JP2009102604A - タンニン系接着剤、それを用いた木質系複合材料およびこの木質系複合材料の製造方法 - Google Patents

タンニン系接着剤、それを用いた木質系複合材料およびこの木質系複合材料の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高強度、高耐水性であり、しかも有害な揮発性物質を発生させることがないタンニン系接着剤、該タンニン系接着剤を用いた実用強度に優れた木質系複合材料、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】タンニン系接着剤を、タンニンまたは変性タンニン及び架橋剤または硬化剤に、炭化水素系ワックス、界面活性剤及びレゾール型フェノール樹脂の中から選ばれた少なくとも1種を配合させてなるものとする。木質系複合材料を、複数の木質系成形材料が上記タンニン系接着剤によって互いに接着されているものとする。この木質系複合材料を、木質系成形材料と上記タンニン系接着剤との混和物によって木質マットを形成し、この木質マットに高温水蒸気を浸透させながら木質マットを加熱及び加圧してタンニン系接着剤を硬化させることにより得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、タンニン系接着剤、それを用いた木質系複合材料およびこの木質系複合材料の製造方法に関する。
木質系成形材料として木材を破砕した細長い木質チップを得たのち、この木質チップに接着剤を付着させ、木質チップをその長手方向に略揃えて配向させてマット状に積層して木質マットを形成し、この木質マットを加熱加圧することによって、木質系複合材料を得る方法が知られている。得られる木質系複合材料は、木質チップを配向させることによって曲げ強度が高くなる(例えば、特許文献1参照)。
上記のように木質チップが接着剤で結合されてなる木質系複合材料としては、例えば、単板積層材(LVL)、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、ハードボード等が挙げられる。
しかしながら、従来の上記木質系複合材料は、使用される木質チップが植物資源からなり再生可能な資源材料であるものの、木質チップを結合させるための接着剤には、再生可能な天然資源ではない、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、イソシアネート樹脂などの石油系材料が主原料として一般的に用いられている。したがって、得られる木質系複合材料は、循環型材料とは言えない。
このような問題を解決する方法として、例えば、使用済みの廃木材を、リサイクル使用するために破砕機で破砕されて分級された細長い木質チップと、天然成分であるタンニンを主成分とする接着剤(以下、これをタンニン系接着剤ともいう)を混和し、このタンニン系接着剤を加熱して硬化し、硬化した接着剤で木質チップ同士を結合させて再生可能な資源を原料とする天然型資源からなる木質系複合材料を得る方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この木質系複合材料には実用上十分な強度を持たせることが可能であるものの、タンニンはフェノール性水酸基が多数結合した親水性の高い構造のものであるため、接着剤として用いた場合には、かかる高親水性構造を有する接着層への水分の吸着や膨潤が起こり、接着層の強度が低下しやすいという欠点があるため、タンニン系接着剤を用いた木質系複合材料は、湿潤環境や屋外などの耐水性の要求される場合における用途の制約されるのを免れなかった。
一方、近年、住宅部材に含まれる有害な揮発性物質などを原因とするシックハウス症候群の多発が社会的問題になっているが、タンニン系接着剤は天然資源であり、従来のフェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、イソシアネート樹脂などの石油系材料よりも人体への安全性に優れた素材であるものの、架橋剤または硬化剤を併用する場合、その種類によっては有害な揮発性物質を発生させる惧れがある。
一般的に、タンニンは水溶液状態でpH4〜7程度の液性を示し、水溶液をそのまま加熱するのみで硬化するが、反応を促進させるためには、酸性下でホルムアルデヒドを混合させるのが一般的である。
そして、タンニンのこの硬化反応を利用して木質系複合材料を製造するには、原材料となる木質系成形材料、例えば木材を破砕した木質チップ等の表面に、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド系化合物を混合させた液状タンニン系接着剤を付着させて形成される木質マットを成形金型中で加熱加圧してタンニンを硬化させればよい。
しかしながら、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド系化合物は反応性が高すぎるので、可使時間が短くて取扱いにくく、可使時間を超えたものは得られる木質系複合材料の曲げ強度が不十分であったり、バラツキが出たりする惧れがあり、実用的な強度の低い場合があるという問題がある。しかも、未反応のホルムアルデヒドが残留すれば、それがシックハウス症候群の原因となり人体に有害となるという問題もある。
特開昭63−107507号公報 特許第3515099号公報
本発明の課題は、従来のタンニン系接着剤の問題点に鑑み、高強度、高耐水性であり、しかも有害な揮発性物質を発生させることがないタンニン系接着剤、該タンニン系接着剤を用いた実用強度に優れた木質系複合材料、およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、タンニン系接着剤を、変性されていてもよいタンニンと架橋剤または硬化剤に、炭化水素系ワックス、界面活性剤及びレゾール型フェノール樹脂の中から選ばれた少なくとも1種を配合させてなるものとすることにより、上記課題が達成されることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、タンニンまたは変性タンニン及び架橋剤または硬化剤に、炭化水素系ワックス、界面活性剤及びレゾール型フェノール樹脂の中から選ばれた少なくとも1種を配合させてなるタンニン系接着剤が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、タンニンまたは変性タンニンが予めアルカリ性に調整されてなることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1または2の発明において、pHが7より大きく13以下であることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、架橋剤または硬化剤が第三級アミン、メチロール基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物、アルデヒド基を有する化合物及びアミノ樹脂の中から選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