以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態のサーマルプリンタは、図1に示すように、巻回されたロール用紙等の記録媒体Paを保持する給紙部1と、互いに異なる種類の消耗品Pb1、Pb2をそれぞれ用いて記録媒体Paに印刷を行う複数のヘッド部2、3と、給紙部1から供給される記録媒体Paを搬送する基幹路Li0と、基幹路Li0に対して給紙部1に保持される記録媒体Paを繰り出す送出ローラ部8と、基幹路Li0に分岐部63を介して接続されヘッド部2、3をそれぞれ有する分岐路Li1、Li2と、一対のローラ61、62で記録媒体Paを挟持しつつローラの少なくとも一方を回転させることにより分岐路Li1、Li2にある記録媒体Paを搬送する搬送ローラ部6と、記録媒体Paの搬送制御やヘッド部2、3の印刷制御を行う制御部5とを有し、送出ローラ部8及び搬送ローラ部6を通じて給紙部1に保持される記録媒体Paをヘッド部2、3へ搬送しつつヘッド部2、3で記録媒体Paへの印刷を行うものである。
給紙部1は、図1に示すように、予めロール状に巻回された記録媒体Paを回転可能に保持し、図示しないモータ等の動力部により記録媒体Paをロールの軸心C1を中心に正逆回転させて記録媒体Paの繰り出し及び巻き戻しを行う。
送出ローラ部8は、一対のローラ81・81を有し、給紙部1に保持される記録媒体Paを一対のローラ81・81で挟持しつつヘッド部2、3に向けて供給する。
ヘッド部2は、給紙部1から基幹路Li0及び分岐路Li1を経由して供給される記録媒体Paに対して通常印刷を行うものであり、具体的には、顔料や染料等のインクを塗布したインクリボンたる消耗品Pb1を繰り出すインクリボンローラ22と、搬送ローラ部6の下流にあって発熱抵抗体が配置されたサーマルヘッド21とを備え、サーマルヘッド21の加熱により消耗品Pb1のインクを記録媒体Paに転写させて通常印刷を行う。
ヘッド部3は、給紙部1から基幹路Li0及び分岐路Li2を経由して供給される記録媒体Paに対して特色印刷を行うものであり、具体的には、保護層や光沢層、白色、金色等の特色を印刷するための特色リボンたる消耗品Pb2を繰り出す特色リボンローラ32と、発熱抵抗体が配置されたサーマルヘッド31とを備え、サーマルヘッド31の加熱により消耗品Pb2を記録媒体Paに転写させて特色印刷を行う。消耗品Pb2は、ヘッド部2で用いられる消耗品Pb1とは異なる種類の消耗品である。
制御部5は、周知のサーマルプリンタと同様にCPU、メモリ及びインターフェイスを具備する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成されて、メモリ内に搬送制御ルーチンや印刷制御ルーチン等の所要のプログラムが書き込まれており、CPUは適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、周辺ハードリソースと協働して、所期の搬送動作や印刷動作が実現される。
本実施形態では、上記構成にさらに以下の構成を加えている。
すなわち、各ヘッド部2、3それぞれ単独での両面印刷を実現すべく、図1に示すように、給紙部1を回転軸Cnを中心に回転可能にし、給紙部1を第1の回転位置ro1に停止させた状態で記録媒体Paを供給可能にするとともに、給紙部1を第1の回転位置ro1から180度回転させた第2の回転位置ro2に停止させた状態(図9、図4及び図5(b)参照)で記録媒体Paを供給可能にすることによりヘッド部2、3に臨む記録媒体Paの表裏を反転させる反転手段4を設けている。この反転手段4による給紙部1の回転は制御部5により制御される。なお、反転手段4は、給紙部1に記録媒体Paを着脱するなどの給紙部1に対するメンテナンスに適した第3の回転位置Ro3に給紙部1を停止可能に構成されている(図5(a)及び図7参照)。
