JP5593611B2 - 珪素系液晶配向剤、液晶配向膜並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
中でも、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)で駆動する垂直配向型液晶表示素子は、応答速度が速く、超広視野角、高コントラストという特徴を有しており、更なる高品質化を求めたMVA(Multi−domain Vertical Alignment)やASV(Advanced Super View)、PVA(Patterned Vertical Alignment)といった新しい垂直配向型の液晶表示素子が提案されてきている。
これらの液晶表示素子に設けられている液晶配向膜は、液晶を配向させると共に、液晶表示素子の電気特性などの各種特性に大きな影響を与えることが知られている。そのため、このような新しい垂直配向型表示素子に対しても、それに好適な液晶配向膜の開発がなされてきた。
また、良好な垂直配向性と共に、高い電圧保持率や低い残留DCという電気特性を素子に付与する目的で、ポリアミック酸やポリイミドに特定の環状置換基を導入する方法が提案されている。(例えば、特許文献3参照。)
最近では、ビジネス用途及びホームシアター用の液晶プロジェクタ用の光源として、照射強度の強いメタルハライドランプが用いられており、熱だけではなく光に対する耐性の高い液晶配向膜材料が必要とされてきている。その解決策の一つとして、これまでのポリアミック酸やポリイミド系液晶配向膜とは異なる物質を液晶配向膜に適用することが提案されている。
このように、液晶表示素子が高機能化する一方で、素子の信頼性向上がこれまで以上に大きな課題となってきている。
液晶表示素子の信頼性は、モニターやテレビなどの表示特性に対する信頼性だけではなく、製造工程における歩留まり向上に直接影響するため、非常に重要となっている。
即ち、本発明は、以下の要旨を有するものである。
1.下記のポリシロキサン(A)と、ポリシロキサン(B)と、これらのポリシロキサンを溶解する有機溶媒と、を含有することを特徴とする液晶配向剤。
ポリシロキサン(A):式(1)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを重縮合して得られるポリシロキサン、
ポリシロキサン(B):式(2)で表されるテトラアルコキシシランを含有するアルコキシシランを、上記ポリシロキサン(A)の単量体である式(1)で表されるアルコキシシランを共重縮合することなく重縮合して得られるポリシロキサン。
ポリシロキサン(A)の溶液:式(1)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを有機溶媒中で重縮合して得られるポリシロキサンの溶液、
ポリシロキサン(B)の溶液:式(2)で表されるテトラアルコキシシランを含有するアルコキシシランを、上記ポリシロキサン(A)の単量体である式(1)で表されるアルコキシシランを共重縮合することなく重縮合して得られるポリシロキサンの溶液。
6.ポリシロキサン(A)が、式(1)で表されるアルコキシシランを2〜30モル%の割合で含有するアルコキシシランを重縮合して得られるポリシロキサンである、上記1乃至5に記載の液晶配向剤。
7.ポリシロキサン(A)の珪素原子の量が、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)の珪素原子の合計量に対して、3〜80モル%である、上記1乃至6に記載の液晶配向剤。
9.上記8に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
10.下記のポリシロキサン(A)の溶液とポリシロキサン(B)の溶液とを混合する工程を含むことを特徴とする液晶配向剤の製造方法。
ポリシロキサン(A)の溶液:式(1)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを有機溶媒中で重縮合して得られるポリシロキサンの溶液、
12.ポリシロキサン(B)の溶液が、式(2)で表されるテトラアルコキシシランを含有するアルコキシシランを重縮合して得られるポリシロキサンである、上記10又は11に記載の液晶配向剤の製造方法。
本発明により何故に上記の如き効果が達成されるかについては必ずしも明らかではない。しかし、本発明の液晶配向剤による液晶配向膜の場合、図1から明らかなように、表層付近に炭素濃度の高い層が存在し、ポリシロキサン(A)が液晶配向膜の表面層付近に偏在した構造を有する。この構造が上記本発明の液晶配向膜の特性に関係しているものと思われる。