、第三級アミンがヘキサメチレンテトラミンであることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第4の発明において、メチロール基を有する化合物が脂肪族化合物であることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、上記脂肪族化合物がトリスヒドロキシメチルニトロメタンであることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、炭化水素系ワックスがエマルションであることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明において、架橋剤または硬化剤の含有割合がタンニンまたは変性タンニン100質量部に対し、1〜20質量部であることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明において、炭化水素系ワックスの含有割合がタンニンまたは変性タンニン100質量部に対し、0.5〜40質量部であることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明において、界面活性剤の含有割合がタンニンまたは変性タンニン100質量部に対し、0.05〜10質量部であることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
また、本発明の第12の発明によれば、第1〜11のいずれかの発明において、レゾール型フェノール樹脂の含有割合がタンニンまたは変性タンニン100質量部に対し、1〜50質量部であることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
また、本発明の第13の発明によれば、複数の木質系成形材料が第1〜12のいずれかの発明のタンニン系接着剤によって互いに接着されていることを特徴とする木質系複合材料が提供される。
また、本発明の第14の発明によれば、第13の発明において、木質系成形材料が、木質チップであることを特徴とする木質系複合材料が提供される。
また、本発明の第15の発明によれば、第13または14の発明の木質系複合材料からなることを特徴とする構造材が提供される。
また、本発明の第16の発明によれば、木質系成形材料と第1〜12のいずれかの発明のタンニン系接着剤との混和物によって木質マットを形成し、この木質マットに高温水蒸気を浸透させながら木質マットを加熱及び加圧してタンニン系接着剤を硬化させることを特徴とする木質系複合材料の製造方法が提供される。
また、本発明の第17の発明によれば、第16の発明において、木質系成形材料に第1〜12のいずれかの発明のタンニン系接着剤をスプレー塗布することによって混和物とすることを特徴とする製造方法が提供される。
また、本発明の第18の発明によれば、第16または17の発明において、木質系成形材料が、木質チップであることを特徴とする製造方法が提供される。
本発明の接着剤によれば、接着強度および耐水性に優れ、この性向は、特にレゾール型フェノール樹脂によりタンニンの架橋構造が適度なものとなることで高められ、かつ有害な揮発性物質の発生がない。
したがって、本発明の接着剤は、木質系成形材料の接着剤として用いることで、十分な実用強度および耐水性を有し、かつ有害な揮発性物質の発生がない木質系複合材料を得ることができるという利点を有する。
また、本発明の木質系複合材料によれば、複数の木質系成形材料が、本発明の接着剤によって互いに接着され、天然資源を主原料としているので、再生可能になるとともに、タンニン系接着剤には有害な触媒などが用いられていないので、有害物、例えば揮発性物質等が発生しないという顕著な効果が奏される。
また、本発明の木質系複合材料の製法によれば、木質系成形材料と、本発明の接着剤との混和物によって木質マットを形成し、この木質マットに高温水蒸気を浸透させながら木質マットを加熱及び加圧してタンニン系接着剤を硬化させるようにしたので、木質系複合材料が厚肉であってもプレスサイクルを短くでき、生産性を向上させるという顕著な効果が奏される。
本発明の接着剤において主組成成分として用いられるタンニンは、木材からの抽出物であり、木質系成形材料との親和性が良く、適度な粘着性を有し、更に、硬化すると高強度になる。
タンニンが抽出される木材は特に限定されないが、ラジアータパインやミモザ(別称:ワットル、アカシア)、ケブラチョから採取される縮合型タンニンが好ましい。これらのタンニンは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
タンニンを抽出する樹木の樹齢は特に限定されるものではないが、例えばミモザの場合には樹齢8〜10年のものが接着剤としての性能や生産性から好ましい。生産地についても特に限定されるものではないが、例えばミモザの場合には南米やアフリカ産のものが好ましく、ケブラチョの場合には南米産のものが好ましい。
タンニンには糖などの不純物が混入していても特に問題にはならないが、高強度の木質系複合材料を得ようとする場合には、不純物は少ない方がよい。タンニンの純度は例えばStiasny Value(以下、「SV」と記す)で評価することができ、SVは好ましくは50以上、より好ましくは70以上である。
なお、上記SVは、例えば以下のようにして求めることができる。
すなわち、予め乾燥した試料(樹皮抽出物、或いは標準カテキン)を、容量25mlの丸底フラスコに約100mg秤取り、蒸留水10ml、37%ホルムアルデヒド水溶液2ml、塩酸(10規定)1mlをこの順に添加した後、フラスコを加熱し、30分間沸騰させる。加熱後直ちに、予め質量を測定したガラスフィルターで試料を一気にろ過し、熱水、メタノールで順次洗浄する。ガラスフィルターを105℃のオーブンで一晩乾燥させ、質量を測定して残渣質量を算出し、以下の式を用いて算出する。なお、値の補正のために、標準カテキンのSVも測定する。
SV=(残渣質量/試料質量)×(104.1/標準カテキンのSV)×100
タンニンは、木材から抽出したままのものを用いてもよいが、接着剤としての性能や粘度等で改質の必要がある場合には変性して改質した変性タンニンとして用いてもよい。以下、タンニンや変性タンニンを総称して(変性)タンニンということもある。
(変性)タンニンは、粉体のまま取り扱ってもよいが、取扱いやすさや接着剤に用いて得られる木質系複合材料の性能等を考慮すると水に溶解又は分散させ液状で使用することが好ましい。この場合、(変性)タンニン濃度は20質量%〜70質量%が好ましい。粘度については10,000cps以下が好ましく、木質系成形材料との混和を接着剤のスプレー塗布によって行う場合には2,000cps以下が取扱い易く好ましい。
本発明の接着剤において用いられる架橋剤または硬化剤は、(変性)タンニンと混合すること、及び必要に応じて加熱することにより硬化作用を呈するものであれば特に制限されず、このようなものとしては、例えば第三級アミン、メチロール基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物、アルデヒド基を有する化合物、アミノ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよいが、中でも第三級アミンが、それを含む本発明接着剤を用いて得られる木質系複合材料について、それを強度及び耐水性に優れたものとしうるので好ましい。
