JP5600613B2 - 色素増感太陽電池用電解質および色素増感太陽電池 - Google Patents

色素増感太陽電池用電解質および色素増感太陽電池 Download PDF

Info

Publication number
JP5600613B2
JP5600613B2 JP2011011894A JP2011011894A JP5600613B2 JP 5600613 B2 JP5600613 B2 JP 5600613B2 JP 2011011894 A JP2011011894 A JP 2011011894A JP 2011011894 A JP2011011894 A JP 2011011894A JP 5600613 B2 JP5600613 B2 JP 5600613B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrolyte
dye
solar cell
sensitized solar
ionic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2011011894A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2012089465A (ja
Inventor
茂樹 野村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sekisui Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sekisui Chemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sekisui Chemical Co Ltd filed Critical Sekisui Chemical Co Ltd
Priority to JP2011011894A priority Critical patent/JP5600613B2/ja
Publication of JP2012089465A publication Critical patent/JP2012089465A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5600613B2 publication Critical patent/JP5600613B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E10/00Energy generation through renewable energy sources
    • Y02E10/50Photovoltaic [PV] energy
    • Y02E10/542Dye sensitized solar cells

Description

本発明は、イオン性柔粘性結晶化合物を含む色素増感太陽電池用電解質および色素増感太陽電池に関する。より詳細には、電解液の漏れや揮発がなく、長期耐久性が改良された色素増感太陽電池用電解質および色素増感太陽電池に関する。
近年、地球温暖化防止のため、炭酸ガス排出を低減するための各種方策が全世界的に検討されている。特に発電においては、従来の火力・原子力・水力発電などの大規模集中発電に加え、太陽エネルギー、風力、地熱など、再生可能エネルギー(自然エネルギー)などを活用した分散発電によりトータルとしての炭酸ガス排出量低減に向け、取り組みがなされている。
このうち特に太陽電池は、すでにシリコン系を中心に実用化され、店舗・住宅の屋根への搭載などが一般的になっている。しかしながら、シリコン系太陽電池は、その製造のために必要な高純度シリコン原料が高価格であり、真空プロセスを多用する製造方法である等のためコストが高くなる。さらなる普及のためには、安価・製造容易で高効率な新規太陽電池が望まれている。
これに対応する一つの技術として、有機太陽電池があげられ、そのうち、特に効率が高い色素増感太陽電池が注目を集めている。色素増感太陽電池は1991年にスイス連邦工科大学ローザンヌ校のグレッツェルらが報告し、比較的簡易な製造方法、安価な原材料、高い変換効率が得られることから、次世代太陽電池の有力候補と考えられている(非特許文献1)。色素増感太陽電池の一般的概略構造、および発電の原理は、非特許文献1に記載されている。
色素増感太陽電池における電解液は、一般的な主成分としてヨウ化物塩(代表例としてヨウ化リチウム等)およびヨウ素を溶媒(代表例としてアセトニトリル、プロピオニトリル等)に溶かしたものが用いられる。この主成分に対し、添加剤としてt−ブチルピリジンやヨウ化物有機塩(メチルプロピルイミダゾリウム、ジメチルプロピルイミダゾリウム等)、グアニジウムチオシアナート、N−アルキルベンズイミダゾールなどを含む場合もある。
色素増感太陽電池の構成と原理を簡単に記述する。色素増感太陽電池において、代表的な電極として、色素を担持した酸化チタン電極が挙げられる。この電極に担持された色素は光を受けて電子励起され、励起された電子は酸化チタンに注入され、色素はカチオンラジカルの状態となる。このカチオンラジカルに対し、電解質溶液中のヨウ化物イオン(I)が電子を放出、すなわちヨウ化物イオンは酸化され、三ヨウ化物イオン(I )を形成する。ここで生じた三ヨウ化物イオン(I )は電解溶液中を拡散し、対極に近づいた際に電子を供給、すなわち還元され、ヨウ化物イオン(I)となる。このようにして、電解質溶液中のヨウ素イオンは3Iの形態、I の形態を取りながら酸化還元反応を可逆的に繰り返す。
このヨウ化物イオンの反応は、以下のように記述することが出来る。
3I → I + 2e(色素に注入) ・・・(A)
+ 2e(対極より注入) → 3I ・・・(B)
電解液中での、式(A)のヨウ化物イオンの酸化による三ヨウ化物イオンの生成、式(B)の三ヨウ化物イオンの還元によるヨウ化物イオンの生成、すなわち、酸化還元反応の繰り返しにより色素増感太陽電池は動作する。色素増感太陽電池を高性能化、すなわち、光電変換効率向上のためには、この酸化還元反応を速やかに行うことが重要である。
ここで、光電変換効率向上のために電解液に求められる主な機能としては、以下のことが挙げられる。
(i)ヨウ化物イオン、三ヨウ化物イオンを高濃度で溶解すること
(ii)多孔質酸化チタン電極の微細な表面、及び電極に担持された色素の表面に追随すること
(iii)ヨウ化物イオン、三ヨウ化物イオンの拡散が充分に速いこと
これらを満足する電解液として、前述のようにアセトニトリルやプロピオニトリルなどの極性有機溶媒が使用される。しかしながら、アセトニトリルやプロピオニトリル等の極性有機溶媒は、以下のような問題点を有している。
(1)低粘度の液体であるため、色素増感太陽電池の封止剤のわずかな欠陥あるいは分子間隙より電解液が漏れ出し、最終的には電解液枯渇により発電が不可能となる。
(2)有機溶媒は低沸点であるために高温では加圧状態となり、太陽電池の破損や電解液の漏れ・揮発の原因となり、発電が不可能となる。
(3)有機溶媒は一般的に有毒であるため、電解液の漏れや揮発は太陽電池としての機能を損なうだけではなく、環境負荷要因となる可能性が高く、また、多くの場合有機溶媒は可燃性であるため、火災などの原因ともなりうる。
このような問題点に対処可能な電解液の検討が行われており、その一つとして常温溶融塩を電解液溶媒の代替として用いる技術が開示されている(非特許文献2)。一般に常温溶融塩は揮発性がほとんど無く、難燃性であることから安全性は大幅に改善されるが、一方、液体であるために電解液の漏れ防止に関しては大きな改善が見込めない。また、常温溶融塩は有機溶媒に対して高粘度である場合が多く、イオン拡散が不充分となり、色素増感太陽電池に用いた場合、充分高い光電変換効率を実現することは困難である。
安全性、耐久性に特化して考えた場合、固体あるいは凝固体電解質が有望である。しかしながら、固体電解質は極端にイオン拡散速度が低下するために好ましくない。一方、凝固体電解質は、ゲル状態、あるいは半固体状態の電解質を指し、たとえば高分子、粒子などを電解質溶媒に分散・溶解することにより実現することが出来る(非特許文献3)。ゲル状態の電解質においては、電解質の漏れに対しては大きな改善が見込まれ、さらに、電解液として常温溶融塩等の難揮発性溶媒を用いれば、揮発も防ぐことが出来る。しかしながら、多量の高分子や微粒子を添加してゲル化する場合には、イオン拡散速度が大幅に低下することは防止できず、その結果、ゲル電解質を用いた色素増感太陽電池の光電変換効率は、電解液を用いた光電変換効率の半分以下にとどまっている。また、低分子ゲル化剤を用いてゲル化させる方法も開示されている(特許文献1)。この方法では、少量のゲル化剤によるゲル化が可能であるため、発電性能をほとんど落とさず凝固体化可能である。しかしながら、これら低分子ゲル化剤は、水酸基やアミド結合などの酸化されやすい構造や、カルボキシ基のような色素脱離を引き起こす原因となりうる基を有しており、ゲル化機構が水素結合を起点としている。そのため、低分子ゲル化剤を用いる方法は、長期耐久性向上という目的に対しては良い結果が得られにくい。加えて、ゲル化剤の種類が限られており、その電気化学的・光化学的安定性を加味した材料の開発はまだ完了してない状況である。
また、リチウムイオン電池等の二次電池においては、凝固体電解質として柔粘性結晶化合物(以下では、単に「柔粘性結晶」ということがある。)を使用することが提案されている。柔粘性結晶は、結晶状態でありながら柔軟性を有するものであり、液体と固体の中間の性質を示す中間相(メソフェーズ)と呼ばれる状態をとる。柔粘性結晶は、柔粘結晶、プラスチック結晶、プラスチッククリスタル等の名称で古くから知られている(非特許文献4)。
柔粘性結晶の代表例としては、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、テトラニトロメタン、四塩化炭素、2,2,3,3−テトラメチルブタン、ショウノウ、コハク酸ニトリル等が知られている。
このような柔粘性結晶をリチウムイオン二次電池に適用した例として、コハク酸ニトリルにリチウム塩化合物をドープした電解質を用いた技術が開示されている(特許文献2)。
上記柔粘性結晶は電解質成分の担体(電解質マトリクス)として機能して電解質の漏出を抑制しうるが、イオン拡散速度は不充分である。
特開2001−167629号公報 特表2009−503769号公報
Nature、第353巻、第737ページ、1991年 Inorganic Chemistry、第35巻、第1168ページ、1996年 Journal of Physical Chemistry B、第99巻、17071ページ、1995年 化学大事典4(縮刷第32版)、共立出版、669ページ、1989年
