本発明のポリウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネートとポリオールを含有している。
ポリイソシアネートは、芳香環含有ポリイソシアネートを含み、そのような芳香環含有ポリイソシアネートとしては、1,4−フェニレン基(但し、1,4−フェニレン基における一部の水素原子が、メチル基および/またはメトキシ基で置換されていてもよい。)、および/または、1,5−ナフチレン基を含有している。
1,4−フェニレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの重合物(カルボジイミド変性MDI、ウレトンイミン変性MDI、アシル尿素変性MDIなど)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート(TODI)、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、1,4−キシリレンジイソシアネート(1,4−XDI)などのベンゼン環含有ポリイソシアネート(具体的には、ベンゼン環含有ジイソシアネート)などが挙げられる。
また、1,5−ナフチレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートとしては、例えば、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)などのナフタレン環含有ポリイソシアネート(具体的には、ナフタレン環含有ジイソシアネート)などが挙げられる。
1,4−フェニレン基および/または1,5−ナフチレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートのうち、好ましくは、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)が挙げられる。
ポリイソシアネートは、単独使用または2種以上併用することができる。
また、ポリイソシアネートは、上記した芳香環含有ポリイソシアネートを必須成分とし、その他のポリイソシアネートを任意成分として含有することもできる。
その他のポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート(上記した芳香環含有ポリイソシアネートを除く)、芳香脂肪族ポリイソシアネート、(上記した芳香環含有ポリイソシアネートを除く)、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,2’−MDI、2,6−TDI、m−フェニレンジイソシアネート、2,6−NDIなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−キシリレンジイソシアネート(1,3−XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート、H6XDI)、2,5−または2,6−ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンもしくはその混合物(NBDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−または1,3−シクロヘキサンジイソシアネートもしくはその混合物、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート(TMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,2−、2,3−または1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネートのうち、1,4−フェニレン基および/または1,5−ナフチレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートの配合割合は、ポリイソシアネートの総量に対して、例えば、30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、とりわけ好ましくは、90質量%以上である。
ポリイソシアネートの芳香環濃度は、ポリウレタン樹脂組成物に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、13質量%以上であり、通常、例えば、30質量%以下、好ましくは、26質量%以下である。
ポリイソシアネートの芳香環濃度が上記した下限以上であれば、優れた光弾性を得ることができる。
ポリイソシアネートの芳香環濃度が上記した上限以下であれば、優れた光弾性を得ることができる。
ポリイソシアネートの芳香環濃度は、ポリイソシアネートに由来する芳香環の、ポリウレタン樹脂組成物における質量割合であって、後述するシアノ化合物に由来する芳香環を含まない。
また、芳香環濃度は、ポリイソシアネートが1,4−フェニレン基を含有する場合には、そのポリイソシアネートの分子量を78(g/モル)とし、また、ポリイソシアネートが1,5−ナフチレン基を含有する場合には、そのポリイソシアネートの分子量を128(g/モル)として算出される。
ポリオールは、高分子量ポリオールを含有している。
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有し、平均水酸基価(後述)が80〜500mgKOH/gの化合物であり、かつ、平均官能基数(後述)が2の場合には、数平均分子量が225以上の化合物であり、あるいは、平均官能基数が3の場合には、数平均分子量337以上の化合物である。
そのような高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ダイマーポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリオキシアルキレンポリエステルブロック共重合体ポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、天然油ポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオールなどが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリプロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなどのポリオキシアルキレンポリオールなどが挙げられる。
ポリプロピレンポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールを開始剤とする、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの付加重合物(2種以上のアルキレンオキサイドのランダムおよび/またはブロック共重合体を含む)が挙げられる。
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有し、平均水酸基価(後述)が500mgKOH/gを超過する化合物であり、かつ、官能基数(後述)が2の場合には、分子量が40以上225未満のジオールであり、あるいは、官能基数が3の場合には、分子量40以上337未満のトリオールである。