第三級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリエチルテトラミン、トリブチルアミン、ジエチレントリアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の脂肪族第三級アミン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、ジメチルアニリン等の芳香族第三級アミン等が挙げられる。
これらの第三級アミンは単独で用いても2種類以上を併用してもよいが、ヘキサメチレンテトラミンを用いるのが、後述の木質複合材料を高強度なものとすることができ、生産性にすぐれ、有害な揮発性物質が発生せず、さらに材料コストが安価であるので、好ましい。
ヘキサメチレンテトラミンは粉体状のものでもペレット状のものでもどちらでもよい。
メチロール基を有する化合物は、メチロール基を有する脂肪族化合物、メチロール基を有する脂環式化合物、メチロール基を有する芳香族化合物に大別されるが、タンニンとの反応性の高さからメチロール基を有する脂肪族化合物が好ましい。
メチロール基を有する脂肪族化合物としては、多官能性化合物が好ましく、例えばトリスヒドロキシメチルアミノメタン(2−ヒドロキシメチル−2−アミノ−1,3プロパンジオール)、ジヒドロキシメチルアミノメタン(2−メチル−2−アミノ−1,3プロパンジオール)、トリスヒドロキシメチルニトロメタン(2−ヒドロキシメチル−2−ニトロ−1,3プロパンジオール)、ジヒドロキシメチルニトロメタン(2−メチル−2−ニトロ−1,3プロパンジオール)等が挙げられる。
これらのメチロール基を有する脂肪族化合物は単独で用いても2種類以上を併用してもよいが、トリスヒドロキシメチルニトロメタンを用いるのが、後述の木質複合材料を高強度なものとすることができ、生産性にすぐれ、有害な揮発性物質が発生せず、さらに材料コストが安価であるので、好ましい。
トリスヒドロキシメチルニトロメタンは粉体状のものでもペレット状のものでもどちらでもよい。
エポキシ基を有する化合物としては、多官能性化合物が好ましく、例えば、グリセロールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
これらのエポキシ基を有する化合物は単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
イソシアネート基を有する化合物としては、多官能性化合物が好ましく、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、αジメチルベンジルイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
これらのイソシアネート基を有する化合物は単独で用いても2種類以上を併用してもよいが、ポリメリックMDIを用いるのが、後述の木質複合材料を高強度なものとすることができ、生産性にすぐれ、有害な揮発性物質が発生せず、さらに材料コストが安価であるので、好ましい。
アルデヒド基を有する化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、アジプアルデヒド、マレアルデヒド、フマルアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。
これらのアルデヒド基を有する化合物は単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
アミノ樹脂としては、例えば、ユリア樹脂(尿素樹脂)、メラミン樹脂、メラミン・ユリア共縮合樹脂等が挙げられる。
これらのアミノ樹脂は単独で用いても2種類以上を併用してもよい
本発明の接着剤において、架橋剤または硬化剤の含有割合は、(変性)タンニン100質量部に対し、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは3〜10質量部である。この割合が1質量部未満では(変性)タンニンの硬化が進行しにくく実用上十分な接着強度が発現しない惧れがあるし、また、20質量部を超えても硬化反応が早すぎてプレス機投入前に硬化してしまう惧れがあり、また経済的でなくなることとなる。
本発明の接着剤においては、さらに炭化水素系ワックス、界面活性剤及びレゾール型フェノール樹脂の中から選ばれた少なくとも1種が配合され、中でも界面活性剤、レゾール型フェノール樹脂またはそれら両方が配合されるのがよい。
本発明の接着剤において炭化水素系ワックスを用いる場合、炭化水素系ワックスは、炭化水素を主成分とするワックスであればよく、例えば石油ワックス、植物ワックス、動物ワックス、鉱物ワックス、合成ワックスなどが挙げられ、好ましくは、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックスや、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス等の合成ワックスが挙げられる。
炭化水素系ワックスは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
炭化水素系ワックスは、防水性が高く、タンニン系接着剤の耐水性を向上させ、該接着剤を被着させて形成される接着層への水分の吸着や膨潤を大幅に低減することが可能になり、接着層の強度低下を抑制することが可能になり、その結果、かかる接着剤を用いた木質系複合材料の耐水性が大幅に向上し、高い耐水性が要求される広範な用途への展開が可能になる。
また、炭化水素系ワックスは、(変性)タンニンと架橋剤または硬化剤との反応を阻害しないので好ましい。炭化水素系ワックス以外の極性基を有するワックスの場合には、極性基の種類によっては(変性)タンニンと架橋剤または硬化剤の反応を阻害して十分な接着強度が発現しない場合がある。
(変性)タンニンを水溶液や水分散液にして用いる場合には炭化水素系ワックスはエマルションとして用いるのが好ましい。エマルションとすることで(変性)タンニンとの分散性が良くなり、その結果、接着剤の耐水性が向上する。
本発明の接着剤において、炭化水素系ワックスの含有割合は、(変性)タンニン100質量部に対して、好ましくは0.5〜40質量部、より好ましくは1.0〜10質量部である。この割合が少なすぎると実用上充分な耐水性が発現しない惧れがあり、また、多すぎても接着剤に占める(変性)タンニンの比率が下がってしまい、十分な硬化強度が得られにくくなる惧れがあるので好ましくない。
本発明の接着剤において界面活性剤を用いる場合、界面活性剤は、タンニン系接着剤の被着体への浸透力を高めると共に、表面張力を低下させて被着体との濡れ性を高める作用を示す。
