本発明は、フラッシュバルブと止水栓とを接続する連結管が接続口に差し込まれた状態で袋ナット等の締結部材により固定される構成において、連結管に形成された外周溝等の係止部に係合する係止部材を接続口と締結部材との間に介装することにより、連結管の接続口に対する相対的な移動を規制しようとするものである。これにより、本発明は、締結部材が緩んだ場合などにおいても、漏水の原因になり得る、フラッシュバルブと止水栓との連結管の管軸方向についての相対的な位置の変動を防止する。以下、本発明の実施の形態を説明する。
[フラッシュバルブの接続構造の概略]
図1に示すように、本実施形態に係るフラッシュバルブの接続構造は、水洗便器である便器2に対する洗浄水の供給に用いられる便器洗浄装置としてのフラッシュバルブ1を、止水栓3に接続するために用いられる。フラッシュバルブ1は、止水栓3と便器2との間に設けられ、止水栓3側から供給される水を、洗浄水として便器2に供給させる。
フラッシュバルブ1から流出する洗浄水は、フラッシュバルブ1から便器2への給水経路を構成する洗浄水供給管4により、便器2に供給される。本実施形態では、洗浄水供給管4は、図1に示すように、略鉛直方向(略上下方向)に配される。洗浄水供給管4の上側の端部は、バキュームブレーカ5を介して、フラッシュバルブ1の流出口6(図2参照)に接続される。洗浄水供給管4の下側の端部は、便器2に接続される。
図1に示すように、止水栓3は、水道管等の所定の給水源に接続される給水管7からの水の供給を受ける。本実施形態では、給水管7は、便器2が設置される床8から略鉛直上方に延設される。給水管7の上端部は、止水栓3の流入口9(図2参照)に接続される。
フラッシュバルブ1と止水栓3とは、略水平方向に配される連結管31により接続される。連結管31の一端側は、止水栓3の流出側の接続口(以下「止水栓側接続口」という。)10に接続され、連結管31の他端側は、フラッシュバルブ1の流入側の接続口(以下「バルブ側接続口」という。)11に接続される。
フラッシュバルブ1は、便器2の使用者等によって操作されることで、洗浄水供給管4への吐水を行う。このため、フラッシュバルブ1は、外部からの操作を受けるための操作レバー12を有する。つまり、フラッシュバルブ1は、操作レバー12の操作によって開弁し、給水管7から止水栓3および連結管31を経て供給される水を、洗浄水として洗浄水供給管4に吐水する。フラッシュバルブ1から洗浄水供給管4に吐水された水は、洗浄水供給管4内を通って便器2に流れ込む。
以下の説明においては、連結管31の管軸方向(図1、図2における左右方向)のうち、連結管31が止水栓3に接続される側(図1、図2における左側)を「上流側」とし、その反対側となる、連結管31がフラッシュバルブ1に接続される側(同右側)を「下流側」とする。
図2に示すように、止水栓3は、ケーシング13内に、上下方向に移動可能に設けられる弁体14を有する。弁体14は、上側に延設される軸部14aを有する。弁体14は、止水栓3の内部に設けられるガイド体15に軸部14aがねじ込まれた状態で設けられる。弁体14の上下方向の位置は、弁体14の上端部に設けられるネジ溝14bによって軸部14aから弁体14がガイド体15に対して相対回転させられることにより調整される。弁体14は、その上下方向の位置により、弁体14の下側に設けられる弁座16に着座した状態となる。
止水栓3の閉弁状態、つまり弁体14が弁座16に着座した状態においては、流入口9に接続される給水管7(図1参照)から止水栓3に流入する水は、止水栓3により止水される。一方、止水栓3の開弁状態、つまり弁体14が上方への移動によって弁座16から離れた状態においては、流入口9側から止水栓3に流入する水は、止水栓側接続口10から連結管31を通って、バルブ側接続口11からフラッシュバルブ1に流入する。
止水栓3が有する流入口9は、ケーシング13において弁体14の収容空間に連通するとともに下側に向けて開口する円筒状の部分として設けられる。また、同じく止水栓3が有する止水栓側接続口10は、ケーシング13において弁体14の収容空間に連通するとともに水平方向の一側(図2において右側)に向けて開口する円筒状の部分として設けられる。
図2に示すように、フラッシュバルブ1は、ケーシング17内に、上下方向に移動可能に設けられるピストンバルブ18を有する。ピストンバルブ18の上側には、背圧室19が設けられている。ピストンバルブ18の内部には、一次側(給水側)となるバルブ側接続口11側の流路と、背圧室19とを連通させる連通路が設けられる。
フラッシュバルブ1は、背圧室19と、二次側(排水側)となる流出口6側の流路とを開閉するリリーフバルブ20を有する。リリーフバルブ20は、下方に延設されるステム20aを有し、バネ21によって下方に付勢された状態で設けられる。ピストンバルブ18の内部には、リリーフバルブ20が収容される空間と背圧室19とを連通させる連通路22が設けられる。
フラッシュバルブ1は、ケーシング17内に、操作レバー12の操作によって水平方向(図2において左右方向)に移動可能に設けられる押棒23を有する。押棒23は、その移動方向の位置によってリリーフバルブ20のステム20aに対して当接可能に設けられる。
