平面のそれぞれに関して鏡面対称性を有する形状になっている。
図2に示すように、仕上げ型のエジェクタ13は、横方向に直角な平面に沿う先端部でワーク1の筒部2の端面を横方向に押すことにより、ワーク1をダイ11から横方向に排出する。
トランスファ装置は、仕上げ型のダイ11からエジェクタ13により排出されたワーク1を挟持する一対のフィンガ30と、一対のフィンガ30を水平に対する上下方向に送る図示省略の送り機構とを有する2次元トランスファフィーダとして構成されている。トランスファ装置は、仕上げ型のダイ11から正規に排出されたワーク1を一対のフィンガ30でそのまま保持したときを前提として、その保持したワーク1を下方向に送り、下流工程のダイ21に横方向送りのみで正規に配置可能な位置で停止するようになっている。以下、ダイ11から正規に排出されたことを、単に「正規に排出された」と呼び、正規に排出されたときのワーク1の軸線回りの向きを、単に「正規の向き」と呼ぶ。
図4(a)、(b)に示すように、一対のフィンガ30は、フィンガ31、32からなり、これらが互いに均等に駆動されるようになっている。具体的には、フィンガ31、32は、横方向に向いた共通軸33回りに回動可能に設けられている。図示省略の駆動部及びクランク機構により、それぞれのピン34を介してフィンガ31、32のそれぞれに同じ駆動力が分配され、フィンガ31とフィンガ32とが共通軸33回りに相反する向きに同期・等速回転するようになっている。トランスファ装置の送り機構やフィンガの開閉機構は、特許文献2、3に開示されているものを含め、周知のものを適宜に採用すればよい。
図2、図4(a)に示すように、ワーク1がダイ11から正規に排出された時点で、そのワーク1の軸線Lを含む90°−270°方向の平面が水平を向き、一対のフィンガ30の共通軸33の中心が同平面上にある設定となっている。
一対のフィンガ30は、前記の均等な駆動により正対する挟持部35、35を有する。挟持部35、35は、正規に排出されたワーク1の軸線Lを含む90°−270°の平面に関して鏡面対称に正対し、挟持部35、35が正対する方向は、同ワーク1の0°−180°方向に設定されている。各挟持部35は、前記正対方向及び横方向に直角な方向に真直ぐに設けられている。図示例では、各挟持部35は、正規に排出されたワーク1の0°−180°方向に正対する位置で、このワーク1の軸線Lを含む90°−270°方向の平面に沿う平面部として設けられている。
ワーク1は、円周方向に関してワーク1の90°以上270°未満の片側、及び残りの片側を考えたとき、各片側の一箇所だけに被挟持部7、7を有する。円周方向に関して一箇所だけとは、正規に排出されたワーク1の被挟持部7と対応側の挟持部35とがぴたりと当接する軸線L回りの角度範囲が一範囲に限られる、という意味である。各片側には、同一の角度範囲でぴたりと当接する限り、被挟持部7を横方向に複数個所に成形することもできる。
両側の被挟持部7、7は、正規に排出されたときに一対のフィンガ30の挟持部35、35と平行になる方向に真直ぐに成形される。具体的には、各被挟持部7、7は、正規に排出されたワーク1の軸線Lを含む90°−270°方向の平面に沿う平面部に成形される。
両側の被挟持部7、7は、ばり6からなる。両側の被挟持部7、7は、仕上げ型のダイ11とパンチ12とで型鍛造を行う際にばり道の終端部において成形される。
図4(b)に示すように、前記の均等な駆動により、一対のフィンガ30の挟持部35、35と、正規に排出されたワーク1の両側の被挟持部7、7とは、これら挟持部35、35が0°−180°方向に正対する位置で、両側同時にぴたりと当接する。このとき、そのワーク1の軸線Lを含む0°−180°方向の平面及び90°−270°方向の平面に関して鏡面対称に当接する。ワーク1の軸線Lを含む90°−270°方向の平面に関して鏡面対称に当接するので、これ以後に均等な駆動力を与え続けても軸線L回りの両回転方向のモーメントが釣り合う。したがって、ワーク1は、そのまま正規の向きで挟持される。なお、各被挟持部7と各挟持部35は、そのワーク1の軸線Lを含む90°−270°方向の平面に平行な面部なので、ワーク1を横方向にずらす分力が生じる心配はない。
