一般に、シロッコファンは、高い比速度(ns=400〜900)で用いられることが多く、また、羽根車の回転時には羽根車に多少の振れが生じる。したがって、回転時において羽根車がベルマウスに接触するのを防止するために、羽根車の前記一端側の端部は、ベルマウスとの間に比較的大きな間隔をあけて配置されている。すなわち、羽根車は、軸方向の正面側の端部における羽根同士の隙間(連通部)において羽根車の外部と軸方向に連通しており、この連通部とケーシングとの間には大きな間隔があいている。
したがって、このようなシロッコファンでは、羽根車から半径方向の外側に流出した空気の一部が前記連通部を通じて羽根車に再流入する漏れ流れが生じやすく、この漏れ流れが騒音の原因となる。
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、漏れ流れに起因する騒音を低減できるシロッコファンを提供することにある。
本発明のシロッコファンは、羽根車(13)と、ケーシング(23)とを備えている。前記羽根車(13)は、回転軸(A)回りに回転可能で、かつ周方向に複数の羽根(11)が配列されている。前記ケーシング(23)は、前記羽根車(13)が収容される収容空間(15)と、前記収容空間(15)内に空気を流入させるための吸込口(17)が形成されたベルマウス(19)と、前記収容空間(15)内の空気を外部に吹き出させるための吹出口(21)とを有している。前記羽根車(13)における前記回転軸(A)の軸方向の一端側は前記吸込口(17)に対向するように配設されている。前記羽根(11)同士の隙間のうち前記一端側に位置する連通部(25)の少なくとも一部は、前記ベルマウス(19)における羽根車(13)側の端部よりも半径方向の外側に位置している。前記羽根車(13)から前記半径方向の外側に流出した空気が前記連通部(25)を通じて前記羽根(11)同士の隙間に再流入する漏れ流れの経路上には、略均一な複数の孔が略全体にわたって設けられた気流抵抗部材(27)が配設されている。前記気流抵抗部材(27)は、前記ベルマウス(19)の前記吸込口(17)に対応する位置に開口を有する環状の部材であり、前記羽根車(13)に固定されている。
この構成では、前記羽根車(13)から前記半径方向の外側に流出した空気が前記連通部(25)を通じて羽根(11)同士の隙間に再流入する漏れ流れの経路上に、気流抵抗部材(27)が配設されているので、漏れ流れに起因する騒音を低減することができる。
騒音が低減される理由は次の通りであると考えられる。すなわち、この気流抵抗部材(27)は、略均一な複数の孔が略全体にわたって設けられており、漏れ流れの経路上に配設されているので、漏れ流れが通過する際の抵抗となる。したがって、気流抵抗部材(27)を配設していない場合と比べて、羽根車(13)に再流入する漏れ流れの流入量を低減できると考えられる。また、漏れ流れは、流れ方向や流速などが不安定な乱れた流れであるが、略均一な複数の孔が略全体にわたって設けられた気流抵抗部材(27)を通過することにより、細流化される。これにより、漏れ流れは、流れ方向や流速などがある程度均一化され、より安定した流れに整流されると考えられる。以上のように、漏れ流れの流入量が低減され、漏れ流れが整流されることにより、漏れ流れに起因する騒音を低減することができると考えられる。
また、漏れ流れの流入量が低減されると、その分だけ損失が小さくなり、漏れ流れに起因する静圧の低下が抑制される。
また、ベルマウス(19)に案内されて羽根車(13)に流入する空気(主流)は、前記羽根(11)同士の隙間において漏れ流れとの間で干渉し合うが、漏れ流れの流入量が低減され、漏れ流れが整流されることにより、前記干渉に起因する主流の乱れが低減されるので、ファンの空力特性の向上が期待できる。