具体的には、図2及び図3に示すように、反転手段4は、記録媒体Paを供給可能に保持する給紙部1と、給紙部1を回転軸Cnを中心に回転可能に支持する支持部41と、支持部41に対して給紙部1を回転させる電動部42と、給紙部1が所定の回転位置にあることを検出する検出部43と、給紙部1を所定の回転位置に位置決め状態で停止させる位置決め手段44とを有している。
給紙部1は、図2に示すように、予めロール状に巻回された記録媒体Paがロールの軸心C1を中心に回転可能になるように記録媒体Paの幅方向両側を着脱可能に支持する保持部11と、この保持部11を上面13aに設けた板状のターンテーブル部13と、ターンテーブル部13の上面13aに設けられ保持部11の一部及び保持部11に保持される記録媒体Paの一部を包囲し他部を外部に開放する固定カバー部12とを備え、固定カバー部12の開口空間を含む出し入れ空間SP1を介して固定カバー部12により包囲される内部と固定カバー部12から離脱する外部との間で記録媒体Paを着脱可能に保持している。
給紙部1を支持する支持部41は、図3に示すように、給紙部1のターンテーブル部13をベアリング41aを介して回転軸Cnを中心に回転可能に支持する、すなわち給紙部1を当該給紙部1の配置位置で回転可能に支持するベース41bにより構成されている。
給紙部1を支持部41に対して回転させる電動部42は、ターンテーブル部13に設けられた停止精度に乏しいDCモータ等の回転力を出力する出力部42aと、出力部42aの出力を支持部41であるベース41bに形成される周回路41rに伝達する伝達部42rとを有し、出力部42aにより出力される回転力を伝達部42r及び周回路41rを介して支持部41に伝達することにより支持部41に対して給紙部1を当該給紙部1の配置位置で回転させる。この伝達部42rは、ターンテーブル部13と支持部41を構成するベース41bとの間に配置されている。勿論、電動部42の出力部42aを支持部41に設け、伝達部42rはターンテーブル部13に回転軸Cn上で回転力を伝達するように構成してもよい。
給紙部1の回転位置を検出する検出部43は、図3に示すように、給紙部1を構成するターンテーブル部13に設けられた遮光部43aと、支持部41を構成するベース41bに設けられ遮光部43aによる遮光を検出する3つの遮光センサ43b〜43dとを有し、ターンテーブル部13の回転に伴って遮光部43aが各遮光センサ43b〜43dを遮光する位置に移動し、遮光を検出した遮光センサがいずれの遮光センサであるかによって給紙部1の回転位置が第1の回転位置ro1、第2の回転位置ro2又は第3の回転位置ro3のいずれであるかを検出するものである(図3〜図5参照)。
具体的には、給紙部1を構成するターンテーブル部13が第1の回転位置ro1にある状態を示す図3を用いて説明すると、3つの遮光センサ43b〜43dのうちの一つの遮光センサ43bは、給紙部1が第1の回転位置ro1にあるときに遮光部43aによる遮光を検出する位置に配置されている。3つの遮光センサ43b〜43dのうちの他の一つの遮光センサ43cは、図3に示す矢印Bのようにターンテーブル部13が90度回転して給紙部1が第1の回転位置ro1から第3の回転位置へ移動したときに遮光部43aによる遮光を検出する位置に配置されている。3つの遮光センサ43b〜43dのうちの残りの遮光センサ43dは、図3に示す矢印Cのようにターンテーブル部13が180度回転して給紙部1が第1の回転位置ro1から第2の回転位置へ移動したときに遮光部43aによる遮光を検出する位置に配置されている。本実施形態では、給紙部1の姿勢を検出する検出部43を複数の遮光センサ43b〜43dを用いて構成しているが、給紙部1の回転位置を検出することができれば、エンコーダやレゾルバ等の回転角度検出センサを用いてもよい。また、本実施形態では、3つの回転位置に対応して遮光センサを3つ設けているが、複数の遮光センサの組み合わせで複数の回転位置を特定するものであってもよい。