図5(a)は、ワーク1が、正規に排出されたときと同軸であるが、最も大きく非正規の向きになって排出された様子を示す。非正規の向きのワーク1は、正規に排出されたワーク1と比して回転角αを有する。図中の時計回り、反時計回りのいずれにも非正規の向きになり得るが、図示例では、時計回りになった例を示している。挟持部35、35は、時計回りにα°傾いた両側の被挟持部7、7を必ず間に置いて挟むようになっている。被挟持部7、7、挟持部35、35が、共に正規に排出されたワーク1を基準とした前記90°−270°方向の平面に関して鏡面対称に、かつ90°−270°方向に真直ぐに設けられているので、回転角αを生じたワーク1の回転方向に応じて、挟持部35、35のいずれか一方側が、正対する位置よりも早期に片側の被挟持部7と傾きをもって円周方向一箇所のみで最初に当接する。この最初の当接時点を図5(a)に示している。図示の状態から、矢線方向の均等駆動に伴って、0°側の挟持部35は、0°側の被挟持部7の90°側の端部を傾きをもって押す。このため、ワーク1は、回転角αの小さくなる反時計回りの回転力を与えられつつ、180°側に飛ばされる。この間も180°側の挟持部35は、180°側の被挟持部7に接近しているので、飛ばされたワーク1の180°側の被挟持部7の円周方向一箇所のみで当接する。このため、180°側の挟持部35は、先の0°側のときよりも傾きが小さくなった状態で、より0°−180°方向の中央寄りの位置で180°側の被挟持部7に当接し、先の0°側のときよりも小さい傾きをもって押す。ここで、飛び具合を考慮して180°側の被挟持部7の90°側又は270°側のいずれを確実に押すように設定することは難しいので、いずれ側が押されてもよいようにするため、被挟持部7、7及び挟持部35、35が、共に正規に排出されたワーク1を基準とした前記0°−180°方向の平面に関しても鏡面対称に設けられている。このように0°側と180°側の当接が交互に僅かな時間に繰り返され、当接の度に回転角が小さくまた、ワーク1が0°−180°方向の中央に寄せられる。やがて、両側の挟持部35、35が対応側の被挟持部7、7に円周方向一箇所で当接する状態を経て、最終的に、挟持部35、35が正対する位置に達した時点では、ワーク1が回転角0°の正規の向きとなる。このように挟持部35、35は、ワーク1を正規の向きに回転させた位置で両側の被挟持部7、7と図4(b)のように鏡面対称に当接するので、正規の向きに直したワーク1をそのまま挟持することができる。挟持部35が対応側の被挟持部7と正規の向きのときと比して傾きをもって当接する限り、ワーク1の0°側と180°側とは非鏡面対称に押されるので、時計回り又は反時計回りにモーメントが釣り合うことはなく、ワーク1を確実に正規の向きに直してから挟持することができる。なお、上述の鏡面対称性から、最初、回転角αが反時計回りに存在しても同じようにワーク1を正規の向きに直して挟持することができる。被挟持部7、7は、鍛造品本体と同じく仕上げ打ちで型成形されるので、強制回転を実現するのに十分な精度で成形することができる。
上述のように、正規に排出されたワーク1を基準とした一対のフィンガの均等な把持動作、及び挟持部35、35と被挟持部7、7の形態及び配置関係に基いて、ワーク1を確実に正規の向きに直して保持することができるので、センサを用いたワーク1の向き検知及びセンサ出力を用いた個々のフィンガの高度な把持制御が不要である。