このような構成を備えるフラッシュバルブ1は、次のように動作する。図2に示すフラッシュバルブ1の状態は、フラッシュバルブ1の動作開始前の閉弁状態、つまりフラッシュバルブ1から水が吐水されていない状態である。この状態では、一次側(バルブ側接続口11側)の水が、ピストンバルブ18の内部に設けられる連通路を介して、背圧室19に流れ込み、背圧室19内に溜まる。図2に示す状態から、操作レバー12の操作によって押棒23が前進(ステム20a側へ移動)し、押棒23がステム20aに当接することで、リリーフバルブ20がバネ21の付勢力に抗して傾斜する。これにより、リリーフバルブ20が開弁する。
リリーフバルブ20が開弁すると、連通路22を介して背圧室19と二次側(流出口6側)とが連通し、背圧室19内の水が連通路22を介して二次側に流れ込む。これにより、背圧室19内の圧力が低下し、一次側の水圧によってピストンバルブ18が上昇(背圧室19側に移動)する。ピストンバルブ18が上昇することで、一次側と二次側とが連通した状態となり、バルブ側接続口11から流れ込む水が、流出口6側へと流れ、洗浄水供給管4に吐水され、便器2へと供給される。
ピストンバルブ18が上昇し、リリーフバルブ20のステム20aが押棒23に乗り上げることで押棒23のステム20aへの当接状態が解除されると、バネ21の付勢力によってリリーフバルブ20が閉弁する。これにより、一次側の水がピストンバルブ18内の連通路から背圧室19内に流れ込み、背圧室19内の圧力が上昇するとともに二次側の圧力が低下し、ピストンバルブ18が押し下げられ、ピストンバルブ18が閉弁する。これにより、フラッシュバルブ1が閉弁状態となり、洗浄水供給管4への吐水が停止される。
このように動作するフラッシュバルブ1においては、ピストンバルブ18の上側に、調整バルブ24が設けられている。調整バルブ24は、ピストンバルブ18から上側に向けて背圧室19内に突出するように設けられる。調整バルブ24は、上述したようなピストンバルブ18の上下動作において、調整バルブ24の上方に設けられる調整ネジ25に当接して押し下げられることで開弁する。調整ネジ25は、ケーシング17内において背圧室19を形成する支持体26に対して上下方向にねじ込まれた状態で設けられる。
調整バルブ24が開弁すると、ピストンバルブ18内に形成された小孔を通って一次側の水が背圧室19内に流れ込む。調整バルブ24は、ピストンバルブ18が下降することで調整ネジ25から離れると閉弁する。すなわち、調整バルブ24の開閉タイミングの調整により、ピストンバルブ18の閉弁タイミング、つまりフラッシュバルブ1の1回の開弁動作による吐水量が調整される。調整バルブ24の開閉タイミングは、調整ネジ25の上下方向の位置によって調整される。
以上のような構成を有するフラッシュバルブ1が、本実施形態に係る接続構造によって止水栓3に接続される。以下、本実施形態に係るフラッシュバルブ1の接続構造について、詳細に説明する。なお、本実施形態では、フラッシュバルブ1は、操作レバー12の操作によって作動する手動式であるが、本発明の適用に際し、フラッシュバルブの構成は特に限定されない。フラッシュバルブは、例えば操作部としてボタン等を有する他の手動式のものであったり、例えば赤外線センサ等によって人体を検知することで自動的な吐水を行う自動式のものであったりする。また、便器2は、図1に示すような腰かけ式のほか、例えば小便器等である。
[フラッシュバルブの接続構造の詳細]
図2、図3、図4に示すように、本実施形態に係るフラッシュバルブ1の接続構造は、連結管31と、締結部材である袋ナット32と、係止部材である止め輪33とを備える。
連結管31は、直線状の中空円筒部材であり、上述したように一端が止水栓3の止水栓側接続口10に接続され他端がフラッシュバルブ1のバルブ側接続口11に接続される。本実施形態では、連結管31は、止水栓3に対しては、止水栓側接続口10に挿入された状態で固定され、フラッシュバルブ1に対しては、バルブ側接続口11にねじ込まれた状態で固定される。つまり、本実施形態では、連結管31の止水栓側接続口10に対する接続については、連結管31が止水栓側接続口10に差し込まれる(挿入される)差込式が採用されている。
詳細には、図3および図4に示すように、連結管31は、止水栓側接続口10に接続される上流側の端部に、フランジ状の拡径部31aを有する。この拡径部31aが、止水栓側接続口10において連結管31の挿入孔を形成する内周面10aに対する連結管31の接触部となる。つまり、連結管31が上流側の端部から止水栓側接続口10に挿入される際には、拡径部31aの外周面が、止水栓側接続口10の内周面10aに対する摺動面となる。
連結管31の拡径部31aには、Oリング34が外嵌される。Oリング34は、拡径部31aに形成される外周溝31bに嵌め込まれる。本実施形態では、Oリング34は、拡径部31aにおいて連結管31の管軸方向(以下単に「管軸方向」という。)に所定の間隔を隔てて2箇所に配置されている。Oリング34により、連結管31の拡径部31aの外周面と止水栓側接続口10の内周面10aとの間が密閉される。このように、連結管31は、その上流側の端部側から止水栓側接続口10に差し込まれた状態となる。
一方、図3に示すように、連結管31は、バルブ側接続口11に接続される下流側の端部に、ネジ部31cを有する。ネジ部31cは、連結管31の外周面に形成された雄ネジ部である。これに対し、バルブ側接続口11の内周面11aには、連結管31のネジ部31cに対する雌ネジ部としてのネジ部11cが形成されている。連結管31は、ネジ部31cおよびネジ部11cによってバルブ側接続口11に螺合されることで、バルブ側接続口11に固定され、接続された状態となる。