一般的に接着剤に界面活性剤を添加することは、被着体と接着剤との接着界面に界面活性剤が作用し接着力の低下を引き起こす原因となるので接着剤の処方としては好ましくない。一方、タンニン系接着剤は粘度が高く、また凝集力も高いため、そのままでは被着体との濡れ性が良くなく、接着強度を十分に発現できない原因の一つとなっている。つまり、タンニン系接着剤の被着体との接着メカニズムは、被着体との化学結合によるものではなく、被着体の表面の凹凸や間隙にタンニン系接着剤が入り込んで硬化し、タンニン系接着剤の強い凝集力によるアンカー効果によって接着力が発現するものである。よって、タンニン系接着剤においては被着体との濡れ性が接着強度に与える影響が大きく、濡れ性を改善することが接着強度向上に大きく寄与する。
本発明では、通常接着剤に添加することがない界面活性剤をあえて添加することで、タンニン系接着剤の濡れ性を改善し接着強度向上に結びつけた。特に、被着体が木材の場合には、タンニン系接着剤は木材との濡れ性が極端に悪くて弾いてしまい均一に塗布できないことがあるが、界面活性剤を添加することによって木材表面との濡れ性が大幅に改善され、均一、且つ適度に木材内部まで浸透した接着界面ができ、結果として接着強度が向上する。
界面活性剤の種類は特に限定されるものではなく、被着体への湿潤、浸透作用を高める効果があるものであればよい。このような界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。好ましい界面活性剤の種類はアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤であり、特にアニオン界面活性剤はタンニン系接着剤の濡れ性の改善効果が大きく、接着強度の向上効果も大きい。
界面活性剤は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
本発明の接着剤において界面活性剤を用いる場合、界面活性剤の含有割合は、(変性)タンニン100質量部に対し、0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。この割合が0.05質量部未満ではタンニン系接着剤の濡れ性改善効果が小さくて実用上十分な接着強度が発現しない惧れがあるし、また、10質量部を超えると逆に接着強度を低下させてしまう惧れがあり、また経済的でない。
本発明の接着剤においてレゾール型フェノール樹脂を用いる場合、レゾール型フェノール樹脂は上記架橋剤または硬化剤ともどもタンニンを架橋・硬化するための硬化剤として作用する。レゾール型フェノール樹脂と架橋剤または硬化剤を併用することでタンニン系接着剤の架橋構造(例えば、分子間距離、架橋密度)が適度なものとなり、その結果タンニン系接着剤の強度や耐水性が向上する。
上記架橋剤または硬化剤(中でも第三級アミン、メチロール基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物、アルデヒド基を有する化合物、アミノ樹脂)を単独で用いた場合には、タンニン分子の立体障害が大きいために反応が最後まで進みにくく、残留モノマーが残ったり、架橋体が脆くなりやすく、接着剤として十分な強度と耐水性が発現しない場合がある。また、硬化剤としてレゾール型フェノール樹脂を単独で用いた場合には、架橋密度が十分に上がらず、硬い硬化体となりにくく、接着剤として十分な強度と耐水性が発現しない。レゾール型フェノール樹脂と、上記架橋剤または硬化剤(中でも第三級アミン、メチロール基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物、アルデヒド基を有する化合物、アミノ樹脂)とを併用することで初めて、単独使用における欠点を補完し、接着剤として適度な架橋構造となり、タンニン系接着剤の強度や耐水性が向上する。その結果、タンニン系接着剤で木質材料を接着させて得られる木質系複合材料をより高強度なものとすることができ、生産性にすぐれ、有害な揮発性物質が発生せず、さらに材料コストが安価な木質系複合材料とすることができる。
フェノール樹脂はノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂に大別され、その合成条件と化学的性質が異なる。本発明ではレゾール型フェノール樹脂を用いることで大きな効果が得られる。
レゾール型フェノール樹脂は一般的に、フェノールとホルムアルデヒドを、フェノールに対するホルムアルデヒドのモル比F/Pを1〜3の割合にして、塩基性の触媒下で反応させて製造され、触媒の種類、量、反応温度、反応時間、溶剤の種類などで用途に応じた処方がなされている。
本発明に用いられるレゾール型フェノール樹脂は特に特殊なものである必要はなく、一般的に紙含浸用や木材加工用に用いられているものであればよく、このようなものとしては、例えばJIS A 5908(パーチクルボード)に記載されているフェノール樹脂が挙げられる。レゾール型フェノール樹脂の分子量は特に限定されるものではないが、300〜1000程度が好ましい。
レゾール型フェノール樹脂は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
本発明の接着剤においてレゾール型フェノール樹脂を用いる場合、レゾール型フェノール樹脂の含有割合は、(変性)タンニン100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは5〜25質量部である。この割合が少なすぎるとタンニンの硬化が進行しにくく実用上十分な接着強度が発現しない惧れがあり、また、多すぎても接着剤に占めるタンニンの比率が下がってしまい、十分な硬化強度が得られにくくなり、また硬化反応が早すぎてプレス機投入前に硬化してしまう惧れがあるとともに、経済的でなくなる上に、接着剤の粘着性が高くなりすぎるために木質系成形材料との混和物が製造ラインに付着し、ライントラブルの原因になったり清掃頻度が高くなるので好ましくない。
本発明の接着剤において、(変性)タンニンと、架橋剤または硬化剤と、炭化水素系ワックス、界面活性剤及びレゾール型フェノール樹脂の中から選ばれた少なくとも1種との混合順序は特に限定されず、(変性)タンニンと架橋剤または硬化剤を混合した後に炭化水素系ワックス、界面活性剤及びレゾール型フェノール樹脂の中から選ばれた少なくとも1種を混合してもよいし、逆に、(変性)タンニンと炭化水素系ワックス、界面活性剤及びレゾール型フェノール樹脂の中から選ばれた少なくとも1種を混合した後に架橋剤または硬化剤を混合してもよいし、また、架橋剤または硬化剤と炭化水素系ワックス、界面活性剤及びレゾール型フェノール樹脂の中から選ばれた少なくとも1種を混合したものを、(変性)タンニンに混合してもよい。