<ポリシロキサン(A)>
本発明に用いるポリシロキサン(A)は、式(1)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを重縮合して得られる。
このような有機基R1の具体例を挙げると、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルケニル基、アリロキシアルキル基、フェネチル基、パーフルオロフェニルアルキル基、フェニルアミノアルキル基、スチリルアルキル基、ナフチル基、ベンゾイルオキシアルキル基、アルコキシフェノキシアルキル基、シクロアルキルアミノアルキル基、エポキシシクロアルキル基、N―(アミノアルキル)アミノアルキル基、N―(アミノアルキル)アミノアルキルフェネチル基、ブロモアルキル基、ジフェニルホスフィノ基、N−(メタクリロキシヒドロキシアルキル)アミノアルキル基、N−(アクリロキシヒドロキシアルキル)アミノアルキル基などが挙げられる。
なかでも、有機基R1としては、炭素数8〜30のアルキル基が好ましく、炭素数8〜20のアルキル基がより好ましい。
本発明においては、式(1)で表されるアルコキシシランのうちの少なくとも1種を用いればよいが、必要に応じて複数種を用いてもよい。
本発明に用いるポリシロキサン(A)は、なかでも、式(1)で表されるアルコキシシランと下式(3)で表されるアルコキシシランとを重縮合させたものが好ましい。
そして、式(3)のR5は水素原子又は炭素数1〜5の有機基である。この有機基は、炭素数が1〜5であれば特に限定されない。そして、この有機基は酸素原子、窒素原子及び硫黄原子などのヘテロ原子を含有してもよいし、不飽和結合や環構造を有していてもよい。更には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基などの飽和炭化水素基、ビニル基のような不飽和炭化水素基、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基、ウレイド基、イソシアネート基などで置換されていてもよい。
式(3)のnは0〜3の整数を表す。特にnが0の場合は、テトラアルコキシシランを表す。
本発明においては、これら式(3)で表されるアルコキシシランの中で、nが0であるテトラアルコキシシランを用いることが、式(1)で表されるアルコキシシランと重縮合し易いので、ポリシロキサン(A)を得るために好ましい。
本発明においては、上記したポリシロキサン(A)を1種又は複数種用いることもできる。
本発明において、上記したポリシロキサン(A)の溶液は、式(1)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを有機溶媒中で重縮合させた、均一に溶解した溶液が好ましい。中でも、ポリシロキサン(A)の溶液は、式(1)で表されるアルコキシシランと式(3)で表されるアルコキシシランとを併用して重縮合し、有機溶媒に均一に溶解した溶液が好ましい。
本発明においては、上記反応に用いる水の量は、所望により適宜選択することができるが、通常、アルコキシシラン中の全アルコキシ基の0.5〜2.5倍モルであるのが好ましい。
加えて、アルコキシシランが溶解した溶液を加熱することで、更に、加水分解・重縮合反応を促進させることも一般的である。その際、加熱温度及び加熱時間は所望により適宜選択でき、例えば、50℃で24時間加熱・撹拌したり、還流下で1時間加熱・撹拌するなどの方法が挙げられる。
このような方法により得られるポリシロキサン(A)の溶液は、原料として仕込んだ全アルコキシシランの珪素原子をSiO2に換算した濃度(以下、SiO2換算濃度と称す。)を20質量%以下とすることが一般的である。この濃度範囲において任意の濃度を選択することにより、ゲルの生成を抑え、均質な溶液を得ることができる。
その際、用いる溶媒は、重縮合に用いたと同じ溶媒でもよいし、別の溶媒でもよい。この溶媒は、ポリシロキサン(A)が均一に溶解している限りにおいて特に限定されず、一種でも複数種でも任意に選択して用いることができる。
本発明で用いられるポリシロキサン(B)は、式(2)で表されるテトラアルコキシシランを含有するアルコキシシランを、上記ポリシロキサン(A)の単量体である式(1)で表されるアルコキシシランを共重縮合することなく重縮合して得られるポリシロキサンである。
上記の式(2)で表されるテトラアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられ、市販品として容易に入手可能である。
本発明において、ポリシロキサン(B)は、式(2)で表されるテトラアルコキシシランと、下記式(4)で表されるアルコキシシランの内の少なくとも1種を併用することもできる。
