JP5603004B2 - 油分を多量に含む粉粒状堆積物の流出防止剤及びその製造方法 - Google Patents

油分を多量に含む粉粒状堆積物の流出防止剤及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、油分を多量に含む粉粒状堆積物の流出防止剤及びその製造方法に関する。
石炭類のような粉粒状堆積物はコンベアーで搬送され、スタッカー等により屋外貯蔵ヤードに山積貯蔵されるのが一般的である。これら粉粒状堆積物は、乾燥時には風により飛散して粉塵を発生するほか、降雨等により雨水が浸透して含水量が上昇して、崩れ流れることや含水量の増加によるエネルギーロス等の問題が生じる。
粉粒状堆積物のこの崩れおよび流出を防止するために、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂等のエマルジョン、あるいはゴムラテックス等をコーティング剤として、堆積物に散布して粉粒状堆積物の表面を固める方法(特許文献1)、微粉砕したセメント水溶液を散布した後、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、飽和ポリエステル等の樹脂水溶液を散布して粉粒状堆積物の表面を固める方法(特許文献2)、ポリビニルアルコール水溶液と硬化剤とから成るコーティング剤を散布し乾燥させて固結層(コーティング剤が堆積粒子を固結した層)を形成させる方法(特許文献3)、白色粉末を含有する樹脂溶液を散布しコーティング皮膜を形成する方法(特許文献4)、樹脂と着色剤とからなる表面処理剤を散布する方法(特許文献5)、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンを主剤とした液状組成物を散布する方法(特許文献6)などが提案されている。
最近では、これらの方法では不十分であった雨水の浸透抑制効果を大幅に改善した、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンを主剤とした液状組成物を散布する方法(特許文献7、8)、アスファルト成分と界面活性剤、樹脂エマルジョンを混合したものを散布する方法(特許文献9)などが提案されている。
ところで、近年の原油価格の高騰や諸外国の経済成長により、石炭の需要が増加してきている。それにともなって、我国に輸入される石炭品種は、高品質な無煙炭などに代わり、油分を多量に含んだ低品質な石油炭などが増えてきている。
石油炭のように粒子径が細かく、油分を多量に含む粉粒状堆積物に、流炭防止剤を散布すると、粉粒状堆積物表面ではじかれてしまったり、内部への浸透速度が遅いため散布中に粉粒状堆積物の傾斜を流れ落ちて浸透しないため、固結層の形成が不十分であったり、あるいは形成された固結層における雨水の浸透抑制効果が十分でなかったりする場合がある。このような油分を多量に含む粉粒状堆積物に対する、前記の課題を十分に解決した流出防止剤の例は、未だ報告されていない。
特開昭49−31589号公報 特開昭58−45285号公報 特開昭61−236866号公報 特開平3−157492号公報 特開平3−138208号公報 特開昭48−40209号公報 特開平10−306190号公報 特開2000−80356号公報 特開2002−20769号公報
本発明は、油分を多量に含み、とりわけ、ノルマルヘキサンを溶媒としたソックスレー抽出法(以下、単にソックスレー抽出法という)により抽出される炭化水素分が0.3質量%以上の粉粒状堆積物に散布し、該粉粒状堆積物の粉粒体と流出防止剤とからなる固結層を形成させ、降雨による粉粒状堆積物の崩れ及び流出防止、粉粒状堆積物中の含水量の増加防止及び乾燥時の飛散防止に対して優れた効果を有する粉粒状堆積物の流出防止剤及びその製造方法を提供するものである。
本発明者等は、前記課題を達成する方法を鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
「(1)エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、ノニオン系湿潤浸透剤、ポリビニルアルコール、撥水剤および水を含有してなることを特徴とし、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルおよびポリオキシエチレンアルキル(C11〜15)エーテルから選ばれる1種又は2種以上からなるノニオン系湿潤浸透剤の添加量が、流出防止剤に対して0.3〜3.0質量%であり、ノルマルヘキサンを溶媒としたソックスレー抽出法により抽出される炭化水素分が0.3質量%以上である石油炭の流出防止剤。
)ポリビニルアルコールの添加量が、流出防止剤に対して0.05〜0.7質量%である請求項に記載の石油炭の流出防止剤。
