発明の実施形態1.
以下に、図面を参照しつつ本発明の実施の形態1に係る移乗支援装置及び移乗支援装置の制御方法について説明する。図1は、本実施形態1に係る移乗支援装置10を側面視した様子を概略的に示すものであり、被介護者Pが起立した状態から着座物であるベッド60に対して座るための移乗動作を支援する様子を示している。
図1及び2に示すように、移乗支援装置10は、台座11と、台座に対して支持された支持台12と、支持台12に対してその一端が傾動自在に取り付けられた支柱13と、支柱13を傾動させる駆動手段20と、支持台12に対して支柱13の他端に設けられた身体保持具30と、支柱13の端部に作用するトルクτを計測するトルクセンサ40と、駆動手段20を制御するための制御手段50と、を備えている。
台座11は、その底面において、略水平な床面上を移動可能とするための車輪を複数備えている。これらの車輪は、回転自由な状態と、固定した状態とを切り替えることが可能であるように構成されており、被介護者が移乗動作を行う場合に、これらの車輪を固定した状態として、被介護者が移乗動作を行う際に移乗支援装置10を安定させることができる。
支持台12は、台座11の表面上から略鉛直方向に伸びる略板状材であり、その内部に回動軸を備えることで、後述するトルク出力部により付与されたトルクにより台座11に対して水平回転自在に構成されており、身体保持具30の水平方向についての相対的な位置を変更することができる。但し、本実施形態においては、被介護者Pの移乗動作を行うために支持台12を水平方向について回転させる必要は特にないものとし、支持台12が水平方向に回転する状態についての説明は省略するものとする。
支柱13は、略円柱形状の柱材である。支柱13の一端は、支持台12の端部に回転可能に連結されている。支柱13の他端は、身体保持具30に回転可能に連結されても良いが、本実施形態では説明を簡潔にするために固定されているものとする。この支柱13は、使用する被介護者Pの身体の大きさなどに応じてその長さを変更できるように、例えば径の異なる複数のパイプをスライド可能に嵌合させて保持する構造を備えている。なお、支柱13の支持台12に対する傾動動作は、駆動手段20により付与されるトルクにより行われる。
駆動手段20は、操作部21と、トルク出力部22と、を備えている。操作部21は、ジョイスティック210を備えている。このジョイスティック210は、台座11に設けられており、被介護者P又は外部の介護者が、当該ジョイスティック210を手動操作すると、支柱13を傾動させるためのトルクが選択され、選択されたトルクを出力するように制御手段50に対して指令する。詳細には、ジョイスティック210の操作レバー210aは、上下方向のみの傾動操作が可能となるような構造を有しており、操作レバー210aを手動操作することで、操作方向に応じ、且つ操作量に比例した大きさのトルクを出力するように指令する指令信号が制御手段50に対して送信される。詳細は後述するが、制御手段50においては、この指令信号に基づいて、トルク出力部22に対して当該大きさのトルクを出力する制御を行うための制御信号を送信する。
トルク出力部22は、支柱13を支持台12に対して傾動させるためのトルクを付与する。詳細な構造の説明は省略するが、電源やモータ、及びワイヤ、及びワイヤを巻き取るためのプーリ、又はワイヤの巻き取り量を検出するためのセンサなどから構成されている。トルク出力部22は、制御手段50より送信された制御信号に基づいて、モータによりワイヤを巻き取るなどの処理を行う結果、支柱13を傾動させるために所定の大きさ及び方向のトルクを、当該支柱13に対して付与する。
身体保持具30は、被介護者Pがその上半身を接触させた状態で、両腕部で抱きかかえて保持できる程度の大きさの弾力性を有する部材から構成されている。
トルクセンサ40は、被介護者Pが身体保持具30を保持することによって前記支柱13の端部に作用するトルクτを計測する計測手段である。トルクセンサ40は、支柱13の端部、すなわち支柱13と支持台12との連結部分や支柱13と身体保持具30との連結部分に設けられている。つまり、図1(a)に示すように、支柱13を上方に傾動させて被介護者Pが身体保持具30を保持した状態から、図1(b)に示すように、当該支柱13を下方に傾動させて被介護者Pがベッド60へ着座して移乗動作が完了するまで、トルクセンサ40によって支柱13に作用するトルクτを計測し、当該計測値を示す信号を制御手段50に送信する。
トルクセンサ40は、通例のひずみゲージなどを用いたトルクセンサであって、他に支柱13に駆動力を付与するモータを備えている場合は、当該モータの電流値に基づいてトルクτを計測するものでも良い。要するに、トルクセンサ40は、被介護者Pが身体保持具30を保持することによって前記支柱13の端部に作用するトルクτを計測することができる構成であれば良い。
制御手段50は、演算処理装置や所定の記憶領域を含むECUなどのコンピュータから構成されており、前述のジョイスティック210(操作レバー210a)を操作することにより得られた指令信号などに基づいて、トルク出力部22に対して、トルクを出力する制御を行うための信号を送信する。制御手段50は、図2に示すように、指令信号を受けてトルク出力部22により出力するトルクの大きさ及び方向を決定するトルク決定部51と、決定したトルクの大きさ及び方向に基づいてトルク出力部22の出力トルクを制御するための信号(制御信号)を作成する信号作成部52と、作成した制御信号をトルク出力部22に対して送信するための送信部53と、を備えている。