また、前記シロッコファンにおいて、前記気流抵抗部材(27)は、前記連通部(25)を覆うように前記羽根車(13)に固定されていてもよい。この構成では、前記気流抵抗部材(27)は、前記連通部(25)を覆うように前記羽根車(13)に固定されているので、漏れ流れは、気流抵抗部材(27)により整流された直後に連通部(25)を通じて羽根(11)同士の隙間に再流入する。したがって、気流抵抗部材(27)が連通部(25)から離れた位置に設けられている場合と比較して、より安定した状態の漏れ流れを羽根(11)同士の隙間に再流入させることができる。
また、前記気流抵抗部材(27)が前記連通部(25)を覆うように前記羽根車(13)に固定されている場合、前記ベルマウス(19)における羽根車(13)側の端部は、前記半径方向において、前記連通部(25)における前記半径方向の内側の端部と前記連通部(25)における前記半径方向の外側の端部の間に位置していてもよい。
この構成では、前記ベルマウス(19)における羽根車(13)側の端部は、前記半径方向において、前記連通部(25)における前記半径方向の内側の端部と前記連通部(25)における前記半径方向の外側の端部の間に位置している。したがって、この構成では、連通部(25)には、漏れ流れだけでなく、ベルマウス(19)に案内されてくる空気(主流)の一部も流れ込む。
このような形態において、仮に、連通部(25)に気流抵抗部材(27)が設けられていない場合、連通部(25)に流れ込む漏れ流れと前記主流の一部は共に整流されていないので、互いの干渉に起因する騒音が大きくなるおそれがある。
一方、この構成では、漏れ流れと前記主流の一部は、共に気流抵抗部材(27)を通過して整流された後に羽根車(13)に流入して合流するので、前記干渉に起因する騒音を低減することができる。
また、本発明の他のシロッコファンは、回転軸(A)回りに回転可能で、かつ周方向に複数の羽根(11)が配列された羽根車(13)と、前記羽根車(13)が収容される収容空間(15)と前記収容空間(15)内に空気を流入させるための吸込口(17)が形成されたベルマウス(19)と前記収容空間(15)内の空気を外部に吹き出させるための吹出口(21)とを有するケーシング(23)と、を備え、前記羽根車(13)における前記回転軸(A)の軸方向の一端側が前記吸込口(17)に対向するように配設されており、前記羽根(11)同士の隙間のうち前記一端側に位置する連通部(25)の少なくとも一部が、前記ベルマウス(19)における羽根車(13)側の端部よりも半径方向の外側に位置しており、前記羽根車(13)から前記半径方向の外側に流出した空気が前記連通部(25)を通じて前記羽根(11)同士の隙間に再流入する漏れ流れの経路上には、略均一な複数の孔が略全体にわたって設けられた気流抵抗部材(27)が配設されている。前記ケーシング(23)は、前記ベルマウス(19)が配設されるとともに、前記回転軸(A)に直交する方向に広がる正面部(231)を有し、前記気流抵抗部材(27)は、筒状に形成されるとともに、その一端部が前記正面部(231)の内面に固定されて、前記ベルマウス(19)を囲むように配設されていている。
また、前記気流抵抗部材(27)が筒状である場合、前記気流抵抗部材(27)の他端部は、前記連通部(25)における前記半径方向の外側の端部に近接する位置にあるのが好ましい。この構成では、気流抵抗部材(27)が漏れ流れの経路の大半をカバーすることができるので、気流抵抗部材(27)を通過せずに連通部(25)に流れ込む漏れ流れの量をより小さくすることができる。よって、漏れ流れに起因する騒音低減効果をより高めることができる。
また、前記気流抵抗部材(27)が筒状である場合、前記気流抵抗部材(27)の他端部の外径は、前記羽根車(13)の外径よりも大きいことが好ましい。この構成では、羽根車(13)の回転時の回転ぶれや、羽根車(13)の組立時における多少の位置ずれ(芯ずれ)などが生じた場合であっても、気流抵抗部材(27)が羽根車(13)に接触するのを抑制できる。
さらに、前記気流抵抗部材(27)は、前記連通部(25)を前記半径方向の外側から囲むように配設されているのが好ましい。