給紙部1を第1〜第3の回転位置に位置決め状態で停止させるための位置決め手段44は、図3〜図6に示すように、給紙部1を構成するターンテーブル部13の支持部側である下面13bに設けられた3つの被係合部45と、支持部41を構成するベース41bに設けられ制御部5からの指令信号に基づいて被係合部45に係合する係合位置又は係合位置から退避する退避位置のいずれかに移動可能な係合部46a(図3及び図6参照)とを有し、ターンテーブル部13の回転に伴って3つ被係合部45が係合部46aに対向する位置に移動し、係合部46aを被係合部45に係合させることで給紙部1の回動を禁止して給紙部1を所望の回転位置に停止させるものである。
具体的には、給紙部1であるターンテーブル部13が第1の回転位置ro1にある状態を示す図4を用いて説明すると、3つの被係合部45のうちの一つの被係合部45(sa)は、給紙部1が第1の回転位置ro1にあるときに係合部46aに係合可能な位置に配置され、他の一つの被係合部45(sm)は、図4に示す矢印のようにターンテーブル部13が90度回転して給紙部1が第1の回転位置ro1から図5(a)に示す第3の回転位置ro3へ移動したときに係合部46aに係合可能な位置に配置され、残りの被係合部45(sb)は、図4に示す矢印のようにターンテーブル部13が180度回転して給紙部1が第1の回転位置ro1から図5(b)に示す第2の回転位置へ移動したときに係合部46aに係合可能な位置に配置されている。このように、係合部46a及び各被係合部45(sa、sm、sb)の位置関係が規定されている。
より詳細には、係合部46aは、図6に示すように、回転する回転シャフト46bに設けられ給紙部1の回転方向の接線と直交する方向に延びる軸状の突起部であり、係合部46aと、回転シャフト46bと、この回転シャフト46bの一端に設けられ動力部たるモータからの動力を回転シャフト46bに伝達する伝達部材46cとにより係合機構46を構成している。係合機構46は、回転シャフト46bを給紙部1の回転方向の接線に平行な軸C4を中心に回転させることで、係合部46aを給紙部1の回転方向と直交する方向に沿って移動させて係合部46aを上記の係合位置又は退避位置のいずれかに移動させる。
被係合部45は、図6に示すように、回転方向と直交する方向に沿って形成され係合部46aと係合することにより給紙部1やターンテーブル部13の回動を禁止する禁止面45cと、係合部46aを禁止面45c同士の間に呼び込む呼び込み部45dとが形成されており、電動部42による給紙部1の回動停止位置が多少ずれたとしても係合部46aを呼び込み部45dで禁止面45c同士の間に案内して給紙部1の正確な姿勢決めを行う。係合部46aは円滑な係合動作を行うために回転自在に軸着されていることが望ましい。
なお、本実施形態では、被係合部45を給紙部1を構成するターンテーブル部13に設け、係合部46aを備える係合機構46を支持部41を構成するベース41bに設けているが、この位置関係を逆にしてもよい。また、呼び込み部45dは、被係合部45に設けているが、係合部46aにのみに設けてもよく、被係合部45及び係合部46aの双方に設けてもよい。
ところで、本実施形態では、上記の通りメンテナンス用の第3の回転位置に給紙部1を停止させて給紙部1に対して記録媒体Paを着脱する際には、図2及び図7(a)に示すように、送出ローラ部8を構成する一対のローラ81・81が図7(a)に示す繰り出し位置kuにあり、一対のローラのうちの一方のローラ81の一端に設けられた受動ギア81aと、送出ローラ部8に対して駆動力を付与する機構部品Asの一部であるギア81bとが噛み合って送出ローラ部8と機構部品Asとが関連づけられ、送出ローラ部8の周囲の空間が機構部品Asに占有されて記録媒体Paをローラ81・81に対して着脱する動作が行いにくい状態にある。さらに、この場合、送出ローラ部8が出し入れ空間SP1にあり、記録媒体Paを給紙部1に対して着脱する動作が送出ローラ部8により阻害される状態にある。
