以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
また、本発明は、以下本明細書において詳細に説明するような形態で実施され得る。ここで、本発明の実施形態による自動取引装置1は、
異種硬貨を収納する複数の収納部を備える自動取引装置において、
(A)第1の収容部(取り忘れ回収部31)および第2の収容部(運用リジェクトカセット32)と;
(B)一又は複数の蓋(内蓋42、51、55、75、77および外蓋40、61、62、70、83)と;
を含む収容カセット(回収カセット30)を備え、
(C)前記第1の収容部または前記第2の収容部は、前記一又は複数の蓋により選択的に開かれた状態となる。
このような自動取引装置1について、まず自動取引装置1を用いた自動取引システムの概要を説明してから、各実施形態について説明する。
<1.自動取引システムの概要>
図1は、本発明の実施形態である自動取引システムの構成を示した説明図である。図1に示したように、自動取引システムは、自動取引装置1、専用網7、および金融機関ホスト9を含む。
自動取引装置1は、金融機関の顧客による操作に基づいて金銭の取引を実行する顧客操作型端末である。この自動取引装置1は、金融機関の営業店、コンビニエンスストア、駅構内、ホテル、病院、アミューズメントパーク、飲食店、オフィスビルディングなどの多様な施設に設置される。
また、自動取引装置1は、硬貨取扱口2、紙幣取扱口3、顧客操作表示部4、通帳挿入口5、およびカード挿入口6を備える。顧客操作表示部4は、顧客による操作の誘導画面を表示する表示部および顧客操作を検出する顧客操作部としての機能を包含する。表示部としての機能は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置により実現される。また、顧客操作部としての機能は例えばタッチパネルにより実現される。なお、図1においては表示部および顧客操作部の機能が自動取引装置1において一体的に構成される例を示しているが、表示部および顧客操作部の機能は分離して構成されてもよい。
通帳挿入口5は顧客の通帳の挿入および排出を行い、カード挿入口6は顧客のキャッシュカードの挿入および排出を行う。また、硬貨取扱口2および紙幣取扱口3は、顧客による硬貨/紙幣の入金口、および顧客への硬貨/紙幣の出金口としての機能を有する。
専用網7は、金融機関のネットワークであり、例えばIP−VPN(Internet Protocol−Virtual Private Network)により構成される。金融機関ホスト9は、この専用網7を介して自動取引装置1と通信することができる。
金融機関ホスト9は、専用網7を介して自動取引装置1と通信することにより、各種取引を制御する。例えば、金融機関ホスト9は、自動取引装置1を操作する顧客の認証を行ったり、自動取引装置1において顧客により指示された入金や振込などの金銭取引(勘定の取引処理)を実行したりする。また、金融機関ホスト9は、口座番号、暗証番号、氏名、住所、年齢、生年月日、電話番号、職業、家族構成、年収、預金残高などの顧客情報(口座の元帳)を管理する。
本発明の実施形態は、上述した自動取引システムに含まれる自動取引装置1が有する硬貨処理部に関する。以下、自動取引装置1の内部構成を参照して硬貨処理部について説明した後、本発明の各実施形態について詳細に説明する。
[1−1.自動取引装置1の内部構成]
図2は、自動取引装置1の内部構成を示す図である。図2に示したように、本実施形態による自動取引装置1には、硬貨取扱口2に接するようにして硬貨処理部10が内蔵されている。この硬貨処理部10は、保守の際に、装置前面または後面の金庫扉が開かれ、金庫扉から引き出されて保守される。その他、自動取引装置1には紙幣入出金部等も同様に内蔵されているが、簡略化のためにその説明を省略する。
[1−2.硬貨処理部10]
次に、自動取引装置1に内蔵される硬貨処理部10の構成および基本動作について図3を参照して説明する。
(硬貨処理部10の構成)
図3は、硬貨処理部10の構成の一例を示す図である。図3に示すように、硬貨処理部10は、硬貨を収納する収納部として、金種別スタッカ27、オーバーフローボックス33、入出金口部12、硬貨カセット34、補充/回収部36、補充リジェクト部35、および回収カセット30を有する。