ここで、図2、図4(b)に示すように、エジェクタ13とワーク1の突き合い面が横方向に直角な平面状なので、エジェクタ13の突き出しによってダイ11から自由になったワーク1がエジェクタ13の先端部に対して横方向に直角な方向に変位し、そのワーク1と、正規に排出されたワーク1との同軸度が低下することが起こり得る。図5(b)は、軸線に直角な方向の変位量δが0°−180°方向の180°側にのみ生じたワーク1を実線で示す。変位量δは、横方向に直角な全方向に起こり得る最も同軸度の低下した状態の変位量に相当する。ワーク1が90°−270°方向にのみ変位量をもつとき、共通軸回りに矢線の回転変位を行う挟持部35、35であっても、正対する位置で両側の被挟持部7、7に同時にぴたりと当接することができる。図示のように、ワーク1が0°−180°方向の片側に変位量をもつとき、挟持部35、35は、正対する位置で両側の被挟持部7、7と同時にぴたりと当接することはできず、正対する位置に達する前の時期に、変位した側で傾きをもって最初に当接する。図中において、変位した180°側の挟持部35が対応側の被挟持部7と最初に当接した時点を実線で示し、その後のワーク及び挟持部を一点鎖線で示す。最初の当接の結果、ワーク1は、0°側に飛ばされ非正規の向きに回転させられるが、図5(a)に基いて説明したのと同じく、最終的には、正対する位置でワーク1が正規の向きなり、ワーク1を確実に正規の向きに直してから挟持することができる。
上述のように0°−180°方向の同軸度は、挟持部35、35と両側の被挟持部7、7との当接で保証することができるが、これらの当接で90°−270°方向の同軸度を保証することはできない。90°−270°方向の同軸度を保証するため、一対のフィンガ30は、各フィンガ30にVブロック状に設けられた合計四箇所の心出しガイド36を備える。各フィンガ31、32は、ワーク1が正規の向きか非正規の向きか、前記最大の変位量δがどの一方向に生じているかによらず、筒部3の円周状の外周部に対する接線方向の当接面となるVブロック状に2箇所の心出しガイド36が設けられている。四箇所の心出しガイド36は、挟持するワーク1と、正規に排出されたワーク1との90°−270°方向の同軸度を保証する。すなわち、90°方向又は270°方向の片側に同軸度に特定未満に低下しているとき、図5(b)に示すように、挟持部35、35と両側の被挟持部7、7が平行に近づくと、筒部3の外周の90°側又は270°側が接線方向に真直ぐな表面で当接する心出しガイド36に押されて、ワーク1が270°側又は90°側に強制的に変位させられる。最終的に、挟持部35、35が正対する位置では、90°−270°方向の同軸度が一定以上になる。なお、同軸度は完全に同軸まで保証する必要はない。図示例では、図4(b)に示すように、正規に排出されたワーク1を挟持したとき、各心出しガイド36と、筒部3の円周状の外周部との間に間隙が存在するようになっている。この間隙は、後述のトランスファ装置からの横方向送りでワーク1を下流工程のダイに配置する支障とならない僅かな大きさであり、挟持部35、35と両側の被挟持部7、7間よりも先に心出しガイド36と筒部3の円筒外周との間に挟持圧力が生じることを確実に防止し、上述の向き直しを阻害しないようにするために設定されている。
上述のように一対のフィンガ30でワーク1を保持した後、トランスファ装置は、図2に示すように一対のフィンガ30を下向きに送って、ワーク1を下流工程のダイ21とパンチ22間に搬送する。このトランスファ装置の下方向送りの停止位置は、ワーク1を横方向変位のみでダイ21に送り込むことができる位置に定められている。
下流工程のダイ21及びパンチ22は、ワーク1のばり6をせん断する抜き型からなる。パンチ22は、内周を有する先端部でワーク1の鍔部4を打つように設けられている。
ダイ側のホールド軸23は、ダイ21からワーク1を横方向に突き出すエジェクタからなる。ホールド軸23は、クランクプレス軸の回転を利用して、メカニカルに連動したレバー機構でエジェクタを適切なタイミングで往復させる機械式ノックアウト装置、又は、油圧回路によってエジェクタを適切なタイミングで往復させる油圧式ノックアウト装置のいずれでもよい。
パンチ側のホールド軸24は、パンチ22の先端部内周よりも内側を横方向ダイ側に突出するように通されている。ホールド軸24は、パンチ22に対して図示省略のばね部を介して横方向に支持され、パンチ22の内周によって横方向に直角な全方向に位置決めされている。ばね部は、金属ばね、空気ばねや油圧ばねといった流体ばねのいずれでもよい。ホールド軸24は、専用のサーボ駆動やクランクプレス軸からのパワートレインで駆動することもできる。ばね部の反発力を挟持力とすれば、振動によって挟持力が瞬間的に完全になくなることを無くすことができる。