式(4)のR6は、R3と同様に、炭素数1〜5の炭化水素基であるが、炭素数の少ない方が、反応性が高いので、炭素数1〜5の飽和炭化水素基が好ましい。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基である。
また、市販品のポリシロキサンであるコルコート社製メチルシリケート51、エチルシリケート40なども併用することができる。
本発明に用いるポリシロキサン(B)は、式(2)を含有するテトラアルコキシシランを重縮合して得られるが、溶媒中で均質な溶液状態であればよい。
本発明においては、上記したポリシロキサン(B)を1種又は複数種用いることもできる。
本発明において、上記したポリシロキサン(B)の溶液は、式(2)で表されるテトラアルコキシシランを含有するアルコキシシランを、上記ポリシロキサン(A)の単量体である式(1)で表されるアルコキシシランを共重縮合することなく有機溶媒中で重縮合させた、均一に溶解した溶液が好ましい。その際、式(2)で表されるテトラアルコキシシラン単独、或いは式(2)と式(4)で表されるアルコキシシランとを重縮合させた、均一に溶解した溶液が好ましい。ポリシロキサン(B)の溶液は、有機溶媒に均一に溶解した溶液として得られる。
本発明においては、上記反応に用いる水の量は、所望により適宜選択することができるが、通常、アルコキシシラン中の全アルコキシ基の0.5〜2.5倍モルである。
また、通常、加水分解・重縮合反応を促進する目的で、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、蟻酸、蓚酸、マレイン酸などの酸、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、トリエチルアミンなどのアルカリ、塩酸、硫酸、硝酸などの金属塩などの触媒が用いられる。
加えて、アルコキシシランが溶解した溶液を加熱することで、更に、加水分解・重縮合反応を促進させることも一般的である。その際、加熱温度及び加熱時間は所望により適宜選択でき、例えば、50℃で24時間加熱・撹拌したり、還流下で1時間加熱・撹拌するなどの方法が挙げられる。
本発明においては、上記の有機溶媒を複数種混合して用いてもよい。
その際、用いる溶媒は、重縮合に用いたと同じ溶媒でもよいし、別の溶媒でもよい。この溶媒は、ポリシロキサン(B)が均一に溶解している限りにおいて特に限定されず、一種でも複数種でも任意に選択して用いることができる。
本発明においては、上記のようにして得られるポリシロキサン(B)の溶液を、1種用いてもよいし、複数種を用いてもよい。
本発明においては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、ポリシロキサン(A)及びポリシロキサン(B)以外のその他の成分、例えば、無機微粒子、レベリング剤、更に界面活性剤などの成分が含まれていてもよい。
無機微粒子の分散媒としては、水、有機溶剤を挙げることができる。コロイド溶液としては、被膜形成用塗布液の安定性の観点から、pH又はpKaが2〜10に調整されていることが好ましい。より好ましくは3〜7である。
本発明の液晶配向剤を調製する方法は特に限定されない。ポリシロキサン(A)及びポリシロキサン(B)、さらに必要に応じてその他の成分が均一に混合した状態であればよい。通常、ポリシロキサン(A)及びポリシロキサン(B)は、溶媒中で重縮合されるので、それぞれ溶液の状態で得られるため、既に上記で述べたポリシロキサン(A)の溶液及びポリシロキサン(B)の溶液を混合する方法が簡便である。また、必要に応じて、ポリシロキサン(A)の溶液及びポリシロキサン(B)の溶液を混合した後に、溶媒を加えることもできる。
その際、液晶配向剤中のSiO2換算濃度が、0.5〜15質量%が好ましい。このようなSiO2換算濃度範囲であれば、一回の塗布で所望の膜厚を得易く、充分な溶液のポットライフが得られ易い。
また、上記した、その他の成分を混合する方法は、ポリシロキサン(A)の溶液及びポリシロキサン(B)の溶液と同時でも、それらの混合後であってもよく、特に限定されない。
[1]:ポリシロキサン(A)及びポリシロキサン(B)を含有する液晶配向剤。
[2]:ポリシロキサン(A)の溶液及びポリシロキサン(B)の溶液を含有する液晶配向剤。
[3]:ポリシロキサン(A)が、式(1)及び式(3)で表されるアルコキシシランを重縮合して得られるポリシロキサンである、上記[1]又は[2]に記載の液晶配向剤。