金種別スタッカ27は、硬貨の種類(金額)別に硬貨を収納する。オーバーフローボックス33は、金種別スタッカから溢れた硬貨を収納する。入出金口部12は、利用者が投入した硬貨を受け入れる等、利用者との硬貨の授受を行う。硬貨カセット34は、係員が補充する硬貨をセットするための補充/回収部36及び補充リジェクト部35から構成されている。補充リジェクト部35は、補充処理において、識別部15によってリジェクト貨と判定された硬貨、又は、繰出部14によって所定時間以内に分離できなかった硬貨を収納し、収納した硬貨は搬送路には還流させない。
回収カセット30は、搬送路に還流させない硬貨を収納する。また、回収カセット30は、利用者が取り忘れた硬貨を収納する取り忘れ回収部31と、識別部15によってリジェクト貨と判定された硬貨、又は、繰出部14によって所定時間以内に分離できなかった硬貨を収納する運用リジェクト部32とから構成されている。
これらの収納部のうち、金種別スタッカ27、オーバーフローボックス33、入出金口部12及び硬貨カセット34の補充/回収部36は、還流に適した硬貨を収納する収納部であり、回収カセット30及び補充リジェクト部35は、還流に適さない硬貨を収納する収納部である。
また、図3に示すように、硬貨処理部10は、繰出部14を有する。繰出部14は、受け入れた硬貨を収納して1枚ずつ分離し、分離した硬貨を搬送路上へ繰出す。識別部15は、繰出部14から繰出された硬貨が正常貨か否かを識別する。識別の基準は硬貨の形状であり、例えば、偽造、傷、曲がりが検知された場合、正常貨でない(リジェクト貨)と識別される。残留センサ38は、繰出部14に備えられ、繰出部14に硬貨が存在している場合、硬貨の存在を検知する。つまり、残留センサ38は、繰出部14内に硬貨の残留があるか否かを判定するために用いられる検知部である。
(硬貨処理部10の基本動作)
次に、上述した構成を有する硬貨処理部10の基本動作について説明する。硬貨処理部10は、基本動作として、入金収納処理、出金収納処理、補充処理、および回収処理を行う。
入金収納処理においては、まず硬貨取扱口2のシャッタ11が開放され、顧客により投入された硬貨が、入出金口部12により受け入れられる。受け入れられた硬貨は、シューター13を経て繰出部14へ落下する。落下した硬貨は、繰出部14によって1枚毎に分離されて識別部15へ搬送される。識別部15では、硬貨の判定が行われる。判定の結果、正常貨は、選別ゲート17を経て一括一時保留搬送路37へ搬送される。そして、入金取引が完了すると、一括一時保留搬送路37の硬貨は、繰出部14、識別部15、搬送路16及び金種に応じた選別ゲート18〜23を経て金種別スタッカ27へ搬送される。また、金種別スタッカ27から溢れた硬貨は搬送路16、および選別ゲート24を経て、搬送路28に搬送され、オーバーフローボックス33に収納される。一方、識別部15によりリジェクト貨と判定された硬貨は、搬送路16を経て入出金口部12に戻される。ここで、入金取引が完了して一括一時保留搬送路37の硬貨を繰出部14へ搬送した後、繰出部14による繰出処理において、繰出不良によるリトライ動作を実施した場合は、分離した硬貨の収納先を回収カセット30の運用リジェクト部32にする。
次に、補充処理について説明する。係員により硬貨カセット34の補充/回収部36に補充された硬貨は、一括一時保留搬送路37、繰出部14、識別部15、搬送路16及び金種に応じた選別ゲート18〜23を経由し、識別部15にて正常貨と判定された硬貨は、金種別スタッカ27又はオーバーフローボックス33へ、リジェクト貨と判定された硬貨は、硬貨カセット34の補充リジェクト部35へ搬送される。ここで、硬貨カセット34の補充/回収部36に補充された硬貨を一括一時保留搬送路37から繰出部14へ搬送した後の繰出部14による繰出処理において、繰出不良によるリトライ動作を実施した場合は、分離した硬貨の収納先を、硬貨カセット34の補充リジェクト部35にする。