図2(a)、図6(a)に示すように、トランスファ装置の下方向送りが停止した時点で、ホールド軸23が、最もパンチ22側まで進出した位置にある。この位置は、ホールド軸23の先端部が前記停止した時点における筒部2の横方向ダイ側の端よりも僅かに横方向ダイ側に寄ったところに存在し、トランスファ装置で下方向に送られるワーク1と横方向に衝突しないように設定されている。下方向送りが停止した時点で、先のワークを排出したホールド軸23が僅かに横方向ダイ側に後退しているようにタイミングを設定し、前記の衝突を防止するようにすることもできる。
下方向送りの停止位置にあるワーク1に向ってパンチ22が進出することに伴って、図示省略のばね部を介して押されたパンチ側のホールド軸24も進出する。これにより、図6(b)に示すように、ホールド軸24は、ワーク1の筒底壁に突き当たる。さらにパンチ22が進出すると、前記ばね部の横方向圧縮に対する反発力がホールド軸24を押し、ワーク1がホールド軸24に押されることで筒部2の端面がホールド軸23に突き当たる。前記ばね部の反発力により、ホールド軸23、24が、前記下方向送りの停止位置でワーク1を横方向に挟持する。
ホールド軸23、24の挟持によりワーク1をその位置、姿勢に保持できるようになってから、図6(c)に示すように、トランスファ装置のフィンガ31、32が開き、ワーク1がトランスファ装置から解放され、両側のホールド軸23、24にワーク保持が引き継がれる。その後、パンチ22がパンチ側の第二のホールド軸としてワーク1の鍔部に突き当たる。この挟持状態で、パンチ22がさらに進出することに伴ってホールド軸24も横方向ダイ側に変位し、これらパンチ側のホールド軸22、24の変位に同調してダイ側のホールド軸23も同方向に変位することにより、ワーク1をダイ21に送り込むようになっている。以下、このパンチ22、ホールド軸23、24の一体性をもった横方向の変位を、単にホールド軸22〜24の横方向の変位として説明する。
この横型鍛造装置は、図1、図2に示すように、横方向に沿った中心軸に対して傾斜した案内周面部25aを有するセンタガイド25と、センタガイド25を横方向に支持するばね部材26と、ワーク1を正規の向きにする一対の位相ガイド27、27とを備える。
センタガイド25は、横方向両側に開放された筒体からなる。センタガイド25は、ばね部材26を介してダイ21を固定する静止部に対して横方向に支持されている。センタガイド25は、ダイ21に対する横方向に直角な全方向の位置を特定の範囲に制限されている。この位置決めは、センタガイド25の外周と、前記の静止部、及びダイ21の内周との滑り接触部分による。ダイ21の内周とセンタガイド25の外周とは、ばね部材26の全伸縮ストロークにおいて全周に亘る接触を維持するようになっている。
案内周面部25aは、センタガイド25の内周部分に形成されている。図1(a)中に一点鎖線で示したセンタガイド25の中心軸に沿って横方向ダイ側に進むに連れて次第に内径が小さくなる円錐面に沿うように形成されている。
図1(b)に、正規に排出されたワーク1をトランスファ装置がそのまま保持して前記下方向送りの停止位置に搬送したときのワーク1(以下、このワーク1を基準ワーク1と呼ぶ)を一点鎖線で示し、基準ワーク1の軸線Lを含む上下方向の一点鎖線で前記90°−270°方向の平面を示し、基準ワーク1の軸線Lを含む左右方向の一点鎖線で前記0°−180°方向の平面を示す。図1(a)のセンタガイド25の中心軸は、図1(b)の軸線Lと同軸の状態で示している。図2に示すダイ21の内周等によるセンタガイド25の位置決めは、図1(a)、(b)に示すように基準ワーク1の軸線Lと中心軸とが同軸になる位置に設定されている。案内周面部25aの内径は、ワーク1の円周表面部である筒部2の外周の外径に対応している。図示例では、筒部2の外周に抜け勾配を付けているので、案内周面部25aの最小内径は、筒部2の横方向ダイ側の端における外径と同一とされている。
