JP5594863B2 - 伝統構法における建物の補強方法 - Google Patents

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Description

本発明は、伝統構法で構築された木造建物に採用される耐震補強方法に関する。
既存木造建築物のうち、文化的価値が高いものや古民家については、建替えではなく修復によって建物再生を図った上、後世に残していこうというニーズが年々高まりを見せている。
木造建築物の構法としては、柱、梁といった軸組部材を組み合わせた在来軸組木造がその代表であるが、寺社建築や古民家においては、いわゆる伝統構法が採用されていることが多い。
伝統構法は、柱や梁を主たる構造部材として用いる点で在来軸組構法と共通しているが、在来軸組構法が、連続RC基礎である布基礎の上に土台を敷設して該土台の上に柱を立設するのに対し、伝統構法では、礎石の上に柱をそれぞれ立設し、該柱に土台や梁を水平に架け渡す点が異なる。
また、在来軸組構法では、接合金物を用いて柱梁の仕口を補強するとともに適宜箇所に耐力壁を配置するのに対し、伝統構法では、接合金物は使用せず、ほぞとほぞ穴を使った接合によって柱梁を連結するとともに、耐力壁を配置することもない。
したがって、在来軸組構法の建物は、地震で生じた部材力を剛性と強度で抵抗しようとするいわゆる剛構造であると言える。
それに対し、伝統構法で建てられた建物は、地震動の卓越周期にもよるが、我が国においては、建物固有周期が長周期側にずれることにより、地震で発生する部材力自体が小さくなるいわゆる柔構造となる。加えて、柱脚と礎石とのずれが許容されることによる入力地震動の低減作用も期待できる。
特開2009−146256号公報 特開2008−276474号公報
このような長所を持つ伝統構法ではあるが、柔構造であるがゆえに地震時においては層間変形が大きくなり、構造部材の経年劣化とも重なると、大地震時には柱梁接合部である仕口が損傷する懸念があり、耐震補強が必要になる場合が少なくない。また、生活スタイルの変化や家族構成の変動により、リフォーム工事を行う場合があるが、その際に耐震補強を併せて行うケースも多くなってきた。
しかしながら、新築される建物や増築される場合の増築部分については、耐力壁の配置をはじめとした具体的な仕様が現行の建築関連法令で仔細に定められているものの、増築を伴わない場合の建物や、増築したとしても増築部分の面積割合が小さい既存部分に対しては、耐震補強のための具体的な方策が必ずしも明らかにされていない。
加えて、伝統工法で構築された建物に在来軸組工法で採用されている接合金物や耐力壁を安易に導入すると、全体の剛性バランスに変化を来たし、柔構造としての特性が損なわれて不測の部位に地震力が集中する懸念もある。
そのため、伝統構法で構築された建物に対し、明確な耐震補強基準の策定が早急に望まれていた。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、伝統構法で構築された建物を耐震補強するに際し、その具体的な手法を容易に選定可能な伝統構法における建物の補強方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る伝統構法における建物の補強方法は請求項1に記載したように、伝統構法で構築された木造建物に対して耐震補強を行う際、耐力壁を用いて補強するのか、土塗壁、貫その他伝統構法で採用される耐力要素を用いて補強するのかを判断し、前記耐力壁を用いて補強する場合には構法(a)を、前記耐力要素を用いる場合には構法(b)を採用する伝統構法における建物の補強方法であって、
前記構法(a)は、前記建物の床下に拡がる地盤上に鉄筋コンクリートからなる耐圧盤を形成し該耐圧盤に前記建物の柱の脚部を連結するとともに該柱の脚部を足固めを介して相互に連結し、かかる基礎補強工程と同時に又は相前後して、前記建物内に形成された上下二段の水平構面の間に耐力壁を設置する工程からなり、
