JP5595630B2 - プログラム可能なマイクロ波アレイ及びその設定方法 - Google Patents

プログラム可能なマイクロ波アレイ及びその設定方法 Download PDF

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Description

本発明は、ターゲットのマイクロ波画像を取得するマイクロ波画像生成システム内において使用されるアンテナアレイおよびその設定方法に関する。
最近のマイクロ波画像生成分野における進歩により、物体又はその他の対象物品(例えば、対象の人物)の2次元(並びに、場合によっては、三次元)のマイクロ波画像生成能力を有するマイクロ波画像生成システムの製品開発が可能になった。現在、提供されているマイクロ波画像生成法には、いくつかのものが存在している。例えば、1つの技法は、マイクロ波検出器(以下、これを「アンテナ要素」と呼ぶ)のアレイを使用し、ターゲットの能動的なマイクロ波照射に応答して、人物又はその他の物体と関連付けられたターゲットから放出される受動的マイクロ波放射、又はターゲットから反射される反射マイクロ波放射を取得している。アンテナ要素のアレイをターゲットの位置に関連して走査すると共に/又は、送信又は検出するマイクロ波放射の周波数(又は、波長)を調節することにより、人物又はその他の物体の2次元又は3次元画像を構築している。
マイクロ波画像生成システムは、通常、物体との間でマイクロ波放射を送信、受信、及び/又は反射するための送信、受信、及び/又は反射アンテナアレイを含んでいる。このようなアンテナアレイは、従来のアナログフェーズドアレイ又は2値反射器アレイを使用して構築可能である。いずれの場合にも、アンテナアレイは、通常、いくつかの個別のマイクロ波線を含むマイクロ波放射のビームを、物体の画像内の1つ又は複数のボクセルに対応した3D空間内の点又は領域/容積(本明細書においては、これをターゲットと呼ぶ)に向かって導いている。これは、アンテナ要素による個々のマイクロ波線の位相の変更を可能にする個別の位相シフトによってアレイ内のアンテナ要素のそれぞれをプログラムすることによって実現される。それぞれのアンテナ要素の位相シフトは、それぞれのアンテナ要素からの個々のマイクロ波線のすべてが、実質的に同相でターゲットに到達するように、選択されている。プログラム可能なアンテナアレイの例は、「A Device for Reflecting Electromagnetic Radiation」という名称の特許文献1(代理人ドケット番号第10040151号)と「Broadband Binary Phased Antenna」という名称の特許文献2(代理人ドケット番号第10040580号)に記述されている。
この結果、それぞれのターゲットごとに、ターゲットにおいて最大の建設的干渉を経験するマイクロ波放射のビームを生成する特定の位相シフトにより、それぞれのアンテナ要素がプログラムされる。特定のターゲットについて、アレイ内のアンテナ要素に割り当てられているすべての位相シフトの組み合わせをパターンと呼ぶ。パターンのサイズは、アレイと同じサイズであり、パターン内のそれぞれの要素は、アレイ内の対応するアンテナ要素の位相シフトを表している。それぞれのアンテナ要素が、2つの位相シフトの中のいずれかのみを導入可能な2値アレイの場合には、パターンは、1と0のアレイとして表現可能である。
人物又はその他の物体を走査するには、通常、人物又はその他の物体と関連付けられている様々なターゲットの連続マイクロ波画像を取得するために使用するいくつかのパターンを事前に設計し、保存しておく。しかしながら、それぞれのパターン設計は、主に、マイクロ波放射の周波数と、マイクロ波源(該当する場合)、マイクロ波受信機(該当する場合)、及び特定のターゲットの1つ又は複数に対するアレイ内のアンテナ要素の向きと、によって決定され、従って、パターンが、マイクロ波画像生成システムの様々なパラメータにとって最適ではない可能性がある。
米国特許出願第10/997,422号明細書 米国特許出願第10/997,583号明細書
例えば、マイクロ波源からマイクロ波受信機への迷光放射の結果生じる背景雑音(これは、しばしば、「クラッター」と呼ばれる)は、マイクロ波画像生成システムの信号対雑音比(SNR)を低下させる。特定のパターンは、ターゲットにおける望ましい建設的な干渉を生成可能であるが、そのパターンが、マイクロ波受信機における背景雑音を低減するのに最適ではない場合がある。別の例として、人物又はその他の物体の走査に使用するパターンのペア間の位相の変化により、アンテナ位相の変化に伴って面積が拡大するサイドローブが生じる場合がある。又、連続マイクロ波画像間の位相の変化を必要とするアンテナ要素の数が増大するに伴って、人物又はその他の物体の走査に必要なパワーも相応して増大することになる。従って、マイクロ波アンテナアレイの位相シフトパターンを設計するための柔軟な設計法が求められている。
本発明の実施例は、ターゲットのマイクロ波画像を取得するマイクロ波画像生成システム内において使用され、マイクロ波画像生成システムの1つ又は複数のパラメータを最適化するべく選択的にプログラム可能なアンテナアレイを提供する。アレイは、複数のアンテナ要素を含み、このそれぞれは、それぞれのアンテナ要素からのマイクロ波放射が、その他のアンテナ要素からのマイクロ波放射と実質的に同相でターゲットに到達するようにマイクロ波放射のビームをターゲットに向かって導く個別の位相シフトによってプログラム可能である。マイクロ波画像生成システムのパラメータを最適化するには、ターゲットにおいて実質的に同相のマイクロ波放射のビームを維持しつつ、選択したアンテナ要素の位相シフトを変更する。
一実施例においては、最適化対象のパラメータは、ターゲットにおけるマイクロ波放射の建設的干渉とマイクロ波受信機におけるマイクロ波放射の破壊的干渉の比率である。この比率は、ターゲットにおける建設的干渉を相応して減少させることなしに、マイクロ波受信機における破壊的干渉を増大させることによって最適化される。例えば、位相シフトを変更するべく選択されるアンテナ要素には、マイクロ波線が理想的な位相からの最大の位相オフセットを具備しているアンテナ要素を含むことができる。
別の実施例においては、最適化対象のパラメータは、連続マイクロ波画像間におけるアレイ内の位相シフト変化の最小数である。物体と関連付けられたターゲットの連続マイクロ波画像を取得することによる物体の走査に使用するべくアレイが設計されている場合には、位相シフト変化の最小数は、連続マイクロ波画像の順序を選択することによって最適化可能である。
更なる実施例においては、最適化対象のパラメータは、ターゲットにおけるマイクロ波放射ビームのサイドローブの面積に対するメインローブの面積の比率である。それぞれのアンテナ要素に選択された位相シフトがパターンを形成している更に別の実施例においては、最適化対象のパラメータは、ビットによるパターン説明のデジタル圧縮と関連付けられたメトリックであり、これにより、パターンデータのストレージスペースの減少と処理の高速化が可能である。