次に、出金処理について説明する。出金処理においては、まず、上位装置90から出金指示された指定金種及び枚数の硬貨が、金種別スタッカ27から繰り出され、一括一時保留搬送路37、繰出部14、識別部15、搬送路16、選別ゲート18〜23、および搬送路29を経由し、識別部15にて正常貨と判定された硬貨は入出金口部12へ搬送され、リジェクト貨と判定された硬貨は回収カセット30の運用リジェクト部32へ搬送される。ここで、金種別スタッカ27から繰出された硬貨を一括一時保留搬送路37から繰出部14へ搬送した後の繰出部14による繰出処理において、繰出不良によるリトライ動作を実施した場合は、分離した硬貨の搬送先を、回収カセット30の運用リジェクト部32にする。
次に、回収処理について説明する。上位装置90から回収指示された指定金種及び枚数の硬貨は、金種別スタッカ27から繰出を行い、一括一時保留搬送路37、繰出部14、識別部15、搬送路16、28、29及び金種に応じた選別ゲートを経由し、識別部15にて正常貨と判定された硬貨は、硬貨カセット34の補充/回収部36へ、リジェクト貨と判定された硬貨は、回収カセット30の運用リジェクト部32へ搬送される。ここで、金種別スタッカ27から繰出された硬貨を一括一時保留搬送路37から繰出部14へ搬送した後の繰出部14による繰出処理において、繰出不良によるリトライ動作を実施した場合は、分離した硬貨の搬送先を、回収カセット30の運用リジェクト部32にする。
[1−3.本発明に至る過程]
以上、硬貨処理部10の構成と基本動作について説明した。上述したように、硬貨処理部から硬貨を回収する際、作業員は、通常、自動取引装置から硬貨処理部を引き出し、硬貨処理部の各収納部から硬貨を取り出す。しかし、その際に硬貨を取りこぼし、誤って異種硬貨の収納部に混ざってしまう恐れがあった。以下、図4を参照して具体的に説明する。
図4は、従来の回収カセットを説明するための図である。図4に示すように、従来の回収カセット100は、内部が取り忘れ回収部101および運用リジェクト部103に仕切られ、上部には外蓋105が設けられる。
また、外蓋105には、取り忘れ回収部101に硬貨が入るためのスリット107、および運用リジェクト部103に硬貨が入るためのスリット109が設けられている。スリット107およびスリット108には、それぞれシャッタが設けられ(図示せず)、回収カセット100が本体(自動取引装置)に装填されている場合、各シャッタは本体に設けられたシャッタ解除棒(図示せず)により開けられ、取り忘れ回収部101および運用リジェクト部103にそれぞれ硬貨が入れられる。また、回収カセット100が本体(自動取引装置)から外された場合、各シャッタは閉まり、硬貨が回収カセット100から飛び出ない構造となっている。
ここで、外蓋105は、図4に示すように、取り忘れ回収部101および運用リジェクト部103を同時に開閉することが可能に設けられている。作業員は、外蓋105を図4右の回収カセット100に示すように開けた状態で硬貨を取り出す。この際、取り忘れ回収部101および運用リジェクト部103の一方から取り出した硬貨を他方に落とす等して混同してしまう恐れがある。硬貨が混同すると、現金違算になるという問題がある。
そこで、上記事情を一着眼点にして本発明の実施形態による自動取引装置を創作するに至った。本発明の実施形態による自動取引装置は、第1の収容部および第2の収納部を選択的に開かれた状態とすることで、異種硬貨の混同を防止することが可能である。以下、このような本発明の実施形態について詳細に説明する。
<2.各実施形態>
本発明の実施形態による自動取引装置1は、回収作業に伴う異種硬貨混同を防止する回収カセット(収容カセット)を有する。具体的には、本実施形態による回収カセットは、第1の収容部として取り忘れ回収部、および第2の収容部として運用リジェクト部を有し、これらの収容部は、一又は複数の蓋により選択的に開かれた状態となる。以下、複数の実施形態を参照して詳細に説明する。
[2−1.第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態による自動取引装置1は、複数の蓋として、内蓋(第1の蓋)および外蓋(第2の蓋)を有し、外蓋が開いている場合、取り忘れ回収部または運用リジェクト部の一方は内蓋により閉じられ、他方は開かれた状態となる。さらに、内蓋は、取り忘れ回収部を閉じる位置と、運用リジェクト部を閉じる位置との間で回転可能に設けられる。また、本実施形態による回収カセット(収容カセット)は、運用リジェクト部を閉じる方向に内蓋を付勢するバネ(弾性部材)を含む。
