JP5597748B2 - 高強度パーティクルボードの製造方法 - Google Patents
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Description
パーティクルボードの製造は、乾燥した木質チップに吹き付け等により接着剤を塗布し、マット状に形成した後、ホットプレスに挿入して加熱及び加圧して板状に成形する方法等が採用されている。
多くのパーティクルボードは、図1に示すように、小サイズ(細粒)の木質チップを用いた表層1及び裏層2と、大サイズ(粗粒)の木質チップを用いた芯層3との三層から構成されている。
通常のパーティクルボード用の接着剤としては尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素メラミン共縮合樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート低重合物等があり、パーティクルボードの用途や、耐水性、耐久性等の必要な性能によって使い分けがされている(例えば、特許文献1参照)。
とりわけトラックボデー(架台)や輸送コンテナーの床材は、その上に重量物が積載され、さらに雨水等に曝されることもあるため、表面が硬く強靭で曲げ強度が高く、重量物を載せても余り撓まないいわゆるヤング率が高い他、耐水性、耐久性の要求性能が高い。そのため、従来は、アピトン材やクルイン材等、南洋材の中でも特に硬く強固な木材を材料とする合板が使われている。しかしながら、それらの樹種の材木は特に入手難であり、その代替材料が求められている。
しかし、木質単板を用いることなく、木質チップのみを木質材料として用いたパーティクルボード(素地パーティクルボード)の場合、現行の日本工業規格(JIS A5908)で曲げ強さによる区分のうち最も強い「18タイプ」でも縦方向・横方向の曲げ強さが18N/mm2以上(横方向の曲げヤング係数3000N/mm2以上)である。
トラックボデーや輸送コンテナーの床材としての使用に耐え得る、高い曲げ強さ及び曲げヤング係数を有するパーティクルボードを製造可能な方法は、いまだ知られていない。
また、成形工程に先立って、表層及び裏層の樹脂含浸チップを予備乾燥する予備乾燥工程を備えることにより、一層容易に効率良く本発明の実施が可能になる。
本形態例のパーティクルボードの製造方法は、少なくとも、(1)樹脂水溶液を木質チップに含浸させて樹脂含浸チップを得る含浸工程、(2)樹脂含浸チップから表層及び裏層を、芯層と合わせた三層のマットを相互に積層する工程(フォーミング)、(3)加熱及び加圧して板状に成形する成形工程を、(1)〜(3)の順で有する。なお、(1)工程で得られた樹脂含浸チップを成形前に乾燥する場合には(1)と(2)の間に予備乾燥工程を設ける。
なお、以下の説明中、「表裏層」は「表層及び裏層」の略記である。
木質チップの製造は、通常の様に行う。即ち材料は住宅解体材、合板製材その他建材製造廃材、間伐材などであり、ハンマーミルやナイフリングフレーカーなど通常のチッパー設備を使ってチップにすることができる。チップ製造時の金属等の異物除去や、チップの乾燥等は、通常の様に行う。
木質チップは所定のサイズに調整しても木材相手なので100%がコントロールされることはないので、質量換算で90%以上が規定の範囲に入っていれば実用上は問題無い。
芯層の木質チップが長さ40mm以下、厚さ3mm以下、幅5mm以下であることにより、強固ではあるが、適当な空隙を有しパーティクルボード全体の比重を下げる事ができる。
表裏層の木質チップの接着に用いる接着剤は、耐久性及び耐水性の観点から、メラミン樹脂が用いられる。これにより耐久性及び耐水性に優れたパーティクルボードを得ることができる。
しかし本発明では、表裏層用の樹脂接着剤の機能は、木質チップ間の接着だけでなく、木質チップ内部への浸透もある。その両機能を最大限発揮させるために、接着剤の粘度は一般と同程度(50〜200mPa・s)でありながら、樹脂固形分の含有率を、メラミン樹脂では70〜80質量%に高めている。
このように高濃度の接着剤樹脂を木質チップに供給することにより、接着剤の一部が木質チップ内部へ浸透しても、木質チップ間を接着する接着剤が不足することがなく、さらに、比較的水分が少ないため、ホットプレス解圧時のパンクが無い等のメリットがある。