トルク決定部51は、指令信号に含まれる操作レバー210aの操作量に関する情報を読み取り、この操作量に特定のゲインを乗じてトルクの大きさを決定する。このとき、トルク決定部51は、操作レバー210aの操作方向に応じて、操作レバー210aの操作量に乗じるゲインの大きさを変更する機能を備えていることが好ましい。すなわち、操作レバー210aが支柱13を下方に傾動させる方向へ操作された場合に、操作レバー210aの操作量に乗じるゲインG1を、支柱13を上方に傾動させる方向へ操作された場合に操作レバー210aの操作量に乗じるゲインG2よりも大きく設定している。このように、支柱13を下方に傾動させる方向(すなわち、身体保持具を下降させる方向)へのトルクが大きくなるようにすることで、被介護者Pが身体保持具30により突然大きな力で圧迫されるという事態を防ぐことを可能としている。
その一方でトルク決定部51は、制御手段50に対して送信されたトルクセンサ40からの信号を、移乗支援装置の移乗動作が続いている限り、断続的に受信する。そして、トルク決定部51は、トルクセンサ40が計測したトルクτが、予め設定された第1の閾値以下となると、被介護者Pがベッド60に着座したと判断し、支柱13の傾動操作を停止させるべく、トルク出力部22により出力するトルクの大きさをゼロと決定し、当該決定を信号作成部52に送信する。信号作成部52は、受信した当該決定に基づいてトルク出力部22により出力するトルクの大きさをゼロとする制御信号を作成し、当該制御信号を送信部53を介してトルク出力部22に送信する。すなわち、支柱13の端部に作用するトルクτが第1の閾値以下となった後に、さらにジョイスティック210の操作レバー210aを操作すると、トルク決定部51は、受信する指令信号のうち、支柱13を下方に傾動させる信号を無効とする。要するに、トルクセンサ40からの信号を受信した後、さらにジョイスティック210の操作レバー210aが操作され、指令信号が送信されると、操作レバー210aが支柱13を下方に傾動させる方向へ操作された場合に操作レバー210aの操作量に乗じるゲインG1の大きさをゼロに変更する。
ここで、トルクセンサ40によって計測されるトルクτは、図3の実線に示すように、被介護者Pがベッド60に着座する直前までは、支柱13の端部に比較的大きなトルクτが増加傾向で作用するが、被介護者Pがベッド60に着座すると、当該被介護者Pの荷重がベッド60に逃げ、支柱13の端部に作用するトルクτが減少する。このように減少に転じた後、被介護者Pが完全にベッド60に着座することが予想されるトルク値を、予め実験やシミュレーション等によって導き出し、当該導き出したトルク値を第1の閾値としてトルク決定部51に設定する。これによって、被介護者Pが身体保持具30を保持した状態でベッド60へ着座する移乗動作において、被介護者Pが身体保持具30によりベッド60との間に挟み込まれて圧迫されるといった事態を防ぐことができる。しかも、被介護者Pがベッド60に着座したと判断すると、ジョイスティック210の操作が自動的に無効となるので、従来のように特に慎重に操作する必要がなく、当該移乗動作を簡易、迅速に行うことができる。
ちなみに、当該移乗動作中に操作レバー210aが支柱13を上方に傾動させるように操作された場合は、操作レバー210aの操作量にゲインG2を乗じたトルクを出力するための制御信号を送信する。
このように構成された移乗支援装置において、被介護者Pが移乗動作を行う際に制御手段50で実行される手順を、図4に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。
まず、被介護者Pが移乗動作を行う場所に移動し、移乗支援装置の操作を開始する(例えば介護者が操作レバー210aを操作する)と、制御手段50は、操作レバー210aの操作量に基づいて指令されたトルクで支柱13を傾動させるように、トルク出力部22に対して制御信号を送信する(STEP101)。制御手段50からの制御信号を受けてトルク出力部22が出力したトルクによって、被介護者Pを下方に下降させる方向に、支柱13が所定の一定速度で傾動する。
一方で制御手段50は、支柱13の傾動動作が開始すると、トルクセンサ40から支柱13の端部に作用するトルクτの計測値を示す信号を受信し続ける(STEP102)。
制御手段50は、受信した支柱13の端部に作用するトルクτが第1の閾値以下となると、被介護者Pがベッド60に着座したと判断し、支柱13の傾動操作が停止する信号をトルク出力部22に送信し、移乗支援動作を終了する(STEP103)。すなわち、ジョイスティック210の操作レバー210aが操作されることで送信される指令信号のうち、支柱13を下方に傾動させる信号を無効とするように、操作レバー210aの操作量に乗じるゲインをゼロとする。
以上、説明したように、本実施形態に係る移乗支援装置及び移乗支援装置の制御方法によると、トルクセンサ40が計測したトルクτが第1の閾値以下となると、被介護者Pがベッド60に着座したと判断し、支柱13の傾動動作が停止するように駆動手段を制御するので、被介護者Pが身体保持具30によりベッド60との間に挟み込まれて圧迫されるといった事態を未然に防ぐことができる。しかも、被介護者Pがベッド60に着座したと判断すると、ジョイスティック210の操作が自動的に無効となるので、従来のように特に慎重に操作する必要がなく、当該移乗動作を簡易、迅速に行うことができる。