気流抵抗部材(27)の他端部が連通部(25)と軸方向に対向する位置にある場合には、互いの接触を避けるために、気流抵抗部材(27)の他端部と羽根車(13)との間に、軸方向に空いた隙間を多少なりとも設ける必要があるので、その隙間を通じて漏れ流れの一部がすり抜けて羽根(11)同士の隙間に再流入することになる。
一方、この構成では、前記気流抵抗部材(27)は、前記連通部(25)を前記半径方向の外側から囲むように配設されているので、軸方向においては漏れ流れの経路を気流抵抗部材(27)によってほぼ覆うことができる。これにより、気流抵抗部材(27)を通過せずに連通部(25)に流れ込む漏れ流れの量をより小さくすることができるので、騒音低減効果をより高めることができる。
また、前記気流抵抗部材(27)が筒状である場合、前記気流抵抗部材(27)は、前記一端部から他端部に向かうにつれて外径が大きくなる略円錐台形状を有していてもよい。この構成では、略円錐台形状を有する気流抵抗部材(27)は、羽根車(13)との接触が抑制される効果に加え、さらに、外径がほぼ一定の気流抵抗部材(27)と比べて、漏れ流れの量を低減させる効果、及び漏れ流れを細流化して気流の乱れを抑制する効果をより高めることができる。すなわち、外径がほぼ一定の気流抵抗部材(27)と比べて略円錐台形状を有する気流抵抗部材(27)は、前記軸方向の長さが同じであっても側面の面積を大きくすることができる。これにより、外径がほぼ一定の気流抵抗部材(27)と比べて漏れ流れが通過する面積を増加させることができるので、漏れ流れの抵抗を増加させて漏れ流れの量を低減する効果を高めることができるとともに、漏れ流れを細流化して気流の乱れを抑制する効果も高めることができる。
また、前記気流抵抗部材(27)が筒状である場合、前記気流抵抗部材(27)は、断面が波形状であってもよい。この構成では、断面が波形状の気流抵抗部材(27)は、外径がほぼ一定の気流抵抗部材(27)と比べて、前記軸方向の長さが同じであっても側面の面積を大きくすることができる。これにより、略円錐台形状の気流抵抗部材(27)の場合と同様の前記効果を得ることができる。
また、前記気流抵抗部材(27)が筒状である場合、前記ケーシング(23)は、その内側面と前記羽根車(13)における前記半径方向の外側の端部との間隔が前記周方向に沿って次第に大きくなる渦巻形状を有し、前記羽根(11)同士の隙間に再流入する前記漏れ流れの流入量が前記周方向の位置に応じて異なる偏流の傾向に対応するように、気流が通過する際の前記気流抵抗部材(27)の抵抗の大きさが、前記周方向の位置に応じて設定されていてもよい。前記ケーシング(23)が前記渦巻形状である場合には、漏れ流れの流入量が前記周方向の位置に応じて異なる偏流が生じやすい。そこで、この構成では、前記偏流の傾向に対応するように、気流が通過する際の前記気流抵抗部材(27)の抵抗の大きさを、前記周方向の位置に応じて設定することにより、前記周方向における前記流入量の差異を小さくしている。これにより、周方向においても、漏れ流れの流入量をある程度均一化することができるので、騒音低減効果をより高めることができる。
前記気流抵抗部材(27)の具体例としては、例えば網目構造や格子構造などの形態が挙げられる。前記網目構造の場合には、30メッシュ〜70メッシュの網目を有しているのが好ましい。これにより、騒音低減効果をより高めることができる。
以上説明したように、本発明によれば、前記漏れ流れに起因する騒音を低減できる遠心送風機を提供することができる。
以下、本発明の実施形態に係るシロッコファンについて図面を参照して詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係るシロッコファン10は、渦巻形状のケーシング(スクロールケーシング)23と、このケーシング23内に収容された羽根車13とを備えている。羽根車13は、図略のモータに接続され、このモータの駆動によりケーシング23内において回転軸Aを中心に回転方向Dに回転する。
ケーシング23は、羽根車13が収容される収容空間15と、この収容空間15内に空気を流入させるための吸込口17が形成されたベルマウス19と、収容空間15内の空気を外部に吹き出させるための吹出口21とを有している。