芯層に使う接着剤樹脂は、フェノール樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤等が挙げられ、常法の様に各々単独又は混合した状態で使用する事が出来る。これにより、上述したように比較的大きな芯層用の木質チップをしっかり接着することができる。
イソシアネート系接着剤は水分を含まず、むしろ硬化する過程で水分を取り込む性質を有する。このため、芯層用に単独で用いる場合、イソシアネート系接着剤は、表裏層の接着剤樹脂の比率が通常より高く水分が多くなり熱圧時にパンク現象を生じがちな本発明の製造方法では、好適な接着剤である。
イソシアネート系接着剤をフェノール樹脂接着剤又はメラミン樹脂接着剤と混合して用いる場合には、少量のワックスエマルジョンを添加して水性配合物とすることが好ましい。
本発明では表裏層にメラミン樹脂接着剤を用いることから、芯層にもメラミン樹脂接着剤を単独で用いるか、またはメラミン樹脂接着剤とイソシアネート系接着剤と少量のワックスエマルジョンを含有する水性配合物が好ましい。
表裏層は接着剤樹脂を木質チップに含浸する含浸工程を、芯層は接着剤樹脂を木質チップに塗布する塗布工程を、それぞれ別に行う。
詳しくは後述するが、木質チップに対する樹脂固形分の量は、表裏層では木質チップの絶乾量100質量部に対して樹脂固形分を15〜80質量部、かつ芯層では木質チップの絶乾量100質量部に対して樹脂固形分を6〜16質量部とすることが好ましい。また、表裏層では木質チップの絶乾量100質量部に対して樹脂固形分を18〜70質量部、かつ芯層では木質チップの絶乾量100質量部に対して樹脂固形分を8〜12質量部とすることがより好ましい。
表裏層には、上記表裏層用の接着剤水性配合物を、樹脂含浸チップ中の樹脂固形分(含脂率)がチップ絶乾量に対し15〜80質量%の範囲内となるように使用する。これにより、十分な量の樹脂の浸透による木質チップの十分な補強及び木質チップ間の接着が充分に行われパーティクルボード表面が緻密になり、かつ耐久性・耐水性に優れた高性能なパーティクルボードを得ることができる。
表裏層用の樹脂含浸チップ中の樹脂固形分(含脂率)が80%を超えると、パーティクルボードの性能はもう余り向上しないのにコストが高くなり経済的ではなく、また、乾燥に要する設備が大きくなりすぎ実用的でない。
芯層には、上記芯層用の接着剤樹脂を、樹脂塗布チップ中の樹脂固形分がチップ絶乾量に対し6〜16質量%の範囲内となるように塗布する。これにより、表裏層用チップに比較して大きな芯層用チップをしっかりと接着することができる。
芯層にイソシアネート系接着剤を用いる場合、樹脂塗布チップ中の樹脂固形分が16質量%を超えると、パーティクルボードの性能はもう余り向上しないのにコストが高くなり経済的ではなく、ホットプレスの熱盤上にこぼれ落ちたチップが熱盤と接着し、場合によってはパーティクルボードが熱盤から取り出せなくなるトラブルになる恐れがある。
本発明では、樹脂含浸チップが多量の接着剤樹脂を含有するので、特に風力でチップを飛ばしてチップの粒径を連続的に変化させる方式のフォーミングシステムでの操業では、樹脂含浸チップが機器に付着したり、樹脂含浸チップ同士が粘結し合い、樹脂含浸チップの順調な搬送やフォーミングが困難である場合がある。そこで、本発明では、フォーミングに先立って表裏層用の樹脂含浸チップを予備乾燥する事が、機器への付着等のないスムーズなフォーミングが可能になる点から好ましい。
なお、芯層用の樹脂塗布チップは、特にイソシアネート系接着剤を用いると接着剤中に水分が含まれないので、予備乾燥をする必要はない。
木質チップと樹脂が混練された表裏層用の樹脂含浸チップ及び芯層用の樹脂塗布チップは、裏層、芯層、表層の順番で所定の厚さでマット状に成形し、三層に重ねていく。この過程をフォーミングと云い、各層をマットと云う。表層及び裏層の厚さは、熱圧後で例えば0.5〜2.0mm程度が好ましい。
熱圧後には、耳きり(トリミング)や検査等の工程は、通常の様に行う。強固に樹脂が含浸された表裏層の表面が緻密で、且つ硬いので、表面の研磨(サンダー)は不要であるが、精密な厚み調整等が必要な場合は行うこともできる。