[4]:ポリシロキサン(B)が、式(2)で表されるアルコキシシラン又は、式(2)及び式(4)で表されるアルコキシシランを重縮合させて得られるポリシロキサンである、上記[1]から[3]のいずれかに記載の液晶配向剤。
[5]:上記[1]から[4]のいずれかに記載の液晶配向剤と無機微粒子とを含有する液晶配向剤。
[6]:上記[1]から[5]のいずれかに記載の液晶配向剤と、レベリング剤及び界面活性剤から選ばれる少なくとも一種を含有する液晶配向剤。
本発明の液晶配向剤は、基板に塗布した後、乾燥・焼成を行うことで液晶配向膜とすることができる。
液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法、スプレー法、ロールコート法などが挙げられるが、生産性の面から工業的には転写印刷法が広く用いられており、本発明の液晶配向剤でも好適に用いられる。
上記の方法で液晶配向剤を塗布して形成される塗膜は、焼成して液晶配向膜とすることができる。その際、焼成温度は、100〜350℃の任意の温度で行うことができるが、好ましくは150〜300℃であり、より好ましくは150〜220℃、特に好ましくは150〜200℃である。
液晶配向膜の厚みは必要に応じて選択することができる。液晶配向膜の厚みが5nm以上の場合、液晶表示素子の信頼性が得られやすいので好ましい。より好ましくは10nm以上である。また、300nm以下の場合は、液晶表示素子の消費電力が大きくならないので好ましい。より好ましくは150nm以下である。
上記の如き方法で形成された本発明の液晶配向膜は、ポリシロキサン(A)が液晶配向膜の表面層付近に偏在した構造である。このことは、本発明の液晶配向膜をX線光電子分光法の如き方法で、膜の表面から基板方向における、元素の分布を分析することで確認することができる。
このような分析により、液晶を一方向に、とりわけ垂直方向に配向させることに効果を有するポリシロキサン(A)が、液晶配向膜の表面層付近に偏在し易いという作用を奏していると考えられる。
そのため、本発明の液晶配向膜は、良好な液晶配向性を有し、そして、本発明の液晶配向膜を有する液晶表示素子は、高温下での低周波数による素子駆動において電圧保持率が高いという特性を有する。
本発明の液晶表示素子は、上記した方法により、基板に液晶配向膜を形成した後、公知の方法で液晶セルを作成して得ることができる。液晶セル作成の一例を挙げると、液晶配向膜が形成された1対の基板を、スペーサーを挟んで、シール剤で固定し、液晶を注入して封止する方法が一般的である。その際、用いるスペーサーの大きさは1〜30μmであるが、好ましくは2〜10μmである。
液晶を注入する方法は特に制限されず、作製した液晶セル内を減圧にした後、液晶を注入する真空法や、液晶を滴下した後に封止を行う滴下法などが例示できる。
具体例を挙げると、ガラス板、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、トリメチルペンテン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、(メタ)アクリロニトリル、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロースなどのプラスチック板などに透明電極が形成された基板を挙げることができる。
また、薄膜トランジスタ(TFT)型の素子のような高機能素子においては、液晶駆動のための電極と基板の間にトランジスタの如き素子が形成されたものが用いられる。
これまで述べたように、本発明の液晶配向剤を用いて得られる液晶配向膜は、液晶配向性が良好で、且つ、高温下での低周波数による素子駆動において電圧保持率が高いという特性を有する液晶表示素子を提供することが可能である。
本実施例における略語の説明は、以下のとおりである。
TEOS:テトラエトキシシラン
C10:デシルトリメトキシシラン
C12:ドデシルトリエトキシシラン
C18:オクタデシルトリエトキシシラン
HG:ヘキシレングリコール
BCS:ブチルセロソルブ
NMP:N−メチルピロリドン
還流管を備えつけた500ml4つ口反応フラスコにHG51.3g、BCS15.6g及びTEOS69.4g投入し、撹拌して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、あらかじめHG25.6g、BCS7.8g、水30.0g及び触媒として蓚酸0.3gを混合した蓚酸溶液を、室温下で滴下し、滴下終了後30分攪拌した。その後、溶液温度70℃で1時間加熱してから放冷して、溶液(Z1)を得た。この溶液(Z1)に、HG、BCS及びNMPを加えて、溶媒の質量比がHG:BCS:NMP=30:50:20であり、且つ、SiO2換算濃度が3.5質量%となるように調整し、ポリシロキサンの溶液(P1)を得た。
