JP5594742B2 - 18f標識アジド化合物、18f標識化用試薬及びそれを用いたアルキン化合物の18f標識方法 - Google Patents

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Description

本発明は、18F標識アジド化合物、18F標識化用試薬及びそれを用いたアルキン化合物の18F標識方法に関する。本発明は、陽電子放射断層画像撮影(以下「PET」という)に不可欠な放射性トレーサーの製造に、好適に用いることができる。
PET法とは、18Fや11Cなどのポジトロンを放出する短寿命放射核で標識されたトレーサーを生体内に投与し、トレーサーから発生するγ線をPETカメラ(ガンマ線シンチレーターと光電子増倍管からなる検出器)によって計測して、その体内分布をコンピューターにより画像化する方法である。PET法は生体内での物質の移動を経時的、非侵襲的かつ定量的に追跡することができるため、生物学、医薬品開発、医療などの各分野において有用な測定技術として活用されている。

PET法で使用される短寿命放射核種としては18Fや11C等が用いられ、これらの放射核種で標識された化合物がトレーサーとして用いられる。11Cは有機化合物中に存在している炭素原子を利用しているため適用範囲が極めて広く、理想的な放射核種ともいえるが、半減期が20分と短く、合成からPET法での測定までを極めて短時間で行なわなければならないという制約がある。これに対して18Fの半減期は110分であり、11Cよりは半減期が長くて扱いやすいため、18F標識グルコース等、広く利用されている。しかしながら、18Fといえども時間と共にポジトロンの放出量が少なくなるため、PET測定が困難となる。このため、迅速かつ簡便な18Fによる標識方法が求められている。
18F標識化合物の調製に際し、原料となる18Fはサイクロトロンによる核種変換によって供給される。具体的には、18Oを含んだ水にサイクロトロンで加速したイオンを衝突させ、18Oから18Fへ核種変換させることによって調製される。こうして得られた18Fイオンを含む極めて希薄な水溶液と、PET法の対象となる化合物とを反応させれば、18Fによる標識された化合物が得られることになる。
しかし、PET法の対象となる化合物に対して18Fを直接結合させることは、通常極めて困難である。このため、18Fで標識されているとともに、他の化合物と結合するための官能基を有する中間化合物(以下、本明細書においてこのような中間体を「18F接合団」という)を予め調製しておき、これをPET法の対象となる化合物と結合させるという、間接的な18F標識化手法が用いられる。
18F接合団に要求される性質としては、(1)手早く簡単に合成ができること、(2)温和な条件で短時間に高効率で目的化合物と結合すること、(3)目的化合物の生体内での動態に与える影響が小さいこと、等が挙げられる。これらの要求に応えるため、Huisgen反応を利用する18F接合団が注目されている。
Huisgen反応とは、有機アジド化合物とアルキン類とが[3+2]型の付加環化反応を起こし、1,2,3-トリアゾール誘導体となる反応をいう(下記化学式参照)。
Figure 0005594742
アルキン類が末端アルキンの場合、銅(I)イオンが触媒となり、選択的に1,4-二置換体が得られる。この反応は、他にアルコール、アミン、アミド、エステル、ハライドなど各種官能基があっても邪魔されず、目的のトリアゾールが高収率で得られる。反応溶媒もアルコール、一般的有機溶媒、水などの中で問題なく進行する。またアジド及びアルキンは各種有機化合物に導入が容易であり、反応後に余分な廃棄物を出さないという多くの利点を有している。このため、ノーベル化学賞を受賞したK.B.Sharplessらが提唱するクリック化学の代表例として挙げられている。
近年、このHuisgen反応を利用し、アジド化合物又はアルキン化合物に18Fを標識した化合物を18F接合団として用いて、目的化合物に18F接合団を導入することが行なわれている。以下、その具体例を挙げる。
例えば、カリフォルニア大学デービス校のMarik及びSutcliffeは、末端にアセチレン基を有するトシラート体を[18F]KF及びカリウム捕捉剤(Kryptofix222)の存在下でフルオロ化し、蒸留によって精製して18Fで標識されたフルオロアルキン類を18F接合団として得ている(非特許文献1)。そして、さらにアジド化したペプチドと18F接合団とのHuisgen反応をヨウ化銅(I)、アスコルビン酸ナトリウム、及びアミン塩基としてジイソプロピルエチルアミンを添加した触媒系で行い、室温10分の条件でペプチドの18F標識化を行なっている(下記反応式参照)。
Figure 0005594742
そして、さらに彼らのグループは上記式におけるn=3の18F接合団を用いてαβ特異的ペプチドの18Fによる標識化を行い、マウスを用いてin vivoでのPET撮像に成功している(非特許文献2)。
さらに、上記式におけるn=1のものを用いた例は、韓国のSungkyunkwan大学校のグループからも報告されている(非特許文献3)。
また、シーメンス・メディカル・ソリューションズ・USA社のグループは、上記式におけるn=0に相当する化合物を用いる方法を報告している(特許文献1)。すなわち、プロパルギルトシラートを18F化し反応容器内に18F接合団([18F]-3-fluoropropyne)を生成させ、これを精製することせずに反応液に大過剰のアジド基質を加え、酢酸銅(I)でカップリング反応を行っている。
また、18F標識アジド化合物を用いた例として、非特許文献4では[18F]フルオロエチレンアジドを18Fとして用いて末端アセチレン基を有するオリゴペプチドとのHuisgen反応を行い、オリゴペプチドの18F標識化に成功している(下記化学式参照)。