このような構成を有する回収カセットについて、図5および図6を参照して詳細に説明する。図5は、本発明の第1の実施形態による回収カセット30−1の概略斜視図である。図5に示すように、回収カセット30−1は、内部が取り忘れ回収部31および運用リジェクト部32に仕切られ、上部には外蓋40が設けられる。
また、外蓋40には、取り忘れ回収部31に硬貨が入るためのスリット47、および運用リジェクト部32に硬貨が入るためのスリット49が設けられている。スリット47およびスリット49には、それぞれシャッタが設けられ(図示せず)、回収カセット30−1が本体(自動取引装置)に装填されている場合、各シャッタは本体に設けられたシャッタ解除棒(図示せず)により開けられ、取り忘れ回収部31および運用リジェクト部32にそれぞれ硬貨が入れられる。また、回収カセット30−1が本体(自動取引装置)から外された場合、各シャッタは閉まり、硬貨が回収カセット30−1から飛び出ない構造となっている。
ここで、外蓋40は、図5に示すように、取り忘れ回収部31および運用リジェクト部32に対して開閉可能に設けられている。
さらに、本実施形態による回収カセット30−1は、外蓋40の内側に、内蓋42が設けられる。内蓋42には、硬貨が入るためのスリット43が外蓋40のスリット47に対応する位置に設けられる。また、内蓋42は、図5に示すように、取り忘れ回収部31を閉じる位置と、運用リジェクト部32を閉じる位置との間で回転可能に設けられている。図5に示す例では、内蓋42は、外蓋40が閉じられている場合に取り忘れ回収部31を閉じる位置にあり(図5左)、外蓋40が開けられると、運用リジェクト部32を閉じる位置に可動する(図5右)。このような内蓋42の可動構造について、以下図6を参照して説明する。
図6は、第1の実施形態による回収カセット30−1が有する内蓋42の可動構造について説明するための概略断面図である。図6に示すように、第1の実施形態による回収カセット30−1は、運用リジェクト部32を閉じる方向に内蓋42を付勢するバネ44を有する。なお、本実施形態において、バネ44は弾性部材の一例として用いられる。
内蓋42は、バネ44により常に運用リジェクト部32を閉じる方向に付勢されるが、外蓋40(図示せず)が閉じられている場合は、図6左に示すように、外蓋40の押圧により、取り忘れ回収部31を閉じる状態となっている。そして、作業員が硬貨取り出しのために外蓋40を開くと、バネ44の付勢により内蓋42が運用リジェクト部32を閉じる方向に回転軸45を中心に回転可動する。これにより、取り忘れ回収部31が開かれ、運用リジェクト部32が内蓋42により覆われるので、作業員が取り忘れ回収部31から硬貨を取り出す際に、運用リジェクト部32内に硬貨が落ちることを防止できる。
一方、運用リジェクト部32から硬貨を取り出す際は、図6右に示すように、内蓋42を作業員が手で開けて、取り忘れ回収部31方向に立てる。これにより、内蓋42で、取り忘れ回収部31と運用リジェクト部32の間を仕切ることができるので、作業員が運用リジェクト部32から硬貨を取り出す際に、取り忘れ回収部31内に硬貨が落ちることを防止できる。なお、作業員は、内蓋42を取り忘れ回収部31を閉じる位置まで押さえてもよい。
上述したように、第1の実施形態によれば、取り忘れ回収部および運用リジェクト部の一方を閉じる位置に、回転可能な内蓋を付勢する弾性部材を設けることで、取り忘れ回収部および運用リジェクト部が選択的に開かれた状態となるので、一方の硬貨を取り出す際に、他方の収納部に硬貨を落とすことを防止することができる。これにより、硬貨の異種混合の防止、さらに、異種硬貨混同による現金違算を回避することができる。
また、上述した運用リジェクト部32は、一度正常硬貨と判定され、その後リジェクト貨と判定されたものであるので、収納される枚数は少ない場合が多い。そこで、第1の実施形態において、運用リジェクト部32を閉じる位置に内蓋42を付勢するバネ44を設け、取り忘れ回収部32が開いた状態を常態とすることで、回収作業時の作業負担を軽減することができる。