以下、添付の図面を参照し、開示対象の発明について説明するが、これらの図面は、本発明の重要な実施例を示しており、これらは、本引用によって本明細書に包含される。
本明細書において使用する「マイクロ波放射(microwave radiation)」と「マイクロ波照射(microwave illumination)」という用語は、それぞれ、約1GHz〜約1,000GHzの周波数に相当する0.3mm〜30cmの波長を具備する電磁放射の帯域を意味している。従って、マイクロ波放射及びマイクロ波照射という用語は、それぞれ、従来のマイクロ波放射に加え、一般にミリメートル波放射と呼ばれるものを含んでいる。
図1は、本発明の実施例による単純な模範的なマイクロ波画像生成システム10の概略図である。マイクロ波画像生成システム10は、1つ又は複数のアレイ50を含んでおり(利便のために、この中の1つのみを示している)、このそれぞれは、物体150(例えば、スーツケース、対象の人物、又はその他の対象物品)のマイクロ波画像を取得するべく、アンテナ要素80を介してマイクロ波放射を送信、受信、及び/又は反射する能力を有している。
一実施例においては、アレイ50は、反射アンテナ要素80から構成されたプログラム可能な受動的反射器アレイを含んでいる。反射アンテナ要素のそれぞれは、画像生成対象の物体150上のターゲット155(例えば、物体150の画像内の1つ又は複数のボクセルに対応した3D空間内の点又は領域/容積)に向かってマイクロ波放射のビームを導く個別の位相シフトによってプログラム可能である。位相シフトは、2値であるか、或いは、連続的なもののいずれであってもよい。例えば、個別の位相シフトによって個々の反射アンテナ要素80のそれぞれをプログラムすることにより、マイクロ波源(図示されてはいない)からアレイ50が受信したマイクロ波放射が、物体150上のターゲット155に向かって反射され、ターゲット155から反射されてアレイ50が受信した反射マイクロ波放射が、マイクロ波受信機(図示せず)に向かって反射される。
別の実施例においては、アレイ50は、マイクロ波放射を生成及び送信し、反射マイクロ波放射を受信及び取得する能力を有する能動的アンテナ要素80から構成された能動的送信機/受信機アレイを含んでいる。例えば、能動的アレイは、送信アレイの形態であってよい。この実施例においては、アレイ50がマイクロ放射の供給源として動作するため、リモートのマイクロ波源は使用されない。能動的送信機/受信機アレイ内の能動的アンテナ要素のそれぞれは、ターゲット155に向かってマイクロ波放射のビームを操縦する個別の位相シフトによって個々にプログラム可能である。
マイクロ波画像生成システム10は、プロセッサ100、コンピュータ可読媒体110、及びディスプレイ120を更に含んでいる。プロセッサ100は、アレイ50を制御し、ターゲット155から反射された受信マイクロ波放射を処理してターゲット155及び/又は物体150のマイクロ波画像を構築するための任意のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせを含んでいる。例えば、プロセッサ100は、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラム可能なロジック装置、デジタル信号プロセッサ、又はコンピュータプログラムの命令を実行するべく構成されたその他のタイプの処理装置、並びに、プロセッサ100が使用する命令及びその他のデータを保存する1つ又は複数のメモリ(例えば、キャッシュメモリ)を含むことができる。但し、プロセッサ100のその他の実施例も使用可能であることを理解されたい。メモリ110は、ハードドライブ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、コンパクトディスク、フロッピーディスク、ZIP(登録商標)ドライブ、テープドライブ、データベース、又はその他のタイプのストレージ装置又はストレージ媒体を含む(但し、これらに限定されない)任意のタイプのデータストレージ装置である。
プロセッサ100は、コンピュータ可読媒体110内に保存された1つ又は複数のパターン115を使用してアレイ50をプログラムするべく動作する。それぞれのパターン115は、マイクロ波放射によって物体150上の特定のターゲット155を照射すると共に/又は、物体150上の特定のターゲット155からの反射マイクロ波放射を受信するアレイ50内の個々のアンテナ要素80のそれぞれ用の位相シフトを含んでいる。従って、プロセッサ100は、パターン115及びアレイ50と共に、物体150を走査するべく動作する。
プロセッサ100は、物体150上のそれぞれのターゲット155からアレイ50が取得した反射マイクロ波放射の強度を使用して物体150のマイクロ波画像を構築する能力を更に有している。例えば、アレイ50が反射器アレイである実施例においては、マイクロ波受信機(図示されてはいない)が、アレイ50内のそれぞれのアンテナ要素80から反射された反射マイクロ波放射を組み合わせることにより、ターゲット155における反射マイクロ波放射の有効な強度値を生成する能力を有している。強度値は、プロセッサ100に伝達され、プロセッサが強度値を物体150上のターゲット155に対応したピクセル又はボクセルの値として使用する。反射マイクロ波放射がボクセルの領域/容積の強度を表しているその他の実施例においては、ターゲット155(3D空間内の面積/容積)のそれぞれのマイクロ波画像ごとに、プロセッサ100は、物体150の所望の画像のフーリエ変換成分を計測する。プロセッサ100は、計測したフーリエ変換成分を使用して逆フーリエ変換を実行し、物体150の画像を生成する。動作の際には、マイクロ波画像生成システム10は、1秒当たり数百万個のターゲット155を走査可能な周波数において動作可能である。
結果的に得られたターゲット155及び/又は物体150のマイクロ波画像をプロセッサ100からディスプレイ120に伝達し、マイクロ波画像を表示可能である。一実施例においては、ディスプレイ120は、物体150の3次元マイクロ波画像又はターゲット155及び/又は物体150の1つ又は複数の1次元又は2次元マイクロ波画像を表示する2次元ディスプレイである。別の実施例においては、ディスプレイ120は、物体150の3次元マイクロ波画像を表示する能力を有する3次元ディスプレイである。
複数のアレイ50を使用して物体150の異なる部分を走査可能であることを理解されたい。例えば、マイクロ波画像生成システム10は、物体150が高さ2メートルと幅1メートルの人物である場合に、それぞれが物体150の半分を走査するアンテナ要素80の1m x 1mのアレイを含む2つのアレイによって実装可能である。別の例においては、マイクロ波画像生成システム10は、それぞれが対象の人物150の1つの象限を走査する能力を有するアンテナ要素80の0.5m x 0.5mのアレイを含む8つのアレイ50によって実装可能である。