)撥水剤の添加量が、流出防止剤に対して0.01〜0.1質量%である請求項1〜のいずれかの項に記載の石油炭の流出防止剤。
)混合槽に、少なくともエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、ノニオン系湿潤浸透剤、ポリビニルアルコール、撥水剤および水を添加し、混合することを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載の石油炭の流出防止剤の製造方法。」
である。
本発明の流出防止剤は、油分を多量に含み、とりわけ、ソックスレー抽出法により抽出される炭化水素分が0.3質量%以上の石油炭などの粉粒状堆積物とも強固な固結層を形成し、かつ耐水性に優れているため、特に降雨等の水による粉粒状堆積物の崩れ、流出防止、及び粉粒状堆積物中の含水量の増加防止に優れた効果を奏する。また、本発明の流失防止剤は、EVAエマルジョンを用いた水系であるため環境への悪影響が少ない。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、油分を多量に含み、とりわけ、ソックスレー抽出法により抽出される炭化水素分が0.3質量%以上である粉粒状堆積物の流出防止剤及びその製造方法であって、その流出防止剤は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、ノニオン系湿潤浸透剤、ポリビニルアルコール、撥水剤および水を含有してなることを特徴とする。
ここでいう、ソックスレー抽出法とは、固体から目的成分を抽出するのに、一般的に用いられている抽出方法である。すなわち、最下部の溶媒を入れたフラスコを加熱して溶媒を蒸発させ、最上部の冷却器で凝結した液滴を、中間部の試料を入れた容器に滴り落とし、目的成分を溶かしこんだ後にフラスコに流し込ませる。このサイクルを繰り返すことにより、目的成分をフラスコ内の溶媒に濃縮せしめるものである。
本発明の流出防止剤に使用するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(以下「EVA」という。)エマルジョンは、粉粒状堆積物との優れた接着性や成膜性等により固結層の形成に効果を発揮し、形成された固結層に雨水に対する耐性を与えると共に、粉粒状堆積物への雨水の浸透抑制に効果を示す。
EVAエマルジョンは市販のものを使用できるが、特にEVAエマルジョン中のEVAの組成が重量比でエチレン:酢酸ビニル=5:95〜40:60のものが好適に使用される。更に、第3モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸やそのエステル、マレイン酸やイタコン酸等のジカルボン酸、無水物、エステル、酢酸ビニル以外のビニルエステル、塩化ビニル等のハロゲン系ビニル、スチレン等の芳香族系ビニル、トリアリルシアヌレートのような多官能単量体、アクリルアミドのようなアミド類などの共重合可能な単量体を共重合させたものも使用することができる。
また重合に使用される乳化分散剤としてポリビニルアルコール(以下、「PVA」という。)を使用したEVAエマルジョンは粉粒状堆積物との結合性や皮膜の強靭性向上の点で更に好適に使用される。
EVAエマルジョンの添加量は、特に限定されるものではないが、流出防止剤の不揮発分に合わせて調整される。すなわち後述するように、本発明の流出防止剤の不揮発分は3〜20質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは5〜15質量%の範囲であることから、流出防止剤の水分を除いた残りの組成物の含有率が前記範囲になるようにEVAエマルジョンの添加量を調整するのが望ましい。
ノニオン系湿潤浸透剤は、油分を多量に含む石油炭などの粉粒状堆積物に対して浸透効果が強く、粉粒状堆積物との濡れ性を改良し、流出防止剤の粉粒状堆積物への浸透性を良くする。その結果、流出防止剤と粉粒状堆積物の固結層を厚くすることが出来、固結層形成に重要な役割を果たす。ノニオン系湿潤浸透剤を添加しないと、流出防止剤は油分を多量に含む粉粒状堆積物には十分浸透せず、表面あるいは表面に近いところに止まるため、薄い皮膜にしかならず、耐久性に欠ける傾向となる。
ノニオン系湿潤浸透剤の添加量は、その種類によっても異なるが流出防止剤に対して0.3〜3.0質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは0.6〜1.2質量%の範囲である。添加量が少ないと流出防止剤の当該粉粒状堆積物への浸透性の効果が無く、多すぎると浸透性の点では問題ないが、皮膜の強度が低下するほかEVAエマルジョン成分が凝集したり、保管中に当該エマルジョンと水分の分離が起こり操作上好ましくない。