センタガイド25の大径部がダイ21と横方向に突き当たることによりセンタガイド25のパンチ側に抜け止めされている。ばね部材26は、コイルばねからなる。ばね部材26は、センタガイド25を前記大径部が突き当たるように常時に付勢している。エジェクタからなるホールド軸23は、センタガイド25及びばね部材26の内側に通されている。センタガイド25が最も横方向パンチ側に進出した前記の抜け止め位置において、案内周面部25aは、位相ガイド27及びダイ21の内周刃よりも基準ワーク1に近いところまで突出している。
図6(c)に示すようにホールド軸22〜24が基準ワーク1を挟持した状態から、さらにホールド軸22〜24の横方向の変位が進行すると、図6(d)に示すように、これらに送られるワーク1は、筒部2からセンタガイド25の内側に挿入される。そのワーク1とセンタガイド25の中心軸との同軸度が所定未満のとき、ワーク1の円周表面部である筒部2の外周は、その横方向ダイ側の端部において案内周面部25aの周方向一部分と横方向に当ることになる。このため、センタガイド25が横方向に押されるが、ばね部材26の弾性抵抗でセンタガイド25の横方向ダイ側への変位が抑制されるので、筒部2の前記の外周端部を案内周面部25aで中心軸に向って滑らせることができる。この滑り接触により、ホールド軸22〜24でワーク1の傾きを抑えながら、ワーク1と中心軸との同軸度を高めることができる。図6(d)は、筒部2の横方向ダイ側の端が案内周面部25aの最小内径部に達した時点を示している。この時点では、ワーク1と中心軸との同軸度は所定以上に高まっている。図示例では、図3のばり6を抜くとき、鍔部4のばりかじりを確実に無くすため、設計上、完全な同軸を保証している。
図6(d)の時点で、案内周面部25aにより筒部2の外周が横方向ダイ側の端部から横方向に長さをもって嵌合する。この嵌合により、センタガイド25の内周部分で所定以上の同軸度を保つことができる。当初からワーク1と中心軸の同軸度が所定以上のとき、筒部2の前記の外周端部が案内周面部25aを滑ることなく嵌合する。
また、上述の嵌合状態では、案内周面部25a及び筒部2の外周が上述の勾配をもつため、さらなるホールド軸22〜24の変位により、楔の如く筒部2の外周が案内周面部25aにさらに押し込まれようとするので、案内周面部25aで筒部2の外周から与えられる負荷を受けることができる。したがって、前記所定以上の同軸度を保つ状態になってからワーク1がセンタガイド25と横方向に係合する。このように係合したワーク1及びセンタガイド25を介してばね部材26がパンチ側のホールド軸22、24に押されるので、ばね部材26の圧縮が一気に進行する。この圧縮により、図6(e)に示すように、センタガイド25は、ワーク1を挟持する両側のホールド軸22〜24と共に横方向に一層変位する。図6(e)は、この一層変位が開始された後、ワーク1の被挟持部7、7が一対の位相ガイド27、27に横方向から当接する前の時点を示す。図示のように、一層変位が開始される時点で、ワーク1の被挟持部7、7は、一対の位相ガイド27、27よりも横方向パンチ側に位置するようになっている。
図1、図2に示すように、一対の位相ガイド27、27は、センタガイド25の中心軸と直角な方向に正対する一対の位相案内部27aと、各位相案内部27aから横方向ダイ側に連続する回り止め部27bとからなる。一対の位相ガイド27、27は、それぞれダイ21を固定する静止部に固定されている。一対の位相ガイド27、27は、一部材に設けることも可能だが、材料歩留まりに優れ、個々に位置調整が可能なことから、二部材に分けることが好ましい。