図2は、能動的な送信/受信又は反射アレイにおいて使用する(図1のアンテナ要素80に対応した)能動的アンテナ要素200の一例を示している。能動的アンテナ要素200は、個別のスイッチ215に接続されたアンテナ210を含む広帯域2値フェーズドアンテナ要素である。スイッチ215は、例えば、SPDT(単極双投)スイッチ又はDPDT(二極双投)スイッチであってよい。スイッチ215の動作状態によって個別のアンテナ要素200の位相を制御する。例えば、スイッチ215の第1の動作状態においては、アンテナ要素200は、第1の2値状態(例えば、0度)であり、スイッチ215の第2の動作状態においては、アンテナ要素200は、第2の2値状態(例えば、180度)にあってよい。スイッチ215の動作状態によってスイッチ215の端子接続が定義される。例えば、第1の動作状態においては、端子218が、アンテナ210とスイッチ215の間の給電線216を接続する、閉じた(短絡)位置にあり、端子219は、開いた位置にあってよい。それぞれのスイッチ215の動作状態は、それぞれのアンテナ要素200の位相を個別に設定するべく、制御回路(図示せず)によって独立的に制御されている。
本明細書において使用する「対称アンテナ」210という用語は、2つの給電ポイント211又は213のいずれかにおいて供給される、または引き出されることのできる2つの反対の対称的な電界分布(又は電流)の1つを生成可能なアンテナを意味している。図2に示されているように、ミラー軸250を中心として対称的な形状の対称アンテナ210を使用することにより、2つの反対の対称的な電界分布が生成される。ミラー軸250は、アンテナ210を通過することにより、2つの対称なサイド252及び254を生成している。給電ポイント211及び213は、アンテナ210のミラー軸250のいずれかのサイド252及び254上に配置されている。一実施例においては、給電ポイント211及び213は、ミラー軸250を中心として実質的に対称なアンテナ210上に配置される。例えば、ミラー軸250は、アンテナ210の1つの次元(例えば、長さ、幅、高さなど)に平行に延長可能であり、給電ポイント211及び213は、次元(寸法)260の中点270の近傍に配置されることできる。図2においては、給電ポイント211及び213は、ミラー軸250のそれぞれのサイド252及び254上において、アンテナ210の中点270の近傍に配置された状態で示されている。
対称アンテナ210は、A及びBというラベルが付加された2つの反対の対称電界分布を生成することができる。電界分布Aの大きさ(例えば、電力)は、電界分布Bの大きさと実質的に同一であるが、電界分布Aの位相は、電界分布Bの位相と180だけ異なっている。従って、電界分布Aは、電気サイクルが±180度の電界分布Bと似ている。
対称アンテナ210は、給電線216及び217を介して対称スイッチ215に接続されている。給電ポイント211は、給電線216を介して対称スイッチ215の端子218に接続されており、給電ポイント213は、給電線217を介して対称スイッチ215の端子219に接続されている。本明細書において使用する「対称スイッチ」という用語は、スイッチの2つの動作状態が端子218及び219を中心として対称であるSPDT又はDPDTスイッチのいずれかを意味している。
例えば、SPDTスイッチの第1の動作状態において、チャネル(これをチャネルαと呼ぶ)のインピーダンスが10Ωで、別のチャネル(これをチャネルβと呼ぶ)のインピーダンスが1kΩである場合は、SPDTスイッチの第2の動作状態においては、チャネルαのインピーダンスは、1kΩであり、チャネルβのインピーダンスは、10Ωである。チャネルインピーダンスは、完全に開じた状態でも、短絡でも、ましてや実数である必要はないことを理解されたい。さらに、クロストークが状態に関して対称である限り、チャネル間にクロストークが存在してもよい。通常、スイッチは、該スイッチのSパラメータマトリックスがスイッチの2つの動作状態間において(例えば、2つの端子218及び219間において)同一である場合に対称である。
図3は、アンテナ要素300のインピーダンス状態に応じて変化する位相によって電磁放射を反射するべく動作する(図1のアンテナ要素80に対応した)反射アンテナ要素300の断面図を示している。反射アンテナ要素300は、アンテナ(パッチアンテナ320a)と非理想的なスイッチング装置(表面実装電界効果トランジスタ「FET」322)を含んでいる。
反射アンテナ要素300は、プリント回路ボード基板314の上部及び内部に形成されており、表面実装FET322、パッチアンテナ320a、ドレインバイア(drain via)332、接地プレーン335、及びソースバイア(source via)338を含んでいる。表面実装FET322は、プレーナーパッチアンテナ320aと反対のプリント回路ボード基板314の面上に取り付けられており、接地プレーン336が、プレーナーパッチアンテナ(planar patch antennas、平面状のパッチアンテナ)320aと表面実装FET322の間に配置されている。ドレインバイア332が、表面実装FET322のドレイン328をプレーナーパッチアンテナ320aに接続し、ソースバイア338が、表面実装FET322のソース326を接地プレーン336に接続している。
稼働製品においては、反射器アンテナアレイは、駆動電子回路を含むコントローラボード340に接続されている。図3には、コントローラボードの例340も示されており、これは、接地プレーン344、駆動信号ビア346、及び駆動電子回路342を含んでいる。コントローラボード340は、反射器アンテナアレイのコネクタ350と互換性を有するコネクタ348をも含んでいる。2つのボードのコネクタ348及び350は、例えば、ウェーブソルダリングを使用して相互接続可能である。その他の実施例においては、FET322は、プレーナーパッチアンテナ320aと同一のプリント回路ボード基板314の面上に表面実装可能である。更には、駆動電子回路342を、反射アンテナ要素300が構築される同一のプリント回路ボードに直接はんだ付けすることも可能である。
パッチアンテナ要素320aは、反射アンテナ要素300のインピーダンスレベルに応じて、多少の位相シフトによって反射するべく動作する。反射アンテナ要素300は、アンテナ設計パラメータの関数であるインピーダンス特性を具備している。アンテナの設計パラメータは、構造の誘電材料、誘電材料の厚さ、アンテナ形状、アンテナの長さ及び幅、給電場所、及びアンテナ金属レイヤの厚さなどの物理的属性を含んでいる(但し、これらに限定されない)。