そのような低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、1,4−ブチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、1,3−ブチレングリコール(1,3−ブタンジオール)、1,2−ブチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、アルカン(炭素数7〜13)ジオールや、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオールなどアルケン(炭素数4〜13)ジオールなどの脂肪族ジオール(炭素数2〜13)や、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール(炭素数6〜13)、さらには、例えば、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、キシレングリコールなどの芳香族ジオール(芳香環を含有する炭素数6〜13の芳香環含有ジオール)、さらにまた、ジエチレングリコール、トリオキシエチレングリコール、テトラオキシエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリオキシプロピレングリコールなどのオキシアルキレンアルコールなどのジオール(炭素数2〜9)(2価アルコール)、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールなどの炭素数3〜6の脂肪族トリオール、および、その他の脂肪族トリオール(炭素数7〜20)などのトリオール(3価アルコール)、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリン(ジグリセロール)などのテトラオール(4価アルコール)(炭素数5〜27)、例えば、キシリトールなどのペンタオール(5価アルコール)(炭素数5〜33)、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどのヘキサオール(6価アルコール)(炭素数6〜40)、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール(ヘプタオール)(炭素数7〜47)、例えば、ショ糖などのオクタオール(8価アルコール)(炭素数8〜54)などが挙げられる。
これら低分子量ポリオールは、単独使用または2種以上併用することができる。
ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物、例えば、テトラヒドロフランの重合単位に上記したジオールなどを共重合した非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、例えば、テトラヒドロフランの重合単位に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロヒドリンおよび/またはベンジルグリシジルエーテルなどを共重合した非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
また、ポリエーテルポリオールとして、例えば、上記した炭素数6〜13の芳香環含有ジオール(具体的には、ビスヒドロキシエトキシベンゼンなど)、水酸基価が500mgKOH/g以下の芳香環含有ジオール(具体的には、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、ビスフェノールAなど)などの芳香族ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはテトラヒドロフランなどを付加重合した芳香環含有ポリオールも挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと、多塩基酸またはその酸無水物あるいはその酸ハライドとの反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
多塩基酸およびその酸無水物またはその酸ハライドとしては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(C11〜C13)、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などのカルボン酸(ジカルボン酸)、および、これらのカルボン酸などから誘導される酸無水物、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−アルキル(C12〜C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、さらには、これらの無水カルボン酸などから誘導される酸ハライド、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバチン酸ジクロライドなどが挙げられる。
また、ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどのラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
さらに、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールと、水酸基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12−ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸とを、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールは、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、触媒の存在下または不在下に、ホスゲン、ジアルキルカーボネート、ジアリルカーボネート、アルキレンカーボネートなどを反応させることにより、得ることができる。ポリカーボネートポリオールは、好ましくは、ジオールを開始剤とするポリカーボネートジオールが挙げられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ブタジエン、イソプレンなどの共役二重結合含有モノマーの重合体の末端に水酸基を付加した、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンジオールなどが挙げられる。
ダイマーポリオールとしては、通常、工業用原料として入手し得る、主成分が炭素数18の不飽和脂肪酸の2量体を還元して得られるダイマージオールなどが挙げられる。
ポリウレタンポリオールとしては、上記により得られたポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよび/またはポリカーボネートポリオールを、イソシアネート基に対する水酸基の当量比(OH/NCO)が1を超過する割合で、上記したポリイソシアネートと反応させることによって得られる、ポリエーテルポリウレタンポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリウレタンポリオール、あるいは、ポリエステルポリエーテルポリウレタンポリオールなどが挙げられる。
ポリオキシアルキレンポリエステルブロック共重合体ポリオールとしては、例えば、特公昭48−10078号公報に記載されているように、ポリオキシアルキレンポリオールにポリエステル鎖をブロックした構造のもの、すなわち、ポリオキシアルキレンポリオールまたは水酸基を有するその誘導体の各ヒドロキシ基の水素原子と置換する部分が、一般式(A)
(−CO−R5−COO−R6−O−)n (A)
(式中、R5およびR6はそれぞれ2価の炭化水素基であり、nは平均1より大きい数を示す。)で表されるものが含まれる。
一般式(A)中、R5で示される2価の炭化水素基としては、例えば、飽和脂肪族または芳香族ポリカルボン酸残基、R6で示される2価の炭化水素基としては、例えば、環状エーテル基をもつ化合物が開裂した残基が挙げられ、nは、好ましくは1〜20の整数である。
このポリオキシアルキレンポリエステルブロック共重合体ポリオールは、上記したポリオキシアルキレンポリオール(ポリエーテルポリオール)に、ポリカルボン酸無水物とアルキレンオキシドを反応させることにより得られる。
高分子量ポリオールの平均水酸基価は、80〜500mgKOH/gであり、好ましくは、100〜300mgKOH/g、さらに好ましくは、100〜250mgKOH/gである。