ケーシング23は、羽根車13の回転軸Aの軸方向の正面側Fに配設された正面板(正面部)231と、背面側Rに配設された背面板233と、正面板231と背面板233の間に配設された側面板(胴板)235とを有している。このケーシング23では、吸込口17及び吹出口21以外の部位は、正面板231、背面板233及び側面板235により塞がれている。ベルマウス19は、正面板231に形成されており、羽根車13における回転軸Aの軸方向の一端側F(正面側F)の部位と対向している。
ケーシング23は、羽根車13を囲むように形成された略円筒形状のケーシング本体23aと、このケーシング本体23aから吹出口21に向かって突出し、断面が略四角形の筒状に形成された吐出管部23bとを有している。吐出管部23bとケーシング本体23aとの境界部分(舌部)237は、図1に示すように、吐出管部23bの側面板235とケーシング本体23aの側面板235とが平面視で鋭角をなすようにつながっている。ケーシング23における側面板235の内面と羽根車13における半径方向の外側の端部との間隔は、舌部237から回転方向Dに沿って次第に大きくなる。
ベルマウス19は、ケーシング23内へ空気を吸い込むための略円形の吸込口17を有し、空気を羽根車13に案内する役割を果たす。図2に示すように、ベルマウス19の内周面は、その内径が正面側Fから背面側Rに向かうにつれて小さくなる湾曲形状を有している。同様に、ベルマウス19の外周面は、その外径が正面側Fから背面側Rに向かうにつれて小さくなる湾曲形状を有している。
羽根車13は、ケーシング23の背面板233に対向して配置された円盤状の主板35と、回転方向Dに沿って配列された複数の前向き羽根11と、これらの羽根11の正面F側の端部に連結されたリング部33とを有している。主板35には、図略のモータが接続される。各羽根11の背面側Rの端部は主板35につながっている。リング部33は、各羽根11の正面側Fの端部同士を連結して補強するための環状の部材である。各羽根11における前縁から後縁までの長さ(翼弦長)は、回転軸Aの軸方向においてほぼ一定である。なお、前記翼弦長は、正面側Fから背面側Rにかけて次第に大きくなる形状であってもよい。
前記モータにより羽根車13が回転すると、図2において一点鎖線で示すように、ベルマウス19からケーシング23内に空気が吸い込まれる。この吸い込まれた空気は、回転軸Aの軸方向の正面側Fから前記軸方向に沿って背面側Rに向かって羽根車13内に流入し、羽根11同士の隙間を通過して半径方向外側に羽根車13から流出する。この流出した空気は、ケーシング23のケーシング本体23aの内部を回転方向Dに沿って移動し、吐出管部23bの吹出口21から吐出される。
図2及び図3に示すように、羽根車13は、軸方向の正面側Fの端部における羽根11同士の隙間であって羽根車13の外部と軸方向に連通する連通部25を有している。この第1実施形態では、連通部25は、ベルマウス19における背面側Rの端部19aよりも半径方向の外側に位置している(図2参照)。したがって、このシロッコファン31では、羽根車13から前記半径方向の外側に流出した空気の一部が連通部25を通じて羽根車13に再流入する漏れ流れMが生じる。
シロッコファン31は、羽根車13の正面側Fの端部に設けられた環状の気流抵抗部材27を有している。この気流抵抗部材27は、連通部25のほぼ全体を覆うように羽根車13の正面側Fの端部に固定されている。したがって、漏れ流れMの大半は、気流抵抗部材27を通過して羽根車13の羽根11同士の隙間に再流入する。気流抵抗部材27を羽根車13の正面側Fの端部に固定する方法は、特に限定されず、例えば接着剤を用いて接合してもよく、融着により接合してもよく、固定するための図略の別部材を用いて固定してもよい。
気流抵抗部材27は、略均一な複数の孔が略全体にわたって形成された網目構造を有している。このような気流抵抗部材27を作製する方法は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼などの金属、合成樹脂などからなる複数の細線を網状に編んで接合する方法などが挙げられる。