本発明は、色素増感太陽電池の機能を劣化させる原因となる電解液の漏れや揮発を抑制しつつ、充分なイオン拡散速度を実現しうる色素増感太陽電池用電解質、及び高い光電変換効率と耐久性を有する色素増感太陽電池を提供することを課題とする。
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ね、イオン性柔粘性結晶化合物を電解質中に含むことにより、該電解質を凝固体化した場合であってもイオン伝導度の低下がほとんど見られないことを見いだし、本発明に至った。
本発明の請求項1に記載の色素増感太陽電池用電解質は、色素が担持された酸化金属を含む光電極、酸化還元反応可能な化学種を含む電解質、及び対極を少なくとも備えてなる色素増感太陽電池に使用される電解質であって、該電解質はイオン性柔粘性結晶化合物を含有し、前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するカチオンが窒素を含有し、更に、融点が−10℃以下の非プロトン性溶媒を含み、前記非プロトン性溶媒がイオン液体であることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の色素増感太陽電池用電解質は、請求項1において、前記イオン性柔粘性結晶化合物の融点が40℃以上である。
本発明の請求項3に記載の色素増感太陽電池用電解質は、請求項1又は2において、前記イオン性柔粘性結晶化合物のガラス転移温度が−10℃以下である。
本発明の請求項4に記載の色素増感太陽電池用電解質は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するカチオンがアルキルアンモニウムである。
本発明の請求項5に記載の色素増感太陽電池用電解質は、請求項4において、前記アルキルアンモニウムが、少なくともピロリジニウム又はピペリジニウムのいずれか一種を含む。
本発明の請求項6に記載の色素増感太陽電池用電解質は、請求項5において、前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するカチオンの主成分として、下記一般式(1−1)で表されるカチオンを含み、前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するアニオンの主成分として、ヨウ化物イオン(I)を含む。
Figure 0005600613
[式中、mは1〜4の整数を表し、nは2〜12の整数を表す。]
本発明の請求項7に記載の色素増感太陽電池用電解質は、請求項6において、前記ヨウ化物イオン(I)に対して0.5〜50モル%のヨウ素(I)を加えたものである。
本発明の請求項8に記載の色素増感太陽電池用電解質は、請求項1〜7のいずれか一項において、前記イオン性柔粘性結晶化合物、及び無機もしくは有機のヨウ化物塩を含む。
本発明の請求項9に記載の色素増感太陽電池用電解質は、請求項1〜8のいずれか一項において、前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するアニオンの一部が三ヨウ化物イオンで置換されたものである。
本発明の請求項10に記載の色素増感太陽電池用電解質は、請求項において、前記非プロトン性溶媒が前記イオン性柔粘性結晶化合物に対して80質量%以下で含有される。
本発明の請求項11に記載の色素増感太陽電池用電解質は、請求項において、前記イオン液体がアンモニウム塩系イオン液体である。
本発明の請求項12に記載の色素増感太陽電池用電解質は、請求項において、前記イオン液体がイミダゾリウム塩系イオン液体である。
本発明の請求項13に記載の色素増感太陽電池用電解質は、請求項9〜12のいずれか一項において、前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するアニオンの一部が三ヨウ化物イオンで置換されており、前記電解質中のアニオンのうち、三ヨウ化物イオン以外のアニオンと、三ヨウ化物イオンとのモル比が100:1〜100:50の範囲である。
本発明の請求項14に記載の色素増感太陽電池は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の電解質が用いられたものである。
本発明の色素増感太陽電池用電解質は、イオン性柔粘性結晶化合物を含むことにより、イオン伝導性を維持しつつ凝固体化されうる。このため、色素増感太陽電池の電解質として用いられた場合、電解液の液漏れや蒸発による枯渇が発生することなく、長期にわたる安定的な高効率発電が可能となる。
以下、本発明を詳述する。
本発明の色素増感太陽電池用電解質は、色素が担持された酸化金属を含む光電極、酸化還元反応可能な化学種を含む電解質、及び対極を少なくとも備えてなる色素増感太陽電池に使用されるものである。
[電解質]
前記電解質は、酸化還元反応可能な化学種およびイオン性柔粘性結晶化合物を含む。
本発明の電解質で用いるイオン性柔粘性結晶化合物は、柔粘性結晶を形成しうるカチオン及びアニオンからなるイオン化合物である。
前記カチオンは窒素を有するカチオンである。窒素を有するカチオンは種々のカチオンを用いることが可能であり、電気化学安定性、耐光性に優れており、本発明において好ましく用いることが出来る。
柔粘性結晶化合物は、前述のように、結晶形態をとりながら柔軟性を有する、中間相状態を示す物質である。柔粘性結晶化合物は高温にすると、通常の結晶と同様に融解する。
本発明の電解質で用いるイオン性柔粘性結晶化合物の融点は、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましい。特に、室内など比較的穏和な環境下で用いる場合、イオン性柔粘性結晶化合物の融点は40℃以上であることが好ましく、屋外などの過酷な条件下で用いる場合、イオン性柔粘性結晶化合物の融点は80℃以上であることが好ましい。
本発明の電解質は使用時において凝固体状態となっていることが特徴である。そのため、本発明の電解質は室温付近で固体または凝固体状態となっていることが好ましい。イオン性柔粘性結晶の融点が40℃未満であると、室内などであっても夏場などは液化してしまう可能性がある。屋内使用のためには、融点が好ましくは60℃以上であれば問題ない。また、屋外や夏場の車内では更に高温となる可能性があるため、当該融点は80℃以上であることが更に好ましい。
一方、前記融点の上限は特に制限されないが、後述するように、本発明にかかる色素増感太陽電池を製造する際に、前記電解質を融解して電極と接触させたりする工程を考えると、前記融点は180℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましく、60〜120℃が特に好ましい。
前記融点が180℃を超える場合、電解質を180℃よりも高い温度として融解させ、また、太陽電池セルも180℃より高い温度とし、電解質をセルに注入する必要がある。この際、セルを180℃にすることによりセルや電極が割れたり、変形したり、また、色素が変性したりする可能性があるため、好ましくない。注入時の温度が180℃以下であれば、セルの劣化が少ないため、より好ましい。一方、屋外や夏場の車内などで太陽電池が放置されることを考えると100℃程度になる可能性がある。電解質として用いる場合には種々の化合物を配合する必要があり、その場合、イオン性柔粘性結晶は融点降下を起こすことがあるため、イオン性柔粘性結晶自体の融点としては、より好ましくは120℃以下である。
また、イオン性柔粘性結晶は、結晶が柔軟性を示し始めるガラス転移温度(Tg)を有する。ガラス転移温度以下では、イオン移動などが起こりにくい通常の結晶状態となり、本発明の電解質として用いることが困難になる場合がある。
従って、本発明の電解質に用いるイオン性柔粘性結晶のガラス転移温度としては−10℃以下が好ましく、−20℃以下がより好ましく、−40℃以下が更に好ましい。通常、室内などで使用する場合、イオン性柔粘性結晶のガラス転移温度は−10℃以下が好ましく、屋外などで用いる場合、イオン性柔粘性結晶のガラス転移温度は−40℃以下が好ましい。寒冷地等では室内でも−10℃程度になる可能性があり、この温度以下でも電解質として充分なイオン伝導度が確保出来ることが好ましい。とくに極寒地帯での屋外使用を考えると、−40℃以下のガラス転移温度が好ましい。前記ガラス転移温度の下限値は特に制限されず、より低くなっても特に物性上、工程上の問題はない。
本発明の電解質で用いられるイオン性柔粘性結晶化合物を構成するカチオンは、アルキルアンモニウムであることが好ましい。
前記アルキルアンモニウムとしては、例えば、ピロリジニウム、ピペリジニウム等の4級アルキルアンモニウムや、ピリジニウム、イミダゾリウム等の芳香族アルキルアンモニウムが用いられる。なかでも、4級アルキルアンモニウムが好ましく、ピロリジニウム及びピペリジニウムがより好ましい。前記電解質を柔粘性結晶状態とすることが容易であり、その結果、凝固体でありながら、高いイオン伝導度を得ることができる。
本発明の色素増感太陽電池用電解質は、前記カチオンとして、少なくともピロリジニウム又はピペリジニウムのいずれか一種を含むことが好ましい。
前記ピロリジニウムは下記一般式(1)で表されるカチオンから選ばれるいずれか1種である。
Figure 0005600613
前記一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基である。
及びRの組み合わせとしては、本発明の効果が優れることから、R及びRのいずれか一方がメチル基であることが好ましい。
がメチル基の場合、Rは炭素数2〜12のアルキル基であることが好ましい。この組み合わせを有するピロリジニウムが、前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成することにより、該イオン性柔粘性結晶化合物が柔軟性を有する結晶状態を維持することがより容易となる。この結果、凝固体でありながら、高いイオン伝導度を得ることができる。
前記ピペリジニウムは下記一般式(2)で表されるカチオンから選ばれるいずれか1種である。
Figure 0005600613
前記一般式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基である。
及びRの組み合わせとしては、本発明の効果が優れることから、R及びRのいずれか一方がメチル基であることが好ましい。
がメチル基の場合、Rは炭素数2〜8のアルキル基であることが好ましい。この組み合わせを有するピペリジニウムが、前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成することにより、該イオン性柔粘性結晶化合物が柔軟性を有する結晶状態を維持することがより容易となる。この結果、凝固体でありながら、高いイオン伝導度を得ることができる。