そこで、本実施形態では、かかる不具合を解決すべく送出ローラ部8を以下に述べるように構成している。
すなわち、送出ローラ部8は、図2に示すように、記録媒体を挟持しつつ記録媒体の繰り出しを行う一対のローラ81・81と、一対のローラ81・81の両端側に設けられ開閉軸C2を中心に回動による開閉動作を行う送出ローラ支持部83と、これら一対のローラ81・81を相対的に接離可能にする接離機構82とを有する。接離機構82は、ローラ81の軸と平行な軸心C3を中心に回動自在に送出ローラ支持部83に設けられる天秤部82aと、引っ張りバネを用いた付勢手段82bとを有している。上記の一対のローラ81・81のうちの一方のローラは、送出ローラ支持部83に回動自在に支持されており、他方のローラは、天秤部82aのうちの軸心C3から変位した部位に設けられている。付勢手段82bは、天秤部82aに設けられるローラ81を他方のローラ81へ向けて付勢する。勿論、付勢手段82bは一対のローラ81・81同士が近づく方向に付勢するものであれば、引っ張りバネに限るものではない。さらに、接離機構82は、天秤部82aに当接する偏心カム82cと、図示しないモータ等の動力部から動力を得る接離機構ギア82e(図2参照)と、偏心カム82cと接離機構ギア82eとを連結する連結シャフト82dとを有し、偏心カム82cを回転させることにより、一対のローラ81同士を圧接状態または離間状態に切り替え可能に構成されている。
上記の構成において、図7(b)に示すように、送出ローラ支持部83を開閉軸C2を中心に回転させて、送出ローラ部8を構成する一対のローラ81・81を所定のメンテ位置mtに移動させると、上記ローラ81に設けられた受動ギア81aと機構部品Asの一部であるギア81bとの噛み合いが無くなり送出ローラ部8と機構部品Asとの関連づけが絶たれ、送出ローラ部8の周囲の空間が開放された状態となり、この周囲の開放された空間を、記録媒体Paをローラ81・81に対して着脱する動作を行う際に利用可能となる。さらに、この場合では、送出ローラ部8が出し入れ空間SP1から退避して出し入れ空間SP1外にあり、記録媒体Paの給紙部1への着脱に必要な出し入れ空間SP1が占有されることなく確保される。
ところで、上記のように反転手段4により給紙部1が回転するように構成しているので、給紙部1から供給される記録媒体Paを搬送する基幹路Li0と給紙部1との接続部分は、給紙部1の回転に対応する必要がある。
そのために、図8及び図9に示すように、基幹路Li0の入口は、送出ローラ部8に挟持され先端が自由となっている記録媒体Paを受けて分岐部63へガイドするガイド機構7により構成されている。ガイド機構7は、給紙部1が第1の回転位置ro1にあるときに送出ローラ部8から繰り出される記録媒体Paを受けて分岐部63へガイドする第1のガイド部71と、給紙部1が第2の回転位置ro2にあるときに送出ローラ部8から繰り出される記録媒体Paを受けて分岐部63へガイドする第2のガイド部72とを有している。第1のガイド部71及び第2のガイド部72の給紙部側端部は、ガイド面同士の間隔がラッパ状に広げられて巻き癖がついている記録媒体Paを円滑に受けるように形成されている。勿論、記録媒体Paと両ガイド部71、72とが当たる位置が明確であれば、対向するガイド面の双方を傾斜させてラッパ状に形成する必要はなく、対向する両ガイド面のうちの一方のガイド面のみを傾斜させて受け面としてもよい。