気流抵抗部材27の目の細かさは、好ましくは10メッシュ以上、より好ましくは30メッシュ以上、さらに好ましくは30メッシュ〜70メッシュ程度であるのがよい。気流抵抗部材27の目の細かさは、30メッシュ以上であるときには、送風音を低減する特に顕著な効果が得られる。なお、メッシュは、1インチあたりの目の数を表している。
また、気流抵抗部材27の厚みは、送風音の低減効果を高めるためには、小さくするのが好ましい。気流抵抗部材27の厚みは、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.25mm以下であるのがよい。したがって、気流抵抗部材27を構成する前記細線としては、気流抵抗部材27の厚みが前記範囲となるような線径の小さなものを選定するのが好ましい。
気流抵抗部材27が設けられた第1実施形態のシロッコファン31と、従来のシロッコファンとの風量と比騒音との関係を比較すると、例えば図10のグラフに示すように騒音における特性に大きな差が生じることがわかる。この比較試験では、気流抵抗部材27として、縦方向の目の細かさが60メッシュ、横方向の目の細かさが40メッシュの網を用いた。この気流抵抗部材27の厚みは約0.098mmであった。また、比較例としての従来のシロッコファンは、気流抵抗部材27が設けられていない他は、図2と同様の構造を有したものを用いた。図10のグラフに示すように、気流抵抗部材27を備えた本実施形態のシロッコファン31は、従来のシロッコファンに比べて優れた騒音低減効果を有していることがわかる。
この気流抵抗部材27の存在により、漏れ流れMに対する気流抵抗が増大して漏れ流れMの量が低減されるだけでなく、漏れ流れB自体が細かく均等に細流化されて整流され、均一な流速で乱れなく流れるようになるので、流れが安定する。その結果、ファン効率が向上するとともに、漏れ流れMがスムーズに羽根11同士の隙間に再流入する。これにより、従来のような漏れ流れMと、ベルマウス19に沿ってケーシング内に流入する主流との干渉も抑制される。したがって、従来のシロッコファンに比べて、送風性能が向上するとともに、送風音が低減される。
図4は、第1実施形態に係るシロッコファンの変形例を示す断面図である。この変形例では、ベルマウス19における羽根車13側の端部19aは、前記半径方向において、連通部25における前記半径方向の内側の端部25bと外側の端部25aとの間に位置している。
より具体的に説明すると、次のようになる。回転軸Aからベルマウス19の端部19aにおける前記半径方向の内側の端部までの距離R2、及び回転軸Aからベルマウス19の端部19aにおける前記半径方向の外側の端部までの距離R3は、回転軸Aから羽根11における前記半径方向の内側の端部(羽根11の後縁)までの距離R1よりも大きい。また、前記距離R2及び前記距離R3は、回転軸Aから羽根11における前記半径方向の外側の端部(羽根11の前縁)までの距離R4よりも小さい。
したがって、この変形例では、連通部25には、漏れ流れMだけでなく、ベルマウス19によって案内されてケーシング23内に流入する空気(主流S)の一部も流れ込む。そして、この主流Sの一部と漏れ流れMが気流抵抗部材27を通過する。したがって、漏れ流れMと主流Sの一部は、共に気流抵抗部材27を通過して整流された後に羽根11同士の隙間に流入して合流する。
<第2実施形態>
図5及び図6(A)に示すように、第2実施形態のシロッコファン31は、円筒状の気流抵抗部材27を備えている。この気流抵抗部材27は、第1実施形態の気流抵抗部材27と同様の網目構造を有している。また、気流抵抗部材27は、図6(B)に示すように、円筒状の骨格をなすように縦横に組まれた枠体271と、この枠体271に沿って枠体271に固定された円筒状のネット部272とにより構成されていてもよい。