FET300(非理想的なスイッチング装置)は、その抵抗状態を変化させることによって反射アンテナ要素300のインピーダンス状態を変化させる。低抵抗状態(例えば、閉じた状態すなわち「短絡」)は、低インピーダンスになる。逆に、高抵抗状態(例えば、開いた状態)は、高インピーダンスになる。理想的な性能特性を有するスイッチング装置(本明細書においては、これを「理想的」なスイッチング装置と呼ぶ)は、その抵抗が、その最低状態にある場合には、事実上、ゼロインピーダンス(Z=0)を生成し、その抵抗がその最大状態にある場合には、事実上、無限インピーダンス(Z=∞)を生成する。本明細書において説明するように、スイッチング装置は、そのインピーダンスがその最低状態にある場合に、「オン」であり(例えば、Zon=0)、そのインピーダンスがその最大状態にある場合に、「オフ」である(例えば、Zoff=∞)。理想的なスイッチング装置のオン及びオフインピーダンス状態が、実質的にZon=0及びZoff=∞であるため、理想的なスイッチング装置は、オン及びオフ状態間における電磁放射の吸収を伴うことなしに、最大位相シフトを提供可能である。即ち、理想的なスイッチング装置は、0度と180度の位相状態間におけるスイッチングを実現することができる。理想的なスイッチング装置の場合には、有限な非ゼロのインピーダンスを示すアンテナによって最大位相−振幅性能を実現することができる。
理想的なスイッチング装置とは対照的に、「非理想的」なスイッチング装置は、それぞれ、Zon=0及びZoff=∞でオン及びオフインピーダンス状態を示さないスイッチング装置である。むしろ、非理想的なスイッチング装置のオン及びオフのインピーダンス状態は、通常、例えば、0<|Zon|<|Zoff|<∞の間のどこかに位置している。但し、オン及びオフインピーダンス状態が|Zoff|<=|Zon|であるアプリケーションも存在している。非理想的なスイッチング装置は、特定の周波数レンジ(例えば、<10GHz)内においては、理想的なインピーダンス特性を示し、その他の周波数レンジ(例えば、>20GHz)においては、きわめて非理想的なインピーダンス特性を示すことができる。
非理想的なスイッチング装置のオン及びオフインピーダンス状態は、Zon=0とZoff=∞の間のどこかに位置しているため、非理想的なスイッチング装置によれば、必ずしも、対応するアンテナのインピーダンスとは無関係に最大位相状態性能を得ることができない。ここで、最大位相状態性能は、0度と180度の位相状態間におけるスイッチングを必要とするものである。本発明によれば、図3の反射アンテナ要素300は、最適な位相性能を提供するように特に設計されており、ここで、反射アンテナ要素の最適な位相状態性能とは、反射要素が0度と180度の位相−振幅状態間におけるスイッチングに最も近接したポイントである。一実施例においては、最適な位相状態性能を実現するために、アンテナ要素300は、非理想的なスイッチング装置(FET330)のインピーダンスの関数として構成されている。例えば、アンテナ要素300は、アンテナ要素300のインピーダンスがFET330のインピーダンス特性の関数となるように設計されている。
さらに、アンテナ要素300は、オン状態における非理想的なスイッチング装置(FET330)のインピーダンスZonと、オフ状態における非理想的なスイッチング装置330のインピーダンスZoffの関数して構成されている。特定の実施例においては、オン及びオフインピーダンス状態Zon及びZoffにおいて、アンテナ要素300のインピーダンスが非理想的なスイッチング装置330のインピーダンスの平方根の共役となるようにアンテナ要素300が構成された場合に、反射アンテナ要素300の位相状態性能が最適化される。具体的には、アンテナ要素300のインピーダンスは、対応する非理想的なスイッチング装置330のオン及びオフインピーダンス状態Zon及びZoffの幾何平均の複素共役である。この関係は、次のように表される。
Figure 0005595630
ここで、()は、複素共役を示している。この関係は、ソースインピーダンス(source impedance)と負荷インピーダンス間における複素反射係数の周知の式を使用して導出される。アンテナ要素300をソース(source)として選択すると共に、非理想的なスイッチング装置330が負荷として選択することにより、オン状態反射係数がオフ状態反射係数の逆に等しく設定され、式(1)が得られる。
最適な位相−振幅性能を示すアンテナ要素300の設計には、反射アンテナ要素300内において使用する特定の非理想的なスイッチング装置(この場合には、FET330)のオン及びオフインピーダンスZon及びZoffを決定しなければならない。次いで、アンテナ要素300の設計パラメータを操作し、前述の式(1)に表されている関係に整合したインピーダンスを有するアンテナ要素300を生成する。Zon及びZoffが異なる値になるように決定される限り、式(1)を適合するアンテナ要素300を設計することができる。
対象の周波数帯域にわたって非理想的なインピーダンス特性を示す図3に示されている表面実装FET330以外の別のタイプのスイッチング装置は、表面実装ダイオードである。但し、表面実装ダイードは、表面実装FETと比べて、対象の周波数帯域にわたって改善されたインピーダンス特性を示すが、表面実装FETは、相対的に廉価であり、反射器アンテナアレイ用途に使用するように個別にパッケージ化することができる。
FETを非理想的なスイッチング装置として利用する反射器アンテナアレイにおいては、実現可能なビーム走査速度は、信号対雑音比、クロストーク、及びスイッチング時間を含むいくつかの要因によって左右される。FETの場合には、スイッチング時間は、ゲート容量、ドレイン/ソース容量、及びチャネル抵抗(即ち、ドレイン/ソース抵抗)によって左右される。チャネル抵抗は、実際には、空間と時間の両方に依存している。インピーダンス状態間におけるスイッチング時間を極小化するべく、FETのドレインを常時DC短絡することが望ましい。ドレインをフロートティング状態にすると、オフ状態チャネル抵抗が増大すると共に、パッチアンテナの巨大な平行プレート面積に起因してドレイン/ソース容量が大きくなるため、ドレインは、常時、直流短絡しておくのが好ましい。これは、アンテナを直流短絡するのが好ましいが、ソースにおいては、アンテナが「高周短絡」のみを観測することが望ましいことを意味している。従って、付加的なアンテナ/ドレイン短絡は、アンテナの混乱を極小化するべく最適配置しなければならない。