本発明の流出防止剤に使用するノニオン系湿潤浸透剤は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルおよびポリオキシエチレンアルキル(C11〜15)エーテルより選ばれる1種又は2種以上からなるものが好適に用いられる。特にポリオキシエチレンラウリルエーテルが好ましい。ノニオン系湿潤浸透剤は、後述するPVAの効果を阻害するものとして、PVAを用いた流出防止剤に使用することは、従来敬遠される傾向にあったが、本発明においては、これらのノニオン系界面活性剤は、PVAの効果の疎外を最小限にし、なおかつ油分を多量に含む粉粒状堆積物に対し、最も望ましい効果をもたらすものとなる。
本発明の流出防止剤に使用されるPVAは粉粒状堆積物に、該粉粒状堆積物の粉粒体と流出防止剤とからなる強固な固結層を形成する役割を果たすとともに、PVAが固結層に流入した雨水を保持し、固結層下に存在する粉粒状堆積物へ流入する水量を少なくすることにより、粉粒状堆積物の崩れ、流出防止に効果を示す。また、強固な固結層を形成することにより、粉塵発生の防止にも効果を示す。
本発明に使用されるPVAは特に制限はなく市販されているものを用いることができる。例えば脂肪酸ビニルエステルの1種または2種以上を重合して得られる単独重合体または共重合体、もしくは他の共重合可能な単量体との共重合体などを鹸化して得られるPVA、或いはこれらのPVAを変性した変性PVAが挙げられる。前記PVAにおいて、共重合可能な他の単量体としては、例えばエチレン、プロピレンなどのオレフィン類:アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの重合性モノカルボン酸類:マレイン酸、イタコン酸などの重合性ジカルボン酸類:無水マレイン酸などの重合性ジカルボン酸無水物:重合性モノカルボン酸類や重合性ジカルボン酸類のエステル類、塩類:アクリルアミド、メタクリルアミドなどの重合性酸アミド類:アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル類:メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル類:アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどのグリシジル基を有する単量体:アルキルビニルエーテル類などが挙げられる。
PVAの鹸化度は、65〜100モル%が好ましい。65モル%未満では、PVAの親水性が低くなるため液状組成物とするためには溶解性が低下し、良好な皮膜が得られなくなる場合がある。
PVAの重合度は100〜4500が好ましい。100未満では得られる皮膜強度が小さく、かつ耐水性も劣る。一方、4500を越えると高粘度液となるため、流出防止剤を製造する上で、作業性に支障をきたす場合がある。
PVA以外のメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやその塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのブロックポリマー等のノニオン系やアニオン系の界面活性剤もPVAの効果を阻害しない程度で使用することが出来る。
PVAは流出防止剤に対して0.05〜0.7質量%の範囲で使用することが好ましく、更に好ましくは0.05〜0.4質量%の範囲である。PVAの量が多すぎると耐水性に劣る傾向となる。PVAは粉粒状堆積物の粉粒体と流出防止剤とからなる強固な固結層を形成するのを促進するが、同時にPVA自身が水溶性であることから、降雨が激しくなった場合は雨水に流される危険性がある。従って、乾燥状態での強固な固結層を形成させるPVAも多く含有し過ぎると耐水性を悪化させる。逆に少なすぎると粉粒状堆積物と十分な強度を有する固結層を形成し難くなる他、流出防止剤を貯蔵したときに樹脂分が分離沈降する場合がある。
また、前記の範囲内において、水で湿潤状態になった皮膜からの成分溶出を抑え、湿潤状態での強度のバランスを図るために、エチレン−酢酸ビニル系共重合体100質量部に対して、PVAを15質量部以下とすることが好ましい。
本発明の流出防止剤には降雨等に対する撥水性を付与するために、撥水剤を添加する。撥水剤としては、撥水効果だけではなく他の成分と相分離することのないものが良く、例えばワックス類が好ましい。ワックス類としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルバナワックス、高級脂肪酸エステルなどが挙げられ、中でも乳化型のパラフィンワックスエマルジョンなどが好ましい。