図5に示すように、この気流抵抗部材27は、その正面側Fの一端部がケーシング23の正面板231の内面231aに固定されている。気流抵抗部材27は、ベルマウス19を周方向の全周にわたってベルマウス19の背面側Rの端部19aを囲むように配設されている。
気流抵抗部材27の背面側Rの端部27aは、連通部25における前記半径方向の外側の端部25aに近接する位置にある。したがって、漏れ流れMの大半は、気流抵抗部材27を通過して連通部25から羽根11同士の隙間に再流入する。この気流抵抗部材27の背面側Rの端部27aは、連通部25における前記半径方向の外側の端部25aに対して、回転軸Aの軸方向に対向する位置にある。
ここで、「近接する位置」とは、機械設計における各部品の公差、誤差、羽根車13の回転時の振れなどを考慮して、羽根車13の回転時において気流抵抗部材27の背面側Rの端部27aが羽根車13に接触しない位置で、かつ、ケーシング23の正面板231の内面231aと羽根車13の連通部25における半径方向外側の端部25aとの間の隙間の大半を気流抵抗部材27がカバーできる位置をいう。
この第2実施形態のケーシング23では、側面板235の内面と羽根車13における半径方向の外側の端部との間隔は、舌部237から回転方向D(周方向)に沿って次第に大きくなる。したがって、このシロッコファン31では、羽根11同士の隙間に再流入する漏れ流れMの流入量が回転方向Dの位置に応じて異なる偏流が生じることがある。この偏流の傾向に対応するように、気流抵抗部材27の抵抗(気流が通過する際の抵抗)の大きさを、回転方向Dの位置に応じて設定することもできる。
具体的には、例えばケーシング23の舌部237から回転方向Dに向かうにつれて、漏れ流れの偏流(流れの不均一性)が大きくなる場合には、例えば、気流抵抗部材27の抵抗を、舌部237に対応する位置から回転方向Dに向かうにつれて、次第に大きくするという構成が例示できる。気流抵抗部材27の抵抗を部位毎に変えるには、例えば気流抵抗部材27の網目の細かさを部位毎に変える、気流抵抗部材27の厚みを部位毎に変えるなどの手段が例示できる。
図7(A)は、第2実施形態に係るシロッコファンの変形例1を示す断面図である。この変形例1の気流抵抗部材27は、上記と同様に円筒形状を有している。この気流抵抗部材27は、背面側Rの端部27aの外径が羽根車13の外径よりも大きい。そしてこの背面側Rの端部27aは、羽根車13の各羽根11の正面側Fの端部(連通部25の端部25a)よりも背面側Rに位置している。
このように気流抵抗部材27は、連通部25を前記半径方向の外側から囲むように配設されているので、ケーシング23の正面板231の内面231aと羽根車13の連通部25における半径方向外側の端部25aとの間の隙間のほぼ全体をカバーできる。すなわち、図7に示す形態では、図5に示す形態に比べて前記隙間のより多くをカバーできる。これにより、気流抵抗部材27を通過せずに連通部25に流れ込む漏れ流れMの量をより小さくすることができるので、騒音低減効果をより高めることができる。
図7(B)は、第2実施形態に係るシロッコファンの変形例2を示す断面図である。この変形例2の気流抵抗部材27は、正面側Fから背面側Rに向かうにつれて外径が大きくなる略円錐台形状を有している。このように変形例2の気流抵抗部材27は、略円錐台形状であるので、側面が回転軸Aの軸方向に対して傾斜している。したがって、図7(A)に示すような外径がほぼ一定の気流抵抗部材27と比べて、変形例2の気流抵抗部材20は、前記軸方向の長さが同じであっても気流抵抗部材27の面積(側面の面積)を大きくすることができる。これにより、変形例2では、漏れ流れの量を低減させる効果、及び漏れ流れを整流する効果をより向上させることができる。
図8(A)は、第2実施形態に係るシロッコファンの変形例3を示す断面図である。図8(B)は、第2実施形態に係るシロッコファンの他の変形例4を示す断面図である。
変形例3の気流抵抗部材20は断面が波形であり、変形例4の気流抵抗部材20は断面が湾曲形状であるので、図7(A)に示すような外径がほぼ一定の気流抵抗部材20と比べて、変形例3,4の気流抵抗部材27は、前記軸方向の長さが同じであっても気流抵抗部材27の面積(側面の面積)を大きくすることができる。これにより、変形例3,4では、漏れ流れの量を低減させる効果、及び漏れ流れを整流する効果をより向上させることができる。