連結管31の下流側の端部には、Oリング35が外嵌される。Oリング35は、連結管31の下流側の端部に形成される外周溝31dに嵌め込まれる。Oリング35は、連結管31の下流側の端部においてネジ部31cに対して上流側(図3において左側)に隣り合う位置に設けられる。Oリング35により、連結管31の下流側の端部の外周面とバルブ側接続口11の内周面11aとの間が密閉される。このように、連結管31は、その下流側の端部側からバルブ側接続口11にねじ込まれた状態で固定される。
本実施形態に係るフラッシュバルブ1の接続構造は、連結管31が差し込まれた状態で固定される、連結管31の止水栓側接続口10に対する接続部分に、特徴的な構成を有する。連結管31の止水栓側接続口10に対する接続には、上記のとおり本実施形態に係るフラッシュバルブ1の接続構造が備える袋ナット32が用いられる。
袋ナット32は、連結管31を挿通させた状態で、止水栓側接続口10の外周面に螺合される。袋ナット32は、環状ないし筒状の部材であり、内周面にネジ部32aを有する。袋ナット32においては、その中心軸方向の一側が、雌ネジ部となるネジ部32aに対する雄ネジ部を螺合させるために開放されており、中心軸方向の他側に、連結管31を挿通させるための挿通孔32bが形成されている。
止水栓側接続口10の先端部(開口側端部)においては、外周面に、袋ナット32がネジ部32aによって螺合するためのネジ部10cが形成されている。そして、袋ナット32は、上述したように上流側の端部側から止水栓側接続口10に差し込まれた状態の連結管31を挿通孔32bに挿通させながら、ネジ部32aとネジ部11cとによって、挿通孔32bとは反対側の開放された側から止水栓側接続口10の先端部に螺合される。袋ナット32が止水栓側接続口10の先端部に螺合されることで、止水栓側接続口10の先端部は、袋ナット32によって覆われた状態となる。
このような構成において、止水栓側接続口10の先端部と、止水栓側接続口10に螺合した状態の袋ナット32の挿通孔32bを形成する部分との間に、上記のとおり本実施形態に係るフラッシュバルブ1の接続構造が備える止め輪33が設けられる。止め輪33は、円環状の部材であり、連結管31に外嵌された状態で設けられる。
詳細には、連結管31の外周面には、管軸方向について止め輪33が外嵌される位置を規定する係止部として、複数の外周溝36と、1つの段差部37とが設けられている。本実施形態では、図3に示すように、連結管31の上流側の略半分の部分において、管軸方向に等間隔で(所定のピッチ毎に)8箇所に外周溝36が設けられている。そして、この8箇所の外周溝36の下流側において外周溝36の配置間隔に倣った位置に、段差部37が設けられている。
外周溝36は、連結管31の中心軸線C1(図3)を通る断面の形状でV字状となる。つまり、図4および図6に示すように、外周溝36は、管軸方向の上流側に位置する上流側斜面36aと、管軸方向の下流側に位置する下流側傾斜面36bとからなるV字溝として形成される。本実施形態では、上流側斜面36aと下流側傾斜面36bとは、略直角をなす。
より詳細には、外周溝36を形成する上流側斜面36aは、連結管31の中心軸線C1を通る断面による断面視において、管軸方向の上流側から下流側にかけて連結管31の外径を縮径させる斜面である。また、外周溝36を形成する下流側傾斜面36bは、同じく断面視において、管軸方向の上流側から下流側にかけて連結管31の外径を拡径させる斜面である。
外周溝36は、管軸方向に対して垂直な面に沿うように、連結管31の外周面の全周にわたって形成される。つまり、外周溝36は、図4に示すような側面視において、連結管31の中心軸線C1(図3)に直交するように形成される。したがって、上記のとおり上流側斜面36aと下流側傾斜面36bとによってV字溝として形成される外周溝36は、互いに隣り合う外周溝36間の部分に対して連結管31を縮径させる部分となる。
段差部37は、図4および図6に示すように、外周溝36の上流側斜面36aと同様な斜面として形成される段差斜面37aを有する。段差部37は、段差斜面37aにより、連結管31において外周溝36が設けられる部分に対して相対的に径が小さい下流側の部分を、互いに隣り合う外周溝36間の部分の外径と同等の外径に拡径させる。すなわち、連結管31において、段差部37よりも下流側の部分は、比較的外径が小さい部分であり、この比較的外径が小さい部分が、段差部37によって上流側にかけて、外周溝36の深さ程度拡径される。
これら外周溝36および段差部37に係止される止め輪33は、外周溝36および段差部37の形状に沿う形状を有する。つまり、止め輪33は、外周溝36および段差部37の形状に対応して、対角線が直交する四角形状の断面形状を有する。詳細には、図5および図6に示すように、四角形状となる止め輪33の断面形状において、互いに直交する対角線のうち、一方の対角線は、円環状の部材である止め輪33の径方向(図6において上下方向)に沿い、他方の対角線は、止め輪33の中心軸方向(図6において左右方向)に沿う。
したがって、止め輪33の断面形状の四辺の長さが等しい場合は、止め輪33の断面形状は正方形状となる。本実施形態では、止め輪33は、外周溝36の形状に対応して、断面形状が略正方形状となるように形成される。このような形状を有する止め輪33は、図6に示すように、断面形状において止め輪33の内周側で略直角をなす2つの内周斜面33aと、この2つの内周斜面33aによって形成される略直角に対向する外周側で略直角をなす2つの外周斜面33bとの4面を有する。