基幹路Li0の下流側に接続される分岐部63は、図8及び図9に示すように、基幹路Li0にある記録媒体Paの搬送先を分岐路Li1又は分岐路Li2のいずれか一方に切り替える切り替え部の役割を担うものであり、記録媒体Paをガイドする切換ガイド部63bと、図示しないモータ等の動力部に接続され切換ガイド部63bを回動可能に支持する切換ガイド支持部63aとを有しており、制御部5からの切換指令に応じて切換ガイド部63bを回動させ、切換ガイド部63bを、記録媒体Paの進路を分岐路Li1とする位置po1又は記録媒体Paの進路を分岐路Li2とする位置po2のいずれかに変位させて基幹路Li0と各分岐路Li1、Li2との間で記録媒体Paの搬送を選択的に行う。図示の分岐部63は、二枚の板材を平行に対向させて切換ガイド部63bとしているが、これに限られることはなく切換ガイド部63b全体を一つの板材で構成してもよい。
各分岐路Li1、Li2にある記録媒体Paを搬送する搬送ローラ部6は、図10に示すように、一対のローラで記録媒体を挟持しつつローラの少なくとも一方を回転させることにより記録媒体を搬送するものであり、両分岐路Li1、Li2の内側であって分岐部63近傍に配置されるフィードローラと称される主送りローラ61と、主送りローラ61との間で分岐路Li1及び分岐路Li2にある記録媒体をそれぞれ挟持するピンチローラと称される2つの主送りピンチローラ62・62とを有している。主送りローラ61は、ヘッド部2、3の上流で両分岐路Li1、Li2に同時に臨む位置に配置されて共用されており、モータ等の動力部Drから記録媒体Paを搬送する駆動力を得て、両分岐路Li1、Li2にある記録媒体の搬送を行う。そのために、主送りローラ61は正逆回転可能であり、2つの主送りピンチローラ62・62は、それぞれ主送りローラ61と接離可能に支持されている。
さらに、両分岐路Li1、Li2に沿ってガイドされてきた記録媒体が主送りローラ61と主送りピンチローラ62との間にあるか否かを検出する挟持センサ67・67が配置されており、これら挟持センサ67・67の検出結果及び分岐部63の切り替え状態に基づいて主送りローラ61と主送りピンチローラ62・62とを圧接状態または離間状態にそれぞれ独立して切り替える圧接制御機構67が設けられている。
各々の分岐路Li1、Li2には、記録媒体を搬送するためのプラテンローラと称される補助送りローラ64・64が両分岐路Li1、Li2の内側に配置されている。各補助送りローラ64・64はそれぞれ従動接続機構Co1、Co2を介して主送りローラ61と同一の回転方向に回転するように従動可能に接続されている。補助送りローラ64・64が互いに対称な位置関係に配置されているので、従動接続機構Co1、Co2は双方とも対称な同一構成として、双方の補助送りローラ64・64の搬送能力を同一のものとしている。なお、本実施形態では、補助送りローラ64・64の双方を両分岐路Li1、Li2の内側に配置して互いに対称な位置関係に配置しているが、補助送りローラ64・64が互いに対称な位置関係であれば双方を両分岐路Li1、Li2の外側に配置してもよい。この場合も従動接続機構Co1、Co2は双方とも互いに対称な同一構成にすることができる。
両分岐路Li1、Li2は、ヘッド部2、3の下流において合流しており、この合流部近傍には、従動接続機構Co3を介して主送りローラ61と同一の回転方向に回転するように従動可能に接続される排出ローラ65と、排出ローラ65との間で記録媒体Paを挟持する排出ピンチローラ66・66とが設けられており、これらのローラ65・66により記録媒体が排出方向へ搬送される。