本実施形態では、ジョイスティック210を操作者が操作することによって、被介護者Pの移乗動作を実施していたが、スイッチなどを押すことによって、自動的に被介護者Pの移乗動作を実施する構成でも良い。このとき、制御手段50のトルク決定部51には、予め所定の速度で支柱13を傾動させるために、トルク出力部22に出力させるトルクが設定される。そして、スイッチなどからの移乗動作開始信号が制御手段50のトルク決定部51に送信されると、トルク決定部51は当該設定トルクに基づいてトルク出力部22を制御する。このような構成により、介護者(操作者)はスイッチの操作一つで、自動的に被介護者を移乗させることができ、被介護者のケアに集中することができる。
本実施形態では、支柱13を一定速度で傾動させているが、支柱13が下方に傾動するにつれ当該支柱13の傾動速度が遅くなる構成でも良い。つまり、支柱13が下方に傾動するにつれ、トルクセンサ40が計測するトルクτが増加するが、当該増加に合わせて支柱13の傾動速度が遅くなるように、制御手段50のトルク決定部51はトルク出力部22に出力させるトルクを決定する。このような構成により、被介護者Pに安心感を与えることができる。
本実施形態では、第1の閾値を用いて被介護者Pの移乗動作を実施したが、第2の閾値を用いて被介護者Pの移乗動作を実施しても良い。ここで、図3において、点線は被介護者Pが身体保持具30を保持していない場合における支柱13の端部に作用するトルクτと当該支柱13の傾動角度との関係を示し、実線は被介護者Pが身体保持具30を保持した場合における支柱13の端部に作用するトルクτと当該支柱13の傾動角度との関係を示す。図3に示すように、被介護者Pの着座が確認できる第1の閾値を過ぎると、被介護者Pの荷重は徐々にベッド60に逃げ、最終的には支柱13の端部には当該支柱13が支持する身体保持具30のみの荷重に起因するトルクτが生じ、実線は点線に重なる。さらに支柱13を下方に傾動させると、被介護者Pの腿部分に身体保持具30が接触し、身体保持具30の荷重は被介護者Pに逃げ、支柱13の端部に作用するトルクは大きく減少する。この大きく減少に転じるトルク値を、第2の閾値として設定する。このとき、制御手段50は、支柱13を下方に傾動させた際に当該支柱13の端部に作用するトルクが第2の閾値以下となると、被介護者Pが身体保持具30とベッド60との間に挟み込まれたと判断し、支柱13の傾動動作が逆回転となるようにトルク出力部22を制御する。このような構成により、被介護者Pが身体保持具30によりベッド60との間に挟み込まれて圧迫されるといった事態を未然に防ぐことが可能となる。
本実施形態では、支柱13の端部に作用するトルクが第1又は第2の閾値以下となるまで、支柱13を連続的に傾動させているが、被介護者Pがベッド60に着座する直前に一旦、支柱13の傾動動作を停止させるべく、第3の閾値を設定しても良い。つまり、制御手段50は、支柱13の端部に作用するトルクτが第3の閾値以下となると、支柱13の傾動動作を一旦停止させる。そして、制御手段50は、ジョイスティック210から支柱13を下方に傾動させる操作が断続的に続いていると、改めて支柱13の端部に作用するトルクが第1又は第2の閾値以下となるまで支柱13の傾動動作を再開させる。このように、被介護者Pがベッド60に着座する直前に支柱13の傾動動作を一旦停止させることにより、ジョイスティック210を操作する操作者は、被介護者Pがベッド60に近付いていることを容易に認識することができ、その後のジョイスティック210の操作を慎重に行うことができる。逆に云うと、支柱13が一旦停止するまでは、比較的速く支柱13を傾動させることができるので、被介護者Pの移乗動作の時間の短縮に寄与する。
ちなみに、第3の閾値は、実験やシミュレーション等によって導き出される。
本実施形態では、ジョイスティック210を操作する操作者に、被介護者Pがベッド60に近付いている旨の注意を促す手段を備えていないが、図5に示すように、操作部21はジョイスティック210の操作レバー210aの操作に負荷を与える負荷導入部220を備え、トルクセンサ40が計測するトルクτの増加に伴って操作レバー210aへ与える負荷が増加する構成とされていると良い。さらに、操作部21はトルクセンサ40が計測するトルクτの増加に伴って、被介護者Pがベッド60に近付いている旨の注意を操作者に促す伝達部230を備えていると良い。伝達部230としては、例えば計測トルクの増加に伴って音量が増加するスピーカ機構、点滅するスピードが速くなる点灯機構、ジョイスティック210の操作レバー210aへ大きな振動を導入する振動機構などを用いることができる。このような構成により、操作者は被介護者Pがベッド60に近付いていることを容易、且つ確実に認識することができる。
本実施形態では、支柱13の端部に作用するトルクτが第1の閾値以下となると、ジョイスティック210の操作に伴う指令信号が無効となる構成とされているが、操作部21は、制御手段50が再び操作レバー210aの操作を有効とするべく、当該制御手段50に信号を送信する解除部240を備えていても良い。
発明の実施形態2.