反射アンテナ要素300内においては、パッチアンテナ320aの代わりに、その他のタイプのアンテナを使用することも可能であることを理解されたい。一例として、その他のアンテナタイプは、ダイポール、モノポール、ループ、及び誘電体共振器タイプのアンテナを含んでいる(但し、これらに限定されない)。又、その他の実施例においては、反射アンテナ要素300は、FET330を可変コンデンサ(例えば、BST(Barium Strontium Titanate)コンデンサ)によって置換することによる連続位相シフトアンテナ要素300であってよい。可変コンデンサを実装したパッチによれば、FETを実装したパッチによって生成される2値位相シフトの代わりに、それぞれのアンテナ要素ごとに、連続した位相シフトを実現可能である。連続フェーズドアレイを調節することにより、ビーム走査パターン内の任意の方向に向かってマイクロ波ビームを操縦するべく、望ましい位相シフトを提供可能である。
図4は、本発明の実施例によるマイクロ波放射を反射する模範的なアレイ50の平面概略図である。図4においては、マイクロ波源60から送信されたマイクロ波放射のビーム400が、アレイ50内の様々なアンテナ要素80によって受信されている。マイクロ波源は、点源、ホーンアンテナ、又はその他のタイプのアンテナを含む(但し、これらに限定されない)アレイ50を照射するのに十分な任意の供給源であってよい。アレイ50内のアンテナ要素80は、それぞれ、反射マイクロ波放射のビーム410をターゲット155に向かって導く個別の位相シフトによってプログラムされている。位相シフトは、ターゲット155において反射マイクロ波放射のビーム410内のr、r、r、及びrと表記されているすべてのマイクロ波線間においてポジティブ(建設的)な干渉が生成されるように、選択されている。理想的には、アンテナ要素80のそれぞれの位相シフトは、供給源(アンテナ要素80)からターゲット155への反射マイクロ波放射(410)のそれぞれのマイクロ波線r、r、r、及びrごとに同一の位相遅延を提供するように調節されている。
但し、本発明の実施例によれば、図5〜図11との関連で後程詳述するように、アンテナ要素の1つ又は複数のものに適用される位相シフトを変化させることにより、マイクロ波画像生成システムの1つ又は複数のパラメータを最適化可能である。最適化可能なパラメータの例は、ターゲットにおける建設的な干渉の相応した減少を伴わないマイクロ波受信機における破壊的な干渉の増大、連続マイクロ波画像間におけるアレイ内の位相シフト変化の数の極小化、メインローブ面積に対するサイドローブ面積の低減、及び特定のターゲット155の特定のマイクロ波画像用のアレイ50内のそれぞれのアンテナ要素80ごとの位相シフトのすべてを含む位相シフトパターンの圧縮の向上を含んでいる(但し、これらに限定されない)。
図示されてはいないが、ターゲット155から反射され、アレイ50によって受信されたマイクロ波放射をマイクロ波受信機(図示されてはいない)に向かって反射することも同様に可能であることを理解されたい。マイクロ波源60は、別個のアンテナとして、又はマクロ波受信機の一部として、マイクロ波受信機と同一の空間的場所に配置し、アレイ50を通じてターゲット155を照射することも可能であり、或いは、マイクロ波受信機とは異なる空間的場所に配置し、直接的に、又はアレイ50の1つ(例えば、マイクロ波受信機と同一のアレイ50、又は異なるアレイ50)を通じてターゲット555を照射することも可能である。
次に図5Aを参照すれば、図4に示されているそれぞれのマイクロ波線(r、r、r、及びr)を、フェーザーとして表し、特定の大きさ及び位相によって説明可能である。例えば、マイクロ波線rを、r (j*phase1)と表し、実数(Re)及び虚数(Im)成分を含む2次元複素プレーン内のフェーザーとして表現可能である。図5Aにおいては、マイクロ波線r、r、r、及びrは、フェーザー{r,位相}、{r,位相}、{r,位相}、及び{r,位相}として表現されている。フェーザー{r,位相}、{r,位相}、{r,位相}、及び{r,位相}のすべての合計により、ターゲットにおけるマイクロ波放射のビームの振幅が決定される。ターゲットにおける振幅を極大化するには、アンテナ要素のそれぞれからのマイクロ波線r、r、r、及びrは、同一の位相を具備する必要がある。連続フェーズドアレイの場合には、それぞれのアンテナ要素を連続可変位相シフトによってプログラムし、すべてのマイクロ波線を同一位相でアライメント可能である。
但し、特定数の離散した位相シフトの1つのみによってしか、それぞれのアンテナ要素をプログラムできない量子化された(離散した)アレイにおいては、マイクロ波線の位相は、部分的なアライメントのみ可能である。例えば、2値アレイにおいては、それぞれのアンテナ要素は、2つの異なる2値状態(例えば、0度の位相シフト又は180度の位相シフト)によってのみプログラム可能である。従って、それぞれのアンテナ要素の位相シフトは、ターゲットにおける建設的な干渉を極大化し、破壊的な干渉を極小化(又は、防止)するためにのみプログラムされる。ターゲットにおける破壊的な干渉を防止するには、(図5Aに、ライン500に沿って示されている)理想的な位相を選択し、理想的な位相500においてマイクロ波放射のビームを集合的に形成する個々のマイクロ波線を生成する特定の量子化された位相シフトにより、すべてのアンテナ要素をプログラムする(例えば、ターゲットにおけるすべてのマイクロ波線の合計が、理想的な位相500におけるフェーザーである)。
図5Bからわかるように、理想的な位相500を選択したら、理想的な位相500に直交する量子化ライン510を使用し、すべてのマイクロ波線の理想的な位相500への加算を実現するそれぞれの個別のマイクロ波線に適用する位相シフトを判定可能である。図5Bにおいては、マイクロ波線r及びrは、理想的な位相500と同一の量子化ライン510の側に位置している。従って、これらの放射線のそれぞれの現在の位相を維持するべく、0度の2値位相シフトをマイクロ波線r及びrに提供する。しかしながら、マイクロ波線rおよびrは、理想的な位相500とは正反対の量子化ライン510の側に位置している。この結果、これらのマイクロ波線の位相を理想的な位相500と同一の量子化ラインの側に切り換えるべく、180度の2値シフトをマイクロ波線r及びrに適用する。マイクロ波線r、r、r、及びrの合計が、理想的な位相500におけるマイクロ波放射のビームである。但し、マイクロ波線のそれぞれの位相が完全にアライメントされないため、ターゲットにおけるマイクロ放射のビームの振幅は、連続可変のフェーズドアレイによって実現可能なものを下回ることになろう。
図5Cからわかるように、本発明の実施例によれば、理想的な位相500を(図5Bに示されているように)角度0に等しくする必要はなく、むしろ、理想的な位相500は、マイクロ波画像生成システムの1つ又は複数のパラメータを最適化するべく、任意の角度に選択可能である。例えば、一実施例において、パラメータの1つが、アレイ内における0度又は180度の位相シフトの数である場合には、理想的な位相500の角度を変化させて所望の結果を生成可能である。図5Cには、理想的な位相500が、実数(Re)軸に対して角度を有して設定された状態で示されており、量子化ライン510は、理想的な位相500の方向に直交して設定されている。図5Cに示されているように選択された角度によれば、マイクロ波線r、r、及びrが、理想的な位相500と同一の量子化ライン510の側に位置しており、理想的な位相500とは正反対の量子化ライン510の側に位置しているのは、マイクロ波線rのみであり、この結果、アレイ内における180度の位相シフトの数が極小化し、0度の位相シフトの数が極大化している。