Figure 0005594742
また、韓国インハ大学校のグループは、複数の18F標識アルキン化合物及び18F標識アジド化合物(下記化学式参照)を18F接合団として用いる方法を報告しており、多岐にわたる基質の18F標識化を行なっている(非特許文献5)。しかしながら、彼らの方法もまた、特許文献1と同様、18F接合団の精製をせずにそのままカップリング反応をする方法を取っているため、18F接合団に対して大過剰の18F標識化対象化合物を用いている。
Figure 0005594742
さらに、スタンフォード大のグループは、蒸留法よりも自動化しやすい分取HPLCで精製することで、純度の高い18F標識アルキン化合物を得た(非特許文献6)。そして、硫酸銅−アスコルビン酸ナトリウムでアミン塩基無しの触媒系でHuisgen反応を行うことで、インテグリンαβのリガンドの18F標識化を行ない、マウスを使ったPET撮像を行った。
また、ドイツのDresden-Rossendorf研究センターのグループは下記製法によって合成される4-[18F]Fluoro-N-(prop-2-ynyl)benzamideをSPE法(Solid phase extraction法)で精製して18F接合団として用い、Huisgen反応を用いてアジド化Neurotensin (8-13)ペプチドの18Fによる標識化を行なっている(非特許文献7)。
Figure 0005594742
彼らは、18F標識化実験1回あたりに必要なペプチドの使用量を減らすべく、Huisgen反応の条件検討を行い、硫酸銅−アスコルビン酸ナトリウムの触媒系をホウ酸バッファーと共に用いる最適化条件に到達し、アジド化Neurotensin (8-13)ペプチドの使用量を1mg(約1μmol)まで削減することに成功したが、実用化のためには、使用量の更なる削減が必要である。
また、カナダのTRIUMFのグループは、アリファティックなフッ素よりもアリールフッ素の方が代謝的に安定であろうという仮説を立て、1段階で合成できるアリールフッ素型の18F接合団を開発し、2008年に報告した(非特許文献8)。
すなわち、下記式に示すピリジン誘導体の2位のニトロ基又はトリメチルアンモニオ基をフッ素置換し、HPLC精製することで純度の高い18F接合団を得たのちに、TBTA,Cu(CHCN)PF及びジイソプロピルエチルアミンを用いる触媒系で18F標識化対象化合物(アジド化ペプチド前駆体)とHuisgen反応を行った。しかしながら、18F標識化対象化合物の使用量は1400nmolと多く、実用化のためには、やはり、更なる削減が必要である。
Figure 0005594742
一方、近年アンチセンス、アンチジーン、デコイ、RNA干渉などの現象に基づく遺伝子治療等の分野が進んでおり、天然型(DNA,RNA)や、天然型(DNA,RNA)よりもより優れた薬物動態や生理活性をもつ非天然型(例えば2’-O-MeRNA、ホスホロチオアートオリゴ、BNA類、LNA)の人工核酸を用いた遺伝子治療の試みがなされている。これら天然型あるいは非天然型のオリゴヌクレオチドを18F標識化してPETプローブとし、ヒトや実験動物に投与してその生体内での動態をPETカメラで測定することは、オリゴヌクレオチドの研究を推進し、医薬品としての開発を加速すると思われる。また、オリゴヌクレオチドに特徴的な性質である「相補鎖との二重鎖形成」現象を、18Fにより標識化されたオリゴヌクレオチドを用いて生きた生体内で観察すること(in vivo hybridization)ができれば、生体内でのmRNA発現量の簡便な測定が可能になり、疾病の診断及び医学/薬学研究に幅広く応用できると思われる。このような背景から、これまでにもオリゴヌクレオチドの18F標識化法が研究され、報告されている(例えば非特許文献9〜14)。
WO2006/116629
Marik, J.; Sutcliffe, J. L. Tetrahedron Lett. 2006, 47, 6681-6684. Hausner, S. H.; Marik, J.; Gagnon, M. K. J.; Sutcliffe, J. L. J. Med. Chem. 2008, 51, 5901-5904. Kim, D. H.; Choe, Y. S.; Jung, K. -H.; Lee, K. -H.; Choi, J. Y.; Choi, Y.; Kim, B. -T. Arch. Pharm. Res. 2008, 31, 587-593. Glaser, M.; Arstad, E. Bioconjugate Chem. 2007, 18, 989-993. Sirion, U.; Kim, H. J.; Lee, J. H.; Seo, J. W.; Lee, B. S.; Lee, S. J.; Oh, S. J.; Chi, D. Y. Tetrahedron Lett. 2007, 48, 3953-3957. Li, Z. B.; Wu, Z.; Chen, K.; Chin, F. T.; Chen, X. Bioconjugate Chem. 2007, 18, 1987-1994. Ramenda, T.; Bergmann, R.; Wuest, F. Lett. Drug Des. Discovery 2007, 4, 279-285. Inkster, J. A. H.; Guerin, B.; Ruth. T. J.; Adam, M. J. J. LabelledCompd. Radiopharm. 