高分子量ポリオールの水酸基価(単位:mgKOH/g)は、JIS K 1557−1のA法またはB法に準拠するアセチル化法またはフタル化法などから求めることができる。
そして、高分子量ポリオールの平均水酸基価(単位:mgKOH/g)は、高分子量ポリオールが単独使用される場合には、その高分子量ポリオールの水酸基価と同一である。一方、高分子量ポリオールの平均水酸基価は、高分子量ポリオールが併用される場合には、それらの平均値である。
高分子量ポリオールの平均水酸基価が上記した範囲を超過すると、ポリウレタン成形体において、ヤング率が高くなり過ぎ、所望の光弾性定数を得ることができない場合がある。一方、平均水酸基価が上記した範囲未満であると、ガラス転移温度が過度に低くなり、加工性や耐傷付き性が低下する場合がある。
高分子量ポリオールの平均官能基数は、例えば、1.9〜3、好ましくは、1.9〜2.5、さらに好ましくは、2.0〜2.2である。
高分子量ポリオールの官能基数は、高分子量ポリオールの水酸基数であって、具体的には、1分子当たりの活性な水酸基の数である。
そして、高分子量ポリオールの平均官能基数は、高分子量ポリオール1分子当たりの活性な水酸基の平均値である。つまり、異なる官能基数を有する高分子量ポリオールが混合(併用)される場合は、その高分子量ポリオールの混合物の分子数に対する混合物の活性な水酸基の数の割合を示した数値が、高分子量ポリオールの平均官能基数である。
なお、高分子量ポリオールの平均官能基数は、次式(B)から求めることもできる。
平均官能基数=(各高分子量ポリオールの官能基数×当量数)の総和/各高分子量ポリオールの当量数の総和 (B)
高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、225〜20,000、好ましくは、500〜15,000である。
数平均分子量は、次式(C)から求めることができる。
数平均分子量=56100×平均官能基数/平均水酸基価 (C)
高分子量ポリオールの平均官能基数が上記した範囲を超過すると、ポリウレタン成形体において、所望の光弾性定数を得にくい場合がある。一方、平均官能基数が上記した範囲未満であると、ヤング率が低くなり過ぎ、加工性や耐傷付き性が低下する場合がある。
高分子量ポリオールとして、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオールが挙げられる。
さらに好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール(具体的には、ポリカーボネートジオール)が挙げられる。
ポリテトラメチレンエーテルグリコールの平均水酸基価は、100〜250mgKOH/g、好ましくは、100〜220mgKOH/gである。ポリテトラメチレンエーテルグリコールの平均水酸基価が上記した範囲内にあれば、高い光弾性と高い剛性とを両立することができる。
ポリカーボネートジオールの平均水酸基価は、100〜250mgKOH/g、好ましくは、150〜250mgKOH/gである。ポリカーボネートジオールの平均水酸基価が上記した範囲内にあれば、高い光弾性と高い剛性とを両立することができる。
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種以上併用することができる。
また、ポリオールは、上記した高分子量ポリオールに加え、上記した低分子量ポリオールを含有することもできる。
ポリオールが低分子量ポリオールを含有することにより、ポリオールの平均水酸基価を増大させて、その分、イソシアネートインデックス(後述)を所望の値に調整すべく、上記したポリイソシアネート(好ましくは、芳香環含有ポリイソシアネート)をポリウレタン樹脂組成物に多く配合することができる。そのため、ポリイソシアネート成形体の光弾性定数を高めることができる。
低分子量ポリオールとしては、好ましくは、ジオール、トリオール、テトラオールが挙げられ、具体的には、炭素数2〜10のジオール、炭素数3〜10のトリオール、炭素数5〜10のテトラオールが挙げられる。
炭素数2〜10のジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、アルカン(炭素数7〜10)ジオールや、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオールなどアルケン(炭素数4〜10)ジオール、などの脂肪族ジオール(炭素数2〜10)や、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール(炭素数6〜10)、例えば、キシレングリコールなどの芳香族ジオール(炭素数6〜10の芳香環含有ジオール)、さらにまた、ジエチレングリコール、トリオキシエチレングリコール、テトラオキシエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリオキシプロピレングリコールなどのオキシアルキレンアルコールなどのジオール(炭素数2〜10)などが挙げられる。
炭素数3〜10のトリオールとしては、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールなどの炭素数3〜6の脂肪族トリオール、および、その他の脂肪族トリオール(炭素数7〜10)などのトリオールなどが挙げられる。
炭素数5〜10のテトラオールとしては、例えば、テトラメチロールメタン、ジグリセリンなどのテトラオールなどが挙げられる。
低分子量ポリオールは、単独使用または2種以上併用することができる。
好ましくは、トリオールが少なくとも用いられ、具体的には、炭素数3〜10のトリオールの単独使用、炭素数3〜10のトリオールおよび炭素数2〜10のジオールの併用が挙げられる。
低分子量ポリオールの配合割合は、高分子量ポリオール100質量部に対して、例えば、0.1〜30質量部、好ましくは、0.5〜25質量部である。
炭素数3〜10のトリオールが単独使用される場合には、炭素数3〜10のトリオールの配合割合は、高分子量ポリオール100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは、9質量部以下、さらに好ましくは、0.5〜6質量部である。
炭素数3〜10のトリオールの配合割合が上記した範囲を超える場合は、ポリウレタン成形体が不透明になり、光がポリウレタン成形体を透過しない場合や、ポリウレタン成形体のヤング率が高くなり過ぎる場合がある。
炭素数3〜10のトリオールおよび炭素数2〜10のジオールが併用される場合において、炭素数3〜10のトリオールの配合割合は、高分子量ポリオール100質量部に対して、例えば、0.5〜10質量部、好ましくは、1〜6質量部であり、炭素数2〜10のジオールの配合割合は、高分子量ポリオール100質量部に対して、例えば、25質量部以下、好ましくは、0.1〜10質量部である。炭素数3〜10のトリオールおよび炭素数2〜10のジオールの配合割合が上記した範囲内にあれば、高い光弾性と高い剛性とを両立することができる。
また、炭素数3〜10のトリオールおよび炭素数2〜10のジオールが併用される場合において、それらの総量の配合割合は、高分子量ポリオール100質量部に対して、例えば、0.1〜30質量部、好ましくは、0.5〜25質量部、さらに好ましくは、0.7〜6質量部である。
トリオールおよびジオールの総量が上記した範囲未満であると、ヤング率が過度に低下して、成形性や耐傷付性が低下したり、光弾性定数が低下する場合がある。トリオールおよびジオールの総量が上記した範囲を超過すると、ヤング率が過度に高くなる場合がある。
そして、高分子量ポリオールの配合割合は、ポリイソシアネート100質量部に対して、例えば、120〜400質量部、好ましくは、125〜333質量部である。
換言すれば、ポリイソシアネートの含有割合が、高分子量ポリオール100質量部に対して、例えば、25〜85質量部、好ましくは、30〜80質量部である。ポリイソシアネートの含有割合が上記した範囲内にあれば、高い剛性と高い剛性とを両立することができる。