前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するアニオンとしては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド((CFSO)、テトラフルオロボラート(BF )、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CFSO )、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF )、酢酸イオン(CHCOO)、及びヨウ素や臭素等のハロゲンイオン等が用いられる。なかでも、本発明の効果が優れることから、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド((CFSO)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CFSO )、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I )が好ましい。
上記のなかでも、イオン性柔粘性結晶化合物としては、電解質をセルに注入する際の温度を低くでき、かつ、室温付近で固体又は凝固体状態になりやすいことから、前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するカチオンの主成分として、下記一般式(1−1)で表されるカチオンを含み、前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するアニオンの主成分として、ヨウ化物イオン(I)を含むものが好ましい。
ここで「イオン性柔粘性結晶化合物を構成するカチオンの主成分」とは、イオン性柔粘性結晶化合物を構成するカチオン全体に対して50モル%以上含まれているカチオンをいう。
「イオン性柔粘性結晶化合物を構成するアニオンの主成分」とは、イオン性柔粘性結晶化合物を構成するアニオン全体に対して50モル%以上含まれているアニオンをいう。
Figure 0005600613
[式中、mは1〜4の整数を表し、nは2〜12の整数を表す。]
前記一般式(1−1)中、nは2〜12の整数を表し、nは8〜12であることがより好ましい。また、前記一般式(1−1)中、mは1〜4の整数を表し、mは1であることがより好ましい。
5員環の窒素に結合しているアルキル基鎖(C2n+1及びC2m+1)の炭素数を変化させることにより、電解質の融点の調整が可能である。例えばmが1の場合、nを8〜12とすることにより、電解質の融点を、特に好ましい60〜120℃の範囲に容易に制御できる。また、m及びnの数を変えることにより、結晶の柔軟性、結晶性、及び融点を比較的自由に設計することが出来る。通常、nの数を大きくすると、結晶の柔軟性を高めて(結晶性を低めて)、融点を低下させることができ、mの数で融点を微調整できる。mの数が増えると融点は若干上昇する。
また、前記式(1−1)で表されるカチオンを、その他のカチオンと混合して該融点を調整することも可能である。加えて、結晶性が高まることにより、電子が移動しやすくなって酸化還元反応効率が高まる。
前記式(1−1)で表されるカチオンの含有割合は、前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するカチオン全体に対して50モル%以上であり、60モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、80〜100モル%が更に好ましい。このカチオンの含有割合が50モル%以上であることにより、電解質の融点を容易に調整できると共に、室温付近で固体又は凝固体状態になりやすい。
ヨウ化物イオン(I)の含有割合は、前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するアニオン全体に対して50モル%以上であり、60モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、80〜100モル%が更に好ましい。このアニオンの含有割合が50モル%以上であることにより、色素増感太陽電池の光電変換効率が高まる。
前記式(1−1)で表されるカチオンとヨウ化物イオン(I)とをそれぞれ主成分として含むイオン性柔粘性結晶化合物は、メチルピロリジン(m=1の場合)、エチルピロリジン(m=2の場合)、プロピルピロリジン(m=3の場合)、ブチルピロリジン(m=4の場合)等のCmH2m+1基を有するモノアルキルピロリジンに対し、C2n+1に相当する基を有するヨウ化アルキルを反応させることにより容易に合成することができる。前記モノアルキルピロリジンは市販されているものを用いればよい。
このようにして得られたヨウ化ジアルキルピロリジニウムが、前記イオン性柔粘性結晶状態を発現することにより、凝固体でありながら、高いイオン伝導度を得ることができる。
本発明者らは、前記イオン性柔粘性結晶化合物を色素増感太陽電池のセルに注入することによって電解質に含有させた場合、該イオン性柔粘性結晶化合物がセル内で凝固体化(半固体化)して、電解質マトリクスとして優れた機能を発揮することを見出した。該電解質マトリクスには電解質成分として、ヨウ素イオン等の酸化還元反応可能な化学種が含まれる。該電解質マトリクス自体はイオン性であるため、優れたイオン拡散媒体として機能するので、該化学種は拡散しやすくなる。このため、従来の高分子ゲル等からなる中性の電解質マトリクスよりも高いイオン伝導性を有しうる。その結果、本発明の電解質を用いた色素増感太陽電池の光電変換効率を高めることができる。また、前記化学種は凝固体化した電解質マトリクスに含まれるため、セル外への漏出が充分に抑制される。そのため、本発明の電解質を用いた色素増感太陽電池は耐久性に優れる。
前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するアニオンは、該アニオンの一部が三ヨウ化物イオンで置換されたものであることが好ましい。
例えば、イオン性柔粘性結晶化合物であるN−メチル−N−アルキルピリジニウムヘキサフルオロホスフェートを構成するアニオン(ヘキサフルオロホスフェート)の一部を三ヨウ化物イオンで置換したものが好ましい。また、ヨウ化N−メチル−N−アルキルピリジニウムを構成するアニオン(I)の一部を三ヨウ化物イオンで置換したものも好ましい。ヨウ素レドックス系の濃度を高くすることが可能となり、より高いイオン伝導度、ひいてはより高い光電変換効率を実現することが出来る。
本発明における電解質の構成としては、イオン性柔粘性結晶化合物を電解質マトリクスとし、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I )を前記化学種として少なくとも含むものが好ましい。
電解質の構成として好ましくは、前記イオン性柔粘性結晶化合物、及び、ヨウ化物イオン源となりうる成分を含むものが挙げられる。
ヨウ化物イオン源としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウム、及びヨウ化ナトリウムなどの無機ヨウ化物塩(アルカリ金属塩)、並びにイミダゾリウム塩(たとえばメチルプロピルイミダゾリウム、ジメチルプロピルイミダゾリウム等)、アルキルアンモニウム塩(たとえばテトラアルキルアンモニウム塩など)、ピロリジニウム塩、ピペリジニウム塩などの有機ヨウ化物塩が挙げられる。
これらのヨウ化物塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、無機塩と有機塩とを併用してもよい。
前記有機塩を用いる場合には、前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するカチオンと同種のカチオンを含む有機塩を用いることが好ましい。
この場合、前記有機塩を構成するカチオンとしては前記窒素を有するカチオンが好ましい。その有機塩の好適な具体例としては、ピペリジニウム塩、ピロリジニウム塩が挙げられる。三ヨウ化物イオンとサイズが近く、形状が球形に近いため、前記イオン性柔粘性結晶化合物がより柔粘性結晶状態となりやすいためである。
三ヨウ化物イオン(I )は、ヨウ化物イオン(I)の存在下、ヨウ素(I)を加えることにより得ることが出来る。従って、イオン性柔粘性結晶化合物及びヨウ化物イオンを含む混合物にヨウ素を加えることにより三ヨウ化物イオンを電解質系中に発生させることが可能である。
また、あらかじめピペリジニウム、ピロリジニウムのヨウ素塩に対し、たとえば等量のヨウ素を加えることにより、三ヨウ化物イオンの塩を形成しておいてもよい。
このピペリジニウム、ピロリジニウムの三ヨウ化物塩は、ピペリジニウムあるいはピロリジニウムの窒素上の置換基の長さ(アルキル基の炭素数)を調整することにより、特定の温度においてイオン性柔粘性結晶状態となるため、本発明に使用することが好ましい。
特に、本発明の電解質は、前記の式(1−1)で表されるカチオンとヨウ化物イオン(I)とをそれぞれ主成分として含むイオン性柔粘性結晶化合物における、ヨウ化物イオン(I)に対して0.5〜50モル%のヨウ素(I)を加えたものが好ましく、5〜30モル%のヨウ素(I)を加えたものがより好ましい。
電解質中のヨウ素(I)は、ヨウ化物イオン(I)と以下のような反応により三ヨウ化物イオン(I )を形成する。
+ I → I
前述したように、色素増感太陽電池用電解質では、ヨウ素イオンが3Iの形態、I の形態を取りながら酸化還元反応が可逆的に繰り返されているため、あらかじめ適した濃度のヨウ化物イオン(I)と三ヨウ化物イオン(I )を存在させておく必要がある。
加えるヨウ素(I)が0.5モル%未満では、三ヨウ化物イオン(I )が充分に形成されず、酸化還元サイクルが非効率となりやすい。一方、加えるヨウ素(I)が50モル%を超えると、三ヨウ化物イオン(I )の光吸収が無視出来ない量となり、酸化還元サイクルの効率が低下しやすくなる。
本発明の電解質中の三ヨウ化物イオン以外のアニオンと、三ヨウ化物イオンとの比率(モル比)は100:1〜100:50であることが好ましい。三ヨウ化物イオンがこれよりも少なくなると、酸化還元反応が充分に起こらず、変換効率が低下する。一方、三ヨウ化物イオンがこれ以上の比率となると、酸化チタン電極からの逆電子移動反応が無視できない程度に発生するため、発電効率はむしろ低下する。また、三ヨウ化物イオンは着色しており、光を吸収するため、光の利用効率も低下してしまう。このため、前記比率は100:3〜100:30がより好ましい。
本発明におけるイオン性柔粘性結晶化合物を構成するアニオンの一部は、三ヨウ化物イオンで置換されていることが好ましい。