本発明によって得られる高強度パーティクルボードは、トラックボデーや輸送コンテナーの床材等のように、その上に重量物が積載される、従来合板が使用されている用途にも好適に用いることができる。
表裏層用の木質チップとして、90%以上が長さ4mm以下、厚さ0.3mm以下、幅1mm以下のサイズの木質チップを作製した。また、表裏層用の接着剤配合物として、不揮発分が75質量%かつ粘度が100mPa・sのメラミン樹脂と市販のワックスエマルジョン(ダイヤプルーフWY−4、固形分45%、大日本色材工業(株))を混合したものを調製した。
ブレンダーを用いて上記表裏層用の木質チップに上記表裏層用の接着剤配合物を混練して、表裏層用の樹脂含浸チップを製造した。
表裏層用の樹脂含浸チップ中、チップの絶乾量100質量部に対してメラミン樹脂の樹脂固形分(縮合物の不揮発分)は20質量部、ワックスの固形分は0.5質量部の比率で配合されている。
表裏層用の樹脂含浸チップは、80℃の熱風ドライヤーで樹脂固形分に対する水分率が15%になるまで30分間乾燥した。
ブレンダーを用いて上記芯層用の木質チップに上記芯層用の接着剤配合物を混練して、芯層用の樹脂塗布チップを製造した。
芯層用の樹脂塗布チップ中、チップの絶乾量100質量部に対してメラミン樹脂の樹脂固形分(メラミン樹脂の固形分とMDIの合計)は10質量部、ワックスの固形分は1質量部の比率で配合されている。
得られたパーティクルボードの物性を評価したところ表1のようであり、高強度パーティクルボードに該当するものであった。
表裏層用の樹脂含浸チップ中、メラミン樹脂の樹脂固形分をチップの絶乾量100質量部に対して70質量部とした以外は、実施例1と同様にしてパーティクルボードを製造した(厚さ15mm、比重0.88)。
得られたパーティクルボードの物性を評価したところ表1のようであり、高強度パーティクルボードに該当するものであった。
Claims (5)
- メラミン樹脂の水溶液を木質チップに含浸して樹脂含浸チップを得る含浸工程と、前記樹脂含浸チップから形成される表層及び裏層を、芯層と合わせた三層のマットとなるように相互に積層し、加熱及び加圧して板状に成形する成形工程とを備えるパーティクルボードの製造方法であって、
前記含浸工程において、表層及び裏層の樹脂含浸チップには、樹脂固形分の含有率が70〜80質量%で樹脂粘度が50〜200mPa・sの範囲内であるメラミン樹脂の水溶液を供給し、木質チップの絶乾量100質量部に対して樹脂固形分を15〜80質量部含有する樹脂含浸チップを得ることを特徴とするパーティクルボードの製造方法。 - メラミン樹脂の水溶液を木質チップに含浸して表層及び裏層用の樹脂含浸チップを得る含浸工程と、
接着剤樹脂を木質チップに塗布して芯層用の樹脂塗布チップを得る塗布工程と、
前記含浸工程で得られた表層及び裏層用の樹脂含浸チップと前記塗布工程で得られた芯層用の樹脂塗布チップを裏層用の樹脂含浸チップ、芯層用の樹脂塗布チップ、表層用の樹脂含浸チップの順番で三層に重ね、三層のマットをフォーミングするフォーミング工程と、
前記フォーミング工程で得られた三層のマットを加熱及び加圧して板状に成形する成形工程とを備えるパーティクルボードの製造方法であって、
前記含浸工程において、木質チップに、樹脂固形分の含有率が70〜80質量%で樹脂粘度が50〜200mPa・sの範囲内であるメラミン樹脂の水溶液を供給し、木質チップの絶乾量100質量部に対して樹脂固形分を15〜80質量部含有する樹脂含浸チップを得る請求項1記載のパーティクルボードの製造方法。 - フォーミング工程に先立って、表層及び裏層の樹脂含浸チップを予備乾燥する予備乾燥工程を備え、雰囲気温度60〜100℃で含水率が5〜20%になるように表層及び裏層の樹脂含浸チップを加熱乾燥させる請求項2記載のパーティクルボードの製造方法。
- 表層及び裏層には、長さ5mm以下、厚さ1mm以下、幅2mm以下の木質チップを用い、かつ、芯層には、長さ40mm以下、厚さ3mm以下、幅5mm以下の木質チップを用いる請求項1〜3のいずれか1項記載のパーティクルボードの製造方法。
- 表層用の樹脂含浸チップの層と裏層用の樹脂含浸チップの層の厚さが加熱及び加圧後に0.5〜2.0mmである請求項1〜4のいずれか1項記載のパーティクルボードの製造方法。
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