前記構法(b)は、前記建物の柱の脚部を足固めで相互に連結し、該連結工程と同時に又は相前後して、土塗壁、貫その他伝統構法で採用される耐力要素を前記建物内に設置する工程からなり、
前記耐力壁を用いるか前記耐力要素を用いるかの選択を行うにあたっては、前記木造建物内に立設された柱のサイズ又はSS試験による地耐力の大きさに基づいて判断し、前記柱サイズ又は前記地耐力が所定値を下回っている場合には前記構法(a)を選択し、前記柱サイズ及び前記地耐力が所定値以上である場合には前記構法(b)を選択するものである。
また、本発明に係る伝統構法における建物の補強方法は請求項2に記載したように、伝統構法で構築された木造建物に対して補強を行う際、耐震補強と制震補強のどちらを採用するかを比較検討し、耐震補強を採用する場合、さらに耐力壁を用いて補強するのか、土塗壁、貫その他伝統構法で採用される耐力要素を用いて補強するのかを判断し、前記耐力壁を用いて補強する場合には構法(a)を、前記耐力要素を用いる場合には構法(b)を採用し、前記制震補強を採用する場合、さらに前記建物の床下空間又は天井裏空間に制震装置の設置スペースがあるかどうかを判断し、該設置スペースがない場合には構法(c)を採用し、前記設置スペースがある場合には、構法(d)を採用する伝統構法における建物の補強方法であって、
前記構法(a)は、前記建物の床下に拡がる地盤上に鉄筋コンクリートからなる耐圧盤を形成し該耐圧盤に前記建物の柱の脚部を連結するとともに該柱の脚部を足固めを介して相互に連結し、かかる基礎補強工程と同時に又は相前後して、前記建物内に形成された上下二段の水平構面の間に耐力壁を設置する工程からなり、
前記構法(b)は、前記建物の柱の脚部を足固めで相互に連結し、該連結工程と同時に又は相前後して、土塗壁、貫その他伝統構法で採用される耐力要素を前記建物内に設置する工程からなり、
前記構法(c)は、前記建物の柱の脚部を足固めで相互に連結し、該連結工程と同時に又は相前後して、前記建物内の柱梁構面に制震装置を設置する工程からなり、
前記構法(d)は、前記床下空間又は前記天井裏空間に制震装置を設置する工程からなり、
前記耐力壁を用いるか前記耐力要素を用いるかの選択を行うにあたっては、前記木造建物内に立設された柱のサイズ又はSS試験による地耐力の大きさに基づいて判断し、前記柱サイズ又は前記地耐力が所定値を下回っている場合には前記構法(a)を選択し、前記柱サイズ及び前記地耐力が所定値以上である場合には前記構法(b)を選択するものである。
また、本発明に係る伝統構法における建物の補強方法は、前記柱サイズの所定値を150mm角、前記地耐力の所定値を30kN/m 2 とするものである。
本発明のうち、第1の発明に係る建物の補強方法は、伝統構法で構築された建物に対し、制震補強を採用できない場合に適用されるものであり、例えば、増築を伴うことによる建築関連法令上の制約がある場合が想定される。
かかる第1の発明においては、伝統構法で構築された木造建物に対して耐震補強を採用することになるが、その際、まず、耐力壁を用いて補強するのか、土塗壁、貫その他伝統構法で採用される耐力要素を用いて補強するのかを判断する。
次に、耐力壁を用いて補強する場合には構法(a)を、耐力要素を用いる場合には構法(b)を採用する。
構法(a)、(b)は、以下の通りである。
[構法(a)]
建物の床下に拡がる地盤上に鉄筋コンクリートからなる耐圧盤を形成し、該耐圧盤に建物の柱の脚部を連結するとともに、柱の脚部を足固めを介して相互に連結する(基礎補強工程)。
上記基礎補強工程と同時に又は相前後して、建物内に形成された上下二段の水平構面の間に耐力壁を設置する。
[構法(b)]
建物の柱の脚部を足固めで相互に連結する(連結工程)。
上記連結工程と同時に又は相前後して、土塗壁、貫その他伝統構法で採用される耐力要素を建物内に設置する。
一方、第2の発明に係る建物の補強方法は、伝統構法で構築された建物に対し、耐震補強又は制震補強のいずれかを選択できる場合に適用されるものであり、例えば、増築を伴わないか増築部分の面積が小さいために建築関連法令の制約がない場合が想定される。