そして、止め輪33は、V字溝として形成される外周溝36に対して、2つの内周斜面33aにより形成される断面視略直角状の角形状により嵌合する。つまり、止め輪33は、2つの内周斜面33aを、断面形状で略直角状をなす上流側斜面36aおよび下流側傾斜面36bにそれぞれ接触させた状態で、外周溝36に係止される。また、止め輪33は、段差部37に対しては、連結管31に外嵌された状態で上流側となる方の内周斜面33aを、段差斜面37aに接触させた状態で係止される。
図4および図7に示すように、止め輪33は、切欠33cを有する円環状の部材である。つまり、本実施形態では、止め輪33は、上述したような四角形状の断面形状を有しながら、全体としてC型の形状を有する環状の部材である。
止め輪33は、例えばSUS(ステンレス鋼)等の金属を材料とする部材であり、弾性を有する。止め輪33は、その弾性によって、切欠33cから広げられ、連結管31の外周面に装着される。なお、止め輪33の材料としては、止め輪33の連結管31に対する着脱等に必要な弾性が得られるものであれば特に限定されるものではなく、SUS以外の金属材料であったり、樹脂材料やセラミックス等であったりしてもよい。
このような構成を有する止め輪33が、連結管31の外周面に設けられた複数の係止部、つまり8箇所の外周溝36および1箇所の段差部37のうちいずれかの係止部に係合する。すなわち、止め輪33は、外周溝36に対しては嵌合することで係合し、段差部37に対しては一方の(上流側の)内周斜面33aを段差斜面37aに接触させて係止されることで係合する。止め輪33は、外周溝36または段差部37に係合することで、連結管31上において管軸方向について位置決めされる。
そして、連結管31上における止め輪33の係合位置の変更、つまり止め輪33が係合する外周溝36および段差部37の変更に際しては、止め輪33は、切欠33cが広がるように弾性変形させられ、外周溝36または段差部37に対して着脱される。
また、本実施形態のフラッシュバルブ1の接続構造において、止め輪33は、上述したように外周溝36または段差部37に係合した状態において、止水栓側接続口10の開口端部と袋ナット32とに挟まれる。
詳細には、図6に示すように、止水栓側接続口10の開口端部においては、内周側の角部分が面取りされた態様で斜周面(以下「接続口側斜周面」という。)10dが形成されている。この接続口側斜周面10dは、連結管31に外嵌した状態の止め輪33に対する接触面となる。
具体的には、接続口側斜周面10dは、止め輪33の上流側(図6において左側)の外周斜面33bに接触する面となる。そこで、本実施形態では、接続口側斜周面10dと止め輪33の上流側の外周斜面33bとが互いに面接触できるように、接続口側斜周面10dの傾斜角度は、止め輪33が連結管31に外嵌された状態における上流側の外周斜面33bの傾斜角度と略同じとされる。
一方、上述したように挿通孔32bに連結管31を挿通させるとともに止水栓側接続口10の開口端部を覆った状態となる袋ナット32において、止水栓側接続口10の開口端部が対向する部分は、挿通孔32bを形成する部分となる。そこで、袋ナット32の挿通孔32bを形成する部分においては、上流側(図6において左側)の角部分が面取りされた態様で斜周面(以下「ナット側斜周面」という。)32dが形成されている。
ナット側斜周面32dは、連結管31に外嵌した状態の止め輪33に対する接触面となる。具体的には、ナット側斜周面32dは、止め輪33の下流側(図6において右側)の外周斜面33bに接触する面となる。そこで、本実施形態では、ナット側斜周面32dと止め輪33の下流側の外周斜面33bとが互いに面接触できるように、ナット側斜周面32dの傾斜角度は、止め輪33が連結管31に外嵌された状態における下流側の外周斜面33bの傾斜角度と略同じとされる。
図5は、止め輪33が段差部37に係合した状態を示し、同図(a)は、袋ナット32が止水栓側接続口10に対して締め付けられた状態を示し、同図(b)は、袋ナット32の締め付け前の状態を示す。すなわち、図5(b)に示す状態から、ネジ部10cおよびネジ部32aによって袋ナット32が締め付けられることで、同図(a)に示すように、止め輪33が、止水栓側接続口10の開口端部と袋ナット32とに挟まれた状態となる。
止め輪33は、上述したように連結管31を挿入させた止水栓側接続口10の開口端部と袋ナット32とに挟まれることで、止水栓側接続口10に対する連結管31の管軸方向の相対的な移動を規制する。詳細には次のとおりである。
止め輪33は、外周溝36または段差部37に係合している状態においては、管軸方向の力が加わっても、拡径しない限りその係合状態は解除されない。そして、止め輪33が拡径することは、接続口側斜周面10dにより止め輪33に接触する止水栓側接続口10の開口端部と、ナット側斜周面32dにより止め輪33に接触する袋ナット32の挿通孔32bを形成する部分とによって規制される。
このように、止め輪33に管軸方向の力が作用することによっても、連結管31の係止部に対する止め輪33の係合状態が維持されることから、連結管31に管軸方向の力が作用しても、連結管31の止水栓側接続口10に対する管軸方向の相対的な移動が規制される。
止め輪33が外周溝36に嵌合した状態においては、連結管31に管軸方向の下流側に向かう力が作用した場合、止め輪33の下流側の内周斜面33aがナット側斜周面32dに接触した状態で、連結管31の管軸方向の止水栓側接続口10に対する相対的な移動が規制される。また、止め輪33が外周溝36に嵌合した状態においては、連結管31に管軸方向の上流側に向かう力が作用した場合、止め輪33の上流側の内周斜面33aが接続口側斜周面10dに接触した状態で、連結管31の管軸方向の止水栓側接続口10に対する相対的な移動が規制される。
