本発明の第1実施形態を説明する。図1に示すように、フイルム製造設備10には、流延室11と、渡り部12と、ピンテンタ13と、クリップテンタ14と、耳切装置15a,15bと、乾燥装置16と、冷却装置17と、巻取装置18とが備えられている。
流延室11には、ドープ製造設備20からのドープが送り込まれるフィードブロック22と、支持体としての流延ドラム23と、ドープを流延ドラム23に流延する流延ダイ24と、流延ドラム23上の流延膜25を湿潤フイルム25aとして剥ぎ取る剥取ローラ26と、流延膜25から蒸発した溶剤ガスを凝縮液化する凝縮器27(コンデンサ)と、液化した溶剤を回収する回収装置28とが備えられている。また、流延ドラム23には伝熱媒体供給装置(図示省略)が接続されており、この伝熱媒体供給装置の内部に伝熱媒体を供給することで、流延ドラム23の表面温度を所望の温度に調整している。また、流延室11には、その内部温度を調整するための温調装置30が取り付けられている。
フィードブロック22の内部にはドープの流路が形成されている。この流路の配置を調整することにより、所望の構造の流延膜25を形成することができる。流延ダイ24には減圧チャンバ32が取り付けられており、この減圧チャンバ32は、流延ダイ24の吐出口から流延ドラム23に到達するまでのドープの流れ(以下「ビード」とする)の後方を減圧し、流延ドラム23に対するドープの接触を安定させる。減圧チャンバ32にはジャケット(図示省略)が取り付けられている。
流延ドラム23は連続回転が可能なステンレス製のドラムから構成される。また、流延ドラム23の表面には研磨加工等が施されている。これにより、流延ドラム23上には平面性に優れる流延膜25が形成される。なお、支持体として流延ドラムを使用するが、支持体の形態は特に限定されるものではない。例えば、1対のローラに巻き掛けられ、無端で走行する流延バンドを支持体として用いてもよい。また、支持体の寸法は、ドープの流延幅に対して1.1〜2.0倍程度の幅を有するものが好ましい。また、支持体の材質は耐腐食性や高強度を有するもの、例えばステンレスであることが好ましい。
流延ダイ24の形状、材質、大きさ等は特に限定されるものではないが、コートハンガー型のものを用いるとドープの流延幅を略均一に保持することができるので好ましい。また、ドープの流延幅に対して1.1〜2.0倍程度の吐出口を有するものが好ましい。材質は耐久性、耐熱性等の観点から、析出硬化型のステンレス鋼を用いることが好ましく、ジクロロメタン、メタノール、水の混合溶液に3ヶ月浸漬させても気液界面に孔開きを生じることがないような耐腐食性を有するものが好ましい。また、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と同等の耐腐食性を有するものも好適に用いることができる。なお、耐熱性の観点からは、熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下のものを用いることが好ましい。
また、流延ダイ24の吐出口の先端には、耐摩耗性向上等を目的として硬化膜が形成されていることが好ましい。硬化膜の形成方法は特に限定されるものではないが、例えば、セラミックスコーティング、ハードクロムめっき、窒化処理等が挙げられる。硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、その硬化膜は、研削加工が可能であること、気孔率が高いこと、更には、脆弱性及び耐腐食性に優れること、流延ダイに対する密着度は高いが、ドープに対する密着度が低いこと等の条件を満たしていることが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC)、Al2O3、TiN、Cr2O3等が挙げられるが、その中でも、WCを用いることが好ましい。なお、WCのコーティングは公知の溶射法により行うことができる。
また、平面性に優れる流延膜25を形成するために、流延ダイ24におけるドープの接触面は、研磨される等して平滑化されていることが好ましい。また、流延ダイ24のエッジ部に吸引装置(図示省略)を取り付けて、エッジ吸引風量を1〜100L/分としながら吸引することが好ましい。これにより、ビードの表面に凹凸を形成する原因となる風の流れを低減することができる。
渡り部12には多数のローラ35が設置されており、これらローラ35は、流延ドラム23により剥ぎ取られた湿潤フイルム25aをピンテンタ13まで案内する。また、湿潤フイルム25aの搬送路の上方には送風器40が設けられており、この送風器40は湿潤フイルム25aに対して乾燥風を吹き付けて、湿潤フイルム25aの乾燥を促進している。
ピンテンタ13は、図2に示すように、レール39により支持され無端で循環走行する無端チェーン40と、無端チェーン40に取り付けられたピンプレート42と、ピンプレート42の上に多数取り付けられたピン43とを備えている。渡り部12を経た湿潤フイルム25aがピンテンタ13に入ると、ピン43が湿潤フイルム25aの両側端部に差し込まれ、湿潤フイルム25aは無端チェーン40及びピンプレート42の動きに従って湿潤フイルム25aの長手方向(図1及び3「X方向」)に搬送される。また、レール39にはシフト機構44が接続されており、このシフト機構44はレール39を湿潤フイルム25aの幅方向(図2及び3「Y方向」)に移動させる。これにより、湿潤フイルム25aの乾燥に応じて、湿潤フイルム25aの幅が調節される。