2008, 51, 444-452. Dolle, F.; Hinnen, F.; Vaufrey, F.; Tavitian, B.; Crouzel, C. J. LabelledCompd. Radiopharm. 1997, 39, 319-330. Kuhnast, B.; Dolle, F.; Terrazzino, T.; Rousseau, B.; Loc’h, C.; Vaufrey, F.; Hinnen, F.; Doignon, I.; Pillon, F.; David, C.; Crouzel, C.; Tavitian, B. Bioconjugate Chem. 2000, 11, 627-636. Kuhnast, B.; de Bruin, B.; Hinnen, F.; Tavitian, B.; Dolle, F. Bioconjugate Chem. 2004, 15, 617-627. Hedberg, E.; Langstrom, B. Acta Chem. Scand. 1997, 51, 1236-1240. Hedberg, E.; Langstrom, B. Acta Chem. Scand. 1998, 52, 1034-1039. Christopher, W. L.; VanBrocklin, H. F.; Taylor, S. E. J. Label. Compd. Radiopharm. 2002, 45, 257-268.
上述のように、18F接合団として、これまで様々な18F標識アジド化合物及び18F標識アルキン化合物が合成され、Huisgen反応を利用した18F標識化が行なわれてきた。そして、さらには18F標識化された化合物の動態がPET法によって調べられてきた。しかしながら、それらの18F標識アジド化合物では、何れも反応の相手となるアセチレン基修飾基質を多量に用いなければならず、18F標識アルキン化合物では、何れも反応の相手となるアジ基修飾基質を多量に用いなければならなかった。これは、次のような理由によると考えられる。
有機化学の分野において、Huisgen反応は、銅(I)触媒存在下、アジド化合物とアルキンとを混合するだけで容易かつ迅速に進行する便利な反応と思われているが、Huisgen反応を利用した18F標識化においては、以下に示すように、事情が全く異なり、極めて困難となる。それは、サイクロトロンによって製造される18Fは極少量であるため、極めて低濃度の18F接合団を用いざるを得ないからである。反応速度論によれば、反応速度は反応速度定数と反応基質との関数となり、このため極めて低濃度の18F接合団を用いてHuisgen反応を行なう場合、反応速度定数の大きな反応系を選んだり、標識化対象化合物の濃度を高めたりする必要がある。ところが、上記従来の反応系における反応速度定数は充分に大きくはなかったため、標識化対象化合物の濃度を高める、つまり多量の標識化対象化合物を用いるより他なかったのである。このため、例えばオリゴペプチドやオリゴヌクレオチドのように、天然物から多量に単離したり多種多量に合成するには多大な時間とコストがかかる物質を標識化対象化合物とする場合においては、限られた回数のPET撮像は可能であっても、何配列ものオリゴペプチドやオリゴヌクレオチドを用いた本格的なPET研究に応用するのは困難となっていたのである。なお、オリゴヌクレオチドに対しては、これまでHuisgen反応を利用して18F標識化を行なった例は存在しない。
Huisgen反応を利用しない方法によってオリゴヌクレオチドの18F標識化を行なった報告としては、前述した非特許文献9〜14が挙げられる。しかし、これらの方法を用いてPET法を行なおうとした場合、やはり、多量多種の入手には多大な時間とコストがかかるオリゴヌクレオチド前駆体を多量に用いることが必要であったため、実用化は困難となっていた。また、これらは、5’末端又は3’末端に18F標識化する方法であり、それ以外の部位への18F標識化はできなかった。このため、オリゴヌクレオチド前駆体の使用量が少なく、標識化部位の選択の幅が広い18F標識化法が強く望まれていた。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、Huisgen反応に利用できる18F標識アジド化合物であって、相手基質となるアルキン化合物が少ない量でも18F標識化が可能であり、ペプチドやオリゴヌクレオチドへのPET法の適用が可能であり、オリゴヌクレオチドの5’末端や3’末端以外の部位にも18F標識化が可能な18F標識アジド化合物、18F標識化用試薬及びそれを用いたアルキン化合物の18F標識方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来の問題点を解決すべく、まずPET法に適用する上で好ましい18F標識アジド化合物のデザインについて検討を行なった。18F標識化に際しては、PET法の対象となる化合物の生体内での動態になるべく影響を与えないよう、分子量の小さな化合物であることが好ましい。このような化合物として究極的には18FCHが考えられるが、沸点が低くてガス化しやすいため、放射能被曝の危険性から使用することができない。このため、ある程度沸点が高いことが好ましい。また、合成後に精製濃縮しやすくするためには、高速液体クロマトグラフ(以下「HPLC」という)装置におけるUV検出器で検出可能な強いUV吸収を持ち、かつ溶出したフラクションを濃縮時に揮発しない程度の沸点を持ちようにデザインされていることが望ましい。また、18F標識アジド化合物の前駆体からは、1段階で迅速に合成できることが望ましい。さらには、化学的な安定性も考慮すべきである。