以下に、図面を参照しつつ本発明の実施の形態2に係る移乗支援装置及び移乗支援装置の制御方法について説明する。図6は、本実施形態2に係る移乗支援装置100を側面視した様子を概略的に示すものである。この移乗支援装置100は、上記実施形態1と略同様の構成とされており、トルクセンサの代わりに、荷重センサ400を備えていることを特徴とする。
荷重センサ400は、被介護者Pが身体保持具30を保持することによって生じる荷重を計測する計測手段であって、例えば通例のひずみゲージ等を用いた荷重センサを用いることができる。荷重センサ400は、支柱13と身体保持具30との連結部分や台座11と支持台12との連結部分に設けられている。但し、荷重センサ400の設置箇所は、被介護者Pが身体保持具30を保持することによって生じる荷重を計測できれば、特に限定されない。
この荷重センサ400は、被介護者Pが身体保持具30を保持することによって前記支柱13の端部に作用する荷重Fを計測する。すなわち、荷重センサ400は、図7に示すように、支柱13を上方に傾動させて被介護者Pが身体保持具30を保持した状態から、当該支柱13を下方に傾動させて被介護者Pがベッド60へ着座して移乗動作が完了するまで、支柱13の端部に作用する荷重Fを計測し、当該計測値を示す信号を制御手段500に送信する。
制御手段500は、指令信号を受けてトルク出力部22により出力するトルクの大きさ及び方向を決定するトルク決定部501と、決定したトルクの大きさ及び方向に基づいてトルク出力部22の出力トルクを制御するための信号(制御信号)を作成する信号作成部502と、作成した制御信号をトルク出力部22に対して送信するための送信部503と、を備えている。
トルク決定部501は、指令信号に含まれる操作レバー210aの操作量に関する情報を読み取り、この操作量に特定のゲインを乗じてトルクの大きさを決定する。その一方でトルク決定部501は、制御手段500に対して送信された荷重センサ400からの信号を、被介護者Pの移乗動作が続いている限り、断続的に受信する。そして、トルク決定部501は、荷重センサ400が計測した荷重Fが、予め設定された第1の閾値以下となると、被介護者Pがベッド60に着座したと判断し、支柱13の傾動動作を停止させるべく、トルク出力部22により出力するトルクの大きさをゼロと決定し、当該決定を信号作成部502に送信する。信号作成部502は、受信した当該決定に基づいてトルク出力部22により出力するトルクの大きさをゼロとする制御信号を作成し、当該制御信号を送信部503を介してトルク出力部22に送信する。すなわち、支柱13の端部に作用する荷重Fが第1の閾値以下となった後に、さらにジョイスティック210の操作レバー210aを操作すると、トルク決定部501は、当該トルク決定部501が受信する指令信号のうち、支柱13を下方に傾動させる信号を無効とする。要するに、荷重センサ400からの信号を受信した後、さらに操作レバー210aが操作され、指令信号が送信されると、操作レバー210aが支柱13を下方に傾動させる方向へ操作された場合に操作レバー210aの操作量に乗じるゲインG1の大きさをゼロに変更する。
ここで、荷重センサ400によって計測される荷重Fも、図3の実線と略同様に示すことができ、被介護者Pがベッド60に着座する直前までは、身体保持具30に比較的大きな荷重が増加傾向で作用するが、被介護者Pがベッド60に着座すると、当該被介護者Pの荷重がベッド60に逃げ、身体保持具30に作用する荷重が減少する。このように減少に転じた後、被介護者Pが完全にベッド60に着座することが予想される荷重値を、予め実験やシミュレーション等によって導き出し、当該導き出した荷重値を第1の閾値としてトルク決定部501に設定する。これによって、被介護者Pが身体保持具30を保持した状態でベッド60へ着座する移乗動作において、被介護者Pが身体保持具30によりベッド60との間に挟み込まれて圧迫されるといった事態を防ぐことができる。しかも、被介護者Pがベッド60に着座したと判断すると、ジョイスティック210の操作が自動的に無効となるので、従来のように特に慎重に操作する必要がなく、当該移乗動作を簡易、迅速に行うことができる。
本実施形態では、ジョイスティック210を操作者が操作することによって、被介護者Pの移乗動作を実施していたが、スイッチなどを押すことによって、自動的に被介護者Pの移乗動作を実施する構成でも良い。このとき、制御手段500のトルク決定部501には、予め所定の速度で支柱13を傾動させるために、トルク出力部22に出力させるトルクが設定される。そして、スイッチなどからの移乗動作開始信号が制御手段500のトルク決定部501に送信されると、トルク決定部501は当該設定トルクに基づいてトルク出力部22を制御する。このような構成により、介護者はスイッチの操作一つで、自動的に被介護者Pを移乗させることができ、被介護者Pのケアに集中することができる。
本実施形態では、支柱13を一定速度で傾動させているが、支柱13が下方に傾動するにつれ当該支柱13の傾動速度が遅くなる構成でも良い。つまり、支柱13が下方に傾動するにつれ、荷重センサ400が計測する荷重が増加するが、当該増加に合わせて支柱13の傾動速度が遅くなるように、制御手段500のトルク決定部501はトルク出力部22に出力させるトルクを決定する。このような構成により、被介護者Pに安心感を与えることができる。