使用する撥水剤の量はその種類によっても異なるが、粉粒状堆積物に撥水性を与えるのに必要な量であり、流出防止剤に対して0.01〜0.1質量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.03〜0.06質量%の範囲である。撥水剤の添加量が少なすぎると撥水性の効果が少ないとともに、保管中に水分との分離が発生し、使用する際にポンプのつまりや作業性に影響する。添加量が多すぎると浸透性が低下し、均一な皮膜の形成に支障をきたすとともに、流出防止剤の粘度が上がり配管移送や希釈、攪拌作業に影響する。
本発明の流出防止剤にはアルミナセメント、コールタールやアスファルトタールを市販の乳化剤で乳化した乳化液などを、粉粒状堆積物への雨水の浸透抑制などを目的に必要に応じて併用することも出来る。また、着色顔料などを適宜添加することも出来る。
流出防止剤の不揮発分(水分を除いた残りの組成物をさす)は3〜20質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは5〜15質量%の範囲である。しかし流出防止剤の不揮発分はこれに限定されるものではない。不揮発分が低くともその散布量を多くすることにより、また高い場合は散布量を少なくすることにより調整することができる。しかし不揮発分が低すぎると固結層の強度、雨水の浸透抑制が低下する傾向となり、高すぎると粘度が上昇するため粉粒状堆積物への散布が困難となる。また不揮発分が多い場合、流出防止剤を調製後に散布せず放置しておくと樹脂分が沈降して分離する場合がある。この場合は沈降分離を防止するためにPVAを添加する方法がある。
流出防止剤を製造するには、撹拌機付きの混合槽に原料のEVAエマルジョン及びその他の原料を混合する事によって得る事が出来る。この場合例えば溶解しにくいPVA等の水溶性高分子は水溶液の形で添加すると短時間で混合する事ができる。水の量は所定の不揮発分になるよう、水分量も含めて適宜調整することができる。あるいは、所定の不揮発分より高い流出防止剤原液を調製し、それを使用前に水で希釈して所定の不揮発分の流出防止剤として使用することもできる。この場合流出防止剤を輸送する際に量を少なくする事ができる。また不揮発分が高いとEVAエマルジョンが分離沈降することを防止することができるので貯蔵するのに有利である。流出防止剤原液の不揮発分の濃度は、例えば20〜70質量%の範囲になるように、更に好ましくは25〜50質量%の範囲になるように調整するとよい。
本発明の流出防止剤の散布対象となる粉粒状堆積物は、粉粒状の堆積物であれば特に限定されるものではないが、とりわけ、ソックスレー抽出法により0.3質量%以上の炭化水素分を含む石油炭などの油分の多い石炭や鉄鉱石の堆積物、特に野積石炭堆積物や野積鉄鉱石堆積物、鉄鉱石などの粉粒状堆積物や、道路の法面、粉粒状の廃棄物の堆積物等である。これら粉粒状堆積物に本発明の流出防止剤を用いると、粉塵を防止し、降雨による崩れ、流出防止、及び粉粒状堆積物中の含水量の増加防止に効果がある。
流出防止剤は4〜15倍の水で希釈した後で、粉粒状堆積物に対して、堆積物1m当たり不揮発分として約30〜600g散布するのが良い。ただしこの量はこれより少なく、あるいは多く散布したときに効果がなくなることを意味するものではなく、堆積物の種類、散布の環境等により適宜に変える事ができる。散布は散水車などを用いて、堆積物の全表面に対して均一に散布することが出来る。散布は1回だけでもよいが、2回以上行ってもよい。
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。
実施例1
撹拌機付き混合槽にEVAエマルジョン(電気化学工業株式会社製のデンカEVA#81、不揮発分56質量%)11質量部(EVA樹脂として6質量部)、濃度5質量%のPVA(電気化学工業株式会社製のB−33、鹸化度88モル%、重合度3300)水溶液2質量部(PVAとして0.1質量部)、ノニオン系湿潤浸透剤のポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王株式会社製のエマルゲン105)0.6質量部、撥水剤(互応化学株式会社製のダイジットS−8、不揮発分28%)0.1質量部(純分として0.03質量部)、及び水を添加し、全体を100質量部として、不揮発分6.73質量%の流出防止剤を製造した。得られた流出防止剤について次の評価を行った。結果を表1に示す。
(浸透性)
目開き5mm□の金網によって篩にかけた石炭を、縦、横、深さの寸法が15×25×2(mm)のアクリル容器に充填させたのち、縦、横、高さの寸法が15×25×1(mm)の同面積のアクリル板を乗せ、さらに200gの荷重をかけてサンプル表面を平坦にした。その石炭表面に流出防止剤を0.03ml滴下し、その液滴が石炭表面に浸透するまでの時間を計測した。