また、図2及び3に示すように、ピンテンタ13には、湿潤フイルム25aの搬送路の下方に乾燥ダクト48が設けられている。乾燥ダクト48は、ダクト本体50と、乾燥風供給部52と、排気管53と、排気量制御部54とを備えている。ダクト本体50の下面55には、乾燥風供給部52から供給される乾燥風56を取り込む取込孔55aが形成されている。またダクト本体50の上面57には、乾燥風56を吹き出す吹出孔57aが所定の間隔で複数形成される。なお、ピンテンタ13内にある湿潤フイルム25aの揮発分、即ち残量溶媒分は130質量%以上であることが好ましい。
排気管53は、ダクト本体50の幅方向の中央部に、その上面57から下面55にわたって設けられており、X方向に沿って所定の間隔で複数設けられている。この排気管53は排気孔53a,53bを備えている。排気孔53aは、ダクト本体50の上面57において、湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部に対向する位置に設けられている。この排気孔53aは、湿潤フイルム25aの下方に流れている乾燥風56のうち湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部に対応する部分に流れている乾燥風56aを、排気管53の内部に排気する。排気孔53bはダクト本体50の下面55に形成されており、この排気孔53bは、乾燥風56aを外部に排気する。排気量制御部54は、排気孔53bから排気される乾燥風56aの排気量を制御する。ここで、図3では、図が複雑になるのを避けるために、排気管53、排気孔53a、乾燥風56,56a、吹出孔57aの一部にのみ符号を付した。
以上のように、湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部に対向する位置に設けられた排気孔53aを介して、乾燥風56aを排気することにより、湿潤フイルム25aの下方の静圧のうち、圧力が高くなっていた湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部に対応する部分の静圧(以下「中央部静圧」という)を低くすることができる。中央部静圧を低くし、その中央部静圧をそれ以外の部分の静圧と略同等とすることで、湿潤フイルム25aの下方の静圧分布は湿潤フイルム25aの単位面積当たり重量の−200%以上+200%以下に抑えられる。ここで、静圧分布を示す値として湿潤フイルム25aの単位面積当たり重量を用いたのは、浮上搬送時に必要な浮上静圧をフイルム重量とすることが理想的であるからである。
湿潤フイルム25aの下方の静圧分布を上記範囲内に抑えることで、湿潤フイルム25aの下方の静圧分布をほぼ均一化することができるため、ピンテンタ12内にある湿潤フイルム25aが凸状に膨らむことはない。したがって、製造後のフイルムの品質を確保することができる。
なお、排気孔53aの形状は、図3に示す矩形状に限る必要はない。例えば、排気孔53aの形状を楕円状としてもよい。また、吹出孔57aと同様に、排気孔を丸孔等から構成し、その丸孔等を湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部に対向する位置に所定の間隔で設けてもよい。また、ダクト本体50の上面57と下面55との形状を同じにしたが、これに限る必要はない。例えば、上面57の面積を下面55の面積よりも大きくなるようにしてもよい。この場合には、排気管53の形状を、排気孔53aの面積が排気孔53bの面積よりも大きくなるようにする。また、排気孔53aの開口面積を調整する面積調整機構を設け、その面積調整機構を適宜制御することによって、中央部静圧を低くし、湿潤フイルム25aの下方の静圧分布をほぼ均一化してもよい。
図1に示すように、クリップテンタ14はピンテンタ13の下流に設けられ、湿潤フイルム25aの両側端部(以下「耳部」とする)を把持して搬送するとともに、乾燥を行う。これにより、フイルム37が得られる。耳切装置15aはピンテンタ13とクリップテンタ14との間に設けられ、ピンテンタ13を出た湿潤フイルム25aの耳部を切断する。また、耳切装置15bはクリップテンタ14と乾燥装置16との間に設けられ、クリップテンタ14を出たフイルム37の耳部を切断する。また、耳切装置15a,15bにはクラッシャ65が接続されており、このクラッシャ65は耳部を粉砕してチップにする。耳部が切断されたフイルム37は乾燥装置16に送られる。乾燥装置16の内部には多数のローラ67が備えられており、フイルム37はローラ67により搬送されながら乾燥される。乾燥装置16を出たフイルム37は冷却装置17に送られ、この冷却装置17内で略室温まで冷却される。
上述した渡り部12、ピンテンタ13、クリップテンタ14、及び乾燥装置16は、それらの外側に設けられた吸着回収装置69と接続している。この吸着回収装置69は、渡り部12、ピンテンタ13、クリップテンタ14、及び乾燥装置16内で発生する溶剤ガスを吸着回収する。吸着回収された溶剤は、ドープの原料として再利用される。