分岐路Li1に沿って記録媒体が搬送される場合は、図11に示すように、基幹路Li0にある記録媒体の搬送先が分岐路Li1となるように分岐部63が切り替わり、分岐路Li1に沿って記録媒体が主送りローラ61及び主送りピンチローラ62の間に進入する。すると、挟持センサ67がこれを検出し、圧接制御機構67が、分岐部63の切り替えによって記録媒体の搬送先とされている分岐路Li1側の主送りピンチローラ62を主送りローラ61に圧接させる。併せて圧接制御機構67は、記録媒体Paの搬送先とされていない分岐路Li2側の主送りピンチローラ62を主送りローラ61から距離Ds離間させる。そして、動力部Drにより主送りローラ61の回転方向が時計回りに切り替わると、この主送りローラ61の回転に従動して補助送りローラ64・64及び排出ローラ65が時計回りに回転して、分岐路Li1において記録媒体を同一の方向へ搬送する回転がなされる。
一方、分岐路Li2に沿って記録媒体が搬送される場合は、図12に示すように、基幹路Li0にある記録媒体の搬送先が分岐路Li2になるように分岐部63が切り替わり、分岐路Li2に沿って記録媒体が主送りローラ61及び主送りピンチローラ62の間に進入する。すると、挟持センサ67がこれを検出し、圧接制御機構67が、分岐部63の切り替えによって記録媒体の搬送先とされている分岐路Li2側の主送りピンチローラ62を主送りローラ61に圧接させる。併せて圧接制御機構67は、記録媒体の搬送先とされていない分岐路Li1側の主送りピンチローラ62を主送りローラ61から距離Ds離間させる。そして、動力部Drにより主送りローラ61の回転方向が反時計回りに切り替わると、この主送りローラ61の回転に従動して補助送りローラ64・64及び排出ローラ65が反時計回りに回転して、分岐路Li2において記録媒体を同一方向へ搬送する回転がなされる。
上記では各部の構成及びその動作について個別に説明したが、各部が協働して記録媒体Paに両面印刷を行う動作にについて図13〜図19を用いて説明する。
まず、制御部5は、図13に示すように、給紙部1及び搬送ローラ部6のモータたる動力部Drやヘッド部2に駆動指令を行い、第1の回転位置ro1にある給紙部1に保持される記録媒体Paをヘッド部2へ搬送しつつ記録媒体Paのうちの一方の面である表面fに通常印刷を行う。
記録媒体Paの表面fへの通常印刷が完了すると、制御部5は、図14に示すように、給紙部1のモータたる動力部に巻き戻しさせる駆動指令を行い、記録媒体Paをヘッド部2、搬送ローラ部6及びガイド機構7及びから給紙部1側へ退避させる。
記録媒体Paの退避が完了すると、制御部5は、上記のとおり係合部46aを給紙部1の回転を規制する規制位置から給紙部1の回転を規制しない非規制位置へ移動し、電動部42によりターンテーブル部13を回動させ、検出部43により給紙部1が第2の回転位置にあることが検出されたことを以てターンテーブル部13を回動する電動部42への通電を停止し、この通電停止と同時又は通電停止後の所定のタイミングで係合部46aを非規制位置から規制位置に移動し、係合部46aを被係合部45へ係合させて給紙部1を第2の回転位置ro2に位置決め状態で停止し、図15に示すように、ヘッド部2、3に対する記録媒体Paの表裏を反転させる。
記録媒体Paの表裏を反転させると、制御部5は、図16に示すように、給紙部1及び搬送ローラ部6のモータたる動力部やヘッド部2に駆動指令を行い、第2の回転位置ro2にある給紙部1に保持される記録媒体Paをヘッド部2へ搬送しつつ記録媒体Paのうちの他方の面である裏面bに通常印刷を行い、記録媒体Paの両面に対する通常印刷を完了する。
記録媒体Paの両面に対する通常印刷が完了すると、制御部5は、図17に示すように、記録媒体Paをヘッド部2及び搬送ローラ部6から給紙部1側へ一旦退避させ、退避完了後に分岐部63の切り替えを行い(図8及び図9参照)、その後に給紙部1及び搬送ローラ部6のモータたる動力部Drやヘッド部3に駆動指令を行い、第2の回転位置ro2にある給紙部1に保持される記録媒体Paをヘッド部3へ搬送しつつ記録媒体Paのうちの一方の面である表面fに特色印刷を行う。