本発明のタンニン系接着剤として好ましくは、(変性)タンニンまたは、アルカリ性に調整されていてもよい(変性)タンニン水溶液又は水分散液に、架橋剤または硬化剤と、炭化水素系ワックス、界面活性剤及びレゾール型フェノール樹脂の中から選ばれた少なくとも1種との組合せを含む水性液を配合してなるものが挙げられる。上記水性液の配合は、混和によるのがよく、この場合の例として、アルカリ性に調整されていてもよい(変性)タンニン水溶液に、架橋剤または硬化剤の水溶液(好ましくは第三級アミン水溶液)を混和した後、炭化水素系ワックス、界面活性剤及びレゾール型フェノール樹脂の中から選ばれた少なくとも1種を含む水溶液を混和してなるものが挙げられる。アルカリ性に調整されていてもよい(変性)タンニン水溶液又は水分散液として、アルカリ性に調整されたものを用いる場合には、その調整は(変性)タンニン水溶液又は水分散液に、アルカリ性水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液等を混和することによればよい。
本発明の接着剤は、pHがアルカリ性であるのがよく、さらにはpHが7より大きく13以下、中でも7より大きく12以下であるのが好ましい。
タンニンの水溶液は通常pH4〜7程度であるが、タンニン水溶液は、pHを調整することでタンニン系接着剤の反応性や物性を調整することができる。
本発明の接着剤においてpHをアルカリ性にすることによって、接着剤の反応速度を適度に遅延させることができ、接着剤の取り扱いがしやすくなり、また、接着剤を木質系成形材料に供して得られる木質複合材料について、その生産性と性能の向上に資するものとなる。これは、例えば、接着剤のpHが酸性の場合には、反応が早すぎてプレス機投入前に硬化してしまうことがあるのに対し、pHがアルカリ性であることから適度な反応速度となるために、接着剤配合後、プレス機に投入するまでには接着剤の硬化は起こらず、プレス機で加熱加圧した時に初めて硬化することに如実に示される。
また、接着剤のpHが酸性の場合には、接着剤を加熱硬化させる時に第三級アミンの過剰な分解が起こり有害な揮発性物質が発生する惧れがあるが、pHをアルカリ性にすることによって、接着剤を加熱硬化させる時に第三級アミンの過剰な分解が抑えられるので有害な揮発性物質が発生しにくくなる。また、レゾール型フェノール樹脂を用いる場合、pHが酸性の場合にはレゾール型フェノール樹脂の溶解性が悪くなり、(変性)タンニン水溶液又は水分散液と均一に混ざらずに分離してしまうことがあるが、pHをアルカリ性にすることによって分離することなく均一に混合することができる。
また、炭化水素系ワックスを用いる場合、pHをアルカリ性にすることで炭化水素系ワックスの反応性が向上し、タンニンとの架橋反応が効率よく進行し、その結果、タンニン系接着剤の強度や耐水性が向上し、しかもプレス時における木質系成形材料中のヘミセルロースの加水分解、ひいてはそれによる木質系成形材料の軟化が更に促進される。この軟化作用によって、低いプレス圧力でも木質チップの圧密が可能となり、製品の厚さ方向の密度を均一にすることができ、耐水性が良くなり、さらに、プレス時の圧力を下げることができるので好ましい。更にその結果として強度や耐水性などの製品性能が良くなる。
もっとも、pHが13より大きくなり、アルカリ性が強くなりすぎると、取り扱いに注意する必要があるし、また、木材成分(例えば、ヘミセルロース)が軟化を通り越して一部分解して変性し、木質複合材料が黒く着色する惧れがあるので好ましくない。
タンニンが水溶液として供される場合、そのpHは架橋剤または硬化剤と混合する前に予め調整しておくことが好ましい。pHを調整するアルカリについては特に限定されないが、好ましくは水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが挙げられる。
また、本発明の接着剤は、必要に応じ、所期の目的を損なわない範囲で、この種接着剤に通常用いられる各種添加剤を含有させてもよい。この添加剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルエマルション、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリルエマルション等の水溶性高分子;トルエン、キシレン、メタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等の有機溶剤;フタル酸エステル等の可塑剤;造膜剤;クレー、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、マイカ、ケイ酸粉末等の体質顔料;小麦粉、コーンスターチ、木粉、ヤシ殻粉等の充填剤または増量剤;酸化チタン等の着色顔料;染料;増粘剤;粘性改質剤;分散剤;乳化剤;尿素等の湿潤剤;消泡剤;凍結防止剤;防腐剤;防かび剤;防虫剤;防錆剤;その他改質のための試薬等を挙げることができる。さらに、本発明の接着剤には、強度の補強、粘性、機械的特性等を改善するために、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等やそのプレポリマー、そして澱粉、キトサン、リグニン、レゾルシノール等を含有させてもよい。
本発明の接着剤は、木材チップ、ベニア等の木質材料を相互に接着して、木質パネル等の木質系複合材料を製造する用途に供することができ、揮発性物質の低減された木質系複合材料を得ることができる。前記木質系複合材料としては、例えばインシュレーションボード、パーティクルボード、ハードボード、配向性ボード(OSB)、ウェハーボード、中密度繊維板(MDF)等のいわゆる木質ボード類、合板、単板積層材(LVL)、集成材、突き板化粧板、構造材等を挙げることができ、特に構造材、例えば柱、梁、土台、根太、大引、桁、母屋、垂木、棟木、筋交い、火打などに適している。
本発明の木質系複合材料は、複数の木質系成形材料が上記タンニン系接着剤によって互いに接着されていることで特徴付けられるものである。
本発明の木質系複合材料は、木質系成形材料と上記タンニン系接着剤との混和物によって木質マットを形成し、この木質マットに高温水蒸気を浸透させながら木質マットを加熱及び加圧してタンニン系接着剤を硬化させることによって製造することができる。
木質系成形材料としては、特に限定されないが、木質チップが好ましい。
上記木質チップの形状については特に限定されず、例えば、ブロック状、平板状、ストランド状、フレーク状、チップ、木粉、ファイバーなどが挙げられる。
木質系成形材料の原料材の樹種としては、スギ、ヒノキ、マツ、スプルース、ファーなどの針葉樹類や、シラカバ、アピトン、センゴンラウト、アスペンなどの広葉樹類が挙げられるが、これらの樹木だけでなく竹、コウリャンといった植物材料をも含めることができる。
原料材の形態としては、上記樹種の丸太、間伐材等の生材料、工場や住宅建築現場で発生する端材、部材輸送後に廃棄される廃パレット材、建築解体時に発生する解体廃材等が挙げられる。特に、解体廃材、廃パレット材、間伐材、製材時に発生する端材、燃料や製紙用原料として使用される木質材料等のリサイクル材が好ましい。
上記原料材を木質チップに加工する方法としては、ハンマーミル、表面に刃物のついたロールを回転させて木材を破砕する一軸破砕機、回転刃がかみ合った構造の二軸もしくは多軸破砕機等の破砕機が使用されるが、ベニア加工をしたものを割り箸状に切断してスチックにするロータリーカッター、丸太などを回転刃で切削してストランドにするフレーカー等も使用できる。特に原料としてリサイクル材料を使用する場合、異物が混入しやすいので回転刃の耐久性を考慮して、破砕機が好ましい。