還流管を備えつけた500ml4つ口反応フラスコにHG47.8g、BCS14.5g、TEOS55.6g及びアルコキシシランモノマー(X)として、C12を22.2g投入し、撹拌して、アルコキシシランモノマーの混合溶液を調製した。この溶液に、あらかじめHG23.9g、BCS7.3g、水28.5g及び触媒として蓚酸0.3gを混合した蓚酸溶液を、室温下で滴下し、滴下終了後30分攪拌した。その後、溶液温度70℃で1時間加熱してから放冷して、溶液(Z2)を得た。この溶液(Z2)に、HG、BCS及びNMPを加えて、溶媒の質量比がHG:BCS:NMP=30:50:20であり、且つ、SiO2換算濃度が3.5質量%となるように調整し、ポリシロキサンの溶液(P2)を得た。
表1に示す組成で、合成例2と同様な方法により溶液(Z3〜Z10)を得た。その後、この溶液に、HG、BCS及びNMPを加えて、溶媒の質量比がHG:BCS:NMP=30:50:20であり、且つ、SiO2換算濃度が3.5質量%となるように調整し、ポリシロキサンの溶液(P3〜P10)を得た。
エタノール661.75g、TEOS208gを混合し、40℃で水126g、アンモニア水(濃度28質量%)4.25gを加え、40℃で4日間攪拌して、粒子含有溶液を作製した。作製したシリカ粒子含有溶液500gにHGを435g加え、300gに濃縮することでシリカ粒子含有溶液(Y1)を調製した。粒子径の測定は動的光散乱法により行った。この粒子径の測定方法は、ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(Journal of Chemical Physics)57巻11号(1972年12月)4814頁に説明されており、本発明では、大塚電子株式会社製DLS−7000を用いて測定した。その結果、シリカ粒子含有溶液(Y1)の粒子径は20nmであった。
この溶液(Y1)に、HG、BCS及びNMPを加えて、溶媒の質量比がHG:BCS:NMP=30:50:20、且つ、SiO2換算濃度が3.5質量%となるように調整し、シリカ粒子含有の溶液(Q1)を得た。
表2に示す組成で、ポリシロキサンの溶液(P2、P5及びP8)とポリシロキサンの溶液(P1)を室温下で混合して液晶配向剤(L1〜L8)を得た。
更に、ポリシロキサンの溶液(P2)、ポリシロキサンの溶液(P1)及びシリカ粒子含有溶液(Q1)を室温下で混合して液晶配向剤(L9)を得た。この液晶配向剤(L1〜L9)を用いて液晶セル(素子)を作成し、液晶配向性及び電圧保持率を測定した。結果は表3に示す。
なお、液晶セル(素子)の作成方法、液晶配向性及び電圧保持率の測定方法は、下記に示す。
表2に示すように、上記した液晶配向剤(L1〜L8)の代わりに、P1〜P4、P6、P7、P9及びP10(M1〜M8)をそのまま用いて、実施例と同様に液晶セルを作製し、液晶配向性及び電圧保持率を測定した。
結果は表3に示す。
孔径0.5μmのメンブランフィルターで加圧濾過した液晶配向剤を用いて、透明電極付きガラス基板にスピンコート法により成膜した。この基板を80℃のホットプレート上で5分間乾燥した後、180℃の熱風循環式オーブンで60分焼成し、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
前記のようにして得られた液晶配向膜付き基板を2枚用意し、片方の基板の液晶配向膜面に6μmのスペーサーを散布した後、液晶配向膜が向き合うように張り合わせて、空のセルを作成した。この空セルに液晶を注入して液晶セルを得た。
その際、液晶は、メルク社製MLC―6608(商品名)及びメルク社製MLC―7021−100(商品名)の2種類を用いた。
液晶として、メルク社製MLC―7021−100を用いて、[液晶セルの作成]と同様の方法で得られた液晶セルを偏光顕微鏡で観察し、液晶の配向状態を目視で確認した。
欠陥のない均一な垂直配向をしている場合には○、配向欠陥が見られる場合及び垂直配向しない場合は×とした。
上記した[液晶セルの作成]と同様の方法で、液晶としてメルク社製MLC―6608を用いて得られた液晶セルを、東陽テクニカ社製VHR−1を使用し、4V電圧を印加してから1667ms後の電圧保持率(Voltage Holding Ratio:VHR)を80℃恒温槽中にて測定した。
液晶配向剤L5及びP2を、孔径0.5μmのメンブランフィルターで加圧濾過した後、シリコン基板[(100)面]にスピンコートし、80℃のホットプレートにのせて5分間乾燥した。その後、180℃の熱風循環式オーブンで60分焼成して、膜厚100nmの塗膜を得た。この塗膜について、島津製作所社製ESCA−3200を用い、膜の表面から基板方向における、元素の分布を分析した。その結果を図1及び図2に示す。