こうした要求を満たす化合物として、本発明者らは18Fで標識化したフェニルアジド化合物を候補として挙げた。そして、フェニル基の水素をフッ素に変換することは困難であることを考慮し、フェニル基にフルオロアルキル基を導入することを考え、最も小さいフルオロメチル基を導入するデザインを考えた。そして、このデザインに沿った化合物を合成し、さらにはアセチレン基で修飾したオリゴヌクレオチドとのHuisgen反応を行ない、上記問題点を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の18F標識アジド化合物は、下記構造式(1)で示されることを特徴とする。
Figure 0005594742
上記18F標識アジド化合物はアジ基を有しているため、炭素−炭素三重結合を有する化合物とHuisgen反応を起こすことができる。このため、18F標識化用試薬として用いることができる。
本発明者らによれば、上記18F標識アジド化合物は、アルキン化合物と銅化合物触媒存在下でHuisgen反応を行うことによって、迅速かつ容易に18F標識トリアゾール誘導体とすることができる。この反応は、従来の18F標識アジド化合物を用いたHuisgen反応と比べて、相手基質となるアルキン化合物の濃度が低くても反応が進行する。このため、多量に基質を用意することが難しい、ペプチドやオリゴヌクレオチドの18F標識化にも用いることができる。
この場合において、反応溶媒として水及び水溶性の有機溶媒からなる混合溶媒を用い、アスコルビン酸塩及びアミン系塩基の存在下で反応を行なうことが好ましい。水溶性の有機溶媒としては、例えば、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ベンゾフェノン、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルー2−ピロリジノン、N−メチル―ε―カプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノールなどが挙げられる。この中でもジメチルスルホキシド(以下DMSOという)は溶解力に優れ、安全性が高く、腐食性も少なく、融点や沸点が適当で扱いやすく、収率が良いことから、特に好適に用いることができる。また、アミン系塩基としては、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、(トリス((1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル)アミン等が挙げられる。これらの中でも、(トリス((1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル)アミン(以下「TBTA」という)が特に好ましい。
本発明のアルキン化合物の18F標識方法におけるアルキン化合物は、ヌクレオチド誘導体とすることができる。オリゴヌクレオチドは、アンチセンス、アンチジーン、デコイ、RNA干渉などの現象に基づく生理活性から、医薬品へ応用可能な生体分子である。また近年は天然型(DNA,RNA)よりもより優れた薬物動態や生理活性をもつ非天然型の人工核酸(例えば2’-O-MeRNA、ホスホロチオアートオリゴ、BNA類、LNA)の研究も進んでいる。これら天然型あるいは非天然型のオリゴヌクレオチドを18F標識化してPETプローブとし、ヒトや実験動物に投与してその生体内での動態をPETカメラで測定することは、オリゴヌクレオチドの研究を推進し、医薬品としての開発を加速することができる。
また、オリゴヌクレオチドへのアルキニル基の修飾は、5’末端や3’末端以外の部位へも可能であるため、5’末端や3’末端以外の部位への18F標識が可能となる。
本発明を具体化した実施例について以下に詳細を述べる。
4-メチルベンゼンスルホン酸4-アジドベンジル(3a)の合成
まず、本発明の18F標識アジド化合物の前駆体となる4-メチルベンゼンスルホン酸4-アジドベンジル(3a)を下記反応式に示す方法により合成した。
Figure 0005594742
すなわち、4-アジドベンジルアルコール(2a)(文献(Andersena,J.et al.;Synlett 2005, 14, 2209-2213)記載の方法により調製)(149mg、1.00mmol)を塩化メチレン(5.0mL)に溶解し、ピリジン(0.162mL、2.00mmol)及びp-トルエンスルホン酸無水物(343mg、1.05mmol)を0℃で加えた。30分間撹拌した後、水を加えてクエンチした。水層を除去し、有機層を1mol/L塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣にジエチルエーテル(3mL)を加え、不溶物を綿栓でろ過した。ろ液にヘキサン(5mL)を加えて撹拌し、0℃で30分静置して結晶を析出させた。上澄み液をピペットを用いて除去し、結晶をヘキサンで洗浄した後、減圧下乾燥して4-メチルベンゼンスルホン酸4-アジドベンジル(3a)(218mg、0.719mmol,71.9%)を無色の結晶として得た。このものの1H-NMRスペクトル、13C-NMR スペクトル及びマススペクトル(EI法)を以下に示す。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)
δ: 2.45 (3H, s), 5.02 (2H, s), 6.97 (2H, d, J = 8.3 Hz), 7.24 (3H, d, J = 8.3 Hz), 7.34 (2H, d, J = 8.3 Hz), 7.79 (2H, d, J = 8.3 Hz)
13C-NMR (100 MHz, CDCl3)