このように止水栓側接続口10に対する管軸方向の相対的な移動が規制される連結管31については、止め輪33を係止させる係止部である外周溝36および段差部37の選択により、連結管31の止水栓側接続口10に対する管軸方向の相対的な位置(以下単に「連結管31の相対位置」という。)の調整、つまり連結管31の止水栓側接続口10に対する挿入量の調整が行われる。すなわち、上述したような連結管31上における止め輪33の係合位置の変更により、連結管31の相対位置の調整が行われる。
図1に示すような本実施形態のフラッシュバルブ1の接続構造が適用される構成において、連結管31の相対位置の調整が行われることで、フラッシュバルブ1と止水栓3との管軸方向の相対的な位置関係の調整が可能となる。すなわち、図2に示すように、本実施形態のフラッシュバルブ1の接続構造によれば、止水栓3に対する給水中心の位置(直線x1参照)と、フラッシュバルブ1から便器2への給水中心の位置(直線x2参照)との距離(符号d1参照、以下「芯間距離」という。)の調整が可能となる。
ここで、芯間距離を規定する止水栓3に対する給水中心の位置(直線x1参照)は、止水栓3の流入口9の開口中心線の位置であり、上下方向に移動する弁体14の軸心線の位置でもある。また、同じく芯間距離を規定するフラッシュバルブ1から便器2への給水中心の位置(直線x2参照)は、フラッシュバルブ1の流出口6の開口中心線の位置であり、上下方向に移動するピストンバルブ18の軸心線の位置でもある。
図3に示すように、本実施形態では、係止部としての外周溝36および段差部37の配置間隔p1は、例えば2.5mmである。つまり、この場合、複数の外周溝36および段差部37は、例えば2.5mmピッチで配置される。複数の外周溝36および段差部37の配置ピッチは、連結管31の相対位置の調整ピッチとなる。
したがって、本実施形態のように8箇所の外周溝36および1箇所の段差部37が等ピッチで配置される構成においては、連結管31の相対位置について、調整ピッチが2.5mmとなり、調整幅が±10mmとなる。つまり、図3に示すように、止め輪33の位置は、連結管31に設けられる係止部のうち最も上流側に位置する外周溝36に嵌合した状態(符号33X参照)から、2.5mmピッチで、係止部のうち最も下流側に位置する段差部37に係止された状態(符号33Y参照)まで、20mmの範囲で調整される。
このように、本実施形態のフラッシュバルブ1の接続構造において、外周溝36および段差部37の配置ピッチを2.5mmとした場合、芯間距離については、設定寸法±10mmの範囲で、施工誤差を吸収することができる。なお、図3に示すように、互いに隣り合う外周溝36間、あるいは外周溝36と段差部37との間の水平部の管軸方向の長さp2は、例えば1.5mmである。この場合、各外周溝36の幅(管軸方向の長さ)は、1mmとなる。
このような係止部としての外周溝36および段差部37のピッチに関しては、実際には、5mm程度あれば、現場に応じた芯間距離と設計上の芯間距離との間の誤差(施工誤差)を吸収するには十分である。しかし、現場施工の際や止め輪33の位置調整の際の組立て時に、互いに隣り合う外周溝36間や外周溝36と段差部37との間の水平部に止め輪33が載ってしまうことを防止する観点からは、上記のとおり2.5mm程度のピッチであることが好ましい。2.5mm程度のピッチであれば、袋ナット32を止水栓側接続口10に対して締める段階で、止め輪33がいずれかの外周溝36あるいは段差部37の位置に移動するという作用が得られる。
以上のような構成を備える本実施形態のフラッシュバルブ1の接続構造によれば、フラッシュバルブ1と止水栓3とを接続する連結管31が止水栓側接続口10に差し込まれた状態で袋ナット32により固定される構成において、芯間距離の調整を簡単に行うことができるとともに、仮に袋ナット32が緩んだ場合であっても、管軸方向についてのフラッシュバルブ1と止水栓3との相対的な位置、つまり芯間距離の変動を防止することができる。
例えば本実施形態のように、芯間距離の調整が可能である、連結管31が止水栓側接続口10に差し込まれた状態で袋ナット32により固定される構成においては、従来、袋ナット32が緩んだ状態になると、例えば給水管7から止水栓3を介して供給される水の水圧が連結管31に作用した場合、芯間距離が広がる方向(止水栓側接続口10から連結管31が突出する方向)に連結管31の位置ズレが生じることがあった。こうした連結管31の位置ズレは、漏水を生じさせる原因となり得る。
そこで、上述したような本実施形態のフラッシュバルブ1の接続構造を採用することにより、仮に袋ナット32において経時的な緩み等が生じた場合であっても、連結管31に水圧が作用すること等によって連結管31が大きく移動し、連結管31の位置がずれてしまうこと、つまりは芯間距離の変動を防止することができる。結果として、漏水の危険性を低減することができる。
また、止め輪33は、SUS等により構成され、弾性を有することから、外周溝36等に対して止め輪33を簡単に嵌合させることができる。これにより、芯間距離の調整を簡単に行うことができる。