図1(a)、(b)の対比から明らかなように、一対の位相案内部27aは、基準ワーク1の軸線Lを含む90°−270°方向の平面に関して鏡面対称に正対する。したがって、一対の位相案内部27aの正対方向は、基準ワーク1の0°−180°方向になる。各位相案内部27aは、これらの正対方向及びセンタガイド25の中心軸に直角な方向に真直ぐに設けられている。すなわち、各位相案内部27aは、基準ワーク1の90°−270°方向に真直ぐに設けられている。したがって、図1(b)中の0°−180°方向の平面に平行な任意の平面における切断面において、各位相案内部27aの断面形状は図1(a)のようになる。図示例の各位相案内部27aは、横方向パンチ側の端から連続する断面円弧状部と、ここから横方向ダイ側に連続する断面傾斜直線部とで形成されている。その図示から明らかなように、各位相案内部27aは、横方向ダイ側に進むに連れて正対間隔を次第に狭める傾きを有する。
図1(b)に実線で示したワーク1は、両側の被挟持部7、7が一対の位相案内部27a間に達するまでに起こし得る最大の回転変位を生じ、一点鎖線の基準ワーク1の正規の向きと比して、成し得る最も非正規の向きになった状態にある。図1(a)に示すように、一対の位相案内部27aは横方向パンチ側の端部で最大正対間隔を有する。この最大正対間隔の大きさは、図1(b)に示すように、非正規の向きのワーク1の被挟持部7、7が、一対の位相案内部27aに交差して横方向から臨むとき、一対の位相案内部27aから正対方向にはみ出ることのないように設定されている。したがって、非正規の向きになったワーク1の両側の被挟持部7、7を確実に一対の位相案内部27aに当接させることができる。図示例では、一対の位相案内部27a間の最小正対間隔の大きさは、ばりかじりを確実に無くすため、設計上、基準ワーク1の被挟持部7、7の0°−180°方向幅と同一とされている。この最小正対間隔を成すところが、回り止め27bとの境界といえる。回り止め部27bが各位相案内部27aから横方向ダイ側に連続するので、これら回り止め部27b間の正対間隔も位相案内部27a間の最小正対間隔と同じになっている。
上述のように、基準ワーク1の向きを前提として一対の位相案内部27aを設けたので、両側の被挟持部7、7は、一対の位相案内部27aと平行になる90°−270°方向に真直ぐに成形されることになる。図示のワーク1の形態から明らかなように、ワーク1が非正規の向きである限り、その両側の被挟持部7、7のみが一対の位相案内部27aに横方向から当接する。したがって、ワーク1は、一対の位相案内部27a間を非接触に通過可能であって下流工程の加工を実施可能な基準ワーク1に相当する正規の向きをもち、かつ図中に実線で示すように、非正規の向きでは、一対の位相案内部27aに横方向から当接可能な、両側の被挟持部7、7からなる一対の横端部を有することになる。
図1(b)に示すように、ワーク1が非正規の向きになっていると、図6(e)の時点からホールド軸23、24等の一層変位がさらに進行することにより、0°側の被挟持部7の90°側の端部と、180°側の被挟持部7の270°側の端部とが平行な一対の位相案内部27aに軸線L回りに交差角をもって横方向から当接する。その結果、一対の位相案内部27aの傾きに伴い、被挟持部7、7を平行な一対の位相案内部27aと同じ方向に向けようとする反力が発生する。この当接に伴う反力によりワーク1が強制的に回転させられるので、この強制回転に伴って両側の被挟持部7、7を一対の位相案内部27aで滑らせ、ワーク1を横方向ダイ側に送ることができる。係る反力は、一対の位相案内部27aと両側の被挟持部7、7の基準ワーク1に基いた平行方向性から、一対の位相案内部27aと両側の被挟持部7、7が平行になるまで、すなわちワーク1が正規の向きになるまで継続的に与えることができる。
図1(b)では時計回りに非正規の向きとなったワーク1を示したが、被挟持部7、7及び位相ガイド27、27は、基準ワーク1の軸線Lを含む0°−180°平面及び軸線Lを含む90°−270°平面に関して鏡面対称に設けられているので、前記の反時計回りに非正規の向きになっても同じようにワーク1を正規の向きに直すことができる。