δ: 21.7, 71.3, 119.2, 127.9, 129.9, 129.9, 130.3, 133.3, 141.0, 144.9
HRMS (EI)
calc 303.0677 obs 303.0650
4-メチルベンゼンスルホン酸3-アジドベンジル(3b)の合成
また、上記と同様の方法により、上記化合物(3a)の異性体である4-メチルベンゼンスルホン酸3-アジドベンジル(3b)を収率51.8%で得た。
Figure 0005594742
このもののIRスペクトル、1H-NMRスペクトル、13C-NMR スペクトル、マススペクトル(EI法)及び元素分析を以下に示す。
IR (film, KBr)
2114, 1593, 1489, 1452, 1360, 1292, 1177, 945, 835, 814, 781, 665 cm-1
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)
δ: 2.45 (3H, s), 5.03 (2H, s), 6.85 (1H, s), 6.97 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.03 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.30 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.33 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.79 (2H, d, J = 8.5 Hz)
13C-NMR (100 MHz, CDCl3)
δ: 21.6, 71.0, 118.8, 119.5, 124.7, 128.0, 129.9, 130.1, 133.1, 135.3, 140.5, 145.0. LRMS (EI)
calc 303 obs 303.
元素分析
calc. H4.32%, C55.43%, N13.85%. obs. H4.32%, C55.59%, N13.89%
<アセチレン基修飾オリゴヌクレオチドの合成>
アセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4a)の合成
次に、Huisgen反応の基質となるアルキン化合物として、下記アセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4a)(式中の配列は天然型DNAを示す)を文献(S. Obika, et al. Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, 2009,19,3316-3319)に記載の方法により合成した。
Figure 0005594742
アセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4b)の合成
さらに、人工核酸として2’,4’−BNA(LNAとも呼ばれる、下式参照)及びホスホロチオエート結合を有するアセチレン基修飾オリゴヌクレオチド前駆体(4b)(式中下線部は2’,4’−BNAを示し、無下線部は天然型のDNAを示す。また、式中「s」は個々にホスホロチオエート結合を示す。)を、文献(S. Obika, et al. Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, 2009,19,3316-3319)に記載の方法により合成した。
Figure 0005594742
Figure 0005594742
アセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4c)の合成
さらに、デオキシリボースの2´位と4´位が架橋化されたアセチレン基修飾オリゴヌクレオチド前駆体(4c)(式中下線部は2’,4’−BNAを示し、無下線部は天然型のDNAを示す。)を、文献(S. Obika, et al. Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, in press, doi:10.1016/j.bmcl.2009.04.063)に記載の方法により合成した。
Figure 0005594742
18F標識アジド化合物の合成及びアセチレン基修飾オリゴヌクレオチドの18F標識化>
続いて、先に合成した4-メチルベンゼンスルホン酸-4-アジドベンジル(3a)及び4-メチルベンゼンスルホン酸-3-アジドベンジル(3b)を用いて18F標識アジド化合物を合成し、さらにアセチレン基修飾オリゴヌクレオチドとのHuisgen反応を用いたカップリング反応を行なった。
(実施例1)
実施例1では、4-メチルベンゼンスルホン酸-4-アジドベンジル(3a)のトシレート基を18Fで置換することにより18F標識アジド化合物(1a)を合成し、さらに上記アセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4a)とのHuisgen反応を用いたカップリング反応を行なった。詳細を以下に示す。
Figure 0005594742
18F標識アジド化合物(1a)の合成>