[2−2.第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態による自動取引装置1について説明する。第2の実施形態による自動取引装置1は、複数の蓋として、内蓋(第1の蓋)および外蓋(第2の蓋)を有し、外蓋が開いている場合、取り忘れ回収部または運用リジェクト部の一方は内蓋により閉じられ、他方は開かれた状態となる。さらに、内蓋は、取り忘れ回収部を閉じる位置と、運用リジェクト部を閉じる位置との間でスライド可能に設けられる。
このような構成を有する回収カセットについて、図7を参照して詳細に説明する。図7は、本発明の第2の実施形態による回収カセット30−2の概略斜視図である。なお、本実施形態による回収カセット30−2は、上記第1の実施形態による回収カセット30−1の構成に比べて内蓋の可動構造が異なるので、その他の構造の説明についてはここでは省略する。
第2の実施形態による回収カセット30−2の内蓋51には、図7に示すように、硬貨が入るためのスリット53が、外蓋40のスリット47またはスリット49の少なくともいずれかに対応する位置に設けられる。また、内蓋51は、図7に示すように、取り忘れ回収部31を閉じる位置と、運用リジェクト部32を閉じる位置との間でスライド可能に設けられている。また、内蓋51が一方の収納部を閉じる場合、他方の収納部は開かれた状態となる。
例えば、運用リジェクト部32から硬貨を取り出す場合、図7左に示すように、作業員は外蓋40を開け、さらに取り忘れ回収部31を閉じる位置に内蓋51をスライド移動させる。これにより、運用リジェクト部32が開かれた状態となるので、作業員は運用リジェクト部32から硬貨を取り出す。この時、取り忘れ回収部31は内蓋51により閉じられているので、本実施形態による回収カセット30−2は、取り忘れ回収部31内に硬貨が落ちることを防止することができる。
一方、取り忘れ回収部31から硬貨を取り出す場合、図7右に示すように、作業員は、外蓋40を開け、さらに運用リジェクト部32を閉じる位置に内蓋51をスライド移動させる。これにより、取り忘れ回収部31が開かれた状態となるので、作業員は取り忘れ回収部31から硬貨を取り出す。この時、運用リジェクト部32は内蓋51により閉じられているので、本実施形態による回収カセット30−2は、運用リジェクト部32内に硬貨が落ちることを防止することができる。
上述したように、第2の実施形態によれば、内蓋が作業員の操作によりスライド移動することで、取り忘れ回収部および運用リジェクト部が選択的に開かれた状態となるので、一方の硬貨を取り出す際に、他方の収納部に硬貨を落とすことを防止することができる。これにより、硬貨の異種混合の防止、さらに、異種硬貨混同による現金違算を回避することができる。
[2−3.第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態による自動取引装置1について説明する。第3の実施形態による自動取引装置1は、複数の蓋として、内蓋(第1の蓋)および外蓋(第2の蓋)を有し、外蓋が開いている場合、取り忘れ回収部または運用リジェクト部の一方は内蓋により閉じられ、他方は開かれた状態となる。さらに、内蓋は、取り忘れ回収部を閉じる位置と、運用リジェクト部を閉じる位置との間でスライド可能に設けられる。また、本実施形態による回収カセット(収容カセット)は、運用リジェクト部を閉じる方向に内蓋を付勢するバネ(弾性部材)を含む。
このような構成を有する回収カセットについて、図8を参照して詳細に説明する。図8は、本発明の第3の実施形態による回収カセット30−3の概略断面図である。なお、本実施形態による回収カセット30−3は、上記第2の実施形態による回収カセット30-2の構成に比べて内蓋を付勢するバネを有する点のみが異なるので、その他の構造の説明についてはここでは省略する。
本実施形態による回収カセット30−3の内蓋55は、図7に示すように、取り忘れ回収部31を閉じる位置と、運用リジェクト部32を閉じる位置との間でスライド可能に設けられている。また、内蓋51が一方の収納部を閉じる場合、他方の収納部は開かれた状態となる。
さらに、回収カセット30−3は、内蓋55を、運用リジェクト部32を閉じる位置に付勢するバネ57を有する。なお、バネ57は弾性部材の一例として用いる。また、内蓋55には、硬貨が入るためのスリット(図示せず)が、外蓋(図7の外蓋40に相当)の運用リジェクト部32に硬貨が入るためのスリット(図7のスリット49に相当)に対応する位置に設けられる。