上記の方法で得られた木質チップはサイズのバラツキがあるので、分級工程によって所定のサイズに揃えるのが好ましい。
この際の分級方法としては、ローラースクリーン方式、振動メッシュ方式、風選方式等があり、必要に応じて使い分ければよい。
上記木質チップの大きさは特に限定されないが、強度・弾性率が必要な場合には長さを20mm以上150mm以下とするのが好ましい。長さが短すぎると製品の強度・弾性率が低くなってしまうし、また、長すぎても強度ばらつきが大きくなってしまう惧れがある。
また、木質系成形材料は、予め含水率を一定範囲に調整しておくことが好ましい。すなわち、含水率を一定にすることで生産時の成形品の品質バラツキがなくなる。
木質系成形材料の含水率は、0〜14質量%に調整することが好ましく、さらにタンニン系接着剤を水溶液として使用する場合には0〜10質量%に調整することが好ましい。タンニン系接着剤を水溶液として使用する場合、含水率が10質量%を超えると製造直後の木質複合材料の含水率が高くなってしまい、出荷するまでに長期間の養生を必要とする惧れがある。
含水率が調整された木質系成形材料は、上記接着剤と混和されるが、接着剤の混和量は、木質系成形材料の密度、形状、表面状態にもよるが、通常、木質系成形材料の質量に対して、タンニンの固形分で換算して1〜20質量%とすることが好ましい。
上記木質系成形材料と接着剤との混和手段としては、木質系成形材料と接着剤をヘンシェルミキサー(ヘンシェル社製、高速混合機)のような高速ミキサーに投入して混和して混和物とする方法が挙げられ、また、接着剤が液体の場合には、例えばコンベア上やドラムブレンダー内等で木質系成形材料に対し、スプレー等の塗布手段を用いることにより、木質系成形材料の表面に接着剤を付着させた混和物とする。
このようにして得られた混和物を積層して加熱及び加圧すれば、均一で安定した強度の木質系複合材料が得られる。木質系成形材料が板材やブロック状の部材の場合は、刷毛塗りやローラー塗りによって混合することもできる。
上記木質系成形材料と接着剤との混和物は、木質系成形材料が積層された木質マットに形成される。具体的には、接着剤が付着した木質系成形材料即ち混和物が成形金型の中に投入されて木質マットにされる。なお、木質系成形材料を一方向に配向させる必要がある場合には、一定間隔に分割されたフォーミング型や、オリエンテッドストランドボード(OSB)等の製造で用いられるディスクオリエンター等の配向積層装置が用いられる。
そして、上記木質マットは加熱しながらプレス成形することで、接着剤が硬化し木質系複合材料となる。
本発明にかかる木質系複合材料の製造方法は、上記のようにして木質マットを形成し、この木質マットに高温水蒸気を浸透させながら木質マットを加熱及び加圧してタンニン系接着剤を硬化させることを特徴としている。
すなわち、木質マットの内部に高温水蒸気を浸透させながら加熱及び加圧するプレス装置、例えば一般的な蒸気プレス装置の加圧盤の間に配置して加圧及び加熱成形することが好ましい。加熱と加圧とは同時に行ってもよいし、加圧をした後に加熱をしてもよいし、加熱した後に加圧してもよい。高温水蒸気を木質マットの内部に浸透させる方法としては、特に限定されないが、高温水蒸気を木質マットに噴射する方法が一般的である。噴射は、木質マットが蒸気プレス機の加圧盤の間に配置されている間であれば、どのタイミングで噴射してもよい。加熱温度は100℃〜250℃が好ましく、それゆえ高温水蒸気の温度は100℃〜250℃が好ましい。加熱温度が100℃未満の場合には、タンニン系接着剤の硬化が十分に進まず、木質系複合材料の性能が十分に発現しない。また、木質マットが厚い(おおよそ40mm以上)場合には、高温水蒸気を使用しない通常のプレス機ではマットの中心まで熱が伝わるのに長時間を必要とする為、生産性が悪くなってしまうが、高圧水蒸気を浸透させることで、短時間でタンニン系接着剤の硬化を十分に進めることが出来、結果として木質系複合材料の性能を十分なものとすることが出来る。つまり、硬化に高い温度を必要とするタンニン系接着剤は、高圧水蒸気を浸透させる硬化方法が記分けて効果的な方法であるといえる。また、加圧板による加圧圧力は、1〜10MPaが好ましい。また、加熱・加圧処理は、接着剤が硬化する時間だけ行えばよい。
以下、実施例により比較例と対比させながら本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
木質系複合材料を、以下の製造プロセスで成形した。
木質系成形材料として、木材廃棄物を一軸破砕機にて破砕したボード用の木質チップ(木材廃棄物処理業者より購入したもの。)を、ローラースクリーン方式であるウエーブローラースクリーン装置(たいへい社製)を用いて、厚さ又は幅1mm〜8mmの木質チップに分級した。木質チップは含水率6質量%となるように調整した。
タンニンとしては、SV82のミモザタンニンを使用し、タンニン系接着剤を以下のようにして調製した。
まず、タンニンの粉体を約40℃の温水に濃度40質量%になるように溶解させた。その後、濃度50質量%の水酸化ナトリウム水溶液でpH10に調整した。この溶液に、ヘキサメチレンテトラミンの40質量%水溶液を、タンニン100質量部に対してヘキサメチレンテトラミンが10質量部になるように配合した。さらに炭化水素系ワックス水溶液(中京油脂社製、商品名:セロゾールM−201)をタンニン100質量部に対して固形分が3質量部になるように配合し、接着剤を調製した。
木質チップとタンニン系接着剤とを、前者100質量部に対して後者(溶液ベース)12質量部になるように計量するとともに、木質チップをドラムブレンダーに投入した状態でタンニン系接着剤を噴霧して木質チップと接着剤とを混和し、木質チップ表面にタンニン系接着剤が付着した混和物を得た。次にこの混和物をOSLフォーミングマシーン(たいへい社製)に投入し、フォーミング金型(縦2000mm、横500mm、高さ100mm)に投入した。フォーミング型内は金属製の仕切り板(厚み2mm)を用いて、50mm間隔に10等分したものを用い、木質チップを長さ方向に略揃えて配向積層し、木質マットとした。木質マットの厚さは約100mmとした。
次に、フォーミング型、仕切り板を脱型し、木質マットを蒸気プレス機(川崎油工社製、300トンプレス機)の加圧盤の間に配置した。木質マット配置後、0.9MPa、180℃の高温水蒸気を1分間噴射し、その後木質マットの厚さが20mmになるように加圧盤を閉じ、温度180℃で5分間保持して木質系複合材料を得た。
上記木質系複合材料からサンプルを切り出し、四点曲げ試験(常態及び煮沸2回処理)(建築基準法 告示1446号試験法)による曲げ強度、吸水厚さ膨張率(JIS K 5908)、ホルムアルデヒド放散量(JIS K 5908)を測定した。
実施例2
炭化水素系ワックスの配合量を、タンニン100質量部に対して40質量部(固形分として)に変えたこと以外は実施例1と同様にして木質系複合材料を得、曲げ強度、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
実施例3