[18O]水(大陽日酸株式会社製, 約2 mL)を12 MeVの電子ビーム(HM-12S, 住友重機械工業株式会社製、50μA電流値、30分)で照射して[18F]フッ素イオンを生成した。得られた約50 GBqの[18F]フッ素イオンの[18O]水溶液をホットセル内に設置した標識用合成装置(GNMS-アルファ大日本精機株式会社製GNMS-α)に導入し、陰イオン交換樹脂カートリッジ(SAIKA-SPE SAX-30、AiSTI SCIENCE製)に通じた。吸着された[18F]フッ素イオンを炭酸水素テトラN-ブチルアンモニウム(0.025 mol/L 80%アセトニトリル/水溶液、0.6 mL)で脱離させ、さらにアセトニトリル0.6 mLで洗浄した。そして、第1の反応容器へ導入した[18F]フッ素イオンの溶液を減圧下、ヘリウム気流を流しながら110℃に加熱して乾固させ、さらにアセトニトリル(1mL)で共沸乾燥した。残渣に(4-メチルベンゼンスルホン酸4-アジドベンジル)(1a)(6.0 mg)のアセトニトリル(1 mL)溶液を加えて85℃で5分間反応させた。この時の分析ラジオ化学収率は99%であった。反応混合物をセミ分取HPLC (条件: ナカライテスク株式会社製COSMOSIL MS-II 10 x 250 mmカラム, 40%アセトニトニル/水で6分60%で14分通液, 4 mL/min流量, 保持時間15-16 分に目的物は溶出する)で分離精製した。
<アセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4a)の18F標識アジド化合物(1a)による18F標識化>
上記のようにして分離精製した18F標識アジド化合物(1a)を含むフラクションを集め、あらかじめ0.18 mLのDMSOを入れておいた第2の反応容器に移送した。40℃に加熱しつつヘリウム気流下で減圧してアセトニトリルを慎重に揮発させた。こうして得られた18F標識アジド化合物(1a)のDMSO-水混合溶液(約0.5 mL)にバッファー(100 mmol/L リン酸ナトリウムバッファー, pH 7.0, 60μL)とアセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4a)(0.50 mmol/L水溶液、40μL)と硫酸銅(50 mmol/L水溶液、12μL)とTBTA(トリス((1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル)アミン、50 mmol/L DMSO溶液、6μL)とアスコルビン酸ナトリウム(50 mmol/L水溶液、12μL)を加えて40℃で15分間反応させた。この時の分析ラジオ化学収率は92%であった。反応液を水(0.3 mL)で希釈し、セミ分取HPLC(条件: ナカライテスク株式会社製COSMOSIL AR-II 10 x 250 mmカラム, カラム温度50 °C, 20分かけて10-20% CH3CN/ 0.1 mol/L TEAA bufferで直線的にグラジエント, 4 mL/min流量, 保持時間14-15分に目的物は溶出する。)で分離精製した。目的物[18F](5a)を含むフラクションを集め、減圧下アセトニトリルをエバポレートして18F標識化オリゴヌクレオチド(5a)のTEAAバッファー溶液(5 mL)を得た。
18F標識化オリゴヌクレオチド(5a)の合成に要する時間と収率>
以上、18F標識化オリゴヌクレオチド(5a)の合成に要する時間及び収率等は以下の通りである。
合成時間:84分、単離した(5a)の放射能:2.53GBq、比放射能:2366GBq/μmol、化学的純度(UV260nm):95%、放射化学的純度:87%、[18F]フッ素イオンに基づく放射化学収率:5.2%(減衰補正なし)、8.6%(減衰補正あり)であった。
また、本合成法は必要に応じてTEAAを脱塩したり、濃縮したりすることも可能である。以下に脱塩の処理の詳細を示す。
[18F](5a)のTEAAバッファー溶液をSep-Pak Plus C18 (ウォーターズ社製、40 mLの EtOH と40 mLの水でプレコンディショニング済)に通じ、水(5mL)で2回洗浄し、窒素ガスフローで1分間乾燥させ、エタノール(1 mL)で[18F](5a)を溶出させた。エタノールは窒素ガスフローで揮発させ、[18F](5a)の濃厚水溶液を得た。これを適切な量の生理食塩水で希釈して動物への投与液を作成した。プロセス時間がさらに30分かかったが、90%が回収された(減衰補正あり)。
(実施例2)
実施例1と同様の方法により、4-メチルベンゼンスルホン酸-3-アジドベンジル(3b)のトシレート基を18Fで置換することにより18F標識アジド化合物(1b)を合成し、さらに上記アセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4a)とのHuisgen反応を用いたカップリング反応を行なった。
なお、実施例には示さないが、実施例1において出発物質となった4-アジドベンジルアルコール(2a)の代わりに2-アジドベンジルアルコールを用いて、実施例1と同様の操作を行なうことにより、オルト体の18F標識アジド化合物が得られることは、技術常識から明白である。
Figure 0005594742
18F標識アジド化合物(1b)の合成>
実施例1における18F標識アジド化合物(1a)の合成と同様の方法により、18F標識アジド化合物(1b)を合成した。
<アセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4a)の18F標識アジド化合物(1b)による標識化>
次いで実施例1と同様の方法により、アセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4a)の18F標識アジド化合物(1b)による標識化を行なった。すなわち、上記で合成した18F標識アジド化合物(1b)とアセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4a)とをHuisgen反応を用いてカップリング反応を行い、18F標識化オリゴヌクレオチド(5b)のTEAAバッファー溶液(5mL)を得た。