本実施形態では、第1の閾値を用いて被介護者Pの移乗動作を実施したが、第2の閾値を用いて被介護者Pの移乗動作を実施しても良い。被介護者Pの着座が確認できる第1の閾値を過ぎると、被介護者Pの荷重は徐々にベッド60に逃げ、結果として身体保持具30の自重のみとなる。さらに支柱13を下方に傾動させると、被介護者Pの腿部分に身体保持具30が接触し、身体保持具30の荷重は被介護者Pに逃げ、荷重センサ400が計測する荷重は大きく減少する。このように大きく減少に転じる荷重値を、第2の閾値として設定する。このとき、制御手段500は、支柱13を下方に傾動させた際に当該支柱13の端部に作用する荷重が第2の閾値以下となると、被介護者Pが身体保持具30とベッド60との間に挟み込まれたと判断し、支柱13の傾動動作が逆回転となるようにトルク出力部22を制御する。このような構成により、被介護者Pが身体保持具30によりベッド60との間に挟み込まれて圧迫されるといった事態を未然に防ぐことが可能となる。
本実施形態では、支柱13の端部に作用する荷重Fが第1又は第2の閾値以下となるまで、支柱13を連続的に傾動させているが、被介護者Pがベッド60に着座する直前に一旦、支柱13の傾動動作を停止させるべく、第3の閾値を設定しても良い。つまり、制御手段500は、支柱13の端部に作用する荷重Fが第3の閾値以下となると、支柱13の傾動動作を一旦停止させる。そして、制御手段500は、ジョイスティック210から支柱13を下方に傾動させる操作が断続的に続いていると、改めて支柱13の端部に作用する荷重Fが第1又は第2の閾値以下となるまで支柱13の傾動動作を再開させる。このように、被介護者Pがベッド60に着座する直前に支柱13の傾動動作を一旦停止させることにより、ジョイスティック210を操作する操作者は、被介護者Pがベッド60に近付いていることを容易に認識することができ、その後のジョイスティック210の操作を慎重に行うことができる。逆に云うと、支柱13が一旦停止するまでは、比較的速く支柱13を下方に傾動させることができるので、被介護者Pの移乗動作の時間の短縮に寄与する。
ちなみに、第3の閾値は、実験やシミュレーション等によって導き出される。
本実施形態では、ジョイスティック210を操作する操作者に、被介護者Pがベッド60に近付いていることを知らせる手段を備えていないが、本実施形態でも操作部21はジョイスティック210の操作レバー210aの操作に負荷を与える負荷導入部を備え、荷重センサ400が計測する荷重Fの増加に伴って操作レバー210aへ与える負荷が増加する構成とされていると良い。さらに、操作部21は荷重センサ400が計測する荷重Fの増加に伴って、被介護者Pがベッド60に近付いている旨の注意を操作者に促す伝達部を備えていると良い。このような構成により、操作者は被介護者Pがベッド60に近付いていることを容易、且つ確実に認識することができる。
本実施形態では、支柱13の端部に作用する荷重Fが第1の閾値以下となると、ジョイスティック210の操作に伴う指令信号が無効となる構成とされているが、操作部21は、制御手段500が再び操作レバー210aの操作を有効とするべく、当該制御手段500に信号を送信する解除部を備えていても良い。
発明の実施形態3.
以下に、図面を参照しつつ本発明の実施の形態3に係る移乗支援装置及び移乗支援装置の制御方法について説明する。図8は、本実施形態3に係る移乗支援装置101を側面視した様子を概略的に示すものである。この移乗支援装置101も、上記実施形態1と略同様の構成とされており、トルクセンサの代わりに、測距センサ410を備えている。
測距センサ410は、身体保持具30の下端部とベッド60との間隔Tを計測する計測手段であり、通例の赤外線や超音波等の反射を利用した測距センサを用いることができる。測距センサ410は、例えば身体保持具30の下端部に設けられている。すなわち、測距センサ410は、図9に示すように、支柱13を上方に傾動させて被介護者Pが身体保持具30を保持した状態から、当該支柱13を下方に傾動させて被介護者Pがベッド60へ着座して移乗動作が完了するまで、身体保持具30の下端部とベッド60との間隔Tを計測し、当該計測値を示す信号を制御手段510に送信する。
制御手段510は、指令信号を受けてトルク出力部22により出力するトルクの大きさ及び方向を決定するトルク決定部511と、決定したトルクの大きさ及び方向に基づいてトルク出力部22の出力トルクを制御するための信号(制御信号)を作成する信号作成部512と、作成した制御信号をトルク出力部22に対して送信するための送信部513と、を備えている。
トルク決定部511は、指令信号に含まれる操作レバー210aの操作量に関する情報を読み取り、この操作量に特定のゲインを乗じてトルクの大きさを決定する。その一方でトルク決定部511は、制御手段510に対して送信された測距センサ410からの信号を、移乗支援装置の移乗動作が続いている限り、断続的に受信する。そして、トルク決定部511は、測距センサ410が計測した間隔Tが、予め設定された第1の閾値以下となると、被介護者Pがベッド60に着座したと判断し、支柱13の傾動操作を停止させるべく、トルク出力部22により出力するトルクの大きさをゼロと決定し、当該決定を信号作成部512に送信する。信号作成部512は、受信した当該決定に基づいてトルク出力部22により出力するトルクの大きさをゼロとする制御信号を作成し、当該制御信号を送信部513を介してトルク出力部22に送信する。すなわち、身体保持具30の下端部とベッド60との間隔Tが第1の閾値以下となった後に、さらにジョイスティック210の操作レバー210aを操作すると、トルク決定部511は、当該トルク決定部511が受信する指令信号のうち、支柱13を下方に傾動させる信号を無効とする。要するに、測距センサ410からの信号を受信した後、さらに操作レバー210aが操作され、指令信号が送信されると、操作レバー210aが支柱13を下方に傾動させる方向へ操作された場合に操作レバー210aの操作量に乗じるゲインG1の大きさをゼロに変更する。