巻取装置18は巻取ローラ70を備え、冷却装置17を出たフイルム37は巻取ローラ70によりロール状に巻き取られる。また、巻取装置18はプレスローラ71を備え、このプレスローラ71は巻取ローラ70に巻き取られるフイルム37の張力を制御する。
以上の工程を経て、平面性に優れるフイルム37が高速かつ安定して製造される。この製造後のフイルム37の幅は1400mm以上2500mm以下であることが好ましい。なお、フイルムの幅が2500mmを超える場合であっても、本発明の効果を得ることができる。また、製造後のフイルム37の厚みは、20μm以上100μm以下であることが好ましく、20μm以上80μm以下であることがより好ましく、30μm以上80μm以下であることが最も好ましい。
本発明の第2実施形態を説明する。以下の説明において、ピンテンタ内の乾燥ダクト以外の装置等については第1実施形態のものと同様であるので、それら装置等の符号は図1〜図3に示した符合と同一とし、その説明を省略する。図4及び5に示すように、ピンテンタ13には、湿潤フイルム25aの搬送路の下方に乾燥ダクト75が設けられている。乾燥ダクト75は、ダクト本体76と、このダクト本体76に乾燥風77を供給する乾燥風供給部78とを備えている。また、ダクト本体76の上面80には、湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部に対向する位置に、X方向に沿って凹部82が形成されている。凹部82には、乾燥風77を吹き出す吹出孔82aが所定の間隔で複数形成される。また、ダクト本体76の上面80のうち凹部82以外の部分には、乾燥風77を吹き出す吹出孔80aが所定の間隔で複数形成される。また、ダクト本体76の下面83には、乾燥風供給部78からの乾燥風77を取り込む取込孔83aが形成されている。
ダクト本体76の上面80にX方向に沿って凹部82を形成し、その凹部に吹出孔82aを設けることで、湿潤フイルム25aと吹出孔82aとの間の距離が、湿潤フイルム25aと吹出孔80aとの間の距離よりも大きくなる。したがって、湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部に対応する部分の空間が大きくなり、湿潤フイルム25aの下方の静圧のうち中央部静圧が低くなる。中央部静圧が低くなることで、中央部静圧とそれ以外の部分の静圧とが略同等となり、湿潤フイルム25aの下方の静圧分布は湿潤フイルム25aの単位面積当たり重量の−200%以上+200%以下に抑えられる。これにより、湿潤フイルム25aの下方の静圧分布をほぼ均一化することができるため、ピンテンタ13内にある湿潤フイルム25aが凸状に膨らむことはない。したがって、製造後のフイルムの品質を確保することができる。なお、図5では、図が複雑になるのを避けるために、乾燥風77、吹出孔80a,82aの一部にのみ符号を付した。
なお、凹部82の断面の形状は、図4及び5に示すV字形状に限らず、略半円形状、略矩形状などその他の形状であってもよい。また、湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部に対向する位置に凹部を形成せずに、その代わりにその位置にある吹出孔の配置や形状等を適宜変更することによって、中央部静圧を低くしてもよい。例えば、湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部に対向する位置に設ける吹出孔の数を、それ以外の部分に設ける吹出孔の数よりも少なくしてもよい。また、湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部に対向する位置に設ける吹出孔の開口面積を、それ以外の部分に設ける吹出孔の開口面積よりも小さくしてもよい。また、凹部の深さを調整する深さ調整機構を設け、この深さ調整機構を適宜制御することによって、湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部に対応する部分の空間の容積を変化させてもよい。中央部静圧を低くし、湿潤フイルム25aの下方の静圧分布をほぼ均一化してもよい。
さらに、第2実施形態では、ダクト本体76の上面80に凹部を設けたが、この代わりに、凸部を設けてもよい。
本発明の第3実施形態を説明する。以下の説明において、ピンテンタ内の乾燥ダクト以外の装置等については第1実施形態のものと同様であるので、それら装置等の符号は図1〜図3に示した符号と同一とし、説明も省略する。図6及び7に示すように、ピンテンタ13には、湿潤フイルム25aの搬送路の下方に乾燥ダクト90が設けられている。乾燥ダクト90は、ダクト本体91と、第1及び第2乾燥風供給部92,93とを備えている。ダクト本体91は、第1送風部94と、第2送風部95とから構成されている。