前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するアニオンと、該アニオンを置換した前記三ヨウ化物イオンとのモル比は100:1〜100:50の範囲が好ましく、100:3〜100:30の範囲がより好ましい。この範囲に調整することにより、本発明の電解質中の三ヨウ化物イオンとそれ以外のアニオンとの比率を前述の好ましい範囲に調整することができる。
また、電解質中のヨウ化物イオンと三ヨウ化物イオンとの比率も特定の範囲内にあることが好ましい。この比率は用いるイオン性柔粘性結晶化合物の種類にも依存するが、一般的にはヨウ化物イオンと三ヨウ化物イオンの比は100:5〜100:150が好ましく、より好ましくは100:10〜100:50、更に好ましくは100:10〜100:20である。
また、本発明の電解質には、色素の会合を防止するもの、逆電子移動反応(発電の逆反応)を防止するもの、電極のエネルギー準位を調製するもの、電極表面を改質するもの等の添加剤を含んでいてもよい。
たとえば、グアニジウムチオシアナート、N−アルキルベンズイミダゾール、デオキシコール酸、酢酸などのカルボン酸類、シリカ、チタニア、クレイなどの無機物、分散安定剤などを含んでいてもよい。これら添加剤は、いずれも本発明の電解質の主たる特徴である凝固体状態、すなわち室温付近での柔粘性結晶状態を損なわない範囲で加えることができる。
さらに、本発明の電解質においては、融点の調整、柔軟性の調整などを目的として、イオン性柔粘性結晶に対し、非プロトン性溶媒を用いてもよい。イオン性柔粘性結晶状態は、構造によっては比較的硬く、イオン伝導性が充分に確保出来ない場合がある。その場合には、非プロトン性溶媒を加え、柔軟化させてもよい。ここで加える非プロトン性溶媒としては、イオン性柔粘性結晶を柔軟化あるいは可塑化させるものであれば特に制限はないが、耐光性が良好であり、化学的に安定であることが好ましい。
前記非プロトン性溶媒は、融点が−10℃以下のものが好ましい。これは、低温で用いられる際、柔軟化・可塑化のために用いている非プロトン性溶媒が凝集・固化すると、充分なイオン電導性が得られなくなるためである。一方、前記非プロトン性溶媒の沸点は120℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは200℃以上で、実質通常の温度で揮発しないものが望ましい。これは、高温で使用する際、溶媒が揮発すると、電解質の物性が長期的に変化することになり、本発明の目的である色素増感太陽電池の長期信頼性確保が困難となるためである。
本発明にかかる電解質において、前記非プロトン性溶媒は、柔粘性結晶性を損なわず、良好な融点範囲を超えない範囲で加えられる。前記非プロトン性溶媒の添加量は、柔粘性結晶の種類や非プロトン性溶媒の種類等により決定でき、イオン性柔粘性結晶に対して80質量%以下で含有することが好ましい。つまり、前記イオン性柔粘性結晶100質量部に対して、前記非プロトン性溶媒は80質量部以下で含有されることが好ましく、50質量部以下で含有されることがより好ましく、30質量部以下で含有されることが更に好ましい。
前記非プロトン性溶媒の含有量が80質量%を超えると、イオン性柔粘性結晶を含む電解質が柔らかくなりすぎ、流動性を有する可能性が高いためである。ただし、この溶媒含有量の制限はイオン性柔粘性結晶の物性にもよるため一概に言えず、当該電解質の流動性が無く、適度な柔軟性・可塑性を付与出来る範囲内であれば問題なく用いることが出来る。
このような非プロトン性溶媒の具体的な例としては、γ−ブチロラクトンなどのラクトン・エステル類、3−メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類、ジメチルスルホキシド等の硫黄酸化物系化合物、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、及びイオン液体などが挙げられるが、本発明で用いることの出来る溶媒はこれらに限定されるものではなく、前記条件を満たしていれば特に制限はない。
これらの中でもイオン液体は、ほとんど揮発性が無く、化学的に安定であるため、好適に用いることが出来る。イオン液体は、融点が−10℃以下のものが好ましい。
本発明で用いうるイオン液体の具体例としては、前記イオン性柔粘性結晶と類似したアンモニウム塩系のものが好ましく用いることが出来る。この場合、相溶性が良好となり、少量の添加で良好な効果が得られるためである。特にアンモニウム塩系の中でも、イミダゾリウム塩系のイオン液体が好ましく用いることが出来る。
前記イミダゾリウム塩系のイオン液体としては、たとえば、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムヨージド、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムトリフレート、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムテトラシアノボレート、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムジシアナミド、チオシアン酸−1−メチル−3−エチルイミダゾリウム、等が挙げられるが、本発明で用いるイオン液体はこれらに限定されることはない。
また、イミダゾリウム塩系以外でも、ピペリジニウム系、たとえば1−メチル−1−ブチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどを用いてもよい。
また、イミダゾリウム塩系以外でも、ピロリジニウム系、たとえば1−メチル−1−ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどを用いてもよい。
本発明の電解質の製造方法は特に制限はなく、イオン性柔粘性結晶化合物、三ヨウ化物イオン、ヨウ化物イオン、必要に応じてその他の添加剤が混合できれば特に問題はない。具体的な混合方法の一例としては、溶媒を用いて混合した後、公知の方法で撹拌し、溶媒を留去する方法が挙げられる。また、混合方法の別の一例としては、イオン性柔粘性結晶化合物を加熱して液体状態とし、その状態において三ヨウ化物イオン、ヨウ化物イオンを加え、混合後、冷却する方法などが挙げられる。なお、撹拌混合の方法は特に限定されることはなく、公知の方法を用いることが出来る。
また、三ヨウ化物イオンとヨウ化物イオンとの混合比率は、電解質中に加えるヨウ化物イオン(I)とヨウ素(I)の比率により決めることが出来る。ヨウ素はヨウ化物イオンと反応し、ほぼ定量的に三ヨウ化物イオン(I )になると考えてよい。また、別途三ヨウ化物イオンを含むイオン性柔粘性結晶化合物と、ヨウ化物イオンを含む無機または有機塩との混合比率により決定してもよい。
以上のようにして製造した電解質は、色素増感太陽電池のセル内に導入される。該色素増感太陽電池を構成する電解質以外の構成要素(光電極、対極など)は、公知のものを適用できる。
一般的に、高分子ゲルや常温溶融塩(イオン液体)等を用いた従来の凝固体電解質は、色素増感太陽電池セルへの導入が困難である。液体状態でセル内に導入し、導入後に化学反応等にて凝固体化させる従来方法が知られているが、セル内で凝固体化させることは、ヨウ素の存在下であるために反応が阻害され困難であった。また、液体の電解液をあらかじめ光電極(酸化チタン電極)に含浸させ、その上に凝固体電解質を積層する従来方法も知られているが、液体電解液と凝固体電解質の併用は、液体電解液のセル外への漏洩が本質的に解決できていないため、好ましくない。
本発明のイオン性柔粘性結晶化合物を含む電解質は、高温にすると液状となり、室温付近では凝固体状態となる。このため、本発明の電解質は高温にて液状化させ、色素増感太陽電池のセル内に導入し、導入後放冷することにより凝固体化電解質となる。すなわち、本発明の電解質は太陽電池セルへの導入の際にも従来の凝固体電解質よりも優位な技術であるといえる。加えて、本発明の電解質を用いた色素増感太陽電池も本発明の一つである。
本発明の電解質の融点は、イオン性柔粘性結晶化合物の構造(イオン性柔粘性結晶化合物を構成するカチオンの導入置換基)、添加剤として用いる材料の種類と添加量により調整が可能である。そのため、電解質の融点を、セルの構造や耐熱性、プロセスの簡易性などを勘案して設計することが出来る。電解質の融点は40℃〜150℃が好ましく、より好ましくは80℃〜120℃である。40℃よりも低い融点では、実際に太陽電池として使用する際、使用中に電解質が融解する可能性があり、凝固体化する意味が無くなってしまう。また、融点が150℃を超える場合、150℃よりも熱して電解質を充填する必要があるが、そのような高温になると光電極に担持された色素が脱離や分解する可能性があるため好ましくない。
一般に、柔粘性結晶は、特定の温度領域において柔粘性を発現し、高温にすると溶解して液体となり、より低温にすると分子運動が規制され、より硬い結晶またはアモルファスへと転移する場合が多い。
柔粘性結晶中の分子が三次元的に規則配列した結晶状態であるにもかかわらず、柔粘性結晶自体は柔軟性を示す理由は、それぞれの分子が配列した重心の周りで回転運動をすることが可能であり、さらには配向の自由度も有するためである。これは、分子形状が球形または円盤状であって、分子同士の相互作用が低い場合や、結晶内での回転や配向の変化によるエネルギー変化が少ない場合に、容易に回転・配向変化が可能であるためである。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例にて用いた試薬は、断りのない限り和光純薬工業(株)社製のものを使用し、特に精製することなく用いた。また、反応は特に断りのない限り、窒素雰囲気下で行った。
(合成例1;イオン性柔粘性結晶の合成)
N−メチルピロリジン(アルドリッチ社製)4.3g(50mmol)をとり、15gのイソプロパノールに溶解し、1−ヨードプロパン8.5g(50mmol)を、室温にてゆっくりと加えた。混合物をそのまま室温にて1時間撹拌した後、60℃オイルバスにて加熱し、8時間撹拌した。得られた反応混合物は、減圧にて溶媒および過剰の原料を留去した。得られた固体を、石油エーテルにて3回洗浄し、減圧乾燥した。9.9gの固体が得られた(収率77%)。固体はNMRにより、ヨウ化1−メチル−1−n−プロピルピロリジニウムであると同定された。
(合成例2;イオン性柔粘性結晶の合成)
1−ヨードプロパンの換わりに1−ヨードブタン9.2g(50mmol)を用いたこと以外は、合成例1と同様にして反応を行った。9.9gの固体が得られた(収率73%)。固体は、NMRにより、ヨウ化1−メチル−1−n−ブチルピロリジニウムであると同定された。
(合成例3;イオン性柔粘性結晶の合成)