ちなみに、第1の閾値は、予め実験やシミュレーション等により、被介護者Pが良好にベッド60に着座できる、身体保持具30の下端部とベッド60との間隔を導き出しておき、当該間隔を第1の閾値としてトルク決定部511に設定する。これによって、被介護者Pが身体保持具30を保持した状態でベッド60へ着座する移乗動作において、被介護者Pが身体保持具30によりベッド60との間に挟み込まれて圧迫されるといった事態を防ぐことができる。しかも、被介護者Pがベッド60に着座したと判断すると、ジョイスティック210の操作が自動的に無効となるので、従来のように特に慎重に操作する必要がなく、当該移乗動作を簡易、迅速に行うことができる。なお、この第1の閾値は、被介護者Pによって適宜、変更される。
本実施形態では、ジョイスティック210を操作者が操作することによって、被介護者Pの移乗動作を実施していたが、スイッチなどを押すことによって、自動的に被介護者Pの移乗動作を実施する構成でも良い。このとき、制御手段510のトルク決定部511には、予め所定の一定速度で支柱13を傾動させるために、トルク出力部22に出力させるトルクが設定される。そして、スイッチなどからの動作開始信号が制御手段510のトルク決定部511に送信されると、トルク決定部511は当該設定トルクに基づいてトルク出力部22を制御する。このような構成により、介護者はスイッチの操作一つで、自動的に被介護者を移乗させることができ、被介護者Pのケアに集中することができる。
本実施形態では、支柱13を一定速度で傾動させているが、支柱13が下方に傾動するにつれ当該支柱13の傾動速度が遅くなる構成でも良い。つまり、支柱13が下方に傾動するにつれ、測距センサ410が計測する間隔Tが短縮するが、当該短縮に合わせて支柱13の傾動速度が遅くなるように、制御手段510のトルク決定部511はトルク出力部22に出力させるトルクを決定する。このような構成により、被介護者Pに安心感を与えることができる。
本実施形態では、第1の閾値を用いて被介護者Pの移乗動作を実施したが、第2の閾値を用いて被介護者Pの移乗動作を実施しても良い。つまり、身体保持具30を保持する被介護者Pがベッド60に着座し、さらに支柱13が下方に傾動して身体保持具30が被介護者Pの腿部分に接触する、身体保持具30の下端部とベッド60との間隔を、予め実験やシミュレーション等によって導き出しておき、当該間隔を第2の閾値として設定する。このとき、制御手段510は、支柱13を下方に傾動させた際に身体保持具30の下端部とベッド60との間隔Tが第2の閾値以下となると、被介護者Pが身体保持具30とベッド60との間に挟み込まれたと判断し、支柱13の傾動動作が逆回転となるようにトルク出力部22を制御する。このような構成により、被介護者Pが身体保持具30によりベッド60との間に挟み込まれて圧迫されるといった事態を未然に防ぐことが可能となる。
本実施形態では、身体保持具30の下端部とベッド60との間隔Tが第1又は第2の閾値以下となるまで、支柱13を連続的に傾動させているが、被介護者Pがベッド60に着座する直前に一旦、支柱13の傾動動作を停止させるべく、第3の閾値を設定しても良い。つまり、制御手段510は、身体保持具30の下端部とベッド60との間隔Tが第3の閾値以下となると、支柱13の傾動動作を一旦停止させる。そして、制御手段510は、ジョイスティック210から支柱13を下方に傾動させる操作が断続的に続いていると、改めて身体保持具30の下端部とベッド60との間隔Tが第1又は第2の閾値以下となるまで支柱13の傾動動作を再開させる。このように、被介護者Pがベッド60に着座する直前に支柱13の傾動動作を一旦停止させることにより、ジョイスティック210を操作する操作者は、被介護者Pがベッド60に近付いていることを容易に認識することができ、その後のジョイスティック210の操作を慎重に行うことができる。逆に云うと、支柱13が一旦停止するまでは、比較的速く支柱13を下方に傾動させることができるので、被介護者Pの移乗動作の時間の短縮に寄与する。
ちなみに、第3の閾値は、実験やシミュレーション等によって導き出される。
本実施形態では、ジョイスティック210を操作する操作者に、被介護者Pがベッド60に近付いている旨の注意を促す手段を備えていないが、本実施形態でも操作部21はジョイスティック210の操作レバー210aの操作に負荷を与える負荷導入部を備え、身体保持具30の下端部とベッド60との間隔Tの短縮に伴って操作レバー210aへ与える負荷が増加する構成とされていると良い。さらに、操作部21は測距センサ410が計測する間隔Tの短縮に伴って、被介護者Pがベッド60に近付いている旨の注意を操作者に促す伝達部を備えていると良い。このような構成により、操作者は被介護者Pがベッド60に近付いていることを容易、且つ確実に認識することができる。
本実施形態では、身体保持具30の下端部とベッド60との間隔Tが第1の閾値以下となると、ジョイスティック210の操作に伴う指令信号が無効となる構成とされているが、操作部21は、制御手段510が再び操作レバー210aの操作を有効とするべく、当該制御手段510に信号を送信する解除部を備えていても良い。
発明の実施形態4.