かかる第2の発明においては、伝統構法で構築された木造建物に対して補強を行う際、まず、耐震補強と制震補強のどちらを採用するかを比較検討する。
かかる検討を行うにあたっては、例えば耐震補強においては、建物全体の剛性が高まって層間変形が小さくなる代わりに、入力地震動による部材力が増加する可能性があるため、耐力を増加するための耐力壁の選定が重要になることや、制震補強においては、耐力壁あるいは耐力要素を追加する必要がないためプランの制約がなくなる代わりに、伝統構法ゆえの柔構造が維持されるため、制震装置による層間変形の抑制が重要になることなどを判断基準とすればよい。
次に、耐震補強を採用する場合、さらに耐力壁を用いて補強するのか、土塗壁、貫その他伝統構法で採用される耐力要素を用いて補強するのかを判断する。
耐力壁を用いて補強する場合には構法(a)を、耐力要素を用いる場合には構法(b)を採用する。
一方、制震補強を採用する場合、さらに建物の床下空間又は天井裏空間に制震装置の設置スペースがあるかどうかを判断し、該設置スペースがない場合には構法(c)を採用し、設置スペースがある場合には、構法(d)を採用する。
構法(a)〜(d)のうち、構法(a)、(b)は上述した通りであり、構法(c)、(d)は、以下の通りである。
[構法(c)]
建物の柱の脚部を足固めで相互に連結する(連結工程)。
上記連結工程と同時に又は相前後して、建物内の柱梁構面に制震装置を設置する。
[構法(d)]
床下空間又は天井裏空間に制震装置を設置する。
上述した各発明においては、耐力壁を用いるのか耐力要素を用いるのかの選択を行うにあたり、木造建物内に立設された柱のサイズ又はSS試験による地耐力の大きさに基づいて判断する。
このようにすると、伝統構法による建物に耐震補強を施す際、耐力壁と伝統構法で採用されている耐力要素との使い分けが明確かつ客観的となり、伝統構法で構築された建物のうち、構造的に良質なものについては、伝統構法のままで耐震補強を施すことができるとともに、構造的に不足する部分があるものについても、可能な限り、伝統構法の良さを残しつつ、耐力壁を用いて耐震補強を行うことが可能となる。
柱のサイズ又はSS試験による地耐力の大きさは、建物の高さ、平面形状、建物の固定荷重、地震の頻度その他の諸事項を勘案して適宜定めればよいが、例えば、柱サイズを150mm角、SS試験による地耐力を30kN/m2とし、対象となる建物がそれらの項目を下回っている場合には、耐力壁を用いた補強を選択し、それらの値以上である場合には、耐震要素を用いた補強を選択することが考えられる。
本発明の耐力壁には、構造用合板、パーティクルボード、ハードボード 、硬質木片セメント板、フレキシブル板、石綿パーライト板、石綿けい酸カルシウム板、炭酸マグネシウム板、パルプセメント板、石膏ボード及び筋かいがそれぞれ単独で、あるいは任意の組み合わせで含まれ、伝統構法で用いられる耐力要素には、土塗壁、貫及び差し鴨居がそれぞれ単独で、あるいは任意の組み合わせで含まれる。特に、貫は、土塗壁に埋設される形で該土塗壁と併用される場合が含まれる。
耐力壁を配置するための水平構面は、上方からの地震時水平力が下方に伝達支持できるよう、上下二段に配置される必要があるが、既存のものを用いるか、新規に追加するかは任意であり、例えば、二階床を支持する梁と一階床下の土台とが補強前からそれぞれ水平構面を形成しているのであれば、それらの間に耐力壁だけを設置すれば足りるし、土台はあるけれども、その土台位置の直上に横架材がないのであれば、土台直上に横架材を新規に架け渡した上、該横架材と土台の間に耐力壁を設置するようにしてもよい。
また、対象となる木造建物が二階建てであって、その小屋梁と、二階床を支持する梁と、一階床を支持する土台がそれぞれの高さにおいて水平構面を形成している場合には、水平構面が三段存在することになるが、かかる場合においても、各階に設置された耐力壁がそれぞれ上下二段の水平構面の間に配置されることに何ら変わりはない。
制震装置は、公知のものから適宜選択することが可能であり、例えば油圧ダンパーを組み込んだ装置の採用が考えられる。