このような構成を有する回収カセット30−3は、図8右に示すように、バネ57により内蓋55が運用リジェクト部32を閉じる位置に付勢され、取り忘れ回収部31が開いた状態において、作業員は取り忘れ回収部31から硬貨を取り出す。この時、運用リジェクト部32は内蓋55により閉じられているので、本実施形態による回収カセット30−3は、運用リジェクト部32内に硬貨が落ちることを防止することができる。
一方、運用リジェクト部32から硬貨を取り出す場合、図8左に示すように、作業員は、取り忘れ回収部31を閉じる位置に内蓋55をスライド移動させる。これにより、運用リジェクト部32が開かれた状態となるので、作業員は運用リジェクト部32から硬貨を取り出す。この時、取り忘れ回収部31は内蓋51により閉じられているので、本実施形態による回収カセット30−3は、取り忘れ回収部31内に硬貨が落ちることを防止することができる。
上述したように、第3の実施形態によれば、取り忘れ回収部および運用リジェクト部の一方を閉じる位置に、スライド可能な内蓋を付勢する弾性部材を設けることで、取り忘れ回収部および運用リジェクト部が選択的に開かれた状態となるので、一方の硬貨を取り出す際に、他方の収納部に硬貨を落とすことを防止することができる。これにより、硬貨の異種混合の防止、さらに、異種硬貨混同による現金違算を回避することができる。
[2−4.第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態による自動取引装置1について説明する。第4の実施形態による自動取引装置1の回収カセット(収容カセット)は、一又は複数の蓋として、取り忘れ回収部31を開閉する第1の外蓋(第1の蓋)、および運用リジェクト部32を開閉する第2の外蓋(第2の蓋)を有する。また、本実施形態による回収カセットは、第1の外蓋または第2の外蓋の双方が同時に開いた状態にならないように第1または第2の外蓋の開閉を制限するストッパーを有する。
このような構成を有する回収カセットについて、図9を参照して詳細に説明する。図9は、本発明の第4の実施形態による回収カセット30−4の概略斜視図である。図9に示すように、本実施形態による回収カセット30−4は、内部が取り忘れ回収部31および運用リジェクト部32に仕切られる。また、回収カセット30−4の上部には、取り忘れ回収部31を開閉する第1の外蓋である外蓋61と、運用リジェクト部31を開閉する第2の外蓋である外蓋62が設けられる。
また、外蓋61、62には、それぞれ硬貨が入るためのスリット67、69が設けられている。なお、スリット67、69には、それぞれシャッタが設けられ(図示せず)、回収カセット30−4が本体(自動取引装置)に装填されている場合、各シャッタは本体に設けられたシャッタ解除棒(図示せず)により開けられ、取り忘れ回収部31および運用リジェクト部32にそれぞれ硬貨が入れられる。また、回収カセット30−4が本体(自動取引装置)から外された場合、各シャッタは閉まり、硬貨が回収カセット30−4から飛び出ない構造となっている。
さらに、本実施形態による回収カセット30−4は、図9に示すように、外蓋61または外蓋62の双方が同時に開いた状態にならないように、外蓋61または外蓋62の開閉を制限するストッパー63を有する。ストッパー63は、図9に示すように、外蓋61および外蓋62が隣接する端の先端に設けられる。また、ストッパー63は、外蓋61をロックする位置と、外蓋62をロックする位置との間をスライド可能に設けられる。なお、図9に示すように、外蓋61および外蓋62が隣接する端の先端には、切り込み64および65が設けられる。このような構成を有する回収カセット30−4における開閉制限について、以下図10を参照して説明する。
図10は、第4の実施形態による回収カセット30−4における開閉制限について説明するための図である。取り忘れ回収部31から硬貨を取り出す場合、作業員はストッパー63を、外蓋62をロックする位置にスライド移動させ、外蓋61のロックを外す(図10左)。この場合、取り忘れ回収部31を開くことが可能となる。