別の実施例において、最適化対象のパラメータが、連続マイクロ波画像間におけるアレイ内の位相シフト変化の最小数である場合には、それぞれのマイクロ波画像ごとに理想的な位相500の角度を変化させて所望の結果を生成可能である。例えば、マイクロ波線rを生成するアンテナ要素が、以前のマイクロ波画像内において0度の位相シフトによってプログラムされていた場合には、現在のマイクロ波画像用の位相シフトの変化を回避するべく、図5Cに示されているように、理想的な位相500の角度を角度ゼロからオフセットすることにより、現在のマイクロ波画像用の0度の位相シフトを維持可能である。図5Bに示されているように、理想的な位相500を角度ゼロに維持した場合には、マイクロ波線rを生成するアンテナ要素の位相シフトが0度から180度に変化することになろう。
先程定義したように、特定のターゲット用のアレイ内のアンテナ要素に対して割り当てられているすべての位相シフトの組み合わせがパターンを形成している。それぞれのアンテナ要素が2つの位相シフトの中の1つのみを導入可能な2値アレイである場合には、パターンは、1と0のアレイとして表現可能である。図4〜図5に示されているマイクロ波線r、r、r、及びrを生成するアンテナ要素を含むアレイの一部の模範的な2値位相シフトパターン115a〜115cが図6A〜図6Cに示されている。図6A内の2値位相シフトパターン115aは、第1ターゲットの第1マイクロ波画像用のパターンの一部を表しており、図6Bの2値位相シフトパターン115bは、第2ターゲットの第2マイクロ波画像用のパターンの一部を表しており、図6Cの2値位相シフトパターン115cは、第3ターゲットの第3マイクロ波画像用のパターンの一部を表している。
図6A〜図6Cからわかるように、それぞれのパターン115a〜115cは、マイクロ波線r、r、r、及びrを生成するアンテナ要素に適用される位相シフト600を含んでいる。図6Aにおいては、第1パターン115a内のマイクロ波線rを生成するアンテナ要素に適用される位相シフト600は、0度であり、第2パターン115b内の同一のアンテナ要素に適用される位相シフトは、180度である。従って、パターン115a及び115bを使用して取得される連続マイクロ波画像間には、マイクロ波線rを生成するアンテナ要素の位相シフトの変化が存在している。同様に、パターン115a及び115bの間には、マイクロ波線r及びrを生成するアンテナ要素の位相シフトの変化が存在している。連続マイクロ波画像間の位相シフト変化を極小化するために、パターン115a及び115b間において最大数のアンテナ要素について位相シフトが同一に維持されるように、理想的な位相角度(図5A〜図5Cに示されている500)を変更可能である。
別の実施例においては、パターン115a〜115c間における最も小さい数の変化を結果的にもたらす連続マイクロ波画像の順序を選択することにより、連続マイクロ波画像間の位相シフト変化の極小化を実現することも可能である。図6A〜図6Cのパターン115a〜115cを使用する際に、パターン115aを最初に使用して第1マイクロ波画像を取得する場合には、パターン115cを使用して第2マイクロ波画像を取得し、パターン115bを使用して第3マイクロ波画像を取得することにより、結果的に、パターン間における最も少ない数の位相シフト変化を実現可能である。パターン115aの後にパターン115bが続く場合には、アンテナ要素の3つのものに対してプログラムされている位相シフト(マイクロ波線r、r、及びrに対応したもの)が変化する。しかしながら、パターン115aの後にパターン115cが続く場合には、変化するのは、1つのアンテナ要素に対してプログラムされている位相シフト(マイクロ波線rに対応したもの)のみである。同様に、パターン115cの後にパターン115bが続く場合には、2つのアンテナ要素に対してプログラムされている位相シフト(マイクロ波線r及びrに対応したもの)のみが変化する。
従って、パターン115a、115c、及び115bというパターンの順序を使用した位相シフト変化の合計数は、3に過ぎないが、パターン115a、115b、及び115cというパターンの順序を使用した位相シフト変化の合計数は、5である。人物又はその他の物体を走査する際に使用するパターンのペア間における位相変化の数を低減することにより、要素の1つによって位相シフトが十分高速に変化しないというリスクが減少する。更には、連続マイクロ波画像間における位相変化の数を低減することにより、人物又はその他の物体の走査に必要なパワーも減少する。
本明細書において説明したパターンは、単一点源によって容易に使用可能なタイプの単純なパターンであるが、本発明の実施例は、ホーンアンテナやその他のアンテナタイプと共に使用される更に複雑なパターンにも同様に適用可能であることを理解されたい。例えば、ホーンアンテナは、適切に重み付けされた複数点源として近似可能であり、パターンを複数点源に対応するように設計可能である。又、本発明の実施例は、2つの状態間の位相シフトが180度とは異なるその他のタイプの量子化アレイにも適用可能であることを理解されたい。
又、本発明の実施例を使用して最適化可能なマイクロ波画像生成システムパラメータには、いくつかの異なるものが存在しており、本発明は、本明細書において説明した特定のパラメータに限定されるものではないことをも理解されたい。例えば、別の実施例においては、最適化対象のパラメータは、ターゲットにおけるマイクロ波放射の建設的な干渉とマイクロ波受信機におけるマイクロ波放射の破壊的な干渉の比率であってよい。前述のように、マイクロ波源からマイクロ波受信機への迷光放射の結果として生じる背景雑音は、マイクロ波画像生成システムの信号対雑音比(SNR)を低下させる。受信機における迷光放射の破壊的な干渉を増大させることにより、SNRが向上する。従って、本発明の実施例によれば、ターゲットにおける十分な建設的な干渉を維持すると共に、受信機における破壊的な干渉を極大化するべく、それぞれのアンテナ要素についてプログラムされる位相シフトを設計可能である。