ポリイソシアネートの含有割合が上記した範囲を超過する場合には、ヤング率が過度に高くなり、ポリウレタン成形体における所望の光弾性定数を得られない場合がある。
ポリイソシアネートの含有割合が上記した範囲未満である場合には、ポリウレタン成形体における所望の光弾性定数を得られない場合がある。
また、本発明のポリウレタン樹脂組成物には、可塑剤を含有させることができる。
可塑剤は、ポリウレタン成形体のガラス転移温度を低下させるべく、ポリウレタン樹脂組成物に必要により配合され、例えば、シアノ化合物、フタル酸エステル(例えば、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル)、例えば、アジピン酸エステル(例えば、アジピン酸ジオクチル)、例えば、セバシン酸エステル(例えば、セバシン酸ジオクチル)、リン酸トリグリシジル、アセチルクエン酸トリブチル、エポキシ化大豆油、トリメリット酸トリオクチル、アルキルベンゼン、アルキルビフェニル(例えば、4−ペンチルビフェニル)、塩素化パラフィン、高沸点溶剤、イオン液体(例えば、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、ポリステル系可塑剤などが挙げられる。好ましくは、シアノ化合物が挙げられる。
シアノ化合物をポリウレタン樹脂組成物に配合すれば、成形体のヤング率を低減することができ、それによって、ポリウレタン成形体の加工性を向上することができるとともに、光弾性定数を増大させることもできる。
シアノ化合物は、例えば、炭素数が14〜24であり、4−シアノフェニル基(但し、4−シアノフェニル基における一部の水素原子が、フッ素原子で置換されていてもよい。)を有している。
シアノ化合物が、4−シアノフェニル基を有することによって、光弾性定数をより一層増大させることができる。
4−シアノフェニル基において、フッ素原子が置換する水素原子としては、例えば、2位〜6位の水素原子であって、好ましくは、2位の水素原子である。
シアノ化合物としては、具体的には、下記式(1)で示されるビフェニル化合物、
(式中、R1は、炭素数が1〜11のアルキル基、炭素数が7〜11の4−アルキルフェニル基、または、炭素数が7〜11の4−アルキルシクロヘキシル基を示す。)
下記式(2)で示されるエーテル化合物、
(式中、R2は、炭素数が1〜11のアルキル基を示す。)
下記式(3)で示されるシクロヘキシル化合物、
(R3は、炭素数が1〜11のアルキル基、または、炭素数が5〜11のアルケニル基を示す。)
下記式(4)で示されるフェニルエステル化合物が挙げられる。
(R4は、水素原子または炭素数が1〜10のアルキル基を示す。)
上記式(1)中、R1として示される炭素数1〜11のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシルなどの直鎖または分岐のアルキル基が挙げられる。好ましくは、炭素数2〜7のアルキル基が挙げられる。
上記式(1)中、R1として示される炭素数7〜11の4−アルキルフェニル基としては、例えば、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ペンチルフェニル、4−イソペンチルフェニル、4−tertペンチルフェニルなどの、炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキル部分を有する、4−アルキルフェニル基が挙げられる。好ましくは、炭素数3〜5のアルキル部分を有する、炭素数9〜11の4−アルキルフェニル基が挙げられる。
炭素数7〜11の4−アルキルシクロヘキシル基としては、例えば、4−メチルシクロヘキシル、4−エチルシクロヘキシル、4−プロピルシクロヘキシル、4−イソイプロピルシクロヘキシル、4−ペンチルシクロヘキシル、4−イソペンチルシクロヘキシル、4−tertペンチルシクロヘキシル、炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキル部分を有する、4−アルキルシクロヘキシル基が挙げられる。好ましくは、炭素数3〜5のアルキル部分を有する、炭素数9〜11の4−アルキルシクロヘキシル基が挙げられる。
上記式(1)で示されるR1として、好ましくは、炭素数1〜11のアルキル基、炭素数7〜11の4−アルキルシクロヘキシル基が挙げられる。
上記式(1)で示されるビフェニル化合物として、具体的には、4−シアノ−4´−メチルビフェニル、4−シアノ−4´−ペンチルビフェニル、4−シアノ−4´−(4−ペンチルシクロヘキシル)ビフェニルなどが挙げられる。
上記式(2)中、R2で示される炭素数1〜11のアルキル基としては、上記式(1)のR1で示される炭素数1〜11のアルキル基と同様のアルキル基が挙げられる。
上記式(2)で示されるエーテル化合物としては、具体的には、4−シアノ−4´−ペンチルオキシビフェニルなどが挙げられる。
上記式(3)中、R3で示される炭素数が1〜11のアルキル基としては、上記式(1)のR1で示される炭素数1〜11のアルキル基と同様のアルキル基が挙げられる。
上記式(3)中、R3で示される炭素数が5〜11のアルケニル基としては、例えば、例えば、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デシニル、ドデシニルなどが挙げられる。
上記式(3)中、R3として、好ましくは、炭素数が1〜11のアルキル基が挙げられる。
上記式(3)で示されるシクロヘキシル化合物としては、具体的には、4−(4−ペンチルシクロヘキシル)ベンゾニトリル、4−((3−ペンテニル)−4−シクロヘキシル)ベンゾニトリル、2−フルオロ−4−(4−ペンチルシクロヘキシル)ベンゾニトリルなどが挙げられる。
上記式(4)中、R4で示される炭素数が1〜10のアルキル基は、上記式(1)のR1で示される炭素数1〜11のアルキル基として例示したアルキル基のうち、炭素数1〜10のアルキル基と同様のアルキル基が挙げられる。
上記式(4)で示されるフェニルエステル化合物としては、例えば、4−プロピル安息香酸4−シアノフェニル、4−ヘプチル安息香酸4−シアノフェニル、4−ペンチル安息香酸4−シアノ−3,5−ジフルロオフェニルなどが挙げられる。
また、シアノ化合物として、例えば、シアノベンゼン、4−メトキシベンゼンなども挙げられる。
シアノ化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
シアノ化合物のうち、好ましくは、ビフェニル化合物が挙げられる。
可塑剤の配合割合は、高分子量ポリオール100質量部に対して、例えば、100質量部以下、好ましくは、1〜60質量部、さらに好ましくは、5〜30質量部である。
可塑剤の配合割合が上記した範囲を超過する場合には、ポリウレタン成形体のヤング率が過度に低下して、ポリウレタン成形体の外観が不透明となる場合がある。
そして、上記したポリイソシアネートとポリオールと必要により可塑剤とを処方(配合)することにより、本発明のポリウレタン樹脂組成物を得る。
ポリウレタン樹脂組成物に配合される各成分の好適な組合せ(後述する実施例16、18〜20などで例示される第1の組合せ)として、例えば、1,4−フェニレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートと、ポリエーテルポリオールと、炭素数2〜10のジオールと、炭素数3〜10のトリオールとの組合せが挙げられ、具体的には、ベンゼン環含有ジイソシアネートと、ポリテトラメチレンエーテルポリオールと、炭素数2〜10の脂肪族ジオールと、炭素数3〜6の脂肪族トリオールとの組合せが挙げられる。