一方、運用リジェクト部32から硬貨を取り出す場合、作業員はストッパー63を、外蓋61をロックする位置にスライド移動させ、外蓋62のロックを外す(図10右)。この場合、運用リジェクト部32を開くことが可能となる。
このように、本実施形態による回収カセット30−4は、ストッパー63をスライド移動させて外蓋61または外蓋62をロックすることで、取り忘れ回収部31および運用リジェクト部32を選択的に開かれた状態とすることが可能となる。
上述したように、第4の実施形態によれば、取り忘れ回収部の外蓋および運用リジェクト部の外蓋を独立して設け、さらに、これらの外蓋を選択的にロックするストッパーを設けることで、取り忘れ回収部および運用リジェクト部が選択的に開かれる状態となる。よって、一方の収納部から硬貨を取り出す際に、他方の収納部に硬貨を落とすことを防止することができる。これにより、硬貨の異種混合の防止、さらに、異種硬貨混同による現金違算を回避することができる。
[2−5.第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態による自動取引装置1の回収カセットについて説明する。第5の実施形態による自動取引装置1の回収カセット(収納カセット)は、複数の蓋として、第1の内蓋(第1の蓋)、第2の内蓋(第2の蓋)、および外蓋(第3の蓋)を有する。また、本実施形態による回収カセットは、第1の外蓋または第2の外蓋の双方が同時に開いた状態にならないように第1または第2の外蓋の開閉を制限するストッパーを有する。
このような構成を有する回収カセットについて、図11を参照して詳細に説明する。図11は、本発明の第5の実施形態による回収カセット30−5の概略斜視図である。なお、本実施形態による回収カセット30−5は、上記第4の実施形態による回収カセット30−4に、外蓋70を新たに設けた構成である。外蓋70は、内蓋75、77の外側に開閉可能に設けられる。また、外蓋70には、硬貨が入るためのスリット71、73が、外蓋70のスリット71、73にそれぞれ対応する位置に設けられる。また、スリット71、73に設けられるシャッタ(図示せず)については、上述した通りである。
このように、第5の実施形態によれば、外蓋と、外蓋の内側に取り忘れ回収部の内蓋および運用リジェクト部の内蓋を独立して設け、さらにこれらの内蓋を選択的にロックするストッパーを設けることで、取り忘れ回収部および運用リジェクト部が選択的に開かれる状態となる。よって、一方の収納部から硬貨を取り出す際に、他方の収納部に硬貨を落とすことを防止することができる。これにより、硬貨の異種混合の防止、さらに、異種硬貨混同による現金違算を回避することができる。
[2−6.第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態による自動取引装置1について説明する。第6の実施形態による自動取引装置1の回収カセット(収容カセット)は、一又は複数の蓋として、取り忘れ回収部(第1の収容部)および運用リジェクト部(第2の収容部)の双方を閉じる位置、および、取り忘れ回収部または運用リジェクト部の一方を開く位置の間でスライドにより移動可能に設けられた一の蓋を含む。
このような構成を有する回収カセットについて、図12を参照して詳細に説明する。図12は、本発明の第6の実施形態による回収カセット30−6の概略斜視図である。図9に示すように、本実施形態による回収カセット30−6は、内部が取り忘れ回収部31および運用リジェクト部32に仕切られる。また、回収カセット30−6の上部には、外蓋83が設けられる。
外蓋83には、それぞれ硬貨が入るためのスリット85、87が設けられている。なお、スリット85、87にそれぞれ設けられるシャッタ(図示せず)については、上述した通りである。
また、本実施形態による外蓋83は、図12に示すように、取り忘れ回収部31および運用リジェクト部32の双方を閉じる位置(図12中央)、および、取り忘れ回収部31または運用リジェクト部32の一方を開く位置(図12右および図12左)の間でスライドにより移動可能に設けられる。
このように、第6の実施形態によれば、一の外蓋によって、取り忘れ回収部または運用リジェクト部を選択的に開かれた状態とすることができるので、一方の収納部から硬貨を取り出す際に、他方の収納部に硬貨を落とすことを防止することができる。これにより、硬貨の異種混合の防止、さらに、異種硬貨混同による現金違算を回避することができる。