次に図7を参照すれば、マイクロ波源60とマイクロ波受信機700の間に、漏れ(迷光)マイクロ波放射が存在している。図4と同様に、図7においては、マイクロ波源(アンテナ)60から送信されたマイクロ波放射のビーム400が、アレイ50内の様々なアンテナ要素80によって受信されている。アンテナ要素80は、ターゲット155に向かって反射マイクロ波放射のビーム410を導く個別の位相シフトによってそれぞれプログラムされている。位相シフトは、ターゲット155において、反射マイクロ波放射のビーム410内のr、r、r、及びrと表記されているマイクロ波線のすべての間にポジティブ(建設的)な干渉が生成されるように、選択されている。同時に、供給源60からのマイクロ波放射の一部が、迷光マイクロ波放射のビーム710として、アレイ50からマイクロ波受信機700に向かって反射されている。受信機700における迷光マイクロ波放射710の影響を極小化する(すなわち、SNRを向上させる)べく、ターゲットにおける建設的な干渉の比例した減少を伴うことなしに、マイクロ波受信機における破壊的な干渉を増大させることができる。
再度図5Bを参照すれば、マイクロ波線r及びrは、マイクロ波線r及びrよりも、理想的な位相500からの大きな位相オフセットを具備している。従って、マイクロ波線r及びrは、ターゲットにおけるマイクロ波放射の振幅に最も寄与し(これらのマイクロ波線は、理想的な位相500に最も近接しており、量子化ライン510から最も離れているため)、マイクロ波線r及びrは、ターゲットにおけるマイクロ波放射の振幅に最も少なく寄与する(これらのマイクロ波線は、量子化ライン510に最も近接しているため)。従って、マイクロ波線が理想的な位相から最大の位相オフセットを具備している(即ち、マイクロ波線r及びrの)アンテナ要素の位相シフトを変更することにより、ターゲットにおける建設的な干渉の大きな変化を生成することなしに、受信機における破壊的な干渉を増強可能である。例えば、理想的な位相500で放射線を良好にアライメントするべく、先程示したように、マイクロ波線r及びrを生成するアンテナ要素を180度の位相シフトによってプログラムする代わりに、ターゲットにおける建設的な干渉を比例して減少させることなしに、マイクロ波受信機における破壊的な干渉を増大させるべく、マイクロ波線r及びrを生成するアンテナ要素を0度の位相シフトによってプログラム可能である。その他の実施例においては、同一の原理を適用し、ターゲットにおいてメインローブにおける十分な建設的な干渉を維持しつつ、ターゲットにおいてサイドローブにおける破壊的な干渉を増大させることにより、サイドローブの面積を極小化可能であることを理解されたい。
図8A及び図8Bは、マイクロ波受信機における模範的な信号対雑音比を示すグラフである。ターゲットからの信号は、800というラベルが付加され、Tと表記されており、受信機における雑音は、810というラベルが付加され、Rと表記されている。図8Aは、図5Bに示されている位相シフトを使用して信号800と雑音810を表しており、この場合に、アンテナ要素は、理想的な位相500で放射線を良好にアライメントするべく設計された位相シフトによってプログラムされている。横座標は、様々な可能な理想的な位相500の選択肢を示しており、これは、0〜360度の範囲で変化可能である。図8Bは、受信機における破壊的な干渉を増大させるべく設計された位相シフトを使用して信号800と雑音810を表している。図8Aにおいては、最小雑音レベル820は、約−70dbであり、図8Bにおいては、最小雑音レベル820は、約−75dbである。従って、図8BのSNRは、図8AのSNRよりも高くなっている。又、図8Aと図8Bの間には、ターゲットからの信号レベル800に大きな違いはない。
本発明の実施例に従って最適化可能な別のパラメータは、パターンの圧縮と関連するメトリックである。模範的な2値位相シフトパターン115の一部が図9に示されている。パターン115のサイズは、アレイと同じサイズであり、パターン115内のそれぞれの要素600は、アレイ内の対応したアンテナ要素80の位相シフトを表している。ハイレベルにおいては、図12に示されているように、パターン115に対するグローバルな構造が存在している。しかしながら、(図9に示されているように)ミクロレベルにおいて個別の位相シフト600を見た場合には、パターン115は、多少ランダムなように思われる。パターン115を、(それぞれが、区域内の要素の合計数を下回るエントロピーを有する)複数要素の区域に分割可能な場合には、パターン115を圧縮することにより、パターン115の保存に必要なメモリ空間の量を低減し、パターンデータの処理速度を向上させることができる。
例えば、図10Aに示されているように、正方形の要素600の2x2である様々な区域1000が示されている。それぞれの区域1000は、3のエントリピーを具備しており、これは、4つの要素600を表すのに3ビットが必要であることを意味している。別の例として、図10Bには、正方形の要素600の4x4である様々な区域1010が示されている。それぞれの区域1010は、10のエントリピーを具備しており、これは、16個の要素600を表すのに10ビットが必要であることを意味している。区域1000又は1010のエントリピーを減少させるには(従って、圧縮を増大させるには)、可能な区域1000又は1010の数(或いは、要素600の特定のサイズブロック)を低減しなければならない。図10A及び図10Bのいずれにおいても、区域は、左上において最も頻繁に使用され、右下において最も少ない頻度で使用された状態で示されている。最も少ない頻度で使用される区域を確率として除去可能である場合には、区域1000又は1010内の要素600を表すのに必要なビット数が減少する(エントリピーが減少する)。これは、高圧縮比を有する(但し、「無損失圧縮」よりも歪が大きい)「多損失圧縮」に結び付くことになる。
例えば、図10A内の最下位行の区域1000のすべてが確率として除去される場合には、除去された区域の1つ又は複数を含むパターン内の1つ又は複数の要素600の位相シフトを変更しなければならない。図9を再度参照すれば、要素600の左上の2x2の正方形ブロックは、図10Aの最下位の区域1000の1つ、具体的には、左下の区域1000に似ている。従って、エントロピーを減少させ、パターン115の圧縮を増大させるには、要素600のブロックが、図10Aの残りの可能な区域1000の1つに似るように、図9の要素600の左上の2x2の正方形ブロック内の要素600の少なくとも1つの位相シフトを変更しなければならない。
このメトリックの代わりに(或いは、これに加えて)、その他の圧縮メトリックを使用することも可能であることを理解されたい。例えば、個々のアンテナ要素又はアンテナ要素のブロックのどちらかを変更するべきかを判定するには、ターゲットにおけるマイクロ波放射の振幅に対するそれぞれのアンテナ要素又はアンテナ要素のブロックの寄与を多損失圧縮用の重み付けメトリック(metric,測定基準)として使用可能である。