また、連結管31に外嵌された状態の止め輪33に対して接触する止水栓側接続口10および袋ナット32のそれぞれの接触面は、止め輪33の断面形状に沿って斜周面として形成されている。このため、袋ナット32を止水栓側接続口10にしっかりと締め付けることにより、止め輪33は外周溝36等に嵌り込み、連結管31に対して強固に固定される。
また、止め輪33が係止される外周溝36および段差部37は、管軸方向に傾く斜面により形成されることから、止め輪33の係合位置の変更に際しては、止め輪33が管軸方向に押されることで、止め輪33の弾性による拡径をともなって止め輪33をスライド移動させることができる。つまり、本実施形態の構造によれば、止め輪33の係合位置の変更に際して、連結管31から止め輪33を一旦取り外す等の作業が必要なく、止め輪33の位置調整を容易に行うことができる。
ただし、連結管31の外周面において止め輪33を係合させるための係止部としては、本実施形態のような外周溝36や段差部37に限定されない。係止部としては、例えば、断面形状がU字状となるU字溝や断面形状が円弧状となる丸溝等であってもよい。
また、本実施形態では、連結管31が差し込まれた状態で固定される、連結管31の止水栓側接続口10に対する接続部分において、止め輪33等を用いた特徴的な構成が採用されているが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、連結管31がバルブ側接続口11に対して差し込まれた状態で固定される構成においては、連結管31のバルブ側接続口11に対する接続部分において、上述したような止め輪33等を用いた特徴的な構成が採用されてもよい。
したがって、本実施形態に係るフラッシュバルブ1の接続構造において、連結管31としては、止水栓側接続口10およびバルブ側接続口11の少なくともいずれかに挿入された状態で固定されるものであればよい。また、締結部材としての袋ナット32は、連結管31を挿通させた状態で、止水栓側接続口10およびバルブ側接続口11のうち連結管31を挿入させた接続口の外周面に螺合される。そして、係止部材としての止め輪33は、連結管31の外周面に設けられた複数の係止部(外周溝36、段差部37)のうちいずれかの係止部に係合し、連結管31を挿入させた接続口の開口端部と袋ナット32とに挟まれることで、連結管31を挿入させた接続口に対する連結管31の管軸方向の相対的な移動を規制する。
また、本実施形態では、止め輪33は、切欠33cを有する円環状の部材であるが、係止部材の形状等も本実施形態に限定されない。係止部材としては、例えば端部同士が互いに接触したりオーバーラップしたりすることで切欠を有しない円環状の部材等であってもよい。
ただし、係止部材は、本実施形態の止め輪33のように、切欠33cを有するC型の円環状の部材であることが好ましい。これにより、止め輪33において芯間距離の広がり等の連結管31の位置ズレを防止できるだけの剛性を確保しながら、連結管31の外周溝36等に容易に嵌合させることができる弾性力を止め輪33に持たせることができる。
以下では、本実施形態のフラッシュバルブ1の接続構造が備える好ましい形態について説明する。本実施形態のフラッシュバルブ1の接続構造においては、上述したように、止め輪33と止水栓側接続口10の開口端部との接触面、および止め輪33と袋ナット32との接触面は、いずれも斜面として形成される。
具体的には、図6に示すように、袋ナット32の止め輪33に対する接触面は、ナット側斜周面32dである。また、止水栓側接続口10の開口端部の止め輪33に対する接触面は、接続口側斜周面10dである。また、止め輪33の袋ナット32に対する接触面は、下流側の外周斜面33bである。また、止め輪33の止水栓側接続口10の開口端部に対する接触面は、上流側の外周斜面33bである。
これらの斜面として形成される各部材の接触面は、止め輪33に止水栓側接続口10の開口端部と袋ナット32とにより挟まれる方向の力(以下「挟持力」という。)が作用することで、止め輪33に連結管31の径方向内側向きの力を作用させる向きに傾斜した傾斜面であると言える。ここで、止め輪33に作用する挟持力は、止め輪33が止水栓側接続口10の開口端部および袋ナット32によって管軸方向に押される方向に作用する力である。言い換えると、止め輪33に作用する挟持力は、止水栓側接続口10および袋ナット32が止め輪33に接触した状態で、止水栓側接続口10と袋ナット32とが互いに近接することで止め輪33に作用する力である。
詳細には、止め輪33に挟持力が作用した状態においては、止め輪33は、上流側の外周斜面33bに接続口側斜周面10dを接触させた止水栓側接続口10から、管軸方向の下流側に向く方向の力の作用を受ける。このように止水栓側接続口10からの力が止め輪33に作用すると、止め輪33と止水栓側接続口10との互いの接触面となる外周斜面33bまたは接続口側斜周面10dにより、止め輪33に径方向内側向きの力(図5、矢印F1参照)、つまり止め輪33を縮径させる方向の力の成分が生じる。言い換えると、止水栓側接続口10から止め輪33に作用する力の一部は、接続口側斜周面10dまたは外周斜面33bにより、止め輪33の径方向内側向きの力に変換される。
同じく止め輪33に挟持力が作用した状態においては、止め輪33は、下流側の外周斜面33bにナット側斜周面32dを接触させた袋ナット32から、管軸方向の上流側に向く方向の力の作用を受ける。このように袋ナット32からの力が止め輪33に作用すると、止め輪33と袋ナット32との互いの接触面となる外周斜面33bまたはナット側斜周面32dにより、止め輪33に径方向内側向きの力(図5、矢印F1参照)、つまり止め輪33を縮径させる方向の力の成分が生じる。言い換えると、袋ナット32から止め輪33に作用する力の一部は、ナット側斜周面32dまたは外周斜面33bにより、止め輪33の径方向内側向きの力に変換される。