18F標識化オリゴヌクレオチド(5b)の合成に要する時間と収率>
以上、18F標識化オリゴヌクレオチド(5b)の合成の合成に要する時間及び収率等は以下の通りである。
合成時間:83分、単離した(5b)の放射能:2.12GBq、比放射能:1809 GBq/μmol、化学的純度(UV260nm):99%、放射化学的純度:93%、[18F]フッ素イオンに基づく放射化学収率: 4.2%(減衰補正なし)、7.2%(減衰補正あり)であった。
(実施例3)
実施例3では実施例2と同様の方法により、4-メチルベンゼンスルホン酸-3-アジドベンジル(3b)のトシレート基を18Fで置換することにより18F標識アジド化合物(1b)を合成し、さらに上記アセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4b)とのHuisgen反応によるカップリングを行なった。
Figure 0005594742
<アセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4b)の18F標識化>
前述の方法により合成した18F標識アジド化合物(1b)と、アセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4b)とを、実施例2と同様の方法によりカップリングさせて18F標識化オリゴヌクレオチド(5c)を合成した。
18F標識化オリゴヌクレオチド(5c)の合成に要する時間と収率>
合成時間: 95分、単離した(5c)の放射能:0.862GBq、比放射能:762 GBq/μmol、化学的純度(UV260nm):96%、放射化学的純度:>99%、[18F]フッ素イオンに基づく放射化学収率:1.7%(減衰補正なし)、3.1%(減衰補正あり)であった。
(実施例4)
実施例4では実施例2と同様の方法により、4-メチルベンゼンスルホン酸-3-アジドベンジル(3b)のトシレート基を18Fで置換することにより18F標識アジド化合物(1b)を合成し、さらに上記アセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4c)とのHuisgen反応によるカップリングを行なった。
Figure 0005594742
<アセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4c)の18F標識化>
前述の方法により合成した18F標識アジド化合物(1b)と、アセチレン基修飾オリゴヌクレオチド(4b)とを、実施例2と同様の方法によりカップリングさせて18F標識化オリゴヌクレオチド(5d)を合成した。
18F標識化オリゴヌクレオチド(5d)の合成に要する時間と収率>
合成時間: 83分、単離した(5d)の放射能:1.66 GBq、比放射能:3205 GBq/μmol、化学的純度(UV260nm):98%、放射化学的純度:96%、[18F]フッ素イオンに基づく放射化学収率:3.3%(減衰補正なし)、5.6%(減衰補正あり)であった。
[先行技術との比較]
上記実施例1〜3の結果から、極めて希薄な本発明の18F標識アジド化合物(1a)及び(1b)と、極めて希薄なアセチレン基修飾オリゴヌクレオチドとを、銅化合物触媒存在下でHuisgen反応を行なうことにより、収率よくアルキン化合物の18F標識化ができることが分かった。表1に、従来の18F標識化法と本発明の18F標識化法における、18F標識化対象化合物の必要量及び18F標識化対象化合物の必要な濃度を示す。この表から明らかなように、上記実施例1〜3で行なった18F標識アジド化合物(1a)(1b)を用いた18F標識化は、従来の18F標識方法と比較して、18F標識化対象化合物の必要量及び18F標識化対象化合物の必要な濃度がともに極めて小さい場合でも可能となるという、顕著な効果を奏することが分かる。
Figure 0005594742
ここで、非特許文献1〜8の方法は、Huisgen反応を利用する18F標識方法であり、非特許文献9〜14に記載の方法は、オリゴヌクレオチドに対して18F標識化を行なった従来の例である。
[反応条件の検討]
本発明の18F標識アジド化合物を用いてHuisgen反応による18F標識化を行なうためには、放射能の被曝を避けるため、合成は機械により遠隔的に行なうことが好ましい。このため、遮蔽されたドラフト内で標識用合成装置を用いることが必要となり、時間も限られ、多量に用いた前駆体、分解物及び各種試薬の中から、痕跡量の18F標識アジド化合物を非常に高い純度で取得するという要求に答えなければならない。また、Huisgen反応の迅速化及び高収率化も必要となる。このため最適な反応条件の検討を行なった。
<Huisgen反応の適切な条件>
Huisgen反応における効率化において、反応速度に着目し、これをなるべく大きくするための最適化を検討した。なぜならば、本発明において18F標識アジド化合物は少量しか合成されないため、極めて希釈された二つの基質を、温和な条件で短時間で反応させる条件を見出す必要があるからである。
このため、N-(プロパ-2-イニル)ベンズアミドをモデルとなるアルキン化合物の基質として、非標識の19Fアジド化合物を用いて反応条件の検討を行なった。まず、反応に最適な有機溶媒をスクリーニングするために、高い濃度の基質同士のHuisgen反応を行った。触媒としては硫酸銅を1mM/Lとし、還元剤としてアスコルビン酸ナトリウムを2mM/L、TBTAを1mM/Lとし、水:有機溶媒=3:7(容量比)で有機溶媒を種々変えて、Huisgen反応を行なった。
Figure 0005594742