第1送風部94は、第1乾燥風供給部92からの乾燥風96を取り込む取込孔97と、乾燥風96を吹き出す吹出孔98とを備えている。吹出孔98は、湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部に対向する位置に、所定の間隔で複数設けられている。また、第2送風部95は、第2乾燥風供給部93からの乾燥風100を取り込む取込孔101と、乾燥風100を吹き出す吹出孔102とを備えている。吹出孔102は、湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部以外の部分に対向する位置に、所定の間隔で複数設けられている。第1乾燥風供給部92は風量制御部92aを備えており、この風量制御部92aは、乾燥風96の風量が乾燥風100の風量よりも小さくなるように、第1乾燥風供給部92を制御する。
なお、風量制御部を第2乾燥風供給部に設けて、乾燥風100の風量を、乾燥風96の風量よりも大きくなるように、制御してもよい。また、第1及び第2乾燥風供給部の両方に風量制御部を設けて、乾燥風96の風量を、乾燥風100の風量よりも小さくなるように、制御してもよい。また、吹出孔102及び吹出孔98の形状に差を持たせて、乾燥風供給部1つで制御してもよい。
湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部に吹き付ける乾燥風96の風量を乾燥風100の風量よりも小さくすることで、湿潤フイルム25aの下方の静圧のうち中央部静圧が低くなる。中央部静圧を低くすることにより、その中央部静圧とそれ以外の部分の静圧とが略同等となり、湿潤フイルム25aの下方の静圧分布は湿潤フイルム25aの単位面積当たり重量の−200%以上+200%以下に抑えられる。これにより、湿潤フイルム25aの下方の静圧分布をほぼ均一化することができるため、ピンテンタ13内にある湿潤フイルム25aが凸状に膨らむことはない。したがって、製造後の湿潤フイルム25aの品質を確保することができる。なお、図7では、図が複雑になるのを避けるために、乾燥風96,100、吹出孔98,102の一部にのみ符号を付した。
本発明の第4実施形態を図8及び図9を用いて説明する。以下の説明において、ピンテンタ内の乾燥ダクト以外の装置等については第1実施形態のものと同様であるので、それら装置等の符号は図1〜図3に示した符号と同一とし、その説明を省略する。ピンテンタ13には、湿潤フイルムの下方に乾燥ダクト110が設けられている。乾燥ダクト110は、ダクト本体111を備えている。乾燥風供給部113は、ダクト本体111に乾燥風112を供給する。また、ダクト本体111の上面にはY方向に沿って突起部115が複数形成されており、各突起部115はX方向に所定の間隔で離間して設けられている。また、各突起部115の間には、湿潤フイルム25aと対向する方向(Z方向)に移動自在な可動板116が設けられている。可動板116は、シフト部118により移動する。また、突起部115の上面には、乾燥風112を吹き出す吹出孔115aが所定の間隔で形成されている。可動板116には乾燥風112が排気される排気穴116aが所定の間隔で形成されている。また、本実施形態では可動板116に排気穴116aを設けているが、排気穴は設置しなくてもよい場合もある。なお、各突起部115の間の部位は、凹部117の一態様であり、可動板116の上面は、凹部117の底面の一態様である。シフト部118は、移動手段の一態様である。吹出孔115aは、吹き出し開口の一態様である。
突起部115及び可動板116により乾燥ダクト110の上面を凹凸状とし、シフト部118により可動板116をZ方向に移動させることで、湿潤フイルム25aの浮上静圧を調整することができる。この浮上静圧の調整により、中央部静圧を低くし、中央部静圧とそれ以外の部分の静圧とが略同等とすることができる。これにより、湿潤フイルム25aの下方の静圧分布が湿潤フイルム25aの単位面積当たり重量の−200%以上+200%以下に抑えられる。このように、湿潤フイルム25aの下方の静圧分布をほぼ均一化することで、ピンテンタ13内にある湿潤フイルム25aが膨らむことはない。したがって、製造後のフイルムの品質を確保することができる。なお、図8では、図が複雑になるのを避けるために、乾燥風112、突起部115、可動板116、凹部117、及び吹出孔115a,排気穴116aの一部のみに符号を付した。
なお、上記第1〜第4実施形態では、湿潤フイルム25aの搬送路の下方に乾燥ダクトを設置したが、これに代えて又は加えて、乾燥ダクトを上方に設置し、湿潤フイルム25aの上方から乾燥風を吹き付けてもよい。
なお、上記実施形態では、ピンテンタに本発明を適用したが、これに限る必要はなく、クリップテンタに本発明を適用してもよい。さらには、フイルムを搬送する装置に限らず、連続的に製造されるウェブ等を搬送するウェブ搬送装置にも本発明が可能である。
また、上記実施形態では、1種類のドープを用いて単層のフイルムを製造する場合について説明したが、本発明は複層構造の流延膜を形成する場合にも効果を発揮する。この場合には、所望の数のドープを同時或いは逐次に流延する等の公知の方法を用いればよく、特に限定されない。また、流延ダイ、減圧室、支持体等の構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶剤回収方法、フイルム回収方法まで、特開2005−104148号公報の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されており、これらの記載に係る発明も本発明に適用することができる。また、完成したフイルムの性能や、カールの度合い、厚み、及びこれらの測定法は、特開2005−104148号公報の[1073]段落から[1087]段落に記載されており、これらの記載に係る発明も本発明に適用することができる。