以下に、図面を参照しつつ本発明の実施の形態4に係る移乗支援装置及び移乗支援装置の制御方法について説明する。図10は、本実施形態4に係る移乗支援装置102を側面視した様子を概略的に示すものである。この移乗支援装置102も、上記実施形態1と略同様の構成とされており、トルクセンサの代わりに、リミットセンサ420を備えている。
リミットセンサ420は、例えば身体保持具30の下端部に設けられている。このリミットセンサ420は、予め実験やシミュレーション等により、被介護者Pが良好にベッド60に着座できる、身体保持具30の下端部とベッド60との間隔を導き出しておき、当該間隔と略等しい長さLが身体保持具30の下端部から突出している。リミットセンサ420は、図10及び図11に示すように、伸縮可能な構成とされており、先端部がベッド60に接触すると、当該接触したことを示す信号を制御手段520に送信する感知手段である。
制御手段520は、指令信号を受けてトルク出力部22により出力するトルクの大きさ及び方向を決定するトルク決定部521と、決定したトルクの大きさ及び方向に基づいてトルク出力部22の出力トルクを制御するための信号(制御信号)を作成する信号作成部522と、作成した制御信号をトルク出力部22に対して送信するための送信部523と、を備えている。
トルク決定部521は、指令信号に含まれる操作レバー210aの操作量に関する情報を読み取り、この操作量に特定のゲインを乗じてトルクの大きさを決定する。その一方でトルク決定部521は、制御手段520に対して送信されたリミットセンサ420からの信号を受信すると、被介護者Pがベッド60に着座したと判断し、支柱13の傾動操作を停止させるべく、トルク出力部22により出力するトルクの大きさをゼロと決定し、当該決定を信号作成部522に送信する。信号作成部522は、受信した当該決定に基づいてトルク出力部22により出力するトルクの大きさをゼロとする制御信号を作成し、当該制御信号を送信部523を介してトルク出力部22に送信する。すなわち、リミットセンサ420の先端部がベッド60に接触した後に、さらにジョイスティック210の操作レバー210aを操作すると、トルク決定部521は、当該トルク決定部521が受信する指令信号のうち、支柱13を下方に傾動させる信号を無効とする。要するに、リミットセンサ420からの信号を受信した後、さらに操作レバー210aが操作され、指令信号が送信されると、操作レバー210aが支柱13を下方に傾動させる方向へ操作された場合に操作レバー210aの操作量に乗じるゲインG1の大きさをゼロに変更する。これによって、被介護者Pが身体保持具30を保持した状態でベッド60へ着座する移乗動作において、被介護者Pが身体保持具30によりベッド60との間に挟み込まれて圧迫されるといった事態を防ぐことができる。しかも、被介護者Pがベッド60に着座したと判断すると、ジョイスティック210の操作が自動的に無効となるので、従来のように特に慎重に操作する必要がなく、当該移乗動作を簡易、迅速に行うことができる。なお、リミットセンサ420の突出する長さLは、被介護者Pによって適宜、変更される。
本実施形態では、ジョイスティック210を操作者が操作することによって、被介護者Pの移乗動作を実施していたが、スイッチなどを押すことによって、自動的に被介護者Pの移乗動作を実施する構成でも良い。このとき、制御手段520のトルク決定部521には、予め所定の速度で支柱13を傾動させるために、トルク出力部22に出力させるトルクが設定される。そして、スイッチなどからの移乗動作開始信号が制御手段520のトルク決定部521に送信されると、トルク決定部521は当該設定トルクに基づいてトルク出力部22を制御する。このような構成により、介護者はスイッチの操作一つで、自動的に被介護者Pを移乗させることができ、被介護者Pのケアに集中することができる。
本実施形態では、支柱13を一定速度で傾動させているが、支柱13が下方に傾動するにつれ当該支柱13の傾動速度が遅くなる構成でも良い。この場合、例えば支柱13の傾動角度を計測する回転角センサを当該支柱13に設けておき、この回転角センサが計測した支柱13の傾動角度の増加に伴って、支柱13の傾動速度が遅くなるように、制御手段520のトルク決定部521はトルク出力部22に出力させるトルクを決定する。このような構成により、被介護者Pに安心感を与えることができる。
本実施形態では、予め実験やシミュレーション等により、被介護者Pが良好にベッド60に着座できる、身体保持具30の下端部とベッド60との間隔を導き出しておき、リミットセンサ420を当該間隔と略等しい長さLが身体保持具30の下端部から突出するように設けているが、この限りでない。すなわち、身体保持具30の下端部が被介護者Pの腿部分に接触する際の身体保持具30の下端部とベッド60との間隔を導き出しておき、リミットセンサ420を当該間隔と略等しい長さが身体保持具30の下端部から突出するように設けても良い。このとき、制御手段520は、リミットセンサ420の先端部がベッド60に接触すると、被介護者Pが身体保持具30とベッド60との間に挟み込まれたと判断し、支柱13の傾動動作が逆回転となるようにトルク出力部22を制御する。このような構成により、被介護者Pが身体保持具30によりベッド60との間に挟み込まれて圧迫されるといった事態を未然に防ぐことが可能となる。