第1実施形態に係る伝統構法における建物の補強方法の実施手順を示したフローチャート。 補強対象となる建物を示した概略断面図 構法(a)による耐震補強後の様子を示した概略断面図。 構法(b)による耐震補強後の様子を示した概略断面図。 第2実施形態に係る伝統構法における建物の補強方法の実施手順を示したフローチャート。 構法(c)を採用して制震補強する場合の概略図。 構法(d)を採用して制震補強する場合の概略図。
以下、本発明に係る伝統構法における建物の補強方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
(第1実施形態)
本実施形態では、伝統構法で構築された建物のうち、建築関連法令上の制約があるために、制震補強を採用できない建物に対する補強について説明する。
図1は、本実施形態に係る伝統構法における建物の補強方法の実施手順を示したフローチャートである。同図でわかるように、本実施形態に係る補強方法においては、上述したように補強対策として耐震補強を選択することが前提となっているため、まず、耐力壁を用いて補強するのか、土塗壁、貫その他伝統構法で採用される耐力要素を用いて補強するのかを判断する。
具体的には、木造建物内に立設された柱のサイズ及びSS試験による地耐力の大きさに基づいて判断し、柱サイズが150mm角を下回っている場合(ステップ101,YES)、又はSS試験による地耐力が30kN/m2を下回っている場合(ステップ102,YES)、耐力壁を用いた補強を選択する。
一方、柱サイズが150mm角以上であり(ステップ101,NO)、かつSS試験による地耐力が30kN/m2以上である場合(ステップ102,YES)、耐震要素を用いた補強を選択する。
図2は、補強の対象となる建物の概略断面図、図3は構法(a)を採用した後の建物の概略断面図である。図2に示すように、対象となる建物1は、礎石2の上に柱3を立設するとともに、該柱の下方に土台4が、上方に梁6がそれぞれ架け渡してある。また、同図で左側の柱梁構面には土塗壁5を設けてある。
かかる建物1を構法(a)に従って補強する場合には図3に示すように、建物1の床下に拡がる地盤上に鉄筋コンクリートからなる耐圧盤12を形成し、該耐圧盤に柱3の脚部を連結するとともに、該柱の脚部を足固め11を介して相互に連結する(ステップ103)。
耐圧盤12は、例えば180〜200mm程度の厚みでシングル配筋の鉄筋コンクリート版とすればよい。
なお、既存の土台4は、足固めとしてそのまま機能させればよい。また、柱3は、耐力壁追加による引抜き力に抵抗できるよう、その脚部を必要に応じてホールダウン金物で耐圧盤12に適宜連結するのが望ましい。
次に、建物1においては、梁6が途中で途切れていて水平構面が形成されていないため、横架材としての梁13を新規に架け渡すことにより、梁6の高さに上段の水平構面をあらたに形成する。下段の水平構面については、既存の土台4を利用して下段の水平構面とすればよい(ステップ103)。
次に、上下二段の水平構面の間に耐力壁15を設置する(ステップ103)。
ここで、図3の左側については、既存の土塗壁5を撤去した上、あらたに筋かいからなる耐力壁15を設置し、右側については、同様の耐力壁15をあらたに設置してある。なお、耐力壁15を設置した箇所については、上段側の足固めである土台4と新設された下段側の足固め11との間に根がらみ14を設置する。
図4は構法(b)を採用した後の建物の概略断面図であり、同図に示すように、構法(b)においては、柱3の脚部を足固め41で相互に連結するとともに、耐力要素としての貫43を柱3,3に架け渡し、しかる後、該貫を埋設する形でやはり耐力要素である土塗壁42を塗り込む(ステップ104)。
なお、既存の土台4で足固めとしての機能が足りるのであれば、足固め41をあらたに設置する必要はない。また、必要に応じて防湿コンクリートを敷設する。