記録媒体Paの表面fへの特色印刷が完了すると、制御部5は、図18に示すように、記録媒体Paをヘッド部3及び搬送ローラ部6から給紙部側へ一旦退避させ、反転手段4により上記と同様に給紙部1を回転させて第1の回転位置ro1にし、ヘッド部3に対する記録媒体Paの表裏を反転させる。
記録媒体Paの表裏を反転させると、制御部5は、図19に示すように、給紙部1及び搬送ローラ部6のモータたる動力部Drやヘッド部3に駆動指令を行い、第1の回転位置ro1にある給紙部1に保持される記録媒体Paをヘッド部3へ搬送しつつ記録媒体Paのうちの他方の面である裏面bに特色印刷を行い、記録媒体Paの両面に対する通常印刷及び特色印刷を完了する。
両面印刷とは別に給紙部1への記録媒体Paの補給や交換等のメンテナンスを必要とする場合には、制御部5は、記録媒体Paをヘッド部2、3及び搬送ローラ部6から給紙部側へ退避させ、反転手段4により上記と同様に給紙部1を回転させてメンテナンスに適した第3の回転位置に停止させる。
以上のように本実施形態に係るプリンタは、印刷を行うヘッド部2、3に対して記録媒体Paを搬送する搬送路を構成する基幹路Li0及び分岐路Li1、Li2と、搬送路を構成する基幹路Li0に対して供給可能な状態で記録媒体Paを保持する給紙部1と、給紙部1を回転可能に支持する支持部41と、支持部41に対して給紙部1を回転させる電動部42と、電動部42により回転する給紙部1を所定の回転位置に位置決め状態で停止させる位置決め手段44とを有し、所定の回転位置を複数設定して所望の回転位置に給紙部1を停止させるように構成している。
このように、給紙部1を停止させる所定の回転位置を複数設定し、電動部42により回転する給紙部1を位置決め手段44により所望の回転位置に位置決め状態で停止させるように構成しているので、給紙部1と搬送路を構成する基幹路Li0との位置関係を可変とし、所望の回転位置に給紙部1を回転変位させて記録媒体Paを繰り出す位置を所望の位置に移動させ、搬送路を構成する基幹路Li0を形成する位置の選択を広げることができ、搬送路の配置制約を低減し設計自由度を高めることができる。さらに、搬送路を構成する基幹路Li0に対して記録媒体Paを繰り出す位置(例えば第1の回転位置ro1や第2の回転位置ro2)にある給紙部1に対する作業性が乏しい場合であっても、給紙部1を回転変位させて給紙部1を作業性に適した位置(例えば第3の回転位置ro3)に移動させ、搬送に適した位置に搬送路を形成しつつメンテナンス性を向上させることも可能となる。しかも、搬送路を形成する位置に選択の余地がない等の搬送路の配置の制約を無くして搬送路の配置自由度を向上させているので、例えば記録媒体Paの表裏を反転させたり、複数の搬送路を介して1又は複数のヘッド部に記録媒体を供給したりする等の記録媒体の新たな態様を実現することが可能となる。
また、本実施形態では、位置決め手段44は、給紙部1を構成するターンテーブル部13に設けられる被係合部45と、支持部41を構成するベース41bに設けられ給紙部1の回転方向と直交する方向に沿って移動することにより被係合部45に係合する係合位置又は係合位置から退避する退避位置のいずれかに移動可能な係合部46aとを有し、所定の回転位置に給紙部1があるときに係合部46aが被係合部45に係合するように被係合部45及び係合部46aの位置関係が規定されているとともに、係合部46aが被係合部45に係合することにより給紙部1の回転を禁止するように構成されているので、係合部46aを被係合部45に係合させれば、給紙部1が所定の回転位置に必ずあって給紙部1の回転が禁止され、給紙部1を所定の回転位置に正確に位置決めすることができ、給紙部1が所定の回転位置からズレて給紙部1が繰り出し方向に対して傾くことにより生ずる記録媒体Paのスキューを的確に防止することが可能となる。しかも、係合部46aは給紙部1の回転方向と直交する方向に沿って移動するので、係合部46aが被係合部45に係合したときに係合部46aが回転方向に変位することを無くして、より一層給紙部1の位置決め精度を向上させることが可能となる。