なお、使用した石炭は、JIS K0102のヘキサン抽出物質の試験方法に準じ、ソックスレー抽出法を適用して抽出された炭化水素分が2.9質量%の石油炭であった。
○:浸透時間が10秒未満、△:同10〜30秒未満、×:同30秒以上
(固結層厚さ)
前記浸透性の評価で使用したものと同じ石炭を、目開き5mm□の金属メッシュで篩いにかけ、縦、横、深さの寸法が27×20×4(cm)の容器に加圧せずに充填し、37度の傾斜角度で静置した。その石炭表面に流炭防止剤を霧吹き器にて2.0リットル/m(1m当たり不揮発分として65g)の割合で散布し、25℃の恒温室で3日乾燥した。容器の中央部分の石炭を切り出し、表面に形成された固結層の厚みをノギスで5箇所測定して、その平均値を固結層厚さとした。
(表面強度)
前記浸透性の評価で使用したものと同じ石炭を、前記固結層厚さの評価と同様に処方し、25℃の恒温室で3日乾燥した。容器の中央部分の石炭表面にバネ式テンションゲージ(A&D株式会社製:測定部分の先端がφ6mmの金属製円柱)を押し当て、穴が開くまでの荷重を測定し、5箇所測定した平均値を粉粒状堆積物の表面強度とした。
(皮膜の水分浸透性)
前記浸透性の評価で使用したものと同じ石炭を、前記固結層厚さの評価と同様に処方し、25℃の恒温室で3日乾燥した。容器の中央部分の石炭の固結層を、一辺約3cmの立方体に切り出し、その表面に純水1mlを滴下した際に固結層内に浸透するまでの時間を計測した。
○:浸透時間が3分以上、△:同1〜3分未満、×:同1分未満
(皮膜の耐水性)
前記皮膜の水分浸透性の評価と同様にして得られた固結層を1時間水中に浸漬後、試片を平板の上に載せ、試片表面の中心部にバネ式テンションゲージ(A&D株式会社製:測定部分の先端がφ6mmの金属製円柱)を押し当て、100gの一定荷重をかけた。試片が原形を保持している時間を計測した。
○:原形保持時間が3分以上、△:同0.5〜3分未満、×:同0.5分未満
(流出防止剤の貯蔵性)
流出防止剤を300ccのカップに入れて25℃で6日間保存後、5cm□の30メッシュの金網で濾過したとき、保存中に形成された固形分により金網が固形分(残渣)で覆われた面積で貯蔵時の安定性を評価した。
○:残渣無し、△:残渣少量(残渣による金網被服面積1/2未満)、×:残渣多量(残渣による金網被服面積1/2より大)
実施例2〜12、参考例1、比較例1〜5
実施例1で使用した流出防止剤の配合を表1のように変更した以外は実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0005603004




実験例1〜3、比較例6〜8
実験例として、本発明の流出防止剤の通常石炭(実施例1と同様にして抽出された炭化水素分が0.1質量%)に対する評価を、実施例1と同様にして行い、既存の流出防止剤との比較を行った。結果を表2に示す。
Figure 0005603004
表1から明らかなように、本発明の流出防止剤は、石油炭のような油分を多量に含む粉粒状堆積物に対し、極めて効果的な結果が得られることがわかる。また、表2から明らかなように、本発明の流出防止剤は、油分の少ない通常石炭に対しても、既存の流出防止剤とほとんど遜色のない結果が得られることから、非常に汎用性の高いものである。
本発明の流出防止剤は、油分を多量に含む石油炭のような粉粒状堆積物に極めて好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、ノニオン系湿潤浸透剤、ポリビニルアルコール、撥水剤および水を含有してなることを特徴とし、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルおよびポリオキシエチレンアルキル(C11〜15)エーテルから選ばれる1種又は2種以上からなるノニオン系湿潤浸透剤の添加量が、流出防止剤に対して0.3〜3.0質量%であり、ノルマルヘキサンを溶媒としたソックスレー抽出法により抽出される炭化水素分が0.3質量%以上である石油炭の流出防止剤。
  2. ポリビニルアルコールの添加量が、流出防止剤に対して0.05〜0.7質量%である請求項に記載の石油炭の流出防止剤。
  3. 撥水剤の添加量が、流出防止剤に対して0.01〜0.1質量%である請求項1〜のいずれかの項に記載の石油炭の流出防止剤。
  4. 混合槽に、少なくともエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、ノニオン系湿潤浸透剤、ポリビニルアルコール、撥水剤および水を添加し、混合することを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載の石油炭の流出防止剤の製造方法。
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