トランスファ装置がワーク1を正規の向きに直して保持するので、一対の位相案内部27aによる向き直しは、専ら、トランスファ装置からワーク1が解放された図6(c)〜図6(e)の時点までの間に起こり得るワーク1の回転変位を対象にするだけでよい。このため、非正規の向きから一層変位の間にさらに向きが狂うことも考慮して一対の位相案内部を設けるときと比して、一対の位相案内部27a間の最大正対間隔と最小正対間隔の差を小さく設けることができるので、コンパクト化を図ることができる。
両側の被挟持部7、7が一対の位相案内部27aと平行になると、直ちに、各位相案内部27aから横方向に連続する回り止め部27b間に至り、図6(f)に示すようにダイ21に横方向から引っ掛かる。ワーク1が正規の向きのときは、両側の被挟持部7、7は一対の位相案内部27aに当接することなく、回り止め部27b間に至る。ワーク1が回転しようとしても回り止め部27bが被挟持部7、7と円周方向に係止するため、ワーク1が正規の向きに保たれる。
センタガイド25のうち、ワーク1の筒部2が嵌合する内周部分の外側は、同軸度所定以上に保つ図6(e)の時点から図6(f)の時点後も、ダイ21の内周により中心軸に直角な全方向に位置決めされる状態にある。この状態で両側の被挟持部7、7が一対の位相案内部27aに当接するため、当接時の衝撃で同軸度が狂うことをセンタガイド25だけでなく、ダイ21の剛性をも利用して防止することができる。
回り止め部27bは、図6(f)、図1(a)に示すように、ワーク1の被挟持部7、7を含むばりがダイ21の内周刃に横方向から引っ掛かる横方向位置まで存在する。このため、回り止め部27bにより図1(b)に示す基準ワーク1の軸線Lの位置及び正規の向きが保たれた状態で、図6(g)に示すように、パンチ22の先端部がワーク1の鍔部をその非円周状の外周に沿って打ち、図3(d)に示すように、円周方向に方向性をもったばり6をせん断する下流工程を正確に実施し、鍔部4のばりかじりを確実に防止することができる。
上述の下流工程においては、前記の一層変位のためにワーク1の鍔部を押すパンチ22は、ホールド軸としての役目を終え、被挟持部7、7がダイ21に引っ掛かる図6(f)の時点からワーク1の鍔部を打つことになる。このため、ホールド軸24をパンチ22と独立駆動としてホールド軸23、24のみでワーク1を横方向に送り込み、図6(g)に被挟持部7、7がダイ21に引っ掛かった後にパンチ22で鍔部を打つよりも、加工能率がよい。
図6(g)は、ばり6のせん断を終え、パンチ22が最も進出した時点を示す。図示から明らかなように、上述の下流工程においては、ばり6のせん断を終えるまで、センタガイド25のうち、ワーク1の筒部2が嵌合する内周部分の外側は、パンチダイ21の内周により中心軸に直角な全方向に位置決めされている。このように、ワーク1をダイ21に適切な位置・姿勢となるところで前記所定以上の同軸度に保つセンタガイド25とダイ21の内周とが一体的に筒部2の外周を支持することができるので、パンチ22でワーク1を打ってもワーク1が傾く心配はない。
例えば、筒部2の外周のうちセンタガイド25に保持される部分と鍔部との間の横方向中間部分の外径がダイ21の内径に相当する段付き状にした変更例を考えると、センタガイド25をパンチ22の往復と別の独立駆動とし、回り止め部27bでワーク1の向きを保った後、センタガイド25をダイ21からホールド軸23(エジェクタ)の如く退避させ、ダイ21の内周と筒部2の前記中間部分とでワーク1の軸ずれを防止することもできる。
両側の被挟持部7、7がばり6に含まれるので、パンチ22がワーク1を打つ近傍でワーク1を回り止め部27bで正規の向きに制限することができる。このため、ばり6から横方向に離れた他の部分で制限するときと比して、成形誤差やセンタガイドの組み付け誤差の影響を受け難くすることができる。
図6(h)に示すように、ばり6のせん断後、ホールド軸24は、後退するパンチ22と横方向パンチ側に向って段部で係合し、パンチ22と共に後退し、これに伴ってホールド軸24がパンチ22と共に後退し、次のワーク1の搬送に備える。せん断されたばり6は、パンチ22の外周にくっつき、パンチ22が後退すると、スクレイパー28でかきとられて機外に排出される。また、ホールド軸23は、ワーク1’をダイ21から排出するため、図6(a)と同じ横方向位置まで進出する。センタガイド25も、ばね部材26の反発により図6(a)と同じ横方向位置に復帰する。