さらに、本実施形態では、被係合部45には、係合部46aを被係合部45に係合する位置である禁止面45c同士の間に案内する呼び込み部45dが設けられているので、相対的に回転動作を行っている被係合部45と係合部46aとを係合させるのは難しいものの、呼び込み部45dにより係合部46aが被係合部45と係合する位置である禁止面45c同士の間に案内されるので、給紙部1が停止する位置が所定の回転位置より多少ズレたとしても給紙部1の正確な位置決めを行うことが可能となる。しかも、停止精度に乏しいモータ等の電動部や給紙部1の回転位置を検出する回転位置センサに検出精度の低いものを用いると、位置決め精度を損なうことなく製造コストを低減させることが可能となる。
さらにまた、本実施形態では、搬送路を構成する基幹路Li0は、給紙部1の回転軸Cnに対して互いに対称な位置関係に配置された2つの回転位置にある給紙部1から記録媒体Paを供給可能に構成されているので、かかる給紙部1から供給される記録媒体Paは互いに表裏が反転したものになるので、ヘッド部に対して記録媒体Paの両面を供給し、単一のヘッド部で両面印刷を実現することが可能となる。
その他、本実施形態では、給紙部1は、支持部41に回転可能に支持される板状のターンテーブル部13を有し、電動部42は、ターンテーブル部13に設けられ回転力を出力する出力部42aと、出力部42aにより出力される回転力を支持部41に伝達する伝達部42rとを有し、伝達部42r及び位置決め手段44は、ターンテーブル部13の支持部41側に配置されているので、給紙部1を回転及び停止する駆動機構(電動部42及び位置決め手段44)からターンテーブル部13の反支持部側の空間を開放でき、開放される空間を記録媒体Paを保持する保持部11等の配置に利用して給紙部1の設計自由度を向上させることが可能となる。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、本実施形態では、給紙部1の回転を停止する回転位置として第1〜第3の回転位置(ro1、ro2、ro3)を設定しているが、図20に示すように、給紙部101を、回転軸Cnを中心に回転可能なターンテーブル部113に記録媒体Paを供給可能に取り付けて構成し、例えば90度毎に互いに異なる複数の回転位置(ro102、ro103、ro104、ro105)を設定し、各々の回転位置(ro102、ro103、ro104、ro105)に対応して複数のヘッド部(102、103、104、105)及びヘッド部に対して記録媒体Paを搬送する搬送路(Li102、Li103、Li104、Li105)をそれぞれ給紙部1の上方に設けて、給紙部101から回転位置に対応する搬送路及びヘッド部に対して記録媒体Paを供給可能に構成してもよい。従来であれば、複数の搬送路を配置するためには、多数の分岐部を設けなければならずプリンタが大型化してしまうものの、このように構成すれば、給紙部の回転軸の周りに複数の搬送路を配置して各搬送路に記録媒体を供給可能となるので、分岐部を要さずに省スペースで複数の搬送路を配置でき、プリンタの省スペース化を図りつつ、複数の搬送路を用いた種々の印刷を実現することが可能となる。
その他、本実施形態では、給紙部1を回転軸Cnを中心に回転させているが、直交座標系を定めるy軸やx軸、z軸周りに回転させてもよい。
最後に、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。