完成したフイルムの少なくとも一方の面に表面処理を施すと、偏光板等の光学部材との接着度を高めることができるので好ましい。表面処理としては、例えば、真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理等が挙げられ、これらの中から少なくとも1つの処理を行うことが好ましい。
完成したフイルムをベースとし、その両面あるいは一方の面に所望の機能層を設けると、各種機能性フイルムとして用いることができる。機能層としては、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層等が挙げられる。例えば、反射防止層を設けると、光の反射を防止して高画質を提供することができる反射防止フイルムが得られる。上記の機能層や形成方法等に関しては、特開2005−104148号公報の[0890]段落から[1072]段落に詳細に記載されており、これらの記載に係る発明も本発明に適用することができる。また、ポリマーフイルムの具体的用途に関しては、例えば、特開2005−104148号公報の[1088]段落から[1265]段落に記載される、TN型、STN型、VA型、OCB型、反射型等の液晶表示装置への利用等が挙げられる。
次に、ドープ製造設備20で製造されるドープの原料を以下に示す。
ドープの原料としてセルロースエステルを用いると、透明度の高いフイルムを得ることができるので好ましい。セルロースエステルとしては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアシレートブチレート等のセルロースの低級脂肪酸エステルが挙げられる。中でも、透明度の高さから、セルロースアシレートを用いることが好ましく、トリアセチルセルロース(TAC)を用いることが好ましい。なお、上記実施形態で用いるドープは、ポリマーとしてトリアセチルセルロース(TAC)を含むものとする。このようにTACを用いる場合には、TACの90質量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。
上記のセルロースアシレートとしては、より透明度の高いフイルムを得るためにも、セルロースの水酸基へのアシル基への置換度が下記式(a)〜(c)の全てを満足するものが好ましい。下記式中のA、Bは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表しており、具体的には、Aはアセチル基の置換度であり、Bは炭素数が3〜22のアシル基の置換度である。
(a) 2.5≦A+B≦3.0
(b) 0≦A≦3.0
(c) 0≦B≦2.9
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部を炭素数が2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位、及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合を意味する。なお、100%のエステル化の場合を置換度1とする。
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合である。
セルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、2種類以上のアシル基が用いられていても良い。なお、2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。更に、DSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、33%以上であることが特に好ましい。更に、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは、0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましい。このようなセルロースアシレートを用いると、非常に溶解性に優れたドープを調製することができる。なお、上記のようなセルロースアシレートを用いる場合には、非塩素系溶剤を用いると、非常に優れた溶解性を有し、低粘度であり、かつ濾過性に優れるドープを調製することができる。
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター綿、パルプ綿のどちらから得られたものでも良い。
セルロースアシレートの炭素数が2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステル等が挙げられる。更に、それぞれが置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等が挙げられる。中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等がより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