以上、複数の実施形態を参照して本発明の実施形態による自動取引装置1について説明した。なお、上記第1の実施形態では、運用リジェクト部32を閉じる位置に内蓋42を付勢するバネ44が設けられるが、本発明による実施形態はこの限りではない。例えば、バネ44によって、取り忘れ回収部31を閉じる位置に内蓋42を付勢してもよい。
また、同様に、上記第3の実施形態では、運用リジェクト部32を閉じる位置に内蓋55を付勢するバネ57が設けられるが、本発明による実施形態はこの限りではない。例えば、バネ57によって、取り忘れ回収部31を閉じる位置に内蓋55を付勢してもよい。
なお、上記複数の実施形態では、異種硬貨を収納する2つの収納部を有する回収カセットを例として示したが、本発明による実施形態はこれに限定されない。例えば、図13に示すように、異種硬貨を収納する3つの収納部を有する回収カセットであってもよい。図13は、上述した第6の実施形態の変更例による回収カセット30−7の概略斜視図である。図13に示すように、回収カセット30−7は、内部が取り忘れ回収部31、運用リジェクト部32、およびその他の収納部39に仕切られ、上部には蓋89および蓋93が設けられる。その他の収納部39は、例えば補充リジェクト部であってもよいし、補充/回収部であってもよい。
図13に示すように、蓋89は取り忘れ回収部31を閉じる位置と、運用リジェクト部32を閉じる位置との間でスライド可能に設けられる。また、蓋93は運用リジェクト部32を閉じる位置と、その他収納部39を閉じる位置との間でスライド可能に設けられる。すなわち、回収カセット30−7は、3つの収納部のいずれか1つが常時開放される状態となる。なお、図13に示すように、蓋89、93には、回収カセット30−7の内部に硬貨が入るためのスリット91、95がそれぞれ設けられる。
上述したように、第6の実施形態の変更例によれば、3つの収納部のいずれか1つが選択的に開かれた状態となるので、いずれかの収納部から硬貨を取り出す際に、他の収納部に硬貨を落とすことを防止することができる。これにより、硬貨の異種混合の防止、さらに、異種硬貨混同による現金違算を回避することができる。なお、図13に示す回収カセット30−7の蓋89、93の外側に、回収カセット30−7の上部を覆い、硬貨が入るためのスリットが設けられた蓋(外蓋)を、さらに備えてもよい。
<3.まとめ>
以上説明したように、本発明の実施形態による自動取引装置によれば、一又は複数の蓋によって、取り忘れ回収部または運用リジェクト部を選択的に開かれた状態とすることができるので、回収作業時の硬貨の異種混合の防止、さらに、異種硬貨混同による現金違算を回避することができる。
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、本明細書の各実施形態では、第1の収納部として取り忘れ回収部31、および第2の収容部として運用リジェクトカセット32を挙げたが、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、第1および第2の収納部は、金種別スタッカ、取り忘れ回収部、運用リジェクト部および補充リジェクト部等の各収納部の組み合わせであってもよい。
また、本明細書の各実施形態では、外蓋、内蓋に設けられる硬貨が入るための穴としてスリット状の穴を例示したが、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、丸型や楕円、その他任意の形状であってもよい。
また、本明細書の各実施形態のうち、外蓋および内蓋を有する回収カセット30−1、30−2、30−5については、外蓋の各スリットにシャッタが設けられる旨を説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、外蓋を有する回収カセット30−1、30−2、30−5において、内蓋のスリットにもシャッタを設けてもよい。このように内蓋のスリットに設けられたシャッタは、外蓋の各スリットに設けられたシャッタと同様に、回収カセットが本体(自動取引装置)に装填される場合に本体に設けられたシャッタ解除棒(図示せず)により開けられ、回収カセットの内部にスリットから硬貨が入れられる。