また、ポリウレタン樹脂組成物に処方される各成分の好適な組合せ(後述する実施例36、39および41などで例示される第2の組合せ。)として、例えば、複数種類の芳香環含有ポリイソシアネートと、ポリエーテルポリオールと、炭素数2〜10のジオールと、炭素数3〜10のトリオールとの組合せが挙げられ、具体的には、ベンゼン環含有ジイソシアネートおよびナフタレン環含有ジイソシアネートと、ポリテトラメチレンエーテルポリオールと、炭素数2〜10の脂肪族ジオールと、炭素数3〜6の脂肪族トリオールとの組合せ、あるいは、異なる2種類のベンゼン環含有ジイソシアネートと、ポリテトラメチレンエーテルポリオールと、炭素数2〜10の脂肪族ジオールと、炭素数3〜6の脂肪族トリオールとの組合せが挙げられる。
さらに、ポリウレタン樹脂組成物に処方される各成分の好適な組合せ(後述する実施例33および34などで例示される第3の組合せ)として、例えば、1,4−フェニレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートと、ポリエーテルポリオールと、炭素数2〜10のジオールと、炭素数3〜10のトリオールと、可塑剤との組合せが挙げられ、具体的には、ベンゼン環含有ジイソシアネートと、ポリテトラメチレンエーテルポリオールと、炭素数2〜10の脂肪族ジオールと、炭素数3〜6の脂肪族トリオールと、ビフェニル化合物との組合せが挙げられる。
さらにまた、ポリウレタン樹脂組成物に処方される各成分の好適な組合せ(後述する実施例50、52および53などで例示される第4の組合せ)として、例えば、1,4−フェニレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートと、ポリカーボネートポリオールと、炭素数3〜10のトリオールと、可塑剤との組合せが挙げられ、具体的には、ベンゼン環含有ジイソシアネートと、ポリカーボネートジオールと、炭素数3〜6の脂肪族トリオールと、ビフェニル化合物との組合せが挙げられる。
また、ポリウレタン樹脂組成物に処方される各成分の好適な組合せ(後述する実施例42および46などで例示される第5の組合せ)として、例えば、1,4−フェニレン基を含有する複数種類の芳香環含有ポリイソシアネートと、ポリエーテルポリオールと、炭素数2〜10のジオールと、炭素数3〜10のトリオールと、可塑剤との組合せが挙げられ、具体的には、異なる2種類のベンゼン環含有ジイソシアネートと、ポリテトラメチレンエーテルポリオールと、炭素数2〜10の脂肪族ジオールと、炭素数3〜6の脂肪族トリオールと、ビフェニル化合物またはエーテル化合物との組合せが挙げられる。
また、ポリウレタン樹脂組成物に処方される各成分の好適な組合せ(後述する実施例53で例示される第6の組合せ)として、例えば、複数種類の芳香環含有ポリイソシアネートと、ポリカーボネートポリオールと、炭素数3〜10のトリオールとの組合せが挙げられ、具体的には、ベンゼン環含有ジイソシアネートおよびナフタレン環含有ジイソシアネートと、ポリカーボネートジオールと、炭素数3〜10の脂肪族トリオールとの組合せが挙げられる。
さらに、ポリウレタン樹脂組成物に処方される各成分の好適な組合せ(後述する実施例58および59で例示される第7の組合せ)として、例えば、1,4−フェニレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートと、ポリエステルポリオールと、炭素数3〜10のトリオールとの組合せが挙げられ、具体的には、ベンゼン環含有ポリイソシアネートと、ジカルボン酸およびジオールの重縮合物であるポリエステルジオールと、炭素数3〜10の脂肪族トリオールとの組合せが挙げられる。
そして、本発明のポリウレタン成形体は、このようにして得られる本発明のポリウレタン樹脂組成物から、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて、ポリウレタン樹脂組成物を硬化および成形することにより、得ることができる。
ポリイソシアネートとポリオールとを反応させるには、例えば、ワンショット法やプレポリマー法などの公知の成形方法に準拠することができる。
ワンショット法では、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを、イソシアネートインデックス(水酸基濃度に対するイソシアネート基濃度の比に100を乗じた値、NCO濃度/水酸基濃度×100)が、例えば、70〜400、好ましくは、80〜150となるように処方(混合)して、それらを成形型に注入して、例えば、0℃〜250℃、好ましくは、室温(20℃)〜150℃で、例えば、1分間〜7日間、好ましくは、10分間〜2日間、硬化反応させる。
この硬化反応では、ウレタン化触媒を添加することができる。ウレタン化触媒としては、例えば、錫系触媒(例えば、オクチル酸錫など)、鉛系触媒(例えば、オクチル酸鉛など)、ビスマス系触媒、チタン系触媒、ジルコニウム系触媒、有機金属系触媒、アミン系触媒などが挙げられ、好ましくは、高い光弾性定数を得る観点から、鉛系触媒が挙げられる。
ウレタン化触媒の配合割合は、ポリイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.0001〜2.0質量部、好ましくは、0.0005〜1.0質量部である。
また、上記した硬化反応は、公知の溶媒の存在下で実施することもできる。
そして、成形型に注入して硬化反応させた後、脱型すれば、所定形状に成形されたポリウレタン成形体を得ることができる。
あるいは、ポリウレタン樹脂組成物を、例えば、ガラス基板、樹脂フィルムなどの基材の上に均一な厚みで塗布して皮膜を形成し、続いて、硬化させることにより、所定の厚みのポリウレタン成形体を形成することができる。
なお、ポリウレタン成形体は、硬化後、基材から剥離することができる。あるいは、ポリウレタン成形体は、基材から剥離することなく、基材に付着させたままで使用することもできる。
プレポリマー法は、例えば、まず、ポリイソシアネートとポリオールの一部(例えば、高分子量ポリオール)とを反応させて、分子末端にイソシアネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーを合成する。次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、ポリオールの残部(鎖伸長剤:例えば、低分子量ポリオール)とを反応(鎖伸長)させて、硬化反応させる。
イソシアネート基末端プレポリマーを合成するには、ポリイソシアネートとポリオールの一部とを、イソシアネートインデックス(NCO濃度/水酸基濃度×100)が、例えば、110〜2,000、好ましくは、150〜1,000となるように処方(混合)し、反応容器中にて、例えば、室温〜150℃、好ましくは、40〜120℃で、例えば、0.5〜18時間、好ましくは、2〜10時間、反応させる。
上記したイソシアネート基末端プレポリマーは、公知の溶媒の存在下で、合成することができる。
また、上記したイソシアネート基末端プレポリマーの合成後に、例えば、薄膜蒸留法などの蒸留法、例えば、液−液抽出法などの抽出法などの除去方法によって、未反応のポリイソシアネートを除去することもできる。
得られたイソシアネート基末端プレポリマーは、そのイソシアネート当量が、例えば、80〜2,000、好ましくは、100〜1,000である。
次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、ポリオールの残部とを反応させるには、イソシアネート基末端プレポリマーと、ポリオールの残部とを、イソシアネートインデックス(NCO濃度/水酸基濃度×100)が、例えば、50〜200、好ましくは、75〜125となるように処方(混合)し、成形型に注入して、例えば、0〜250℃、好ましくは、室温(20℃)〜150℃で、例えば、1分間〜7日間、好ましくは、10分間〜2日間、硬化反応させる。
この硬化反応においても、上記と同様のウレタン化触媒を、上記と同様の配合割合で添加することができる。また、この硬化反応は、公知の溶媒の存在下で実施することもできる。
そして、成形型に注入して硬化反応させた後、脱型すれば、所定形状に成形されたポリウレタン成形体を得ることができる。
本発明のポリウレタン成形体は、光弾性、つまり、応力の発生により、成形体の内部を通過する光(例えば、レーザー光など)に複屈折を生じさせることができる。