仮に、横方向に固定のセンタガイドを考えると、ダイ21の内周に形成するか別体に組み込むかによらず、ダイ21の内周刃よりも横方向ダイ側に配することになる。このため、両側の被挟持部7、7がダイ21に横方向から当接する前に、筒部2の外周からなる円周表面部を回転軸部形成に十分な横方向長さでダイ21の内周やダイ21と別体に静止部として組み込まれたセンタガイド部分に十分に挿入できることが固定式を採用できる条件になる。筒部2の外周からなる円周表面部の横方向長さが前記の挿入の点で不足する懸念があるとしても、上述のようにセンタガイド25が筒部2を図6(a)の位置まで迎えに行くようにすれば、その不足を補うことができる。したがって、センタガイド25、位相ガイド27、27等を適用できるワーク1の形態の範囲を拡大することができる。
なお、ダイ21から排出されたワーク1’は、さらに下流の工程に搬送され、図3(e)に示すようにセンタ穴抜き加工を実施される。この加工は、軸線と同軸の丸孔抜きなので、円周方向の方向性がないため、説明を省略する。
上述のように、両側の被挟持部7、7は、ばり6からなるので、下流工程の実施により鍛造品本体から除去される。したがって、両側の被挟持部7、7を除去することのみを目的とした工程が発生しない。また、一対の位相案内部27aに当接するワーク1の一対の横端部が両側の被挟持部7、7からなるので、一対の横端部の除去のみを目的とした工程も発生しない。
また、一対の位相案内部等と組み合わせて採用するトランスファ装置は、仕上げ型から排出されたワークを保持して下方向に送り、下流工程のダイへワークを横方向に送り込める位置で停止し、ホールド軸でワークを引き継ぐことができる限り、適宜のものに採用することができる。3次元トランスファ装置を採用し、下方向送りの停止後にトランスファ装置でワークの横方向送りの一部を実施することもできる。この実施形態において2次元トランスファ装置を採用したのは、トランスファ装置自体の送り機構をなるべく簡単にし、一対のフィンガの下方向送りから横方向送りへの切り替え時間がなく、ワークの高速送りに好適なためである。
例えば、図7に示すように、共通軸83回りに回動自在のフィンガ81、82からなり、ピン84を介してフィンガ81、82に伝達する駆動力により互いに均等に駆動される一対のフィンガ80を採用し、ワーク71には、円周方向に90°回転対称性をもつように4箇所の真直ぐな被挟持部74をばり73に成形しておき、一対のフィンガ80の4箇所の挟持部85と、仕上げ型のダイから正規に排出されたワーク71(図示のワーク)の4箇所の真直ぐな被挟持部74とが軸線回りの90°回転対称性をもって鏡面対称に同時に当接すると、正規に排出されたワーク71がそのままの正規の向きに挟持されるようにし、一対のフィンガ80には、挟持するワーク71と、仕上げ型のダイから正規に排出されたワークとの同軸度を筒部75の外周部に対する接線方向の当接面で保証する心出しガイド86を備えることも考えられる。
図示と異なり、ワーク71が非正規の向きに排出されたとき、本来、正対すべき真直ぐな4箇所の挟持部85と対応する被挟持部74とが傾きをもって4箇所全部又は3箇所で歪に当接するため、ワーク71が軸線回りに回転することができず、そのまま一対のフィンガ80に挟持されてしまう恐れがある。センタガイドや位相案内部でワークの正確な配置を保証できるので、非正規の向きに挟持されることを許容できるが、4箇所に真直ぐな被挟持部74を設けるため、ばり73の外周総延長を短くすることが困難である。図4に示すように、この実施形態によれば、被挟持部7、7をばり6の円周方向の二箇所に成形するだけなので、図7の例と比して、ばり6の外周長を小さくし、材料歩留まりをよくすることができる。
この発明の範囲は、上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された技術思想の範囲内での全ての変更を含むものである。