1−ヨードプロパンの換わりに1−ヨードヘプタン11.3g(50mmol)を、用いたこと以外は、合成例1と同様にして反応を行った。8.5gの固体が得られた(収率54%)。固体は、NMRにより、ヨウ化1−メチル−1−n−ヘプチルピロリジニウムであると同定された。
(合成例4;イオン性柔粘性結晶の合成)
N−メチルピロリジンの換わりにN−メチルピペリジン5.0g(50mmol)を、1−ヨードプロパンの換わりに1−ヨードエタン7.8g(50mmol)を用いたこと以外は、合成例1と同様にして反応を行った。8.4gの固体が得られた(収率66%)。固体は、NMRにより、ヨウ化1−メチル−1−エチルピペリジニウムであると同定された。
(合成例5;イオン性柔粘性結晶の合成)
合成例1で得たヨウ化1−メチル−1−n−プロピルピロリジニウム2.6g(10mmol)を3mLの水に溶かした。一方、ヘキサフルオロリン酸カリウム(KPF6)1.9g(10.5mmol)を2mLの水に溶かした。ピロリジニウム水溶液に、ヘキサフルオロリン酸カリウムの溶液をゆっくり加え、そのまま室温にて1時間撹拌した。生じた沈殿を水で3回洗浄し、濾取した。固体は減圧下100℃にて乾燥した。2.1gの固体を得た(収率76%)。固体は、NMRおよびIRにてヘキサフルオロリン酸1−メチル−1−n−プロピルピロリジニウムと同定した。
(合成例6;イオン性柔粘性結晶の合成)
合成例2で得たヨウ化1−メチル−1−n−ブチルピロリジニウム2.7g(10mmol)を用いたこと以外は合成例5と同様にして固体を得た。2.0gの固体を得た(収率68%)。固体は、NMRおよびIRにてヘキサフルオロリン酸1−メチル−1−n−ブチルピロリジニウムと同定した。
(合成例7;イオン性柔粘性結晶の合成)
合成例3で得たヨウ化1−メチル−1−n−ヘプチルピロリジニウム3.1g(10mmol)を用いたこと以外は合成例5と同様にして固体を得た。1.9gの固体を得た(収率58%)。固体は、NMRおよびIRにてヘキサフルオロリン酸1−メチル−1−n−ヘプチルピロリジニウムと同定した。
(合成例8;イオン性柔粘性結晶の合成)
合成例4で得たヨウ化1−メチル−1−エチルピペリジニウム2.6g(10mmol)を用いたこと以外は合成例5と同様にして固体を得た。2.1gの固体を得た(収率76%)。固体は、NMRおよびIRにてヘキサフルオロリン酸1−メチル−1−エチルピペリジニウムと同定した。
(合成例9;イオン性柔粘性結晶の合成)
合成例1で得たヨウ化1−メチル−1−n−プロピルピロリジニウム2.6g(10mmol)を10mLのアセトニトリルに溶かした。一方、ヨウ素2.5g(10mmol)を10mLのアセトニトリルに溶かした。ピロリジニウム塩の溶液にヨウ素をゆっくり加え、そのまま室温にて16時間撹拌した。反応溶液をそのまま減圧にて溶媒を留去した。得られた固体を、水で3回洗浄し、濾取した。固体は減圧下100℃にて乾燥した。3.2gの固体を得た(収率62%)。固体は、NMRおよびIRにて三ヨウ化1−メチル−1−n−プロピルピロリジニウムと同定した。
(合成例10;イオン性柔粘性結晶の合成)
合成例2で得たヨウ化1−メチル−1−n−ブチルピロリジニウム2.7g(10mmol)を用いたこと以外は合成例9と同様にして固体を得た。3.4gの固体を得た(収率66%)。固体は、NMRおよびIRにて三ヨウ化1−メチル−1−n−ブチルピロリジニウムと同定した。
(合成例11;イオン性柔粘性結晶の合成)
合成例3で得たヨウ化1−メチル−1−n−ヘプチルピロリジニウム3.1g(10mmol)を用いたこと以外は合成例5と同様にして固体を得た。3.1gの固体を得た(収率55%)。固体は、NMRおよびIRにて三ヨウ化1−メチル−1−n−ヘプチルピロリジニウムと同定した。
(合成例12;イオン性柔粘性結晶の合成)
合成例4で得たヨウ化1−メチル−1−エチルピペリジニウム2.6g(10mmol)を用いたこと以外は合成例5と同様にして固体を得た。3.9gの固体を得た(収率76%)。固体は、NMRおよびIRにて三ヨウ化1−メチル−1−エチルピペリジニウムと同定した。
(合成例13;イオン液体の合成)
合成例2で得たヨウ化1−メチル−1−n−ブチルピロリジニウム1.5g(5.6mmol)を水2gに溶解し、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム1.66g(5.6mmol)の2g水溶液を加えた。生じた有機層(下層)と水を分離し、水で3回洗浄した後、乾燥した。2.1gの1−メチル−1−ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを得た。得られたイオン液体は、室温において液体であった。
(合成例14;イオン性柔粘性結晶の合成)
1−ヨードプロパンの換わりに1−ヨードエタン6.9gを用いたこと以外は、合成例1と同様にして反応を行った。6.31gの固体が得られた(収率98%)。固体は、NMRにより、ヨウ化1−メチル−1−エチルピロリジニウムであると同定された。
(合成例15;イオン性柔粘性結晶の合成)
合成例14で得たヨウ化1−メチル−1−エチルピロリジニウム6.8g(28mmol)を水5gに溶解し、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム8.0g(28mmol)の水溶液5gを加えた。生じた沈殿をこしとり、水で洗浄後乾燥した。9.8g(25mmol)の1−メチル−1−エチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを得た。
(合成例16;イオン性柔粘性結晶の合成)
1−メチルピロリジン(東京化成(株)社製)6.3g(74mmol)を15mLの2−プロパノールに溶解した溶液に、1−ヨードノナン(東京化成(株)社製)18.8g(74mmol)を10mLの2−プロパノール溶液に溶解した溶液を30分かけて滴下した。得られた溶液を室温にて1時間撹拌した後、80℃オイルバスにて8時間加熱した。得られた淡黄色溶液をそのまま減圧にて濃縮したところ、淡褐色ゲル状体を得た。このゲル状体をヘキサンに入れて砕き、固体とした後、遠心分離を行い、固体を分離した。さらにこの固体を3回ヘキサン洗浄−遠心分離を繰り返し、最終的に得られた淡褐色固体を減圧にて乾燥することにより、23.8gの潮解性がある柔軟性固体を得た(収率95%)。
該柔軟性固体をNMR(日本電子(株)社製JEM−ECX400、重水)にて測定したところ、ヨウ化1−メチル−1−ノニルピロリジニウムと矛盾のないスペクトルが得られた。該柔軟性固体の融点を示差走査熱量計(TAインスツルメント社製Q2000、窒素下)にて測定したところ、融点は79℃であった。更に、該柔軟性固体は、融点以外の構造転移温度が−1℃、10℃、18℃、69℃の少なくとも4点存在する中間相状態を示す物質であることが明らかとなった。
(合成例17;イオン性柔粘性結晶の合成)
1−ヨードノナンの換わりに1−ヨードドデカン21.9g(74mmol)を用いたこと以外は合成例16と同様にして反応を行い、16.0gの淡黄色粉体を得た(収率57%)。
該淡黄色粉体をNMR(CDCl)にて測定したところ、ヨウ化1−メチル−1−ドデシルピロリジニウムと矛盾のないスペクトルが得られた。該淡黄色粉体の融点を示差走査熱量計にて測定したところ、融点は101℃であった。更に、該淡黄色粉体は、融点以外に、68℃に構造転移温度を示す中間相状態を示す物質であることが明らかとなった。
(合成例18;イオン性柔粘性結晶の合成)
1−ヨードノナンの換わりに1−ヨードブタン13.6g(74mmol)を用いたこと、及び反応温度を80℃から60℃へ変更したこと以外は合成例16と同様にして反応を行い、19.4gの白色粉体を得た(収率98%)。
該白色粉体をNMR(重水)にて測定したところ、ヨウ化1−メチル−1−ブチルピロリジニウムと矛盾のないスペクトルが得られた。該白色粉体の融点を示差走査熱量計にて測定したところ、融点は150℃以上であった。更に、該白色粉体は、融点以外に、10℃付近に構造転移による吸熱ピークが存在する中間相状態を示す物質であることが明らかとなった。
(合成例19;イオン性柔粘性結晶の合成)
合成例16において、1−メチルピロリジンのかわりに1−ブチルピロリジン(アルドリッチ社製)6.4g(25mmol)、1−ヨードノナンを3.2g(25mmol)を用いたこと以外は合成例16と同様にして反応を行い、8.3gの淡黄色結晶を得た(収率87%)。
該淡黄色粉体をNMR(CDCl3)にて測定したところ、ヨウ化1−ブチル−1−ノニルピロリジニウムと矛盾のないスペクトルが得られた。該淡黄色粉体の融点を示差走査熱量計にて測定したところ、融点は93℃であった。更に、該淡黄色粉体は、融点以外に、−41℃、−16℃、54℃の少なくとも3点に構造転移温度を示す中間相状態を示す物質であることが明らかとなった。
合成例16〜19で得たイオン性柔粘性結晶について、以下の評価を行った。
合成例16で得られた柔軟性固体(融点79℃)をガラスサンプル瓶に入れ、100℃ホットプレート上に置いたところ、すぐに溶解して茶色液体となり、室温に冷却すると褐色で透明な柔軟固体となった。
合成例17で得られた淡黄色粉体(融点101℃)をガラスサンプル瓶に入れ、120℃ホットプレート上に置いたところ、徐々に溶解して淡黄色透明液体となり、室温に冷却すると白濁した黄色柔軟固体となった。
合成例18で得られた白色粉体(融点150℃以上)をガラスサンプル瓶に入れ、150℃ホットプレート上に置いたところ、10分以上が経過しても溶融しなかった。
合成例19で得られた柔軟性固体(融点93℃)をガラスサンプル瓶に入れ、110℃ホットプレート上に置いたところ、すぐに溶解して淡黄色液体となり、室温に冷却すると白濁した淡黄色柔軟固体となった。
以上の評価結果より、合成例16〜19で得られたイオン性柔粘性結晶は、いずれも、室温付近で固体又は凝固体状態であることが分かる。
合成例16、17、19で得られたイオン性柔粘性結晶は、融点が約120℃以下であり、合成例18で得られたイオン性柔粘性結晶(融点150℃以上)に比べて、電解質をセルに容易に注入することができると共に、その際にセルの劣化も少ないと云える。
<電解質の調製>
(実施例1)
合成例5で得たヘキサフルオロリン酸1−メチル−1−n−プロピルピロリジニウム100gを100mLのアセトニトリルに溶解し、ヨウ化リチウム6.7g、ヨウ素1.3g、t−ブチルピリジン6.8gを加え、室温にて1夜撹拌した。得られた混合物を減圧にて溶媒(アセトニトリル)を取り除き、室温にて柔粘性結晶状態である電解質を得た。
得られた電解質における三ヨウ化物イオン以外のアニオンと、三ヨウ化物イオンとのモル比は、100:3であると考えられる。
また、得られた電解質におけるヨウ化物イオンと三ヨウ化物イオンの比は100:10であると考えられる。
この電解質の伝導度を23℃にて測定したところ、1.8×10−3S/cmであり、凝固体状態であるにもかかわらず、高いイオン伝導度を示した。