以上説明したように、本実施形態に係る伝統構法における建物の補強方法によれば、耐力壁を用いるのか耐力要素を用いるのかの選択を、建物1内に立設された柱3のサイズ又はSS試験による地耐力の大きさに基づいて判断するようにしたので、伝統構法による建物1に耐震補強を施す際、現行基準に基づいた耐力壁と伝統構法で採用されている耐力要素との使い分けが明確かつ客観的となり、伝統構法で構築された建物のうち、構造的に良質なものについては、伝統構法のままで耐震補強を施すことができるとともに、構造的に不足する部分があるものについても、可能な限り、伝統構法の良さを残しつつ、耐力壁を用いて耐震補強を行うことが可能となる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態では、伝統構法で構築された建物のうち、建築関連法令上の制約がなく、補強対策として耐震補強と制震補強を選択できる場合について説明する。
図5は、本実施形態に係る伝統構法における建物の補強方法の実施手順を示したフローチャートである。同図でわかるように、本実施形態に係る補強方法においては、まず、耐震補強と制震補強のどちらを採用するかを比較検討する(ステップ111)。
かかる検討を行うにあたっては、耐震補強と制震補強の特性を考慮して判断すればよい。例えば耐震補強は、建物全体の剛性が高まって層間変形を抑えることができるが、その反面、入力地震動による部材力が増加するため、耐力を増加させるための耐力壁の選定に留意する必要がある。
一方、制震補強においては、耐力壁あるいは耐力要素を追加する必要がないため、プランの制約がなくなり、従前の間取りをそのまま維持することができるが、その反面、伝統構法ゆえの柔構造の特性として層間変形が大きくなるため、制震装置の選定が重要となる。
建物1に対する補強策として耐震補強を採用する場合については(ステップ112,NO)、第1実施形態で既に述べたので、ここではその説明を省略する。
耐震補強ではなく制震補強を選択した場合(ステップ112,YES)、まず、建物1の床下空間又は天井裏空間に制震装置の設置スペースがあるかどうかを判断する(ステップ113)。
設置スペースがない場合(ステップ113,NO)、構法(c)を採用する。
建物1を構法(c)に従って補強する場合には図6に示すように、土台4と梁6との間の柱梁構面に制震装置を適宜設置する。
制震装置は、柱梁構面に設置可能な公知の装置から適宜選択して採用することが可能であり、例えば、同図に示すような制震装置61を用いることができる。
制震装置61は、土台4の上面に立設された下部支持体63と、梁6の下面に垂設された上部支持体62と、一端が下部支持体63の上縁に接続され他端が上部支持体62の下縁に接続された油圧ダンパー64とで構成してあり、地震時において梁6と土台4との間に生じる層間変形によって油圧ダンパー64が伸縮し減衰作用を発揮し、建物1の揺れを抑制するようになっている。
一方、建物1の床下空間又は天井裏空間に制震装置の設置スペースがある場合には、(ステップ113,YES)、構法(d)を採用する。
建物1を構法(d)に従って補強する場合には図7に示すように、床下空間と天井裏空間に制震装置を配置する。
制震装置は、上記空間に設置可能な公知の装置から適宜選択して採用することが可能であり、例えば、同図に示すような油圧ダンパー71を用いることができる。
油圧ダンパー71は床下においては、その一端を柱3の側面に、他端を土台4の裏面、又はあらたに設定した足固め41の上面に接続してあり、地震時において土台4あるいは足固め41と柱3との間に生じる層間変形に起因した回転角によって油圧ダンパー71が伸縮して減衰作用を発揮し、建物1の揺れを抑制するようになっている。
また、天井裏空間においては、油圧ダンパー71は、その一端を柱3の側面に、他端を梁6の裏面に接続してあり、地震時において梁6と柱3との間に生じる層間変形に起因した回転角によって油圧ダンパー71が伸縮して減衰作用を発揮し、建物1の揺れを抑制するようになっている。
以上説明したように、本実施形態に係る伝統構法における建物の補強方法によれば、耐力壁を用いるのか耐力要素を用いるのかの選択を、建物1内に立設された柱3のサイズ又はSS試験による地耐力の大きさに基づいて判断するようにしたので、伝統構法による建物1に耐震補強を施す際、現行基準に基づいた耐力壁と伝統構法で採用されている耐力要素との使い分けが明確かつ客観的となり、伝統構法で構築された建物のうち、構造的に良質なものについては、伝統構法のままで耐震補強を施すことができるとともに、構造的に不足する部分があるものについても、可能な限り、伝統構法の良さを残しつつ、耐力壁を用いて耐震補強を行うことが可能となる。