図9(A)は、前記気流抵抗部材の他の例を示す斜視図である。図9(B)は、前記気流抵抗部材のさらに他の例を示す斜視図である。図9(A)に示す気流抵抗部材27は、合成樹脂製又は金属製の複数の細い線条体Xと複数の細い線条体Yとを編製した網目構造の円筒状のメッシュ部材である。このメッシュ部材は、例えば図6(B)に示す枠体271によって補強される。図9(B)に示すように、気流抵抗部材27は、例えば合成樹脂を成形して得られる格子構造を有している。この気流抵抗部材27は、複数の縦格子273と複数の横格子274からなり、前記複数の隙間は、これらの格子273,274により形成されている。
<実施形態の概要>
上記実施形態をまとめると、以下の通りである。
前記シロッコファンでは、羽根車13から前記半径方向の外側に流出した空気が連通部25を通じて羽根11同士の隙間に再流入する漏れ流れMの経路上に、気流抵抗部材27が配設されているので、漏れ流れに起因する騒音を低減することができる。また、気流抵抗部材27を備えていることにより、漏れ流れMの流入量が低減され、その分だけ損失が小さくなり、漏れ流れに起因する静圧の低下が抑制される。
また、ベルマウス19に案内されて羽根車13に流入する空気(主流)は、羽根11同士の隙間において漏れ流れとの間で干渉し合うが、漏れ流れMの流入量が低減され、漏れ流れMが整流されることにより、前記干渉に起因する主流の乱れが低減されるので、ファンの空力特性の向上が期待できる。
前記シロッコファン31において、気流抵抗部材27が配設される位置は、漏れ流れMの経路上であればよいが、具体例を挙げると以下の通りである。
例えば前記第1実施形態のシロッコファン31のように、気流抵抗部材27は、連通部25を覆うように羽根車13に固定されていてもよい。
この構成では、気流抵抗部材27は、連通部25を覆うように羽根車13に固定されているので、漏れ流れMは、気流抵抗部材27により整流された直後に連通部25を通じて羽根11同士の隙間に再流入する。したがって、気流抵抗部材27が連通部25から離れた位置に設けられている場合と比較して、より安定した状態の漏れ流れを羽根11同士の隙間に再流入させることができる。
また、気流抵抗部材27が連通部25を覆うように羽根車13に固定されている場合、前記第1実施形態の変形例のように、ベルマウス19における羽根車13側の端部は、前記半径方向において、連通部25における前記半径方向の内側の端部と連通部25における前記半径方向の外側の端部の間に位置していてもよい。
この構成では、ベルマウス19における羽根車13側の端部は、前記半径方向において、連通部25における前記半径方向の内側の端部と連通部25における前記半径方向の外側の端部の間に位置している。したがって、この構成では、連通部25には、漏れ流れだけでなく、ベルマウス19に案内されてくる空気(主流)の一部も流れ込む。
このような形態において、仮に、連通部25に気流抵抗部材27が設けられていない場合、連通部25に流れ込む漏れ流れと前記主流の一部は共に整流されていないので、互いの干渉に起因する騒音が大きくなるおそれがある。
一方、この構成では、漏れ流れと前記主流の一部は、共に気流抵抗部材27を通過して整流された後に羽根車13に流入して合流するので、前記干渉に起因する騒音を低減することができる。
また、前記第2実施形態のシロッコファン31のように、ケーシング23は、ベルマウス19が配設されるとともに、回転軸Aに直交する方向に広がる正面部29を有し、気流抵抗部材27は、筒状に形成されるとともに、その一端部が正面部29の内面に固定されて、ベルマウス19を囲むように配設されていてもよい。
また、気流抵抗部材27が筒状である場合、気流抵抗部材27の他端部は、連通部25における前記半径方向の外側の端部に近接する位置にあるのが好ましい。