得られた電解質(イオン性柔粘性結晶化合物)の融点は約95℃であり、Tgは−80℃以下であった。
なお、実施例における試料の融点及びTg測定は、示差走査熱量測定装置(TAインスツルメンツ社製;Q2000)を使用して行った。
(実施例2)
ヨウ化リチウムを4.0gとし、合成例1で得たヨウ化1−メチル−1−n−プロピルピロリジニウムを7.7g加えたこと以外は実施例1と同様にして、室温にて柔粘性結晶状態である電解質を得た。
得られた電解質における三ヨウ化物イオン以外のアニオンと、三ヨウ化物イオンとのモル比は、100:3であると考えられる。
また、得られた電解質におけるヨウ化物イオンと三ヨウ化物イオンの比は100:10であると考えられる。
この電解質の伝導度を23℃にて測定したところ、9.8×10−4S/cmであり、凝固体状態であるにもかかわらず、高いイオン伝導度を示した。
得られた電解質(イオン性柔粘性結晶化合物)の融点は約95℃であり、Tgは−80℃以下であった。
(実施例3)
ヨウ化リチウムを1.3gとし、合成例1で得たヨウ化1−メチル−1−n−プロピルピロリジニウムを12.8g加え、ヨウ素の換わりに合成例9で得た三ヨウ化1−メチル−1−n−プロピルピロリジニウム5.1gを加えたこと以外は、実施例1と同様にして、室温にて柔粘性結晶状態である電解質を得た。
得られた電解質における三ヨウ化物イオン以外のアニオンと、三ヨウ化物イオンとのモル比は、100:5であると考えられる。
また、得られた電解質におけるヨウ化物イオンと三ヨウ化物イオンの比は100:20であると考えられる。
この電解質の伝導度を23℃にて測定したところ、1.0×10−3S/cmであり、凝固体状態であるにもかかわらず、高いイオン伝導度を示した。
得られた電解質(イオン性柔粘性結晶化合物)の融点は約90℃であり、Tgは−80℃以下であった。
(実施例4)
合成例6で得たヘキサフルオロリン酸1−メチル−1−n−ブチルピロリジニウム100gをアセトニトリル100mLに溶かし、ヨウ化リチウム1.3g、合成例2で得たヨウ化1−メチル−1−n−ブチルピロリジニウムを13.5g、合成例10で得た三ヨウ化1−メチル−1−n−ブチルピロリジニウム5.2g、t−ブチルピリジン6.8gを加え、室温にて1夜撹拌した。得られた混合物を減圧にて溶媒(アセトニトリル)を取り除き、室温にて柔粘性結晶状態である電解質を得た。
得られた電解質における三ヨウ化物イオン以外のアニオンと、三ヨウ化物イオンとのモル比は、100:5であると考えられる。
また、得られた電解質におけるヨウ化物イオンと三ヨウ化物イオンの比は100:17であると考えられる。
この電解質の伝導度を23℃にて測定したところ、2.5×10−3S/cmであり、凝固体状態であるにもかかわらず、高いイオン伝導度を示した。
得られた電解質(イオン性柔粘性結晶化合物)の融点は約65℃であり、Tgは−80℃以下であった。
(実施例5)
合成例7で得たヘキサフルオロリン酸1−メチル−1−n−ヘプチルピロリジニウム100gをアセトニトリル100mLに溶かし、ヨウ化リチウム1.3g、合成例3で得たヨウ化1−メチル−1−n−ヘプチルピロリジニウムを15.6g、合成例11で得た三ヨウ化1−メチル−1−n−ヘプチルピロリジニウム5.6g、t−ブチルピリジン6.8gを加え、室温にて1夜撹拌した。得られた混合物を減圧にて溶媒(アセトニトリル)を取り除き、室温にて柔粘性結晶状態である電解質を得た。
得られた電解質における三ヨウ化物イオン以外のアニオンと、三ヨウ化物イオンとのモル比は、100:5であると考えられる。
また、得られた電解質におけるヨウ化物イオンと三ヨウ化物イオンの比は100:17であると考えられる。
この電解質の伝導度を23℃にて測定したところ、3.8×10−3S/cmであり、凝固体状態であるにもかかわらず、高いイオン伝導度を示した。
得られた電解質(イオン性柔粘性結晶化合物)の融点は約55℃であり、Tgは−80℃以下であった。
(実施例6)
合成例8で得たヘキサフルオロリン酸1−メチル−1−エチルピペリジニウム100gをアセトニトリル100mLに溶かし、ヨウ化リチウム1.3g、合成例4で得たヨウ化1−メチル−1−エチルピペリジニウムを12.8g、合成例12で得た三ヨウ化1−メチル−1−エチルピペリジニウム5.1g、t−ブチルピリジン6.8gを加え、室温にて1夜撹拌した。得られた混合物を減圧にて溶媒(アセトニトリル)を取り除き、室温にて柔粘性結晶状態である電解質を得た。
得られた電解質における三ヨウ化物イオン以外のアニオンと、三ヨウ化物イオンとのモル比は、100:5であると考えられる。
また、得られた電解質におけるヨウ化物イオンと三ヨウ化物イオンの比は100:17であると考えられる。
この電解質の伝導度を23℃にて測定したところ、2.1×10−3S/cmであり、凝固体状態であるにもかかわらず、高いイオン伝導度を示した。
得られた電解質(イオン性柔粘性結晶化合物)の融点は80℃であり、Tgは−80℃以下であった。
(実施例7)
実施例5にて得られた凝固体状態の電解質を80℃に熱し、液状化させた。これを、透明電極(ソラロニクス社製)上に酸化チタンペースト(ソラロニクス社製)を塗布し、色素(N−719;ソラロニクス社製)を吸着させた光電極、スペーサーを介して白金対極を積層した簡易セルに対し、液状化させた実施例5の電解質を注入し、注入口をエポキシ接着剤にて封止した。
得られたセルを、ソーラーシミュレーターを用い、発電効率を測定したところ、光電変換効率は7.0%を記録し、凝固体電解質を用いた色素増感太陽電池としてはトップレベルの性能を示した。
また、当該セルの使用時に、凝固体状の電解質がセル外へ漏れ出すことや揮発することは一切なかった。
(実施例8)
合成例15で得たイオン性柔粘性結晶1−メチル−1−エチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド1.6gに、合成例14で得たヨウ化1−メチル−1−エチルピロリジニウムを0.4g、ヨウ素を50mg、N−メチルベンズイミダゾール32mg、グアニジンチオシアネート120mgを加え、150℃ホットプレート上で加熱撹拌し、電解質を得た。
得られた電解質における三ヨウ化物イオン以外のアニオンと、三ヨウ化物イオンとのモル比は、100:10である。
また、得られた電解質におけるヨウ化物イオンと三ヨウ化物イオンの比は100:20であると考えられる。
この電解質の伝導度を23℃にて測定したところ、0.8×10−3S/cmであり、凝固体状態であるにもかかわらず、高いイオン伝導度を示した。
得られた電解質(イオン性柔粘性結晶化合物)の融点は65℃であり、Tgは−80℃以下であった。
(実施例9)
実施例8にて得られた電解質に、該電解質中のイオン性柔粘性結晶に対し20質量%の1−メチル−1−ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(合成例13で得たイオン液体)を加えた。実施例8と同様にして混合し、電解質を得た。
この電解質の伝導度を23℃にて測定したところ、2.3×10−3S/cmであり、凝固体状態であるにもかかわらず、高いイオン伝導度を示した。
得られた電解質(イオン性柔粘性結晶化合物)の融点は約65℃であり、Tgは−80℃以下であった。
(実施例10)
実施例8にて得られた電解質に、イオン性柔粘性結晶に対し20質量%の3−メトキシプロピオニトリルを加えた。実施例8と同様にして混合し、電解質を得た。
この電解質の伝導度を23℃にて測定したところ、3.4×10−3S/cmであり、凝固体状態であるにもかかわらず、高いイオン伝導度を示した。
得られた電解質(イオン性柔粘性結晶化合物)の融点は約65℃であり、Tgは−80℃以下であった。
(実施例11)
実施例8にて得られた電解質に、イオン性柔粘性結晶に対し20質量%の1−メチル−3−エチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(市販イオン液体、メルク社製)を加えた。実施例8と同様にして混合し、電解質を得た。
この電解質の伝導度を23℃にて測定したところ、4.1×10−3S/cmであり、凝固体状態であるにもかかわらず、高いイオン伝導度を示した。
得られた電解質(イオン性柔粘性結晶化合物)の融点は約65℃であり、Tgは−80℃以下であった。
(実施例12)
合成例16で得たヨウ化1−メチル−1−ノニルピロリジニウム2gに対し、N−メチルベンズイミダゾール130mgと、グアニジンチオシアナート30mgと、ヨウ素(I)100mg(ヨウ化物イオン(I)に対して約7モル%)とを加え、100℃ホットプレート上にて撹拌して均一化し、電解質組成物を調製した。
ITOガラス上に、酸化チタン(ソラロニクス社製、Ti−Nanoxide D/SP)を20μmの厚みとなるように塗布し、500℃で30分加熱した。その後、色素(ソラロニクス社製、Ruthenizer535)のt−ブタノール溶液に室温にて1夜浸せきし、色素吸着電極付きガラスを作製した。
得られた色素吸着電極付きガラスに20μmのスペーサーを置き、その上に白金板を置き密着させて簡易セルを作製した。白金板に小径の孔を2カ所設け、簡易セルを80℃に予熱し、片方から均一化・液化した電解質組成物を入れ、そのままゆっくり冷却させたところ、簡易セル内で電解質組成物は固化し、電解質部分が形成された。
そのまま続けて、ソーラーシミュレーターにて光を照射し、変換効率を測定したところ、3.5%の変換効率を達成出来た。これは、固体の変換効率としては高い値であり、色素増感太陽電池に使用される電解質として有用であると云える。
実施例12において、得られた電解質における三ヨウ化物イオン以外のアニオンと、三ヨウ化物イオンとのモル比は、100:9であると考えられる。
また、得られた電解質におけるヨウ化物イオンと三ヨウ化物イオンとの比は100:9であると考えられる。
この電解質の伝導度を23℃にて測定したところ、2.5×10−3S/cmであり、凝固体状態であるにもかかわらず、高いイオン伝導度を示した。
得られた電解質(イオン性柔粘性結晶化合物)の融点は約79℃であり、Tgは−80℃以下であった。
(実施例13)
合成例19で得たイオン性柔粘性結晶ヨウ化1−ブチル−1−ノニルピロリジニウム2gを用い、実施例12と同様にして電解質組成物を調整した。
得られた電解質における三ヨウ化物イオン以外のアニオンと、三ヨウ化物イオンとのモル比は、100:9であると考えられる。
また、得られた電解質におけるヨウ化物イオンと三ヨウ化物イオンの比は100:9であると考えられる。
この電解質の伝導度を23℃にて測定したところ、1.9×10−3S/cmであり、凝固体状態であるにもかかわらず、高いイオン伝導度を示した。
得られた電解質(イオン性柔粘性結晶化合物)の融点は85℃であり、Tgは−80℃以下であった。