木質チップをドラムブレンダーに投入し、実施例1と同様の炭化水素系ワックス水溶液を所定量噴霧した後、実施例1と同様に調製されたタンニンとヘキサメチレンテトラミンの混合水溶液を噴霧して混和させたこと以外は実施例1と同様にして木質系複合材料を得、曲げ強度、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
実施例4
高温水蒸気を木質積層マットに噴射せず、加圧盤を加熱して加圧と加熱とを行うプレス機を用い、20分間プレスした以外は実施例1と同様にして木質系複合材料を得、曲げ強度、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
比較例1
炭化水素系ワックスを添加しないこと以外は実施例1と同様にして木質系複合材料を得、曲げ強度、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
比較例2
炭化水素系ワックスに代えてワックスとしてステアリン酸亜鉛(中京油脂社製、商品名:ハイドリンE−366)を用いたこと以外は実施例1と同様にして木質系複合材料を得、曲げ強度、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
比較例3
ヘキサメチレンテトラミンに代えてホルマリン37質量%水溶液を用い、これをタンニン100質量部に対してホルムアルデヒド10質量部になるように配合したものを接着剤とした以外は実施例1と同様にして木質系複合材料を得、曲げ強度、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
上記実施例および比較例の測定結果を表1に示す。
Figure 2009102604
実施例5
炭化水素系ワックス水溶液に代えてアニオン界面活性剤(三洋化成工業社製、商品名:サンモリンOT−70)を用い、これをタンニン100質量部に対して1質量部になるように配合したこと以外は実施例1と同様にして接着剤を調製し、木質系複合材料を得、曲げ強度(常態)、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
また、接着剤と木材(カバ材柾目板のシート)との接触角(JIS K 2396)を測定した。
実施例6
界面活性剤を、非イオン界面活性剤(三洋化成工業社製、商品名:サンモリン11)に変えたこと以外は実施例5と同様にして接着剤を調製し、木質系複合材料を得、曲げ強度(常態)、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量、接触角を測定した。
実施例7
界面活性剤の添加量をタンニン100質量部に対して12質量部になるように配合したこと以外は実施例5と同様にして接着剤を調製し、木質系複合材料を得、曲げ強度(常態)、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量、接触角を測定した。
比較例4
界面活性剤を添加しないこと以外は実施例5と同様にして接着剤を調製し、木質系複合材料を得、曲げ強度(常態)、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量、接触角を測定した。
上記各実施例および比較例の測定結果を表2に示す。
Figure 2009102604
実施例8
木質系複合材料を、以下の製造プロセスで成形した。
木質系成形材料として、木材廃棄物を一軸破砕機にて破砕したボード用の木質チップ(木材廃棄物処理業者より購入したもの。)を、ローラースクリーン方式であるウエーブローラースクリーン装置(たいへい社製)を用いて、厚さ又は幅1mm〜8mmの木質チップに分級した。木質チップは含水率6質量%となるように調整した。
タンニンとしては、SV82のミモザタンニンを使用し、タンニン系接着剤を以下のようにして調整した。
まず、タンニンの粉体を約40℃の温水に濃度40質量%になるように溶解させた。その後、濃度50質量%の水酸化ナトリウム水溶液でpH10に調整した。この溶液に、ヘキサメチレンテトラミンの40質量%水溶液を、タンニン100質量部に対してヘキサメチレンテトラミンが10質量部になるように配合した。さらに、硬化剤としてレゾール型フェノール樹脂水溶液(株式会社J−ケミカル試作品、pH=10.7、分子量360、比重1.17、不揮発分43%)をタンニン100質量部に対してレゾール型フェノール樹脂が10質量部になるように配合し、接着剤を調製した。
木質チップとタンニン系接着剤とを、前者100質量部に対して後者(溶液ベース)12質量部になるように計量するとともに、木質チップをドラムブレンダーに投入した状態でタンニン系接着剤を噴霧して木質チップと接着剤とを混和し、木質チップ表面にタンニン系接着剤が付着した混和物を得た。次にこの混和物をOSLフォーミングマシーン(たいへい社製)に投入し、フォーミング金型(縦2000mm、横500mm、高さ100mm)に投入した。フォーミング型内は金属製の仕切り板(厚み2mm)を用いて、50mm間隔に10等分したものを用い、木質チップを長さ方向に略揃えて配向積層し、木質マットとした。木質マットの厚さは約100mmとした。
次に、フォーミング型、仕切り板を脱型し、木質マットを蒸気プレス機(川崎油工社製、300トンプレス機)の加圧盤の間に配置した。木質マット配置後、0.9MPa、180℃の高温水蒸気を1分間噴射し、その後木質マットの厚さが20mmになるように加圧盤を閉じ、温度180℃で5分間保持して木質系複合材料を得た。
上記木質系複合材料からサンプルを切り出し、四点曲げ試験(常態及び煮沸2回処理)(建築基準法 告示1446号試験法)による曲げ強度、吸水厚さ膨張率(JIS K 5908)、ホルムアルデヒド放散量(JIS K 5908)を測定した。
実施例9
レゾール型フェノール樹脂の配合量を、タンニン100質量部に対して60質量部に変えた以外は実施例8と同様にして接着剤を調製し、木質系複合材料を得、曲げ強度、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
実施例10
ヘキサメチレンテトラミンに代えてトリスヒドロキシメチルニトロメタンを用いたこと以外は実施例8と同様にして接着剤を調製し、木質系複合材料を得、曲げ強度、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
実施例11
高温水蒸気を木質積層マットに噴射せず、加圧盤を加熱して加圧と加熱とを行うプレス機を用い、20分間プレスした以外は実施例8と同様にして木質系複合材料を得、曲げ強度、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
実施例12
さらに、アニオン界面活性剤(三洋化成工業社製、商品名:サンモリンOT−70)を用いたこと以外は実施例8と同様にして接着剤を調製し、木質系複合材料を得、曲げ強度、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
実施例13