図11は、本発明の実施例によるターゲットのマイクロ波画像を取得するマイクロ波画像生成システムを最適化する模範的なプロセス1100を示すフローチャートである。まず、ブロック1110において、プログラム可能なマイクロ波アンテナ要素のアレイを提供する。ブロック1120において、ターゲットに向かってマイクロ波放射のビームを導くために、アレイ内のアンテナ要素のそれぞれを個別の位相シフトによってプログラムするためのパターンを設計する。ブロック1130において、マイクロ波画像生成システムの1つ又は複数のパラメータを最適化するべく、パターン内のアンテナ要素の1つ又は複数のもののプログラムされた位相シフトを変更する。
当業者であれば、本出願において説明した革新的な概念を様々なアプリケーションにおいて変更及び変形可能であることを認識するであろう。従って、特許対象の範囲は、説明した特定の模範的な教示のいずれかに限定されるものではなく、添付の請求項に規定されているとおりである。
本発明の実施例によるプログラム可能なアンテナアレイを含む単純な模範的なマイクロ波画像生成システムの概略図である。 本発明の実施例による能動的送信/受信アレイにおいて使用する模範的な能動的アンテナ要素を示している。 本発明の実施例による反射器アレイにおいて使用する受動的アンテナ要素の断面図である。 本発明の実施例によるマイクロ波放射を反射する反射アンテナ要素を内蔵した模範的な反射器アレイの平面概略図である。 マイクロ波線のフェーザー表現である。 マイクロ波線のフェーザー表現である。 マイクロ波線のフェーザー表現である。 連続マイクロ波画像用の位相シフトパターンの模範的な一部を示している。 連続マイクロ波画像用の位相シフトパターンの模範的な一部を示している。 連続マイクロ波画像用の位相シフトパターンの模範的な一部を示している。 マイクロ波源とマイクロ波受信機間における漏れマイクロ波放射を示す概略図である。 マイクロ波受信機における模範的な信号対雑音比を示すグラフである。 マイクロ波受信機における模範的な信号対雑音比を示すグラフである。 アレイ用の位相シフトパターンの模範的な一部である。 位相シフトパターンの模範的な圧縮可能部分を示している。 位相シフトパターンの模範的な圧縮可能部分を示している。 本発明の実施例によるターゲットのマイクロ波画像を取得するマイクロ波画像生成システムを最適化する模範的なプロセスを示すフローチャートである。 アレイ用の模範的なグローバルな位相シフトパターンを示している。
符号の説明
10 マイクロ波画像生成システム
50 アレイ
60 マイクロ波源
80 アンテナ要素
90 反射ビーム
155 ターゲット
400 マイクロ波照射
410 マイクロ波放射のビーム
500 理想的な位相
600 位相シフト
700 マイクロ波受信機

Claims (8)

  1. ターゲットのマイクロ波画像を取得するマイクロ波画像生成システムにおいて使用するアレイであって、
    複数のアンテナ要素のそれぞれからのマイクロ波放射が前記ターゲットに同相で到達するように、それぞれが前記ターゲットに向かって前記マイクロ波放射のビームを導く個別の位相シフトによってプログラム可能な前記複数のアンテナ要素を有し、
    前記マイクロ画像生成システムの信号対雑音比を向上するために、前記マイクロ波放射のームが前記ターゲットに同相の状態で到達しているときの前記複数のアンテナ要素における前記個別の位相シフト持する一方、前記複数のアンテナ要素からの前記ビームの振幅を極大化するための理想的の位相と該個別の位相シフトとを比較し、該理想的な位相からのオフセットを有する前記アンテナ要素について当該オフセットの分だけ当該位相シフトを変更するものである、アレイ。
  2. 前記複数のアンテナ要素のそれぞれは、反射アンテナ要素であり、前記反射アンテナ要素のそれぞれは、マイクロ波源からマイクロ波照射を受信し、前記個別のプログラムされている位相シフトに基づいて、前記マイクロ波照射を反射して前記マイクロ波放射のビームを前記ターゲットに向かって導くように構成されており、前記反射アンテナ要素のそれぞれは、前記ターゲットから反射されたマイクロ波放射の反射ビームを受信し、前記反射アンテナ要素のそれぞれに関連付けられている前記個別にプログラムされている位相シフトに基づいて、前記反射ビームをマイクロ波受信機に向かって反射するように構成されている、請求項1記載のアレイ。
  3. 前記信号対雑音比、前記ターゲットにおけるアンテナ要素からの前記マイクロ波放射の建設的な干渉と前記マイクロ波受信機におけるアンテナ要素からの迷光マイクロ波放射の破壊的な干渉の比率あり、前記信号対雑音比は、前記ターゲットにおける前記建設的な干渉の相応した減少を伴うことなしに、前記マイクロ波受信機における前記迷光マイクロ波放射の前記破壊的な干渉を増大させることによって最適化される、請求項2記載のアレイ。
  4. 前記信号対雑音比、サイドローブ面積に対するメインローブ面積の比率ある、請求項1記載のアレイ。
  5. 前記ターゲットに前記マイクロ波放射のビームを導くべく前記複数のアンテナ要素のそれぞれごとにプログラムされている前記位相シフトは、所定のエントロピーを有するパターンを形成しており、該エントロピーを減少させることにより前記パターンを表すビットのデジタル圧縮を実現するものである、請求項1記載のアレイ。
  6. ターゲットのマイクロ波画像を取得するマイクロ波画像生成システムの動作を最適化する方法であって、
    複数のプログラム可能なマイクロ波アンテナ要素を含むアレイを提供するステップと、
    マイクロ波放射のビームを前記ターゲットに向かって同相で到達するように導くべく前記マイクロ波アンテナ要素のそれぞれごとに個別の位相シフトのパターンを設計するステップと、
    前記マイクロ波画像生成システムの信号対雑音比を向上するために、前記マイクロ波放射のームが前記ターゲットに同相の状態で到達しているときの前記複数のアンテナ要素における前記個別の位相シフト持する一方、前記複数のアンテナ要素からの前記ビームの振幅を極大化するための理想的の位相と該個別の位相シフトとを比較し、該理想的な位相からのオフセットを有する前記アンテナ要素について当該オフセットの分だけ当該位相シフトを変更するステップと、
    を含む方法。
  7. 前記信号対雑音比、前記ターゲットにおけるアンテナ要素からの前記マイクロ波放射の建設的な干渉とマイクロ波受信機におけるアンテナ要素からの迷光マイクロ波放射の破壊的な干渉の比率あり、前記変更するステップは、前記ターゲットにおける前記建設的な干渉の相応した減少を伴うことなしに、前記マイクロ波受信機における前記迷光マイクロ波放射の前記破壊的な干渉を増大させるステップを更に含む、請求項6記載の方法。
  8. 前記ターゲットに前記マイクロ波放射のビームを導くべく前記複数のアンテナ要素のそれぞれごとにプログラムされている前記位相シフトは、所定のエントロピーを有するパターンを形成しており、該エントロピーを減少させることにより前記パターンを表すビットのデジタル圧縮を実現するステップを更に含む、請求項6記載の方法。
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