本実施形態では、リミットセンサ420の先端部がベッド60に接触するまで、支柱13を連続的に傾動させているが、被介護者Pがベッド60に着座する直前に一旦、支柱13の傾動動作を停止させても良い。つまり、例えば支柱13の傾動角度を計測する回転角センサを当該支柱13に設けておき、制御手段520は当該回転角センサが計測した支柱13の傾動角度が所定の角度になると、支柱13の傾動動作を一旦停止させる。そして、制御手段520は、ジョイスティック210から支柱13を下方に傾動させる操作が断続的に続いていると、改めてリミットセンサ420の先端部がベッド60に接触するまで支柱13の傾動動作を再開させる。このように、被介護者Pがベッド60に着座する直前に支柱13の傾動動作を一旦停止させることにより、ジョイスティック210を操作する操作者は、被介護者Pがベッド60に近付いていることを容易に認識することができ、その後のジョイスティック210の操作を慎重に行うことができる。逆に云うと、支柱13が一旦停止するまでは、比較的速く支柱13を下方に傾動させることができるので、被介護者Pの移乗動作の時間の短縮に寄与する。
本実施形態では、ジョイスティック210を操作する操作者に、被介護者Pがベッド60に近付いている旨の注意を促す手段を備えていないが、本実施形態でも操作部21はジョイスティック210の操作レバー210aの操作に負荷を与える負荷導入部を備え、支柱13の傾動角度の増加に伴って操作レバー210aへ与える負荷が増加する構成とされていると良い。さらに、操作部21は支柱13の傾動角度の増加に伴って、被介護者Pがベッド60に近付いている旨の注意を操作者に促す伝達部を備えていると良い。このような構成により、操作者は被介護者Pがベッド60に近付いていることを容易、且つ確実に認識することができる。
本実施形態では、リミットセンサ420の先端部がベッド60に接触すると、ジョイスティック210の操作に伴う指示信号が無効となる構成とされているが、操作部21は、制御手段520が再び操作レバー210aの操作を有効とするべく、当該制御手段520に信号を送信する解除部を備えていても良い。
発明の実施形態5.
以下に、図示は省略するが、本発明の実施の形態5に係る移乗支援装置及び移乗支援装置の制御方法について説明する。本実施形態5に係る移乗支援装置は、上記実施形態1の移乗支援装置におけるトルクセンサが省略され、制御手段が、身体保持具とベッドとの間隔が予め設定された間隔となるようにトルク出力部を制御する構成とされている。つまり、予め実験やシミュレーション等により、被介護者が良好にベッドに着座できる、支柱の傾動角度を導き出す。トルク決定部は、当該支柱の傾動角度になると、被介護者がベッドに着座したと判断し、支柱の傾動動作を停止させるべく、トルク出力部により出力させるトルクの大きさをゼロと決定し、当該決定を信号作成部に送信する。信号作成部は、受信した当該決定に基づいてトルク出力部により出力するトルクの大きさをゼロとする制御信号を作成し、当該制御信号を送信部を介してトルク出力部に送信する。これによって、被介護者が身体保持具を保持した状態でベッドへ着座する移乗動作において、被介護者が身体保持具によりベッドとの間に挟み込まれて圧迫されるといった事態を防ぐことができる。しかも、被介護者がベッドに着座したと判断すると、ジョイスティックの操作が自動的に無効となるので、従来のように特に慎重に操作する必要がなく、当該移乗動作を簡易、迅速に行うことができる。
ちなみに、支柱の傾動角度を計測する手段としては、支柱と支持台との連結部分に回転角センサを設けても良く、また支柱を駆動するためのモータの回転方向、回転数から支柱の傾動角度を計測しても良く、要するに支柱の傾動角度を計測できれば特に限定されない。
本実施形態も、スイッチなどを押すことによって、自動的に被介護者の移乗動作を実施する構成でも良い。このような構成により、介護者はスイッチの操作一つで、自動的に被介護者を移乗させることができ、被介護者のケアに集中することができる。
本実施形態も、支柱が下方に傾動するにつれ当該支柱の傾動速度が遅くなる構成でも良い。このような構成により、被介護者に安心感を与えることができる。
本実施形態も、身体保持具の下端部が被介護者の腿部分に接触する際の支柱の傾動角度を導き出しておき、当該支柱の傾動角度となると、トルク決定部は被介護者が身体保持具とベッドとの間に挟み込まれたと判断し、支柱の傾動動作が逆回転となるようにトルク出力部を制御しても良い。このような構成により、被介護者が身体保持具によりベッドとの間に挟み込まれて圧迫されるといった事態を未然に防ぐことが可能となる。
本実施形態も、被介護者がベッドに着座する直前に一旦、支柱の傾動動作を停止させても良い。ジョイスティックを操作する操作者は、被介護者がベッドに近付いていることを容易に認識することができ、その後のジョイスティックの操作を慎重に行うことができる。逆に云うと、支柱が一旦停止するまでは、比較的速く支柱を下方に傾動させることができるので、被介護者の移乗動作の時間の短縮に寄与する。
本実施形態も、操作部がジョイスティックの操作レバーの操作に負荷を与える負荷導入部を備え、支柱の傾動角度の増加に伴って操作レバーへ与える負荷が増加する構成とされていると良い。さらに、操作部は支柱の傾動角度の増加に伴って、被介護者がベッドに近付いている旨の注意を操作者に促す伝達部を備えていると良い。このような構成により、操作者は被介護者がベッドに近付いていることを容易、且つ確実に認識することができる。
以上、本発明に係る移乗支援装置及び移乗支援装置の制御方法の実施形態を説明したが、上記の構成に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、変更することが可能である。