Claims (14)

  1. 色素が担持された酸化金属を含む光電極、酸化還元反応可能な化学種を含む電解質、及び対極を少なくとも備えてなる色素増感太陽電池に使用される電解質であって、
    該電解質はイオン性柔粘性結晶化合物を含有し、前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するカチオンが窒素を含有し、更に、融点が−10℃以下の非プロトン性溶媒を含み、前記非プロトン性溶媒がイオン液体であることを特徴とする色素増感太陽電池用電解質。
  2. 前記イオン性柔粘性結晶化合物の融点が40℃以上である、請求項1に記載の色素増感太陽電池用電解質。
  3. 前記イオン性柔粘性結晶化合物のガラス転移温度が−10℃以下である請求項1又は2に記載の色素増感太陽電池用電解質。
  4. 前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するカチオンがアルキルアンモニウムである請求項1〜3のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池用電解質。
  5. 前記アルキルアンモニウムが、少なくともピロリジニウム又はピペリジニウムのいずれか一種を含む請求項4に記載の色素増感太陽電池用電解質。
  6. 前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するカチオンの主成分として、下記一般式(1−1)で表されるカチオンを含み、前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するアニオンの主成分として、ヨウ化物イオン(I)を含む請求項5に記載の色素増感太陽電池用電解質。
    Figure 0005600613
    [式中、mは1〜4の整数を表し、nは2〜12の整数を表す。]
  7. 前記ヨウ化物イオン(I)に対して0.5〜50モル%のヨウ素(I)を加えたものである請求項6に記載の色素増感太陽電池用電解質。
  8. 前記イオン性柔粘性結晶化合物、及び無機もしくは有機のヨウ化物塩を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池用電解質。
  9. 前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するアニオンの一部が三ヨウ化物イオンで置換された請求項1〜8のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池用電解質。
  10. 前記非プロトン性溶媒が前記イオン性柔粘性結晶化合物に対して80質量%以下で含有される、請求項に記載の色素増感太陽電池用電解質。
  11. 前記イオン液体がアンモニウム塩系イオン液体である、請求項に記載の色素増感太陽電池用電解質。
  12. 前記イオン液体がイミダゾリウム塩系イオン液体である、請求項に記載の色素増感太陽電池用電解質。
  13. 前記イオン性柔粘性結晶化合物を構成するアニオンの一部が三ヨウ化物イオンで置換されており、前記電解質中のアニオンのうち、三ヨウ化物イオン以外のアニオンと、三ヨウ化物イオンとのモル比が100:1〜100:50の範囲である、請求項9〜12のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池用電解質。
  14. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の電解質が用いられた色素増感太陽電池。
JP2011011894A 2010-02-26 2011-01-24 色素増感太陽電池用電解質および色素増感太陽電池 Active JP5600613B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011011894A JP5600613B2 (ja) 2010-02-26 2011-01-24 色素増感太陽電池用電解質および色素増感太陽電池