この構成では、気流抵抗部材27が漏れ流れの経路の大半をカバーすることができるので、気流抵抗部材27を通過せずに連通部25に流れ込む漏れ流れの量をより小さくすることができる。よって、漏れ流れに起因する騒音低減効果をより高めることができる。
また、気流抵抗部材27が筒状である場合、前記第2実施形態の変形例1,2のように、気流抵抗部材27の他端部の外径は、羽根車13の外径よりも大きいことが好ましい。
この構成では、羽根車13の回転時の回転ぶれや、羽根車13の組立時における多少の位置ずれ(芯ずれ)などが生じた場合であっても、気流抵抗部材27が羽根車13に接触するのを抑制できる。
さらに、前記第2実施形態のシロッコファン31では、気流抵抗部材27は、連通部25を前記半径方向の外側から囲むように配設されているのが好ましい。
気流抵抗部材27の他端部が連通部25と軸方向に対向する位置にある場合には、互いの接触を避けるために、気流抵抗部材27の他端部と羽根車13との間に、軸方向に空いた隙間を多少なりとも設ける必要があるので、その隙間を通じて漏れ流れの一部がすり抜けて羽根11同士の隙間に再流入することになる。
一方、この構成では、気流抵抗部材27は、連通部25を前記半径方向の外側から囲むように配設されているので、軸方向においては漏れ流れの経路を気流抵抗部材27によってほぼ覆うことができる。これにより、気流抵抗部材27を通過せずに連通部25に流れ込む漏れ流れの量をより小さくすることができるので、騒音低減効果をより高めることができる。
また、気流抵抗部材27が筒状である場合、前記第2実施形態の変形例2のように、気流抵抗部材27は、前記一端部から他端部に向かうにつれて外径が大きくなる略円錐台形状を有していてもよい。
この構成では、略円錐台形状を有する気流抵抗部材27は、羽根車13との接触が抑制される効果に加え、さらに、外径がほぼ一定の気流抵抗部材27と比べて、漏れ流れの量を低減させる効果、及び漏れ流れを細流化して気流の乱れを抑制する効果をより高めることができる。すなわち、外径がほぼ一定の気流抵抗部材27と比べて略円錐台形状を有する気流抵抗部材27は、前記軸方向の長さが同じであっても側面の面積を大きくすることができる。これにより、外径がほぼ一定の気流抵抗部材27と比べて漏れ流れが通過する面積を増加させることができるので、漏れ流れの抵抗を増加させて漏れ流れの量を低減する効果を高めることができるとともに、漏れ流れを細流化して気流の乱れを抑制する効果も高めることができる。
また、気流抵抗部材27が筒状である場合、前記第2実施形態の変形例3のように、気流抵抗部材27は、断面が波形状であってもよい。
この構成では、断面が波形状の気流抵抗部材27は、外径がほぼ一定の気流抵抗部材27と比べて、前記軸方向の長さが同じであっても側面の面積を大きくすることができる。これにより、略円錐台形状の気流抵抗部材27の場合と同様の前記効果を得ることができる。
また、前記第2実施形態のシロッコファン31では、羽根11同士の隙間に再流入する前記漏れ流れの流入量が前記周方向の位置に応じて異なる偏流の傾向に対応するように、気流が通過する際の前記気流抵抗部材27の抵抗の大きさが、前記周方向の位置に応じて設定されていてもよい。
この構成では、前記偏流の傾向に対応するように、気流が通過する際の気流抵抗部材27の抵抗の大きさを、前記周方向の位置に応じて設定することにより、前記周方向における前記流入量の差異を小さくしている。これにより、周方向においても、漏れ流れの流入量をある程度均一化することができるので、騒音低減効果をより高めることができる。
気流抵抗部材27の具体例としては、例えば網目構造や格子構造などの形態が挙げられる。前記網目構造の場合には、30メッシュ〜70メッシュの網目を有しているのが好ましい。これにより、騒音低減効果をより高めることができる。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、前記各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。