具体的には、ポリウレタン成形体は、25℃における光弾性定数が、4,000×10−12Pa−1以上、好ましくは、5,000×10−12Pa−1以上、さらに好ましくは、7,000×10−12Pa−1以上、とりわけ好ましくは、8,000×10−12Pa−1以上、より好ましくは、9,000×10−12Pa−1以上であり、通常、100,000×10−12Pa−1以下である。
光弾性定数が上記した下限を超過することにより、優れた光弾性、とりわけ、次に説明する感圧センサにおいて必要とされる優れた光弾性を確保することができる。
ポリウレタン成形体の光弾性定数は、「築地光雄、高和宏行、田實佳郎著“光学フィルム用・光弾性定数測定システムの開発”、精密学会誌73、253−258(2007)」の「光弾性定数測定方法」の記載に準拠して測定することができる。
また、光弾性定数の測定とともに、ポリウレタン成形体の歪光学定数とヤング率とが求められる。
ポリウレタン成形体の歪光学定数は、ポリウレタン成形体の変形量に対する、かかる変形によって発生する複屈折の強さの割合を示す。
光弾性定数、歪光学定数およびヤング率は、下記式(5)を満足する。
光弾性定数=歪光学定数÷ヤング率 (5)
従って、ポリウレタン成形体の光弾性定数を上記した所望の範囲に設定するには、歪光学定数およびヤング率を調整する。
具体的には、歪光学定数が高いほど、また、ヤング率が低いほど、光弾性定数が高くなるが、ヤング率が過度に低いと、成形性が低下する場合がある。
そのため、ポリウレタン成形体の25℃のヤング率は、2〜10MPa(2×106〜10×106Pa)、好ましくは、3〜9MPa、さらに好ましくは、3〜6MPaである。
ポリウレタン成形体のヤング率が上記した範囲未満である場合には、ポリウレタン成形体が軟らか過ぎて傷付き易く、加工性が低下する場合がある。ポリウレタン成形体のヤング率が上記した範囲を超過する場合には、ポリウレタン成形体が硬すぎるため、光弾性が低下する場合がある。
好ましくは、上記した所望の光弾性定数を得るには、ポリウレタン成形体の25℃のヤング率が2〜6MPaの場合には、25℃の歪光学定数が、例えば、8,000×10−6以上(通常、100,000×10−6以下)であり、ポリウレタン成形体の25℃のヤング率が3〜10MPaの場合には、25℃の歪光学定数は、例えば、40,000×10−6以上(通常、100,000×10−6以下)である。
ポリウレタン成形体のガラス転移温度は、例えば、−25〜40℃、好ましくは、−20〜37℃、さらに好ましくは、−20〜30℃である。
ポリウレタン成形体のガラス転移温度が、上記した上限を超過する場合には、上記した所望の光弾性定数を得にくくなる場合がある。ポリウレタン成形体のガラス転移温度が上記した下限未満である場合には、ポリウレタン成形体の加工性および耐傷付き性が低下する場合がある。
ポリウレタン成形体のガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置を用いて、周波数10Hzで、温度分散モードの測定により、得ることができる。
また、上記したガラス転移温度の測定では、同時に、貯蔵伸長弾性率E’、損失伸長弾性率E’’および損失正接tanδが得られる。
ポリウレタン成形体の25℃における貯蔵伸長弾性率E’は、例えば、4×106〜5×108Paであり、25℃における損失伸長弾性率E’’は、例えば、5×104〜5×108Paであり、25℃における損失正接tanδは、例えば、0.03〜1.5である。
なお、このようなポリウレタン樹脂組成物またはポリウレタン成形体には、必要に応じて、例えば、消泡剤、可塑剤、レベリング剤、艶消し剤、難燃剤、揺変剤、粘着付与剤、増粘剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、反応遅延剤、脱水剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、耐候安定剤などの公知の添加剤を適宜配合することができる。
図1は、本発明のタッチパネルの一実施形態(発光部および受光部がポリウレタン成形体の外側に配置される態様)の平面図を示す。
次に、上記したポリウレタン成形体を備える感圧センサおよびそれを備えるタッチパネルを、図1を参照して説明する。なお、図1において、紙面上下方向を「縦方向」、紙面左右方向を「横方向」とする。
図1において、このタッチパネル1は、感圧センサ2と、感圧センサ2によりセンシングした信号を処理する処理部3とを備えている。
感圧センサ2は、ポリウレタン成形体4と、ポリウレタン成形体4における応力発生を検知するための応力発生検知部15とを備えている。
ポリウレタン成形体4は、所定形状の成形型(注形型)によりシート状に形成されているか、あるいは、脱型後の裁断によって所定形状のシート状に形成されている。具体的には、ポリウレタン成形体4は、平面視略矩形平板形状に形成されている。ポリウレタン成形体4の厚みは、特に限定されず、例えば、0.005〜50mm、好ましくは、0.01〜10mm、さらに好ましくは、0.1〜5mmである。
応力発生検知部15は、光センサからなり、ポリウレタン成形体4の両側を挟むように設けられる1対の発光部5および受光部8を備えている。
発光部5は、ポリウレタン成形体4における縦方向一方側に配置され、横方向に沿って複数並列配置される縦側発光部6と、ポリウレタン成形体4における横方向一方側に配置され、縦方向に沿って複数並列配置される横側発光部7とを備えている。
縦側発光部6は、横方向他方側から一方側に向かって順次配置される、第1発光部5A、第2発光部5Bおよび第3発光部5Cを備えている。横側発光部7は、縦方向一方側から他方側に向かって順次配置される、第4発光部5D、第5発光部5Eおよび第6発光部5Fを備えている。
受光部8は、各発光部5に対応して設けられており、縦側発光部6および横側発光部7とポリウレタン成形体4を挟むように対向配置される、縦側受光部9および横側受光部10を備えている。
縦側受光部9は、ポリウレタン成形体4の縦方向他方側において、横方向に沿って複数並列配置されている。つまり、縦側受光部9は、第1発光部5A、第2発光部5Bおよび第3発光部5Cに対応し、横方向他方側から一方側に向かって順次配置される、第1受光部8A、第2受光部8Bおよび第3受光部8Cを備えている。
横側受光部10は、ポリウレタン成形体4の横方向他方側において、縦方向に沿って複数並列配置されている。つまり、横側受光部10は、第4発光部5D、第5発光部5Eおよび第6発光部5Fに対応し、縦方向一方側から他方側に向かって順次配置される、第4受光部8D、第5受光部8Eおよび第6受光部8Fを備えている。
これにより、ポリウレタン成形体4における、各発光部5と各受光部8とを結ぶ線上、より具体的には、縦側発光部6および縦側受光部9を結ぶ線と、横側発光部7および横側受光部10を結ぶ線との交点上には、指などに接触されたとき、それを検知するための複数(9つ)の検知部(実線および破線の円にて示される)11(11a〜11i)が区画されている。
また、感圧センサ2には、ポリウレタン成形体4と、発光部5および受光部8との間に介在される偏光フィルム13が複数(4つ)設けられている。具体的には、各偏光フィルム13は、ポリウレタン成形体4および縦側発光部6の間と、ポリウレタン成形体4および横側発光部7の間と、ポリウレタン成形体4および縦側受光部8の間と、ポリウレタン成形体4および横側発光部9の間とに、それぞれ配置されている。
処理部3は、例えば、LED14などを備え、各受光部8と配線12を介して電気的に接続されている。処理部3は、縦側受光部9において検知されるレーザー光の複屈折の検知信号と、横側受光部10において検知されるレーザー光の複屈折の検知信号とから、ポリウレタン成形体4のいずれの検知部11に指が接触されているかを判断し、LED14に表示する。
次に、このタッチパネル1を用いて、ポリウレタン成形体4の応力発生箇所をセンシングする方法について説明する。