このように、本実施形態のフラッシュバルブ1の接続構造においては、止め輪33と止水栓側接続口10の開口端部との接触面、および止め輪33と袋ナット32との接触面は、挟持力の作用を受けた止め輪33が径方向内側向きの力の作用を受けるような斜面として形成されることが好ましい。
このような構成によれば、袋ナット32を止水栓側接続口10に対して締めることにより、止め輪33に対して径方向内側向きの力を作用させることができるので、止め輪33は拡径することができず、外周溝36や段差部37に係合した状態の止め輪33が外周溝36等を越えて隣の外周溝36に移動する等、止め輪33の位置がずれることを防止することができる。結果として、漏水を生じさせる原因となり得る連結管31の位置ズレを効果的に防止することができる。
なお、上述したように挟持力の作用を受けた止め輪33が径方向内側向きの力の作用を受けるような斜面として形成される接触面は、次に挙げる接触面のうち、少なくともいずれかの接触面であれば、上述したような作用・効果を得ることができる。すなわち、袋ナット32の止め輪33に対する接触面、止水栓側接続口10の開口端部の止め輪33に対する接触面、止め輪33の袋ナット32に対する接触面、止め輪33の止水栓側接続口10の開口端部に対する接触面である。
したがって、例えば、図8の各図に示す態様であっても、上述したような作用・効果を得ることができる。図8(a)は、止め輪33、止水栓側接続口10、および袋ナット32の各部の接触面のうち、止め輪33の止水栓側接続口10に対する接触面41、および止め輪33の袋ナット32に対する接触面42のみが、上述したような斜面である場合の態様を示している。図8(a)に示す例では、止水栓側接続口10は、止め輪33の接触面41に対してそれぞれ線接触(断面形状では点接触、以下同じ。)しており、袋ナット32は、止め輪33の接触面42に対して線接触している。
図8(b)は、止め輪33の袋ナット32に対する接触面43のみが、上述したような斜面である場合の態様を示している。図8(b)に示す例では、袋ナット32は、止め輪33の接触面43に対して線接触している。図8(c)は、袋ナット32の止め輪33に対する接触面44のみが、上述したような斜面である場合の態様を示している。図8(c)に示す例では、止め輪33は、袋ナット32の接触面44に対して線接触している。図8(d)は、止水栓側接続口10の止め輪33に対する接触面45、および袋ナット32の止め輪33に対する接触面46のみが、上述したような斜面である場合の態様を示している。図8(d)に示す例では、止め輪33は、止水栓側接続口10の接触面45および袋ナット32の接触面46それぞれに対して線接触している。
また、本実施形態のフラッシュバルブ1の接続構造においては、連結管31を挿通させる袋ナット32の内径は、連結管31を挿通させるとともに止水栓側接続口10への螺合のための連結管31に対する相対回転を行うために最低限必要な大きさよりも、若干大きめに設定されることが好ましい。
具体的には、袋ナット32が、連結管31を挿通させるとともに止水栓側接続口10に螺合していない状態で、連結管31に対して所定の状態となるまで傾くことができるように、袋ナット32の内径と連結管31の外径とが設定される。ここで、袋ナット32の内径は、連結管31を挿通させる部分である挿通孔32bの内径である。また、連結管31の外径は、連結管31において止め輪33が係合する外周溝36および段差部37が設けられる部分の外径であり、詳細には、上述したような互いに隣り合う外周溝36間等の水平部の外径である。
そして、袋ナット32の連結管31に対する傾きについて、上記の所定の状態とは、止め輪33の外周溝36または段差部37に対する係合状態が解除される程度の止め輪33の拡径が許容される状態である。具体的には、例えば図9に示すように袋ナット32が連結管31に対して傾いた状態である。
図9に示す状態においては、袋ナット32が連結管31に対して傾くことで、止め輪33の周方向の一部(図9では下側の部分)で、連結管31の接続状態では止め輪33の下流側の外周斜面33bに接触するナット側斜周面32dが、外周斜面33bから離れている。このような状態になることで、止め輪33の拡径が許容され、止め輪33が外周溝36から脱することができる(矢印G1参照)。つまり、図9に示すように袋ナット32が連結管31に対して傾くことで、外周溝36に嵌合した状態の止め輪33の拡径が可能となり、例えば止め輪33に管軸方向の力が作用することにより、外周溝36に対する係合状態を解除させることが可能となる。
したがって、図9に示すように袋ナット32が連結管31に対して傾いた状態において、袋ナット32の止め輪33に近い側の部分(図9では上側の部分)が、ナット側斜周面32dを外周斜面33bに接触させた状態で管軸方向に押されることで(矢印G2参照)、止め輪33が拡径して外周溝36から脱することになる。そして、袋ナット32を押し続けることで、止め輪33を隣の外周溝36に嵌合させることができる。なお、このような作用は、止め輪33が段差部37に係合した状態においても同様に得られる。