その結果、下記表2に示すように、非プロトン性極性溶媒を添加した場合が収率がよく、特にDMSOの場合が最も収率がよかった。また、エントリー5とエントリー6との比較から明らかなように、TBTAの添加によって収率を劇的に高められることが分かった。
Figure 0005594742
また、上記の反応において、希薄溶液下における反応条件を検討した。すなわち、放射標識化実験で使われる濃度を模して、より希釈された基質(100μmol/LのN-(プロパ-2-イニル)ベンズアミドと50μmol/Lの非標識19Fアジド化合物(1b))とを用い、反応条件を変化させた。その結果、表3に示すように、TBTAの濃度は100μM/L以上で収率が高いことが分かった。また、(TBTAの濃度)/(Cuの濃度)は1よりも1/2の方が収率が良かく、1未満であることが好ましいことが分かった。さらに、反応温度は室温よりも40℃に加温したほうが、収率が良かった。
Figure 0005594742
また、上記表3のエントリー2の条件において、リン酸ナトリウムバッファのpHを変化させて収率を調べた。その結果、表4に示すように、pHは6.5〜7.5の範囲において優れた収率を示し、特にpH7付近で最大になることが分かった。
Figure 0005594742
さらに、上記表3のエントリー2の条件において、DMSOの濃度を変化させて収率を調べた。その結果、表5に示すように、DMSOの容量%は30%以上とするのが好ましいことが分かった。
Figure 0005594742
[PET画像撮影]
上記実施例1で得た18F標識化オリゴヌクレオチド(5a)をラットに投与してPET画像を撮影した。すなわち、45MBqの18F標識化オリゴヌクレオチド(5a)の生理食塩水溶液を麻酔下のSDラット(8週齢、体重252g)に尾静脈から投与し、シーメンス社製動物用PET装置MicroPET Focus−220で撮像した。プローブ投与後120分後から30分間の全身像(Maximum Intensity Projection画像)を図1に示す。この図から、投与された18F標識化オリゴヌクレオチド(5a)は、血中で速やかに代謝され、尿排泄されることが分かった。なお、全身の骨組織に強い放射能の集積が認められるが、これは18F標識化オリゴヌクレオチド(5a)の代謝によって生成したFイオンに基づくものと考えられる。
同様の方法により、18F標識化オリゴヌクレオチド(5b)、(5c)及び(5d)をラットに投与してPET撮像した。投与後120分後から30分間の全身像(Maximum Intensity Projection画像)を図2〜図4に示す。これらの図から2’,4’-BNA化体である(5d)は血中の代謝が遅くなり、腎臓・膀胱への集積が観察され、骨組織での放射活性は低下していることが分かった。また2’,4’-BNA化し骨格をホスホロチオアート結合とした(5c)は血中の代謝がさらに遅くなり、肝臓・腎臓への集積が観察され、骨組織での放射活性はさらに低下していることが分かった。
以上のように、本発明の18F標識化オリゴヌクレオチドを用いることにより、2’,4’-BNA化オリゴヌクレオチドやホスホロチオアートオリゴヌクレオチドなどの人工核酸の効果について、直接的な観察が可能となる。このことは、例えばRNA干渉を用いた遺伝子治療の研究において、ヌクレアーゼ耐性や各組織への分布をin vivoで、直接的に観察できるなど、オリゴヌクレオチド医薬の研究開発における強力な研究ツールとして利用できることを意味するものである。
この発明は上記発明の実施の態様及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
18F標識化オリゴヌクレオチド(5a)をSDラットに尾静脈から投与した場合における投与120分後から30分間の積算した場合の全身像(MIP画像)である。 18F標識化オリゴヌクレオチド(5b)をSDラットに尾静脈から投与した場合における投与120分後から30分間の積算した場合の全身像(MIP画像)である。 18F標識化オリゴヌクレオチド(5c)をSDラットに尾静脈から投与した場合における投与120分後から30分間の積算した場合の全身像(MIP画像)である。 18F標識化オリゴヌクレオチド(5d)をSDラットに尾静脈から投与した場合における投与120分後から30分間の積算した場合の全身像(MIP画像)である。
本発明は、個別化医療への展開が期待されているRNA創薬等、核酸オリゴマーを用いた医療分野において有用な手段を提供することができる。

Claims (6)

  1. 下記構造式(1)で示される18F標識アジド化合物。
    Figure 0005594742
  2. 請求項1に記載の18F標識アジド化合物からなる18F標識化用試薬。
  3. アルキン化合物と、請求項1に記載の18F標識アジド化合物とを銅化合物触媒存在下でHuisgen反応を行ない18F標識トリアゾール誘導体とするアルキン化合物の18F標識方法。
  4. 反応溶媒として水及び水溶性の有機溶媒からなる混合溶媒を用い、アスコルビン酸塩及びアミン系塩基の存在下で反応を行なうことを特徴とする請求項3記載のアルキン化合物の18F標識方法。
  5. アミン系塩基は(トリス((1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル)アミンであることを特徴とする請求項4記載のアルキン化合物の18F標識方法。
  6. 前記アルキン化合物はヌクレオチド誘導体であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項記載のアルキン化合物の18F標識方法。
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