まず、応力発生検知部15において、発光部5から受光部8に向けて、ポリウレタン成形体4の内部を通過するように、レーザー光を出射する。このとき、ポリウレタン成形体4においては、レーザー光に複屈折が生じていないため、偏光フィルム13により、レーザー光が遮断されており、受光部8では、受光されていない。
次いで、検知部11(11a、実線)に指を接触させ、検知部11に応力を発生させる。
すると、検知部11において複屈折が生じるので、複屈折したレーザー光が、受光部8によって受光される。
より具体的には、検知部11aの縦方向他方側および横方向他方側にそれぞれ配置される第1受光部8Aおよび第4受光部8Dが、検知部11aにおける複屈折の有無を検知する。
続いて、処理部3には、第1受光部8Aおよび第4受光部8Dの複屈折の検知に基づく電気信号が入力され、これにより、処理部3が、応力発生箇所が検知部11aであることを検知する。
また、その他の検知部11(11b〜11i)についても、上記と同様にして、応力発生箇所を検知する。
そして、ポリウレタン成形体4は、軽薄化および軽量化を図りながら、優れた光弾性、優れた剛性を有している。
従って、上記したポリウレタン成形体を備える本発明の感圧センサでは、剛性の向上を図り、軽薄化および軽量化を図りながら、ユーザーが通常加える圧力に基づく応力歪みをセンシングすることができ、ポリウレタン成形体における応力発生箇所を確実に特定することができる。
ユーザーが感圧センサ2に通常加える圧力は、例えば、0.0098N以上9.8N未満(つまり、1g重以上1000g重未満)、さらには、0.098N以上0.980N以下(つまり、10g重以上100g重以下)である。
また、上記した感圧センサ2は、優れた耐湿性、耐水性、耐電気ノイズ性および耐電磁波性を有している。そのため、濡れた指で、ポリウレタン成形体4に触れた場合でも、応力発生箇所の誤検知の発生を有効に防止することができる。
そのため、ポリウレタン成形体4を備える感圧センサ2では、軽薄化および軽量化を図りながら、ユーザーが通常加える圧力に基づく応力歪みのセンシングによって、ポリウレタン成形体4における応力発生箇所を確実に特定することができる。
その結果、感圧センサ2を備えるタッチパネル1は、装置の軽薄化および軽量化を図り、機械強度を向上させながら、容易かつ確実なセンシングを達成することができる。
図1の実施形態では、検知部11の1箇所(11a)に指を接触させる場合について説明している。
次に、検知部11において、例えば、2箇所(11aおよび11i)に2つの指で同時に接触させる場合を説明する。
図1において、例えば、検知部11aおよび11iの2箇所に指を順次接触させる場合には、まず、指による検知部11aの接触に基づいて、第1受光部8Aおよび第4受光部8Dが、複屈折を検知し、指が検知部11aから離間する。
その後、指による検知部11iの接触に基づいて、第3受光部8Cおよび第6受光部8Fが、複屈折を検知する。これによって、処理部3が、応力発生箇所が検知部11aであることを検知した後、応力発生箇所が検知部11iであることを検知する。
一方、検知部11aおよび11iの2箇所に指を同時に接触させると、第1受光部8A、第3受光部8C、第4受光部8Dおよび第6受光部8Fが複屈折を検知する。
そうすると、処理部3が、応力発生箇所が、4つの検知部11a、11c、11gおよび11iにあると誤検知する場合がある。
そのため、図1において図示しないが、感圧センサ4に、圧電体シートを、ポリウレタン成形体4の表面に設けるとともに、電極を圧電体シートの周端部に設ける。電極は、外部の電圧検知器(図示せず)に接続されている。
そして、指が検知部11aに接触すると、圧電体シートにおいて、圧電効果に基づき、縦方向一端部および横方向他端部において発生する電圧が、その近傍の電極を介して電圧検知器に検知される。
また、指が検知部11iに接触すると、圧電体シートにおいて、圧電効果に基づき、縦方向他端部および横方向一端部において発生する電圧が、その近傍の電極を介して電圧検知器に検知される。
そして、処理部3は、ポリウレタン成形体4における複屈折の検知と、上記した圧電体シートにおける電圧の検知とを組み合わせることによって、応力発生箇所が、検知部11aおよび11iの2箇所であると正しく検知することができる。
なお、圧電体シートにおいて発生した電圧(信号)を利用して、発光部5および受光部8、さらには、処理部3に、電源が投入される回路を設計すれば、指がタッチパネルに触れるまでは、発光部5、受光部8および処理部3で消費される電力を省略(節約)することができる。そのため、タッチパネル1に搭載されるバッテリーの使用期間を延長することができる。
なお、図1の実施形態では、発光部5および受光部8をともに、平面視において、感圧センサ用ポリウレタン成形体4の外側に設けているが、その配置は、特に限定されず、例えば、図2に示すように、感圧センサ用ポリウレタン成形体4の内側に設けることもできる。
図2において、感圧センサ用ポリウレタン成形体4の周端部には、ミラー16が設けられている。ミラー16は、感圧センサ用ポリウレタン成形体4の縦方向外側および横方向外側に隣接配置され、下方に向かうに従って外側に略45度で傾斜して配置される上部ミラー面19と、上部ミラー面19の下端に連続し、下方に向かうに従って内側に略45度で傾斜して配置される下部ミラー面20とを備えている。
発光部5は、感圧センサ用ポリウレタン成形体4の下側において、下部ミラー面19と内側(縦方向他方側および横方向他方側、図1参照)に間隔を隔てて配置されている。
受光部8は、感圧センサ用ポリウレタン成形体4の下側において、下部ミラー面19と内側(縦方向一方側および横方向一方側、図1参照)に、偏光板13を挟んで対向配置されている。
そして、このタッチパネル1では、検知部11に指を接触させて、検知部11に応力を発生させると、検知部11において複屈折が生じるので、複屈折したレーザー光が、ミラー16によって反射された後、受光部8によって受光される。これにより、処理部3(図1参照、図2において図示されない)が、検知部11における応力発生箇所を検知する。
このタッチパネル1では、発光部5および受光部8が感圧センサ用ポリウレタン成形体4の内側に設けられているので、装置のコンパクト化を図ることができる。
なお、図1および図2の実施形態では、本発明の感圧センサ用ポリウレタン成形体を、感圧センサ2を備えるタッチパネル1に用いているが、その用途は、特に限定されず、図示しないが、例えば、光シャッター、収差補正素子(レンズ収差補正素子)などの光学用途に用いることもできる。
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。本発明は、実施例および比較例に限定されない。
なお、実施例および比較例および表1〜表9において記載する略号の詳細を記載する。
PTMEG−650:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、水酸基価163〜175、官能基数2、保土谷化学工業社製「PTG−650SN」
PTMEG−1000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、水酸基価108、官能基数2、保土谷化学工業社製「PTG−1000」
トリオール−1000:ポリプロピレントリオール、開始剤:グリセリン、数平均分子量1000、水酸基価168mgKOH/g、官能基数3
ジオール−1000:ポリプロピレンジオール、開始剤:エチレングリコール、数平均分子量1000、水酸基価110mgKOH/g、官能基数2
ジオール−400:ポリプロピレンジオール、開始剤:エチレングリコール、数平均分子量400、水酸基価280mgKOH/g、官能基数2
ポリカーボネートジオール:開始剤:1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオール、水酸基価224mgKOH/g、官能基数2、旭化成社製「デュラノールT5650E」