なお、本発明で用いることができるセルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号公報の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
ドープ原料となる溶剤は、用いられるポリマーを溶解することができる有機化合物を用いることが好ましい。ただし、本発明においてドープとは、ポリマーを溶剤に溶解又は分散させることで得られる混合物を意味するため、ポリマーとの溶解性が低いような溶剤も用いることができる。好適に用いることができる溶剤としては、例えば、ベンゼンやトルエン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタンやクロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、メタノールやエタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコール等のアルコール、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン、酢酸メチルや酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル、テトラヒドロフランやメチルセロソルブ等のエーテル等が挙げられる。これらの溶剤の中から2種類以上の溶剤を選択し、混合した混合溶剤を用いても良い。中でもジクロロメタンを用いると溶解度に優れるドープを得ることが出来ると共に、短時間のうちに流延膜中の溶剤を揮発させてフイルムとすることができるので好ましい。
上記のハロゲン化炭化水素としては、炭素原子数1〜7のものが好ましく用いられる。更に、ポリマーとの相溶性や、支持体から剥ぎ取る流延膜の剥ぎ取る易さの指標である剥ぎ取り性、フイルムの機械強度、光学特性等の観点から、ジクロロメタンに炭素数が1〜5のアルコールを1種ないしは、数種類混合させたものを用いることが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対して2〜25重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等が挙げられ、中でも、メタノール、エタノール、n−ブタノール、或いはこれらの混合物を用いることが好ましい。
最近、環境に対する影響を最小限に抑えるため、ジクロロメタンを用いない溶剤組成も提案されている。この目的に対しては、炭素数が4〜12のエーテル、炭素数が3〜12のケトン、炭素数が3〜12のエステルが好ましく、これらを適宜混合して用いることが好ましい。これらの化合物は環状構造を有していても良いし、エーテル、ケトン及びエステルの官能基、すなわち、−O−、−CO−、及び−COO−のいずれかを2つ以上有する化合物も溶剤として用いることができる。その他にも、溶剤は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していても良い。なお、2種類以上の官能基を有する場合には、その炭素数がいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であれば良く、特に限定はされない。
ドープには、目的に応じて可塑剤、紫外線吸収剤(UV剤)、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の公知である各種添加剤を添加させても良い。例えば、可塑剤としては、トリフェニルフィスフェート、ビフェニルジフェニルフォスフェート等のリン酸エステル系可塑剤や、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤、及びポリエステルポリウレタンエラストマー等の公知の各種可塑剤を用いることができる。
また、ドープには、フイルム同士の接着を防止したり、屈折率を調整したりする目的で微粒子を添加させることが好ましい。この微粒子としては、二酸化ケイ素誘導体を用いることが好ましい。本発明における二酸化ケイ素誘導体とは、二酸化ケイ素や、三次元の網状構造を有するシリコーン樹脂も含まれる。このような二酸化ケイ素誘導体は、その表面がアルキル化処理されたものを用いることが好ましい。アルキル化処理のような疎水化処理が施されている微粒子は、溶剤に対する分散性に優れるため、微粒子同士が凝集することなくドープを調製し、更には、フイルムを製造することができるので、面状欠陥が少なく、透明度の高いフイルムを製造することが可能となる。
上記の様に、表面にアルキル化処理された微粒子としては、例えば、表面にオクチル基が導入された二酸化ケイ素誘導体として市販されているアエロジルR805(日本アエロジル(株)製)等を用いることができる。なお、微粒子を添加させる効果を確保しつつ、透明度の高いフイルムを得るためにも、ドープの固形分に対する微粒子の含有量は0.2%以下となるようにすることが好ましい。更に、微粒子が光の通過を阻害させないように、その平均粒径は1.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0μmであり、特に好ましくは、0.4〜0.8μmである。