Applications Claiming Priority (7)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010042604 2010-02-26
JP2010042604 2010-02-26
JP2010167200 2010-07-26
JP2010167200 2010-07-26
JP2010212338 2010-09-22
JP2010212338 2010-09-22
JP2011011894A JP5600613B2 (ja) 2010-02-26 2011-01-24 色素増感太陽電池用電解質および色素増感太陽電池

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2012089465A JP2012089465A (ja) 2012-05-10
JP5600613B2 true JP5600613B2 (ja) 2014-10-01

Family

ID=46260860

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011011894A Active JP5600613B2 (ja) 2010-02-26 2011-01-24 色素増感太陽電池用電解質および色素増感太陽電池

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5600613B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP4210078A1 (en) * 2020-09-04 2023-07-12 Nippon Chemi-Con Corporation Electrical double layer capacitor

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5607439B2 (ja) * 2010-06-30 2014-10-15 カーリットホールディングス株式会社 色素増感太陽電池用電解液及びそれを備えた色素増感太陽電池
JP6044767B2 (ja) * 2012-08-10 2016-12-14 株式会社Pgsホーム 色素増感太陽電池

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
AU2003264556B2 (en) * 2002-09-25 2008-11-06 Dai-Ichi Kogyo Seiyaku Co., Ltd. Dye-sensitized solar cell
US8258344B2 (en) * 2006-12-28 2012-09-04 National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology Plastic crystal

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP4210078A1 (en) * 2020-09-04 2023-07-12 Nippon Chemi-Con Corporation Electrical double layer capacitor

Also Published As

Publication number Publication date
JP2012089465A (ja) 2012-05-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Gorlov et al. Ionic liquid electrolytes for dye-sensitized solar cells
TWI345840B (en) Electrolyte composition and photoelectric conversion element using same
CN101630593B (zh) 一种电解质溶液及其在染料敏化太阳能电池中的应用
CN101241774B (zh) 一种复合电解质组合物及其制备方法
CN101572192B (zh) 一种染料敏化太阳能电池用电解质及其制备方法
KR101348391B1 (ko) 이미다졸륨염이 화학적으로 결합된 나노입자, 이의 제조방법 및 이를 포함하는 염료감응 태양전지용 나노젤형 전해질
JP4515948B2 (ja) ゲル状電解質用原料キット、ゲル状電解質用電解質組成物及び光増感型太陽電池
Lennert et al. Efficient and stable solid-state dye-sensitized solar cells by the combination of phosphonium organic ionic plastic crystals with silica
EP2572402B1 (en) Ionic liquid based electrolytes containing sulfide/polysulfide redox couple and uses thereof
TW201223961A (en) Electrolyte formulations
CN101694813B (zh) 染料敏化纳米薄膜太阳电池用液晶电解质溶液
CN101297436B (zh) 离子性凝胶电解质、色素增感型光电转换元件及太阳能电池
JP4459578B2 (ja) 色素増感太陽電池
JP5600613B2 (ja) 色素増感太陽電池用電解質および色素増感太陽電池
CN101719427B (zh) 用于染料敏化太阳能电池的全固态有机合金电解质
TW201117454A (en) Gel type electrolyte, method of fabrication thereof and dye-sensitized solar cell using the same
JP4420645B2 (ja) 低温型有機溶融塩、光電変換素子及び光電池
CN101261889B (zh) 用于染料敏化太阳能电池的胍盐离子液体复合电解质及其制备方法
JP2005097561A (ja) 光機能材料
JP2008226505A (ja) フェナントロチオフェン系化合物、および、その用途、ならびに製造方法
Jiang et al. Plastic–polymer composite electrolytes for solid state dye-sensitized solar cells
CN101635204B (zh) 基于氧化钛凝胶电解质的染料敏化太阳能电池及制备方法
CN101013742A (zh) 一种固态电解质染料敏化纳米晶太阳能电池及其制备方法
JP2002298935A (ja) 電解質、及び光電気化学電池
JP2005063791A (ja) 色素増感型光電変換素子用電解質高分子添加剤、それを用いた光電変換素子、及び電解質の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130201

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20140226

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20140304

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140417

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140722

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140818

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5600613

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151