ビスフェノールA−エトキシレート:ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、水酸基価228mgKOH/g、官能基数2、アルドリッチ社製試薬
ポリブタジエンポリオール:水酸基価102mgKOH/g、官能基数2.2、出光興産社製「R−15HT」
ポリカプロラクトンジオール:水酸基価222mgKOH/g、官能基数2、ダイセル化学工業社製「プラクセルL205AL」
ポリエステルジオール−A:アジピン酸およびテレフタル酸と、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとの重縮合物、水酸基価111mgKOH/g、官能基数2、クラレ社製「クラレポリオールP−1011」
ポリエステルジオール−B:アジピン酸およびイソフタル酸と、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとの重縮合物、水酸基価108mgKOH/g、官能基数2、クラレ社製「クラレポリオールP−1012」
ポリエステルジオール−C:アジピン酸と、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとの重縮合物、水酸基価112mgKOH/g、官能基数2、クラレ社製「クラレポリオールP−1010」
4,4’−MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
TDI−65:2,4−および2,6−トリレンジイソシアネートの異性体混合物(2,4/2,6異性体混合比65:35)(質量比)
TODI:3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート
1,5−NDI:1,5−ナフタレンジイソシアネート
DOP:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル
イオン液体:1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
オクチル酸鉛:商品名「ヘキソエート鉛24%」、触媒、東栄化工社製
BYK−070:消泡剤、ビックケミー・ジャパン社製
イルガノックス1135:酸化防止剤、BASF社製
ハイパーゲル:2mm厚のシート状ゲル、アスカーC硬度30、エクシールコーポレーション社製
(ポリウレタン成形体の成形)
実施例1〜60および比較例1〜4
表1〜表8に基づいて、ポリイソシアネートとポリオールと(必要により配合される可塑剤および添加剤と)を処方して、実施例1〜60および比較例1〜4のポリウレタン成形体を成形した。
具体的には、まず、ポリイソシアネートとポリオールと(必要により配合される可塑剤および添加剤と)を、所定の温度(混合前の液温)にて、混合ポットに、所定のイソシアネートインデックスとなる割合で投入し、混合しながら減圧下にて30秒間脱泡した。
その後、これを、注形型の空隙に流し込み、所定の温度(硬化温度)にて、24時間、硬化させた。これにより、厚み2.0mmのシート状のポリウレタン成形体を得た。なお、注形型は、厚み方向に対向する2枚の平坦な金属板と、それらの周端部の間(空隙)に挟み込まれた切片状のスペーサーとから形成されている。
表1〜8において、特に単位などを特記しない限り、配合処方の数値は、質量部数を示す。
(成形体の用意)
比較例5
非特許文献2に記載されるゲル(ハイパーゲル)を比較例5の成形体として供した。
(ポリウレタン成形体の評価)
(1)光弾性定数、歪み光学定数およびヤング率
実施例1〜60、比較例1〜4のポリウレタン成形体と、比較例5の成形体とに関し、「築地光雄、高和宏行、田實佳郎著“光学フィルム用・光弾性定数測定システムの開発”、精密学会誌73、253−258(2007)」の「光弾性定数測定方法」の記載に準拠して測定し、25℃における歪み光学定数およびヤング率を得るとともに、それらから25℃における光弾性定数を算出した。上記測定には、波長630nmのレーザー光を使用した。
それらの結果を表1〜表8に示す。
(2)ガラス転移温度(Tg)、貯蔵伸長弾性率(E’)、損失伸長弾性率(E’’)および損失正接(tanδ)
実施例1〜60、比較例1〜4のポリウレタン成形体と、比較例4との成形体について、動的粘弾性測定装置(VES−F−III、VISCO−ELASTICSPECTROMETER、岩本製作所社製)を用いて、長さ2.5cm、幅5.0mm、厚み2.0mmの短冊状に裁断したサンプル片を、昇温速度5℃/分、振動数10Hz、振幅±0.01mmの温度分散モードにて測定し、貯蔵伸長弾性率(E’)、損失伸長弾性率(E’’)および損失正接(tanδ)を求めるとともに、得られたデータの損失正接(tanδ)のピーク値の温度を、ガラス転移温度とした。
それらの結果を表1〜表8に示す。
(3)外観
実施例1〜60、比較例1〜4のポリウレタン成形体と、比較例4の成形体との透明の度合いを、肉眼にて観察した。
それらの結果を、表1〜表8に記載する。
(試験用感圧センサの作成および試験)
実施例61
(試験用感圧センサの作成)
実施例17のポリウレタン成形体から試験用感圧センサを作成し、これを実施例61とした。
図3において、試験用感圧センサ22は、ポリウレタン成形体4と、ポリウレタン成形体4における応力発生を検知するための応力発生検知部15とを備えている。
ポリウレタン成形体4は、縦20mm×横20mm、厚み2mmの矩形状のシート状に成形されている。
応力発生検知部15は、光センサであって、ポリウレタン成形体4の両側を挟むように設けられる発光部5および受光部8を備えている。
発光部5は、レーザー光(波長630nm)を出射する光源である。
受光部8は、発光部5から出射されたレーザー光を受光(検知)する光強度検出器である。なお、受光部8は、受光するレーザー光の光量(光強度)を測定する。
応力発生検知部15は、発光部5から出射されたレーザー光が、ポリウレタン成形体4を面方向(厚み方向に直交する方向)に通過し、ポリウレタン成形体4を通過した光が受光部8に受光するように、配置されている。
また、感圧センサ22には、ポリウレタン成形体4と、発光部5および受光部8との間に介在される偏光フィルム13が2つ設けられている。具体的には、偏光フィルム13は、ポリウレタン成形体4と、発光部5との間に介在される発光側偏光フィルム23と、ポリウレタン成形体4と、受光部8との間に介在される受光側偏光フィルム33とを備える。
発光側偏光フィルム23は、偏光面が、ポリウレタン成形体4の面方向(図3において紙面に沿う方向)に対して45度傾斜するように設けられ、受光側偏光フィルム33は、発光側偏光フィルム23により偏光されたレーザー光を遮断するように(つまり、ポリウレタン成形体4の面方向に対して135度傾斜するように)設けられている。
(試験用感圧センサの評価)
応力発生検知部15において、発光部5から、光強度300μWのレーザー光を出射するとともに、ポリウレタン成形体においてレーザー光が通過する部分を、検知部11(直径1mmの円形領域)として、表9に記載の圧力で、厚み方向一方側に押し下げた。
発光部5から照射されたレーザー光は、発光側偏光フィルム23を通過すると、ポリウレタン成形体のシートの面方向に対して45度傾斜する偏光面を有し、その後、ポリウレタン成形体4に入射する。
続いて、かかるレーザー光が、検知部11に至ると、検知部11では、上記した押し下げによって、複屈折を所定割合で生じることから、偏光面がさらに90度傾斜する。つまり、押し下げ部分より受光側のレーザー光は、ポリウレタン成形体4の面方向に対して135度傾斜する偏光面を有する。
次いで、そのようなレーザー光は、ポリウレタン成形体4から出射し、続いて、受光側フィルム33を通過して、受光部8に受光され、受光部8において、光強度を測定する。
その結果を表9に示す。
表9から明らかなように、荷重のない状態(無荷重状態)で検出された光強度(12.0μW)は、荷重0.12N(12g)の状態で検出された光強度(0.3μW)に対して、40倍であり、それによって、圧力を検出することができた。