1 伝統構法で構築された木造建物
3 柱
4 土台(足固め)
11 足固め
12 耐圧盤
15 耐力壁
42 土塗壁(耐力要素)
43 貫(耐力要素)

Claims (3)

  1. 伝統構法で構築された木造建物に対して耐震補強を行う際、耐力壁を用いて補強するのか、土塗壁、貫その他伝統構法で採用される耐力要素を用いて補強するのかを判断し、前記耐力壁を用いて補強する場合には構法(a)を、前記耐力要素を用いる場合には構法(b)を採用する伝統構法における建物の補強方法であって、
    前記構法(a)は、前記建物の床下に拡がる地盤上に鉄筋コンクリートからなる耐圧盤を形成し該耐圧盤に前記建物の柱の脚部を連結するとともに該柱の脚部を足固めを介して相互に連結し、かかる基礎補強工程と同時に又は相前後して、前記建物内に形成された上下二段の水平構面の間に耐力壁を設置する工程からなり、
    前記構法(b)は、前記建物の柱の脚部を足固めで相互に連結し、該連結工程と同時に又は相前後して、土塗壁、貫その他伝統構法で採用される耐力要素を前記建物内に設置する工程からなり、
    前記耐力壁を用いるか前記耐力要素を用いるかの選択を行うにあたっては、前記木造建物内に立設された柱のサイズ又はSS試験による地耐力の大きさに基づいて判断し、前記柱サイズ又は前記地耐力が所定値を下回っている場合には前記構法(a)を選択し、前記柱サイズ及び前記地耐力が所定値以上である場合には前記構法(b)を選択することを特徴とする伝統構法における建物の補強方法。
  2. 伝統構法で構築された木造建物に対して補強を行う際、耐震補強と制震補強のどちらを採用するかを比較検討し、耐震補強を採用する場合、さらに耐力壁を用いて補強するのか、土塗壁、貫その他伝統構法で採用される耐力要素を用いて補強するのかを判断し、前記耐力壁を用いて補強する場合には構法(a)を、前記耐力要素を用いる場合には構法(b)を採用し、前記制震補強を採用する場合、さらに前記建物の床下空間又は天井裏空間に制震装置の設置スペースがあるかどうかを判断し、該設置スペースがない場合には構法(c)を採用し、前記設置スペースがある場合には、構法(d)を採用する伝統構法における建物の補強方法であって、
    前記構法(a)は、前記建物の床下に拡がる地盤上に鉄筋コンクリートからなる耐圧盤を形成し該耐圧盤に前記建物の柱の脚部を連結するとともに該柱の脚部を足固めを介して相互に連結し、かかる基礎補強工程と同時に又は相前後して、前記建物内に形成された上下二段の水平構面の間に耐力壁を設置する工程からなり、
    前記構法(b)は、前記建物の柱の脚部を足固めで相互に連結し、該連結工程と同時に又は相前後して、土塗壁、貫その他伝統構法で採用される耐力要素を前記建物内に設置する工程からなり、
    前記構法(c)は、前記建物の柱の脚部を足固めで相互に連結し、該連結工程と同時に又は相前後して、前記建物内の柱梁構面に制震装置を設置する工程からなり、
    前記構法(d)は、前記床下空間又は前記天井裏空間に制震装置を設置する工程からなり、
    前記耐力壁を用いるか前記耐力要素を用いるかの選択を行うにあたっては、前記木造建物内に立設された柱のサイズ又はSS試験による地耐力の大きさに基づいて判断し、前記柱サイズ又は前記地耐力が所定値を下回っている場合には前記構法(a)を選択し、前記柱サイズ及び前記地耐力が所定値以上である場合には前記構法(b)を選択することを特徴とする伝統構法における建物の補強方法。
  3. 前記柱サイズの所定値を150mm角、前記地耐力の所定値を30kN/m 2 とする請求項1又は請求項2記載の伝統構法における建物の補強方法。
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