さらに、炭化水素系ワックス水溶液(中京油脂社製、商品名:セロゾールM−201)をタンニン100質量部に対して固形分が3質量部になるように配合したこと以外は実施例12と同様にして接着剤を調製し、木質系複合材料を得、曲げ強度、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
比較例5
レゾール型フェノール樹脂を添加しないこと以外は実施例8と同様にして接着剤を調製し、木質系複合材料を得、曲げ強度、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
比較例6
ヘキサメチレンテトラミンを添加しないこと以外は実施例8と同様にして接着剤を調製し、木質系複合材料を得、曲げ強度、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
比較例7
レゾール型フェノール樹脂を添加しないこと以外は実施例10と同様にして木質系複合材料を得、曲げ強度、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
比較例8
硬化剤としてのヘキサメチレンテトラミンとレゾール型フェノール樹脂に代えてホルマリン(ホルムアルデヒド37質量%水溶液)を用い、これをタンニン100質量部に対して10質量部配合し、接着剤を調製したこと以外は実施例8と同様にして木質系複合材料を得、曲げ強度、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
これら実施例8〜13及び比較例5〜8の曲げ強度、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量の測定結果を表3に示す。
なお、実施例10において、トリスヒドロキシメチルニトロメタンに代えて、グリセロールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ユリア樹脂又はメラミン樹脂をそれぞれ用いても、実施例10の場合と同様の結果が得られた。
Figure 2009102604
表3において、ヘキサミンはヘキサメチレンテトラミンの別称であり、THMNMはトリスヒドロキシメチルニトロメタンの略号である。
これら表1〜3の結果より、比較例では接着強度および/または耐水性が低かったり、或いはホルムアルデヒドが放散したりするのに対し、実施例ではホルムアルデヒド未使用によりその放散がないことはもちろん、接着強度および耐水性に優れていることが分かる。
本発明の接着剤は、接着強度および耐水性に優れ、かつ有害な揮発性物質の発生がないので、木質系成形材料の接着剤として用いることで、十分な実用強度を有し、かつ有害な揮発性物質の発生がない木質系複合材料を得ることができるし、また、本発明の木質系複合材料によれば、複数の木質系成形材料が、本発明の接着剤によって互いに接着され、天然資源を主原料としているので、再生可能になるとともに、タンニン系接着剤には有害な触媒などが用いられていないので、有害物、例えば揮発性物質等が発生しないし、また、本発明の木質系複合材料の製法によれば、木質系成形材料と、本発明の接着剤との混和物によって木質マットを形成し、この木質マットに高温水蒸気を浸透させながら木質マットを加熱及び加圧してタンニン系接着剤を硬化させるため、木質系複合材料が厚肉であってもプレスサイクルを短かくでき、生産性を向上させうるので、産業上大いに有用である。

Claims (18)

  1. タンニンまたは変性タンニン及び架橋剤または硬化剤に、炭化水素系ワックス、界面活性剤及びレゾール型フェノール樹脂の中から選ばれた少なくとも1種を配合させてなるタンニン系接着剤。
  2. タンニンまたは変性タンニンが予めアルカリ性に調整されてなることを特徴とするタンニン系接着剤。
  3. pHが7より大きく13以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のタンニン系接着剤。
  4. 架橋剤または硬化剤が第三級アミン、メチロール基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物、アルデヒド基を有する化合物及びアミノ樹脂の中から選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタンニン系接着剤。
  5. 第三級アミンがヘキサメチレンテトラミンであることを特徴とする請求項4に記載のタンニン系接着剤。
  6. メチロール基を有する化合物が脂肪族化合物であることを特徴とする請求項4に記載のタンニン系接着剤。
  7. 上記脂肪族化合物がトリスヒドロキシメチルニトロメタンであることを特徴とする請求項6に記載のタンニン系接着剤。
  8. 炭化水素系ワックスがエマルションであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のタンニン系接着剤。
  9. 架橋剤または硬化剤の含有割合がタンニンまたは変性タンニン100質量部に対し、1〜20質量部であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のタンニン系接着剤。
  10. 炭化水素系ワックスの含有割合がタンニンまたは変性タンニン100質量部に対し、0.5〜40質量部であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のタンニン系接着剤。
  11. 界面活性剤の含有割合がタンニンまたは変性タンニン100質量部に対し、0.05〜10質量部であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のタンニン系接着剤。
  12. レゾール型フェノール樹脂の含有割合がタンニンまたは変性タンニン100質量部に対し、1〜50質量部であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のタンニン系接着剤。
  13. 複数の木質系成形材料が請求項1〜12のいずれかに記載のタンニン系接着剤によって互いに接着されていることを特徴とする木質系複合材料。
  14. 木質系成形材料が、木質チップであることを特徴とする請求項13に記載の木質系複合材料。
  15. 請求項13または14に記載の木質系複合材料からなることを特徴とする構造材。
  16. 木質系成形材料と請求項1〜12のいずれかに記載のタンニン系接着剤との混和物によって木質マットを形成し、この木質マットに高温水蒸気を浸透させながら木質マットを加熱及び加圧してタンニン系接着剤を硬化させることを特徴とする木質系複合材料の製造方法。
  17. 木質系成形材料に請求項1〜12のいずれかに記載のタンニン系接着剤をスプレー塗布することによって混和物とすることを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
  18. 木質系成形材料が、木質チップであることを特徴とする請求項16または17に記載の製造方法。
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