このように、本実施形態のフラッシュバルブ1の接続構造においては、好ましくは、袋ナット32の連結管31を挿通させる孔部である挿通孔32bの内径は、所定の状態となるまで、袋ナット32が連結管31に対して傾くように、連結管31の外径に対して大きい。ここで、所定の状態とは、止め輪33の外周溝36または段差部37に対する係合状態が解除される程度の止め輪33の拡径が許容される状態である。
すなわち、この好ましい構成においては、袋ナット32が、連結管31に対して上記の所定の状態となるまで傾くことができるように、袋ナット32の挿通孔32bを形成する部分の内周面と、連結管31の外周溝36等が設けられる水平部の外周面との間に隙間が確保される。そして、この隙間の大きさに基づいて、袋ナット32の内径と連結管31の外径との相対的な大きさが設定される。
このような構成によれば、袋ナット32を連結管31に対して傾けることにより、袋ナット32と止め輪33との接触を円周方向の一部分のみとすることができるので、止め輪33の袋ナット32と接触していない部分側から止め輪33を拡径させることが可能となる。これにより、袋ナット32を傾けた状態で止め輪33を押し込むことで、止め輪33の係合位置を容易に変更することができる。こうした効果は、例えば、芯間距離が短く、フラッシュバルブ1と止水栓3との間に手を入れることが困難な場合に、良好な作業性を得る観点から、特に有効に作用する。
また、連結管31の拡径部31aの外径は、袋ナット32の内径(挿通孔32bの内径)よりも大きくすることが好ましい。このような構成にすることによって、万が一、止め輪33を係合することなく、連結管31を止水栓側接続口10に接続した場合においても、連結管31が脱落することを防止することが可能となる。
また、本実施形態のフラッシュバルブ1の接続構造においては、係止部としての外周溝36および段差部37は、連結管31の中心軸線C1(図3参照)を通る断面の形状で、連結管31の外周面となす角が鈍角となる斜面からなることが好ましい。
本実施形態では、外周溝36は、断面形状で略直角をなす上流側斜面36aおよび下流側傾斜面36bからなるV字溝として形成される。また、段差部37を形成する段差斜面37aは、外周溝36の上流側斜面36aと同様の斜周面として形成される。
したがって、図6に示すように、連結管31の中心軸線C1を通る断面の形状において、例えば、外周溝36の上流側斜面36aと下流側傾斜面36bとが略直角をなす場合、上流側斜面36aと連結管31の外周面31eとのなす角度θaは、約135°となる。同様に、下流側傾斜面36bと外周面31eとのなす角度θb、および段差部37の段差斜面37aと外周面31eとのなす角度θcも、約135°となる。ここで、連結管31の外周面31eは、上述した互いに隣り合う外周溝36間等の水平部の外周面である。
このように、本実施形態では、外周溝36は、連結管31の中心軸線C1を通る断面形状で連結管31の外周面31eとなす角(角度θa、θb)が鈍角となる斜面である上流側斜面36aおよび下流側傾斜面36bからなる。また、段差部37は、同じく断面形状で連結管31の外周面31eとなす角(角度θc)が鈍角となる斜面である段差斜面37aからなる。
このような構成によれば、外周溝36に嵌合した状態あるいは段差部37に係止された状態の止め輪33を、外周溝36または段差部37を乗り越えさせて隣の外周溝36または段差部37へ移動させやすくなる。具体的には、例えば、止め輪33に管軸方向の力を作用させることで、止め輪33の弾性による拡径をともなって止め輪33をスライド移動させることができる。
これにより、芯間距離の調整を行うに際し、止め輪33の連結管31に対する係合位置の変更を容易に行うことができるので、作業性を向上させることができる。具体的には、止め輪33の係合位置の変更に際して、連結管31から止め輪33を一旦取り外す等の作業が必要なく、止め輪33の位置調整を容易に行うことができる。
また、本実施形態のフラッシュバルブ1の接続構造においては、止め輪33の外周溝36および段差部37に対する係合面は、止め輪33の管軸方向の中心位置にかけて止め輪33の内径を縮径させる一対の傾斜面を有することが好ましい。
本実施形態では、止め輪33は、外周溝36および段差部37に対する係合面として、一対の内周斜面33aを有する。この一対の内周斜面33aは、止め輪33の管軸方向の中心位置にかけて止め輪33の内径を縮径させる一対の傾斜面となっている。つまり、止め輪33においては、断面形状で一方の内周斜面33aが他方の内周斜面33aとなす角部分の頂点が止め輪33の管軸方向の中心位置となり、各内周斜面33aは、その角部分の頂点の位置にかけて止め輪33の径方向の内側に向けて傾斜する斜面として形成される。
このような構成によれば、上述したように、外周溝36に嵌合した状態あるいは段差部37に係止された状態の止め輪33を、外周溝36または段差部37を乗り越えさせて隣の外周溝36または段差部37へ移動させやすくなる。これにより、芯間距離の調整を行うに際し、止め輪33の連結管31に対する係合位置の変更を容易に行うことができるので、作業性を向上させることができる。
また、この止め輪33の一対の内周斜面33aの傾斜度合いについては、上述したように連結管31の外周面31eと鈍角をなす係止部の斜面である外周溝36の上流側斜面36aおよび下流側傾斜面36b、ならびに段差部37の段差斜面37aの傾斜に沿うような角度をなすことが好ましい。これにより、外周溝36または段差部37に係合した状態の止め輪33の移動のしやすさが得られるとともに、止め輪33の外周溝36および段差部37に対する良好な係合作用を得ることができる。