先に説明した通り、本発明では、透明度の高いポリマーフイルムを得るためにもポリマーとしてTACを利用してドープを調製することが好ましい。この場合、溶剤や添加剤等を混合した後のドープの全量に対して、TACを含有する割合が5〜40重量%であることが好ましい。より好ましくは、TACを含有する割合が15〜30重量%であり、特に好ましくは17〜25重量%である。また、添加剤(主に可塑剤)を含有させる割合は、ドープ中に含まれるポリマーやその他添加剤等を含めた固形分全体に対して、1〜20重量%とすることが好ましい。
なお、溶剤、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤、光学異方性コントロール剤、レタデーション制御剤、染料、剥離剤等の各種添加剤及び微粒子については、特開2005−104148号公報の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。また、TACを利用したドープの製造方法であり、例えば、素材、原料、添加剤の溶解方法及び添加方法、濾過方法、脱泡等についても同様に、特開2005−104148号公報の[0517]段落から[0616]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
図1に示すフイルム製造設備10においてフイルム37を製造した。適量のドープをドープ製造設備20からフィードブロック22を介して流延ダイ24に送り、この流延ダイ24から連続回転する流延ドラム23上にドープを流延し、流延膜25を形成した。ドープの吐出量は乾燥後のフイルム37の厚みが80μmとなるように調整した。流延ダイ24の吐出口を、幅が1.8mのスリットとした。流延時のドープの温度を36℃とした。フィードブロック22の内部温度は36℃とした。減圧チャンバ32の圧力を600Paとしてビードの後方を減圧した。
流延ドラム23は、回転数の制御が可能なステンレス製ドラムを用いた。伝熱媒体供給装置から冷媒を流延ドラム23の内部に供給することにより、流延ドラム23の表面温度を−10℃とした。温調装置30を用いて流延室11の内部温度を常時35℃とした。
流延膜25を冷却ゲル化させ、自己支持性を有するようになったときに、剥取ローラ26により流延膜25を湿潤フイルム25aとして剥ぎ取った。この剥ぎ取った湿潤フイルム25aを渡り部12に送り、渡り部12に設けられた複数のローラ35で支持しながら搬送する間に、送風器40から40℃に調整した乾燥風を供給して湿潤フイルム25aを乾燥した。
図2に示すように、ピンテンタ13に送られた湿潤フイルム25aの両側端部にピン43を差し込み、湿潤フイルム25aをX方向に搬送した。また、搬送中には、シフト機構44を用いて、湿潤フイルム25aをY方向に延伸した。また、図2及び3に示すように、フイルム37の搬送路の下方に乾燥ダクト48を設けた。乾燥風供給部52から乾燥風56がダクト本体50に供給された。ダクト本体50の吹出孔57aから乾燥風56を湿潤フイルム25aに吹き付けた。排気管53の排気孔53aは、湿潤フイルム25aの下方に流れている乾燥風56のうち、湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部に対応する部分に流れている乾燥風56aを、排気管53の内部に排気した。排気孔53aの形状を略矩形形状とした。この乾燥風56aを、排気孔53bから外部に排気した。乾燥風56aの排気量を、排気量制御部54により制御した。
図1に示すように、ピンテンタ13を経た湿潤フイルム25aはクリップテンタ14に送られる。クリップテンタ14において、フイルム37の両側端部を把持しながら搬送し、その搬送中にフイルム37の乾燥を行った。これにより、フイルム37が得られた。耳切装置15a,15bを用いて、湿潤フイルム25a又はフイルム37の両側端部を切断した。切断した湿潤フイルム25a又はフイルム37の両側端部を、カッターブロア(図示省略)を介して、クラッシャ65に送り、平均80mm2程度のチップに粉砕した。
耳切装置15bと乾燥装置16との間に予備乾燥室(図示省略)を設けて100℃の乾燥風を供給することによりフイルム37を予備加熱した後、乾燥装置16に送った。乾燥装置16では、フイルム37を複数のローラ67に巻き掛けながら搬送し、その搬送中に乾燥を行った。乾燥装置16の内部温度は、フイルム37の膜面温度が140℃となるように調整された。乾燥装置16におけるフイルム37の乾燥時間を10分とした。フイルム37の膜面温度は、フイルム37の搬送路の真上かつ表面近傍に設けた温度計(図示省略)を用いて測定した。活性炭からなる吸着剤と乾燥窒素からなる脱着剤とを有する吸着回収装置69を用いて渡り部12、ピンテンタ13、クリップテンタ14、及び乾燥装置16内で発生した溶剤ガスを回収した後、水分量が0.3重量%以下になるまで溶剤ガスの水分を除去した。