この分析結果から、P2を用いて得られた塗膜は、膜内の炭素濃度が均一であるのに対して、本発明の液晶配向剤(L5)から得られる液晶配向膜は、表層付近に炭素濃度の高い層が存在していることが確認された。
従って、本発明の液晶配向膜は、各種液晶表示素子、とりわけ、垂直配向型(VA)において好適に用いることができる。その他偏光フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム用配向膜においても用いることができる。
なお、2006年3月7日に出願された日本特許出願2006−060807号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
Claims (12)
- 下記のポリシロキサン(A)と、ポリシロキサン(B)と、これらのポリシロキサンを溶解する有機溶媒と、を含有することを特徴とする液晶配向剤。
ポリシロキサン(A):式(1)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを重縮合して得られるポリシロキサン、
ポリシロキサン(B):式(2)で表されるテトラアルコキシシランを含有するアルコキシシランを、上記ポリシロキサン(A)の単量体である式(1)で表されるアルコキシシランを共重縮合することなく重縮合して得られるポリシロキサン。
- 下記のポリシロキサン(A)の溶液及びポリシロキサン(B)の溶液を含有することを特徴とする液晶配向剤。
ポリシロキサン(A)の溶液:式(1)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを有機溶媒中で重縮合して得られるポリシロキサンの溶液、
ポリシロキサン(B)の溶液:式(2)で表されるテトラアルコキシシランを含有するアルコキシシランを、上記ポリシロキサン(A)の単量体である式(1)で表されるアルコキシシランを共重縮合することなく有機溶媒中で重縮合して得られるポリシロキサンの溶液。
- ポリシロキサン(A)が、式(1)で表されるアルコキシシラン、及びテトラエトキシシランを重縮合して得られるポリシロキサンであり、ポリシロキサン(B)がテトラエトキシシランから得られるポリシロキサンである、請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
- ポリシロキサン(A)が、式(1)で表されるアルコキシシランを2〜30モル%の割合で含有するアルコキシシランを重縮合して得られるポリシロキサンである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
- ポリシロキサン(A)の珪素原子の量が、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)の珪素原子の合計量に対して、3〜80モル%である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
- 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて得られる液晶配向膜。
- 請求項8に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
- 下記のポリシロキサン(A)の溶液とポリシロキサン(B)の溶液とを混合する工程を含むことを特徴とする液晶配向剤の製造方法。
ポリシロキサン(A)の溶液:式(1)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを有機溶媒中で重縮合して得られるポリシロキサンの溶液、
ポリシロキサン(B)の溶液:式(2)で表されるテトラアルコキシシランを含有するアルコキシシランを、上記ポリシロキサン(A)の単量体である式(1)で表されるアルコキシシランを共重縮合することなく有機溶媒中で重縮合して得られるポリシロキサンの溶液。
- ポリシロキサン(A)の溶液が、式(1)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサンである、請求項10に記載の液晶配向剤の製造方法。
- ポリシロキサン(B)の溶液が、式(2)で表されるテトラアルコキシシランを含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサンである、請求項10又は11に記載の液晶配向剤の製造方法。
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