乾燥装置16と冷却装置17との間に調湿室(図示省略)を設けて、フイルム37に対して、温度50℃、露点20℃のエアを供給した後、直接的に90℃、湿度70%のエアを吹き付けて調湿し、フイルム37に発生しているカールを矯正した。次に、フイルム37を冷却装置17に送り、30℃以下になるまでフイルム37を徐々に冷却させた。
フイルム37を巻取装置18に送り、プレスローラ71によりフイルム37に対して50N/mの押し圧を付与しながらφ169mmの巻取ローラ70で巻き取った。巻取り時には、フイルム37の巻き始めの張力を300N/mとし、巻き終わりの張力を200N/mとした。以上により、ロール状のフイルム37を得た。
完成したフイルム37は膜厚が80μmであった。なお、全製膜工程を通じて、流延膜やフイルムの平均乾燥速度を20重量%/分とした。
本実施例で用いたドープの原料を下記に示す。
セルローストリアセテート 100重量部
ジクロロメタン 320重量部
メタノール 83重量部
1−ブタノール 3重量部
可塑剤A 7.6重量部
可塑剤B 3.8重量部
UV剤a 0.7重量部
UV剤b 0.3重量部
クエン酸エステル混合物 0.006重量部
微粒子 0.05重量部
上記のセルローストリアセテートは、置換度2.84、粘度平均重合度306、含水率0.2重量%、ジクロロメタン溶液中の6重量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mm、標準偏差0.5mmの粉体であり、可塑剤Aは、トリフェニルフォスフェートであり、可塑剤Bは、ジフェニルフォスフェートであり、UV剤aは、2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールであり、UV剤bは、2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾールであり、クエン酸エステル化合物はクエン酸とモノエチルエステルとジエチルエステルとトリエチルエステルとの混合物であり、微粒子は平均粒径が15nm、モース硬度が約7の二酸化ケイ素である。また、ドープの調製時には、レタデーション制御剤(N−N−ジ−m−トルイル−N−P−メトキシフェニル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン)をフイルムとしたときの全重量に対して4.0重量%となるように添加した。
ピンテンタ内の乾燥ダクト以外の装置等については実施例1と同様にし、また、それら装置等に係る製造条件も実施例1と同様とした。図4及び5に示すように、湿潤フイルム25aの搬送路の下方に乾燥ダクト75を設けた。乾燥風供給部78から乾燥風77をダクト本体76に供給した。ダクト本体76の上面80には、湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部に対向する位置に凹部82を形成した。凹部82に設けられた吹出孔82aと凹部82以外の部分に設けられた吹出孔80aとから、乾燥風77を湿潤フイルム25aに対して吹き付けた。
ピンテンタ内の乾燥ダクト以外の装置等については実施例1と同様にし、また、それら装置等に係る製造条件も実施例1と同様とした。図6及び7に示すように、湿潤フイルム25aの搬送路の下方に乾燥ダクト90を設けた。乾燥ダクト90のダクト本体91を、第1送風部94と第2送風部95とから構成した。第1乾燥風供給部92から乾燥風96を第1送風部94に供給した。第2乾燥風供給部93から乾燥風100を第2送風部95に供給した。第1送風部94には、湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部に対向する位置に吹出孔98を設けた。第2送風部95には、湿潤フイルム25aの幅方向の略中央部以外の部分に対向する位置に吹出孔102を設けた。吹出孔98から乾燥風96を、吹出孔102から乾燥風100を湿潤フイルム25aに吹き付けた。その際、第1乾燥風供給部92の風量制御部92aにより、乾燥風96の風量を乾燥風100の風量よりも小さくした。
ピンテンタ内の乾燥ダクト以外の装置等については実施例1と同様にし、また、それら装置等に係る製造条件も実施例1と同様とした。図8及び9に示すように、湿潤フイルム25aの搬送路の下方に乾燥ダクト110を設けた。乾燥風供給部113から乾燥風112をダクト本体111に供給した。ダクト本体111の上面80に、Y方向に沿って形成され、それぞれをX方向に所定の間隔で離間させた突起部115と、各突起部115の間に設けられ、Z方向に移動自在とされた可動板116を設けた。突起部115に吹出孔115aを、可動板116に排気穴116aを形成した。吹出孔115aから乾燥風112を湿潤フイルム25aに対して吹き付け、排気穴116aに乾燥風112を排気した。その際、シフト部118により、中央部静圧が低くなるように、可動板116をZ方向に移動させた。
[実施例1]から[実施例4]のいずれの場合においても、湿潤フイルム25aの下方の静圧分布は湿潤フイルム25aの単位面積当たり重量の−200%以上+200%以下に抑えられた。これにより、湿潤フイルム25aの下方の静圧分布が均一化し、ピンテンタ13内にある湿潤フイルム25aは、その中央部が凸状に膨らむことなく搬送された。したがって、製造後のフイルムの品質を確保することができた。